説明

食品包装用蓋材および食品包装容器

【課題】何度も開閉可能で、形状保持機能、復元性などを有するため容易に封止可能であり、片手でも操作することができ蓋材を提供することであり、さらには前記蓋材を備え自立性を有する包装容器を提供する。
【解決手段】食品保存用容器開口部の外周縁部に固着するための接着部11と、前記接着部11の接着面より食品保存用容器内部方向に凹んだ凹部12a,12bを少なくとも一部に有し、少なくとも開口領域において前記接着部と凹部12a,12bとで立体形状が形成され、前記凹部12a,12bには、1つまたは2つ以上の凸状部13を有し、凹凸構造を形成している構成の食品包装用蓋材とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品を包装するために用いられるカップ状、お椀状等の形状をした容器の上部開口部を密閉ないし閉口する食品包装用蓋材とこれを備えた食品包装容器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年加工食品も多様化し、カップ麺類に代表されるような主食に供させる食品の他、佃煮、煮物類、漬け物等のようないわゆるおかずとして使用される食品や、塩昆布やふりかけ等のような乾物類など、種々の態様の食品が加工され、包装されて市場に流通している。これらの食品の包装には、前記カップ麺などを除けば、その殆どが袋状の軟質樹脂で形成された食品包装袋が用いられている。
【0003】
このような食品包装袋は、高い機密性と、耐水性、強度等を備え、上記加工食品の輸送には適している。しかし、一般に用いられている食品包装袋は通常平袋型であり、特殊なものを除けば再封機能が無く、自立性にも乏しい。このため、消費者が加工食品を購入して使用する場合、一袋分全てを使い切る場合等を除き、他の容器に移し替えるなどの作業が必要である。
【0004】
また、上記乾物類などは調理の際に用いられることも多く、調理の度に袋から少量取り出して用いるのは面倒である。さらに、調理中においては、例えば調理器具の中の具材を攪拌しながら他の具材や、調味料などを投入するといった作業が必要であり、片手での操作で簡単に具材が取り出せることができれば非常に便利である。また、ふりかけ類などでは包装袋にジッパーがついたものもあるが、主に食卓に用いられるため、自立性の無い袋は広い置き場所を占有する上、開封状態で置くと中身がこぼれ出たりする。このため、使用の度にジッパーの開閉といった面倒な作業を要する。従って、上記同様自立性を有し片手で簡単に開閉できる包装容器があれば便利である。
【0005】
一方、お湯を注いで調理する即席麺等の容器は、その性質上自立性を必要とする。このため、カップ状ないしお椀状の容器内に麺類などの容器に食材が収納され、容器の上部開口部をフィルム状の蓋部材により封止する構造になっている。しかし、この蓋部材は単に輸送中における食材の封止を目的とし、複数回の開閉動作を行うような機能が与えられたものではない。このため、その材質も通常は紙層とアルミニウム箔層の積層シート等のようなフィルム状の部材が用いられ、蓋材として必要な形状保持の機能は有していない。これは、カップ状の容器にお湯を注いで麺が調理できる間だけ蓋として機能すればよいからであり、食に供する麺ができあがれば後は取り去ってしまうからである。
【0006】
使用に際し、上記蓋材を容器内にお湯を注いだ後での再度封止に使用する場合、半分程度開けた蓋材の端部に形成されている舌状の凸部を、フランジ状の容器縁部に当てて折り返し、この縁部の下端に引っかけるようにして固定する。しかし、蓋材下面はお湯の熱で暖められたり蒸気に曝されるので膨張して反り返り、容易に前記固定箇所が外れて蓋が開いてしまう現象は誰しも経験するところである。
【0007】
このように、従来の食品包装容器には、自立性を有し、しかも何度も開閉可能で形状保持機能を有する蓋材を備えたものは殆ど検討されていなかった。
【0008】
特開2007−331807号公報には、食品衛生面に優れ、良好な易開封性と手や指による加圧圧着のみで再封性を有する再封機能付き蓋材及びこれを用いた再封可能な包装体を得ることを目的として、表面樹脂層(A)、粘着樹脂層(B)、剥離樹脂層(C)及びヒートシール樹脂層(D)が、(A)/(B)/(C)/(D)の順に積層されている多層フィルムを用いてなる蓋材であって、前記粘着樹脂層(B)がスチレン系熱可塑性エラストマーと粘着付与剤を主成分として構成され、前記ヒートシール樹脂層(D)を被シール体のヒートシール部でヒートシールさせ、次いで該ヒートシール部から前記蓋材を剥離したときに、前記ヒートシール部において、前記粘着樹脂層(B)と前記剥離樹脂層(C)とが層間剥離し、かつ前記粘着樹脂層(B)が前記剥離樹脂層(C)と再封可能な状態で露出することを特徴とする再封機能付き蓋材が記載されている。
【0009】
また、同文献には、再封する場合に、剥離した蓋材1を底材2に被せて、表面樹脂層3を手や指で加圧圧着し、蓋材1の粘着樹脂層4の露出部11と、底材2へ移行した蓋材1の剥離樹脂層5の露出部12と重ね合わせることにより蓋材1と底材2とを再封することができる点が記載されている。しかし、この文献に記載されている蓋材は、粘着樹脂層の粘着力により再封するため、ゴミの付着や劣化などにより粘着樹脂層の粘着力が劣化すれば封止能力が低下してしまう。また、蓋自体に形状保持機能がないため、片手で容易に開閉させることは困難である。
【0010】
特開2007−106462号公報には、アルミニウム箔を含まない積層体からなるカップ型の食品包装の蓋材であり、金属検知器によって内容物の異物等の検査を行うことが可能であり、デッドホールド性に優れるカップ型の食品包装の蓋材を提供することを目的として、縦および横の引張破断強度が140MPa以下である二軸延伸ポリエステルフィルム層の一方の面に金属酸化物からなる蒸着薄膜層を有し、もう一方の面に紙層を有することを特徴とするカップ型食品包装蓋材が記載されている。また、デッドホールド性とは、カップ型食品蓋材開封時に半開き状態を維持する機能および再閉封しフランジ部に折りたたみ固定できる機能であり、前者は内容物(スープ袋、かやく袋等)を取り出しやすく、熱湯を注ぎやすくすることができ、後者は熱湯を注いだ後に食品を蒸らしやすくする性質のことをいうとも記載されている。
【0011】
しかし、この文献の蓋材も、二軸延伸ポリエステルフィルム層の一方の面に金属酸化物の蒸着薄膜層と他方の面に紙層を有する構成であるため、多少のデッドホールド性は有するものの形状保持機能に劣り、複数回の開閉動作に耐えられるものではなく、片手での操作も困難である。
【0012】
特開2001−213469号公報には、容器本体の上面の開口部をシール材で密閉し、その密閉状態を維持して、食品等を包装する密閉容器とその密閉容器に使用される蓋材の改良に関し、密封が必要な食品等の被包装物に適用することができ、繰り返して開閉することができ、保存用としても使用することができる密閉容器及びその蓋材を提供することを目的として、上面に開口部2を有する容器本体1と、該容器本体1の開口部2を閉塞する蓋材6とからなる密閉容器において、前記蓋材6が、容器本体1の開口部2を被うとともに該開口部2の周縁のシール部3にシール可能なシール材7と、該シール材7の端部に取り付けられかつ前記容器本体1のシール部3の外側に取り付け可能となるように構成されたリッド8とで構成された密閉容器及びその蓋材が開示されている。
【0013】
しかし、この文献の構成では、フィルム状のシール材7の端部にポリプロピレン等の合成樹脂製のリッド8を配置しなければならず、構成が複雑でコストが嵩む。
【0014】
なお、特開2003−292000号公報には、蓋体の裏面に複数の突起を設けた容器が開示されているが、この突起は麺等の内容物が引っ掛り、湯切り処理時に容器を傾けても湯切り口から麺等の内容物の流れ出しや、湯切り口を塞いでしまうことを防止することを目的としたものであって、蓋の強度を向上させるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2007−331807号公報
【特許文献2】特開2007−106462号公報
【特許文献3】特開2001−213469号公報
【特許文献4】特開2003−292000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
解決しようとする課題は、何度も開閉可能で、形状保持機能、復元性などを有して容易に再封可能であり、片手でも操作することが可能な蓋材を提供することであり、さらには前記蓋材を備え自立性を有する包装容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、上記課題を解決するため以下の構成とした。
(1)食品保存用容器開口部の外周縁部に固着するための接着部と、
前記接着部の接着面より食品保存用容器内部方向に凹んだ凹部を少なくとも一部に有し、
少なくとも開口領域において前記接着部と凹部とで立体形状が形成され、
前記凹部には1つまたは2つ以上の凸状部を有し凹凸構造を形成している食品包装用蓋材。
(2)前記凸状部がなだらかな山形であり波状の凹凸構造を形成している上記(1)の食品包装用蓋材。
(3)前記凸状部に対して直行する方向に、前記凸状部同士を連結するように形成された凸部により補強凸部が形成されている上記(1)または(2)の食品包装用蓋材。
(4)蓋材中央部付近に形成された凹部とその両脇に形成された凸状部を有し、前記凹部が開口の際の折りしろとして機能する上記(1)の食品包装用蓋材
(5)前記接着部の縁部から下方に垂下した折り返し部を有する上記(1)〜(4)のいずれかの食品包装用蓋材
(6)前記接着部の縁部から水平方向に張り出した指掛け部を有する上記(1)〜(5)のいずれかの食品包装用蓋材
(7)前記指掛け部には、つばと係合する突起を有する上記(6)の食品包装用蓋材
(8)前記接着部が容器開口部のつばに接着または融着される上記(1)〜(7)のいずれかの食品包装用蓋材
(9)少なくとも熱融着が可能な材料を有するシート状の材料を成形して形成されている上記(1)〜(8)のいずれかの食品包装用蓋材
(10)上記(1)〜(9)のいずれかの蓋材を有する食品包装用容器
【発明の効果】
【0018】
本発明の食品包装用蓋材は、何度も開閉可能で、形状保持機能、復元性などを有するため容易に封止可能であり、しかも片手でも容易に操作することができる。また、この様な蓋材を有した食品包装容器は、自立性を有し、取り扱いが容易であり、置き場所の専有面積も少なくて済むという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は本発明の食品包装用蓋材の第1の実施例を示す外観斜視図である。(実施例1)
【図2】図2は本発明の食品包装用蓋材の第1の実施例を示す平面図である。(実施例1)
【図3】図3は本発明の食品包装用蓋材の第1の実施例を示す側面図である。(実施例1)
【図4】図4は本発明の食品包装用蓋材が用いられる容器の実施例を示す正面図である。(実施例1)
【図5】図5は本発明の食品包装用蓋材が用いられる容器の実施例を示す平面図である。(実施例1)
【図6】図6は本発明の食品包装用蓋材の第2の実施例を示す外観斜視図である。(実施例2)
【図7】図7は本発明の食品包装用蓋材の第3の実施例を示す外観斜視図である。(実施例3)
【図8】図8は本発明の食品包装用蓋材の第4の実施例を示す外観斜視図である。(実施例4)
【図9】図9は本発明の食品包装用蓋材の第4の実施例を示す平面図である。(実施例4)
【図10】図10は本発明の食品包装用蓋材の第4の実施例を示す断面図である。(実施例4)
【図11】図11は本発明の食品包装用蓋材の第4の実施例を示す断面図である。(実施例4)
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の食品包装用蓋材は、例えば図1に示すような態様の構成であり、食品保存用容器2開口部の外周縁部に固着するための接着部11と、前記接着部11の接着面より食品保存用容器2内部方向に凹んだ凹部12a,12bを少なくとも一部に有し、少なくとも蓋材1の開口領域において前記接着部11と凹部12a,12bとで立体形状が形成されている。このように、蓋材の開口領域において接着部11と凹部12a,12bとで形成される立体形状を有することで、開口時における蓋材の形状保持機能、復元機能を確保し、更に凹部による容器本体との嵌合機能により、封口性に優れ、かつ繰り返し使用を可能にしている。
【0021】
本発明の食品包装用蓋材は、好ましくはカップ状ないしお椀状の食品包装用容器の開口部を封止する。食品包装用容器内部には、種々の食品が収納される。前記封止は、蓋材の接着部を食品保存用容器開口部の外周縁部に固着することで達成される。この固着は、接着または融着など、既存の蓋材の固定、固着手段を用いることができる。なかでも融着は、食品に与える化学成分の影響が少なく、固定ないし固着作業が容易である点で好ましい。接着部は、通常食品包装容器の上端の開口部であり、通常フランジ状のつばが形成された部分に固着される。従って、接着部とは、このつばと対向する部分をいう。
【0022】
食品包装用蓋材は、前記接着部の接着面より食品保存用容器内部方向に凹んだ凹部を少なくとも一部に有する。そして、少なくとも蓋材の開口領域において前記接着部と凹部とで立体形状が形成されている。凹部と接着部とで立体構造を形成することで、蓋材の見かけの厚みを増し、蓋材の厚み方向での強度を大きくすることができる。これにより、蓋開閉時、封止時の強度が高まり、必要な形状保持機能、復元機能を得ることができ、封止状態を再現よく維持できる。また、片手での操作にも容易に対応できる。なお、本発明の蓋材は、再封時においては必ずしも密閉できる必要はなく、封口する程度のものでもよい。
【0023】
前記凹部は、蓋材の少なくとも一部の領域に形成される。凹部の大きさとしては、好ましくは蓋材の封止時の形状の平面への投影面積における20%以上、より好ましくは30%以上、特に50%以上である。また、少なくとも蓋材の一部を開く構造の場合には、開口部に対応する蓋材の投影面積の好ましくは30%、より好ましくは40%以上であるとよい。
【0024】
また、凹部の深さとしては特に規制されるものではなく、蓋としての機能を損なわず、必要な強度や機能を発揮できる深さにすればよい。具体的には1〜10mm、好ましくは3〜5mm程度である。凹部の深さは一定でなくてもよく、一部が傾斜面により構成されていてもよい。この場合の前記深さは、最大深さを表す。
【0025】
また、前記凹部は、複数の凹部に分けて形成されていてもよい。複数の凹部に分けることで更に強度を増し、蓋の開度、つまり開口の大きさや、開き具合を調整できる。この場合、好ましい凹部の面積は、複数の凹部の面積の合算値である。複数の凹部を設ける場合、大きな凹部の中に1つまたは2つ以上の凸状部を設けることで凹凸構造を形成するとよい。また、前記凸状部は、蓋を開口する際の折りしろ線と平行に、開口縁部間に跨るように形成するとよい。この場合、凸状部の端部上面がそのまま接着部上面と同様の位置になる場合には、この部分での折り曲げが容易になる。そして、この凸状部の位置、大きさ、および数を調整することで、蓋の開口位置、開口形状、開度、開いたときの折曲がり具合などを調整することができる。従って、複数の凹部は、溝状に接着部間に渡って形成するとよい。
【0026】
前記凸状部は、四角い断面形状にしてもよいが、緩やかな曲線を描く正弦波状の断面形状としてもよい。この場合、凹凸構造は波状構造になってもよい。一般に、凸状部の数が多いほど、蓋材の剛性が増すが、上記のように折り曲げが容易になるという特性も生じてくる。このため、折り曲がりを防止するためには、凸状部と、接着部との上面が連続しないような形状にするか、凸状部に交差、ないし直行する方向に各凸状部を連結する補強凸部を設けてもよい。補強凸部の大きさや数、連結する凸状部の数や位置などは任意であり、必要により適切なものにすればよい。
【0027】
凹部は、好ましくは食品包装用容器の内側面に沿って容器内部側に垂下するように凹んだ側部を有するとよい。特に開口部の先端もしくは中央部分では、凹部外側面と容器の内側面とが密着するように嵌合し、容易に再封性を持たせることができる。また、前記開口部の外周部の50%以上、好ましくは70%以上、特に全域にわたり嵌合形状にすることで、更に再封性を向上させることができる。さらに、蓋材の他の領域においても前記嵌合形状にすることで、容器への組み付けも容易、かつ強固になり、場合によっては接着、融着による固着が不要になる。また、前記凹部外側面と容器の内側面に嵌合、係合を確実にするための凹凸形状を形成してもよい。例えば、何れかに球もしくはこれを変形した立体の一部のような凸部を形成し、他方にはこれに対応した形状の凹部を設ければよい。
【0028】
蓋材外縁は、通常蓋材が容器開口部の形状に即した形状であるため、上記の容器つばの外縁と同様になるが、必要により異なるようにしてもよい。特に、開口部周囲の蓋材外縁の一部または全部を延長して、指掛け機能を持たせた指掛け部を形成してもよい。この指掛け部は、1カ所でもよいし複数箇所形成してもよい。また、指掛け部には指掛け性を良くし、滑り止め機能を有すると共に補強の機能も果たす凹凸を形成してもよい。
【0029】
また、蓋材外縁から前期つば端部に沿って折り曲げ、垂下するスカート状の折り返し部を形成してもよい。このような折り返し部を設けることで、容器との嵌合ないし係合がより強固に行われる。また、接着、融着をすることなく、容器に取り付けることも可能である。さらに、開口部における前記折り返し部に内側に突出した凸部やフックを形成して、つばと係合させることでより確実に封口させることができる。折り返し部の垂れ下がりの長さは、特に限定されるものではないが、長すぎると嵌合動作に支障が生じたり、外観を損なったり、使用に支障が生じたりしてくる。通常、つばの厚さ以上20mm以下であり、好ましくは3〜10mm程度である。さらに、折り返し部の先端を、内側に向けて僅かに折り返してもよい。
【0030】
本発明の蓋材には、食品包装に用いられている種々のシート材が使用できるが、特に熱融着可能なシート材が適している。このような熱融着性に優れた材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン樹脂を挙げることができる。また、エチレン/酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン/アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン/メタアクリル酸共重合体(EMAA)等エチレン共重合樹脂を積層したシート材を使用することもできる。
【0031】
また、場合によってはホットメルト接着剤を基材シートに設けてもよい。基材シート(44)としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などの比較的薄いシートが挙げられ、サイズや内容物等によって適宜選定することができる。これら基材シートは、上記熱融着材と組み合わせて、積層体として用いてもよい。
【0032】
さらに、両アート紙、片アート紙、両面コート紙、片面コート紙、合成紙等の紙層、アルミニウム泊の層等を必要により付加することができる。
【0033】
蓋材の厚さは通常用いられているシート材の厚さであればよく特に限定されるものではないが、通常シート層一種あたり0.1〜0.5mm程度である。
【0034】
本発明の食品包装用容器は、合成樹脂射出成形品、合成樹脂製シートからの熱成形品、合成樹脂発泡成形品等により構成され、特に合成樹脂射出成形品が好ましい。その形状は特に限定されるものではなく、収納される食品の形状や大きさ、特性、使用態様などにより最適な形状が選択される。一般的には、有底の円柱形、角柱形、円錐台形、角錐台形、あるいはカップ状ないしお椀状で、上部に開口した形状が好ましい。また、上方に向けて拡径、つまり断面積が拡大していてもよい。
【0035】
容器側胴部の上端には外側、つまり外周方向に張り出したフランジ状のつばが形成されている。このつばの上面に蓋材の接着部が接着や熱融着などの固定手段により固着される。
【0036】
容器は、公知の材料と手段により製造することができる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン等の樹脂を用いて周知の射出成形により製造することができる。また、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン等を主体とする軟包材のシートを加熱、軟化させて、これをキャビティ側から減圧吸引して、深絞り型に成型するいわゆる真空成型方法等が使用できる。
【0037】
容器の大きさとしては、特に限定されるものではないが、通常開口部が円形状の容器では、外径で30φ〜150φ程度である。なお、前記外径は当該技術分野で慣習とされている径表示と同義である。また、底部から開口端までの高さは20〜200mm程度である。容器の色は透明であっても、不透明であっても、種々の着色や模様が付されていてもよい。透明である場合には、内部の食材を確認することができ、残量なども容易にわかるという利点がある。
【実施例1】
【0038】
次に実施例を示し、本発明をより具体的に説明する。図1〜3は、本発明の第1の実施例を示すもので、図1は、本発明の蓋材と容器の外観斜視図、図2は蓋材の平面図、図3は図2の側面図である。図において、本発明の蓋材1は、外周縁部に形成された接着部11と、容器2の内部方向に凹んだ凹部12a,12bを有する。図2における上部方向が前部であり、下部方向が後部である。そして、蓋材のおよそ中央から前部に相当する部分が開口部に相当する。この例では食品包装容器2は、有底円筒形状で開口部に向けて僅かに拡径する、いわゆるカップ状の形態になっている。従って、その開口部は円形であり、蓋材1もこれに即した形状になっている。
【0039】
蓋材1の凹部12a,12bは、開口部に対応した前部凹部12aと、後部凹部12bとを有する。また、前部凹部12aと後部凹部12bとの間で僅かに前部凹部寄りの領域には、凸状部13と溝状の凹部12cとで構成された凹凸構造が形成されている。図示例では凸状部13は3つあり、接着部11を連絡するように縁部間に渡って帯状に形成され、その間に所定深さの凹部12cが形成されている。前記凸状部13には、その中央部付近で各凸状部を連結する様に凸状部13と直行する方向に補強凸部14が形成されている。
【0040】
各凹部12a,12b,12cは、容器開口部つばに対向した接着部11から容器内側面に沿って容器内部側に垂下するように凹んだ側部15を有する。この側部15は容器内側面に接する位置に形成されているため、側部15の外側と容器の内側面とが嵌合し、蓋材の固定機能を有するようになる。また、前記接着部11と凹部12a,12b,12cとで立体構造が形成され、蓋材に剛性を持たせることができ、曲げ、変形などの外力に対しても強くなっている。
【0041】
複数の凸状部13と凹部12cとで構成される凹凸構造は、蓋材の強度や、剛性を高める機能の他、蓋材の開度を調整し、開口位置を決める機能を有する。このため凹凸構造は、好ましくは帯状ないし畝状の凹凸が蓋の開閉の際の折りしろと平行に形成されている。また、外力により蓋材を開く際には復元方向に付勢して反力を与え、外力を失ったときに自動的に復帰して再封するための反力および弾性を生じる機能を有する。また、補強凸部14は、このような開閉の際に生じる変形に対抗する強度を与え、蓋材1全体の強度を向上させる機能を有する。従って、蓋材の開閉の際に必要な力や開度、変形の程度などは、前記凹凸構造や補強凸部14の形状、大きさを調整することで、容易に調節することができる。なお、凹部12cは図3に示されるように、他の凹部12a,12bより深さが浅くなっている、これは、この凹部12cが凸状部13の間に位置し、主として蓋開閉の調整機能を担っているからである。
【0042】
蓋材1の接着部11である縁部は、容器2の外径に沿って形成されているが、蓋材1の開口部の前部では接着部11から面方向に延伸するように張り出した指掛け部16が形成されている。この指掛け部16は、図示例では2カ所に突出するように設けられ、その形状は容器開口部の円を内接する正方形の一部に近似される。つまり、正方形の角部が前記指掛け部16に相当する。なお、角の端部は図示例のように丸められている。この指掛け部16には、滑り止め、指掛け性の向上、強度の向上等の目的で、凹部17が複数(図示例では2個)形成されている。さらに補強のための凹部もしくは凸部を形成してもよい。このように、2カ所に突出した指掛け部16を形成することで、左右何れの手で持った場合でも、いずれかの指で開閉操作することができ、容易に片手で使用することができる。
【0043】
上記のような蓋材と組み合わせる食品包装用容器の好ましい例を図4、5に示す。図4は食品包装用容器の具体例を示す側面図、図5は図4の平面図である。図4,5において、食品包装容器2は、有底の円筒形状をなし、その側胴部24は底部22から開口部25に向けて拡径している。開口部25には、側部24の上端部にフランジ状のつば21が形成されている。このつば21には、上記蓋材1の接着部11が固着される。
【0044】
容器底部22は、側部24の下端から連続して形成してもよいが、この例では側部24の下端より僅かに上方に位置するように形成され、この底部22の形成位置から下方に延在する側部24により、いわゆる糸じり23が形成されている。また、側胴部24内面下部であって、前記底部形成位置より上方には僅かに盛り上がった肉厚部24aが形成されている。このため、図示例のように、容器同士を重ねたときには、前記糸じり23の下端がこの肉厚部24aにより係止して、重ねた外部容器の内周面と、内部容器の内周面とが噛み合って、外し難くならないようになっている。必要により側胴部24には、ドライオフセット印刷、インモールドラベリング、シュリンクフィルムなどを用いて模様や色彩が付与される。
【0045】
食品封入時には、容器2に蓋材1を装着し、容器のつば21上面に蓋材1の接着部11を接着または融着して固定する。使用に際しては、前記指掛け部16等をつまんで引き上げ、接着または融着されている接着部の一部を剥離する。図示例では、丁度凹凸構造13,12cと、後部凹部12bの境界に位置する凸状部13迄引き剥がすようにする。なお、この場合所定の領域まで引き剥がしやすくするための公知の手法などを用いてもよい。そして、必要に応じて前記指掛け部16を操作して、蓋材の前部を開閉して内部の食材を取り出せばよい。本発明の蓋材は、特に片手でも開閉することができるため、非常に使いやすく、調理や食事等での使用時における作業性も向上する。
【実施例2】
【0046】
次に、本発明の第2の実施例について説明する。図6は、本発明の第2の実施例を示す蓋材と容器の外観斜視図である。この例では、蓋材1は、凹部12cと凸状部との凹凸構造を持たず、単に大きな凸部13aを有する。この凸部13aは、前記折りしろ付近に形成され、実質的にこの凸部13aの上部が折りしろとして機能する。前部凹部から凸部13aへはなだらかな傾斜を描いて浅くなるように連続しており、凸部13aから後部12bへは、ある程度急峻な傾斜であるが上記第1の実施例と同程度の傾斜により接続されるように形成されている。その他の構成は上記実施例1と同様であり、同一構成要素には同一符号を附して説明を省略する。
【実施例3】
【0047】
次に、本発明の第3の実施例について説明する。図7は、本発明の第3の実施例を示す蓋材の外観斜視図である。この例では、蓋材1は、凹部と凸状部との凹凸構造として、丁度蓋材中央部に形成された溝状の凹部12dとその両脇に形成されている2つの凸状部13bを有する。この溝状の凹部12dは、実質的に折りしろとして機能する。
【0048】
また、接着部11の外縁には、全周にわたり前期つば端部に沿って折り曲げるように垂下するスカート状の折り返し部3が形成されている。この折り返し部により容器との嵌合がより強固に行われ、接着、融着をすることなく、容器に取り付けることもできる。さらに、折り返し部3の下端は再び外側に折り返され、僅かに水平方向に外側に突き出た縁部31を形成している。この縁部31は、無くてもよいが、成形の誤差を吸収したり、折り返し部3下端の強度を確保する上では有用である。さらに、前記凹部12に対応する折り返し部3の下側は、なだらかな谷状に折り返し部が切り取られたような湾曲部18が形成され、前記凹部12dと相俟って、蓋材の開閉動作を容易にしている。その他の構成は上記実施例1と同様であり、同一構成要素には同一符号を附して説明を省略する。
【実施例4】
【0049】
次に、本発明の第4の実施例について説明する。図8〜11は、本発明の第4の実施例を示した図であり、図8は食品包装用蓋材と容器の外観斜視図、図9は蓋材の平面図、図10は蓋材が閉じた状態を示す図9のA−A’断面矢視図、図11は蓋材が開いた状態を示す図9のA−A’断面矢視図である。
【0050】
この例では、蓋材1の中央から前部の開口部側に凹部12eと凸状部13cにより形成された凹凸構造12e,13cを有する。各凸状部13cは、上記各実施例同様、折りしろの線に平行になるように形成され、頂点部分は細い帯状に形成されている。凸状部13c上面から凹部12e底面へは、急峻に落ち込むような鉛直に近い角度の側面により連結されている。蓋材の縁部11は、容器つば21の外縁と略同等の大きさであり、実施例3のような折り返し部は形成されていない。凸状部13cの上面と、接着部11とは略同一平面位置に形成され、各凹部12b,12eは上記各実施例同様に容器内部方向に凹んでいる。
【0051】
さらに、蓋材1前部の前端付近には舌状の指掛け部16aが形成されている。この指掛け部16aにはつば縁部から僅かに外側の位置に突起16bが形成されている。この突起16bは指掛け部16aの下方に突き出て、その側部がつば側縁に接するように形成されている。また、突起16b先端がつば下部側に張り出し、いわゆるフック状になっている。従って、突起16bのフックをつば11下部に引っかけることにより、封口を確実にすることができる。
【0052】
使用に際しては、図10に示すように、接着部11が固着された状態、あるいは蓋材1が閉じた状態では凹部12b、12e底部と、接着部11の属する2つの平面内に全ての蓋材構成要素が位置し、見かけ上前記2つの平面の厚みを持った蓋として機能する。次に、開封して、指掛け部16aを引っ張り、蓋材1前部を開くと、前記凸状部13cと凹部12eとの凹凸構造が、丁度蛇腹のように働き、蓋材1前部が緩やかな曲線を描くようにして開く。そして、指を離すと前記凹凸構造の復元力により、蓋材1は図10の状態に戻ろうとして、自然に元の状態に復帰する。このとき、前記突起16bの形状を工夫しておけば、わざわざ特別な力を加えなくても突起16bのフックはつば11の下端に引っかかりって係合し、蓋材はワンアクションにより固定され、再封止することができる。自然にフックが固定できない場合でも、突起のフックが係合する力を加えれば容易に固定される。
【0053】
以上の各実施例では、特定の凸状部と凹部、特定形状の蓋材などを例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、上記で説明した発明の範囲内であれば種々の変形、応用が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の蓋材は、各種容器の蓋材として用いることができ、その用途は特に限定されるものではないが、例えば、インスタントラーメン等の即席麺類、スナック菓子、チョコレート菓子等の菓子類、スライスハム等の畜肉加工品、塩昆布、ふりかけ等の乾物類、ウェットティシュ、汗取り紙、芳香剤、使い捨ておしめ等のように数個単位で包装した容器の蓋材として用いたり、その都度開封して使用する化粧品や生理用品、シップ薬、救急絆創膏、のど飴等の医薬品を包装した容器の蓋材として用いたりすることができる。特に、開封後に比較的長期間内容物が残存し、使用に際して少量ずつ取り出すようなものを収納するための包装体として好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0055】
1 蓋材
2 食品包装用容器
3 折り返し部
10 容器
11 接着部
12 凹部
12a,12b,12c,12d 凹部
13 凸状部
13a,13b 凸状部
14 補強凸部
15 凹部側面
16 指掛け部
16b 突起
21 つば
22 底部
23 糸じり
24 側胴部
25 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品保存用容器開口部の外周縁部に固着するための接着部と、
前記接着部の接着面より食品保存用容器内部方向に凹んだ凹部を少なくとも一部に有し、
少なくとも開口領域において前記接着部と凹部とで立体形状が形成され、
前記凹部には1つまたは2つ以上の凸状部を有し凹凸構造を形成している食品包装用蓋材。
【請求項2】
前記凸状部がなだらかな山形であり波状の凹凸構造を形成している請求項1の食品包装用蓋材。
【請求項3】
前記凸状部に対して直行する方向に、前記凸状部同士を連結するように形成された凸部により補強凸部が形成されている請求項1または2の食品包装用蓋材。
【請求項4】
蓋材中央部付近に形成された凹部とその両脇に形成された凸状部を有し、前記凹部が開口の際の折りしろとして機能する請求項1の食品包装用蓋材
【請求項5】
前記接着部の縁部から下方に垂下した折り返し部を有する請求項1〜4のいずれかの食品包装用蓋材
【請求項6】
前記接着部の縁部から水平方向に張り出した指掛け部を有する請求項1〜5のいずれかの食品包装用蓋材
【請求項7】
前記指掛け部には、つばと係合する突起を有する請求項6の食品包装用蓋材
【請求項8】
前記接着部が容器開口部のつばに接着または融着される請求項1〜7のいずれかの食品包装用蓋材
【請求項9】
少なくとも熱融着が可能な材料を有するシート状の材料を成形して形成されている請求項1〜8のいずれかの食品包装用蓋材
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかの蓋材を有する食品包装用容器

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−126572(P2011−126572A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−287138(P2009−287138)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【出願人】(000157887)KISCO株式会社 (30)
【Fターム(参考)】