説明

風力発電設備の遠隔監視管理システム

【課題】複数の風力発電設備を管理する場合における設備の処分計画の策定と処分費用の最適化を目的とする。
【解決手段】複数の風力発電設備の監視制御装置、保守会社、リサイクル業者とネットワークを介して接続され、ネットワークを介して監視制御装置から得た風力発電設備の故障の情報と、ネットワークを介して保守会社から得た解体費用と輸送費用から求めた風車発電設備の解体にかかる処分費用の情報と、ネットワークを介してリサイクル業者から得た販売単価から求めた風車発電設備をリサイクルしたときの販売価格の情報とを記憶し、販売価格と処分費用の差から1台当りの損益を求め、その時系列推移から処分時期を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広域に分散して設置された風力発電設備の設備管理を集約して行う遠隔監視管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境意識の高まりと石油他エネルギー資源の価格高騰などから、風力発電設備の開発と普及が進んでいる。特に、風車利用の歴史が長い欧州と、環境投資を強力に推進している中国と米国の普及が著しい。
【0003】
風力発電は風をエネルギーとすること、回転体(プロペラ)が露出した構造であること、大型化が進んでいる事などから山間部や沿岸など人家から離れた場所に設置されることが多い。また、風力発電の発電量は一定でない事、一台当たりの発電量が少なく、分散して設置されているため保守員の駐在がコスト的に見合わないことなどから、発電設備の各々に監視装置を備えてインターネット等の広域ネットワーク経由でその運転状態を集約的に監視管理する手法が提案されている。
【0004】
特許文献1には、複数の風力発電設備の運転情報などを、通信ネットワークを介して取得し、取得した情報に基づいて風力発電設備の維持管理を行うシステムが開示されている。
【0005】
また、風力発電設備は自然力である風を利用しているために、思わぬ突風により破損する可能性がある。この場合に、山間部や沿岸など人家から離れた場所に設置された風力発電設備に保守員を派遣して修理などの対策を行なうが、場合によっては廃棄、リサイクルの方針を決定することもある。この点に関し、特許文献2には、風力発電設備について、設計当初から解体しやすい構造を念頭に設計を行い、リサイクルを行い易い構造としておくことについての開示がある。
【0006】
なお、資源の有効利用の観点から、家電製品の場合には、リサイクル活動の普及も進んでいる。日本では、家電リサイクル法(特定家庭用機器再商品化法)が施行され、家電メーカ、家電小売店、消費者間で家電製品をリサイクルするための仕掛けが運用されている。この点に関し、非特許文献1には、家庭用電化製品のリサイクルを行い、資源の有効利用を推進するための仕組みの記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−287453号公報
【特許文献2】特開2005−220715号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】家電リサイクル法(特定家庭用機器再商品化法)(日本国)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このように、風力発電設備については、設計当初からリサイクルを念頭に置いた構造や運用方法が提案され、家電製品を中心に物品のリサイクルに関する仕組みが多数公表されている。
【0010】
しかし、広範囲に多数設置された風力発電設備をリサイクルすることについて、実際に実行しようとすると、以下に示す課題がある。
【0011】
近年、発電効率を上げることを目的として、風力発電設備の大型化が進んでいる。例えば、現在において中型機に位置付けられている風車の仕様は、回転部(ローター)の直径が80m、支柱(タワー)の高さが60〜100mという、巨大建造物であり、今後ますます大型化する傾向にある。
【0012】
その結果、設置や解体には大型クレーンなどの重機の調達・準備が必要となり、簡単に解体作業が行える環境では無くなった。また、設置後に故障が起きた際に解体や修理を行う場合、エンジニアの移動費や滞在費を考慮すると、一台故障する度に解体や修理をすることは設備メーカと購入事業者のどちらが負担するにしても費用的に効率的とはいえない。
【0013】
このように、風力発電設備を数十台備えた発電サイト(ウィンドファーム)が一般には交通不便の遠隔の地にあり、1台あたりの発電出力が比較的に小さいことを考慮すると、故障の都度修理、リサイクルをすることが必ずしも得策とはいえず、纏めて行なったほうが良いと言う判断もあり得る。
【0014】
また、風力発電設備には大型の発電機(電動機)、増速機(ギヤボックス)、変圧器などが含まれている。これらの主成分は鉄と銅であり、リサイクルを選択した場合には売却する事になる。
【0015】
しかるに、H2品種の鉄スクラップ相場によれば、2008年の中ごろには鉄スクラップの価格が一トン辺り6万円台後半まで高騰したが、その後の世界同時不況の影響により、2008年の終わりには1万円台まで暴落するなど、昨今の資源相場の変動は非常に激しい。
【0016】
その結果、風力発電設備の解体と処分を行う時期の見極めを非常に難しくしている。
【0017】
さらに、風力発電設備の大量導入が始まったのは、西暦2000年以降のため、風力発電設備のリサイクルの運用はまだ途上の状態にある。
【0018】
本発明は、複数の風力発電設備を管理する場合における設備の処分計画の策定と処分費用の最適化を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成するために本発明の風力発電設備の遠隔監視管理システムは、複数の風力発電設備の監視制御装置とネットワークを介して接続され、複数の風力発電設備の運転状態と、故障した風車発電設備の解体にかかる処分費用の情報と、故障した風車発電設備をリサイクルしたときの販売価格についての情報を、ネットワークを介して入手し、販売価格と処分費用の差額から1台当りの損益を求めて記憶し、損益の時系列推移から処分時期を算出する。
【0020】
また、ネットワークを介して保守会社から解体費用と輸送費用を入手し、風車発電設備の解体にかかる処分費用の情報として記憶するのがよい。
【0021】
また、ネットワークを介してリサイクル業者から販売単価を入手し、風車発電設備をリサイクルしたときの販売価格の情報として記憶することを特徴とするのがよい。
【0022】
また、風力発電設備の処分費用における損益の時系列変化について、短期的な移動平均値と長期的な移動平均値の相対変化により処分時期を算出するのがよい。
【0023】
上記目的を達成するために本発明の風力発電設備の遠隔監視管理システムは、 複数の風力発電設備の監視制御装置、保守会社、リサイクル業者とネットワークを介して接続され、ネットワークを介して監視制御装置から得た風力発電設備の故障の情報と、ネットワークを介して保守会社から得た解体費用と輸送費用から求めた風車発電設備の解体にかかる処分費用の情報と、ネットワークを介してリサイクル業者から得た販売単価から求めた風車発電設備をリサイクルしたときの販売価格の情報とを記憶し、販売価格と処分費用の差から1台当りの損益を求め、その時系列推移から処分時期を算出する。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、複数の風力発電設備について、故障などにより解体処分の対象になった複数の設備の処分を、市場の相場に照らして適切と考えられる時期に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明のシステム構成例を示す説明図。
【図2】風力発電設備の外観を示した図。
【図3】風力発電設備の主要な構成機器と電気的接続を示した図。
【図4】各施設の配置の一例を示した図。
【図5】風力発電設備の解体処理の判定フローを示した図。
【図6】損益最大を判定する考え方の一例を示す図。
【図7】データベース格納内容を示す図。
【図8(a)】損益が右肩上がり時の判定を示す図。
【図8(b)】損益が変化しない場合の判定を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の一実施の形態を、図1〜図7を参照して説明する。
【実施例】
【0027】
図1は、本発明のシステム構成例を示している。本システムによれば、複数個所のウィンドファーム102が、広域ネットワーク1により接続されており、さらに広域ネットワーク1にはリサイクル業者103、保守会社104、電力会社105などが接続されている。また、広域ネットワーク1には遠隔監視センター101が接続され、種々の観点からウィンドファーム102の状況を監視している。
【0028】
このうち、ウィンドファーム102には、複数の風力発電設備2と、風力発電設備2ごとに設置され、その稼働状態を監視する監視制御装置3と、複数の監視制御装置3と通信装置5を中継するハブなどのネットワーク中継装置4とを備える。ルータ等の通信装置5は、監視制御装置3から得られた情報を、広域ネットワーク1経由で遠隔監視センター101に中継する。
【0029】
リサイクル業者103は、風力発電設備2を処分(購入)する場合の販売単価情報の入力を行うパソコンなどの入出力端末19と、広域ネットワーク1に接続するためのルータ等の通信装置18を備える。
【0030】
保守会社104には、風力発電設備2の解体費用と輸送費用の情報を入力するパソコンなどの入出力端末21と、広域ネットワーク1に接続するためのルータ等の通信装置20を備える。
【0031】
電力会社105には、処分指示情報の入力と解体処分の実施の判定結果を閲覧するパソコンなどの入出力端末23と、広域ネットワーク1に接続するためのルータ等の通信装置22を備える。
【0032】
遠隔監視センター101には、広域ネットワーク1と接続するルータ等の通信装置6と、サーバなどの処理装置7と、各種のデータベースと、データベースの情報を閲覧または編集する入出力端末8を備える。
【0033】
ここで、各種のデータベースとは、風力発電設備2の故障情報を格納する故障台数データベース9、時間経過の情報を格納する時間データベース10、保守会社104から情報が入力される解体費用データベース11及び輸送費用データベース12、リサイクル業者103から情報が入力される販売単価データベース14、電力会社105から情報が入力される処分指示データベース17、処理装置7が演算した結果を格納する処分経費データベース13及び販売価格データベース15及び損益データベース16などである。
【0034】
図2は、風力発電設備2の外観を示した図である。図2左が正面図、図2右が側面図である。風を受けるブレード(翼)201と、ブレード201を支えるロータヘッド202と、風力を電力に変換する発電機などが収納されているナセル203と、ナセル203を支えるタワー(支柱)204と、電力を商用の電力系統に接続するための変圧器盤205を備える。なお、風力発電設備には様々な形状が存在するが、近年は本図のような3枚羽の構造が主流となってきている。
【0035】
図3は、風力発電設備2の電気的接続を示した図である。ブレード(翼)201が風を受けて回転し、ナセル203に伝達する。ナセル203内では、まず増速機301により回転数を上昇し、回転する動力を発電機302が電力に変換し、電力変換装置303が電力の出力を一定に変換し、外部の変圧器盤205を経て電力系統304に電力を供給する。
【0036】
また、ナセル203内には図1に図示した監視制御装置3が設置されている。監視制御装置3は、増速機301と発電機302と電力変換装置303の運転状態の情報を、ネットワーク中継装置4と通信装置5と広域ネットワーク1を介して遠隔監視センター101に送信する。
【0037】
図4は、本実施形態における各施設の配置の一例を示した図である。遠隔監視センター101の所在は例えば日本にあり、リサイクル業者103と、保守会社104と、電力会社105と、複数の風力発電設備2を有するウィンドファーム102は米国に設置されている。この場合、風力発電設備2の解体処分に関して、解体と輸送は保守会社104が行い、解体した設備の買取りはリサイクル業者103が行う。また、電力会社105は風力発電設備2を所有し、必要に応じて電力会社105は処分の判断を行う。
【0038】
図5は、遠隔監視センター101における風力発電設備の解体処理の判定フローを示した図である。また、図7は図5のフロチャートの判断結果として各データベースに格納された情報を一覧にして示した図である。
まず、図5のステップS11において、遠隔監視センター101の処理装置7は、風力発電設備2を監視する監視制御装置3から、風力発電設備2の故障情報を、ネットワーク中継装置4と、通信装置5と、広域ネットワーク1と、通信装置6を介して取得し、故障台数を積算し、故障台数データベース9に格納する。
【0039】
つぎに、図5のステップS12において、サーバなどの処理装置7は、自身が持つ時間情報を時間データベース10に格納する。
【0040】
図7は、左側から順次、図5のデータベース番号DB、その項目、単位、処理内容を記述しており、データベース番号10には、時間データベース10の時間経過情報が記憶される。なおここでは、風力発電設備2を設置したときからの経過時間で記憶しているが、これは西暦年などの絶対時間で記憶してもよい。
【0041】
図7の表示例を、時間データベース10と、故障台数データベース9の関係を一例として説明すると、風力発電設備2を設置したときからの経過時間が1年目での故障台数が1台、3年目で2台、5年目で3台、9年目で4台というように増加したことを表している。なお、他のデータベースの内容も、上記と同じように時間経過と共に記憶されている。
【0042】
図5のステップS13とステップS14において、処理装置7は、保守会社104からの情報について処理を行なう。まず、入出力端末21と通信装置20を使用して処理装置7に連絡する故障台数に対する一括解体費用と一括輸送費用の情報を元に、故障台数データベース9に格納されている故障台数情報から、故障台数に対応する一括解体費用と一括輸送費用を導出し、解体費用データベース11と輸送費用データベース12に格納する。
【0043】
図7のデータベース11には合計の解体費用が記憶されるが、この金額はデータベース9の故障台数に依存し、故障台数が増えると単価が減少する関係にある。また、輸送費用データベース12には、輸送費用が記憶されるが、ここでは輸送費用は故障台数に比例するものとして計算される。
【0044】
図5のステップS15において、処理装置7は、解体費用データベース11と輸送費用データベース12から故障台数全数に対する一括解体費用と一括輸送費用を取得、加算し、処分経費として処分経費データベース13に格納する。
【0045】
図7のデータベース13に記憶された処分経費は、その算出根拠である一括解体費用と一括輸送費用が共に故障台数の増加に伴い増加する指標であるために、故障台数、従って経過時間と共に増加する傾向にある。以上のステップを通して算出した処分経費は、負担者が外部に支払うべき費用(損失)に関わるものである。
【0046】
これに対し、本実施例の図5の風力発電設備の解体処理の判定フローでは、次にリサイクルに伴う利益面を計算する。特に、利益最大となる時点を判断する。
【0047】
図5のステップS16において、処理装置7は、リサイクル業者103が入出力端末19と通信装置18を使用して処理装置7に連絡する風力発電設備に関するスクラップ相場(買い取り価格相場)情報を、販売単価データベース14に格納する。
【0048】
図7の事例では、当初のスクラップ相場が1台あたり200万円程度であったものが、時間の経過と共に増大する事例を示しており、9年目に400万円まで増大したところで、11年目に370万円に減少したとする。
【0049】
次に図5のステップS17において、処理装置7は、販売単価データベース14から風力発電設備に関する一台当りのスクラップ相場情報を取得、故障台数データベース9に格納されている故障台数情報から、故障した風力発電設備全数のスクラップ販売価格を算出し、販売価格データベース15に格納する。
【0050】
図7の事例では、スクラップ販売価格は、その算出根拠である故障台数(データベース9)も、またスクラップ相場(データベース14)もあるところまでは増大しているので、右肩上がりに増大する傾向を示す。このスクラップ販売価格が、外部から得る費用(利益)に関わる。
【0051】
次に図5のステップS18において、処理装置7は、販売価格データベース15に格納されている故障した風力発電設備全数のスクラップ販売価格から、処分経費データベース13に格納されている処分経費を差し引き、故障した風力発電設備全数の解体と輸送と販売による損益を導出し、故障台数データベース9に格納されている故障台数で割り、一台当り損益を導出し、損益データベース16に格納する。
【0052】
図7の事例では、損益データベース16には、全体損益と1台あたり損益が記憶されることになる。このうち、全体利益について検討すると、この事例では、利益(スクラップ販売価格15)が損益(処分経費)13を常に上回っているため9年目までは、右肩上がりに増大し続けている。また、一台当り損益も、同様である。
【0053】
以上述べたところの一連の処理により、一台当り損益がその時間経過と共にトレンドとして記憶されるが、本実施例ではこれらの推移をもとにして、次に売却タイミングを決定する。
【0054】
まず図5のステップS19において、処理装置7は、損益データベース16に格納されている損益情報と、時間データベース10に格納されている時間情報と、電力会社105が入出力端末23と通信装置22を使用し処理装置7を経由して処分指示データベース17に格納する指示情報を用いて、図6の判定条件に基づき判定を行う。
【0055】
ステップS19を実行するに当り、損益データベース16に格納されている損益情報と、時間データベース10に格納されている時間情報と、その傾向については図7を用いて既に説明したとおりである。
【0056】
そして次に、処分指示データベース17に格納する指示情報について検討すると、図7にこれを表示していないが、ここでは、電力会社からの処分指示(データベース17に格納する指示情報)は、何時でもよい(処分についての権限委譲)という前提であるものとする。
【0057】
また、図6の判定条件は後で纏めて説明する。
【0058】
係る前提において、ステップS20では、ステップS19の判定結果が是(YES)の場合、電力会社105に対し、通信装置22と入出力端末23を用いて、故障した風力発電設備の解体と輸送と売却(スクラップ処理)を行う判定結果を伝達する。
【0059】
次に、保守会社104に対し、通信装置20と入出力端末21を用いて、故障した風力発電設備全数の解体と輸送の依頼を実施する。
【0060】
次に、リサイクル業者103に対し、通信装置18と入出力端末19を用いて、故障した風力発電設備全数の買取り(スクラップ処理)の依頼を実施する。
【0061】
ステップS21において、処理装置7は、ステップS19の判定結果が否(NO)の場合、一定期間の待機処理(スタンバイディレイ)を行い、待機後、本フローを再度実施する。
【0062】
図6には、故障した複数の風力発電設備について、解体と輸送と売却(スクラップ処理)の実施の是非を判定する条件の例を示している。この図6の判断が、損益最大となるタイミングを決定するものである。
【0063】
ケース1には、風力発電設備の売却に関する一台当り損益の推移が上昇したのち、下落に転じた場合に是(売却)とする条件を示している。具体的には、一台当り損益の経過時間に対する推移について、過去3ヶ月間の移動平均値が、過去12ヶ月間の移動平均値を下回り、かつ過去36ヶ月間の移動平均値を上回る場合に、是とする。
【0064】
図8(a)は、損益が右肩上がりに上昇し続ける場合の3ヶ月、12ヶ月、36ヶ月の移動平均A3,A12,A36を示す。この場合には、右肩上がりなので移動平均の間にはA3≧A12≧A36の関係が成立する。従って損益が悪化して右肩上がりから右肩下がりに変化する最初の時点では、まず3ヶ月の移動平均A3が減少に転じ、次いで、12ヶ月、36ヶ月の移動平均A12,A36が順次減少に転ずる。
【0065】
このことから、図6ケース1の状態A12≧A3≧A36というのは、図8(a)の時刻t1からt2の期間であり、このときに売却すれば利益が最大のときに売り抜けられることを意味する。なお、以上の例で月数が任意に変更できることは言うまでもなく、設定期間については、実際の相場の推移を参考に設定される。
【0066】
図7の事例では、11年目に判定結果がNOからYESに変化しているが、これは1台あたりの損益が、その前まで右肩上がりに増大して最終的に353万円まで増大し続けてきたものが、11年目では323万円に減少したことを、ケース1で説明した条件で確認して、損益が減少し始めた今の時点なら損益が最大の状態で売り抜けられることを判断したものである。
【0067】
ケース2に、風力発電設備の売却に関する一台当り損益の推移Aが長期的に変化しない場合に、是とする条件を示している。具体的には、図10(b)に示すように、一台当り損益Aの経過時間に対する推移について、過去24ヶ月間の移動平均値A24に対する偏差が、プラスマイナス10%の場合に、是とする。この判断は、長期にわたり、損益に価格変動がないのであれば、いつ(今)売っても同じという判断である。
【0068】
ケース3に、風力発電設備の所有者の都合により処分する場合の条件を示している。具体的には、風力発電設備の所有者である電力会社105が、入出力端末23と通信装置22を用いて、遠隔監視センター1の処理装置7に処分指示情報を伝達し、処理装置7が処分指示情報を処分指示データベース17に格納している場合に、是とする。この場合の処分指示情報は、先に述べた「何時でもよい(処分についての権限委譲)」といった緩やかな条件ではなく、「いつまでに売却」といった、より明確な指示であることはいうまでもない。
【0069】
なお、図6の例では損益を監視しながら売却のタイミングを決定する事例を紹介したが、これ以外にも種々の判断手法を採用し得ることは言うまでもない。
【0070】
以上説明したように、本例では、複数の風力発電設備について、故障などにより解体処分の対象になった複数の設備の処分を、市場の相場に照らして適切と考えられる時期に設定することができる。
【0071】
本実施例では、風車発電設備が故障し、リサイクルを行なうに当り、1台ごとにリサイクルするのではなく、複数同時にリサイクルする前提で待機し、その間解体に要する費用と、リサイクルによる収益との差額の変動を監視しながら最適な処理タイミングを決定することでコストミニマムを達成しいている。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明によれば、風車発電機のリサイクルが適切な時期に、コストミニマムで実行できるので、広く適用することができる。
【符号の説明】
【0073】
1…広域ネットワーク
2…風力発電設備
3…監視制御装置
4…ネットワーク中継装置
5…通信装置
6…通信装置
7…処理装置
8…入出力端末
9…故障台数データベース
10…時間データベース
11…解体費用データベース
12…輸送費用データベース
13…処分経費データベース
14…販売単価データベース
15…販売価格データベース
16…損益データベース
17…処分指示データベース
18…通信装置
19…入出力端末
20…通信装置
21…入出力端末
22…通信装置
23…入出力端末
101…遠隔監視センター
102…ウィンドファーム
103…リサイクル業者
104…保守会社
105…電力会社
201…ブレード(翼)
202…ロータヘッド
203…ナセル
204…タワー(支柱)
205…変圧器盤
301…増速機
302…発電機
303…電力変換装置
304…電力系統

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の風力発電設備の監視制御装置とネットワークを介して接続された風力発電設備の遠隔監視管理システムにおいて、
前記複数の風力発電設備の運転状態と、故障した風車発電設備の解体にかかる処分費用の情報と、故障した風車発電設備をリサイクルしたときの販売価格についての情報を、前記ネットワークを介して入手し、前記販売価格と前記処分費用の差額から1台当りの損益を求めて記憶し、損益の時系列推移から処分時期を算出することを特徴とする風力発電設備の遠隔監視管理システム。
【請求項2】
請求項1記載の風力発電設備の遠隔監視管理システムにおいて、
前記ネットワークを介して保守会社から解体費用と輸送費用を入手し、風車発電設備の解体にかかる前記処分費用の情報として記憶することを特徴とする風力発電設備の遠隔監視管理システム。
【請求項3】
請求項1記載の風力発電設備の遠隔監視管理システムにおいて、
前記ネットワークを介してリサイクル業者から販売単価を入手し、風車発電設備をリサイクルしたときの前記販売価格の情報として記憶することを特徴とする風力発電設備の遠隔監視管理システム。
【請求項4】
請求項1記載の風力発電設備の遠隔監視管理システムにおいて、
前記風力発電設備の処分費用における損益の時系列変化について、短期的な移動平均値と長期的な移動平均値の相対変化により処分時期を算出する前記処理装置を備えることを特長とする風力発電設備の遠隔監視管理システム。
【請求項5】
複数の風力発電設備の監視制御装置、保守会社、リサイクル業者とネットワークを介して接続され、ここから得られた情報を利用する風力発電設備の遠隔監視管理システムにおいて、
前記ネットワークを介して前記監視制御装置から得た風力発電設備の故障の情報と、ネットワークを介して前記保守会社から得た解体費用と輸送費用から求めた風車発電設備の解体にかかる処分費用の情報と、前記ネットワークを介して前記リサイクル業者から得た販売単価から求めた風車発電設備をリサイクルしたときの販売価格の情報とを記憶し、販売価格と処分費用の差から1台当りの損益を求め、その時系列推移から処分時期を算出することを特徴とする風力発電設備の遠隔監視管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8(a)】
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【図8(b)】
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【公開番号】特開2011−236755(P2011−236755A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−106885(P2010−106885)
【出願日】平成22年5月7日(2010.5.7)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】