説明

飛しょう体誘導装置

【課題】航空機などを目標とする飛翔体において、短い終末誘導時間でも、精度良く飛しょう体を目標に会合させるため、短時間での誘導を可能にする誘導制御技術を提供する。
【解決手段】目標の運動を探知して追尾するシーカ1と、前記シーカ1からの出力に基き前記目標の運動を推定するフィルタ装置2と、飛しょう体の運動を観測する慣性航法装置3と、前記目標の運動と前記飛しょう体の運動とから、前記目標と前記飛しょう体との相対運動を計算する相対運動計算装置4と、前記相対運動の結果に基き、誘導完了までの制御周期ごとの前記飛しょう体を加速する加速度指令値を計算する最適誘導計算装置5と、を備え、前記最適誘導計算装置5は、前記制御周期の度に、前記制御周期ごとの前記加速度指令値を繰返し計算する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、飛しょう体を目標物に会合させるための飛しょう体誘導装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、飛しょう体を誘導する際に比例誘導則が多く使用されてきた(例えば、非特許文献1の11〜30頁参照)。
ここで比例誘導則とは、シーカで検出された目視線角の変化率と相対運動計算によって推定される相対接近速度に比例した加速度指令により誘導を行う誘導則のことである。
【0003】
また、あらかじめ数式モデルを用いて、ミスディスタンスの零化を目的とし、入力コス
トを最小化する意味での最適な誘導則が提案されてきた(例えば、非特許文献1の143頁〜162頁参照)。
【0004】
また、プラント制御等の時定数が大きいシステムにおいて、オンライン最適制御が行わ
れてきた(例えば、特許文献1参照)。しかし、従来、計算速度の問題からオンライン最適制御は飛しょう体のような時定数が小さくノイズの影響が大きいシステムには用いられていない。これは最適化計算が収束する前に次の制御周期が来てしまい、十分な制御性能を発揮することが難しいからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−199825号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】“Tactical and Strategic Missile Guidance Fourth Edition”,Paul Zarchan,ISBN:1-56347-497-2
【非特許文献2】“Continuation/GMRES Method for Fast Algorithm of Nonlinear Receing Horizon Control”,Toshiyuki Ohtsuka, Proc. of the 39th IEEE Conference on Decision and Control 2000
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、飛しょう体の会合目標物である航空機などに対するステルス化技術の発達により、目標のRCS(Rader Cross Section)が小さくなっている。これにより飛しょう体のシーカの探知及び追尾性能が劣化し、目標を精度良く探知できる距離(ロックオンレンジ)が短縮し、結果として、飛しょう体を目標へ会合させるための終末誘導時間が短縮して目標との会合確率が低下してしまうという問題があった。
【0008】
本発明は係る課題を解決するためになされたものであり、短い終末誘導時間でも精度良く飛しょう体を目標に会合させるため、飛しょう体および目標の運動を逐次に数値シミュレーションを行うことにより高い精度で予測し、制御系の遅れ要素や非線形要素の影響を補償することにより、短時間での誘導を可能にする誘導制御技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の飛しょう体誘導装置は、飛しょう体に搭載され、目標に向けて飛しょう体を誘導する飛しょう体誘導装置であって、目標の運動を探知して追尾するシーカと、前記シーカからの出力に基き前記目標の運動を推定するフィルタ部と、飛しょう体の運動を観測する慣性航法部と、前記目標の運動と前記飛しょう体の運動とから、前記目標と前記飛しょう体との相対運動を計算する相対運動計算部と、前記相対運動の結果に基き、誘導完了までの制御周期ごとの前記飛しょう体を加速する加速度指令値を計算する最適誘導計算部と、を備え、前記最適誘導計算部は、前記制御周期の度に、前記制御周期ごとの前記加速度指令値を繰返し計算する。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、終末誘導距離が短い場合においても最適化計算を行うことにより、目標と飛しょう体間の相対運動を高い精度で予測可能である。また、制御系の遅れ要素や非線形要素を補償することができるので、従来に比べてステルス目標に対してもより高い確率で飛しょう体を目標に会合させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施の形態1の飛しょう体誘導装置の構成を示す図である。
【図2】実施の形態1の最適誘導計算装置の構成、動作を説明する図である。
【図3】実施の形態1の最適誘導計算装置の動作を会合シミュレーションの概略図とともに説明する図である。
【図4】実施の形態2の飛しょう体誘導装置の構成を示す図である。
【図5】実施の形態3の飛しょう体誘導装置の構成を示す図である。
【図6】実施の形態4の飛しょう体誘導装置の構成を示す図である。
【図7】実施の形態5の最適誘導計算装置の構成、動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態1.
図1は、本実施の形態1に係る飛しょう体誘導装置の構成を示す図である。飛しょう体誘導装置は、シーカ1、フィルタ装置2、慣性航法装置3、相対運動計算装置4、最適誘導計算装置5から構成される。
シーカ1は、目標の運動を探知および追尾することにより、目標の目視線角、目視線角時間変化率およびドップラ情報を出力する装置である。
フィルタ装置2は、シーカ1より得られる目視線角、目視線角時間変化率、ドップラ情報を適切なフィルタ処理(例えば、カルマンフィルタ処理)を行うことにより、目標の位置、速度および加速度を推定する装置である。
慣性航法装置3は、飛しょう体の位置、速度および加速度を観測して適切なフィルタ処理を行い、それを出力する装置である。
相対運動計算装置4は、フィルタ装置2および慣性航法装置3から飛しょう体と目標の相対運動を計算する装置である。
最適誘導計算装置5は、シーカ1、フィルタ装置2、慣性航法装置3および相対運動計算装置4から得られる出力を用いて、目標と飛しょう体の未来の状態を予測し、適切な評価指標に基づき、逐次有限時間最適化計算を行い、飛しょう体の加速度指令値を計算する装置である。この加速度指令値によって飛しょう体は駆動し、飛しょう体の状態量である位置、速度および加速度が遷移する。
【0013】
図2は最適誘導計算装置5の構成、動作を説明する図である。また、図3は最適誘導計算装置5の動作を会合シミュレーションの概略図とともに記載したものである。ここではk番目の制御周期における計算フローを示している。
最適誘導計算装置5は、状態量設定手段10と会合シミュレーション計算手段11と会合性能評価手段12と加速度指令値時系列データ修正手段13と加速度指令値時系列データ記憶手段14と加速度指令値時系列データ収束判定手段15から構成される。
【0014】
飛しょう体は、一つ前の制御周期(k−1番目の制御周期)で計算された加速度指令値に従って運動し、その結果飛しょう体の各種状態量(位置、速度および加速度)は遷移する。遷移した結果の各種状態量はシーカ1および慣性航法装置3で検出され、フィルタ装置2や相対運動計算装置4を経由して、最終的には最適誘導計算装置5の状態量設定手段10に入力される。
【0015】
状態量設定手段10は、相対運動計算装置4から入力された各種状態量、すなわち飛しょう体の位置Xm(k)、速度Vm(K)および加速度Am(k)、目標の位置Xt(k)、速度Vt(k)および加速度At(k)を設定する。
また、加速度指令値時系列データ記憶手段14では、加速度指令値時系列データ記憶手段14に記憶されている加速度指令値時系列データU(k−1)={u(k−1)、u(k)、u(k+1)、…、u(tf)}から時間ステップを一つ分ずらし、U(k)={u(k)、u(k+1)、…、u(tf)、u(tf)}を設定する。
ここで大文字U(i)は加速度指令値時系列データをあらわすベクトルである。小文字u(k)は、k番目の制御周期における加速度指令値の最適値である。tfは会合時の制御周期番号である。ベクトルU(k)において、最後にu(tf)が二つ重なっているがこれは制御ステップを一つシフトすることによる処置である。
【0016】
会合シミュレーション計算手段11では、状態量設定手段10において設定された各状
態量と加速度指令値時系列データU(k)とを用いて、飛しょう体と目標が会合するまでの数値シミュレーションを行う。
この時、制御周期kから会合するまでの各制御周期での加速度指令値の時系列データはU(k)ですでに与えられていることに注意する。
なお、このシミュレーションでは、目標運動は質点系で記述された簡易的なシミュレーションモデルを用いても良い。また、飛しょう体のシミュレーションモデルは、あらかじめその運動モデルを求めることができるので、剛体系で記述された詳細なシミュレーションモデルを用いても良い。
【0017】
会合性能評価手段12は、会合シミュレーション計算手段11で得られる会合時の各パラメータを引数とした評価関数を計算する。会合時の各パラメータとは、ミスディスタンス、存速、会合アスペクト角等である。
【0018】
加速度指令値時系列データ修正手段13は、会合性能評価手段12で得られた評価関数に基づいて、評価関数が最小となるような最適な加速度指令値時系列データU(k)を計算し修正する。ここで修正するためのアルゴリズムは、例えば、非特許文献2等に記載されているアルゴリズムを用いることができる。
【0019】
加速度指令値時系列データ収束判定手段15は、加速度指令値時系列データ修正手段13で修正された加速度指令値時系列データU(k)と、予め加速度指令時系列データ記憶手段14に記憶されているUold(k)とから
【0020】
【数1】

【0021】
により残渣εを計算する。ここで ||*|| は*の2ノルムを示す。
この残渣εがあらかじめ設定した十分小さいεc以下に収まるとき、u(k)を最終的な加速度指令値として出力する。また、Uold(K)=U(k)として、加速度指令時系列データ記憶手段14の記憶内容を更新する。
残渣εがεcより大きいとき、修正した加速度指令値時系列データU(k)を用いて、再度、会合シミュレーション計算手段11に戻って繰り返す。また、上記と同様にUold(K)=U(k)として、加速度指令時系列データ記憶手段14の記憶内容を更新する。
以上のサイクルを残渣εがεc以下になるまで繰り返す。
【0022】
加速度指令時系列データ記憶手段14に記憶されている初期値Uold(0)は適当な定数ベクトル等を用いることで計算できる。
【0023】
このように実施の形態1の飛しょう体誘導装置では、各制御周期で、会合シミュレーションを行うことにより、飛しょう体および目標の運動を高い精度で予測し、かつ、逐次加速度指令時系列データ修正することによって従来誘導則に比べ、誘導時間遅れ要素、非線形要素を補償することができる。
また、以上のステップから、各制御周期でミスディスタンス等のパラメータを引数にとる評価関数を最小化し、各制御周期で最適な加速度指令値をオンラインで計算することができ、ひいては従来誘導則に比べ会合確率を向上させることができる。
【0024】
実施の形態2.
実施の形態1では、最適誘導計算装置5が飛しょう体の加速度指令値を計算し、飛しょう体はこの加速度指令値に従って運動するようにしていた。しかしながら、シーカ1が出力する目視線角などの出力信号にノイズが大きい場合には後段のフィルタ処理による推定の精度が劣化することがある。実施の形態2では、従来の比例誘導則による計算構成も追加して推定精度の劣化を防止する。
【0025】
図4は、本実施の形態2に係る飛しょう体誘導装置の構成を示す図である。実施の形態1の飛しょう体誘導制御装の構成に、比例誘導則計算装置6と計算異常判定装置7と加算器8が追加された構成となっている。シーカ1、フィルタ装置2、慣性航法装置3、相対運動計算装置4、最適誘導計算装置5において、実施の形態1と同様の機能についてはその説明を省略する。
比例誘導計算装置6は、従来から広く用いられている比例誘導則を計算する装置であり、目視線時間変化率と相対接近速度と適切なゲイン(例えば、3ないしは4程度の定数)を乗じて、飛しょう体の加速度指令値を計算する装置である。
計算異常判定装置7は、最適誘導計算装置5において計算の発散がおきていないかを判定するのものであり、発散がおきる可能性に応じた重み値を計算し出力する装置である。
加算器8は、最適誘導計算装置5と比例誘導計算装置6との出力を、発散判定装置7から得られる重みに基づいて加算する装置である。
【0026】
シーカ1が検出する目標の位置、速度、加速度などの状態量は、外乱および観測誤差等が含まれた形で検出される。通常はフィルタ装置2で適切にフィルタリング処理されるため、誘導側においては外乱等を考慮しなくても計算は可能である。
しかしながら、目標が探知され難いようにステルス化している場合、シーカ1の探知及び追尾性能は劣化しているため、適切にフィルタリング処理されていない場合が発生する。この時、誘導則に大きな誤差が入力されることとなり、ひいては加速度指令値が正常に計算できなくなるという課題が生じる。
【0027】
この課題を解決するため、実施の形態2の飛しょう体誘導装置は以下の動作を行う。
実施の形態2のシーカ1は、目標の運動を探知及び追尾して目標の目視線角等の情報を出力する際の、シーカ1のSN比(Signal to Noise ratio)を計算異常判定装置7へ出力する。計算異常判定装置7はこのSN比に応じて比例誘導則と最適誘導則の重みsを決定して加算器8に出力する。
SN比が大きいとき、すなわちシーカノイズが大きい場合は、フィルタ処理による推定の精度が劣化するため、その処理結果を多用している最適誘導則の計算の精度が劣化してしまう。そこで、計算異常判定装置7はこれを回避するために最適誘導則により得られた結果の重み付けを小さくし、代わりに比例誘導則により得られた結果の重み付けを大きくする重みsを決定して加算器8に出力する。重みsの決定は、例えば予めSN比と重みsの対応表を作成しておき、対応表からSN比に応じた重みsを抽出するようにしてもよい。あるいは、関数式によりSN比から重みsを算出するようにしてもよい。
【0028】
次に、加算器8は計算異常判定装置7から入力した重みsを用いて、式2により加速度指令値を計算する。
【0029】
【数2】

【0030】
ここで、αは最終的な加速度指令値、αpは比例誘導計算装置6の出力、αoは最適誘導計算装置5の出力、sはシーカSN比の関数で先に説明した重みを示している。
【0031】
このように実施の形態2の飛しょう体誘導装置は、比例誘導則計算装置6と計算異常判定装置7と加算器8を備え、計算異常判定装置7はシーカ1のノイズに応じて、最適誘導則により得られた結果と比例誘導則により得られた結果の重み付けを変えるようにした。具体的には、シーカノイズが大きい場合はフィルタ処理による推定の精度が劣化するため、最適誘導則により得られた結果の重み付けを小さくし、代わりに比例誘導則により得られた結果の重み付けを大きくする重みsを決定するようにした。また、シーカノイズが小さい場合はフィルタ処理による推定の精度劣化が抑えられるため、最適誘導則により得られた結果の重み付けを大きくし、代わりに比例誘導則により得られた結果の重み付けを小さくする重みsを決定するようにした。
これにより、シーカノイズによって最適誘導則5の出力の精度が劣化した場合でも、最終的な加速度指令値が異常な値となることを防ぐことができ、結果として、会合確率の低下を抑制することができる。
【0032】
実施の形態3.
実施の形態2では、シーカノイズに応じて最適誘導則により得られた結果と比例誘導則により得られた結果の重み付けを変えるようにしたが、実施の形態3では、飛しょう体と目標の相対距離に応じて、最適誘導則により得られた結果と比例誘導則により得られた結果の重み付けを変える。
【0033】
図5は、本実施の形態3に係る飛しょう体誘導装置の構成図である。実施の形態2と異なる点として、実施の形態3の計算異常判定装置7は、飛しょう体と目標の相対距離に応じて比例誘導則と最適誘導則の重みsを決定する。実施の形態1、2と同様の動作の構成には同一番号を付し、その説明は省略する。
一般に相対距離とシーカSN比に相関があるから、実施の形態2に示すシーカSN比の代替として、相対運動計算装置4から出力される飛しょう体と目標の相対距離を用いて、計算異常判定装置の重みを計算することができる。具体的には相対距離が短ければシーカノイズは小さくなるためフィルタ処理による推定の精度劣化が抑えられるため、最適誘導則により得られた結果の重み付けを大きくする。一方、相対距離が長くなればシーカノイズは大きくなることから、フィルタ処理による推定の精度が劣化するため、最適誘導則により得られた結果の重み付けを小さくし、代わりに比例誘導則により得られた結果の重み付けを大きくする重みsを決定する。このように重みsは相対距離の関数となる。
なお、相対距離は例えばシーカ1の結果から取得することができる。
【0034】
このように実施の形態3の飛しょう体誘導装置において、計算異常判定装置7は飛しょう体と目標との距離に応じて、最適誘導則により得られた結果と比例誘導則により得られた結果の重み付けを変えるようにした。
これにより、シーカノイズによって最適誘導則5の出力の精度が劣化した場合でも、最終的な加速度指令値が異常な値となることを防ぐことができ、結果として、会合確率の低下を抑制することができる。
【0035】
実施の形態4.
実施の形態4では、飛しょう体の存速の時間変化率に着目して、最適誘導則により得られた結果と比例誘導則により得られた結果の重み付けを変える。
【0036】
図6は、本実施の形態4に係る飛しょう体誘導装置の構成図である。実施の形態3と異なる構成として、実施の形態4では計算異常判定装置7に代わりに存速時間変化率判定装置9を備える。実施の形態1〜3と同様の動作を行う構成には同一番号を付し、その説明は省略する。
存速時間変化率判定装置9は飛しょう体の存速の時間変化率を観測するものであり、慣性航法装置3の出力に基づき、飛しょう体の存速の時間変化率を求める。
飛しょう体の誘導計算では、観測ノイズ等の影響によって加速度指令値が大きく変化し、ひいては存速が大きく低下する可能性がある。
この対策として実施の形態4の存速時間変化率判定装置9は、飛しょう体の存速の時間変化率を計測しており、飛しょう体の存速の時間変化率があらかじめ設定した適切な閾値を超えて変化する場合に、存速低下による誘導性能低下をさけるために式2に示す重みsを小さくする。
これにより、加速度指令値が大きく変化することを抑制することができ、結果として観測ノイズの影響による会合確率の低下を抑制することができる。
【0037】
実施の形態5.
実施の形態5では、最適誘導制御装置5の構成として制御時間判定装置16を追加し、計算打ち切り時の影響を抑えるようにした。
【0038】
図7は、実施の形態5に係る飛しょう体誘導装置の最適誘導制御装置5の構成を説明する図である。最適誘導制御装置5以外の、飛しょう体誘導装置の装置構成は各実施の形態の構成と同一である。
【0039】
実施の形態5の最適誘導制御装置5は、実施の形態1の最適誘導制御装置に、更に、制御時間判定装置16を備える構成となっている。
制御時間判定装置16は、実施の形態1で説明した制御周期Kにおける最適誘導制御装置の動作中において、制御周期Kにおける初期時間tkから、あらかじめ定められた適切な時間間隔Tsが過ぎて時間がtk+Tsとなった時に、制御周期の長期化による制御性能劣化を防ぐためにループ処理を打ち切り、一番新しい加速度指令値u(k)を出力するものである。
この時出力された一番新しい加速度指令値u(k)は、実施の形態1で説明した最適誘導制御装置で使用される最適な加速度指令値ではない。このため、この加速度指令値u(k)を用いて誘導を行うことは適切ではない。
【0040】
そこで、加速度指令値の最適度を示す指標として、ループ処理を打ち切ったときの最新の残渣εとあらかじめ設定した適切なεcとの比を求める。この比を用いて重み行列sを決定する。比が大きく残差が大きいとき、すなわち最適度が劣化しているため最適誘導制御装置の出力に対する重みsを小さくする。
【0041】
このようにすることで、実施の形態5の飛しょう体誘導装置は、比例誘導制御装置の重みが大きくなって計算打ち切り時の影響を抑制することができ、結果として会合確率の低下を抑えることができる。
【符号の説明】
【0042】
1 シーカ、2 フィルタ装置、3 慣性航法装置、4 相対運動計算装置、5 最適誘導計算装置、6 比例誘導計算、7 計算異常判定装置、8 加算器、9 存速時間変化率判定装置、10 状態量設定手段、11 会合シミュレーション計算手段、12 会合性能評価手段、13 加速度指令値時系列データ修正手段、14 加速度指令値時系列データ記憶手段、15 加速度指令値収束判定手段、16 制御時間判定装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛しょう体に搭載され、目標に向けて飛しょう体を誘導する飛しょう体誘導装置であって、
目標の運動を探知して追尾するシーカと、
前記シーカからの出力に基き前記目標の運動を推定するフィルタ部と、
飛しょう体の運動を観測する慣性航法部と、
前記目標の運動と前記飛しょう体の運動とから、前記目標と前記飛しょう体との相対運動を計算する相対運動計算部と、
前記相対運動の結果に基き、誘導完了までの、制御周期ごとの前記飛しょう体を加速する加速度指令値を計算する最適誘導計算部と、を備え、
前記最適誘導計算部は、前記制御周期の度に、前記制御周期ごとの前記加速度指令値を繰返し計算することを特徴とする飛しょう体誘導装置。
【請求項2】
前記相対運動計算部から前記相対運動を入力し、比例誘導則により前記加速度指令値を出力する比例誘導則計算部と、
前記最適誘導計算部が出力する前記加速度指令値と前記比例誘導則計算部が出力する前記加速度指令値との重み付けを計算する異常判定部と、
前記重み付けに基づき、前記最適誘導計算部が出力する前記加速度指令値と前記比例誘導則計算部が出力する前記加速度指令値とを加算した結果を前記加速度指令値として出力する加算器と、
を備えることを特徴とする請求項1記載の飛しょう体誘導装置。
【請求項3】
前記異常判定部は、前記シーカのノイズ量に基いて、前記重み付けを計算することを特徴とする請求項2記載の飛しょう体誘導装置。
【請求項4】
前記異常判定部は、前記飛しょう体と前記目標との距離に基いて、前記重み付けを計算することを特徴とする請求項2記載の飛しょう体誘導装置。
【請求項5】
前記異常判定部は、前記慣性航法部から存速を入力し、前記存速の時間変化率に基いて、前記重み付けを計算することを特徴とする請求項2記載の飛しょう体誘導装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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