説明

食品冷凍方法及び装置

【課題】フリーザで超低温で食品を急速冷凍する場合にCOPを向上させて省エネを可能とし、かつ低温空気流の温度と流速を互いに独立して調整可能し、凍結時間の制御を容易にする。
【解決手段】空気冷媒式冷凍装置10と二段圧縮式冷凍サイクル装置30とを組み合わせ、空気冷媒式冷凍装置10から連続式フリーザ20の冷却室22内の凍結気流吹出部126に−60℃の低温空気を供給すると共に、二段圧縮式冷凍サイクル装置30の一部を構成する蒸発器48で冷却室22内雰囲気を−40℃に保持する。連続式フリーザ20でベルトコンベア24上を搬送される被冷却物fに−60℃の低温空気流を吹き付けて急速凍結を可能にすると共に、−40℃の雰囲気で該低温空気流を囲む保温域を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品の冷却又は凍結に用いられ、空気冷媒式冷凍方法と二段圧縮式冷凍方法とを組合せて、COPの向上を可能にした冷凍方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
食品(包装された食品を含む。)を冷却又は凍結する装置として、冷媒を用いた冷凍サイクル装置で冷却室内の空気を冷却することにより、被冷却物の冷却又は凍結を行う装置が用いられている。これらの装置は、いわゆるバッチ式フリーザとか、連続式フリーザ又はトンネル式フリーザと呼ばれている。バッチ式フリーザは、一群の被冷却物毎に冷却室内で冷却又は凍結処理し、処理が終わったら冷却室の扉を開け、次の被冷却物群と入れ替えするものである。以下、図5によりバッチ式フリーザの構成を簡単に説明する。
【0003】
図5において、バッチ式フリーザ100は、密閉構造の冷却室102と、冷媒を循環させて冷凍サイクルを構成する冷凍機ユニット110とからなる。冷却室102は、被冷却物を出し入れする扉104を備え、扉104に面して複数段の陳列棚106が間隔を開けて上下方向に多段に設けられている。上下方向に設けられた仕切り壁108が陳列棚106の一端を支持すると共に、仕切り壁108の向こう側に、冷凍機ユニット110の一部を構成する空気熱交換器(蒸発器)112が配置されている。冷却室102の隔壁は断熱パネル103で構成された密閉かつ断熱構造を有する。なお、陳列棚106がなく、棚状になった台車を使う場合もある。
【0004】
空気熱交換器112の上方には送風ファン114が設けられ、仕切り壁108の上方には整流器116が設けられている。冷却室102内は、送風ファン114によって矢印a方向に流れる空気流が形成される。空気熱交換器112の伝熱面を通って冷却された空気流が整流器116で整流されて陳列棚106上に置かれた被冷却物fに向かって流れ、被冷却物fを凍結する。陳列棚106には隙間が形成され、該隙間を通って低温空気流が下方に抜けるようになっている。被冷却物fの凍結処理が終わると、扉104を開け、次の被冷却物群と入れ替える。
【0005】
一方、連続式フリーザ又はトンネル式フリーザは、冷却室にコンベアが貫通配置されている。冷却室外で被冷却物をコンベアに搭載し、被冷却物をコンベアで冷却室内に搬入する。冷却室内には、コンベアの搬送面に向けて低温空気流が吹き付けられる。この低温空気流で被冷却物を凍結し、凍結した被冷却物をコンベアに搭載したまま冷却室外に搬出する。そのため、冷却室への被冷却物の出し入れ作業を省略でき、被冷却物の連続的な凍結が可能になるため、凍結時間を短縮できる利点がある。以下、連続式フリーザの構成を図6により簡単に説明する。
【0006】
図6において、連続式フリーザ120は、隔壁が断熱パネルで形成されて断熱性と密閉性を有する冷却室122と、冷媒を循環させて冷凍サイクルを構成する冷凍機ユニット130とからなる。冷却室122には、ベルトコンベア124が冷却室122の長手方向に貫通配置されている。冷却室122の内部で、ベルトコンベア124の搬送面の上方には、上部が開放された中空なケーシング状の凍結気流吹出部126が設けられている。凍結気流吹出部126の下部には、ベルトコンベア124の搬送面に向けて開口した多数のスリット孔126aが配置されている。スリットノズル126aは、ベルトコンベア122の移動方向(矢印b方向)と直角方向に向けて配置されていると共に、矢印b方向に向けて所定間隔で並列に配置されている。
【0007】
なお、ベルトコンベア124の下方にも、上方に向けて開口したスリットノズル126aを有する凍結気流吹出部126が設けられ、ベルトコンベア124に対し上下両側から凍結気流を吹き出すようにする場合もある。
【0008】
ベルトコンベア124及び凍結気流吹出部126と仕切り壁128を隔てて反対側に、冷凍機ユニット130の一部を構成する空気熱交換器(蒸発器)132が設けられている。空気熱交換器132の上方に送風ファン134が設けられ、送風ファン134の出口側ケーシングに整風器129が設けられている。
送風ファン134によって矢印a方向に流れる空気流が形成され、空気熱交換器132で冷却され整風器129で整流された低温空気流が、凍結気流吹出部126の上方から凍結気流吹出部126に送られる。そして、スリットノズル126aからベルトコンベア124の搬送面に向けて吹き出される。
【0009】
冷却室122の室外で、ベルトコンベア124の搬送面に被冷却物fを置き、ベルトコンベア124を矢印a方向に移動させて、被冷却物fを冷却室122の入口122aから冷却室内に搬送する。被冷却物fは冷却室122内でスリット孔126aから吹き出される低温空気流により凍結される。凍結された被冷却物fは、冷却室122の出口122bから冷却室外に搬出される。特許文献1又は特許文献2に、連続式フリーザの例が開示されている。
【0010】
バッチ式フリーザ又は連続式フリーザでは、被冷却物に吹き付ける冷却空気の温度と風量(風速)とを変えることにより、冷却能力を調整できる。即ち、凍結に要する時間は、被冷却物に吹き付けられる冷却空気の温度と風速の2つの因子で決まる。冷却空気の温度を低温化することにより、又は冷却空気の風速を増加させることにより、凍結時間を短縮できる。
【0011】
近年、食品の安全をより確かなものにするために、食品を急冷して冷凍食品の品質向上を図ると共に、凍結時間を短縮して作業効率のアップを図る傾向にある。そして、食品を急冷するために、フリーザ内温度をより低温化する傾向にある。現在、既にハンバーガパティの凍結装置やマグロ保管庫等で、超低温と言われる温度帯(−50〜−60℃)での凍結処理がなされている。
【0012】
現在、冷凍温度の低温化を可能にするため、冷媒循環路に二段圧縮機を備えた冷凍サイクル装置や、高温用冷媒と低温用冷媒の二種類の冷媒を用いた二元冷凍サイクル装置が用いられている。しかし、これらの装置ではCOP(成績係数)は必ずしも高くなく、省エネやCO削減が課題になっている。
【0013】
前記課題を解決する手段として、空気冷媒式冷凍方法がある。この冷凍方法は、冷却室から回収した空気を圧縮機で圧縮し、この圧縮空気を冷却器で冷却し、冷却された圧縮空気を膨脹機で減圧して低温空気をつくり、この低温空気を冷却室に導入して冷却室内の被冷却物を冷凍する冷凍方法である。この冷凍方法の一例が特許文献3に開示されている。特許文献3に開示された空気冷媒式冷凍装置を図7により説明する。
【0014】
図7において、空気冷媒式冷凍装置140は、圧縮機142、冷却器144、冷熱回収用熱交換器146及び膨脹機148を空気の流れの順に配置している。これらの装置を経た冷却された低温空気を冷凍庫150に導入するように構成されている。冷凍庫150からの戻り空気は、冷熱回収用熱交換器146で冷却器144を経た空気と熱交換された後、圧縮機142に循環される。
【0015】
圧縮機142と膨脹機148の回転軸は、モータ152の駆動軸に同軸的に接続されており、膨脹機148の回転動力が圧縮機142の回転軸に伝達されることにより、動力回収がなされている。冷却器144は、例えばフィンチューブ型等の熱交換器であり、プレート内を冷却水cが通水される。また、冷却器144を通過する空気を加熱するためのヒータ154も設けられている。
膨脹機148及び冷凍庫150をバイパスする第1のバイパス路156、及び冷凍庫150をバイパスする第2のバイパス路158が設けられ、夫々のバイパス路にバルブ160及び162が介設されている。
【0016】
冷凍運転時には、図示のように、バルブ160及び162を閉、バルブ164及び166を開として運転する。冷凍庫150内の約−60℃の常圧空気を吸引して冷熱回収用熱交換器146の低温側流路168に上方より導入する。低温側流路168に導入された空気は、圧縮機142及び冷却器144を経て冷熱回収用熱交換器146の高温側流路170に導入された空気と熱交換し、約35℃の常圧空気となる。この常圧空気は、圧縮機142で必要圧力まで圧縮され、その際に約93℃まで昇温される。この昇温した圧縮空気は、冷却器144で約40℃まで冷却され、冷熱回収用熱交換器146に下方から導入される。
【0017】
冷熱回収用熱交換器146の高温側流路170に導入された空気は、ここで低温側流路168の約−60℃の空気と熱交換し、約−55℃まで冷却される。この冷却された空気は、膨脹機108に導入され大気圧近傍まで膨脹され、約−80℃に冷却する。この約−80℃の低温空気が冷凍庫110に供給される。
【0018】
デフロスト運転を行なう場合は、バルブ160を開、バルブ162,164及び166を閉として運転する。この場合、高温側流路170を通過した空気は、バイパス路156から低温側流路168に戻り、さらに冷却器144を経て圧縮機142に戻る循環流を形成する。このとき冷却器144ではヒータ154を作動させて循環空気を加温する。デフロスト運転により冷熱回収用熱交換器106内の結氷が解氷し、発生した水は、自重で落下し、ドレントラップ172及び174に溜まる。溜まったドレンを必要に応じてバルブ176又は178を開けて外部へ排出する。
【0019】
空気冷媒式冷凍方法と、二段圧縮式冷凍サイクル装置及び二元冷凍サイクル装置のCOPの違いを図8に示す。図8中、曲線イはNHを冷媒とした二段冷凍機のCOP曲線、曲線ロはNH(高温側)/CO(低温側)二元冷凍機のCOP曲線、曲線ハはR22(高温側)/R23(低温側)二元冷凍機のCOP曲線、曲線ニは空気冷媒式冷凍機のCOP曲線を示す。図8から、冷凍温度が−55℃以下であれば、空気冷媒式冷凍機のCOPが最も高いことがわかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】特開平11−63777号公報
【特許文献2】特開2002−130901号公報
【特許文献3】特開2008−298322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
空気冷媒式冷凍方法をフリーザに用いる場合、次のような問題が生じる。空気冷媒式冷凍装置は、低温空気の温度と風量(風速)とは、圧縮機142及び膨脹機148の回転数によって制御される。しかしながら、圧縮機142と膨脹機148とはモータ152によって同軸制御され、低温空気の温度と風量の2つの因子を独立して制御できない。圧縮機142の回転数と膨脹機148の回転数とは、装置の運転上密接な相関関係をもち、たとえ圧縮機102と膨脹機108とを夫々独立した駆動装置で駆動するようにしても、一方が他方の制約を受けず、自由に制御することはできない。
【0022】
また、フリーザの冷却室内には外部空気が頻繁に侵入し、その量は、冷凍装置の冷凍負荷と比較して少なくない量であり、冷凍負荷の10〜20%にも達する。この侵入した外部空気を空気冷媒式冷凍装置で直接冷却することは非効率であり、COPを低下させる一因になる。
【0023】
そこで、本発明は、かかる従来技術の課題に鑑み、フリーザ内で−50℃以下の低温空気流を形成し、この低温空気流を食品に吹き付けて食品を冷却又は凍結する場合に、高いCOPを維持して、省エネを達成でき、COの発生を抑えることができる冷凍方法及び装置を実現することを目的とする。
また、空気冷媒式冷凍装置を用いて運転する場合に、低温空気流の温度と流速を互いに独立して調整可能し、これによって、凍結時間の制御を容易にすることを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
かかる目的を達成するため、本発明の食品冷凍方法は、
冷却室内に低温空気流を形成させ、該低温空気流中に食品を配置し、該低温空気流の温度又は流速を制御しながら食品を冷凍するようにした食品冷凍方法において、
前記冷却室から回収した空気を圧縮機で圧縮し、この圧縮空気を冷却器で冷却し、冷却された圧縮空気を膨脹機で減圧した低温空気を該冷却室に導入して前記低温空気流を形成させ、
冷媒循環路に二段圧縮機を備えた冷凍サイクル装置で冷却室内雰囲気を設定された低温度帯に冷却し、該低温度帯に冷却された雰囲気で該低温空気流を囲む保温域を形成するようにしたものである。
【0025】
本発明方法は、空気冷媒式冷凍方法と、二段圧縮機を備えた冷凍サイクル装置を用いた二段圧縮冷凍方法とを組み合わせ、夫々の長所を生かして冷凍方法全体のCOPを向上させるようにしたものである。即ち、空気冷媒式冷凍方法で食品を直接冷却又は凍結する低温空気流を形成させると共に、高温側で比較的COPが高い二段圧縮冷凍方法で冷却室内雰囲気を冷却し、外部空気の侵入等に起因した冷却室内の昇温を無くすようにしている。また、該低温空気流より高い温度に制御された冷却室内雰囲気で該低温空気流を囲む保温域を形成することによって、該低温空気流の保温効果を高め、これによって、食品の凍結時間短縮すると共に、装置全体として高いCOPを実現可能としている。
【0026】
なお、本明細書で言う「食品」とは、包装された状態で冷凍可能な食品を含むものとする。また、本明細書で冷凍とは、冷却又は凍結にすること、又は冷却又は凍結状態に保持することを意味する。
【0027】
本発明方法において、低温空気流の温度を−50℃〜−100℃とすると共に、該低温空気流を囲む保温域の温度を−35℃〜−50℃とするとよい。空気冷媒式冷凍方法を用いれば、−50℃〜−100℃の低温空気流を他の冷凍方法より高いCOPで製造できる。一方、−35℃〜−50℃の低温空気は、二段圧縮冷凍方法で比較的高いCOPで製造できる。そして、−35℃〜−50℃の冷却室内雰囲気で該低温空気流を囲むことにより、被冷却物の凍結域の保温効果を増すことができる。
【0028】
なお、好ましくは、低温空気流の温度を−55℃〜−80℃とするのがよい。なぜなら、図8から、−55℃以下で空気冷媒式冷凍方法が最も高いCOPを得ることができると共に、実用上使用頻度が高い温度帯は−80℃以上だからである。
【0029】
本発明方法において、冷却室の内部に設けた空気流形成装置により冷却室内雰囲気による第2の空気流を形成させ、該低温空気流に該第2の空気流を加えることによって該低温空気流の流速を該低温空気流の温度に対して独立して調整可能にするとよい。前述のように、空気冷媒式冷凍方法では、圧縮機と膨脹機の回転数は密接な相関関係があり、そのため、低温空気流の温度と流速を独立して制御できない。
【0030】
これに対し、冷却室内に別途空気流形成装置を設けることにより、低温空気流の温度と独立して流速を自由に制御できるようになる。これによって、食品の凍結時間の制御が容易になり、種々の食品に対して凍結時間を一定に制御できるようになるので、冷凍装置の運転効率を向上できる。
例えば、冷凍負荷が100%の時は、空気冷媒式冷凍装置のみ運転し、被冷却物の減少等により冷凍負荷が低下した時には、空気冷媒式冷凍装置の運転を抑え、空気流形成装置で低温空気流の流速を大きくすることで凍結時間を制御できる。
【0031】
前記本発明方法の実施に直接使用可能な本発明の食品冷凍装置は、
冷却室内に低温空気流を形成させ、該低温空気流中に食品を配置し、該低温空気流の温度又は流速を制御しながら食品を冷却又は凍結するようにした食品冷凍装置において、
前記冷却室から回収した空気を圧縮する圧縮機と、圧縮空気を冷却する冷却器と、冷却圧縮空気を膨脹させる膨脹機とを備え、該冷却室から回収した空気を圧縮、冷却及び膨脹することにより得られる低温空気を該冷却室に導入して前記低温空気流を形成させる空気冷媒式冷凍装置と、
冷媒循環路に二段圧縮機を備え冷却室内雰囲気を設定された低温度帯に冷却する冷凍サイクル装置と、を備え、
該低温度帯に冷却された冷却室内雰囲気により該低温空気流を囲む保温域を形成するように構成したものである。
【0032】
本発明装置では、冷却室内に形成され食品を直接凍結する低温空気流を空気冷媒式冷凍装置で冷却し、該低温空気流を囲む冷却室内雰囲気を二段圧縮冷凍サイクル装置で冷却するようにする。これによって、低温空気流及び冷却室内雰囲気を夫々高COPで冷却できると共に、冷却室内雰囲気で低温空気流を囲む保温域を形成するので、保冷効果を高め、熱損出を抑えることができるので、総合して高いCOPを達成できる。
【0033】
本発明装置において、冷却室の内部に冷却室内雰囲気による第2の空気流を形成する空気流形成装置を設け、該低温空気流に該第2の空気流を加えることによって該低温空気流の流速を該低温空気流の温度に対して独立して調整可能に構成するとよい。
これによって、低温空気流の温度と流速とを独立して制御できるようになり、食品の凍結時間の制御が容易になる。従って、種々の食品に対して凍結時間が一定になるように制御して、冷凍装置の運転効率を向上させることができる。
【0034】
前記流速可変装置を例えば送風機とすれば、その冷却室内への取り付けは容易であり、設備コストを節減できると共に、送風機の駆動装置の回転数制御により低温空気流の流速制御も容易になる。
【発明の効果】
【0035】
本発明の食品冷凍方法によれば、冷却室内に低温空気流を形成させ、該低温空気流中に食品を配置し、該低温空気流の温度又は流速を制御しながら食品を冷却又は凍結するようにした食品冷凍方法において、冷却室から回収した空気を圧縮機で圧縮し、この圧縮空気を冷却器で冷却し、冷却された圧縮空気を膨脹機で減圧した低温空気を該冷却室に導入して前記低温空気流を形成させ、冷媒循環路に二段圧縮機を備えた冷凍サイクル装置で冷却室内雰囲気を設定された低温度帯に冷却し、該低温度帯に冷却された雰囲気で該低温空気流を囲む保温域を形成するようにしたことにより、フリーザ内で−50℃以下の低温空気流を形成するに際し、高いCOPを維持して、省エネを達成でき、COの発生を抑えることができる。
【0036】
また、本発明の食品冷凍装置によれば、冷却室内に低温空気流を形成させ、該低温空気流中に食品を配置し、該低温空気流の温度又は流速を制御しながら食品を冷却又は凍結するようにした食品冷凍装置において、冷却室から回収した空気を圧縮する圧縮機と、圧縮空気を冷却する冷却器と、冷却圧縮空気を膨脹させる膨脹機とを備え、該冷却室から回収した空気を圧縮、冷却及び膨脹することにより得られる低温空気を該冷却室に導入して前記低温空気流を形成させる空気冷媒式冷凍装置と、冷媒循環路に二段圧縮機を備え冷却室内雰囲気を設定された低温度帯に冷却する冷凍サイクル装置と、を備え、該低温度帯に冷却された冷却室内雰囲気により該低温空気流を囲む保温域を形成するように構成したこと
により、前記本発明方法と同様の作用効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の冷凍装置の第1実施形態に係る全体系統図である。
【図2】本発明による冷凍方法と比較例として他の冷凍方法による設計データを示す図表である。
【図3】比較例としての二元冷凍サイクル装置を示す系統図である。
【図4】本発明の冷凍装置の第2実施形態の一部を示す系統図である。
【図5】従来のバッチ式フリーザの説明図である。
【図6】従来の連続式フリーザを示し、(A)はその正面視説明図であり、(B)はその側面視説明図である。
【図7】空気冷媒式冷凍装置の一構成例を示す説明図である。
【図8】各冷凍装置のCOPを比較した線図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではない。
【0039】
(実施形態1)
本発明の食品冷凍装置の第1実施形態を図1〜図3により説明する。図1は、本実施形態の食品冷凍装置の全体図である。図1において、食品冷凍装置1は、空気冷媒式冷凍装置10と、連続式フリーザ20と、二段圧縮式冷凍サイクル装置30とで構成されている。
空気冷媒式冷凍装置10は、圧縮機12と膨脹機14とが駆動モータ16に同軸的に接続されている。圧縮機12から吐出された圧縮空気は、冷却器18で冷却水cと熱交換して冷却され、その後、冷熱回収用熱交換器19に送られる。
【0040】
連続式フリーザ20は、図6に示す連続式フリーザ120と同様に、隔壁が密閉構造及び断熱構造を有する冷却室22と、冷却室22の隔壁に設けられた図示省略の入口及び出口を通して貫通配置されたベルトコンベア24と、ベルトコンベア24の往動面24aの上方に配置される凍結気流吹出部26とを備えている。凍結気流吹出部26は、周囲の空気が浸入しない密閉された中空空間を形成するケーシングからなる。凍結気流吹出部26の下部には、図6のスリットノズル126aと同一構造の複数のスリットノズル26aがベルトコンベア24の往動面24aに向けて設けられている。即ち、各個のスリット孔26aは、ベルトコンベア24の搬送方向と直角方向に向けて配置され、このスリット孔26aがベルトコンベア24の搬送方向に一定間隔を空けて配置されている。
【0041】
冷却室22内の空気は、空気冷媒式冷凍装置10と接続された配管27から取り出され、冷熱回収用熱交換器19で冷却室22から出た空気と熱交換した後、圧縮機12に送られる。該空気は圧縮機12で圧縮された後、冷却器18で予冷される。その後冷熱回収用熱交換器19で冷却器22から取り出された空気と熱交換してさらに冷却され、その後、膨脹機14に送られる。該空気は膨脹機14で減圧されて−60℃に冷却され、配管28を通って連続式フリーザ20の冷却室22内に設けられた凍結気流吹出部26の内部空間に供給される。この低温空気が低温空気流となってスリットノズル26aから下方に垂直に吹き出される。この低温空気流がベルトコンベア24の往動面24aに載せられて搬送される被冷却物fに吹き付けられて、被冷却物fを凍結する。
【0042】
二段圧縮式冷凍サイクル装置30は、冷媒循環路が設けられ、この冷媒循環路に、低段圧縮機32、高段圧縮機34及びこれらの駆動モータ32a、34aと、凝縮器36と、膨脹弁38,40及び42と、中間冷却器44及び46と、連続式フリーザ20の冷却室22内に設けられた蒸発器48とが介設されている。
【0043】
低段圧縮機32で中間圧まで圧縮された冷媒は、中間冷却器44で冷却された後、高段圧縮機34に入り高圧まで圧縮される。高段圧縮機34から吐出された冷媒は、凝縮器36で凝縮された後、中間冷却器46で冷却される。その後、膨脹弁42を経て減圧されて蒸発器48に送られる。冷却室22内ではファン49により矢印方向の空気循環流が形成されており、冷却室内空気は蒸発器48で冷却されて、−40℃の温度に保持される。蒸発器48で蒸発潜熱を得て気化した冷媒は、低段圧縮機32に戻る。
【0044】
凝縮器36を出た冷媒液の一部が分岐し、膨脹弁40を経て減圧された後、冷却媒体として中間冷却器44に送られる。中間冷却器44では、この減圧された冷媒液が低段圧縮機32から吐出された冷媒ガスから蒸発潜熱を奪って気化し、該冷媒ガスを冷却する。これによって、高段圧縮機34から吐出された冷媒ガスが許容温度を超えるのを防止する。また、凝縮器36を出た冷媒液の別の一部が分岐し、膨脹弁38を経て減圧された後、冷却媒体として中間冷却器46に送られる。中間冷却器46では、この減圧された冷媒液が凝縮器36から出た冷媒液蒸発潜熱を奪って気化し、該冷媒液を冷却する。これによって、二段圧縮式冷凍サイクル装置30の冷凍能力を向上できる。
【0045】
かかる構成において、凍結気流吹出部26のスリットノズル26aから−60℃に冷却された低温空気流が被冷却物fに向かって吹き出される。また、凍結気流吹出部26を囲む冷却室22内の空気は、蒸発器48によって冷却されて−40℃に保持される。
被冷却物fを凍結処理した後の低温空気流は、被冷却物fの熱を吸収し、−40℃あるいは被冷却物fの種類によってはそれより高温となる場合がある。また、冷却室22内には、ベルトコンベア24が貫通する入口又は出口等から外部空気が侵入してくることが多い。
【0046】
本実施形態の食品冷却装置1では、高温側でのCOPが比較的高い二段圧縮式冷凍サイクル装置30で冷却室22内空気をー40℃に保持し、かつ−60℃の低温空気をこの温度近辺で最もCOPの高い空気冷媒式冷凍装置で製造しているので、本実施形態の冷凍装置のCOPを向上できる。また、−40℃に保持した冷却室22内の雰囲気で凍結気流吹出部26を囲んでいるので、その保温効果でCOPをさらに向上できる。
【0047】
さらに、凍結気流吹出部26をー40℃の雰囲気で囲んでいるので、−60℃の低温空気流が直接冷却室22の隔壁に接することがない。そのため、冷却室22の隔壁を構成する断熱材を薄くでき、コストダウンを可能とする。
【実施例】
【0048】
次に、本実施形態の冷凍装置及び比較例としての冷凍装置を用いて行なった設計データを図2の表1に示す。この設計例では、製品(被冷却物)としてハンバーグ(豚挽き肉100%)を用い、フリーザへの投入時温度を15℃とし、製品凍結後の温度を−18℃としたものである。また、フリーザとして連続式フリーザを用い、被冷却物に対して低温空気流を吹き出すスリットノズルをベルトコンベアの往動面の上方とベルトコンベアの復動面の下方の両方に設け、被冷却物の上下方向から被冷却物に向けて低温空気流を吹き出す方式のものを用いた。
【0049】
なお、該スリットノズルのスリット幅は4mmであり(本発明を含む空気冷媒式は0.7mm)、スリットノズル間のピッチは60mmである。また、低温空気流の吹き出し流速は、空気冷媒式を除き、比較例が15m/sである(本発明を含む空気冷媒式は12.5m/s)。空気冷媒式は、ファンを持たないので、スリット幅が小さくても、ファン動力が上昇しないしないため、スリット幅を狭くした。また、比較例(1)、(4)及び本発明(3)の二段圧縮式冷凍サイクル装置で用いた冷媒はR22であり、比較例(5)の二元冷凍サイクル装置で用いた冷媒は、高温側冷凍がNHであり、低温側冷媒がR23である。
【0050】
比較例(1)の二元冷凍サイクル装置を用いた冷凍装置を図3により簡単に説明する。図3において、この食品冷凍装置50は、二元冷凍サイクル装置50と連続式フリーザ70とから構成されている。二元冷凍サイクル装置50は、高温側冷媒循環流路52と低温側冷媒循環流路54とがカスケードコンデンサ56で接続されている。高温側冷媒循環流路52には、高温側圧縮機58及びその駆動モータ58a、蒸発式凝縮器60と、膨脹弁62が介設されている。低温側冷媒循環流路54には、低温側圧縮機64及びその駆動モータ64aと、膨脹弁66と、連続式フリーザ70の冷却室72の内部に配置された蒸発器68とが介設されている。
【0051】
蒸発器68の上方には送風ファン74が設けられ、送風ファン74によって下方に向う空気流が形成される。蒸発器68には配管内を低温冷媒が流れ、低温冷媒と空気流とが熱交換して空気流を冷却する。冷却された低温空気流は、スリットノズル76が設けられ、スリットノズル76から下方に低温空気流が吹き出される。スリットノズル76の下方にはベルトコンベア78が冷却室72を貫通配置されている。冷却室72の外部でベルトコンベア78に載せられた被冷却物fは、冷却室72内で低温空気流を吹き付けられて凍結処理される。ベルトコンベア78の復動面の下方にもスリットノズル76bが上方に向けて配設され、図示省略のダクトを介して、低温空気流が吹き出される。
【0052】
この食品冷凍装置3には、コントローラ80が設けられ、このコントローラ80によって低段圧縮機32及び34の駆動モータ32a及び34bの回転を制御すると共に、膨脹弁62及び66の開閉を制御する。
【0053】
表1から、本発明(3)の全体COP及び対製品COPが共に高いことがわかる。比較例(1)は全体COPが最も高いが、ファン動力があるために冷凍機にかかる負荷も高い。また低温空気流の温度が−40℃と高いため、凍結処理時間が最も長く、急速冷凍には適さないことがわかる。本発明(3)では、空気冷媒式を採用しているので、ファン動力をほとんど必要としない。即ち、膨脹機14の回転によって起きる流れがそのまま凍結気流吹出部126で低温空気流となる。ファン動力は冷却室22内の空気流形成のためのファン49の動力のみである。従って、この点もCOP向上に寄与している。
【0054】
(実施形態2)
次に、本発明の冷凍装置の第2実施形態を図4に基づいて説明する。図4において、本実施形態と前記第1実施形態との相違点は、連続式フリーザ20の凍結気流吹出部26のケーシングの天井面に送風ファン82(例えばブースターファン)及びその駆動モータ82aを設けると共に、該天井面に通風用開口84を設けた点にあり、その他の構成は、第1実施形態と同一である。
【0055】
本実施形態では、送風ファン82を稼動し、冷却室22内空気を通風用開口84を通って凍結気流吹出部26の内部中空部に流入させる空気流dを形成させる。これによって、空気冷媒式冷凍装置10の運転状態と無関係にスリットノズル26aから被冷却物fに向けて吹き出す低温空気流の流速を独立して調整可能になる。
【0056】
なお、冷却室内空気は−40℃であり、凍結気流吹出部26内の−60℃の低温空気流と温度が異なる。従って、冷却室内空気を混入させることで、凍結気流吹出部26の低温空気流の温度を−60℃に保持できなくなるおそれがある。そのため、送風ファン82の送風量との関係から、冷却室内空気の混入後の温度が−60℃となるように、凍結気流吹出部26の低温空気流を予め−60℃より低く設定しておく必要がある。
【0057】
本実施形態によれば、空気冷媒式冷凍装置10の運転状態と無関係にスリットノズル26aから吹き出す低温空気流の流速を独立して調整可能になり、これによって、冷却能力の調整が容易になるので、被冷却物fの凍結時間を調整が容易になる。そのため、種類の異なる食品に対して、凍結時間を一定に制御でき、冷凍装置1の運転効率を向上できる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明によれば、食品冷凍装置において、COPを向上して省エネとCO削減を達成できると共に、凍結時間の調整又は急速凍結が容易になり、食品冷凍装置の運転効率を向上できる。
【符号の説明】
【0059】
1,3 食品冷凍装置
10,140 空気冷媒式冷凍装置
12 圧縮機
14 膨脹機
16,82a、32a、34a 駆動モータ
18 冷却器
19 冷熱回収用熱交換器
20,120 連続式フリーザ
22,72 冷却室
24,78,124 ベルトコンベア
24a 往動面
26,126 凍結気流吹出部
26a、76a〜b、126a スリットノズル
30 二段圧縮式冷凍サイクル装置
32 低段圧縮機
34 高段圧縮機
36 凝縮器
38,40,42,62,66 膨脹弁
44,46 中間冷却器
48,68 蒸発器
49 ファン
50 二元冷凍サイクル装置
52 高温側冷媒循環流路
54 低温側冷媒循環流路
56 カスケードコンデンサ
58 高温側圧縮機
60 蒸発式凝縮器
64 低温側圧縮機
74,82 送風ファン
80 コントローラ
84 通風用開口
f 被冷却物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却室内に低温空気流を形成させ、該低温空気流中に食品を配置し、該低温空気流の温度又は流速を制御しながら食品を冷却又は凍結するようにした食品冷凍方法において、
前記冷却室から回収した空気を圧縮機で圧縮し、この圧縮空気を冷却器で冷却し、冷却された圧縮空気を膨脹機で減圧した低温空気を該冷却室に導入して前記低温空気流を形成させ、
冷媒循環路に二段圧縮機を備えた冷凍サイクル装置で冷却室内雰囲気を設定された低温度帯に冷却し、該低温度帯に冷却された雰囲気で該低温空気流を囲む保温域を形成するようにしたことを特徴とする食品冷凍方法。
【請求項2】
前記低温空気流の温度を−50℃〜−100℃とすると共に、該低温空気流を囲む保温域の温度を−35〜−50℃とすることを特徴とする請求項1に記載の食品冷凍方法。
【請求項3】
前記冷却室の内部に設けた空気流形成装置により冷却室内雰囲気による第2の空気流を形成させ、該低温空気流に該第2の空気流を加えることによって該低温空気流の流速を該低温空気流の温度に対して独立して調整可能にしたことを特徴とする請求項1又は2に記載の食品冷凍方法。
【請求項4】
冷却室内に低温空気流を形成させ、該低温空気流中に食品を配置し、該低温空気流の温度又は流速を制御しながら食品を冷却又は凍結するようにした食品冷凍装置において、
前記冷却室から回収した空気を圧縮する圧縮機と、圧縮空気を冷却する冷却器と、冷却圧縮空気を膨脹させる膨脹機とを備え、該冷却室から回収した空気を圧縮、冷却及び膨脹することにより得られる低温空気を該冷却室に導入して前記低温空気流を形成させる空気冷媒式冷凍装置と、
冷媒循環路に二段圧縮機を備え冷却室内雰囲気を設定された低温度帯に冷却する冷凍サイクル装置と、を備え、
該低温度帯に冷却された冷却室内雰囲気により該低温空気流を囲む保温域を形成するように構成したことを特徴とする食品冷凍装置。
【請求項5】
前記冷却室の内部に冷却室内雰囲気による第2の空気流を形成する空気流形成装置を設け、該低温空気流に該第2の空気流を加えることによって該低温空気流の流速を該低温空気流の温度に対して独立して調整可能に構成したことを特徴とする請求項4に記載の食品冷凍装置。
【請求項6】
前記流速可変装置が送風機であることを特徴とする請求項5に記載の食品冷凍装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−47553(P2011−47553A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−195265(P2009−195265)
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【出願人】(000148357)株式会社前川製作所 (267)
【Fターム(参考)】