説明

風向調整装置

【課題】風向調整装置の配風性能を向上する。
【解決手段】ケース体の通風路に、上ルーバ40、中央ルーバ41、下ルーバ42を備える。上ルーバ40と中央ルーバ41とは第1のリンク体により連結して互いに平行に連動する。中央ルーバ41と下ルーバ42とを第2のリンク体32により連結する。中央ルーバ軸部41bと中央リンク軸41cとの間の第1の寸法L1より、下ルーバ軸部42bと下リンク軸42cとの間の第2の寸法L2を小さく設定したため、下ルーバ42を上側に大きく回動でき、配風性能を向上できる。下リンク軸42cは長孔である下リンク軸受部32cに嵌合したため、下ルーバ42が下方に回動する角度を小さくできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動車の空調装置の吹出口に備えられる風向調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、自動車のインストルメントパネルに設けられ、空調装置の吹出口に備えられて風向を調整する風向調整装置が用いられている。この風向調整装置は、例えば筒状のケースの内側に複数のルーバを回動自在に軸支するとともに、各ルーバにリンクを連結し、このルーバによりルーバを連動して回動させ、風向を変化させている。
【0003】
このような風向調整装置については、風向を所定の範囲に変更できる配風性能を確保しつつ、ナビゲーションシステムなどにより制限されたインストルメントパネルの細長い場所に配置できる構成が求められている。
【0004】
この点、例えば、複数のルーバをリンクで接続した風向調整装置において、ケース体の壁部に近接して位置するルーバについては、リンクに形成したガイド溝に係合して案内する構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1の構成では、壁部に近接して位置するルーバが壁部に当接した際には、ガイド溝を逃がしとして機能させ、リンクの移動時にもこのルーバを壁部に沿って停止した状態に保持し、他のルーバを大きく回動させることを図っている。
【0005】
しかしながら、この構成では、壁部に当接したルーバは壁部に沿って停止し風向の調整に寄与しないため、配風性能の確保が容易でない。
【0006】
また、細長い場所に設置される風向調整装置として、1枚の横フィンを備えるとともに、上下の壁面の内側にそれぞれ山形凸条を突設した構成が知られている。そして、この構成では、横フィンを傾斜させた際に、この横フィンと山形凸条との間に沿って風を案内することにより、配風性能の向上を図っている(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
しかしながら、この構成では、上下の壁面から突設した山形凸条が通風路を塞ぎ、特に、横フィンを水平とした状態では、通気抵抗が大きくなる。さらに、吹出口が細長い形状では、山形凸条の突出寸法も制限され、横フィンを傾斜させた際の配風性能の向上も限定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−139156号公報 (図6)
【特許文献2】特開2009−160981号公報 (図8)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記従来のように、風向調整装置については、風向を所定の範囲に変更できる配風性能を確保しつつ、狭い場所に配置できる構成が求められている。
【0010】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、風向を変更する配風性能を確保しつつ、制限された場所に配置できる風向調整装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1記載の風向調整装置は、内側を通風路としたケース体と、前記通風路に配置される第1のルーバ本体、前記ケース体に回動自在に軸支される第1の軸部、及びこの第1の軸部から第1の寸法を介して設けられた第1のリンク軸を設けた第1のルーバと、前記通風路に配置される第2のルーバ本体、前記ケース体に回動自在に軸支される第2の軸部、及びこの第2の軸部から前記第1の寸法より小さい第2の寸法を介して設けられた第2のリンク軸を設けた第2のルーバと、前記第1のリンク軸に回動自在に連結された第1のリンク軸受部及び前記第2のリンク軸に回動自在に連結された第2のリンク軸受部を備えたリンク手段とを具備するものである。
【0012】
請求項2記載の風向調整装置は、請求項1記載の風向調整装置において、ケース体は、リンク手段案内受部を備え、リンク手段は、前記リンク手段案内受部に係合しこのリンク手段案内受部に沿って案内されるリンク手段側案内部を備え、第2のリンク軸受部は、前記第2のリンク軸を回動自在に軸支するとともに、この第2のリンク軸の軸方向と交差する方向に移動可能に支持するものである。
【0013】
請求項3記載の風向調整装置は、請求項1または2記載の風向調整装置において、ケース体は、第1の面部、この第1の面部に対向する第2の面部、及びこれら第1の面部及び第2の面部の両側部を連結する一対の側面部を備え、これら第1の面部、第2の面部、及び側面部により通風路の外殻が構成され、前記側面部は、第1の軸部及び第2の軸部を回動自在に軸支する軸受部を備え、前記側面部同士の間の第3の寸法は、前記第1の面部と前記第2の面部との間の第4の寸法より大きいものである。
【0014】
請求項4記載の風向調整装置は、請求項1ないし3いずれか一記載の風向調整装置において、第1のルーバは、複数設けられ、これら第1のルーバに連結されて連動させる第1のリンク手段と、前記各第1のルーバの1個に連結されこの第1のルーバを回動させる操作手段とを具備したものである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の風向調整装置によれば、第1のルーバの第1のリンク軸と第2のルーバの第2のリンク軸とがリンク手段により連結され、第1のルーバと第2のルーバとが通風路で連動して回動し、風向を調整する。この時、第1のルーバの第1の軸部と第1のリンク軸との間の第1の寸法より、第2のルーバの第2の軸部と第2のリンク軸との間の第2の寸法の方が小さいため、第1のルーバが回動する角度に対して第2のルーバが回動する角度が大きくなり、風向を大きく変更することが可能となり、配風性能を向上できる。そこで、ルーバの枚数を増やさなくとも十分な配風性能を確保でき、制限された場所に容易に配置できる。
【0016】
請求項2記載の風向調整装置によれば、請求項1記載の効果に加え、リンク手段の第2のリンク軸受部が、第2のルーバの第2のリンク軸の軸方向と交差する方向に移動可能に支持するため、第1のルーバ及び第2のルーバを回動する方向に応じて、異なる配風性能を実現できる。リンク手段は、リンク手段側案内部をケース体のリンク手段案内受部に係合して案内されるため、このリンク手段及び第2のルーバを安定して支持できる。
【0017】
請求項3記載の風向調整装置によれば、請求項1または2記載の効果に加え、請求項1または2記載の構成により、薄型のケース体で十分な配風性能を確保できる風向調整装置を提供できる。
【0018】
請求項4記載の風向調整装置によれば、請求項1ないし3いずれか一記載の効果に加え、1個の第1のルーバを回動操作することにより、複数の第1のルーバを平行に回動操作するとともに、第2のルーバを異なる角度で回動させ、好ましい配風性能を容易に実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の風向調整装置の一実施の形態を示す説明図であり、(a)は上方に配風する状態、(b)は中立状態、(c)は下方に配風する状態である。
【図2】同上風向調整装置の一部の分解斜視図である。
【図3】同上風向調整装置の斜視図である。
【図4】同上風向調整装置の一部の断面図である。
【図5】同上風向調整装置のリンク手段の斜視図である。
【図6】同上風向調整装置の中立状態を示す説明図であり、(a)は図3のI−I相当位置の断面図、(b)は図3のII−II相当位置の断面図、(c)は図3のIII−III相当位置の断面図である。
【図7】同上風向調整装置の上方に配風する状態を示す説明図であり、(a)は図3のI−I相当位置の断面図、(b)は図3のII−II相当位置の断面図、(c)は図3のIII−III相当位置の断面図である。
【図8】同上風向調整装置の下方に配風する状態を示す説明図であり、(a)は図3のI−I相当位置の断面図、(b)は図3のII−II相当位置の断面図、(c)は図3のIII−III相当位置の断面図である。
【図9】本発明の風向調整装置の他の実施の形態を示す説明図であり、(a)は上方に配風する状態、(b)は中立状態、(c)は下方に配風する状態である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の風向調整装置の一実施の形態を図面を参照して説明する。
【0021】
図2及び図3において、10は風向調整装置で、この風向調整装置10は、ルーバ装置あるいはベンチレータなどとも呼ばれるもので、例えば自動車の被取付部材であるインストルメントパネルに取り付けられ、空調装置に接続されて、車室内に風を吹き出し、空調を行う車両用空調装置を構成している。なお、以下、風が吹き出す下流側すなわち乗員側を前側、風の上流側を後側とし、両側方向及び上下方向については、自動車に取り付けた状態を例として説明する。
【0022】
そして、この風向調整装置10は、ケース体11を備えている。このケース体11は、合成樹脂などにて、第1の面部としての上板部12、第2の面部としての下板部14、及び側面部としての両側の側板部15,16を設けた略角筒状に形成され、内側が通風路17、前側が吹出口18、後側が空調装置のエアダクトに接続される接続口19となっている。そして、このケース体11は、通風路17の前端側の吹出口18の位置において、上板部12と下板部14との間の垂直方向の第4の寸法L4に対して、両側の側板部15,16間の水平方向の第3の寸法L3が十分に大きく、すなわち、上下方向の寸法に対して両側方向の寸法が例えば2倍以上大きい薄型の形状であり、ナビゲーションシステムなどにより制限されたインストルメントパネルの細長い場所に配置できるようになっている。また、ケース体11は、上板部12に対して下板部14は前側に突出し、吹出口18は、上側に向かう傾斜面となるように開口している。また、ケース体11の上板部12の上面及び下板部14の下面には、ケース体11をインストルメントパネルに取り付けるケース取付部20が設けられている。
【0023】
また、ケース体11の前面にはフィニッシャ22が取り付けられている。このフィニッシャ22は、例えば合成樹脂にて、ケース体11の前端縁を覆う枠状に形成されたフィニッシャ本体部23と、図6(a)などに示すこのフィニッシャ本体部23から後側に突設された取付片24を備えている。そして、これら取付片24をケース体11の吹出口18の上下に形成したフィニッシャ取付受部18aに係合して、フィニッシャ22がケース体11に取り付けられている。
【0024】
そして、図1ないし図8に示すように、ケース体11の内側の通風路17には、風向調整手段として、複数、本実施の形態では3枚の横ルーバ25と、これら横ルーバ25の後方に位置し、複数、本実施の形態では7枚の縦ルーバ26とが配置されているとともに、横ルーバ25を互いに連結する第1のリンク手段としての第1のリンク体31及びリンク手段としての第2のリンク体32、縦ルーバ26同士を互いに連結する図6(a)などに示す第3のリンク体33、操作手段としての操作ノブ35などを備えている。
【0025】
そして、基本的には、各横ルーバ25は、両側方向を長手方向として互いに上下に配置され、かつ、本実施の形態では吹出口18の傾斜に対応して下側の横ルーバ25が前側に位置するように配置され、それぞれケース体11の側板部15,16に形成された軸受部としての水平軸受37に両側方向すなわち水平方向を回転軸として回動自在に軸支される。また、縦ルーバ26は、上下方向を長手方向として互いに両側方向に配置され、それぞれケース体11の上板部12及び下板部14に形成された垂直軸受38に上下方向すなわち垂直方向を回転軸として回動自在に軸支される。そして、それぞれ中央に位置する横ルーバ25及び縦ルーバ26に係合する操作ノブ35を上下左右に操作することにより、縦ルーバ26を連動して左右方向に回動させて風向を左右に調整し、横ルーバ25を連動して上下方向に回動させて風向を上下方向に調整できる。なお、水平軸受37及び垂直軸受38は、ケース体11を貫通する円孔として形成され、また、必要に応じて、2色成形などにより、円孔の周囲は軸受に的にした軟質の樹脂により形成されている。
【0026】
次に、横ルーバ25、第1のリンク体31、及び第2のリンク体32について詳細に説明する。
【0027】
3枚の横ルーバ25の内、上側のルーバは第1のルーバを構成する上ルーバ40、中央のルーバは第1のルーバを構成する中央ルーバ41、下側のルーバは第2のルーバを構成する下ルーバ42となる。そして、各ルーバ40,41,42は、細長矩形板状の羽根部であるルーバ本体と、このルーバ本体の長手方向すなわち水平方向の両端部分から突設され水平軸受37に嵌合して回動可能に軸支される円柱状の軸部と、この軸部から離間しかつこの軸部と平行にルーバ本体から突設されたリンク軸とを備えている。すなわち、上ルーバ40は、第1のルーバ本体を構成する上ルーバ本体40aと第1の軸部を構成する上ルーバ軸部40bを備え、中央ルーバ41は、第1のルーバ本体を構成する中央ルーバ本体41aと第1の軸部を構成する中央ルーバ軸部41bを備え、下ルーバ42は、第2のルーバ本体を構成する下ルーバ本体42aと第2の軸部を構成する下ルーバ軸部42bを備えている。
【0028】
さらに、上ルーバ40は、他端側のみに位置し、上ルーバ軸部40bの後側に離間して第1のリンク軸を構成する上リンク軸40cが突設され、中央ルーバ41は、両側すなわち一端側と他端側との両側に位置し、中央ルーバ軸部41bの後側に位置して第1のリンク軸を構成する中央リンク軸41cが互いに同軸に突設され、下ルーバ42は、一端側に位置し下ルーバ軸部42bの後側に位置して第2のリンク軸を構成する下リンク軸42cが突設されている。ここで、上ルーバ40の上ルーバ軸部40bと上リンク軸40cとの間の寸法と、中央ルーバ41の中央ルーバ軸部41bと中央リンク軸41cとの間の寸法は、第1の寸法L1として互いに等しく設定されている。一方、下ルーバ42の下ルーバ軸部42bと下リンク軸42cとの間の寸法は第2の寸法L2として、第1の寸法L1より小さく設定されている。
【0029】
なお、中央ルーバ41の中央ルーバ本体41aには、図6(a)などに示すように、操作ノブ35が嵌合される部分に、前端部に、摺動抵抗を発生させる操作ノブ嵌合部41dが厚さ寸法が大きく形成されているとともに、後端部に、操作ノブ35を案内する操作ノブ案内部41eが突設されている。
【0030】
また、ケース体11の形状に対応し、上ルーバ40は、他のルーバ41,42より若干長手寸法が大きく形成されている。
【0031】
また、第1のリンク体31は、横ルーバ25の配置方向である上下方向を長手方向とする細長板状の第1リンク本体31aと、この第1リンク本体31aの上側部から前側に若干突出した位置に設けられた円孔状の上リンク軸受部31bと、第1リンク本体31aの下側部から前側に若干突出した位置に設けられた円孔状の中央リンク軸受部31cとを備えている。そして、上リンク軸受部31bは、上ルーバ40の上リンク軸40cに回動可能に嵌合し、中央リンク軸受部31cは、中央ルーバ41の他側の中央リンク軸41cに回動可能に嵌合する。そこで、この第1のリンク体31により、上ルーバ40と中央ルーバ41とは、上ルーバ本体40aと中央ルーバ本体41aとを上下方向とも互いに平行に保持したまま、すなわち同じ角度で連動するルーバ群として回動する。
【0032】
一方、第2のリンク体32は、図5などに示すように、横ルーバ25の配置方向である上下方向を長手方向とする細長板状の第2リンク本体32aと、この第2リンク本体32aの上側部から前側に若干突出した位置に設けられた円孔状の第1のリンク軸受部としての中央リンク軸受部32bと、第2リンク本体32aの下側部から前側に若干突出した位置に設けられた長孔状の第2のリンク軸受部としての下リンク軸受部32cとを備えている。すなわち、下リンク軸受部32cは、円孔状ではなく、所定方向である上下方向に長い長孔状である溝状に形成されている。さらに、第2リンク本体32aからは、下リンク軸受部32c近傍から一側方に向かい、リンク手段側案内部としての円柱状のリンクピン32dが突設されている。そして、中央リンク軸受部32bは、中央ルーバ41の一側の中央リンク軸41cに回動可能に嵌合し、下リンク軸受部32cは、下ルーバ42の下ルーバ軸部42bに回動可能かつ長孔の長手方向に沿って移動可能に嵌合する。さらに、リンクピン32dは、ケース体11の一側の側板部15に形成したリンク手段案内受部としてのケース側案内部44に挿入して案内される。このケース側案内部44は、側板部15を貫通するスリットで、下ルーバ42の一側の下ルーバ軸部42bが嵌合する水平軸受37の位置あるいはこの位置の近傍を中心とする円孔状に形成され、第2のリンク体32が移動する軌跡を一定にし、安定して円滑に回動させる。なお、ケース体11の下板部14の一側の側板部15に沿った位置には、第2のリンク体32との干渉を防止するにげ部である凹部45が形成されている。
【0033】
そこで、この第2のリンク体32により、中央ルーバ41と下ルーバ42とは連動して回動するが、中央ルーバ41の中央ルーバ軸部41bと中央リンク軸41cとの間の第1の寸法L1より、下ルーバ42の下ルーバ軸部42bと下リンク軸42cとの間の第2の寸法L2が小さく設定されているとともに、下ルーバ42の下リンク軸42cは長孔である下リンク軸受部32cに嵌合しているため、後述するように、中央ルーバ41と下ルーバ42とは異なる状態で回動する。
【0034】
次に、縦ルーバ26、第3のリンク体33、及び操作ノブ35について説明する。
【0035】
各縦ルーバ26は、垂直状に配置される矩形板状の羽根部である縦ルーバ本体51aと、この縦ルーバ本体51aの長手方向の端部すなわち上下の端部から円柱状に突設された縦ルーバ軸部51bを備えている。また、上側の縦ルーバ本体51aの後側に離間して、縦ルーバ本体51aから縦リンク軸51cが突設されている。さらに、中央に位置する縦ルーバ26のみについては、略半円状の切欠部52が形成され、この切欠部52の前側の部分が、上下に延びる棒状の縦操作受部53となっている。
【0036】
また、第3のリンク体33は、両側方向を長手方向とする細長板状の第3リンク本体33aと、この第3リンク本体33aの前側に位置して両側方向に所定間隔で形成された第3リンク軸受部33bとを備えている。
【0037】
そして、各縦ルーバ26は、各縦ルーバ軸部51bをそれぞれケース体11の上下の垂直軸受38に回動可能に嵌合して軸支されるとともに、各縦リンク軸51cを第3のリンク体33の第3リンク軸受部33bに回動可能に嵌合し、互いに平行に保持したまま連動して左右に回動する。
【0038】
また、操作ノブ35は、操作ノブ本体55を備え、この操作ノブ本体55の後側部に、操作ノブ嵌合部41dを含み中央ルーバ41の中央ルーバ本体41aに嵌合し、所定の摺動抵抗で両側方向に摺動可能に支持される横ルーバ嵌合部56が設けられている。また、操作ノブ本体55の後側には、両側一対の棒状をなす縦ルーバ係合部57が設けられ、これら縦ルーバ係合部57同士の間に、中央の縦ルーバ26の縦操作受部53が摺動自在に係合するようになっている。また、操作ノブ本体55の前側部には、別体の装飾体58が取り付けられ、操作ノブ35の位置を明確に示すようにして、操作性及び外観の向上が図られている。
【0039】
なお、図示しないが、縦ルーバ26の後方すなわち上流側に位置し、通風路17を開閉するシャッターバルブを配置することもできる。
【0040】
次に、風向を上下左右に調整する配風動作を説明する。
【0041】
まず、操作ノブ35を中央ルーバ41に沿って左右にスライドさせると、操作ノブ35の縦ルーバ係合部57が縦操作受部53を押動し、直接には中央の縦ルーバ26を縦ルーバ軸部51bを中心として回動させる。この状態で、第3のリンク体33により連結された各縦ルーバ26は互いに平行な状態で連動して回動し、風向が左右に変更すなわち調整される。
【0042】
一方、操作ノブ35の前側部を上下に操作すると、直接には中央ルーバ41が中央ルーバ軸部41bを中心として上下に回動する。この状態で、第1のリンク体31により中央ルーバ41に連結された上ルーバ40は、中央ルーバ41と平行な状態で連動して回動し、風向が上下に変更すなわち調整される。例えば、図6(c)に示す水平(ニュートラル)の状態から、図7(c)に示すように操作ノブ35を上側に向けると、第1のリンク体31は下方に移動して上ルーバ40及び中央ルーバ41の前側は上方に向かい、図8(c)に示すように操作ノブ35を下側に向けると、第1のリンク体31は上方に移動して上ルーバ40及び中央ルーバ41の前側は下方に向かう。
【0043】
また、第2のリンク体32により中央ルーバ41に連結された下ルーバ42は、中央ルーバ41と平行あるいは平行でなく傾斜した状態で連動して回動し、風向が上下に変更すなわち調整される。すなわち、図1(b)及び図6に示す水平(ニュートラル)の状態では、中央ルーバ41の中央ルーバ本体41a及び下ルーバ42の下ルーバ本体42aはいずれも水平あるいは略水平となっている。また、この水平の状態では、リンクピン32dはケース側案内部44の中間位置に位置し、下リンク軸42cは下リンク軸受部32cの一端部である上端部に当接している。
【0044】
この水平の状態から、操作ノブ35を上側に移動させ、図1(a)及び図7に示す上振りの状態とすると、第2のリンク体32は下方に移動し、この際、下リンク軸42cは下リンク軸受部32cの一端部である上端部に当接したまま、第2のリンク体32がリンクピン32dとケース側案内部44との係合による案内により安定した挙動で下方に移動する。そして、リンクピン32dがケース側案内部44の下端部に移動した状態で、中央ルーバ41の中央ルーバ軸部41bと中央リンク軸41cとの間の第1の寸法L1より、下ルーバ42の下ルーバ軸部42bと下リンク軸42cとの間の第2の寸法L2が小さく設定されているため、中央ルーバ41よりも下ルーバ42が大きく回動する。そこで、中央ルーバ41と平行に回動する上ルーバ40に加えて、中央ルーバ41より大きく回動する下ルーバ42により、風向が上方に大きく曲げられ、配風性能が向上する。そして、この配風性能の向上は、いわゆる流体解析のシミュレーションによって確認できた。
【0045】
一方、図1(b)及び図6に示す水平の状態から、操作ノブ35を下側に移動させ、図1(c)及び図8に示す下振りの状態とすると、第2のリンク体32は上方に移動し、この際、下リンク軸42cは下リンク軸受部32cの一端部である上端部に当接した位置から下端部に当接する位置まで移動するとともに、第2のリンク体32はリンクピン32dとケース側案内部44との係合による案内により安定した挙動でリンクピン32dがケース側案内部44の上端部に当接するまで上方に移動する。ここで、中央ルーバ41の中央ルーバ軸部41bと中央リンク軸41cとの間の第1の寸法L1より、下ルーバ42の下ルーバ軸部42bと下リンク軸42cとの間の第2の寸法L2が小さく設定されているため、中央ルーバ41よりも下ルーバ42が大きく回動しようとするが、下リンク軸42cが下リンク軸受部32c内で移動するために回動角度が小さくなり、本実施の形態では、回動角度が相殺されて、下ルーバ42は中央ルーバ41と平行に回動する。そこで、中央ルーバ41と平行に回動する上ルーバ40及び下ルーバ42により、風向が下方に確実に案内されるとともに、下ルーバ42が大きく回動して近接して配置されたケース体11の下板部14に当接することがなく、配風性能が確保される。
【0046】
このように、本実施の形態によれば、ケース体11の長手方向に沿って配置され風向を調整する横ルーバ25について、第1のリンク体31により互いに平行に回動する上ルーバ40と中央ルーバ41に加え、第2のリンク体32により中央ルーバ41と下ルーバ42とを連結して連動させる構成であって、中央ルーバ41の中央ルーバ軸部41bと中央リンク軸41cとの間の第1の寸法L1より、下ルーバ42の下ルーバ軸部42bと下リンク軸42cとの間の第2の寸法L2を小さく設定したため、下ルーバ42を大きく回動させることが可能になり、本実施の形態では、ケース体11の内壁面である下板部14に隣接して下端側に配置された下ルーバ42を他の横ルーバ25より上側に向かって大きく回動させることができる。そこで、ケース体11の下面に沿って流れる空気流を確実に上方に向けて吹き出し、薄型のケース体11に少数例えば3枚の横ルーバ25を配置した構成においても、風向を上方に大きく変更し、配風性能を向上できる。
【0047】
また、下端側に配置され、すなわちケース体11の下板部14に近接して配置された下ルーバ42は、下方に大きく回動すると下板部14に当接することになるが、下ルーバ42の下リンク軸42cは第2のリンク体32の長孔である下リンク軸受部32cに嵌合しているため、下方に回動する角度を抑制し、下方については下ルーバ42を上ルーバ40及び中央ルーバ41と同じ角度で回動する構成とし、下ルーバ42がケース体11に当接することを抑制できる。
【0048】
さらに、下ルーバ42の下リンク軸42cは長孔である下リンク軸受部32cに嵌合するが、第2のリンク体32はリンクピン32dとケース側案内部44と係合して、所望の軌跡に沿って円弧状に案内され、例えば、上振り時に大きな空気流の風圧を下ルーバ42が受けた際にも、第2のリンク体32及び下ルーバ42をがたつくことなく安定して位置決めして移動を規制し配風性能をできるとともに、第2のリンク体32及び下ルーバ42を安定した挙動で円滑に移動させ操作感を向上することができる。
【0049】
このようにして、限られた空間でルーバの枚数を増やさなくとも十分な配風性能を確保でき、自動車のインストルメントパネルなど制限された場所に配置される両側に長い吹出口18を有する薄型のケース体11で十分な配風性能を確保できるいわば薄型ベンチレータである風向調整装置10を提供できる。
【0050】
また、例えば各横ルーバ25を水平にした状態では、ケース体11の通風路17の内側には通気抵抗の原因となる突出形状がなく、容易に通気量を確保できる。
【0051】
また、上記の効果は簡略な構成により実現でき、構成を簡略化して製造コストを低減できる。
【0052】
また、第2のリンク体32は、長孔である下リンク軸受部32cの形状を変更することで、上下の配風特性を容易に調整でき、汎用性を向上して製造コストを低減できる。
【0053】
なお、上記の実施の形態では、リンク手段案内受部として、ケース体11の側板部15に直接スリットを貫通してケース側案内部44を設けているが、これに限定されるものではない。例えば、第2のリンク体32とケース体11の側板部15との間に、リンク手段側案内部としてのリンクピン32dの移動を規制するスリットを有する別体のブロック部材を配置しても良い。
【0054】
なお、上記の実施の形態では、横ルーバ25を3枚備えた構成について説明したが、この構成に限られない。例えば、第1のルーバは、上記の実施の形態では上ルーバ40と中央ルーバ41との2枚で形成したが、1枚のみで形成しても良く、あるいは3枚以上のルーバを第1のリンク手段で連結してルーバ群とて連動して回動させることもできる。また、上記の実施の形態では、上側に向かって傾斜した吹出口18に対応し、下端のルーバを第2のルーバを構成する下ルーバ42としたが、この構成に限られない。例えば、下側に向かって傾斜した吹出口18に対応し、上端のルーバを他のルーバより大きく回動する第2のルーバとし、あるいは、垂直状の吹出口18に対応し、下端のルーバと上端のルーバとをともに他のルーバより大きく回動する第2のルーバとすることもできる。
【0055】
例えば、図9に示すように、垂直状の吹出口18を備えた風向調整装置10について、第1のルーバとしての中央ルーバ41と、第2のルーバとしての下ルーバ42とを備えるとともに、第2のルーバとしての上ルーバ60を備えることができる。すなわち、この構成では、上ルーバ60は、第2のルーバ本体を構成する上ルーバ本体60a、第2の軸部を構成する上ルーバ軸部60b、第2のリンク軸を構成する上リンク軸60cを備え、上ルーバ軸部60bと上リンク軸60cとの間隔寸法は、下ルーバ42と同じ第2の寸法L2となっている。また、中央ルーバ41の他側の中央リンク軸41cと上リンク軸60cとを連結するリンクはリンク手段としての第4のリンク体62であり、第4リンク本体62aと、第4のリンク軸受部としての円孔状の中央リンク軸受部62bと、第4のリンク軸受部としての長孔状の上リンク軸受部62cとを備えている。また、図示しないが、この第4のリンク体62にも、第2のリンク体32のリンクピン32dと同様のリンクピンが突設され、他側の側板部16に形成したケース側案内部に挿入して案内されている。
【0056】
そこで、この構成では、図9(b)に示す水平(ニュートラル)の状態では、中央ルーバ41の中央ルーバ本体41a、下ルーバ42の下ルーバ本体42a、及び上ルーバ60の上ルーバ本体60aはいずれも水平あるいは略水平となっている。
【0057】
この水平の状態から、操作ノブ35を上側に移動させ、図9(a)に示す上振りの状態とすると、図1に示す実施の形態と同様に、下ルーバ42が大きく回動し、配風性能が向上する。ここで、上ルーバ60も上ルーバ軸部60bと上リンク軸60cとの間隔寸法は下ルーバ42と同じ第2の寸法L2となっているが、上リンク軸受部62cが長孔状となっているため、回動角度が小さくなり、中央ルーバ41と平行に回動する。一方、操作ノブ35を下側に移動させ、図9(c)に示す下振りの状態とすると、図1に示す実施の形態と同様に、下ルーバ42の回動角度は小さくなるとともに、上ルーバ60が大きく回動し、配風性能が向上する。
【0058】
このようにして、この図9に示す構成では、横ルーバ25を上下の何れに回動する場合にも、ケース体11の内壁面に沿って流れる空気流を効率良く偏向させて、風向を上方に大きく変更し、配風性能を向上できる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、例えば、自動車インストルメントパネルその他に備えられる空調装置の吹出口装置に適用できる。
【符号の説明】
【0060】
10 風向調整装置
11 ケース体
12 第1の面部としての上板部
14 第2の面部としての下板部
15,16 側面部としての側板部
17 通風路
31 第1のリンク手段としての第1のリンク体
32 リンク手段としての第2のリンク体
32b 第1のリンク軸受部としての中央リンク軸受部
32c 第2のリンク軸受部としての下リンク軸受部
32d リンク手段側案内部としてのリンクピン
35 操作手段としての操作ノブ
37 軸受部としての水平軸受
40 第1のルーバを構成する上ルーバ
41 第1のルーバを構成する中央ルーバ
41a 第1のルーバ本体を構成する中央ルーバ本体
41b 第1の軸部を構成する中央ルーバ軸部
41c 第1のリンク軸を構成する中央リンク軸
42 第2のルーバを構成する下ルーバ
42a 第2のルーバ本体を構成する下ルーバ本体
42b 第2の軸部を構成する下ルーバ軸部
42c 第2のリンク軸を構成する下リンク軸
44 リンク手段案内受部としてのケース側案内部
L1 第1の寸法
L2 第2の寸法
L3 第3の寸法
L4 第4の寸法

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側を通風路としたケース体と、
前記通風路に配置される第1のルーバ本体、前記ケース体に回動自在に軸支される第1の軸部、及びこの第1の軸部から第1の寸法を介して設けられた第1のリンク軸を設けた第1のルーバと、
前記通風路に配置される第2のルーバ本体、前記ケース体に回動自在に軸支される第2の軸部、及びこの第2の軸部から前記第1の寸法より小さい第2の寸法を介して設けられた第2のリンク軸を設けた第2のルーバと、
前記第1のリンク軸に回動自在に連結された第1のリンク軸受部及び前記第2のリンク軸に回動自在に連結された第2のリンク軸受部を備えたリンク手段と
を具備することを特徴とする風向調整装置。
【請求項2】
ケース体は、リンク手段案内受部を備え、
リンク手段は、前記リンク手段案内受部に係合しこのリンク手段案内受部に沿って案内されるリンク手段側案内部を備え、
第2のリンク軸受部は、前記第2のリンク軸を回動自在に軸支するとともに、この第2のリンク軸の軸方向と交差する方向に移動可能に支持する
ことを特徴とする請求項1記載の風向調整装置。
【請求項3】
ケース体は、第1の面部、この第1の面部に対向する第2の面部、及びこれら第1の面部及び第2の面部の両側部を連結する一対の側面部を備え、これら第1の面部、第2の面部、及び側面部により通風路の外殻が構成され、
前記側面部は、第1の軸部及び第2の軸部を回動自在に軸支する軸受部を備え、
前記側面部同士の間の第3の寸法は、前記第1の面部と前記第2の面部との間の第4の寸法より大きい
ことを特徴とする請求項1または2記載の風向調整装置。
【請求項4】
第1のルーバは、複数設けられ、
これら第1のルーバに連結されて連動させる第1のリンク手段と、
前記各第1のルーバの1個に連結されこの第1のルーバを回動させる操作手段とを具備した
ことを特徴とする請求項1ないし3いずれか一記載の風向調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−251590(P2011−251590A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−125290(P2010−125290)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(000229955)日本プラスト株式会社 (740)
【Fターム(参考)】