説明

食品及びその製造方法

【課題】冷凍野菜おろしを利用した口あたりがソフトな新食感の食品およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】冷凍耐性を付加させた冷凍野菜おろしを主原料とし、動物性タンパク質及び植物性タンパク質からなる群から選択される少なくとも一種と、デンプン、糖類、ゲル化剤、香料・風味補助材を混合することで得られる食品である。冷凍野菜おろしが、野菜を、糖類、乳酸カルシウム、食塩およびデキストリンを混合した溶液に浸漬し、高電圧電場ブライン冷凍処理して得た冷凍野菜をすりおろしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍耐性を付加させた冷凍野菜おろしを主原料とし、動物性タンパク質及び植物性タンパク質からなる群から選択される少なくとも一種、デンプン、糖類、香料・風味補助材を混合することで得られる食品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の冷凍野菜の利用方法は、おでん、ふろふき大根、ぶり大根、イカ大根、肉じゃが、筑前煮等の煮物が中心となっており、利用用途が限られていた。
【0003】
冷凍野菜を利用した技術として、特開2002−34445号公報には、冷凍した大根おろしについて開示されている。(特許文献1)
しかし、この特許文献1では、冷凍野菜が薬味として利用されているに過ぎない。
【0004】
野菜おろしを利用した食品として、特開2003−334002号公報には、大根おろしデザートについて開示されている。(特許文献2)
しかし、この特許文献2では、生の大根を利用したものとなっている。
【0005】
特開平11−32732号公報には、大根おろしと、魚肉すり身とを混合して得られる成形物を油で揚げたさつま揚げが開示されている。(特許文献3)
しかし、この特許文献3に開示された食品は、食感および風味が不十分であり、改良の余地があった。
【特許文献1】特開2002−34445号公報
【特許文献2】特開2003−334002号公報
【特許文献3】特開平11−32732号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記の点に着目してなされたものであり、冷凍野菜おろしを利用した新食感の食品およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、冷凍耐性を付加させた野菜おろしは、通常の野菜おろし、また冷凍耐性を付加させない冷凍野菜おろしと比較した場合、口当たりがソフトになり、新規食品およびその製造に適することを発見した。
【0008】
すなわち、本発明の食品は、冷凍耐性を付加させた冷凍野菜おろしを主原料とし、動物性タンパク質及び植物性タンパク質からなる群から選択される少なくとも一種と、デンプン、糖類、ゲル化剤、香料・風味補助材を混合することで得られる食品であって、該冷凍野菜おろしが、野菜を、糖類、乳酸カルシウム、食塩およびデキストリンを混合した溶液に浸漬し、高電圧電場ブライン冷凍処理して得た冷凍野菜をすりおろしたものであり、そのことにより上記目的が達成される。
【0009】
一つの実施形態では、前記冷凍野菜おろし30〜50重量%、動物性タンパク質及び植物性タンパク質からなる群から選択される少なくとも一種20〜40重量%、デンプン1〜5重量%、糖類5〜20重量%、ゲル化剤1〜2重量%、香料・風味補助材0.1〜1重量%を含有する。
【0010】
一つの実施形態では、前記冷凍野菜おろしが、野菜を1〜2cm角に裁断し、糖類、乳酸カルシウム、食塩、およびデキストリンを混合した溶液に、12時間浸漬し、高電圧電場ブライン冷凍処理した冷凍野菜をすりおろしたものである。
【0011】
一つの実施形態では、冷凍野菜おろしが、カッターにより切断して粒径が0.5〜2mmとなるように調製されている。
【0012】
一つの実施形態では、前記高電圧電場プライン冷凍処理が、0℃から−5℃の温度域を15分以内に通過し、−20℃から−50℃の温度範囲に至るまで冷凍する工程、を包含する。
【0013】
一つの実施形態では、前記ゲル化剤が、寒天、カラギーナン、ペクチン、ゼラチン、マンナン、キサンタンガム、グアーガム、ジェランガムおよびローストビーンガムからなる群から選択される少なくとも一種である。
【0014】
一つの実施形態では、前記野菜が、ダイコン、ニンジン、ジャガイモ、サツマイモ、サトイモ、カブおよびレンコンからなる群から選択される根菜類、キャベツ、ハクサイ、レタス、ホウレンソウ、ネギ、タカナ、コマツナ、タマネギ、ニンニク、ラッキョウ、アスパラガス、タケノコ、ブロッコリー、マツタケ、シイタケ、エノキタケおよびマッシュルームからなる群から選択される葉菜類、キュウリ、ナス、ピーマン、サヤエンドウ、カボチャ、トマト、ソラマメ、エダマメ、オクラ、トウガラシ、スイカおよびメロンからなる群から選択される果菜類のうち少なくとも一種である。
【0015】
また、本発明の食品の製造方法は、野菜を、糖類、乳酸カルシウム、食塩およびデキストリンを混合した溶液に浸漬する工程、該野菜を高電圧電場ブライン冷凍処理して冷凍野菜を得る工程、該冷凍野菜をすりおろして冷凍野菜おろしを調製する工程、該冷凍野菜おろしを主原料として、動物性タンパク質及び植物性タンパク質からなる群から選択される少なくとも一種、デンプン、糖類、ゲル化剤、香料・風味補助材と混合する工程、を包含し、そのことにより上記目的が達成される。
【0016】
一つの実施形態では、前記高電圧電場プライン冷凍処理が、0℃から−5℃の温度域を15分以内に通過し、−20℃から−50℃の温度範囲に至るまで冷凍する工程、を包含する。
【発明の効果】
【0017】
冷凍野菜おろしを主原料とし、動物性タンパク質及び/又は植物性タンパク質、デンプン、糖類、ゲル化剤、香料・風味補助材を混合することで得られる食品であって、該冷凍野菜おろしが、野菜を、糖類、乳酸カルシウム、食塩およびデキストリンを混合した溶液に浸漬し、高電圧電場ブライン冷凍処理して得た冷凍野菜をすりおろしたものであるので、食感および風味に優れた食品が得られ、この食品はソフトな食感を有するため高齢者用食品として好適である。
【0018】
特に、高電圧電場を与えて野菜をブライン冷凍することにより、冷凍の際に低下する野菜の温度が最大氷結晶生成帯である0〜−5℃をより速く通過させることができる。このため、野菜に含まれる水分によって形成された氷結晶の成長を抑制し、これにより組織破壊を防止し、解凍したとき、野菜の冷凍前の状態を保つことができる。この冷凍変性を起こさない野菜本来の食感を有する冷凍野菜のおろしを多量に使用するので、食感および風味に優れた食品が得られる。
【0019】
このように冷凍野菜おろしを使用することにより、冷凍野菜の利用用途の拡大と新食感の食品を提供することが可能となった。また、冷凍耐性野菜を使用することにより、食料自給率の向上に貢献すると共に新食感の新規食品開発が期待される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に本発明の実施の形態を具体的に説明する。
【0021】
本発明の食品は、冷凍耐性を付加させた冷凍野菜おろしを主原料とし、これに動物性タンパク質及び植物性タンパク質からなる群から選択される少なくとも一種と、デンプン、糖類、ゲル化剤、香料・風味補助材を混合することで得られる食品である。
【0022】
冷凍耐性を付加させた冷凍野菜おろしとは、野菜を、糖類、乳酸カルシウム、食塩およびデキストリンを混合した溶液に浸漬し、高電圧電場ブライン冷凍処理して得た冷凍野菜をすりおろしたものである。
【0023】
野菜としては、以下に示す少なくとも一種があげられる。
【0024】
ダイコン、ニンジン、ジャガイモ、サツマイモ、サトイモ、カブおよびレンコンからなる群から選択される根菜類;キャベツ、ハクサイ、レタス、ホウレンソウ、ネギ、タカナ、コマツナ、タマネギ、ニンニク、ラッキョウ、アスパラガス、タケノコ、ブロッコリー、マツタケ、シイタケ、エノキタケおよびマッシュルームからなる群から選択される葉菜類;キュウリ、ナス、ピーマン、サヤエンドウ、カボチャ、トマト、ソラマメ、エダマメ、オクラ、トウガラシ、スイカおよびメロンからなる群から選択される果菜類。
【0025】
これらの野菜を1〜2cm角に裁断したものが好ましく使用される。
【0026】
混合溶液としては、糖類5〜10重量%、乳酸カルシウム0.5〜1重量%、食塩1〜3重量%、デキストリン3〜5重量%を混合し調製することができる。
【0027】
この混合溶液に、野菜を10〜18時間浸漬するのが好ましい。特に好ましい浸漬時間は、12〜16時間である。浸漬時間が短すぎると、浸透が不十分であり、浸漬時間が長すぎても効果が上がらない。浸漬時の温度は、通常5〜15℃である。
【0028】
上記混合溶液に含まれる糖類としては、砂糖、トレハオース、オリゴ糖、糖アルコール、水飴及び還元水飴の少なくとも一種があげられる。
【0029】
なお、本発明において、高電圧電場ブライン処理とは、電極の1本をブライン内に挿入したブライン冷凍装置及び高電圧電場発生手段を用いて、ブラインに高電圧電場を与えながら野菜を冷凍する方法をいう。
【0030】
ブラインの温度は、−20℃〜−50℃の範囲で、高電圧電場発生手段の電位は5〜50kVを発生させるものが好ましい。このとき用いる冷凍装置の概略は以下のようなものである。
【0031】
すなわち、ブライン冷凍装置のブライン内に高電圧電場発生手段の2本ある電極の一方を挿入する。電極の他方は、ブライン冷凍装置のブラインに挿入せず、絶縁処理を行い、2本の電極間に電流が流れないようにする。これらの電極は、特公昭38−6106号公報に示されているような高周波電位発生装置の2次側に接続されている。
【0032】
ブラインは冷凍装置に接続した冷凍機を用いて冷却し、駆動モータを使用した循環装置を用いてブラインを循環させることにより、ブラインの入っている槽内の温度を一定に保持する。
【0033】
冷却装置、高電圧電場発生手段、及び循環装置の駆動モータはそれらの設置に際し、床面と各装置との間は絶縁硝子を支持体として用いる。
【0034】
ブラインに用いる不凍剤は、目的の温度で凍結しないものであれば、特に限定はなく、例えば、塩化カルシウム、エチレングリコール、プロピレングリコール、エタノール等、及びこれらの混合物又はこれらと水との混合物があげられる。例えば、水とエタノールの混合液があげられる。
【0035】
野菜を高電圧電場プライン冷凍処理する条件は、0℃から−5℃の温度域を15分以内に通過し、−20℃から−50℃の温度範囲に至るまで冷凍するのが好ましい。
【0036】
高電圧電場を与えて野菜を冷凍することにより、冷凍の際に低下する野菜の温度が、最大氷結晶生成帯である0〜−5℃をより速く通過させることができる。このため、野菜に含まれる水分によって形成された氷結晶の成長を抑制し、これにより組織破壊を防止し、解凍したとき、野菜の冷凍前の状態を保つことができる。
【0037】
このように高電圧電場ブライン冷凍処理して冷凍野菜が得られる。
【0038】
得られた冷凍野菜を、次にカッターによりすりおろして冷凍野菜おろしが得られる。
【0039】
カッターとしては、フードカッター、ステファンカッター、ボールカッター、ミクロカッター等を用いることができる。
【0040】
冷凍野菜おろしの粒径は、0.5〜2mmが好ましい。さらに好ましくは、0.7〜1.5mmである。冷凍野菜おろしの粒径が2mmより大きすぎるとソフト感がなくなり、0.5mm未満であると野菜の存在感が弱くなる。
【0041】
本発明で使用される動物性タンパク質としては、牛乳、羊乳等の乳類、スケソウ、タラ、ホッケ、グチ、エソ、イワシ、ホタテ等の魚介類のすり身又は落し身、豚、牛、鳥、ウサギ等の畜肉、ゼラチン、コラーゲン等の分離タンパク質が好適に使用でき、植物性タンパク質としては、豆乳等、大豆、小麦、大豆分離タンパク質、小麦グルテンが好適に使用できる。
【0042】
デンプンとしては、馬鈴薯、小麦、タピオカ、とうもろこし、米、緑豆が好適に使用できる。
【0043】
糖類としては、砂糖、トレハオース、オリゴ糖、糖アルコール、水飴、還元水飴が好適に使用できる。
【0044】
ゲル化剤としては、寒天、カラギーナン、ペクチン、ゼラチン、マンナン、キサンタンガム、グアーガム、ジェランガムおよびローストビーンガムが好適に使用できる。
【0045】
香料・風味補助材としては、レモン汁、カボス、ゆず、ライム、グレープフルーツ、ダイダイ等の柑橘類、ブランディー、ワイン、リキュール等の香味酒、その他の香味料が好適に使用できる。また、これらの原料は混合して使用することも可能である。
【0046】
以下に、本発明の食品の製造方法を説明する。
【0047】
上記野菜を必要に応じて皮剥ぎ、殺菌、洗浄した後、切断する。
【0048】
次に、野菜を、糖類、乳酸カルシウム、食塩およびデキストリンを混合した溶液に浸漬する。浸漬時間は12〜16時間、浸漬時の温度は5〜15℃が好ましい。
【0049】
次に、野菜をブライン冷凍するために真空袋に脱気包装する。
【0050】
野菜を真空袋に包装した状態で高電圧電場ブライン冷凍処理して冷凍野菜を得る。
【0051】
得られた冷凍野菜を解凍し、上記したように、すりおろして冷凍野菜おろしを調製する。
【0052】
この冷凍野菜おろしを主原料として、動物性タンパク質及び/又は植物性タンパク質、デンプン、糖類、ゲル化剤、香料・風味補助材と混合する。
【0053】
この混合物を加熱、撹拌して本発明の食品が得られ、この食品をトレー充填し、トップシールし、加熱殺菌し、冷却又は凍結する。あるいは、混合物を適宜形状に成形した後、加熱、冷凍などによって本発明の食品が得られる。
【0054】
本発明の食品には、野菜おろし入りの(豆腐、豆乳飲料、うどん、ラーメン、そば、パスタ、パン、ヨーグルト、ババロア、板蒲鉾、揚げ蒲鉾、ちくわ、つみれ、カニ蒲鉾、ゼリー、ジャム、ところてん、こんにゃく、可食性フィルム等があげられる。
【実施例】
【0055】
次に、本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明する。なお、「%」は全て「重量%」である。
(実施例1)
大根を皮剥ぎ、殺菌、洗浄した後、約2cm角に切断した。
【0056】
この角切りにした大根を、糖類8重量%、乳酸カルシウム1重量%、食塩2重量%およびデキストリン3重量%を混合した溶液(温度10℃)に16時間浸漬した。
【0057】
大根を溶液とともに包装して密閉し、90℃で10分間加熱した。放冷後、大根を高電圧電場ブライン冷凍処理した。
【0058】
高電圧電場ブライン冷凍処理の条件は次のとおりであった。
【0059】
−40℃に設定された高電圧電場アルコール冷凍機(商品名:クイックフリーザー RQF−50型、アルファーシステム社製)で20分間冷凍し(0℃〜−5℃の経過時間5分)、−35℃に冷凍した。
【0060】
この冷凍大根を解凍し、フードカッターを用いすりおろして粒径約1.0mmの冷凍大根おろしを得た。
【0061】
次に、得られた冷凍大根おろし40%、魚肉40%、大豆タンパク5%、デンプン5%、トレハロース7%、マンナン1%、食塩1%、魚エキス0.3%、調味料0.7%を混合し、ボール状に成形した後、90℃、20分間蒸気加熱し、その後冷却した。
【0062】
大根つみれを解凍し試食したところ、ソフトな食感があり、また風味にも優れていた。
【0063】
なお、食感、風味の判定は、生の大根おろしを使用した大根つみれを対照として、10名のパネルで、優:食感が対照に比べ優れている、良:食感が対照に比べ若干優れている、劣る:食感が対照に比べ劣る、で実施、最も多い評価で示した。その結果を表1に示した。
【0064】
【表1】

(比較例1)
大根を皮剥ぎ、殺菌、洗浄した後、約2cm角に切断した。
【0065】
この角切りにした大根を、フードカッターを用いすりおろして粒径約1.0mmの大根おろしを得た。
【0066】
この生の大根おろしを用いたこと以外は、実施例1と同様にして大根つみれを得、実施例1と同様に官能試験を実施した。その結果を表1に示した。
(比較例2)
大根を皮剥ぎ、殺菌、洗浄した後、約2cm角に切断した。
【0067】
この角切りにした大根を、糖類8重量%、乳酸カルシウム1重量%、食塩2重量%およびデキストリン3重量%を混合した溶液(温度10℃)に16時間浸漬した。
【0068】
大根を溶液とともに包装して密閉し、90℃で10分間加熱した。放冷後、大根を−20℃の冷凍庫に24時間冷凍処理した。
【0069】
この冷凍大根を解凍し、フードカッターを用いすりおろして粒径約1.0mmの大根おろしを得た。
【0070】
この冷凍大根おろしを用いたこと以外は、実施例1と同様にして大根つみれを得、実施例1と同様に官能試験を実施した。その結果を表1に示した。
【0071】
表1に示すように、本発明の大根おろしを用いた大根つみれは、食感、風味に優れていた。
【0072】
生の大根おろしを用いた大根つみれは、風味は良かったが、食感が劣っていた。
【0073】
冷凍大根おろしを用いた大根つみれは、食感の存在感が無く劣っていた。
(実施例2)
大根を皮剥ぎ、殺菌、洗浄した後、約2cm角に切断した。
【0074】
この角切りにした大根を、糖類8重量%、乳酸カルシウム1重量%、食塩2重量%およびデキストリン3重量%を混合した溶液(温度10℃)に16時間浸漬した。
【0075】
大根を溶液とともに包装して密閉し、90℃で10分間加熱した。放冷後、大根を高電圧電場ブライン冷凍処理した。
【0076】
高電圧電場ブライン冷凍処理の条件は次のとおりであった。
【0077】
−40℃に設定された高電圧電場アルコール冷凍機(商品名:クイックフリーザー RQF−50型、アルファーシステム社製)で20分間冷凍し(0℃〜ー5℃の経過時間5分)、−35℃に冷凍した。
【0078】
この冷凍大根を解凍し、フードカッターを用いすりおろして粒径約1.0mmの大根おろしを得た。
【0079】
次に、得られた大根おろし40%、牛乳19%、砂糖18%、生クリーム7%、タピオカデンプン1%、ゼラチン1.5%、水13.4%、レモン果汁0.1%を混合し、85℃に達温後、この大根ババロアをトレー充填し、トップシールし、その後冷却した。
【0080】
大根ババロアを解凍し試食したところ、ソフトな食感があり、また風味にも優れていた。
【0081】
なお、食感、風味の判定は、生の大根おろしを使用した大根ババロアを対照として、10名のパネルで、優:食感が対照に比べ優れている、良:食感が対照に比べ若干優れている、劣る:食感が対照に比べ劣る、で実施、最も多い評価で示した。その結果を表2に示した。
【0082】
【表2】

(比較例3)
大根を皮剥ぎ、殺菌、洗浄した後、約2cm角に切断した。
【0083】
この角切りにした大根を、フードカッターを用いすりおろして粒径約1.0mmの大根おろしを得た。
【0084】
この生の大根おろしを用いたこと以外は、実施例2と同様にして大根ババロアを得、実施例2と同様に官能試験を実施した。その結果を表2に示した。
(比較例4)
大根を皮剥ぎ、殺菌、洗浄した後、約2cm角に切断した。
【0085】
この角切りにした大根を、糖類8重量%、乳酸カルシウム1重量%、食塩2重量%およびデキストリン3重量%を混合した溶液(温度10℃)に16時間浸漬した。
【0086】
大根を溶液とともに包装して密閉し、90℃で10分間加熱した。放冷後、大根を−20℃の冷凍庫に24時間冷凍処理した。
【0087】
この冷凍大根を解凍し、フードカッターを用いすりおろして粒径約1.0mmの大根おろしを得た。
【0088】
この冷凍大根おろしを用いたこと以外は、実施例2と同様にして大根ババロアを得、実施例2と同様に官能試験を実施した。その結果を表2に示した。
【0089】
表2に示すように、本発明の大根おろしを用いた大根ババロアは、食感、風味に優れていた。
【0090】
生の大根おろしを用いた大根ババロアは、風味は良かったが、食感が劣っていた。
【0091】
冷凍大根おろしを用いた大根ババロアは、食感の存在感が無く劣っていた。
【0092】
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した特許出願は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷凍野菜おろしを主原料とし、動物性タンパク質及び植物性タンパク質からなる群から選択される少なくとも一種と、デンプン、糖類、ゲル化剤、香料・風味補助材を混合することで得られる食品であって、
該冷凍野菜おろしが、野菜を、糖類、乳酸カルシウム、食塩およびデキストリンを混合した溶液に浸漬し、高電圧電場ブライン冷凍処理して得た冷凍野菜をすりおろしたものである食品。
【請求項2】
前記冷凍野菜おろし30〜50重量%、動物性タンパク質及び植物性タンパク質からなる群から選択される少なくとも一種20〜40重量%、デンプン1〜5重量%、糖類5〜20重量%、ゲル化剤1〜2重量%、香料・風味補助材0.1〜1重量%を含有する請求項1に記載の食品。
【請求項3】
前記冷凍野菜おろしが、野菜を1〜2cm角に裁断し、糖類、乳酸カルシウム、食塩、およびデキストリンを混合した溶液に、10〜18時間浸漬し、高電圧電場ブライン冷凍処理した冷凍野菜をすりおろしたものである請求項1又は2に記載の食品。
【請求項4】
冷凍野菜おろしが、カッターにより切断して粒径が0.5〜2mmとなるように調製されている請求項1〜3のいずれかに記載の食品。
【請求項5】
前記高電圧電場プライン冷凍処理が、0℃から−5℃の温度域を15分以内に通過し、−20℃から−50℃の温度範囲に至るまで冷凍する工程、を包含する請求項1〜4のいずれかに記載の食品。
【請求項6】
前記ゲル化剤が、寒天、カラギーナン、ペクチン、ゼラチン、マンナン、キサンタンガム、グアーガム、ジェランガムおよびローストビーンガムからなる群から選択される少なくとも一種である請求項1〜5のいずれかに記載の食品。
【請求項7】
前記野菜が、ダイコン、ニンジン、ジャガイモ、サツマイモ、サトイモ、カブおよびレンコンからなる群から選択される根菜類、キャベツ、ハクサイ、レタス、ホウレンソウ、ネギ、タカナ、コマツナ、タマネギ、ニンニク、ラッキョウ、アスパラガス、タケノコ、ブロッコリー、マツタケ、シイタケ、エノキタケおよびマッシュルームからなる群から選択される葉菜類、キュウリ、ナス、ピーマン、サヤエンドウ、カボチャ、トマト、ソラマメ、エダマメ、オクラ、トウガラシ、スイカおよびメロンからなる群から選択される果菜類のうち少なくとも一種である請求項1〜6のいずれかに記載の食品。
【請求項8】
野菜を、糖類、乳酸カルシウム、食塩およびデキストリンを混合した溶液に浸漬する工程、
該野菜を高電圧電場ブライン冷凍処理して冷凍野菜を得る工程、
該冷凍野菜をすりおろして冷凍野菜おろしを調製する工程、
該冷凍野菜おろしを主原料として、動物性タンパク質及び植物性タンパク質からなる群から選択される少なくとも一種、デンプン、糖類、ゲル化剤、香料・風味補助材と混合する工程、を包含する食品の製造方法。
【請求項9】
前記高電圧電場プライン冷凍処理が、0℃から−5℃の温度域を15分以内に通過し、−20℃から−50℃の温度範囲に至るまで冷凍する工程、を包含する請求項8に記載の食品の製造方法。


【公開番号】特開2009−89694(P2009−89694A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−265949(P2007−265949)
【出願日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【出願人】(000132172)株式会社スギヨ (23)
【Fターム(参考)】