説明

食品用容器

【課題】内容物をこぼす虞がなく、さらに、内容物が液体、粉体等である場合に、内容物を容易に排出させることができ、また、内容物が生卵である場合に、卵黄と卵白の分離が容易に行うことができる食品用容器を提供すること。
【解決手段】上部開口周縁11が円形を成し、かつ一部に凹部14を形成するとともに、他の部分に、前記凹部14の側壁13に対して連続する段部16を形成してなる容器本体10と、円形を成し、前記容器本体10の開口に回転自在に嵌合し、前記段部16の上面に対向する部位に孔36を形成した蓋体30とによって構成し、前記蓋体30を前記容器本体10の上部開口周縁11に嵌着させた状態で、前記容器本体10の段部16上面で、前記蓋体30の孔36を閉塞させ、前記蓋体30を前記容器本体10に対して回転させて、前記蓋体30の孔36を前記容器本体10の段部16上面からずらし、前記蓋体30の孔36を開口させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品用容器に関するもので、特には、殻を割って収容した生卵等を収容し、かつ、食する時に、卵黄と卵白等の内容物を分離する作業や排出する作業を容易にした食品用容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
容器本体に内容物を収容し、容器本体の開口に蓋体を被せて、内容物の漏出を防いだ食品用容器はある。
これらの食品用容器において、特に、内容物が液体または粉体である場合には、それらを収容する食品用容器は、内容物のこぼれ防ぐため、また外部からの塵埃等の侵入を防ぐために、容器本体に蓋体を密封させた状態で装着させなければならない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のような構造の食品用容器の場合には、該食品用容器から内容物を取出す際には、蓋体を容器本体から離反させることが難しくなる虞がある。
例えば、飲食店において、予め殻を割って取出した生卵(以下、生卵という)を、食品用容器に入れた状態で保管しておき、客の注文に応じて、生卵を食品用容器に入れた状態で提供する場合に、保管する間、食品用容器内に塵埃等が侵入しないようにしなければならない。また、生卵を食品用容器から取出す場合には、蓋体を容器本体から取外す必要があるが、塵埃の侵入を確実に防ぐために蓋体を容器本体に密接させるように装着した場合には、蓋体を容器本体から取外すことが難しくなる虞がある。また、卵黄のみをご飯等に載せて食したりする場合があるが、このような場合には、卵黄と卵白の分離を行なう作業も煩雑である。さらに、生卵を食品用容器に入れた状態で、持ち帰る場合には、生卵がこぼれないようにしなければならない。
【0004】
本発明は、上述した背景技術が有する実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、食品用容器に入れた内容物を塵埃等の異物の侵入から守り、内容物をこぼす虞がなく、かつ、内容物が液体、粉体等である場合に、内容物を容易に排出させることができ、また、内容物が生卵である場合には、卵黄と卵白の分離が容易に行うことができる食品用容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記した目的を達成するため、請求項1の食品用容器は、上部開口周縁が円形を成し、かつ一部に凹部を形成するとともに、他の部分に、前記凹部の側壁に対して連続する段部を形成してなる容器本体と、円形を成し、前記容器本体の開口に回転自在に嵌合し、前記段部の上面に対向する部位に孔を形成した蓋体とによって構成し、前記蓋体を前記容器本体の上部開口周縁に嵌着させた状態で、前記容器本体の段部上面で、前記蓋体の孔を閉塞させ、前記蓋体を前記容器本体に対して回転させて、前記蓋体の孔を前記容器本体の段部上面からずらし、前記蓋体の孔を開口させるようにしたことを特徴とする。
【0006】
また、請求項2の食品用容器は、上記請求項1の発明において、上記容器本体の段部上面における上記蓋体の孔に対応する部位に、上記蓋体の孔を閉塞するための膨出部を形成したことを特徴とする。
【0007】
さらに、請求項3の食品用容器は、上記請求項1または2の発明において、上記容器本体の段部上面における少なくとも凹部側の上記蓋体の孔を囲繞する部位に、上記蓋体に当接するための凸条部を形成したことを特徴とする。
【0008】
また、請求項4の食品用容器は、上記請求項1〜3のいずれかの発明において、上記容器本体を熱可塑性樹脂発泡体によって形成し、前記蓋体を熱可塑性樹脂によって形成したことを特徴とする。
【0009】
さらに、請求項5の食品用容器は、上記請求項1〜4のいずれかの発明において、上記容器本体の凹部に殻を割って取出した生卵を収容し、上記蓋体の孔から卵白を排出させることにより、卵黄を前記凹部内に残すようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
上記した請求項1の本発明によれば、蓋体の孔が容器本体の段部によって閉塞されるので、塵埃が容器内に入り込むことなく、容器を倒した場合にも、内容物がこぼれる虞がない。また、内容物が液体或いは粉体である場合には、蓋体を容器本体から離反させることなく、蓋体を容器本体に対して適宜角度回転させて容器を傾ければ、蓋体の孔から内容物を容易に排出させることができ、また、内容物が生卵である場合には、卵黄と卵白の分離が可能となる。
【0011】
また、上記した請求項2の本発明によれば、容器本体の膨出部によって蓋体の孔がさらに確実に閉塞される。
【0012】
また、上記した請求項3の本発明によれば、容器本体の段部に形成した凸条部が蓋体の下面に当接することによって、蓋体の孔が容器本体の凹部から隔離されるので、単純な構造によって孔の閉塞を図ることができ、容器本体の型成形が容易になり、上記発明の閉塞構造を併せて適用すれば、孔の閉塞をより確実に行なうことができる。
【0013】
さらに、上記した請求項4の本発明によれば、容器本体が熱可塑性樹脂発泡体によって形成されているので、断熱性を有し、内容物が外部熱の影響を受け難く、また、弾力性を有するので、内容物が外力から保護される。また、容器本体と蓋体の嵌合性も向上する。
【0014】
また、上記した請求項5の本発明によれば、予め殻を割って取出した生卵を容器に収容していても、塵埃が容器内に入り込むことなく、容器を倒した場合にも、内部の生卵をこぼす虞がない。また、卵黄と卵白を分離するには、蓋体を容器本体に対して適宜角度回転させ、容器を傾ければ、蓋体の孔から卵白のみを流出させることができ、卵黄と卵白の分離が容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、上記した本発明に係る食品用容器を、図面を参照しながら詳細に説明する。
ここで、図1は、本発明に係る食品用容器の容器本体と蓋体を分解して示した斜視図、図2は、図1におけるA−A線に沿う部分の縦断面図、図3は、殻を割って取出した生卵を容器内に封入した状態を示した断面図、図4は、容器内の生卵の卵黄と卵白を分離するために蓋体を回転させて孔をずらした状態を示した断面図、図5は、卵黄と卵白を分離させるために容器を傾けた状態を示した断面図である。また、図6は、本発明に係る容器の他の実施の形態を示した斜視図、図7は、本発明に係る容器の変形例を示した断面図である。
【0016】
本発明に係る食品用容器1は、図1に示すように、容器本体10と、蓋体30とから構成されている。
【0017】
容器本体10は、上部開口周縁11が円形を成しており、上部開口周縁11の平面視における一部に、水平断面が円弧を成す弧状壁12と、水平断面が略直線を成す平面壁13とによって画成される凹部14が形成されている。この凹部14の底壁には、図2に示すように、内部に向けて突出する上げ底部15が形成されている。
【0018】
上記凹部14の平面壁13の上端には、該平面壁13に連続する段部16が形成されている。この段部16を形成する段壁17は、上部開口周縁11の平面視における他の部分を成しており、上部開口周縁11に倣った円弧と、上記凹部12の平面壁13の上縁によって画成される略三日月状に形成されている。
【0019】
そして、上部開口周縁11は、図2に示すように、下方に開口する円弧状に形成され、外周縁にフランジ18が半径方向外方に向けて僅かに突出形成されている。
また、段壁17には、図2に示すように、段壁17の外郭形状よりも小さい略相似形の溝19が形成され、該溝19の内部に、上方に向けて突出する膨出部20が形成されている。
【0020】
一方、蓋体30は、平面視で円形を成しており、周縁に下方に向けて開口する環状凹部31が形成され、この環状凹部31の外周縁に、フランジ32が半径方向外方に向けて僅かに突出形成されている。環状凹部31によって画成される円形部には、平坦を成す天井壁33が形成されている。そして、天井壁33における、上記容器本体10の溝19に対応する部位に、下方に突出する凸部34が形成され、該凸部34によって画成される平坦面35に、孔36が形成されている。
【0021】
上記容器本体10及び蓋体30は、いずれも熱可塑性樹脂シートを熱成形することにより形成することができる。その熱可塑性樹脂シートの基材樹脂としては、スチレンの単独重合体樹脂、スチレンと他のモノマーとから構成されたスチレン系共重合体樹脂、スチレンの単独重合体樹脂又は/及びスチレン系共重合体樹脂とスチレン−ブタジエンブロック共重合体との混合物、ゴム状重合体の存在下でスチレン系モノマーを重合することによって得られるゴム変性スチレン系樹脂(耐衝撃性ポリスチレン)、或いは上記したスチレン系の樹脂と他の樹脂又は/及びゴム状重合体との混合物等の、スチレン成分比率が50重量%以上であるポリスチレン系樹脂或いはポリスチレン系樹脂組成物、エチレンの単独重合体樹脂、エチレンと他のモノマーとから構成されたエチレン系共重合体樹脂、エチレンの単独重合体樹脂又は/及びエチレン系共重合体樹脂にスチレン系モノマー等のビニルモノマーを含浸させて重合してなるグラフト変性エチレン系樹脂、或いは上記エチレン系の樹脂と他の樹脂又は/及びゴム状重合体との混合物等の、エチレン成分比率が50重量%以上であるポリエチレン系樹脂或いはポリエチレン系樹脂組成物、プロピレンの単独重合体樹脂、プロピレンと他のモノマーとから構成されたプロピレン系共重合体樹脂、プロピレンの単独重合体樹脂又は/及びプロピレン系共重合体樹脂にスチレン系モノマー等のビニルモノマーを含浸させて重合してなるグラフト変性プロピレン系樹脂、或いは上記プロピレン系の樹脂と他の樹脂又は/及びゴム状重合体との混合物等の、プロピレン成分比率が50重量%以上であるポリプロピレン系樹脂或いはポリプロピレン系樹脂組成物、熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、或いは上記した樹脂の2以上の混合物等が例示される。
【0022】
特にその中でも、容器本体10としては、ポリスチレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂組成物、ポリプロピレン系樹脂或いはポリプロピレン系樹脂組成物等のポリスチレン系又は/及びポリオレフィ系の樹脂或いは組成物を基材樹脂とする熱可塑性樹脂発泡シートからなるものが断熱性、軽量性及び緩衝性の点で好ましく、その中でも、ポリスチレン系樹脂或いはポリスチレン系樹脂組成物を基材樹脂とする熱可塑性樹脂発泡シートからなるものが、安価である上に、耐熱性が高いことから最も好ましい。この熱可塑性樹脂発泡シートは、通常、厚み0.5〜5.0mm、見掛密度0.07〜0.7g/cm3であるが、特に、厚み0.7〜3.0mm、見掛密度0.1〜0.6g/cm3であると熱成形が容易であるため好ましい。
一方、蓋体30としては、上記した樹脂又は樹脂組成物を基材樹脂とする延伸ポリスチレン樹脂シート、ポリエチレンテレフタレート樹脂シート、透明ポリプロピレン樹脂シート等の透明性の高い、通常は非発泡の熱可塑性樹脂シートからなるものが好んで使用される。この熱可塑性樹脂シートは、通常、厚み0.05〜0.8mmであるが、特に、厚み0.1〜0.5mmであると熱成形が容易であるため好ましい。
【0023】
上記した容器本体10および蓋体30からなる本発明に係る食品用容器1は、図3に示すように、容器本体10の凹部14内に、生卵40を収容し、その後、蓋体30の環状凹部31を、蓋体30の凸部34が容器本体10の溝19に合致するように、容器本体10の上部開口周縁11に嵌合させることによって、蓋体30が容器本体10に装着されている。
【0024】
この状態では、容器本体10のフランジ18が蓋体30の環状凹部31の内面に圧接され、容器本体10と蓋体30との密閉が図られる。また、蓋体10の凸部34が容器本体10の溝19に密着し、さらに、容器本体10の膨出部20の上面が、蓋体30の平坦面35に当接し、蓋体30の孔36が閉塞される。したがって、凹部14内に収容された生卵40は、食品用容器1内に封入される。
【0025】
食品用容器1内の生卵40を、卵黄41と卵白42とに分離するには、蓋体30を容器本体10に対して適宜角度、例えば180度回転させて、図4に示すように、蓋体30の孔36を容器本体10の凹部14上までずらす。
そして、図5に示すように、食品用容器1を傾けると、蓋体30の孔36から卵白42のみが流出し、容器本体10の凹部14内に卵黄41が残る。
【0026】
なお、上記実施の形態では、蓋体30の凸部34を容器本体10の溝19に密着させ、さらに、容器本体10の膨出部20の上面を、蓋体30の平坦面35に当接させることによって、蓋体30の孔36を閉塞しているが、図6に示すように、容器本体10における段部16の凹部14との会合部又はその近傍に、両端部が上部開口周縁11の内面に連続する凸条部21を形成し、該凸条部21の上面を蓋体30の天井壁33の下面に当接させて、蓋体30の孔36を容器本体10の凹部14から隔離させることにより、孔36の閉塞を図ってもよい。なお、この構造に、上記実施の形態の閉塞構造を加えてもよいことは勿論である。
【0027】
また、上記実施の形態では、食品用容器1内に殻を割って取出した生卵40を収容した場合について開示したが、図7に示すように、殻のままの卵50をビニール袋(図示せず)に入れて収容するようにしてもよい。この場合、容器本体10における底部15の中央に、上方に開口する凹部22を形成し、その凹部22に殻のままの卵50を収容させて位置決めを図るようにすることが好ましい。なお、この場合には、蓋体30の天井壁33にも下方に開口する凹部を形成してもよい。
【0028】
なお、上記した実施の形態では、本発明に係る食品用容器に、収容物として卵を収容した場合について開示しているが、収容物は卵に限定されるものではなく、冷凍物品、乾燥物品等の収納、そして、それらの物品の解凍、復元にも利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る食品用容器の容器本体と蓋体を分解して示した斜視図である。
【図2】図1におけるA−A線に沿う部分の縦断面図である。
【図3】殻を割って取出した生卵を食品用容器内に封入した状態を示した断面図である。
【図4】食品用容器内の生卵の卵黄と卵白を分離するために蓋体を回転させて孔をずらした状態を示した断面図である。
【図5】卵黄と卵白を分離させるために食品用容器を傾けた状態を示した断面図である。
【図6】本発明に係る食品用容器の他の実施の形態を示した斜視図である。
【図7】本発明に係る食品用容器の変形例を示した断面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 食品用容器
10 容器本体
11 上部開口周縁
12 弧状側壁
13 平面側壁
14 凹部
15 底部
16 段部
17 段壁
18 フランジ
19 溝
20 膨出部
21 凸条部
22 凹部
30 蓋体
31 環状凹部
32 フランジ
33 天井壁
34 凸部
35 平坦面
36 孔


【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部開口周縁が円形を成し、かつ一部に凹部を形成するとともに、他の部分に、前記凹部の側壁に対して連続する段部を形成してなる容器本体と、円形を成し、前記容器本体の開口に回転自在に嵌合し、前記段部の上面に対向する部位に孔を形成した蓋体とによって構成し、前記蓋体を前記容器本体の上部開口周縁に嵌着させた状態で、前記容器本体の段部上面で、前記蓋体の孔を閉塞させ、前記蓋体を前記容器本体に対して回転させて、前記蓋体の孔を前記容器本体の段部上面からずらし、前記蓋体の孔を開口させるようにしたことを特徴とする食品用容器。
【請求項2】
前記容器本体の段部上面における前記蓋体の孔に対応する部位に、前記蓋体の孔を閉塞するための膨出部を形成したことを特徴とする、請求項1に記載の食品用容器。
【請求項3】
前記容器本体の段部上面における少なくとも凹部側の前記蓋体の孔を囲繞する部位に、前記蓋体に当接するための凸条部を形成したことを特徴とする、請求項1または2に記載の食品用容器。
【請求項4】
前記容器本体を熱可塑性樹脂発泡体によって形成し、前記蓋体を熱可塑性樹脂によって形成したことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の食品用容器。
【請求項5】
前記容器本体の凹部に殻を割って取出した生卵を収容し、前記蓋体の孔から卵白を排出させることにより、卵黄を前記凹部内に残すようにしたことを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の食品用容器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−296255(P2007−296255A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−128839(P2006−128839)
【出願日】平成18年5月8日(2006.5.8)
【出願人】(390021429)日本ザンパック株式会社 (3)
【出願人】(591186176)株式会社ゼンショー (16)
【Fターム(参考)】