説明

風力発電装置

【課題】交流発電機に流れる電流の高調波成分を低減する。
【解決手段】風がふいて風車2が回転すると、風車2に接続された交流発電機3が回転し、交流電圧を出力する(交流電力を生成する)。ダイオード整流回路4及びコンデンサ5は、交流発電機3により出力された交流電圧を平滑化された直流電圧に変換し(直流電力に変換し)、電力変換回路7に出力する。このとき、リアクトル6は、ダイオード整流回路4、コンデンサ5及び交流発電機3に流れる電流に急激な変化が生じて高調波成分を含む電流が流れるのを抑制する。これにより、交流発電機3に発生するトルクリップルが小さくなり、交流発電機3に接続された風車2に振動が発生するのが防止される。電力変換回路7は、入力された直流電圧を所望の直流電圧に変換してバッテリーや電力系統などに出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風車の回転により発電を行う風力発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
風車の回転により発電を行う風力発電装置において、風車の回転により交流発電機を回転させて交流出力を生成し、生成された交流出力を整流手段により直流電力に変換して出力するものがある。例えば、特許文献1に記載の風力発電装置においては、風車の回転により同期発電機(交流発電機)が交流電力(交流電圧)を生成する。生成された交流電力は、ダイオード整流回路(整流手段)により直流電力(直流電圧)に変換される。このとき、ダイオード整流回路に並列に直流コンデンサが接続されているため、ダイオード整流回路に入力された電圧の絶対値が直流コンデンサの両端の電圧よりも低い場合には、直流コンデンサの両端の電圧が出力され、同期発電機が生成した交流によってダイオード整流回路に入力された電圧の絶対値が直流コンデンサの両端の電圧よりも高い場合には、電圧値がダイオード整流回路に入力された電圧の絶対値である電圧が出力される。これにより平滑化された直流電圧がDC/DCコンバータに入力される。
【0003】
【特許文献1】特開2003−259693号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の風力発電装置では、ダイオード整流回路に入力される電圧の絶対値が、直流コンデンサの両端の電圧よりも低い場合には、ダイオード整流回路の全てのダイオードに逆電圧がかかることになりダイオード整流回路には電流が流れない。一方、ダイオード整流回路に入力される電圧の絶対値が、直流コンデンサの両端の電圧よりも高い場合には、ダイオード整流回路に電流が流れ、ダイオード整流回路を介して同期発電機と直流コンデンサとの間にも電流が流れる。このため、ダイオード整流回路に入力される電圧の絶対値が直流コンデンサの両端の電圧よりも低い状態から直流コンデンサの両端の電圧よりも高い状態に切り替わる際に、ダイオード整流回路に電流が流れない状態から電流が流れる状態に切り替わることになり、ダイオード整流回路に接続された同期発電機及び直流コンデンサに流れる電流に急激な変化が生じる。この急激な電流の変化により、電流に高調波成分が含まれることになり、この電流の高調波成分により、同期発電機に発生するトルクリップルが大きくなり、同期発電機に接続された風車に振動が生じてしまう。
【0005】
本発明の目的は、風力発電装置において、交流発電機に流れる電流に含まれる高調波成分により交流発電機に発生するトルクリップルが大きくなるのを防止し、交流発電機に接続された風車において発生する振動を抑制することである。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0006】
本発明の風力発電装置は、鉛直方向に延びた回転軸を中心として回転する風車と、風車が回転したときに交流出力を生成する発電機と、発電機が生成した交流出力を整流し、直流を生成する整流手段と、整流手段で生成した直流の電圧変動を平滑化する平滑手段と、発電機に流れる電流が高い周波数成分を有している場合ほど、電流の流れを大きく抑制するように動作する電流抑制手段とを備えている。
【0007】
これによると、整流手段及び平滑手段により平滑化された直流を出力する際に急激な電流の変化が発生し、発電機に高調波成分を含む電流が流れるのを、電流抑制手段により抑制することができる。これにより、発電機に発生するトルクリップルが小さくなり、発電機に接続された風車の回転軸の振動を抑制することができる。
【0008】
また、本発明の風力発電装置においては、整流手段が全波整流回路であり、平滑手段がコンデンサであり、電流抑制手段が、全波整流回路とコンデンサとの間に直列に接続されたリアクトルであってもよい。これによると、全波整流回路及びコンデンサにより平滑化された直流を出力する際に、全波整流回路及び全波整流回路に接続された発電機に流れる電流が急激に変化し、高調波成分を含む電流が流れるのを、全波整流回路とコンデンサとの間に接続されたリアクトルにより抑制することができる。これにより、発電機に発生するトルクリップルが小さくなり、発電機に接続された風車の回転軸の振動が抑制される。
【0009】
また、本発明の風力発電装置においては、整流手段が、全波整流回路であり、電流抑制手段が、発電機と全波整流回路との間に直列に接続されたリアクトルであってもよい。これによると、全波整流回路及び平滑手段により平滑化された直流を出力する際に、全波整流回路及び全波整流回路に接続された発電機に流れる電流が急激に変化し、高調波成分を含む電流が流れるのを、発電機と全波整流回路との間に接続されたリアクトルにより抑制することができる。これにより、発電機に発生するトルクリップルが小さくなり、発電機に接続された風車の回転軸の振動が抑制される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0011】
図1は、本発明における実施の形態に係る風力発電装置の構成の概略を示す図である。図1に示すように、風力発電装置1は、風車2、交流発電機3、ダイオード整流回路4、コンデンサ5、リアクトル6及び電力変換回路7を有する。
【0012】
風車2は、鉛直方向に延びた回転軸2aを中心として回転する垂直型の風車であり、風を受けて回転することにより交流発電機3を回転させる。交流発電機3は、風車2の回転に伴って回転することにより交流電圧を出力する(交流電力を生成する)。ダイオード整流回路4は、複数のダイオードを有し、交流発電機3から出力された交流電圧を直流電圧に変換する(直流電力に変換する)全波整流回路である。具体的には、例えば、交流発電機3が三相交流発電機の場合には三相全波整流ブリッジ回路などである。コンデンサ5は、ダイオード整流回路4に並列に接続されている。そして、ダイオード整流回路4とコンデンサ5とにより、交流発電機3から出力された交流電圧を平滑化された直流電圧に変換して出力する。
【0013】
ここで、ダイオード整流回路4及びコンデンサ5による整流作用について詳細に説明する。以下では、説明を簡略化するため、交流発電機3から一相の交流電圧が出力されているとして説明する。コンデンサ5は予め充電されており、コンデンサ5の両端にはダイオード整流回路4に入力される電圧の最大値とほぼ同じ電圧値を有する電圧が印加されている。この状態でダイオード整流回路4に図2(a)に示すような交流電圧が入力されると、ダイオード整流回路4にコンデンサ5が接続されていない場合、図2(b)に示すように、入力される交流電圧が0(V)以上の場合にはそのままの電圧が出力され、入力される交流電圧が0(V)未満の場合にはその電圧値が反転した電圧が出力される。しかし、ダイオード整流回路4には、コンデンサ5が接続されているため、入力される交流電圧の絶対値がコンデンサ5の両端に印加されている電圧よりも小さい場合には、ダイオード整流回路4に含まれる全てのダイオードに逆電圧が印加されることになるため、ダイオード整流回路4とコンデンサ5との間には電流が流れず、電力変換回路7には、コンデンサ5の電圧が出力される。このとき、コンデンサ5の電圧は、コンデンサ5から電力変換回路7に電流が流れることにより低下する。
【0014】
そして、ダイオード整流回路4に入力される交流電圧がコンデンサ5の電圧よりも大きくなると、ダイオード整流回路4に電流が流れ始め、電力変換回路7には、ダイオード整流回路4に入力された電圧の絶対値とほぼ同じ電圧値を有する電圧が出力される。このとき、ダイオード整流回路4からの出力により、コンデンサ5は再び充電され、ダイオード整流回路4に入力される電圧が変化してコンデンサ5の電圧よりも小さくなると、前述と同様、電力変換回路7にはコンデンサ5の電圧が出力され、以下同様の動作が繰り返される。このようにして、ダイオード整流回路4及びコンデンサ5により交流発電機3から出力された交流電圧を図2(c)に示すような平滑化された直流電圧に変換し、電力変換回路7に出力することができる。以上では、交流発電機3からの出力が一相の交流電圧である場合について説明したが、交流発電機3から多相交流電圧が出力されている場合には、多相のうち、最も電圧の高いものの絶対値がコンデンサ5の電圧よりも高くなったときには、電圧値がその相の電圧の絶対値である電圧が出力され、全相の電圧の絶対値がコンデンサ5の電圧よりも低いときには、コンデンサ5の電圧が出力される。
【0015】
リアクトル6は、ダイオード整流回路4とコンデンサ5との間に流れる電流の高調波成分を低減する。具体的には、リアクトル6は両端に流れる電流の変化が急峻である、つまり、両端に流れる電流が高い周波数成分を有しているときほど、その電流の流れを大きく妨げるように誘導電流を発生させる特性を有している。そして、前述の方法で、交流発電機3から出力された交流電圧を直流電圧に変換すると、ダイオード整流回路4に入力される電圧の絶対値がコンデンサ5の電圧よりも低い状態からコンデンサ5の電圧よりも高い状態に切り替わり、ダイオード整流回路4、コンデンサ5及び交流発電機3に電流が流れ始めるときに、急激な電流の変化が生じる。交流発電機3にこのような急激な電流の変化が生じたときには、この電流に高調波成分が含まれることになり、この電流の高調波成分により交流発電機3に発生するトルクリップルが大きくなる。トルクリップルとは、トルクの変動幅のことであり、トルクリップルが大きくなると、交流発電機3に発生するトルクの変化が大きくなり、交流発電機3に接続された風車2が振動してしまう。しかし、本実施の形態においては、リアクトル6により電流の高調波成分が低減されるため、トルクリップルを小さくすることができ、風車2の振動が抑制される。
【0016】
電力変換回路7は、例えばDC/DCコンバータのような平滑化された直流電圧の大きさを変化させる回路であり、入力された直流電圧を所望の直流電圧に変換して出力する。
【0017】
次に、風力発電装置1における発電の動作について説明する。風力発電装置1においては、まず、風車2周辺に発生した風により風車2が回転軸2aを中心として回転することによって風車2に接続された交流発電機3が回転して交流電圧を生成し、交流発電機3により生成された交流電圧がダイオード整流回路4に出力される。
【0018】
ダイオード整流回路4に入力された交流は、ダイオード整流回路4及びダイオード整流回路4に接続されたコンデンサ5により前述のように平滑化された直流に変換され、電力変換回路7に出力される。このとき、ダイオード整流回路4とコンデンサ5との間に接続されたリアクトル6により、ダイオード整流回路4、コンデンサ5及びダイオード整流回路4に接続された交流発電機3に流れる電流に急激な変化が生じるのが防止される。つまり、電流に含まれる高調波成分が低減される。
【0019】
そして、電力変換回路7に入力された直流電圧は、電力変換回路7において所望の直流電圧に変換され、バッテリーなどのエネルギー蓄積要素、電力系統に出力される。
【0020】
以上に説明した実施の形態によると、ダイオード整流回路4及びコンデンサ5により平滑化された直流電圧を出力する際に、ダイオード整流回路4及びダイオード整流回路4に接続された交流発電機3に流れる電流の高調波成分を、ダイオード整流回路4とコンデンサ5との間に接続されたリアクトル6により低減することができる。これにより、交流発電機3に発生するトルクリップルが小さくなり、交流発電機3に接続された風車2の振動が抑制される。
【0021】
次に、本実施の形態に種々の変更を加えた変形例について説明する。但し本実施の形態と同様の構成を有するものについては同じ符号を付し、適宜その説明を省略する。
【0022】
図3に示すように、交流発電機3とダイオード整流回路4との間にリアクトル16を接続してもよい(変形例1)。この場合でも、ダイオード整流回路4及びコンデンサ5により交流を平滑化した直流に変換する際に交流発電機3に流れる電流に急激な変化が生じるのをリアクトル16により防止することができるので、交流発電機3に流れる電流の高調波成分により交流発電機3に発生するトルクリップルが小さくなり、風車2の振動を抑制することができる。なお、交流発電機3が三相交流発電機のような多相の交流発電機の場合には、交流発電機3の各相とダイオード整流回路4との間にそれぞれリアクトル16を接続すればよい。
【0023】
ダイオード整流回路は、全波整流回路には限られず、例えば半波整流回路などであってもよい。この場合でも、交流発電機3から出力された交流出力をダイオード整流回路とコンデンサ5とにより平滑化された直流に変換することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明における実施の形態に係る風力発電装置の概略構成図である。
【図2】(a)は図1の交流発電機から出力される交流電圧の波形を示す図であり、(b)は図1のコンデンサがない場合に電力変換回路に入力される電圧の波形を示す図であり、(c)は図1の電力変換回路に実際に入力される電圧の波形を示す図である。
【図3】変形例1の図1相当の概略構成図である。
【符号の説明】
【0025】
1 風力発電装置
2 風車
3 交流発電機
4 ダイオード整流回路
5 コンデンサ
6 リアクトル
16 リアクトル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直方向に延びた回転軸を中心として回転する風車と、
前記風車が回転したときに交流出力を生成する発電機と、
前記発電機が生成した交流出力を整流し、直流を生成する整流手段と、
前記整流回路で生成される直流の電圧変動を平滑化する平滑手段と
前記発電機に流れる電流が高い周波数成分を有している場合ほど、前記電流の流れを大きく抑制するように動作する電流抑制手段とを備えていることを特徴とする風力発電装置。
【請求項2】
前記整流手段は、全波整流回路であり、
前記平滑手段がコンデンサであり、
前記電流抑制手段が、前記全波整流回路と前記コンデンサとの間に直列に接続されたリアクトルであることを特徴とする請求項1に記載の風力発電装置。
【請求項3】
前記整流手段が、全波整流回路であり、
前記電流抑制手段が、前記発電機と前記全波整流回路との間に直列に接続されたリアクトルであることを特徴とする請求項1に記載の風力発電装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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