説明

風水力発電用ブレードの製造方法

【課題】金属材料を用いて軽量で高剛性な風水力発電用ブレードを比較的安価に製造する方法を提供する。
【解決手段】先ず、横断面が略四角形状の中空な金属桁材5を準備する。次に、その中空な金属桁材5を中空な金属管材M4の内部に収容配置する。中空な金属桁材5を収容した中空な金属管材M4の両端部をシール手段(21,31)でシールすると共に、これら中空な金属桁材5及び金属管材M4の内部に液体を満たす。そして、金属桁材5及び液体を内部に含んだ状態の金属管材M4に対してプレス型(12,14)を用いてプレス加工を施すことにより、金属桁材5の横断面形状に実質的な変更を強いることなく、金属管材M4に対して横断面が流線形状に近似した翼型形状を付与する。こうして、中空な金属桁材5を内装した翼型形状の風水力発電用ブレードが得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力発電や水力発電などの風水力発電装置の風水車を構成するブレード(風水車の翼材又は羽根材)の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に風力発電装置の風車を構成するブレードには、機械的強度及び軽量性の両立が求められる。このため、繊維強化樹脂(FRP)を構成材料とするブレード及びその製造方法が種々提案されている(例えば特許文献1,2)。しかしながら、FRPの特性を最大限に生かすためには、特許文献1及び2のように各種の樹脂層を複数層積層してブレードを構成する必要がある。それ故、FRP自体の材料コストが高いという事情に加えて、FRP製ブレードは生産性が低くて製造コストも高いという問題があり、風力発電装置の普及が進まない一因となっている。
【0003】
他方、特許文献3のように、エアコンの室外機用のファンを構成する羽根を金属材料を用いて製造する試みもある。特許文献3では、袋状の板金製品(中間製品)を所定の内部形状を有する上下金型間に挟み込み、その袋状板金製品の内側に高圧エアを導入して当該製品を膨張させることで、上下金型間の内部形状に合致した外形状に袋状板金製品を塑性加工している。更には、塑性加工により羽根形状を付与された袋状板金製品の開口部にプレート(つまりシール手段)を配置して高圧エアを内部に封入した状態で羽根を完成させている。こうして羽根の内圧を大気圧よりも高くすることで、羽根の形状保持、剛性確保および軽量化を図っている。
【0004】
ところで、内部に高圧エアを封入したまま羽根を完成させるには、塑性加工によって羽根形状を付与された袋状板金製品の開口部を確実に閉塞して高い気密状態を実現する必要がある。しかし、高圧状況下で高い気密状態を作り出すには高度な技術や設備が必要になるため、特許文献3の手法もコスト低減にはつながらない。また、特許文献3の技術は、エアコンの室外機用ファンのように比較的小さな羽根物に適用することは可能かもしれないが、風力発電用ブレードのように巨大な翼型構造体に適用することは容易ではない。というのも、風力発電用ブレードは曲げや捩れに対する耐性を特に要求されるが、特許文献3のように内部に桁、裏骨あるいは区画枠などの補強構造を具備することなく、高圧エアの封入だけで必要な剛性を確保することは、現実には極めて困難だからである。
【0005】
【特許文献1】特開平6−66244号公報
【特許文献2】特開2002−137307号公報
【特許文献3】特開2000−135534号公報(家電製品用のファン)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、金属材料を用いて軽量で高剛性な風水力発電用ブレードを比較的安価に製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、横断面が略四角形状の中空な金属桁材を準備する桁材準備工程と、前記中空な金属桁材を中空な金属管材の内部に収容配置する配置工程と、前記中空な金属桁材を収容した中空な金属管材の両端部をシールすると共に、これら中空な金属桁材及び金属管材の内部に流体を満たす流体充填工程と、前記金属桁材及び流体を内部に含んだ状態の金属管材に対してプレス型を用いてプレス加工を施すことにより、金属桁材の横断面形状に実質的な変更を強いることなく、金属管材に対して横断面が流線形状に近似した翼型形状を付与する流体圧プレス工程とを備えることを特徴とする風水力発電用ブレードの製造方法である。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載の風水力発電用ブレードの製造方法において、前記流体圧プレス工程では、前記中空な金属管材の内部に満たされた流体の圧力を、その流体圧力のみによって金属管材が膨張又は変形を起こし得ない程度の圧力値(P1)に保つことを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の風水力発電用ブレードの製造方法において、前記桁材準備工程では、出発材となる中空な金属素管の両端部をシールすると共に、その金属素管の内部に流体を満たす工程と、前記流体を内に含んだ状態の金属素管に対してプレス加工を施すことにより当該金属素管に対して横断面が略四角形状となる形状を付与する工程とを経て、前記横断面が略四角形状の中空な金属桁材を準備することを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の風水力発電用ブレードの製造方法において、前記流体圧プレス工程では、前記翼型形状を付与されるブレード本体を構成する壁の一部に内向き突起又は突条を同時成形し、且つその内向き突起又は突条を前記金属桁材を構成する壁の一部に食い込ませることを特徴とする。
【0011】
請求項5の発明は、請求項2〜4のいずれかに記載の風水力発電用ブレードの製造方法において、前記流体圧プレス工程の後に、前記翼型形状のブレード本体内の圧力を、前記金属管材が膨張又は変形を起こし得ない程度の圧力値(P1)よりも高い圧力値(P2)に高める再加圧工程を更に備えることを特徴とする。
【0012】
請求項6の発明は、請求項1〜5のいずれかに記載の直線翼垂直軸型風水力発電用ブレードの製造方法において、前記流体圧プレス工程では、金属管材に対して横断面が流線形状に近似した直線翼型形状を付与することを特徴とする。
【0013】
[作用]
本発明の方法によれば、ブレードの表皮部分を構成するための前駆体としての中空な金属管材の内部に中空な金属桁材と流体とを含んだ状態で金属管材に対してプレス加工を施すことで、当該金属管材を横断面が流線形状に近似した翼型形状に成形している。中空な金属管材の内部に流体を満たした状態でのプレス加工では、加圧時、パスカルの原理により流体が金属管材の内側全体に均等に圧力を及ぼすので、その中空な金属管材はシワやつぶれを生ずることなくプレス型の形状に合致した所望の翼型形状に成形される。また、中空な金属管材の内部に収容される中空な金属桁材の内外にも流体が満たされるため、加圧時、パスカルの原理により金属桁材の内面及び外面は同じ圧力を受ける。従って、プレス型が金属桁材にまで変形を強いるような形状でない限り、プレス型で金属管材をプレス加工しても、金属桁材の横断面形状に実質的な変更は加えられず、横断面が略四角形状の中空な金属桁材をそのまま内部に組み込んだ状態で、金属管材が所望の翼型形状に成形される。このように本発明の方法によれば、横断面が略四角形状の中空な金属桁材が補強材として内装されると共に翼型形状のブレード本体に一体化された風水力発電用ブレードを、流体圧プレス加工によって高精度且つ効率的に製造できる。
【0014】
なお、請求項2によれば、金属管材の内部を満たす流体がプレス型による形状付与の阻害要因となることなく、金属管材がプレス型によって優れた精度で付形される。なお、流体圧力のみによって金属管材が膨張又は変形を起こし得ない程度の圧力値(P1)としては、0.1MPa〜30MPaが適切である。
【0015】
請求項3によれば、金属桁材を流体圧プレス加工法により、比較手入手の容易な中空な金属素管を出発材として簡単且つ確実に準備できる。請求項4によれば、ブレード本体を構成する壁の一部に同時成形された内向き突起又は突条が、それによって凹まされるところの金属桁材を構成する壁の一部に食い込む。その結果、ブレード本体の内向き突起又は突条と、金属桁材の凹んだ構成壁との間に緊密な係合関係が成立し、ブレード内部における金属桁材の固定が確実になる(図7参照)。
【0016】
請求項5によれば、流体圧プレス工程において、仮に例えば不本意な凹みが生じていたとしても、型外し前に、前記翼型形状のブレード本体内の圧力を初期の圧力値(P1)よりも高い圧力値(P2)に高める再加圧処理をすることで、不本意な凹みを解消してプレス型の本来の形状に合致した翼型形状が正確に付与される。なお、前記圧力値(P1)よりも高い圧力値(P2)としては、50MPa〜200MPaが適切である。
【発明の効果】
【0017】
各請求項に記載の風水力発電用ブレードの製造方法によれば、翼型形状のブレード本体の内部には補強材としての中空な金属桁材が内装されるため、ブレードの軽量化を図りつつ剛性を高めることができる。また、流体圧プレスの過程において、金属桁材をブレード本体内に固定して両者を一体化できるため、壊れ難くてしかも形状及び寸法精度に優れたブレードを製造することができる。更に、ブレード本体及びその内部の桁材ともに金属で構成されるため、材料コストが比較的安価であると共に、プレス型を用いた塑性加工なので製造工数、製造時間及び製造コストを、FRPを使用する従来例に比べて大幅に低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を直線翼垂直軸型風力発電装置用のブレードの製造に適用した一実施形態を図面を参照しつつ説明する。
【0019】
図1に示すように、直線翼垂直軸型風力発電装置の風車は、設置面(例えば地面)に垂直に立設されたポール1の頂上に設けられている。ポール1の頂上には、図示しない発電機に作動連結された垂直ローター軸2が回転可能に設けられている。垂直ローター軸2の上部及び下部付近にはそれぞれ、水平方向に放射状に延びる三本のアーム3が設けられており、上下一対のアーム3,3間には直線翼型ブレード4がそれぞれ支持されている。これら三枚のブレード4が風を受けることで、垂直ローター軸2、アーム3及びブレード4からなる風車が一体回転し発電が行われる。なお、直線翼垂直軸型風力発電の原理等の詳細については、例えば特許第3368537号公報を参照されたし。
【0020】
各ブレード4は、垂直方向に延びるやや長尺な金属製の構造体であり(図1参照)、その長手方向に対し直交する方向の断面(横断面)が流線型に似た翼断面形状に形成されている(図6参照)。特に図6に示すように、本実施形態のブレード4の表皮部分を構成するブレード本体4aの内部には、金属製の桁材5が設けられている。この金属桁材5は、ブレード本体4aの長手方向長とほぼ同じ長さを有するやや長尺な部材であって、その長手方向に対して直交する方向の断面(横断面)が、あたかも「ロ」の字のような略四角形状をなす中空な管状部材として構成されている。この金属桁材5は、ブレード本体4aの機械的強度などを補うための補強材として機能する。
【0021】
[ブレード製造装置]
図2及び図3は、本実施形態で使用するブレード製造装置の概要を示す。図2及び図3に示すように、この装置は、固定ベース11上に設置された固定プレス型としての下型12、並びに、これらの上方に配設された可動ベース13及びその下側に一体化された可動プレス型としての上型14を備えている。図示しない垂直駆動機構によって、上型14は可動ベース13と共に垂直方向に移動可能となっており、これにより上型14は下型12に対し接近離間可能となっている。下型12及び上型14は、加工対象物(ワーク)に対して所望の翼型形状を付与するための付形部12a,14aを有している。固定ベース11上には下型12の左右位置において、左右一対のワーク支持機構20,30が設けられている。
【0022】
図2に示すように、左側のワーク支持機構20は、ワークとなる管状部材の一端をシールするための固定シール21と、その固定シール21を水平に支持するための左側調高支脚23とを具備している。固定シール21は概して円柱形状をなしており、その軸直交断面(横断面)は円形状である。そして、固定シール21の外周部には、ブレード本体4aを構成するための前駆体となる中空な金属管材M4の一端を外嵌するための環状段差21aが形成されている。更に固定シール21の先端部(図2では右端部)には、中空な金属桁材5の一端を外嵌するための嵌合凸部21bが設けられている。前記固定シール21の基端部(図2では左端部)を支える左側調高支脚23は、例えばコイルバネやダンパー等の弾性又は衝撃吸収性の部材で構成されており、ワーク及び固定シール21が垂直方向の外力を受けあるいはその外力が解除されたときに、それに応じてワーク及び固定シール21の全体が上下動するのを許容する。
【0023】
右側のワーク支持機構30は、ワークとなる管状部材の他端をシールするための可動シール31と、その可動シール31と水平連結された駆動シリンダ32と、これらを水平に支持するための右側調高支脚33とを具備している。前記固定シール21と同様、可動シール31は概して円柱形状をなしており、その軸直交断面(横断面)は円形状である。そして、可動シール31の外周部には、ブレード本体4aを構成するための前駆体となる中空な金属管材M4の他端を外嵌するための環状段差31aが形成されている。更に可動シール31の先端部(図2では左端部)には、中空な金属桁材5の他端を外嵌するための嵌合凸部31bが設けられている。駆動シリンダ32は、可動シール31をワークの軸方向に水平移動させるための駆動手段である。可動シール31及び駆動シリンダ32を支える右側調高支脚33は、前記左側調高支脚23と同様に構成されており、ワーク及び可動シール31が垂直方向の外力を受けあるいはその外力が解除されたときに、それに応じてワーク、可動シール31及び駆動シリンダ32の全体が上下動するのを許容する。
【0024】
更に、可動シール31の内部には流体通路34が設けられている。流体通路34は、左右一対をなす固定及び可動シール21,31間に保持される二種類の中空な管状部材(5,M4)の各々の内部を調圧ポンプ機構15につないでいる。調圧ポンプ機構15は、外部から中空な管状部材(5,M4)の各々の内部に液体を供給するのみならず、液体を追加供給したり逃がしたりしながら管状部材内部の液圧が所定の目標圧P1に保たれるように液圧のフィードバック制御を行う。
【0025】
[ブレード製造手順]
次に、金属製直線翼型ブレード4の製造手順について説明する。なお、以下に述べる金属桁材5やブレード本体4aを構成する金属としては、ステンレス鋼などの汎用の鉄系金属や、アルミニウム又はその合金などの軽金属を使用することができる。
【0026】
1.金属桁材の準備
先ず、ブレード本体4aの長さに相当する長さを有すると共に横断面が略四角形状(本実施形態では「ロ」の字形状)となる中空な金属桁材5を準備する(図4参照)。かかる金属桁材5は液圧プレス成形によって得られる。具体的には図4に示すように、比較的長尺で横断面形状が円形状の中空な金属素管(例えばストレート金属パイプ)M5を出発材として選択する。金属素管M5の肉厚は例えば0.2mmである。この金属素管M5の両端部を適切なシール材でシールすると共に、その内部に液体(例えば水)を満たす。そして、液体を内部に充填した状態の金属素管M5に対してプレス加工を施すことで、これに略四角形状の横断面形状を付与する。このような液圧プレス成形によれば、横断面が略四角形状となる中空な金属桁材5を優れた寸法精度で簡単に製造することができる。
【0027】
2.ブレード製造装置へのワーク取付け
次に図2に示すように、下型12から上型14を離間させた状態で上下型間に、前記金属桁材5と、実質的な変形加工対象物である中空な金属管材M4とを配置する。中空な金属管材M4は、比較的長尺で横断面形状が円形状のストレート金属パイプであり、余裕を持って金属桁材5を収容できる程度の内径を有している。この金属管材M4の肉厚は金属桁材5の肉厚にほぼ等しく、例えば0.2mmである。
【0028】
中空な金属桁材5及び金属管材M4は、金属桁材5を金属管材M4の内部に収容した状態で上下型14,12間に配置される。具体的には、金属桁材5及び金属管材M4の各左端部を固定シール21の嵌合凸部21b及び環状段差21aにそれぞれ外嵌した後、駆動シリンダ32により可動シール31を固定シール21に向けて移動させ、金属桁材5及び金属管材M4の各右端部を可動シール31の嵌合凸部31b及び環状段差31aにそれぞれ外嵌させる。こうして、金属桁材5及び金属管材M4の各々の両端部に固定及び可動シール21,31を装着して各端部開口をシールすることで、図5に示すように、金属桁材5が金属管材M4の内部に浮いた状態で両部材(5,M4)を水平に支持する。なお、その場合に、金属管材M4の下面側が下型12から若干浮いていても、下型12上に接触載置されていてもいずれでもよい。
【0029】
3.液圧プレス加工
ブレード製造装置に対する金属桁材5及び金属管材M4の取付け完了後、調圧ポンプ機構15から流体通路34を介して金属桁材5及び金属管材M4の内部に液体(例えば水)を充填すると共に、調圧ポンプ機構15によって金属桁材5及び金属管材M4の内部の液圧を大気圧を超える所定の目標圧P1に調節する。この目標圧P1は、金属管材M4の材質や肉厚を考慮しつつ液圧のみで金属管材M4の変形が起こり得ない程度の圧力値であって、例えば0.1MPa〜30MPaの範囲に設定される。なお、調圧ポンプ機構15は、下記プレス成形の最中においても、金属桁材5及び金属管材M4の内圧が前記目標圧P1を維持するように液圧制御を行う。
【0030】
続いて図3に示すように、下型12に向けて上型14を押し付けること(型閉じ)で、金属管材M4をプレス成形する。このときの両型によるプレス圧は50〜300MPaの範囲が好ましい。このプレス加工の結果、上下両型の付形部12a,14aによって固定及び可動シール21,31が装着された金属管材M4の長手方向両端付近を除く中央部位に、横断面が流線形状に近似した翼型形状が付与される(図6参照)。
【0031】
なお、型閉じによって上下両型が接合又は最接近した場合でも、下型及び上型の各付形部12a,14aは、金属管材M4を所望の翼型形状にプレス成形するだけであり、金属管材M4内の金属桁材5に対しては成形作用をほとんど及ぼさない。但し、プレス加工によって所望の翼型形状に成形された後のブレード本体4aにあっては、それを構成する二つの対向壁41,42間に金属桁材5を狭着(又は圧着)することで、当該ブレード本体4a内における金属桁材5の位置決め及び固定が行われる(図6参照)。
【0032】
4.プレス加工後の処理
プレスによる付形が完了したら、成形品内から液体を排出すると共にブレード製造装置から成形品を取り外す(型外し)。そして、その成形品のうち、固定及び可動シール21,31が装着されていて実質的なプレス成形を受けていない両端部分を本体部分から切断除去する。これにより、最終製品としての直線翼型ブレード4が得られる。
【0033】
[本実施形態の作用及び効果]
本実施形態のブレード製造手順によれば、ブレード本体4aを構成するための前駆体としての中空な金属管材M4の内部に中空な金属桁材5と液体とを含んだ状態で金属管材M4に対してプレス加工を施すことにより、当該金属管材M4を所望の翼型形状に成形している。金属管材M4の内部に流体を満たした状態でのプレス加工では、液体が金属管材M4の内側全体に均等に圧力を及ぼすので、金属管材M4は、不本意なシワやつぶれを生ずることなくプレス型(12,14)の形状に合致した所望の翼型形状に成形される。
【0034】
また、金属管材M4の内部に収容される中空な金属桁材5の内外にも液体が満たされるため、プレス加工時には、金属桁材5の内面及び外面は同じ圧力を受ける。従って、プレス型(12,14)で金属管材M4をプレス加工しても、金属桁材5に対する実質的な変形は加えられず、横断面が略四角形状の中空な金属桁材5をそのまま内部に組み込んだ状態で、金属管材M4が所望の翼型形状に成形される。
【0035】
本実施形態によれば、ブレード本体4a内には補強材としての中空な金属桁材5が内装されるため、ブレード4の軽量化を図りつつ剛性を高めることができる。また、製造過程において、金属桁材5をブレード本体4a内に固定して両者を一体化できるため、壊れ難くてしかも形状及び寸法精度に優れたブレード4を製造することができる。
【0036】
本実施形態によれば、ブレード本体4a及び金属桁材5ともに一般に繊維強化樹脂(FRP)よりも安価な金属材料で構成されている。また、FRP製ブレードの場合には、二つの対向壁41,42を接着で貼り合わせる必要があったが、本実施形態はプレス型(12,14)を用いた中空金属材料の塑性一体加工を基調とするので、製造工数、製造時間及び製造コストを、FRPを使用する従来例に比べて大幅に低減することができる。従って、本実施形態によれば、直線翼垂直軸型風力発電装置用のブレード4を従来よりも安価で効率的に製造することができる。
【0037】
以下、上記実施形態の変更例について種々言及する。
【0038】
[変更例]:上記実施形態では、ブレード本体4aを構成する二つの対向壁41,42間に金属桁材5を単純狭着(又は単純圧着)することで、ブレード4内部における金属桁材5の位置決め及び固定を行った。これに代えて、図7に示すようなブレード本体4aと金属桁材5との係合構造を採用してもよい。図7は、図6の二点鎖線で囲んだ二つの部位の代替構造を拡大して示す。図7の構造は、前記液圧プレス加工の型閉じ時に同時成形することができる。つまり、下型の付形部12a及び上型の付形部14aの各々に対し、ブレード本体4aの各対向壁41,42の一部に内側に向けて突出する内向き突起又は突条43を付与するための突起部又は突条部を設けておく。かかる突起部又は突条部を有する上下両型12,14を用いて金属管材M4に液圧プレス加工を施すことで、図7に示すように、ブレード本体4aの対向壁41,42の各々には内向き突起又は突条43が付与されると共に、これらの内向き突起又は突条43が金属桁材5の構成壁に食い込み、当該構成壁が局部的に凹む。こうして、ブレード本体4aの各対向壁41,42の内向き突起又は突条43が、それによって凹まされた金属桁材5の構成壁の一部に密に係合する。内向き突起又は突条43と金属桁材5の凹んだ構成壁との緊密な係合関係により、ブレード内部における金属桁材5の固定が確実になって金属桁材5の位置ずれがほぼ恒久的に防止される。なお、図7の変更例でも、金属桁材5の横断面形状は終始一貫して略四角形状を維持し続ける。つまり、前記内向き突起又は突条43との係合目的のために金属桁材5の構成壁の一部が凹むことがあるとしても、かかる凹み(変形)は金属桁材5の横断面形状に実質的な変更を強いるものではない。
【0039】
[変更例]:図8に示すように、ブレード本体4a内に複数個の金属桁材5を配設してもよい。
【0040】
[変更例]:上記実施形態では、固定シール21及び可動シール31の各々に対して金属管材M4の各端部を外嵌したが、それにとどまらず更に、外嵌状態にある金属管材M4の各端部を、例えば帯状の締付け金具(図示略)を用いてその周囲から締付け固定してもよい。このような追加的な締付け固定を行うことで、金属管材M4内に液圧P1を付与したとき及び/又は型閉め時に、固定又は可動シール21,31から金属管材M4等が外れる事態を確実に防止できる。
【0041】
[変更例]:型閉じ操作で下型12及び上型14を接合又は最接近させた後に、型内に納められた製品の内圧をP1(P1=0.1〜30MPa)からP2(例えばP2=50〜200MPa)に一旦高め、その後に製品を型外しするようにしてもよい。型外し前に液圧をP2に高めることで、不本意な凹みが解消され、型形状に正確に合致した形状のブレード製品を確実に得ることができる。
【0042】
[変更例]:横断面が略四角形状の中空な金属桁材5については、図9に示すように、その一つ又は複数の側面に強度補強用のリブ51が予め設けられていてもよい。補強用リブ51が金属桁材5の長手方向に沿って所定間隔おきに複数個配設されていることは好ましく、又、各補強用リブ51が金属桁材5の長手方向と直交する方向に延びるものであることは好ましい。かかる補強用リブ51の存在は、金属桁材5の曲げ剛性その他の強度特性を飛躍的に高める。なお、補強用リブ51は例えば、中空な金属素管5を液圧成形する際に併せて、当該金属素管5の管壁の一部を内から外に膨出させることで容易に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】直線翼垂直軸型風力発電装置の風車の概略を示す斜視図。
【図2】ブレード製造装置の型開き時の概略縦断面図。
【図3】ブレード製造装置の型閉じ時の概略縦断面図。
【図4】金属桁材の作製手順の概要を示す概略横断面図。
【図5】プレス加工前の金属管材と金属桁材との配置関係を示す概略横断面図。
【図6】プレス加工によって得られるブレードの概略横断面図。
【図7】金属桁材とブレード本体との係合構造に関する変更例の部分拡大断面図。
【図8】変更例を示す図6相当の概略横断面図。
【図9】金属桁材の変更例を示す部分斜視図。
【符号の説明】
【0044】
4…直線翼型ブレード、4a…ブレード本体、5…金属桁材、12…下型(固定プレス型)、14…上型(可動プレス型)、21,31…固定及び可動シール(シール手段)、41,42…ブレード本体を構成する対向壁、43…内向き突起又は突条、M4…中空な金属管材、M5…中空な金属素管。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
横断面が略四角形状の中空な金属桁材を準備する桁材準備工程と、
前記中空な金属桁材を中空な金属管材の内部に収容配置する配置工程と、
前記中空な金属桁材を収容した中空な金属管材の両端部をシールすると共に、これら中空な金属桁材及び金属管材の内部に流体を満たす流体充填工程と、
前記金属桁材及び流体を内部に含んだ状態の金属管材に対してプレス型を用いてプレス加工を施すことにより、金属桁材の横断面形状に実質的な変更を強いることなく、金属管材に対して横断面が流線形状に近似した翼型形状を付与する流体圧プレス工程と
を備えることを特徴とする風水力発電用ブレードの製造方法。
【請求項2】
前記流体圧プレス工程では、前記中空な金属管材の内部に満たされた流体の圧力を、その流体圧力のみによって金属管材が膨張又は変形を起こし得ない程度の圧力値(P1)に保つことを特徴とする請求項1に記載の風水力発電用ブレードの製造方法。
【請求項3】
前記桁材準備工程では、出発材となる中空な金属素管の両端部をシールすると共に、その金属素管の内部に流体を満たす工程と、前記流体を内に含んだ状態の金属素管に対してプレス加工を施すことにより当該金属素管に対して横断面が略四角形状となる形状を付与する工程とを経て、前記横断面が略四角形状の中空な金属桁材を準備することを特徴とする請求項1又は2に記載の風水力発電用ブレードの製造方法。
【請求項4】
前記流体圧プレス工程では、前記翼型形状を付与されるブレード本体を構成する壁の一部に内向き突起又は突条を同時成形し、且つその内向き突起又は突条を前記金属桁材を構成する壁の一部に食い込ませることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の風水力発電用ブレードの製造方法。
【請求項5】
前記流体圧プレス工程の後に、前記翼型形状のブレード本体内の圧力を、前記金属管材が膨張又は変形を起こし得ない程度の圧力値(P1)よりも高い圧力値(P2)に高める再加圧工程を更に備えることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の風水力発電用ブレードの製造方法。
【請求項6】
前記流体圧プレス工程では、金属管材に対して横断面が流線形状に近似した直線翼型形状を付与することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の直線翼垂直軸型風水力発電用ブレードの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−299983(P2006−299983A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−124561(P2005−124561)
【出願日】平成17年4月22日(2005.4.22)
【出願人】(000100805)アイシン高丘株式会社 (202)
【Fターム(参考)】