説明

風車方位制御装置、風力発電装置及び風車方位制御方法

【課題】風力から効率良く発電する。
【解決手段】風車方位制御装置Aは、風車ロータ部3を中心とする全方位を所定角度に分割して得られるブロック各々における風の発生回数を、所定の集計時間の間、風向計11の測定結果に基づいて集計し、集計結果に基づいてブロック各々を中心とする連続した複数のブロックにおける風の発生回数の総和を、中心となったブロック(中心ブロック)の総和として算出し、総和が最大となった中心ブロックの方位を風向方位として算出し、風向方位に風車ロータ部3が向くようにモータドライバ13にモータ14を駆動させるPLC12を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風車方位制御装置、風力発電装置及び風車方位制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、温室効果ガスの排出量の増加や化石燃料の枯渇などの問題から、自然エネルギーである風力を利用した風力発電装置が注目されている。風力発電装置は、一般的な構造として、支柱の先端部に取り付けられた風車のロータ部が回転することで生じる動力(回転力)によって発電機を駆動する。風力発電装置は、動力の発生に燃料を使用しないので、化石燃料の使用量を削減、すなわち二酸化炭素の排出量を低減することが可能であり、また構造が比較的簡単なので据付が容易である等の特徴を有している。このような風力発電装置では、風力エネルギーを効率良く回収して発電するために、風車が風向に正対するようにその方位が制御される(例えば、下記特許文献1)。風向の算出方法としては、風向計の所定時間内の測定結果に基づいて風向の平均値を求め、当該平均値を風向として算出することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−156317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、自然界では、短時間の間に風向が激しく変化することがある。例えば、風向の変化が激しく、短時間の間に風向が180度変化することもある。上記従来技術の風向算出方法は、このような風向の変化が激しい状況である場合に、激しく変化する風向の中間値、すなわち本来存在しない風向を平均値として算出する可能性が高い。本来存在しない風向が平均値として算出されると、当該平均値に正対するように風車が制御されるので、風力から効率良く発電することができない。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、風力から効率良く発電することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明では、風車方位制御装置に係る第1の解決手段として、水平軸風車の風車ロータ部の方位を変位させる駆動手段と、風の方位を測定する風向計と、前記風車ロータ部を中心とする全方位を所定角度に分割して得られるブロック各々における風の発生回数を、所定の集計時間の間、前記風向計の測定結果に基づいて集計する風発生回数集計手段と、前記風発生回数集計手段の集計結果に基づいて前記ブロック各々を中心とする連続した複数の前記ブロックにおける風の発生回数の総和を、中心となった前記ブロック(中心ブロック)の総和として算出する総和算出手段と、前記総和が最大となった前記中心ブロックの方位を風向方位として算出する風向方位算出手段と、前記風向方位に前記風車ロータ部が向くように前記駆動手段を制御する制御手段とを具備するという手段を採用する。
【0007】
また、本発明では、風車方位制御方法に係る第1の解決手段として、水平軸風車の風車ロータ部の方位を制御する風車方位制御方法であって、風の方位を測定する第1の工程と、前記風車ロータ部を中心とする全方位を所定角度に分割して得られるブロック各々における風の発生回数を、所定の集計時間の間、前記第1の工程の測定結果に基づいて集計する第2の工程と、前記第2の工程の集計結果に基づいて前記ブロック各々を中心とする連続した複数の前記ブロックにおける風の発生回数の総和を、中心となった前記ブロック(中心ブロック)の総和として算出する第3の工程と、前記総和が最大となった前記中心ブロックの方位を風向方位として算出する第4の工程と、前記風向方位に前記風車ロータ部を向けさせる第5の工程とを具備するという手段を採用する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ブロック各々を中心とする連続した複数のブロックにおける風の発生回数の総和を算出し、総和が最大となるブロックの方位に風車ロータ部を向けさせる。このように、本発明は、風の発生回数に基づいて風向方位を判断するので、風の発生が実際に多い方位に風車ロータ部を向けさせることができる。このため、本発明は、風力から効率良く発電することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1実施形態に係る風車方位制御装置を備える風力発電装置の概略構成図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る風車方位制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】本発明の第1実施形態に係る風車方位制御装置のブロックbk1〜bk90を示す模式図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る風車方位制御装置の動作の変形例を示す図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る風車方位制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図6】本発明の第2実施形態に係る風車方位制御装置のアラーム対応処理31aを示すフローチャートである。
【図7】本発明の第2実施形態に係る風車方位制御装置のアラーム対応処理31bを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
〔第1実施形態〕
第1実施形態に係る風車方位制御装置Aは、風力発電装置Sにおける風車ロータ部3の方位を制御するものである。まず、風車方位制御装置Aを備える風力発電装置Sの全体構成について説明する。風力発電装置Sは、風力によって前記水平軸風車に発生する動力(回転力)を利用した発電装置であり、図1に示すように、タワー1、発電機2、風車ロータ部3、ナセル4、二次電池B及び風車方位制御装置Aを備える。
【0011】
タワー1は、例えば地面に立設されており、地表からの高さが数十メートル程度の円柱状の固定構造物である。タワー1は、中空構造であり、その内部に二次電池Bを収容する。なお、図1では、風車方位制御装置Aは、タワー1の外に描かれているが、実際には、タワーから離れて設けられた制御盤の内部に収容されている。
発電機2は、ナセル4に収容され、駆動軸に風車ロータ部3が接続されている。発電機2は、ケーブルを介して二次電池Bと電気的に接続され、発電した電力を二次電池Bに出力する。
【0012】
風車ロータ部3は、発電機2の駆動軸端部に設けられた風車ロータヘッドを有しており、風車ロータヘッドには、図1に示すように例えば3枚のブレードが設けられている。発電機2の駆動軸は地面に水平となるようにナセル4内部に収容されており、このような発電機2に軸結合する風車ロータ部3は、その駆動軸の鉛直面を回転面とする水平軸の風車ロータ部である。
【0013】
ナセル4は、発電機2を収容するケーシングであり、タワー1上部にヨー軸(垂直軸)を中心に回転可能に取り付けられている。このナセル4は、風車ロータ部3が効率良く風力を受ける方向を向くように、風車方位制御装置Aの制御の下、ヨー軸を中心に回転する。
二次電池Bは、リチウムイオン二次電池、鉛蓄電池またはNAS電池(ナトリウム硫黄二次電池)などであり、タワー1の内部に収容され、発電機2によって発電された電力を蓄電する。
【0014】
風車方位制御装置Aは、風力発電装置Sが効率良く電力を発電できるように、風向に応じて風車ロータ部3の方位を制御するものであり、図1に示すように、風向計11、PLC(programmable logic controller)12、モータドライバ13及びモータ14を備える。なお、PLC12は、本実施形態における風発生回数集計手段、総和算出手段、風向方位算出手段及び制御手段である。また、モータドライバ13及びモータ14は、本実施形態における駆動手段である。
【0015】
風向計11は、ナセル4の上部に取付けられ、設置場所における風向及び風速を測定し、当該測定結果(データ)を風測定信号としてPLC12に出力する。
PLC12は、マイクロプロセッサ及びメモリなどから構成され、メモリに記憶されているプログラム及び風向計11から入力される風測定信号に基づいて演算を行い、演算結果に基づいてモータドライバ13へ位置指令を出す。なお、PLC12が実行する処理の詳細については、以下に風車方位制御装置Aの動作として説明する。
【0016】
モータドライバ13は、インバータ回路などから構成され、PLC12から入力されるパルス制御信号に基づいてスイッチングすることにより、モータ駆動電力を生成してモータ14に供給する。
モータ14としてのロータがナセル4に接続され、モータドライバ13から供給されたモータ駆動電力に基づいてロータを回転させ、ナセル4をヨー軸中心に回転させる。つまり、モータ14は、ナセル4を回転させることで、風車ロータ部3の方位を変位させる。
なお、PLC12とモータドライバ13は、制御盤に収容されており、風向計11と、PLC12と、モータドライバ13と、モータ14とは、それぞれ有線または無線で接続されている。
【0017】
次に、上記構成の風車方位制御装置Aの動作について説明する。なお、後述するステップS1は本発明の第1の工程に対応し、ステップS2〜6は本発明の第2の工程に対応し、ステップS7は本発明の第3の工程に対応し、ステップS8及びステップS9は本発明の第4の工程に対応し、さらに、ステップS10及び11は本発明の第5の工程に対応する。
【0018】
風車方位制御装置Aにおいて、常時、風向計11は、風向を測定し、図2に示すように、当該測定結果を風測定信号としてPLC12に出力する(ステップS1)。
続いて、PLC12は、風向計11から入力される風測定信号を所定のサンプリング周期でサンプリングして、風向情報を取得する。そして、PLC12は、風車ロータ部3を中心とする全方位を所定角度に分割して得られるブロック各々における風の発生回数を、所定の集計時間の間、風向情報に基づいて集計する。
【0019】
上記処理について以下詳細に示す。PLC12は、所定のサンプリング周期(例えば1秒)を経過したか否か判定する(ステップS2)。PLC12は、ステップS2において『YES』と判定した場合には、すなわちサンプリング周期を経過した場合には、風測定信号をサンプリングして、風測定信号から風向情報を取得する(ステップS3)。この際、PLC12は、風向情報として、風向の方位を取得する。
【0020】
PLC12は、ステップS3の後に、風向情報に基づいてブロック毎の風の発生回数を集計する(ステップS4)。上記ブロックとは、風車ロータ部3を中心とする全方位が所定角度に分割されたものである。例えば、図3に示すように、風車ロータ部3を中心とする全方位(360度)が「4度」毎に90個のブロックbk1〜bk90に分割されている。なお、ブロックbk1〜bk90の角度については、小さすぎると、PLC12の計算負荷が高くなり、大きすぎると、後述する風向方位の算出精度が下がってしまう。そのため、PLC12の計算負荷と風向方位の算出精度とを考慮して、上記「4度」という角度に設定されている。また、図3に示す「0度」は、風車ロータ部3の前方、すなわち回転面が向いている方位を示している。
【0021】
例えば、PLC12は、上記ステップS3において、風向情報として「10度」を取得した場合には、ステップS4において、図3に示すブロックbk3(8度〜12度の範囲)の風の発生回数を1カウントアップする。具体的には、PLC12は、プログラムにおいてブロックbk1〜bk90各々に対応した変数Bk1〜Bk90が宣言されている場合に、変数Bk3に代入されている値をカウントアップ、すなわち「Bk3=1」(変数Bk3に「1」が代入されている)という場合に、「Bk3=2」(変数Bk3に「2」を代入する)という処理を実行し、内部のメモリに記憶する。
【0022】
図2に戻り、PLC12は、ステップS4の後に、サンプリングタイマをリセットし、再びサンプリングタイマによるサンプリング周期の計時を開始する(ステップS5)。なお、サンプリングタイマとは、サンプリング周期を計時するためのタイマである。PLC12は、ステップS5の後に、所定の集計時間(例えば「10分」)を経過したか否か判定する(ステップS6)。
【0023】
このように、PLC12は、上記ステップS2〜6において、集計時間「10分」の間、風向情報に基づいてブロックbk1〜bk90における風の発生回数のカウントアップを繰り返すことにより、ブロックbk1〜bk90毎の風の発生回数を集計する。なお、一般的に、風力発電装置Sにおける風車ロータ部3の方位の制御間隔は、モータ14の消費電力及び劣化を抑えるために、「10分」という時間に設定されている。本実施形態において、集計時間は、上記時間に基づいて「10分」に設定されている。
【0024】
図2に戻り、PLC12は、ステップS6において『YES』と判定した場合には、すなわち集計時間を経過した場合には、ブロックbk1〜bk90各々の風の発生回数の集計結果に基づいてブロックbk1〜bk90各々を中心とする連続した複数のブロック(例えば9個のブロック)における風の発生回数の総和を、中心となったブロック(中心ブロック)の総和として算出する(ステップS7)。すなわち、PLC12は、上記ステップS7において、中心ブロックから±16度(4個のブロック)の範囲の風の発生回数の総和を算出する。
【0025】
上記ステップS7について具体的に説明する。まず、PLC12は、図3に示すブロックbk1を中心ブロックとするブロックbk87〜bk5(ブロックbk1を中心とする9個のブロック)の風の発生回数の総和を算出する。例えば、ブロックbk87の風発生回数が5回(Bk87=5)、ブロックbk88が6回(Bk88=6)、ブロックbk89が4回(Bk89=4)、ブロックbk90が4回(Bk90=4)、ブロックbk1が3回(Bk1=3)、ブロックbk2が3回(Bk2=3)、ブロックbk3が2回(Bk3=2)、ブロックbk4が2回(Bk4=2)、ブロックbk5が1回(Bk5=1)である場合に、その総和は「30」になる。PLC12は、変数Bk87〜Bk5の値に基づいて総和「30」を算出し、プログラムにおいてブロックbk1を中心ブロックとする総和の保存先である変数Cb1が宣言されている場合には、「Cb1=30」(変数Cb1に「30」を代入する)という処理を実行し、内部のメモリに記憶する。
【0026】
PLC12は、上記処理を終了すると、次にブロックbk2を中心ブロックとするブロックbk88〜bk6(ブロックbk2を中心とする9個のブロック)の風の発生回数の総和を算出する。例えば、ブロックbk88〜bk5の風発生回数が上述の回数であり、ブロックbk6の風発生回数が2回(Bk6=2)である場合に、その総和は「31」になる。PLC12は、変数Bk88〜Bk6の値に基づいて総和「31」を算出し、ブロックbk2を中心ブロックとする総和の保存先である変数Cb2が宣言されている場合には、「Cb2=31」(変数Cb2に31を代入する)という処理を実行し、内部のメモリに記憶する。
【0027】
PLC12は、上記処理を終了すると、次にブロックbk3を中心ブロックとするブロックbk89〜bk7(ブロックbk3を中心とする9個のブロック)の風の発生回数の総和を算出する。このように、PLC12は、上記ステップS7において、ブロックbk1〜bk90各々を中心ブロックとする90個の総和を算出し、それぞれの総和を変数Cb1〜Cb90に代入し、内部のメモリに記憶する。
【0028】
図2に戻り、PLC12は、ステップS7の後に、メモリに記憶された各総和に基づいて総和が最大となった中心ブロックの方位を風向方位として算出する(ステップS8)。
例えば、PLC12は、総和が最大となった中心ブロックがブロックbk2である場合には、ブロックbk2の中心を風向方位として算出する。
【0029】
PLC12は、ステップS8の後に、集計時間タイマをリセットし、再び集計時間タイマによる集計時間の計時を開始する(ステップS9)。上記集計時間タイマとは、集計時間(例えば「10分」)を計時するためのタイマである。つまり、PLC12は、ステップS9において、集計時間タイマをリセットし、再び集計時間を計時しつつ、次回の各ブロックにおける風の発生回数の集計を開始する。PLC12は、上記動作を繰り返すことで、ステップS8において集計時間毎に風向方位を算出することができる。
【0030】
PLC12は、ステップS9の後に、現在の風車ロータ部3の方位と、風向方位との差が角度のしきい値(例えば「16度」)を超えたか否か判定する(ステップS10)。PLC12は、ステップS10において『YES』と判定した場合には、すなわち現在の風車ロータ部3の方位と、風向方位との差が角度のしきい値を超えた場合には、パルス制御信号をモータドライバ13に出力し、モータドライバ13にモータ14を駆動させることで、風車ロータ部3の方位を風向方位に向けさせる(ステップS11)。上記角度のしきい値とは、風車ロータ部3の方位を風向方位に合わせて変位させるか否か判断するための基準値である。例えば、PLC12は、角度のしきい値が「16度」である場合に、上記ステップS10において、現在の風車ロータ部3の方位と、風向方位との差が角度のしきい値「16度」を超えたと判定すると、上記ステップS11において、モータドライバ13にモータ14を駆動させることで、風車ロータ部3の方位を風向方位に向けさせる。
【0031】
図2に戻り、PLC12は、ステップS10において『NO』と判定した場合には、すなわち現在の風車ロータ部3の方位と、風向方位との差が角度のしきい値を超えていない場合には、風車ロータ部3の方位を変位させずに、処理を終了する。このように、現在の風車ロータ部3の方位と、風向方位との差が角度のしきい値を超えていない、すなわち、風車ロータ部3の方位と、風向方位との差が小さい場合には、モータ14の稼働を抑制する。
【0032】
ここで、上記ステップS7において、風発生回数の総和を算出する中心ブロックからの範囲を±16度(4個のブロック)にした理由について説明する。風力発電装置Sにおいて、発電に利用できる風力エネルギーは、(風速×cosθ)に比例する(θは、風車ロータ部3の方位と風向との差)。よって、風力発電において望まれる90パーセント以上の風力エネルギーを回収するには、θを「15度」以下にする必要がある。本実施形態では、この「15度」を基準にして、「15度」に近似するとともに、ブロックbk1〜bk90の角度「4度」の倍数である「±16度」を風発生回数の総和を算出する範囲に設定している。また、上記ステップS10において、角度のしきい値を「16度」にしているが、これも、上述したθ「15度」に近似する値であるとともに、ブロックbk1〜bk90の角度「4度」の倍数であることに基づいて設定している。
【0033】
以上のように、本実施形態では、ブロックbk1〜90各々を中心とする連続した複数のブロックにおける風の発生回数の総和を算出し、総和が最大となるブロックの方位に風車ロータ部3を向けさせる。このように、本実施形態は、風の発生回数に基づいて風向方位を判断するので、従来技術のように風が本来存在しない方位ではなく、風の発生回数が実際に多い方位に風車ロータ部3を向けさせることができる。これにより、本実施形態は、風車ロータ部3に接続される発電機2に風力から効率良く発電させることができる。つまり、本実施形態を備えた風力発電装置Sは、風力から効率良く発電することができる。
【0034】
また、本実施形態は、単純に風の発生回数に基づいて風向方位を算出するので、例えば、風向計11により測定された風速に基づいて風力エネルギーを算出し、当該風力エネルギーから風向方位を算出する場合に比べて、PLC12の計算負荷を軽減することができる。さらに、本実施形態では、現在の風車ロータ部3の方位と、風向方位との差が角度のしきい値を超えている場合にのみ、風車ロータ部3の方位を風向方位に変更させる。つまり、風車ロータ部3の方位の変位がわずかである場合、すなわち発電効率が大きく変化しない場合には、モータ14を稼働させない。これにより、モータ14の消費電力及び劣化を抑えることができる。
【0035】
〔第2実施形態〕
次に、第2実施形態について説明する。
本第2実施形態は、第1実施形態と同一の構成を有する一方、PLC12のメモリに記憶されているプログラムが第1実施形態と異なる。つまり、第2実施形態は、PLC12の動作が第1実施形態と異なる。よって、第2実施形態については、構成に関する説明を省略して、図5及び図6を参照して、動作についてのみ説明する。また、図5におけるステップS21〜29については、図2におけるステップS1〜9と同様であり、さらにステップS32、33についてはS10、11と同様であるので、説明を省略する。なお、PLC12は、本実施形態における方位選択手段である。また、後述するステップS30、S31a(S31b)は、本実施形態におけるアラーム対応工程である。
【0036】
PLC12は、ステップS29の後に、システムアラームを検知したか否か判定する(ステップS30)。なお、システムアラームとは、風車方位制御装置A及び風力発電装置Sにおいて各種エラーの発生を通知するために出力されるアラームである。
【0037】
PLC12は、システムアラームを検知しなかった場合(NOの場合)、ステップS32の処理を実行する。一方、PLC12は、システムアラームを検知した場合(YESの場合)、アラーム対応処理31aを実行する(ステップS31a)。まず、PLC12は、該アラーム対応処理31aにおいて、上記ステップS28の処理で算出された風向方位に直交する第1の目標方位(風向方位+90度)を算出する(ステップS301)と共に第2の目標方位(風向方位−90度)を算出する(ステップS302)。
【0038】
そして、PLC12は、ステップS302の後に、第1の目標方位がヨー軸を中心とする風車ロータ部3の変位(回転)可能な範囲内(第1の目標方位が正のオーバートラベルと負のオーバートラベルの間)であるか否か判定する(ステップS303)。ここでは、風車ロータ部3がヨー軸を中心に無限回転できないため、第1の目標方位が風車ロータ部3の正転極限と逆転極限との間におさまるか否かについて判定している。なお、上記オーバートラベルとは、ヨー軸を中心とした風車ロータ部3の回転可能範囲のことである。
【0039】
PLC12は、第1の目標方位が風車ロータ部3の変位可能な範囲内である場合(YESの場合)、モータドライバ13にモータ14を駆動させることで、風車ロータ部3を第1の目標方位に向けさせる(ステップS304)。一方、PLC12は、第1の目標方位が風車ロータ部3の変位可能な範囲内でない場合(NOの場合)、モータドライバ13にモータ14を駆動させることで、風車ロータ部3を第2の目標方位に向けさせる(ステップS305)。また、PLC12は、システムアラーム発生時にだけ上記処理を行うのではなく、システムアラーム発生中において風向方位が更新されるたびに、上記処理を実行して、風車ロータ部3の方位を繰り返し設定し直す。上記動作の結果、風車ロータ部3を従来と比較して安全に停止できる。
【0040】
次に、第2実施形態の変形例について説明する。
第2実施形態の変形例も、PLC12の動作が第1実施形態と異なる。よって、第2実施形態の変形例についても、図5及び図7を参照して、動作についてのみ説明する。また、図5におけるステップS21〜29及びステップS32、33についても、同様に、説明を省略する。
【0041】
PLC12は、ステップS29の後に、システムアラームを検知したか否か判定する(ステップS30)。そして、PLC12は、システムアラームを検知しなかった場合(NOの場合)、ステップS32の処理を実行する。
【0042】
一方、PLC12は、システムアラームを検知した場合(YESの場合)、アラーム対応処理31bを実行する(ステップS31b)。まず、PLC12は、該アラーム対応処理31b(ステップS31b)において、上記ステップS28の処理で算出された風向方位に直交する第1の目標方位(風向方位+90度)を算出する(ステップS311)と共に第2の目標方位(風向方位−90度)を算出する(ステップS312)。続いて、PLC12は、第1の目標方位と現在の風車ロータ部3の方位(現在方位)との差の絶対値|Δθ1|(第1の差Δθ1)を算出する(ステップS313)と共に第2の目標方位と現在方位との差の絶対値|Δθ2|(第2の差Δθ2)を算出する(ステップS314)。
【0043】
そして、PLC12は、ステップS314の後に、第1の差Δθ1(|Δθ1|)が第2の差Δθ2(|Δθ2|)より大きいか否か判定する(ステップS315)。ここでは、優先的に現在方位に近い方の目標方位に風車ロータ部3を変位させるために、第1の差Δθ1と第2の差Δθ2とを比較している。PLC12は、第1の差Δθ1が第2の差Δθ2より大きい場合(YESの場合)、つまり現在方位が第2の目標方位に近い場合、第2の目標方位が風車ロータ部3の変位可能な範囲内(第2の目標方位が正のオーバートラベルと負のオーバートラベルの間)であるか否か判定する(ステップS316)。PLC12は、第2の目標方位が風車ロータ部3の変位可能な範囲内である場合(YESの場合)、モータドライバ13にモータ14を駆動させることで、風車ロータ部3を第2の目標方位に向けさせる(ステップS317)。一方、PLC12は、第2の目標方位が風車ロータ部3の変位可能な範囲内でない場合(NOの場合)、モータドライバ13にモータ14を駆動させることで、風車ロータ部3を第1の目標方位に向けさせる(ステップS318)。
【0044】
また、PLC12は、上記ステップS315において第1の差Δθ1が第2の差Δθ2より小さい場合(NOの場合)、つまり現在方位が第1の目標方位に近い場合、第1の目標方位が風車ロータ部3の変位可能な範囲内(第1の目標方位が正のオーバートラベルと負のオーバートラベルの間)であるか否か判定する(ステップS319)。PLC12は、第1の目標方位が風車ロータ部3の変位可能な範囲内である場合(YESの場合)、ステップS318において、モータドライバ13にモータ14を駆動させることで、風車ロータ部3を第1の目標方位に向けさせる。一方、PLC12は、第1の目標方位が風車ロータ部3の変位可能な範囲内でない場合(NOの場合)、ステップS18において、モータドライバ13にモータ14を駆動させることで、風車ロータ部3を第2の目標方位に向けさせる。また、PLC12は、システムアラーム発生時にだけ上記処理を行うのではなく、システムアラーム発生中において風向方位が更新されるたびに、上記処理を実行して、風車ロータ部3の方位を繰り返し設定し直す。
【0045】
以上のように、第2実施形態によれば、システムアラーム発生時に、ヨー軸を中心に風車ロータ部3の方位を変位させることによって風車ロータ部3を風の影響によって回転しない方位、つまり風向方位に対して直交する方位に向けさせる。このような第2実施形態では、システムエラー発生時に、従来から行われている風車ロータ部3のピッチ軸を駆動することによりフェザリングして風を逃がすことに加えて、風車ロータ部3を風の影響によって回転しない方位に向けるので、安全に風車ロータ部3を停止状態にすることができる。
【0046】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記第1、2実施形態に限定されることなく、例えば以下のような変形が考えられる。
(1)上記第1、2実施形態は、中心ブロックを含めて9個のブロック(中心ブロックから±16度)の範囲の風の発生回数の総和を算出したが、本発明はこれに限定されない。
例えば、風力発電において望まれる風力エネルギーの回収率が、上述した90パーセント以上ではなく、65パーセント以上である場合には、上述のθを「30度」以下にしなければならない。そのような場合には、本第1、2実施形態において、「30度」(15度の2倍)を基準にして、「±30度」に近似する「±32度」(中心ブロックを含めて17個のブロック)を風発生回数の総和を算出する範囲に設定すればよい。
【0047】
また、風力発電において望まれる風力エネルギーの回収率が、上述した90パーセント以上ではなく、35パーセント以上である場合には、上述のθを「45度」以下にしなければならない。そのような場合には、本第1、2実施形態において、「45度」(15度の3倍)を基準にして、「±45度」に近似する「±48度」(中心ブロックを含めて25個のブロック)を風発生回数の総和を算出する範囲に設定すればよい。また、15度の6倍である「90度」を基準にする場合であれば、「±90度」に近似する「±92度」(中心ブロックを含めて47個のブロック)を風発生回数の総和を算出する範囲に設定すればよい。さらに、PLC12の計算負荷を軽減する必要がある場合には、「15度」の半分である「7.5度」を基準にして、「±7.5度」に近似する「±8度」(中心ブロックを含めて5個のブロック)を風発生回数の総和を算出する範囲に設定するようにしてもよい。
【0048】
(2)上記第1、2実施形態では、上記ステップS10(ステップS32)において角度のしきい値を用いているが、この角度のしきい値を固定ではなく、可変にするようにしてもよい。つまり、PLC12は、風向計11の測定結果に基づいて風速が速度のしきい値を超えていた場合に、角度のしきい値を小さくするようにしてもよい。上記速度のしきい値とは、角度のしきい値を変えるか否か判断するための風速の基準値である。例えば、PLC12は、速度のしきい値が「10m」である場合に、風速が速度のしきい値「10m」を超えたと判定すると、角度のしきい値を「16度」から「8度」に変更する。上述したように、風力エネルギーは、(風速×cosθ)に比例しており、風速が上がるほど、風車ロータ部3の方位と風向方位とのずれによる損失が大きくなる。そのため、風速が上がった際に、角度のしきい値を小さくすることで、風力エネルギーの損失を低減することができる。
【0049】
また、上記第1、2実施形態では、モータ14の消費電力及び劣化を考慮して、角度のしきい値を設けているが、モータ14の消費電力及び劣化を考慮しなくてもよい場合には、角度のしきい値を設けず、現在の風車ロータ部3の方位と風向方位とが異なっている場合に、風車ロータ部3の方位を風向方位に変位させるようにしてもよい。
【0050】
(3)上記第1、2実施形態では、集計時間を「10分」にしているが、本発明はこれに限定されない。
例えば、モータ14の消費電力及び劣化を考慮しなくてもよい場合には、集計時間を「10分」より短い例えば「1分」にして、「1分」間におけるブロックbk1〜bk90各々の風の発生回数の集計結果に基づいて中心ブロック毎の総和を算出し、当該総和から風向方位を算出するようにしてもよい。また、モータ14の消費電力及び劣化をより考慮しなければならない場合には、集計時間を「10分」より長い例えば「15分」にしてもよい。
【0051】
また、上記第1、2実施形態では、図4(a)に示すように、「10分」の集計時間の間に、ブロックbk1〜bk90各々の風の発生回数を集計し、集計結果に基づいて中心ブロック毎の風の発生回数の総和を算出し、当該総和から風向方位を算出したが、本発明はこれに限定されない。
例えば、図4(b)に示すように、「10分」の集計時間は変えずに、過去「10分」間の集計結果に基づいて「1分」毎に中心ブロック毎の風の発生回数の総和を算出し、当該総和から風向方位を算出するようにしてもよい。つまり、図4(b)に示す方法では、「1分」毎に風車ロータ部3の方位を制御することになる。
【0052】
(4)上記第1、2実施形態は、ブロックbk1〜bk90が「4度」毎に分割されているが、本発明はこれに限定されない。
PLC12の処理能力が高く、計算負荷を考えなくてもよい場合には、ブロックbk1〜bk90各々の角度を「4度」よりも小さい例えば「1度」にして、風向方位の算出精度を上げるようにしてもよい。また、PLC12の計算負荷を低く抑えたい場合には、ブロックの角度を「4度」よりも大きい例えば「8度」(「4度」の2倍)にするようにしてもよい。
【0053】
(5)上記第1、2実施形態に、ステップS2またはステップS22の前処理(ステップS1とステップS2との間、またはステップS21とステップS22との間の処理)として、「PLC12がモータ14を駆動しているか否か判定する(ステップS0)」処理を追加するようにしてもよい。具体的に、PLC12は、ステップS1またはステップS21の後に、上記ステップS0を実行し、ステップS0において『YES』と判定した場合には、すなわちモータ14を駆動している場合には、モータ14の駆動を停止するまで待機し、ステップS0において『NO』と判定した場合には、すなわちモータ14を駆動していない場合には、ステップS2またはステップS22を実行する。風車方位制御装置Aは、モータ14駆動時、すなわち、ナセル4回転時には、不正確な風向情報を取得してしまうが、上記ステップS0が追加されることで、この不正確な風向情報を排除することができる。なお、上記ステップS0は、必ず必要な処理ではないので、必要に応じて搭載すればよい。
【符号の説明】
【0054】
S…風力発電装置、B…二次電池、A…風車方位制御装置、1…タワー、2…発電機、3…風車ロータ部、4…ナセル、11…風向計、12…PLC(風発生回数集計手段、総和算出手段、風向方位算出手段、制御手段及び方位選択手段)、13…モータドライバ(駆動手段)、14…モータ(駆動手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平軸風車の風車ロータ部の方位を変位させる駆動手段と、
風の方位を測定する風向計と、
前記風車ロータ部を中心とする全方位を所定角度に分割して得られるブロック各々における風の発生回数を、所定の集計時間の間、前記風向計の測定結果に基づいて集計する風発生回数集計手段と、
前記風発生回数集計手段の集計結果に基づいて前記ブロック各々を中心とする連続した複数の前記ブロックにおける風の発生回数の総和を、中心となった前記ブロック(中心ブロック)の総和として算出する総和算出手段と、
前記総和が最大となった前記中心ブロックの方位を風向方位として算出する風向方位算出手段と、
前記風向方位に前記風車ロータ部が向くように前記駆動手段を制御する制御手段とを具備することを特徴とする風車方位制御装置。
【請求項2】
前記制御手段は、現在の前記風車ロータ部の方位と、前記風向方位との差が角度のしきい値を超えた場合に、前記風向方位に前記風車ロータ部を向けさせることを特徴とする請求項1に記載の風車方位制御装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記風向計の測定結果に基づいて風速が速度のしきい値を超えた場合に、前記角度のしきい値を小さくすることを特徴とする請求項2に記載の風車方位制御装置。
【請求項4】
前記制御において、システムアラームを検知した場合には、前記風向方位に直交する2つの方位を算出し、前記2つの方位の内、前記風車ロータ部が変位可能な方位を選択する方位選択手段をさらに具備し、
前記制御手段は、前記方位選択手段によって選択された方位に前記風車ロータ部が向くように前記駆動手段を制御することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の風車方位制御装置。
【請求項5】
立設されたタワーと、
電力を蓄電する二次電池と、
発電した電力を前記二次電池に出力する発電機と、
前記発電機の駆動軸に接続される水平軸の風車ロータ部と、
前記発電機を収容し、前記タワーの上部にヨー軸を中心に回転可能に取り付けられているナセルと、
請求項1〜4のいずれか1項に記載の風車方位制御装置とを具備し、
前記風車方位制御装置における前記制御手段は、前記風向方位に前記風車ロータ部が向くように前記ナセルを前記駆動手段によって回転させることを特徴とする風力発電装置。
【請求項6】
水平軸風車の風車ロータ部の方位を制御する風車方位制御方法であって、
風の方位を測定する第1の工程と、
前記風車ロータ部を中心とする全方位を所定角度に分割して得られるブロック各々における風の発生回数を、所定の集計時間の間、前記第1の工程の測定結果に基づいて集計する第2の工程と、
前記第2の工程の集計結果に基づいて前記ブロック各々を中心とする連続した複数の前記ブロックにおける風の発生回数の総和を、中心となった前記ブロック(中心ブロック)の総和として算出する第3の工程と、
前記総和が最大となった前記中心ブロックの方位を風向方位として算出する第4の工程と、
前記風向方位に前記風車ロータ部を向けさせる第5の工程とを具備することを特徴とする風車方位制御方法。






【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−229692(P2012−229692A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−92114(P2012−92114)
【出願日】平成24年4月13日(2012.4.13)
【出願人】(390029805)THK株式会社 (420)
【Fターム(参考)】