説明

風力発電用風車

【課題】フィルターの目詰まりを正確に把握し、ナセルの内部に収容された発熱機器を常に適正に冷却すること。
【解決手段】基礎上に立設される支柱2と、この支柱2の上端に設置され、その内部に発熱機器を収容したナセル3と、略水平な軸線周りに回転可能にして前記ナセル3に軸支されるローターヘッド4とを備え、前記ナセル3のカバー6に設けられた吸気口17を介して前記ナセル3に取り入れられ、前記発熱機器を冷却した外気を、前記ナセル3のカバー6に設けられた排気口15a,16およびこの排気口15a,16の上流側近傍に配置された排気ファン11,13を介して排出する風力発電用風車1であって、予め入力された基準となる基準値データと、風車外部の風速が略安定している状態で取得された最新のデータとを比較検討し、フィルター14が目詰まりしている、または前記フィルター14が目詰まりしかかっていることを判断する制御装置を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力発電用風車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
風力発電用風車としては、例えば、特許文献1に開示されたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平05−079450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
風力発電用風車のナセルの内部には、ドライブトレイン、発電機、制御装置等の発熱機器が収容されており、また、この発熱機器を空気冷却するための排気ファンおよびフィルターが設けられているものもある。フィルターは、ナセルの内部に取り込まれる外気中から粉塵、雨水、雪粒子、塩粒子等の不純物を取り除くものであり、この不純物によってフィルターが目詰まりを起こすと発熱機器を適正に冷却することができなくなるおそれがある。
そこで、現状では、定期的(予め設定された期間毎)にフィルターの点検を行い、フィルターが目詰まりしている、またはフィルターが目詰まりしかかっている場合には、フィルターを交換したり、フィルターの洗浄(清掃)を行うようにしている。
【0005】
しかしながら、フィルターの目詰まりは、風力発電用風車が設置される場所(内陸部、海岸部、洋上等)や風力発電用風車が設置される周囲の環境(空気の清浄度、風速、気温等)によって大きく左右されるため、フィルターが目詰まりする時期を予め予測することは困難である。したがって、定期的にフィルターの点検を行ったとしても、フィルターが完全に目詰まりを起こしていることもあれば、ほとんど目詰まりを起こしていないこともある。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、フィルターの目詰まりを正確に把握することができ、ナセルの内部に収容された発熱機器を常に適正に冷却することができる風力発電用風車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用した。
本発明に係る風力発電用風車は、基礎上に立設される支柱と、この支柱の上端に設置され、その内部に発熱機器を収容したナセルと、略水平な軸線周りに回転可能にして前記ナセルに軸支されるローターヘッドとを備え、前記ナセルのカバーに設けられた吸気口を介して前記ナセルの内部に取り入れられ、前記発熱機器を冷却した外気を、前記ナセルのカバーに設けられた排気口およびこの排気口の上流側近傍に配置された排気ファンを介して排出する風力発電用風車であって、予め入力された基準となる基準値データと、風車外部の風速が略安定している状態で取得された最新のデータとを比較検討し、フィルターが目詰まりしている、または前記フィルターが目詰まりしかかっていることを判断する制御装置を備えている。
【0008】
上記風力発電用風車において、前記基準値データとして、前記フィルターが目詰まりしている、または前記フィルターが目詰まりしかかっている状態で、前記排気ファンを連続稼働させる直前の前記ナセルの内部温度から、前記排気ファンを連続稼働させて前記ナセルの内部温度が所定温度下がるまでに要するであろう稼働時間として設定された時間を用い、前記最新のデータとして、前記排気ファンを連続稼働させる直前の前記ナセルの内部温度から、前記排気ファンを連続稼働させて前記ナセルの内部温度が所定温度下がるまでに要した実際の稼働時間を用いるとさらに好適である。
【0009】
上記風力発電用風車において、前記基準値データとして、前記フィルターが目詰まりしている、または前記フィルターが目詰まりしかかっている状態で、前記排気ファンを一定時間連続稼働させたときに得られるであろう、前記排気ファンを一定時間連続稼働させる直前の前記ナセルの内部温度と、前記排気ファンを一定時間連続稼働させた直後の前記ナセルの内部温度との差として設定された温度変化量を用い、前記最新のデータとして、前記排気ファンを一定時間連続稼働させる直前の前記ナセルの内部温度と、前記排気ファンを一定時間連続稼働させた直後の前記ナセルの内部温度との実際の差として得られた実際の温度変化量を用いるとさらに好適である。
【0010】
上記風力発電用風車において、前記フィルターの下流側近傍もしくは前記ナセル内の空気の流路上に風速計が配置されており、前記基準値データとして、前記フィルターが目詰まりしている、または前記フィルターが目詰まりしかかっている状態で測定されるであろう風速として設定された風速を用い、前記最新のデータとして、前記排気ファンを連続稼働させて前記風速計で取得された実際の風速を用いるとさらに好適である。
【0011】
上記風力発電用風車において、前記フィルターの上流側近傍の圧力と、前記フィルターの下流側近傍の圧力との差を測定する差圧計もしくは前記ナセル内の空気の流路上の、上流側における圧力と、下流側における圧力との差を測定する差圧計が配置されており、前記基準値データとして、前記フィルターが目詰まりしている、または前記フィルターが目詰まりしかかっている状態で測定されるであろう圧力差として設定された圧力差を用い、前記最新のデータとして、前記排気ファンを連続稼働させて前記差圧計で取得された実際の圧力差を用いるとさらに好適である。
【0012】
これら風力発電用風車によれば、フィルターの目詰まりを正確に把握することができ、ナセルの内部に収容された発熱機器を常に適正に冷却することができる。
【0013】
上記風力発電用風車において、前記最新のデータの取得が、カットイン風速を下回る風速下で行われるように設定されているとさらに好適である。
【0014】
このような風力発電用風車によれば、発電を行わないカットイン風速を下回る風速下でデータの取得が行われることになるので、発電効率の低下を回避することができ、発電機を最大限稼働させることができる。
【0015】
上記風力発電用風車において、前記最新のデータの取得が、日射の影響を受けない夜間および/または気温の変化の小さい、気温が安定した時間帯に行われるように設定されているとさらに好適である。
【0016】
このような風力発電用風車によれば、日射による影響や気温の変化による影響が排除されることになるので、より正確なデータを収集することができて、フィルターの目詰まりをより正確に把握することができる。
【0017】
本発明に係る風力発電用風車は、基礎上に立設される支柱と、この支柱の上端に設置され、その内部に発熱機器を収容したナセルと、略水平な軸線周りに回転可能にして前記ナセルに軸支されるローターヘッドとを備え、前記ナセルのカバーに設けられた吸気口を介して前記ナセルの内部に取り入れられ、前記発熱機器を冷却した外気を、前記ナセルのカバーに設けられた排気口およびこの排気口の上流側近傍に配置された排気ファンを介して排出する風力発電用風車であって、前記排気ファンの稼働率が予め設定した閾値を超えた場合に、前記フィルターが目詰まりしている、または前記フィルターが目詰まりしかかっていると判断する制御装置を備えている。
【0018】
本発明に係る風力発電用風車によれば、フィルターの目詰まりを正確に把握することができ、ナセルの内部に収容された発熱機器を常に適正に冷却することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る風力発電用風車によれば、フィルターの目詰まりを正確に把握することができ、ナセルの内部に収容された発熱機器を常に適正に冷却することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態に係る風力発電用風車を示す側面図である。
【図2】図1に示すナセルの内部を簡略化して示した断面図である。
【図3】本発明に係る風力発電用風車が具備する制御装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【図4】本発明の第2実施形態に係る風力発電用風車のナセルの内部を簡略化して示した断面図である。
【図5】本発明の第3実施形態に係る風力発電用風車のナセルの内部を簡略化して示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る風力発電用風車の第1実施形態について、図1から図3を参照しながら説明する。
図1は本実施形態に係る風力発電用風車を示す側面図、図2は図1に示すナセルの内部を簡略化して示した断面図、図3は本発明に係る風力発電用風車が具備する制御装置の動作を説明するためのフローチャートである。
なお、図面の簡略化を図るため、図3には、本発明に直接関係する構成要素のみを示している。
【0022】
図1に示すように、風力発電用風車1は、基礎B上に立設される支柱(「タワー」ともいう。)2と、支柱2の上端に設置されるナセル3と、略水平な軸線周りに回転可能にしてナセル3に設けられるローターヘッド4とを有している。
ローターヘッド4には、その回転軸線周りに放射状にして複数枚(例えば、3枚)の風車回転翼5が取り付けられている。これにより、ローターヘッド4の回転軸線方向から風車回転翼5に当たった風の力が、ローターヘッド4を回転軸線周りに回転させる動力に変換されるようになっている。
【0023】
支柱2は、複数個(例えば、3個)のユニット(図示せず)を上下に連結した構成とされている。
また、ナセル3は、支柱2を構成するユニットのうち、最上部に設けられるユニット上に設置されており、支柱2の上端に取り付けられるナセル台板(図示せず)と、このナセル台板を上方から覆うカバー6とを有している。
【0024】
図2に示すように、ナセル3の内部には、(第1の)排気ファン11、潤滑油冷却器(熱交換器)12、(第2の)排気ファン13、フィルター14が設けられている。
排気ファン11および潤滑油冷却器12は、カバー6の頂部に設けられて、ナセル3の背面(ローターヘッド4と対向する正面6aと反対側の面)6bに向かって開口する排気通路15内に設けられており、排気ファン11によって送出されたナセル3の内部空気は、潤滑油冷却器12で熱交換された(潤滑油冷却器12の内部を通過する潤滑油から熱を奪い去った)後、排気通路15の出口((第1の)排気口)15aからナセル3の外部に排出される。
【0025】
潤滑油冷却器12の内部には、ローターヘッド4に接続(連結)された回転軸(図示せず)の回転を発電機(図示せず)に伝達する増速機(図示せず)や、ローターヘッド4に接続(連結)された回転軸を軸受け支持する軸受(図示せず)等に供給されて暖められた(増速機や軸受等から熱を奪い去った)潤滑油が通過するようになっている。そして、潤滑油冷却器12で冷やされた(排気ファン11によって送出されたナセル3の内部空気により熱が奪い去られた)潤滑油は、増速機や軸受等に再び供給され(戻され)、増速機や軸受等を冷却するようになっている。
【0026】
排気ファン13は、カバー6の背面6bに設けられて開口する(第2の)排気口16の上流側近傍に設けられており、排気ファン13によって送出されたナセル3の内部空気は、排気口16からもナセル3の外部に排出される。
フィルター14は、ナセル3の内部に取り込まれる外気(ナセル3の外部空気)中から粉塵、雨水、雪粒子、塩粒子等の不純物を取り除くものであって、正面6aの下端部に設けられて開口する吸気口17の下流側近傍に設けられている。そして、吸気口17およびフィルター14からは、排気口15a,16を介して排出されたナセル3の内部空気を補うようにして、外気がナセル3の内部に流入し、ナセル3の内部に配置(収容)された図示しない発熱機器(ドライブトレイン、発電機、制御装置等)が、吸気口17およびフィルター14を介してナセル3の内部に取り込まれた外気により冷却されるようになっている。
【0027】
さて、ナセル3の内部に配置された制御装置では、図3に示すフローチャートに従って、フィルター14の目詰まりが監視(モニタリング)されることになる。
すなわち、前回の監視(計測)を終えた時点から所定時間(例えば、2週間または1ヶ月)経過したか否かを判断し、所定時間経過している場合には次のステップに進んで、環境条件が満たされているか否か、言い換えれば、ナセル3の外部の風速が微風(カットイン風速(発電を開始する風速(例えば、3m/s))を下回る風速(例えば、1m/s))になっているか否かを判断し、環境条件が満たされていれば、次のステップに進む。一方、環境条件が満たされていない場合には、環境条件が満たされるのを待って次のステップに進むことになる。
環境条件が満たされたら(整ったら)テストモードに入り、ナセル3の内部に配置された冷却システム、すなわち、排気ファン11,13を連続稼働させる。
なお、テストモードでは、発電が停止され、パーキングブレーキが解放状態のまま維持されて、ローターヘッド4、風車回転翼5、およびドライブトレインが風まかせで回転するようになっている。
【0028】
テストモード中、環境条件が満たされているか否かを逐次判断し、環境条件が満たされている場合には、テストモードを継続し、必要なデータを得るのに必要な所定のテスト時間(例えば、10分)が経過したら、次のステップに進む。一方、テストモードの途中で環境条件が満たされなくなったら、すなわち、風速がカットイン風速以上になったら、テストモードを終了し、発電を開始(再開)する。そして、環境条件が満たされるのを待って、再度テストモードに入る。
ここで、本実施形態における必要なデータとは、冷却システムを連続稼働させる直前のナセル3の内部温度、および冷却システムを連続稼働させる直前のナセル3の内部温度からナセル3の内部温度が所定温度(例えば、5℃)下がるまでに要した稼働時間のことであり、これらデータは、制御装置内に蓄積(保存)される。
【0029】
テストモードが終了したら、データ1次分析モードに入る。このデータ1次分析モードでは、制御装置内に予め入力(保存)された基準となる基準値データと、今回新たに取得された最新のデータとの比較検討が制御装置により行われ、制御装置が「異常あり」、すなわち、フィルター14が目詰まりしている、またはフィルター14が目詰まりしかかっていると判断した場合には、制御装置がアラーム(警報)を発する。一方、制御装置が「異常なし」、すなわち、フィルター14が目詰まりしていない、またはフィルター14が目詰まりしかかっていないと判断した場合には、新たな所定時間(次の監視(計測)を始めるまでの所定時間)のカウントが始まる。
なお、本実施形態において、基準値データと、今回新たに取得された最新のデータとの比較検討は、制御装置内に予め入力(保存)された基準となる稼働時間(すなわち、フィルター14が目詰まりしている、またはフィルター14が目詰まりしかかっている状態で、冷却システムを連続稼働させる直前のナセル3の内部温度から、冷却システムを連続稼働させてナセル3の内部温度が所定温度(例えば、5℃)下がるまでに要するであろう稼働時間として設定(想定)された時間)と、今回新たに取得された稼働時間(すなわち、冷却システムを連続稼働させる直前のナセル3の内部温度から、冷却システムを連続稼働させてナセル3の内部温度が所定温度下がるまでに要した実際の稼働時間)とを比較して行われ、今回新たに取得された稼働時間が基準となる稼働時間を超えた場合、制御装置は「異常あり」と判断し、今回新たに取得された稼働時間が基準となる稼働時間以下の場合、制御装置は「異常なし」と判断する。
【0030】
制御装置で「異常あり」と判断された場合には、アラームとともに最新のデータが監視員のいる制御室(図示せず)に伝達(送信)され、監視員によってデータの2次分析が行われる。監視員によるデータの2次分析の結果、フィルター14が目詰まりしている、またはフィルター14が目詰まりしかかっていると監視員が判断した場合、すなわち、フィルター14の性能劣化が認められる場合には、当該フィルター14の点検メンテナンスが実施され、フィルター14が目詰まりしていない、またはフィルター14が目詰まりしかかっていないと監視員が判断した場合、すなわち、フィルター14の性能劣化が認められない場合には、制御室から風力発電用風車の制御装置に判断結果が伝達(送信)され、制御装置では新たな所定時間(次の監視(計測)を始めるまでの所定時間)のカウントが始まる。
【0031】
本実施形態に係る風力発電用風車1によれば、フィルター14の目詰まりを正確に把握することができ、ナセル3の内部に収容された発熱機器を常に適正に冷却することができる。
また、本実施形態に係る風力発電用風車1によれば、発電を行わないカットイン風速を下回る風速下でデータの取得が行われることになるので、発電効率の低下を回避することができ、発電機を最大限稼働させることができる。
【0032】
本発明に係る風力発電用風車の第2実施形態について、図4を参照しながら説明する。
図4は本実施形態に係る風力発電用風車のナセルの内部を簡略化して示した断面図である。
本実施形態に係る風力発電用風車21は、フィルター14の下流側近傍に風速計22が設けられているという点で上述した第1実施形態のものと異なる。その他の構成要素については上述した第1実施形態のものと同じであるので、ここではそれら構成要素についての説明は省略する。
なお、上述した実施形態と同一の部材には同一の符号を付している。
【0033】
図4に示すように、本実施形態では、フィルター14の下流側近傍に風速計22が設けられており、この風速計22により、フィルター14を介してナセル3の内部に流入した外気(ナセル3の外部空気)の風速(流速:風量)が測定(計測)されることになる。
【0034】
また、本実施形態では、冷却システムを連続稼働させる直前のナセル3の内部温度、および冷却システムを連続稼働させる直前のナセル3の内部温度からナセル3の内部温度が所定温度(例えば、5℃)下がるまでに要した稼働時間を測定する代わりに、風速計22により、フィルター14を介してナセル3の内部に流入した外気の風速が測定されることになる。
すなわち、本実施形態に係る制御装置では、前回の監視(計測)を終えた時点から所定時間(例えば、2週間または1ヶ月)経過したか否かを判断し、所定時間経過している場合には次のステップに進んで、環境条件が満たされているか否か、言い換えれば、風速が微風(カットイン風速(発電を開始する風速)を下回る風速(例えば、1m/s))になっているか否かを判断し、環境条件が満たされていれば、次のステップに進む。一方、環境条件が満たされていない場合には、環境条件が満たされるのを待って次のステップに進むことになる。
環境条件が満たされたら(整ったら)テストモードに入り、ナセル3の内部に配置された冷却システム、すなわち、排気ファン11,13を連続稼働させる。
なお、テストモードでは、発電が停止され、パーキングブレーキが解放状態のまま維持されて、ローターヘッド4、風車回転翼5、およびドライブトレインが風まかせで回転するようになっている。このとき、風速計22により測定されたデータは、制御装置に逐次出力(伝達)されるようになっている。
【0035】
テストモード中、環境条件が満たされているか否かを逐次判断し、環境条件が満たされている場合には、テストモードを継続し、必要なデータを得るのに必要な所定のテスト時間(例えば、10分)が経過したら、次のステップに進む。一方、テストモードの途中で環境条件が満たされなくなったら、すなわち、風速がカットイン風速以上になったら、テストモードを終了し、発電を開始(再開)する。そして、環境条件が満たされるのを待って、再度テストモードに入る。
ここで、本実施形態における必要なデータとは、風速計22により測定された風速のことであり、このデータは、制御装置内に蓄積(保存)される。
【0036】
テストモードが終了したら、データ1次分析モードに入る。このデータ1次分析モードでは、制御装置内に予め入力(保存)された基準となる基準値データと、今回新たに取得された最新のデータとの比較検討が制御装置により行われ、制御装置が「異常あり」、すなわち、フィルター14が目詰まりしている、またはフィルター14が目詰まりしかかっていると判断した場合には、制御装置がアラーム(警報)を発する。一方、制御装置が「異常なし」、すなわち、フィルター14が目詰まりしていない、またはフィルター14が目詰まりしかかっていないと判断した場合には、新たな所定時間(次の監視(計測)を始めるまでの所定時間)のカウントが始まる。
なお、本実施形態において、基準値データと、今回新たに取得された最新のデータとの比較検討は、制御装置内に予め入力(保存)された基準となる風速(すなわち、フィルター14が目詰まりしている、またはフィルター14が目詰まりしかかっている状態で測定されるであろう風速として設定(想定)された風速)と、冷却システムを連続稼働させて風速計で今回新たに取得された実際の風速とを比較して行われ、今回新たに取得された風速が基準となる風速以下の場合、制御装置は「異常あり」と判断し、今回新たに取得された風速が基準となる風速を上回る場合、制御装置は「異常なし」と判断する。
【0037】
制御装置で「異常あり」と判断された場合には、アラームとともに最新のデータが監視員のいる制御室(図示せず)に伝達(送信)され、監視員によってデータの2次分析が行われる。監視員によるデータの2次分析の結果、フィルター14が目詰まりしている、またはフィルター14が目詰まりしかかっていると監視員が判断した場合、すなわち、フィルター14の性能劣化が認められる場合には、当該フィルター14の点検メンテナンスが実施され、フィルター14が目詰まりしていない、またはフィルター14が目詰まりしかかっていないと監視員が判断した場合、すなわち、フィルター14の性能劣化が認められない場合には、制御室から風力発電用風車の制御装置に判断結果が伝達(送信)され、制御装置では新たなたな所定時間(次の監視(計測)を始めるまでの所定時間)のカウントが始まる。
【0038】
本実施形態に係る風力発電用風車21によれば、フィルター14の目詰まりを正確に把握することができ、ナセル3の内部に収容された発熱機器を常に適正に冷却することができる。
また、本実施形態に係る風力発電用風車21によれば、発電を行わないカットイン風速を下回る風速下でデータの取得が行われることになるので、発電効率の低下を回避することができ、発電機を最大限稼働させることができる。
【0039】
本発明に係る風力発電用風車の第3実施形態について、図5を参照しながら説明する。
図5は本実施形態に係る風力発電用風車のナセルの内部を簡略化して示した断面図である。
本実施形態に係る風力発電用風車31は、フィルター14の上流側近傍の圧力(静圧または動圧)と、フィルター14の下流側近傍の圧力(静圧または動圧)との差(すなわち、フィルター14前後の差圧)を測定(計測)する差圧計32が設けられているという点で上述した第1実施形態のものと異なる。その他の構成要素については上述した第1実施形態のものと同じであるので、ここではそれら構成要素についての説明は省略する。
なお、上述した実施形態と同一の部材には同一の符号を付している。
【0040】
図5に示すように、本実施形態では、フィルター14の上流側近傍の圧力と、フィルター14の下流側近傍の圧力との差を測定する差圧計32が設けられており、この差圧計32により、フィルター14を通過する外気(ナセル3の外部空気)の風圧差(差圧、風量)が測定されることになる。
【0041】
また、本実施形態では、冷却システムを連続稼働させる直前のナセル3の内部温度、および冷却システムを連続稼働させる直前のナセル3の内部温度からナセル3の内部温度が所定温度(例えば、5℃)下がるまでに要した稼働時間を測定する代わりに、差圧計32により、フィルター14前後の風圧差が測定されることになる。
すなわち、本実施形態に係る制御装置では、前回の監視(計測)を終えた時点から所定時間(例えば、2週間または1ヶ月)経過したか否かを判断し、所定時間経過している場合には次のステップに進んで、環境条件が満たされているか否か、言い換えれば、風速が微風(カットイン風速(発電を開始する風速)を下回る風速(例えば、1m/s))になっているか否かを判断し、環境条件が満たされていれば、次のステップに進む。一方、環境条件が満たされていない場合には、環境条件が満たされるまで次のステップには進まず、環境条件が満たされるのを待つことになる。
環境条件が満たされたら(整ったら)テストモードに入り、ナセル3の内部に配置された冷却システム、すなわち、排気ファン11,13を連続稼働させる。
なお、テストモードでは、発電が停止され、パーキングブレーキが解放状態のまま維持されて、ローターヘッド4、風車回転翼5、およびドライブトレインが風まかせで回転するようになっている。このとき、差圧計32により測定されたデータは、制御装置に逐次出力(伝達)されるようになっている。
【0042】
テストモード中、環境条件が満たされているか否かを逐次判断し、環境条件が満たされている場合には、テストモードを継続し、必要なデータを得るのに必要な所定のテスト時間(例えば、10分)が経過したら、次のステップに進む。一方、テストモードの途中で環境条件が満たされなくなったら、すなわち、風速がカットイン風速以上になったら、テストモードを終了し、発電を開始(再開)する。そして、環境条件が満たされるのを待って、再度テストモードに入る。
ここで、本実施形態における必要なデータとは、差圧計32により測定されたフィルター14前後の差圧のことであり、このデータは、制御装置内に蓄積(保存)される。
【0043】
テストモードが終了したら、データ1次分析モードに入る。このデータ1次分析モードでは、制御装置内に予め入力(保存)された基準となる基準値データと、今回新たに取得された最新のデータとの比較検討が制御装置により行われ、制御装置が「異常あり」、すなわち、フィルター14が目詰まりしている、またはフィルター14が目詰まりしかかっていると判断した場合には、制御装置がアラーム(警報)を発する。一方、制御装置が「異常なし」、すなわち、フィルター14が目詰まりしていない、またはフィルター14が目詰まりしかかっていないと判断した場合には、新たな所定時間(次の監視(計測)を始めるまでの所定時間)のカウントが始まる。
なお、本実施形態において、基準値データと、今回新たに取得された最新のデータとの比較検討は、制御装置内に予め入力(保存)された基準となる風圧差(すなわち、フィルター14が目詰まりしている、またはフィルター14が目詰まりしかかっている状態で測定されるであろう風圧差として設定(想定)された風圧差と、今回新たに取得された風圧差とを比較して行われ、今回新たに取得された風圧差が基準となる差圧を上回る場合、制御装置は「異常あり」と判断し、今回新たに取得された差圧が基準となる差圧以下の場合、制御装置は「異常なし」と判断する。
【0044】
制御装置で「異常あり」と判断された場合には、アラームとともに最新のデータが監視員のいる制御室(図示せず)に伝達(送信)され、監視員によってデータの2次分析が行われる。監視員によるデータの2次分析の結果、フィルター14が目詰まりしている、またはフィルター14が目詰まりしかかっていると監視員が判断した場合、すなわち、フィルター14の性能劣化が認められる場合には、当該フィルター14の点検メンテナンスが実施され、フィルター14が目詰まりしていない、またはフィルター14が目詰まりしかかっていないと監視員が判断した場合、すなわち、フィルター14の性能劣化が認められない場合には、制御室から風力発電用風車の制御装置に判断結果が伝達(送信)され、制御装置では新たな所定時間(次の監視(計測)を始めるまでの所定時間)のカウントが始まる。
【0045】
本実施形態に係る風力発電用風車31によれば、フィルター14の目詰まりを正確に把握することができ、ナセル3の内部に収容された発熱機器を常に適正に冷却することができる。
また、本実施形態に係る風力発電用風車1によれば、発電を行わないカットイン風速を下回る風速下でデータの取得が行われることになるので、発電効率の低下を回避することができ、発電機を最大限稼働させることができる。
【0046】
なお、上述した実施形態における環境条件に、日射の影響を受けない夜間に限定するといった条件および/または気温の変化の小さい、気温が安定した時間帯に限定するといった条件が加えられるとさらに好適である。
これにより、日射による影響や気温の変化による影響が排除されることになるので、より正確なデータを収集することができて、フィルター14の点検メンテナンスの時期をより正確に把握することができる。
【0047】
また、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で適宜必要に応じて変形実施および変更実施することができる。
例えば、上述した第1実施形態と第2実施形態、第1実施形態と第3実施形態、第2実施形態と第3実施形態、第1実施形態と第2実施形態と第3実施形態とを組み合わせて実施することもできる。
これにより、より多くのデータが収集され、これらのデータに基づいてフィルター14の目詰まりが判断されることになるので、フィルター14の点検メンテナンスの時期をより正確に把握することができる。
【0048】
また、上述した実施形態の他、通常常に監視(モニタリング)されている冷却システムの稼働率、すなわち、排気ファン11,13の稼働率に基づいてフィルター14の目詰まりを判断することもできる。すなわち、稼働率が予め設定(想定)した閾値を超えた場合には、「異常あり」、すなわち、フィルター14が目詰まりしている、またはフィルター14が目詰まりしかかっていると判断し、稼働率が予め設定(想定)した閾値以下の場合には、「異常なし」、すなわち、フィルター14が目詰まりしていない、またはフィルター14が目詰まりしかかっていないと判断することもできる。
この場合、稼働率を測定(計測)するためのセンサ等を追加する必要がなく、コスト面で最も有利な手法である。
【0049】
さらに、上述した実施形態では、風速が微風のときにテストモードに入るように設定されていたが、風速が略安定(略一定)している状態であれば、カットイン風速以上のときにテストモードに入るように設定することもできる。
【0050】
さらにまた、複数の風力発電用風車が設置されたウィンドファームでは、その中の少なくとも1台の風力発電用風車におけるフィルター14の目詰まりを監視し、その結果をその他の風力発電用風車に反映させればよく、すべての風力発電用風車におけるフィルター14の目詰まりを監視する必要はない。
【0051】
さらにまた、上述した実施形態では、ナセル3の内部に収容された制御装置でデータの1次分析が行われるようになっているが、この制御装置を監視員のいる制御室に配置し、ナセル3内に配置された各センサ(温度センサ(図示せず)、風速計22、差圧計32等)から制御装置に送られてきたデータに基づいて、データの1次分析を行うようにすることもできる。
【0052】
さらにまた、上述した第1実施形態では、冷却システムを連続稼働させる直前のナセル3の内部温度、および冷却システムを連続稼働させる直前のナセル3の内部温度からナセル3の内部温度が所定温度(例えば、5℃)下がるまでに要した稼働時間を測定したが、その代わりに、冷却システムを一定時間連続稼働させる直前のナセル3の内部温度と、冷却システムを一定時間連続稼働させた直後のナセル3の内部温度と差として得られた温度変化量を用いるようにしてもよい。
【0053】
さらにまた、上述した第2実施形態では、フィルター14の下流側近傍に風速計22を設けるようにしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、ナセル3内の空気の流路上で、その流路を通過する空気の流速を測定できる場所であれば、いかなる場所であってもよい。
【0054】
さらにまた、上述した第3実施形態では、フィルター14の上流側近傍の圧力と、フィルター14の下流側近傍の圧力との差を測定する差圧計32を設けるようにしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、ナセル3内の空気の流路上で、その流路の上流側における圧力と、その流路の下流側における圧力との差を測定する差圧計を設けるようにすることもできる。
【符号の説明】
【0055】
1 風力発電用風車
2 支柱
3 ナセル
4 ローターヘッド
6 カバー
11 排気ファン
13 排気ファン
14 フィルター
15a 排気口
16 排気口
17 吸気口
21 風力発電用風車
22 風速計
31 風力発電用風車
32 差圧計
B 基礎


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎上に立設される支柱と、この支柱の上端に設置され、その内部に発熱機器を収容したナセルと、略水平な軸線周りに回転可能にして前記ナセルに軸支されるローターヘッドとを備え、
前記ナセルのカバーに設けられた吸気口を介して前記ナセルの内部に取り入れられ、前記発熱機器を冷却した外気を、前記ナセルのカバーに設けられた排気口およびこの排気口の上流側近傍に配置された排気ファンを介して排出する風力発電用風車であって、
予め入力された基準となる基準値データと、風車外部の風速が略安定している状態で取得された最新のデータとを比較検討し、フィルターが目詰まりしている、または前記フィルターが目詰まりしかかっていることを判断する制御装置を備えていることを特徴とする風力発電用風車。
【請求項2】
前記基準値データとして、前記フィルターが目詰まりしている、または前記フィルターが目詰まりしかかっている状態で、前記排気ファンを連続稼働させる直前の前記ナセルの内部温度から、前記排気ファンを連続稼働させて前記ナセルの内部温度が所定温度下がるまでに要するであろう稼働時間として設定された時間を用い、
前記最新のデータとして、前記排気ファンを連続稼働させる直前の前記ナセルの内部温度から、前記排気ファンを連続稼働させて前記ナセルの内部温度が所定温度下がるまでに要した実際の稼働時間を用いるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の風力発電用風車。
【請求項3】
前記基準値データとして、前記フィルターが目詰まりしている、または前記フィルターが目詰まりしかかっている状態で、前記排気ファンを一定時間連続稼働させたときに得られるであろう、前記排気ファンを一定時間連続稼働させる直前の前記ナセルの内部温度と、前記排気ファンを一定時間連続稼働させた直後の前記ナセルの内部温度との差として設定された温度変化量を用い、
前記最新のデータとして、前記排気ファンを一定時間連続稼働させる直前の前記ナセルの内部温度と、前記排気ファンを一定時間連続稼働させた直後の前記ナセルの内部温度との実際の差として得られた実際の温度変化量を用いるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の風力発電用風車。
【請求項4】
前記フィルターの下流側近傍もしくは前記ナセル内の空気の流路上に風速計が配置されており、
前記基準値データとして、前記フィルターが目詰まりしている、または前記フィルターが目詰まりしかかっている状態で測定されるであろう風速として設定された風速を用い、
前記最新のデータとして、前記排気ファンを連続稼働させて前記風速計で取得された実際の風速を用いるようにしたことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の風力発電用風車。
【請求項5】
前記フィルターの上流側近傍の圧力と、前記フィルターの下流側近傍の圧力との差を測定する差圧計もしくは前記ナセル内の空気の流路上の、上流側における圧力と、下流側における圧力との差を測定する差圧計が配置されており、
前記基準値データとして、前記フィルターが目詰まりしている、または前記フィルターが目詰まりしかかっている状態で測定されるであろう圧力差として設定された圧力差を用い、
前記最新のデータとして、前記排気ファンを連続稼働させて前記差圧計で取得された実際の圧力差を用いるようにしたことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の風力発電用風車。
【請求項6】
前記最新のデータの取得が、カットイン風速を下回る風速下で行われるように設定されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の風力発電用風車。
【請求項7】
前記最新のデータの取得が、日射の影響を受けない夜間および/または気温の変化の小さい、気温が安定した時間帯に行われるように設定されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の風力発電用風車。
【請求項8】
基礎上に立設される支柱と、この支柱の上端に設置され、その内部に発熱機器を収容したナセルと、略水平な軸線周りに回転可能にして前記ナセルに軸支されるローターヘッドとを備え、
前記ナセルのカバーに設けられた吸気口を介して前記ナセルの内部に取り入れられ、前記発熱機器を冷却した外気を、前記ナセルのカバーに設けられた排気口およびこの排気口の上流側近傍に配置された排気ファンを介して排出する風力発電用風車であって、
前記排気ファンの稼働率が予め設定した閾値を超えた場合に、前記フィルターが目詰まりしている、または前記フィルターが目詰まりしかかっていると判断する制御装置を備えていることを特徴とする風力発電用風車。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−47359(P2011−47359A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−198262(P2009−198262)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】