説明

食品保存方法及び食品保存装置

【課題】簡単に食品を過冷却現象により保存できる食品保存方法及び食品保存装置を提供する。
【解決手段】食品1に対して、静電霧化装置2による静電霧化で生成した帯電微粒子水を放出して付着させて氷点下環境において無凍結保存をする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、氷点下環境で食品の鮮度保持をしながら保存するための食品保存方法及び食品保存装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、野菜、果物、魚貝類、畜肉、あるいはこれらの加工品等の食品(生鮮食品)は常温で放置すると、酸化により変質して劣化し、ついには細菌により腐敗する。
【0003】
この、食品の酸化による劣化、細菌の活動は、常温保存に比べ、低温保存することで抑制することができる。
【0004】
食品の低温保存としては、冷蔵保存と、冷凍保存が一般的である。冷凍保存は食品を凍結させて保存するので、酸化、細菌の影響を受けないが、調理の前に解凍する必要があって煩わしく、また、食品を凍結することによる品質の変化が生じて、解凍しても凍結前と同じ品質に戻らないという問題がある。一方、冷蔵保存は食品を凍結させないが、低温保存とはいえ比較的温度が高く、時間が経つにつれて酸化、細菌の影響を受けるという問題があり、長期保存には適していない。
【0005】
そこで、食品を過冷却状態にして保存することが特許文献1により提案されている。しかしながら、この特許文献1に示された従来例は、密閉容器内に食品と保存水とを入れて、氷点下温度におき、保存水の一部を凍結させ、生成した氷の体積膨張により密閉容器内の圧力を大気圧より高くすることで、食品に静圧をかけ、食品の凍結温度を下げて保存するようになっている。
【0006】
この特許文献1に示された従来例は、食品を過冷却状態で保存するに当って、密閉容器内に食品と共に保存水を入れなければならない。つまり、食品は密閉容器内において保存水内に入れられるため食品の状態が変化し、更に、保存水を凍結させるため、食品の取り出しに当っては、凍結した保存水を解凍し、更に、保存水の中から食品を取り出すという作業が必要で、取り出し作業が極めて面倒であり、しかも、取り出した食品は保存水がべっとりと付着した状態で取り出されるため、本来の保存する前の食品とは品質が異なってしまうという問題ある。
【特許文献1】特開平63−03954号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記の従来の問題点に鑑みて発明したものであって、簡単に食品を過冷却現象により保存できる食品保存方法及び食品保存装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明に係る食品保存方法は、氷点下環境に保存された食品1に対して、静電霧化装置2による静電霧化で生成した帯電微粒子水を放出して付着させて氷点下環境において無凍結保存をすることを特徴とするものである。
【0009】
このような方法を採用することで、静電霧化で生成した帯電微粒子水が氷点下環境に保存された食品1に付着した際に流れる電流により、食品1内部に電気的エネルギーが加わり、氷点下の環境であっても凍らない過冷却状態を作ることができ、このように食品1に帯電微粒子水を付着させるという簡単な方法で食品1を過冷却状態で保存でき、また、帯電微粒子水はラジカルを含んでいるので、除菌効果もあり、低温でも生息する好冷細菌の発生を抑えることができ、これらの理由により食品の長期鮮度保持が可能となる。
【0010】
また、本発明の食品保存装置は、食品1を氷点下環境に保存するための食品保存部3と、帯電微粒子水を静電霧化により生成して食品保存部3に保存された食品1に対して帯電微粒子水を放出するための静電霧化装置2とを備えて成ることを特徴とするものである。
【0011】
このような構成とすることで、静電霧化装置2による静電霧化で生成した帯電微粒子水を食品保存部3に氷点下環境で保存された食品1に放出して、上記のような氷点下の環境であっても凍らない過冷却状態での保存ができ、また、帯電微粒子水はラジカルを含んでいるので、除菌効果もあり、低温でも生息する好冷細菌の発生を抑えることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、上記のように、帯電微粒子水を氷点下環境に保存された食品に付着させるので、氷点下の環境であっても凍らない過冷却状態を作ることができ、このように食品に帯電微粒子水を付着させるという簡単な方法、構成で食品を過冷却状態で保存でき、また、帯電微粒子水はラジカルを含んでいるので、除菌効果もあり、低温でも生息する好冷細菌の発生を抑えることができる。したがって、食品の品質を変えることなく、簡単な方法、構成で長期鮮度保持が可能となり、また、保存している食品の使用に当たっても、単に食品保存部から取り出すだけで、保存する前と同じ状態の品質で取り出して、そのまま使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基いて説明する。
【0014】
本発明の食品保存装置は、図1に示すように、食品1を氷点下環境に保存するための食品保存部3と、帯電微粒子水を静電霧化により生成して食品保存部3に保存された食品1に対して帯電微粒子水を放出するための静電霧化装置2とを備えたものである。
【0015】
食品保存部3は冷却装置4を備えていて冷却装置4で食品保存部3内の収納空間3aを冷却することで、収納空間3a内を氷点下環境下にするようになっている。
【0016】
食品保存部3には扉5を開閉自在に設けた出し入れ用開口部6が設けてあり、扉5を開けて食品保存部3内の収納空間3a内に野菜、果物、魚貝類、畜肉、あるいはこれらの加工品等の食品(生鮮食品)1を入れて収納し、扉4を閉じることで、氷点下環境下で食品を保存できるようになっている。
【0017】
また、食品保存部3の外部にはケース部15が設けてあり、該ケース部15内に、食品保存部3内の上記氷点下環境下となる収納空間3a内に帯電微粒子水を放出するための静電霧化装置2が内装してある。また、このケース部15内にはファン16が設けてある。
【0018】
静電霧化装置2は、霧化電極7と、霧化電極7に水を供給するための水供給手段8と、霧化電極7に供給された水に高電圧を印加するための高電圧印加手段9とを備えて、高電圧を印加することで霧化電極7に供給された水を静電霧化してナノメータサイズの帯電微粒子水を生成するように構成されたものである。
【0019】
水供給手段8としては、空気中の水分を結露水として生成することで、霧化電極7の先端部に水を供給する方式と、タンクに溜めた水を搬送手段で搬送して霧化電極7の先端部に水を供給する方式とがある。
【0020】
図2には空気中の水分を結露水として生成する場合の一例が示してある。図2の実施形態においては、ペルチェユニットのような熱交換器10の冷却部11に霧化電極7を接続し、霧化電極7を冷却することで、空気中の水分を霧化電極7に結露水として生成させるようにしたものである。図中13はペルチェユニットのような熱交換器10の放熱部である。
【0021】
また、図示を省略しているが、熱交換器10の冷却部11で冷却板を冷却して冷却板に結露水を生成し、該冷却板に生成した結露水を霧化電極7に供給するようにしてもよい。
【0022】
図2の実施形態では、霧化電極7の先端部に対向するように対向電極12が設けてある。図2に示す実施形態では高電圧印加手段9の一端部を霧化電極7に、他端を対向電極12に接続してあるが、対向電極12はフレームグランド(例えば、本発明の静電霧化装置を組み込む電気機器などのフレーム)に接続してもよい。
【0023】
そして、上記のようにして霧化電極7に水を供給した状態で、高電圧印加手段9により霧化電極7の先端の水に高電圧を印加することで、霧化電極7と対向電極12との間にかけられた高電圧により霧化電極7の先端部に供給された水と対向電極12との間にクーロン力が働いて、水の液面が局所的に錐状に盛り上がり(テーラーコーン)が形成される。このようにテーラーコーンが形成されると、該テーラーコーンの先端に電荷が集中してこの部分における電界強度が大きくなって、これによりこの部分に生じるクーロン力が大きくなり、更にテーラーコーンを成長させる。このようにテーラーコーンが成長し該テーラーコーンの先端に電荷が集中して電荷の密度が高密度となると、テーラーコーンの先端部分の水が大きなエネルギー(高密度となった電荷の反発力)を受け、表面張力を超えて分裂・飛散(レイリー分裂)を繰り返して活性種(ラジカル)を有するマイナス又はプラスに帯電したナノメータサイズの帯電微粒子水を大量に生成するようになっている。生成された帯電微粒子水は食品保存部3に設けた放出部14から収納空間3a内に放出される。
【0024】
収納空間3a内に放出されたナノメータサイズの帯電微粒子水は収納空間3a内を隅々まで浮遊し、収納空間3a内に収納している食品に付着する。
【0025】
ここで、ナノメータサイズの帯電微粒子水は食品の表面に付着するだけでなく、食品の内部にも浸入する。
【0026】
例えば野菜の葉の気孔は、開口した状態で開口の長辺側が約100〜200ミクロン、短辺側が約10ミクロンである。一方、ナノメータサイズの帯電微粒子水は粒径は3〜数十nm程度であり、葉野菜の葉の気孔から葉の組織内に浸入する。また、ナノメータサイズの帯電微粒子水は肉の組織内部にも浸入する。
【0027】
このように、氷点下環境下にある食品1に帯電微粒子水が付着すると、微粒子水が帯電しているため該帯電微粒子水g付着した際に電流が流れ、このように電流が流れることにより、食品1の内部の水分に電気的エネルギーが加わり、氷点下の環境において食品1内部の水分が凍らない過冷却状態をつくって食品1を保存することができる。
【0028】
また、ナノメータサイズの帯電微粒子水はラジカルを含んでいるので、除菌効果もあり、低温でも生息する好冷細菌の発生を抑えることができる。
【0029】
したがって、氷点下環境において、食品1の品質を変化させることなく、長期間の鮮度保持が可能となる。
【0030】
上記のようにして食品保存部3内の収納空間3a内において氷点下環境下で無凍結保存している食品1を使用する場合は、扉5を開けて取り出して使用するのであるが、取り出した食品1は、保存する前と同じ状態の品質であるため、そのまま使用することができる。
【0031】
上記実施形態においては、空気中の水分を結露水として生成するに当たって、ペルチェユニットのような熱交換器10で冷却することで空気中の水分を結露水として生成するようにしているが、ペルチェユニットのような熱交換器10に変えて食品保存部3に設けた冷却装置4の冷却部で霧化電極7や冷却板を冷却することで空気中の水分を結露水として生成して霧化電極7に供給するようにしてもよい。
【0032】
また、食品保存部3の壁部を貫通して一端部が氷点下環境にされる収納空間3a内に露出した熱伝導部材を設け、この熱伝導部材の他端部に食品保存部3の外に位置する霧化電極7を直接又は冷却板を介して接続し、霧化電極7や冷却板を冷却するようにし、これにより空気中の水分を結露水として生成して霧化電極7に水を供給するようにしてもよい。
【0033】
もちろん、タンクに溜めた水を搬送手段で搬送して霧化電極7の先端部に水を供給するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施形態の概略構成図である。
【図2】同上に用いる静電霧化装置の概略構成図である。
【符号の説明】
【0035】
1 食品
2 静電霧化装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
氷点下環境に保存された食品に対して、静電霧化装置による静電霧化で生成した帯電微粒子水を放出して付着させて氷点下環境において無凍結保存をすることを特徴とする食品保存方法。
【請求項2】
食品を氷点下環境に保存するための食品保存部と、帯電微粒子水を静電霧化により生成して食品保存部に保存された食品に対して帯電微粒子水を放出するための静電霧化装置とを備えて成ることを特徴とする食品保存装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2009−153411(P2009−153411A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−332895(P2007−332895)
【出願日】平成19年12月25日(2007.12.25)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】