説明

食事用ナプキン

【課題】ポリエステル繊維を綿織物と同時に洗濯しても綿毛羽付着が少なく、適度な硬さのあるホテル向けナプキンを提供する。
【解決手段】タテ糸、ヨコ糸ともにポリエステル繊維で構成された織物へウレタン系樹脂を塗布することにより、綿織物とともに洗濯した際に綿毛羽付着が10個/100cm未満であり、且つ、該織物の剛軟度がタテ方向とヨコ方向ともに45〜65mmであるホテル向けナプキン織物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル繊維使い織物へ吸水ウレタンを塗布することにより、綿織物とともに洗濯した際に綿毛羽付着の少なく、かつ適度な硬さと吸水性を有する食事用ナプキンに関する。
【背景技術】
【0002】
食事用ナプキンはホテルやレストランなどで使用する場合に吸水性と折り畳んでテーブル上に立てる際には適度な硬さが重要であり、コスト面から一般的には綿織物が使用されている。しかしながら食事用ナプキンは使用頻度、汚れる頻度が高く、綿織物では繰り返し洗濯を行うことによって強度と硬さが低下し、使用サイクルが短いため廃棄処分量が多く、環境負荷軽減の観点からも代替品の要求が高まっている。
そのためコスト面、吸水性、硬さ、洗濯耐久性等の観点からポリエステル織物等が提案されている従来品である綿織物とともに洗濯される頻度が高いため、綿織物は洗濯を行うと綿毛羽を放出しつつ強度が低下し厚みが低減する特性がある。その放出された綿毛羽が強度保持率の高いポリエステル繊維等へ付着するため、実用性に乏しく、綿織物とともに洗濯しても綿毛羽付着が少ない生地特性が必要である。ナプキン用途として吸水性を向上させる例として特許文献1では吸水性の高い繊維として湿潤剤を練りこんだ合成繊維を用いている。特許文献2では融着糸を使用した繊維構造体が示されている。特許文献3では積層体の複合シートについて記載がある。
しかしながらどれもコスト面から食事用向けナプキンには向いていない。
ナプキンとして綿以外の素材を提案している特許文献4と5については、いずれも吸水ウレタン系樹脂を用いるものではなく、洗濯した時の綿毛羽付着において問題を有するものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4450333号
【特許文献2】特開平11−222756
【特許文献3】特許第4056574号
【特許文献4】特開平10−237712
【特許文献5】特開平09−000782
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、前記従来技術の問題を解消するためになされたものであり、その目的は、ポリエステル繊維使い織物へ吸水ウレタンを塗布することにより、綿織物とともに洗濯した際に綿毛羽付着の少なく、かつ適度な硬さと吸水性を有する食事用ナプキンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、前述の課題を解決達成するために、下記の構成を有する。
(1) タテ糸、ヨコ糸ともにポリエステル繊維で構成された織物に吸水ウレタン系樹脂を0.5〜7%owfの範囲で塗布した織物からなる食事用ナプキン。
(2)綿織物とともに洗濯した際に綿毛羽付着が10個/100cm未満であることを特徴とする上記(1)記載の食事用ナプキン。
(3)剛軟度がタテ方向とヨコ方向ともに45〜65mmであることを特徴とする上記(1)もしくは(2)に記載の食事用ナプキン
(4)吸水性が20秒未満であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の食事用ナプキン
(5)タテ糸、ヨコ糸のいずれか一方がフィラメント糸、もう一方がステープル糸であることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載の食事用ナプキン
(6)剛軟度がタテ方向とヨコ方向ともに50〜60mmであることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載の食事用ナプキン
(7) 吸水性が10秒未満であることを特徴とする上記(1)〜(6)のいずれかに記載の食事用ナプキン。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、洗濯耐久性が高く、食事用ナプキンに必要な吸水性と適度な硬さ、綿織物とともに洗濯をしても綿毛羽が付着しにくいホテル向けナプキン用織物を得ることが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明のポリエステル繊維は、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレートなどのポリエステルからなる繊維である。なかでも実質的にポリエチレンテレフタレートからなるものが寸法安定性から好ましい。また、本発明の効果を損なわない範囲で共重合物が含まれていても良い。一般に使用される艶消し剤、安定剤、制電剤等を含んでも良い。
単糸繊度としては特に制限はないが、通常0.01〜20dtexの範囲である。また、断面形状は、丸型、三角型、扁平、星形等制限はなく、中実繊維であっても、中空繊維であってもよい。より好ましくは1〜10dtexの丸型断面であると強度と綿毛羽付着防止機能をより発揮しやすい。
また、本発明のポリエステル繊維の総繊度については特に限定されないが、総繊度30〜1000dtex、より好ましくは10〜500dtexの範囲であるものが風合いの観点からよい。
また、本発明におけるポリエステル繊維の繊維形態としては特に限定されず、長繊維でも短繊維でもよく、仮撚り捲縮加工や、タスラン加工やインターレース加工などの空気加工が施されたものでもよいが、より好ましくは長繊維と短繊維を交織で用いると、綿毛羽付着防止効果と剛軟度の観点からよい。
また、本発明におけるポリエステル繊維の構造体としては洗濯後の寸法安定性の観点から織物が好ましい。織物以外の繊維構造体だと洗濯後の寸法変化が不安定になる。織物組織に関しては特に限定しないが、綿毛羽付着防止の観点から平織であることが好ましい。
製織後に、繊維についている油剤を除去するために糊抜き精練を行う。糊抜き精練は、オープンソーパー等を用いて常法に従って行えばよい。また、一般に行われている120〜180℃の温度範囲で乾燥、プレセットを行っても良い。
染色は特に機械は選ばないが好ましくは液流染色機が良く染色液流染色機の温度条件は通常のポリエステル編物の染色温度であればよいが一般的には90℃以上、135℃以下が好ましく、さらに好ましくは120〜135℃である。また、染色操作において染色助剤とその濃度、染色液のpH、浴比、染色時間などは通常ポリエステル織物で用いられている条件であればよい。
ホテル向けナプキンに必要な綿織物と同時に洗濯したときの綿毛羽付着防止機能と吸水性、適度な硬さをポリエステル織物で付与するためにはウレタン系樹脂が塗布されていることが好ましい。塗布方法は特に限定しないがより好ましくはウレタン系樹脂0.5〜7%owfの浴槽に含浸させ、マングルで絞った後、幅出し、シワ除去などの目的で通常実施されている仕上げセットを160〜200℃で施す必要がある。好ましくはウレタン系樹脂1〜4%owfで浴槽に含浸させマングルで絞った後、ピンテンターで170〜190℃の仕上げセットを行うと良い。ウレタン系樹脂が0.5%owf未満の場合は吸水性と綿毛羽付着防止性能が不十分になり、7%owfを超えると風合いが硬くなりすぎ、ホテル向けナプキンに適した硬さが得られにくい。また、ピンテンターの温度が150℃以下になると洗濯時の寸法安定性が悪くなり、200℃以上であると風合いが硬くなりすぎ、ホテル向けナプキンに適した硬さが得られにくい。
ホテル向けナプキンに必要な綿織物とともに洗濯したときの綿毛羽付着が少ない方が好ましく、10個/100cm未満であれば見た目に綿毛羽付着が目立ちにくい。10個/100cmを超えると、見た目で綿毛羽付着が目立ち、ホテル向けナプキンとしての品位としては適しておらず、5個/100cm以下であればより好ましい。 ホテル向けナプキンとして必要な適度な硬さとしてはタテ方向とヨコ方向ともに剛軟度が45〜65mmであることが好ましい。タテ方向もしくはヨコ方向の剛軟度が45mm未満であると硬さが足りず、折り畳んでテーブルに立てることは難しく、タテ方向もしくはヨコ方向の剛軟度が65を超えると硬すぎてホテル向けナプキンとしての風合いとして好ましくない。剛軟度はタテ方向とヨコ方向ともに50〜60mmであればより好ましい。
ホテル向けナプキンとして必要な吸水性はJIS L1907滴下法で20秒未満である。10秒未満であることが好ましい。20秒以上であれば吸水性が不足し、ホテル向けナプキンとして適していない。
【実施例】
【0008】

以下、本発明を、実施例を用いて説明する。実施例における各評価は次のとおりに行った。
(1) 綿織物とポリエステル織物の同時洗濯による綿毛羽付着方法:JIS L0217:2010「繊維製品の取り扱いに関する表示記号およびその表示方法」の付記1記号別試験方法−洗い方(水洗い)の103法に準じて行い、乾燥方法は吊り干しで乾燥した。使用する生地はタテとヨコに20番手の綿を用いた2/1ツイルで目付250g/mの綿織物を16m投入し、ポリエステル織物としては10cm×10cmのサイズを4枚投入し、洗濯後にポリエステル繊維への綿毛羽付着個数を25倍の実体顕微鏡で数えて、平均値を算出し、ポリエステル繊維100cm当たりの綿毛羽付着個数とした。
(2) 剛軟度:JIS L1096:2010「織物および編物の生地試験方法」の剛軟度試験(8.21.1のA法:カンチレバー法)に準じて行った。すなわち、2cm×約15cmの試料片をたて方向及びよこ方向にそれぞれ5枚採取し、1端が45度の斜面を持つ表面の滑らかな水平台の上に置き、試験片を斜面の方向に緩やかに滑らせて試験片の一端の中央点が斜面Aと接したときの他端の位置をスケールによって読んだ。剛軟度は試験片が移動した長さ(mm)で示し、それぞれ5枚の表裏を測定し、たて方向およびよこ方向について、それぞれ平均値で表した。
(3) 吸水性:JIS L1907:2010「繊維製品の吸水性試験方法」の吸水速度法中の滴下法に準じて行った。すなわち、サンプルとして約200mm×約200mmの試験片を5枚採取する。次に試験片を試験片保持枠に取り付け、試験片の表面からビュレットの先端までが10mmの高さになるように調整し、ビュレットから水(JISK 0050に規定するもので、その温度は20℃±2℃とする)を1滴滴下させ、水滴が試験片の表面に達したときからその水滴が特別な反射をしなくなるまでの時間をストップウォッチで0.5秒まで測定し、5回の平均値で表した(整数位まで)。
(4) 寸法変化率:JIS L1096:2010「織物および編物の生地試験方法」の寸法変化(8.39)に準じて行った。本寸法変化率はJISL0217−103法の洗濯方法に準じて行った。試験片として、調温湿した約40cm×40cmの試験片を3枚採取し、たて、よこそれぞれに、両端部、中央部の3ヶ所に長さ25cmの印を付け、遠心式脱水装置付きの家庭用電気洗濯機に、水槽の標準水量を示す水位線まで40℃の水を入れ、これに標準使用量となる割合で花王株式会社製アタックを添加し、この洗濯液に、浴比が1対30になるように試料及び負荷布を投入して運転を開始した。5分間運転した後、試料および負荷布を脱水機で脱水し、次に洗濯液を30℃の新しい水に替えて、同一の浴比で2分間すすぎ洗いを行い、脱水し、直射日光の影響を受けない状態で吊り干しを行う。試験片を平らな台の上に置き、不自然なしわや張力を除いて、たて、よこ各々の印間の長さをはかり(0.5mmまで読み取る)、たて、よこ別々に3個の平均値を求め、次式によって寸法変化率(%)を計算し、たて、よこそれぞれ3枚の平均値で表す(小数点以下1桁まで)。
【0009】
寸法変化率(%)=(L−250)/250×100
ここでL:処理後のたてまたはよこの印間の長さの平均値(mm)
実施例1
ポリエステル繊維84dtex−72フィラメントの加工糸を4本エア交絡加工した糸をタテ糸に用い、ヨコ糸には30番手の2本撚りのポリエステル紡績糸を用い、タテ糸密度78本/2.54cm、ヨコ糸密度42本/2.54cmの平織を作成し、染色加工としては精練/中間セット/染色はポリエステル繊維織物の常法で加工し、ウレタン系吸水剤としてアクアプレーンWS−105(明成化学)の2%ows溶液に浸漬し、マングルで絞った後、ピンテンターで180℃×30秒の最終セットを行い、生地を得た。
【0010】
得られた生地の性能を表1に示した。
得られた製品生地は綿織物とともに洗濯したときの綿毛羽付着個数が4個/100cmであり、かつ剛軟度もタテ54mm、ヨコ55mmであり、さらには吸水性、寸法安定性も良好であることからホテル向けナプキンに適した生地であった。
実施例2
実施例1と同一のタテ糸とヨコ糸を用い、タテ糸密度78本/2.54cm、ヨコ糸密度51本/2.54cmの2/1ツイル織物を作成し、染色加工は実施例1と同一の方法で処理して製品生地を得た。
得られた生地の性能を表1に示した。
得られた製品生地は綿織物とともに洗濯したときの綿毛羽付着個数は6個/100cmであり、かつ剛軟度もタテ54mm、ヨコ60mmになり、さらには吸水性、寸法安定性も良好であることからホテル向けナプキンに適した生地であった。
比較例1
20番手の綿糸をタテ糸とヨコ糸に使用した2/1ツイル織物を作成し、綿100%使い織物での常法の染色・仕上げ加工を行い、製品生地を得た。
得られた生地の性能を表1に示した。
得られた製品生地は綿織物とともに洗濯したときの綿毛羽付着個数は1個/100cmであり、かつ剛軟度もタテ54mm、ヨコ55mmであり、さらには吸水性も有しており、ホテル向けナプキンに適してはいるが、寸法安定性が悪く、繰り返し洗濯耐久性に乏しかった。
比較例2
実施例1と同一の平織を用い、染色加工ではウレタン吸水剤を使用しない以外は実施例1と同様の加工を行い、製品生地を得た。
得られた生地の性能を表1に示した。
得られた製品生地は綿織物と同時に洗濯したときの綿毛羽付着個数は23個/100cmであり、綿織物と同時で洗濯するホテル向けナプキンには適しない生地であった。
比較例3
実施例1と同一の平織りを用い、染色加工で染色すると同時にポリエステル系吸水剤を5%owf添加し、ポリエステル系の硬仕上げ剤2%owsの割合で浸漬し、マングルで絞った後180℃で仕上げセットを行い、製品生地を得た。
得られた生地の性能を表1に示した。
得られた製品生地は綿織物とともに洗濯したときの綿毛羽付着個数が12個/100cmであり、綿織物と同時で洗濯するホテル向けナプキンには適しない生地であった。
【0011】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
タテ糸、ヨコ糸ともにポリエステル繊維で構成された織物に吸水ウレタン系樹脂を0.5〜7%owfの範囲で塗布した織物からなる食事用ナプキン。
【請求項2】
綿織物とともに洗濯した際に綿毛羽付着が10個/100cm未満であることを特徴とする請求項1記載の食事用ナプキン。
【請求項3】
剛軟度がタテ方向とヨコ方向ともに45〜65mmであることを特徴とする請求項1もしくは2に記載の食事用ナプキン
【請求項4】
吸水性が20秒未満であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の食事用ナプキン。
【請求項5】
タテ糸、ヨコ糸のいずれか一方がフィラメント糸、もう一方がステープル糸であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の食事用ナプキン。
【請求項6】
剛軟度がタテ方向とヨコ方向ともに50〜60mmであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の食事用ナプキン。
【請求項7】
吸水性が10秒未満であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の食事用ナプキン。

【公開番号】特開2012−132129(P2012−132129A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−287138(P2010−287138)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】