説明

食品用日持向上剤

【課題】第1に、優れた静菌効果を有し、かつ食品の風味に悪影響を与えず、主に惣菜食品、中でも特に煮物に好適である食品用日持向上剤、並びに、前記食品用日持向上剤を利用した食品、及び食品の日持向上方法を提供すること。また、第2に、優れた静菌効果を有し、かつ食品の風味に悪影響を与えることのない、煮物用日持向上剤、並びに、前記煮物用日持向上剤を含有する食品、及び前記煮物用日持向上剤を利用した食品の日持向上方法を提供すること。
【解決手段】第1に、有機酸としてリンゴ酸及び乳酸を含有することを特徴とする食品用日持向上剤、並びに、前記食品用日持向上剤を利用した食品、及び食品の日持向上方法である。また、第2に、有機酸、有機酸塩、及びアミノ酸を含有することを特徴とする煮物類用日持向上剤、並びに、前記煮物類用日持向上剤を利用した食品、及び食品の日持ち向上方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、煮物類等の食品に用いられる日持向上剤とその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、食生活の多様化が進み、調理済食品や半調理済食品の需要が大きくなってきている。一般に、これらの食品は、食品工場で調理された後に、加工食品として、スーパーマーケットやコンビニエンスストア、小売店等の店内で陳列されて販売され、また、レストランや持ち帰り加工食品チェーン等の外食産業において、2次加工されたりして販売されている。これらの加工食品は、製造後直ちに食されるのではなく、製品出荷、陳列、持ち帰り等の流通過程を経て、一定時間後に初めて食されることが多いため、保存性に優れていることが求められ、従来より、この保存性を確保するための食品日持向上剤が研究されてきた。
【0003】
前記のような食品の日持向上を目的とした技術としては、例えば、ε−ポリリジン及びプロタミンの中から選ばれた1種以上、有機酸及び有機酸塩の中から選ばれた1種以上、及びカルシウム化合物を含有する食品保存剤(特許文献1参照);アミノ酸又はその塩、酢酸ナトリウム及び酸性メタリン酸ナトリウムを配合する静菌剤(特許文献2参照);リゾチーム、アミノ酸又はその塩、有機酸又はその塩及び酢酸塩を含有することを特徴とする食品日持向上剤(特許文献3参照);HLB値が13以上のショ糖脂肪酸エステル、リゾチーム、並びに、アミノ酸、有機酸、及び有機酸塩から選ばれる1種以上、を含むことを特徴とする食品用静菌剤(特許文献4参照);麹酸を0.001〜50%、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、フマル酸、コハク酸、乳酸及び酢酸から選ばれる少なくとも1種の有機酸又はその塩を0.001〜99.0%含有することを特徴とする日持向上剤(特許文献5参照);乳酸ナトリウムと酢酸ナトリウム及び/又はクエン酸ナトリウムを含有することを特徴とする食肉加工製品用品質改良組成物(特許文献6参照);グリシン、酢酸塩、有機酸又はその酸性塩及び脂肪酸の炭素数が8〜12のグリセリン低級脂肪酸エステルを有効成分として含有することを特徴とする、食品防腐剤(特許文献7参照);酢乃至酢酸と、アジピン酸、フマル酸、グルコン酸、グルコノデルタラクトン、クエン酸塩、酒石酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩からなる群より選ばれた1種又は2種以上の有機酸及び/又は有機酸塩とを混合してなる食品保存料(特許文献8参照);などが、これまでに提案されている。
しかしながら、これらの場合、添加した食品の日持向上効果と風味とを、同時に満足することができない場合があるなど、全ての食品において満足のいく効果が得られるものではなかった。
【0004】
また、米飯日持向上用製剤として、各1種以上の有機酸、有機酸塩、及びアミノ酸を含有するものが提案されている(特許文献9参照)。しかし、これは米飯を対象として、米飯の味や臭いに影響を与えないように配慮されたものであり、他の食品に応用した場合には、望ましい静菌効果が得られないなどという場合があった。
したがって、米飯以外の食品に関しても、優れた静菌効果を有し、かつ食品の風味に悪影響を与えない、優れた日持向上剤の開発が望まれているのが現状である。
【0005】
【特許文献1】特開2003−38146号公報
【特許文献2】特開2002−246号公報
【特許文献3】特開平8−196252号公報
【特許文献4】特開2005−27563号公報
【特許文献5】特開平5−23154号公報
【特許文献6】特開平11−133号公報
【特許文献7】特開昭57−206371号公報
【特許文献8】特開平9−23860号公報
【特許文献9】特開2004−208683号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、第1に、優れた静菌効果を有し、かつ食品の風味に悪影響を与えず、主に惣菜食品、中でも特に煮物類に好適である食品用日持向上剤、並びに、前記食品用日持向上剤を含有する食品、及び前記食品用日持向上剤を利用した食品の日持向上方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、第2に、優れた静菌効果を有し、かつ食品の風味に悪影響を与えることのない煮物類用日持向上剤、並びに、前記煮物類用日持向上剤を含有する食品、及び前記煮物類用日持向上剤を利用した食品の日持向上方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための手段は以下の通りである。即ち、
<1> 有機酸としてリンゴ酸及び乳酸を含有することを特徴とする食品用日持向上剤である。
<2> 更に、有機酸塩及びアミノ酸を含有する<1>に記載の食品用日持向上である。
<3> 有機酸塩が酢酸ナトリウム及び乳酸ナトリウムであり、アミノ酸がグリシンである<2>に記載の食品用日持向上剤である。
<4> リンゴ酸の含有量が2〜7質量%であり、乳酸の含有量が6〜11質量%であり、酢酸ナトリウムの含有量が20〜30質量%であり、乳酸ナトリウムの含有量が2〜8質量%であり、グリシンの含有量が3〜9質量%である<3>に記載の食品用日持向上剤である。
<5> 食品が惣菜食品である<1>から<4>のいずれかに記載の食品用日持向上剤である。
<6> 惣菜食品が煮物類である<5>に記載の食品用日持向上剤である。
【0008】
<7> 有機酸、有機酸塩、及びアミノ酸を含有することを特徴とする煮物類用日持向上剤である。
<8> 有機酸がリンゴ酸及び乳酸であり、有機酸塩が酢酸ナトリウム及び乳酸ナトリウムであり、アミノ酸がグリシンである<7>に記載の煮物類用日持向上剤である。
<9> リンゴ酸の含有量が2〜7質量%であり、乳酸の含有量が6〜11質量%であり、酢酸ナトリウムの含有量が20〜30質量%であり、乳酸ナトリウムの含有量が2〜8質量%であり、グリシンの含有量が3〜9質量%である<8>に記載の煮物類用日持向上剤である。
【0009】
<10> <1>から<6>に記載の食品用日持向上剤、及び<7>から<9>に記載の煮物類用日持向上剤の少なくともいずれかを含有することを特徴とする食品である。
<11> <1>から<6>に記載の食品用日持向上剤、及び<7>から<9>に記載の煮物類用日持向上剤の少なくともいずれかを食品に添加することを特徴とする食品の日持向上方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、第1に、前記従来における諸問題を解決し、優れた静菌効果を有し、かつ食品の風味に悪影響を与えず、主に惣菜食品、中でも特に煮物類に好適である食品用日持向上剤、並びに、前記食品用日持向上剤を含有する食品、及び前記食品用日持向上剤を利用した食品の日持向上方法を提供することができる。
また、本発明によれば、第2に、前記従来における諸問題を解決し、優れた静菌効果を有し、かつ食品の風味に悪影響を与えることのない煮物類用日持向上剤、並びに、前記煮物類用日持向上剤を含有する食品、及び前記煮物類用日持向上剤を利用した食品の日持向上方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、第1に、有機酸としてリンゴ酸及び乳酸を含有することを特徴とする食品用日持向上剤、並びに、前記食品用日持ち向上剤を含有する食品、及び前記食品用日持向上剤を利用した食品の日持向上方法に関する(以下、「第1の発明」と称することがある)。
また、本発明は、第2に、有機酸、有機酸塩、及びアミノ酸を含有することを特徴とする煮物類用日持向上剤、並びに、前記煮物類用日持向上剤を含有する食品、及び前記煮物類用日持向上剤を利用した食品の日持向上方法に関する(以下、「第2の発明」と称することがある)。
なお、前記第1の発明に係る食品用日持向上剤と前記第2の発明に係る煮物類用日持向上剤とは、好ましくは有機酸、有機酸塩、及びアミノ酸を含有し、かつ、食品の日持向上目的に使用される点で共通する。したがって、以下、前記第1の発明及び前記第2の発明について、併せて説明する。
【0012】
(日持向上剤)
前記第1の発明に係る食品用日持向上剤は、有機酸を含有し、好ましくは更に有機酸塩及びアミノ酸を含有し、必要に応じて更に、適宜選択されたその他の成分を含有する。
また、前記第2の発明に係る煮物類用日持向上剤は、有機酸、有機酸塩、及びアミノ酸を含有し、必要に応じて更に、適宜選択されたその他の成分を含有する。
なお、以下、前記第1の発明に係る食品用日持向上剤、及び前記第2の発明に係る煮物類用日持向上剤を総称して、単に「日持向上剤」と称することがある。
【0013】
<有機酸>
前記第1の発明において、前記有機酸は、例えば、リンゴ酸及び乳酸である。
また、前記第2の発明において、前記有機酸は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、酢酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸などが挙げられる。前記第2の発明において、前記有機酸は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、前記第2の発明において、前記有機酸としては、リンゴ酸と乳酸とを併用することが好ましい。
前記有機酸としてリンゴ酸と乳酸とを併用することにより、前記日持向上剤はより優れた静菌効果を発揮することができる。
【0014】
前記有機酸の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記日持向上剤中、8〜18質量%が好ましく、10〜15質量%がより好ましい。前記有機酸の含有量が、前記好ましい範囲内であると、優れた静菌効果が得られる点で、有利である。
【0015】
−リンゴ酸及び乳酸−
また、前記有機酸として、リンゴ酸及び乳酸を選択する場合、前記有機酸の含有量(リンゴ酸と乳酸との合計の含有量)は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記日持向上剤中、8〜18質量%が好ましく、10〜15質量%がより好ましい。前記有機酸の含有量が、前記好ましい範囲内であると、優れた静菌効果が得られる点で、有利である。
【0016】
前記リンゴ酸と前記乳酸の、各々単独での含有量についても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、それぞれ以下の範囲内にあることが好ましい。
前記リンゴ酸の含有量としては、前記日持向上剤中、2〜7質量%が好ましく、2.5〜5質量%がより好ましい。前記リンゴ酸の含有量が、前記好ましい範囲内であると、優れた静菌効果が得られる点で、有利である。
一方、前記乳酸の含有量としては、前記日持向上剤中、6〜11質量%が好ましく、7.5〜11質量%がより好ましい。前記乳酸の含有量が、前記好ましい範囲内であると、優れた静菌効果が得られる点で、有利である。
【0017】
また、前記リンゴ酸と前記乳酸との含有量比としても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、質量比で、リンゴ酸:乳酸=1:0.5〜1:4が好ましく、1:2〜1:3.5がより好ましい。前記リンゴ酸の含有量が、前記乳酸の含有量に対して、質量比で、前記好ましい範囲内であると、優れた静菌効果が得られる点で、有利である。
【0018】
<有機酸塩>
前記有機酸塩としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、酢酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩などが挙げられる。前記塩としても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩などが挙げられる。これらの中でも、ナトリウム塩が特に好ましい。
前記有機酸塩は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、前記有機酸塩としては、酢酸ナトリウムと乳酸ナトリウムとを併用することが、特に好ましい。
前記有機酸塩の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記日持向上剤中、20〜40質量%が好ましく、25〜35質量%がより好ましい。前記有機酸塩の含有量が、前記好ましい範囲内であると、静菌効果に優れ、かつ、低温時の保存性にも優れる点で、有利である。
【0019】
−酢酸ナトリウム及び乳酸ナトリウム−
また、前記有機酸塩として、酢酸ナトリウム及び乳酸ナトリウムを選択する場合、前記有機酸塩の含有量(酢酸ナトリウム及び乳酸ナトリウムの合計の含有量)は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記日持向上剤中、20〜40質量%が好ましく、25〜35質量%がより好ましい。前記有機酸塩の含有量が、前記好ましい範囲内であると、静菌効果に優れ、かつ、低温時の保存性にも優れる点で、有利である。
【0020】
また、前記酢酸ナトリウムと前記乳酸ナトリウムの、各々単独での含有量についても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、それぞれ以下の範囲内にあることが好ましい。
前記酢酸ナトリウムの含有量は、前記日持向上剤中、20〜30質量%が好ましく、24〜30質量%がより好ましい。前記酢酸ナトリウムの含有量が、前記好ましい範囲内であると、静菌効果に優れ、かつ、低温時の保存性にも優れる点で、有利である。
一方、前記乳酸ナトリウムの含有量は、前記日持ち向上剤中、2〜8質量%が好ましく、2.5〜7質量%がより好ましい。前記乳酸ナトリウムの含有量が、前記好ましい範囲内であると、静菌効果に優れる点で、有利である。
【0021】
<アミノ酸>
前記アミノ酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、グリシン、アラニン、ベタイン、及びこれらの塩などが挙げられる。前記塩としても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩などが挙げられる。これらの中でも、前記アミノ酸としては、グリシンが、特に好ましい。
また、前記アミノ酸は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記アミノ酸の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記日持向上剤中、3〜12質量%が好ましく、4.5〜7.5質量%がより好ましい。前記アミノ酸の含有量が、前記好ましい範囲内であると、静菌効果に優れる点で、有利である。
【0022】
−グリシン−
前記アミノ酸がグリシンである場合、前記グリシンの含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記日持向上剤中、3〜9質量%が好ましく、4.5〜7.5質量%がより好ましい。前記グリシンの含有量が、前記好ましい範囲内であると、静菌効果に優れる点で、有利である。
【0023】
<その他の成分>
前記その他の成分としては、特に制限はなく、本発明の効果を損なわない範囲内で、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水、通常使用され得る各種食品素材、調味料、食品添加物などが挙げられる。
【0024】
−水−
前記水としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、精製水、蒸留水、イオン交換水、超純水、RO水(逆浸透膜水)、水道水、などが挙げられる。
前記水の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記有機酸、有機酸塩、及びアミノ酸、並びに、前記水以外のその他の成分を、所望の含有量となるように含有させた、前記日持向上剤の残部を構成するような量で含有されることが好ましい。
【0025】
<製造方法>
前記日持向上剤の製造方法としては、特に制限は無く、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、通常使用されるミキサー、乳鉢、すり鉢等を用いて、前記有機酸(例えば、リンゴ酸及び乳酸)、前記有機酸塩(例えば、酢酸ナトリウム及び乳酸ナトリウム)、前記アミノ酸(例えば、グリシン)、並びに、必要に応じて適宜選択したその他の成分などを、前記したような所望の割合で混合することにより、製造することができる。
【0026】
<形状>
前記日持向上剤の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記した各成分の粉末混合物のままであってもよいし、また、薬学的に許容され得るキャリアー等と混合して製剤化し、粉末状、顆粒状、錠剤等の任意の剤形にしてもよい。また、前記日持向上剤は、液体状、ペースト状等であってもよい。これらの中でも、前記日持向上剤は、惣菜食品に適用され、中でも、煮物類に好適であることから、例えば、煮物類を調理する際に使用する調味液に添加し、混合することによって、容易に使用することができるという点で、液体状であることが特に好ましい。
前記液体状の日持向上剤の製造方法としても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記有機酸(例えば、リンゴ酸及び乳酸)、前記有機酸塩(例えば、酢酸ナトリウム及び乳酸ナトリウム)、前記アミノ酸(例えば、グリシン)、並びに、必要に応じて適宜選択したその他の成分などを、それぞれ前記したような所望の含有量となるような量で秤量し、これらを、例えば精製水と共にミキサーに添加し、十分に攪拌、混合することにより製造することができる。
【0027】
<適用対象>
以上のようにして得られる前記日持向上剤は、優れた静菌効果を有し、かつ食品の風味への悪影響がないことから、食品、中でも惣菜食品への使用に好適である。また、前記日持ち向上剤は、好ましくは液体状であるために、煮物を調理する際に使用する調味液に添加し、混合することにより、容易に使用することができるという点で、特に煮物類への使用に好適である。
なお、前記日持向上剤の形状は液体状であっても、その使用方法が調味液への添加、混合のみに制限されるものではなく、調理中及び調理後のいずれにおいても、任意の方法により使用することが可能である。
【0028】
(食品)
前記第1の発明に係る食品は、前記第1の発明に係る食品用日持向上剤を含有してなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の成分を含有してなる。
また、前記第2の発明に係る食品は、前記第2の発明に係る煮物類用日持向上剤を含有してなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の成分を含有してなる。
第1の発明に係る食品と第2の発明に係る食品とは、前記日持向上剤を含有する点で共通するため、以下、併せて説明をする。なお、前記第1の発明に係る食品と前記第2の発明に係る食品とを総称して、単に「食品」と称することがある。
【0029】
<食品の種類>
前記食品としては、前記日持向上剤が含有されている経口摂取可能な組成物であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、中でも、惣菜食品が好ましい。
前記惣菜食品としては、特に制限はなく、例えば肉、魚、野菜等から選ばれた任意の食材を用いて調理された食品の中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、煮物類、焼き物類、揚げ物類、蒸し物類、炒め物類などが挙げられる。
【0030】
前記煮物類としては、特に制限はなく、例えば肉、魚、野菜等から選ばれた任意の食材を使用し、主に調味液を用いて煮込むことにより調理された食品の中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、肉じゃがや、がんもどき、里芋、コンニャク、さつま揚げ、大根、人参、じゃがいも、椎茸等の煮物などが挙げられる。
前記焼き物類としては、特に制限はなく、例えば肉、魚、野菜等から選ばれた任意の食材を使用し、主に焼くことにより調理された食品の中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ハンバーグ、鶏の照り焼き、餃子、焼き鳥、玉子焼きなどが挙げられる。
前記揚げ物類としては、特に制限はなく、例えば肉、魚、野菜等から選ばれた任意の食材を使用し、主に揚げることにより調理された食品の中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、てんぷら、コロッケ、フライドチキン、メンチカツ、鶏唐揚げ、トンカツ、春巻きなどが挙げられる。
前記蒸し物類としては、特に制限はなく、例えば肉、魚、野菜等から選ばれた任意の食材を使用し、主に蒸すことにより調理された食品の中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シュウマイ、茶碗蒸し、肉まんなどが挙げられる。
前記炒め物類としては、特に制限はなく、例えば肉、魚、野菜等から選ばれた任意の食材を使用し、主に炒めることにより調理された食品の中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、八宝菜、野菜炒め、エビチリなどが挙げられる。
【0031】
これらの中でも、前記食品としては、調理の際に使用する調味液に、前記食品用日持向上剤を添加、混合することによって、前記日持向上剤を容易に含有させることができるという点で、煮物類が、特に好ましい。
【0032】
<食品の製造方法>
前記食品の製造方法としては、特に制限はなく、例えば、各種食品における公知の製造方法を用いて、適宜製造することができる。
【0033】
−食品への日持向上剤の添加(食品全体に対して添加する場合)−
前記日持向上剤の、前記食品への添加方法としても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記食品の調理中又は調理後に、溶解、混和、練りこみ、吹きつけ、ふりかけ、まぶす等して添加することができる。
前記日持向上剤の含有量は、食品の種類や、食品の提供条件(温度、湿度、保存期間等)などに応じて、適宜選択することができ、一概には決定されないが、例えば、前記食品の総質量に対して、0.1〜5.0質量%が好ましく、0.3〜3.0質量%がより好ましく、0.5〜2.0質量%が特に好ましい。前記日持向上剤の含有量が、前記食品の総質量に対して、前記好ましい範囲内であると、食品の味に悪影響を与えずに、かつ、優れた静菌効果が得られる点で、有利である。
【0034】
−食品への日持向上剤の添加(調味液に対して添加する場合(煮物類などの場合))−
また、前記食品が惣菜食品であり、中でも煮物類などである場合は、前記日持向上剤を、具材を煮込む用の調味液に対して添加し、混合して、調理を行うことが好ましい。
なお、ここで、前記具材としては、特に制限はなく、通常調理に使用される食材の中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、肉、魚、野菜等から選ばれる任意の食材の組み合わせを使用することができる。また、前記調味液としても、特に制限はなく、通常調理に使用される調味料などの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水、塩、砂糖、醤油、料理酒、みりんなどから選ばれる任意の組み合わせを使用することができる。また、使用する具材と調味液との使用割合としても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、質量比で、具材:調味液=1:0.5〜1:3が好ましく、1:1〜1:2がより好ましい。
前記日持向上剤を、前記調味液に添加し、混合する場合にも、前記日持向上剤の含有量は、食品の種類や食品の提供条件(温度、湿度、保存期間等)、前記調味液と具材との割合、などに応じて、適宜選択することができ、一概には決定されないが、前記調味液に対して、0.3〜3質量%が好ましく、0.5〜2質量%がより好ましい。前記日持向上剤の含有量が、前記調味液に対して、前記好ましい範囲内であると、食品の味に悪影響を与えずに、かつ、優れた静菌効果が得られる点で、有利である。
【0035】
<その他の成分>
前記食品は、前記日持向上剤以外にも、食品の種類や、食品の提供条件(温度、湿度、保存期間等)などに応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、通常使用される各種食品素材や、食品添加物などのその他の成分を含有することができる。
前記その他の成分の含有量としても、特に制限はなく、本発明の効果を損なわない範囲内で、目的に応じて適宜選択することができる。
【0036】
<提供条件>
前記日持向上剤を含有した前記食品は、所望の食品の提供条件(温度、湿度、保存期間等)下において、前記日持向上剤を含有しない食品と比較して、保存状態が格段に優れるものである。
前記日持向上剤を含有した食品は、例えば、コンビニエンスストアやスーパーマーケット、小売店等の店内で、陳列されて販売される状況が考慮されることから、25〜30℃の温度条件下で、2〜3日間、静菌効果を発揮し、安定した品質を保ったまま、保存が可能であることが好ましい。
前記日持向上剤を含有した食品が、前記のような好ましい保存状態を維持できるかどうかは、例えば、後述する実施例に示すように、バイオサーモアナライザー(BTA)を用いて、微生物が増殖する際に発生する熱を測定し、微生物の増殖を検出することによって、確認することができる。また、他の一般的な生菌数測定方法により、確認することもできる。
【0037】
(食品の日持向上方法)
前記日持向上剤は、任意の方法で各種食品に添加することにより、風味への悪影響を及ぼさずに優れた静菌効果を発揮し、添加された食品の防腐を抑制することができることから、該食品の日持ちを、品質を安定させたまま、大幅に向上させることができる。よって、前記第1の発明は、前記第1の発明に係る食品用日持向上剤を利用した、優れた食品の日持向上方法にも関する。また、同様に、前記第2の発明は、前記第2の発明に係る煮物類用日持向上剤を利用した、優れた食品の日持向上方法にも関する。
【実施例】
【0038】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、本実施例において、特に断りの無い限り、表中の数値は全て質量%を表すものとする。
【0039】
[第1の発明]
以下に、前記第1の発明に関する実施例及び比較例を説明する。
(実施例1〜3)
−食品用日持向上剤の調製−
下記表1に記載の組成で、合計200gとなるように各成分を秤量し、ミキサー(株式会社カワタ製 スーパーミキサーピッコロSMP−2)を用いて10分間混合して、実施例1〜3の食品用日持向上剤を調製した。
【0040】
−食品用日持向上剤含有食品(肉じゃが)の製造−
下記に示す処方に従って、得られた実施例1〜3の食品用日持向上剤を含有する肉じゃがを、それぞれ製造した。
醤油、砂糖、及び水を混合して、肉じゃが用の調味液を調製した。実施例1〜3の各食品用日持向上剤を、前記調味液(200g)に対して1質量%(2g)添加し、食品用日持向上剤含有調味液を得た。鍋に、前記食品用日持向上剤含有調味液の全量、及びじゃがいもを入れ、弱火で5分間煮た。牛肉を入れて更に5分間煮、次いで、玉ねぎを入れて更に10分間煮た。製造された肉じゃが(添加サンプル)を、室温にて冷却後、下記の各評価に供した。
また、前記食品用日持向上剤を添加しない以外は前記と同様にして、対照となる肉じゃが(無添加サンプル)を製造した。
<肉じゃがの処方>
じゃがいも 25質量%(100g)
牛肉 15質量%(60g)
玉ねぎ 10質量%(40g)
醤油 10質量%(40g)
砂糖 5質量%(20g)
水 35質量%(140g)
合計 100質量%(400g)
【0041】
[評価:肉じゃが]
1)静菌効果の評価(バイオサーモアナライザー(BTA)試験)
各食品用日持向上剤の静菌効果を評価するため、各肉じゃが(添加サンプル及び無添加サンプル)に、枯草菌(Bacillus subtilis:ATCC6633)を添加した。なお、前記枯草菌の量は、肉じゃが1gに対して約500個とした。前記肉じゃが5gを検査瓶(PS−3K、第一硝子社)に入れ、蓋を閉めた後、バイオサーモアナライザー(H−201、日本医科器械製作所)の高温槽内セルに設置した。また、対照セルには無添加サンプルを入れた。バイオサーモアナライザーの設定条件は、高温槽温度30℃、微小電圧計レンジ500μV、測定間隔15分とした。
バイオサーモアナライザー(BTA)試験における細菌増殖ピークは、細菌の増殖のし易さのパラメーターであり、ピーク発現時間が遅いほど、静菌効果が優れていることを意味するものである。したがって、本試験では、得られた各サンプルの細菌増殖ピーク時間に基づき、無添加サンプルのピーク時間に対する、添加サンプルのピーク時間の比(添加サンプル/無添加サンプル)を求め、該比の値を以下の基準にあてはめて、静菌効果を評価した。結果を表1に示す。
−評価基準(肉じゃが)−
◎ :3.0以上
○ :2.5〜3.0未満
△〜○:2.0〜2.5未満
△ :1.5〜2.0未満
× :1.5未満
2)官能評価
前記肉じゃがを5名のパネラーに試食してもらい、それぞれの風味(味、臭い)について、無添加サンプルと比較し、以下の評価基準に従って総合的に評価した。結果を表1に示す。
−評価基準−
○:無添加サンプルとの風味の差がない状態
△:無添加サンプルと比べて風味にやや差があるが、特に問題の無い状態
×:無添加サンプルと比べて風味に劣っている状態
3)安定性評価
低温(5℃)条件下で7日間保存した場合の、各食品用日持向上剤の安定性を、目視により評価した。結果を表1に示す。
【0042】
【表1】

【0043】
(実施例4〜7)
組成を、それぞれ下記表2に示す組成とした以外は、実施例1〜3と同様にして、実施例4〜7の食品用日持向上剤を調製した。また、得られた各食品用日持向上剤を含有する食品(肉じゃが)を、それぞれ製造した。得られた食品用日持向上剤及び肉じゃがについて、実施例1〜3と同様にして、各評価項目を評価した。結果を表2に示す。
【0044】
【表2】

【0045】
(実施例8〜11)
組成を、それぞれ下記表3に示す組成とした以外は、実施例1〜3と同様にして、実施例8〜11の食品用日持向上剤を調製した。また、得られた各食品用日持向上剤を含有する食品(肉じゃが)を、それぞれ製造した。得られた食品用日持向上剤及び肉じゃがについて、実施例1〜3と同様にして、各評価項目を評価した。結果を表3に示す。(なお、参考のため、表3には、実施例1の結果もあわせて示した。)
【0046】
【表3】

【0047】
(比較例1〜3)
組成を、それぞれ下記表4に示す組成とした以外は、実施例1〜3と同様にして、比較例1〜3の食品用日持向上剤を調製した。比較例1では、有機酸として、乳酸を単独で使用し、比較例2及び3においては、有機酸として、クエン酸及び乳酸の組み合わせを使用した。また、得られた各食品用日持向上剤を含有する食品(肉じゃが)を、それぞれ製造した。得られた食品用日持向上剤及び肉じゃがについて、実施例1〜3と同様にして、各評価項目を評価した。結果を表4に示す。
【0048】
【表4】

【0049】
表1〜4の結果から、有機酸としてリンゴ酸及び乳酸を共に使用した本発明の食品用日持向上剤(実施例1〜11)は、有機酸としてリンゴ酸及び乳酸以外のものを使用した食品用日持向上剤(比較例1〜3)と比較して、食品の風味を悪化させることなしに、より優れた静菌効果を発揮できることが判った。
【0050】
また、表1の結果からは、リンゴ酸の含有量が、食品用日持向上剤中、2〜7質量%の範囲内であり、乳酸の含有量が、食品用日持向上剤中、6〜11質量%の範囲内の場合に、より優れた静菌効果を発揮できることができることが判った。
また、表2の結果からは、酢酸ナトリウムの含有量が、食品用日持向上剤中、20〜30質量%の範囲内である場合に、製剤の安定性に悪影響を与えることなく、より優れた静菌効果を発揮できることが判った。
また、表3の結果からは、乳酸ナトリウムの含有量が、食品用日持向上剤中、2〜8質量%の範囲内であり、グリシンの含有量が、食品用日持向上剤中、3〜9質量%の範囲内である場合に、より優れた静菌効果を発揮できることが判った。
以上、表1〜3の結果から、本発明の食品用日持向上剤は、それぞれ食品用日持向上剤中における含有量として、リンゴ酸の含有量が2〜7質量%であり、乳酸の含有量が6〜11質量%であり、酢酸ナトリウムの含有量が20〜30質量%であり、乳酸ナトリウムの含有量が2〜8質量%であり、グリシンの含有量が2〜7質量%であることが、静菌性、官能性(味、臭いなど)、及び、製剤の安定性の全てについて、よりバランス良く優れている点で、好ましいことが判った。
【0051】
(比較例4)
組成を、下記表5に示す組成とした以外は、実施例1〜3と同様にして、比較例4の食品用日持向上剤を調製した。
【0052】
−食品用日持向上剤含有食品(がんもどきの煮物)の製造−
下記に示す処方に従って、前記実施例1、及び比較例4の食品用日持向上剤を含有するがんもどきの煮物を、それぞれ製造した。
醤油、砂糖、及び水を混合して、がんもどき用の調味液を調製した。前記実施例1、及び比較例4の各食品用日持向上剤を、前記調味液(200g)に対して1.5質量%(3g)、又は2.0質量%(6g)添加し、食品用日持向上剤含有調味液を得た。鍋に、前記食品用日持向上剤含有調味液の全量を入れ、弱火で過熱した。前記調味液が沸騰したら、がんもどきを加え、更に10分間煮た。製造されたがんもどき(添加サンプル)を、下記の各評価に供した。
また、前記食品用日持向上剤を添加しない以外は前記と同様にして、対照となるがんもどき(無添加サンプル)を製造した。
<がんもどきの処方>
がんもどき 50質量%(200g)
醤油 10質量%(40g)
砂糖 5質量%(20g)
水 35質量%(140g)
合計 100質量%(400g)
【0053】
[評価:がんもどきの煮物]
1)静菌効果の評価(バイオサーモアナライザー(BTA)試験)
前記肉じゃがの場合と同様にバイオサーモアナライザー(BTA)試験を行い、がんもどきの煮物に対する、各食品用日持向上剤の静菌効果を評価した。なお、対照となる無添加サンプルの細菌の増殖のし易さは、食品の種類により異なるため、がんもどきの煮物の静菌効果の評価基準については、前記肉じゃがの場合とは別に設定した。すなわち、無添加サンプルのピーク時間に対する、添加サンプルのピーク時間の比(添加サンプル/無添加サンプル)を、以下の評価基準(がんもどきの煮物)にあてはめて、評価した。結果を表5に示す。
−評価基準(がんもどきの煮物)−
◎ :1.8以上
○ :1.5〜1.8未満
△ :1.2〜1.5未満
× :1.2未満
2)官能評価
前記がんもどきを5名のパネラーに試食してもらい、それぞれの風味(味、臭い)について、無添加サンプルと比較し、前記肉じゃがの場合と同様の評価基準で評価した。結果を表5に示す。
【0054】
【表5】

【0055】
表5の結果から、本発明(実施例)の食品用日持向上剤は、比較例の食品用日持向上剤と比較して、優れた静菌効果を発揮でき、かつ、濃度依存的に静菌効果が高まることが判った。また、本発明(実施例)の食品用日持向上剤は、煮物の調味液に対する添加量を上げても、食品の風味に悪影響を及ぼさないことが判った。
【0056】
(比較例5)
組成を、下記表6に示す組成とした以外は、実施例1〜3と同様にして、比較例5の食品用日持向上剤を調製した。
【0057】
−食品用日持向上剤含有食品(ハンバーグ)の製造−
下記に示す処方に従って、前記実施例1、及び比較例5の食品用日持向上剤を含有するハンバーグを、それぞれ製造した。
下記処方に示す全ての原料を、フードカッター(DLC−6PRO;(株)クイジナートサンエイ製)を用いて、2分間、混合した。実施例1及び比較例5の食品用日持向上剤を、前記全ての原料の合計質量(300g)に対して、それぞれ1.0質量%(3g)、又は0.5質量%(1.5g)添加し、2分間、混合した。得られた混合物を、1個あたり25g、直径4cmのハンバーグ型に成型し、オーブン(230℃)で13分間、焼成した。製造されたハンバーグ(添加サンプル)を、下記の各評価に供した。
また、前記食品用日持向上剤を添加しない以外は前記と同様にして、対照となるハンバーグ(無添加サンプル)を製造した。
<ハンバーグの処方>
牛豚挽き肉 58.5質量%(175.5g)
玉ねぎ(ソテー済み) 20質量%(60.0g)
パン粉 7.5質量%(22.5g)
卵白 0.7質量%(2.1g)
食塩 0.4質量%(1.2g)
コショー 0.1質量%(0.3g)
ナツメグ 0.1質量%(0.3g)
グルタミン酸ナトリウム 0.1質量%(0.3g)
水 12.6質量%(37.8g)
合計 100質量%(300g)
【0058】
[評価:ハンバーグ]
1)静菌効果の評価(バイオサーモアナライザー(BTA)試験)
前記肉じゃがの場合と同様にバイオサーモアナライザー(BTA)試験を行い、ハンバーグに対する、各食品用日持向上剤の静菌効果を評価した。なお、対照となる無添加サンプルの細菌の増殖のし易さは、食品の種類により異なるため、ハンバーグの静菌効果の評価基準については、前記肉じゃがの場合とは別に設定した。すなわち、無添加サンプルのピーク時間に対する、添加サンプルのピーク時間の比(添加サンプル/無添加サンプル)を、以下の評価基準(ハンバーグ)にあてはめて、評価した。結果を表6に示す。
−評価基準(ハンバーグ)−
◎ :3.0以上
○ :2.5〜3.0未満
△ :2.0〜2.5未満
× :2.0未満
2)官能評価
前記ハンバーグを5名のパネラーに試食してもらい、それぞれの風味(味、臭い)について、無添加サンプルと比較し、前記肉じゃがの場合と同様の評価基準で評価した。結果を表6に示す。
【0059】
【表6】

【0060】
表6の結果から、本発明(実施例)の食品用日持向上剤は、煮物類以外の食品に適用しても、比較例の食品用日持向上剤と比較すると、優れた静菌効果を発揮できることが判った。
【0061】
[第2の発明]
以下に、前記第2の発明に関する実施例及び比較例を説明する。
(実施例12〜14)
−煮物類用日持向上剤の調製−
下記表7に記載の組成で、合計200gとなるように各成分を秤量し、ミキサー(株式会社カワタ製 スーパーミキサーピッコロSMP−2)を用いて10分間混合して、実施例12〜14の煮物類用日持向上剤を調製した。
【0062】
−煮物類用日持向上剤含有食品(肉じゃが)の製造−
下記に示す処方に従って、得られた実施例12〜14の煮物類用日持向上剤を含有する肉じゃがを、それぞれ製造した。
醤油、砂糖、及び水を混合して、肉じゃが用の調味液を調製した。実施例12〜14の各食品用日持向上剤を、前記調味液(200g)に対して1質量%(2g)添加し、煮物類用日持向上剤含有調味液を得た。鍋に、前記煮物類用日持向上剤含有調味液の全量、及びじゃがいもを入れ、弱火で5分間煮た。牛肉を入れて更に5分間煮、次いで、玉ねぎを入れて更に10分間煮た。製造された肉じゃが(添加サンプル)を、室温にて冷却後、下記の各評価に供した。
また、前記煮物類用日持向上剤を添加しない以外は前記と同様にして、対照となる肉じゃが(無添加サンプル)を製造した。
<肉じゃがの処方>
じゃがいも 25質量%(100g)
牛肉 15質量%(60g)
玉ねぎ 10質量%(40g)
醤油 10質量%(40g)
砂糖 5質量%(20g)
水 35質量%(140g)
合計 100質量%(400g)
[評価:肉じゃが]
1)静菌効果の評価(バイオサーモアナライザー(BTA)試験)
各煮物類日持向上剤の静菌効果を評価するため、各肉じゃが(添加サンプル及び無添加サンプル)に、枯草菌(Bacillus subtilis:ATCC6633)を添加した。前記枯草菌の量は、肉じゃが1gに対して約500個とした。前記肉じゃが5gを検査瓶(PS−3K、第一硝子社)に入れ、蓋を閉めた後、バイオサーモアナライザー(H−201、日本医科器械製作所)の高温槽内セルに設置した。また、対照セルには無添加サンプルを入れた。バイオサーモアナライザーの設定条件は、高温槽温度30℃、微小電圧計レンジ500μV、測定間隔15分とした。
バイオサーモアナライザー(BTA)試験における細菌増殖ピークは、細菌の増殖のし易さのパラメーターであり、ピーク発現時間が遅いほど、静菌効果が優れていることを意味するものである。したがって、本試験では、得られた各サンプルの細菌増殖ピーク時間に基づき、無添加サンプルのピーク時間に対する、添加サンプルのピーク時間の比(添加サンプル/無添加サンプル)を求め、該比の値を以下の基準にあてはめて、静菌効果を評価した。結果を表7に示す。
−評価基準(肉じゃが)−
◎ :3.0以上
○ :2.5〜3.0未満
△〜○:2.0〜2.5未満
△ :1.5〜2.0未満
× :1.5未満
1)官能評価
前記肉じゃがを5名のパネラーに試食してもらい、それぞれの風味(味、臭い)について、無添加サンプルと比較し、以下の評価基準に従って総合的に評価した。結果を表7に示す。
−評価基準−
○:無添加サンプルとの風味の差がない状態
△:無添加サンプルと比べて風味にやや差があるが、特に問題の無い状態
×:無添加サンプルと比べて風味に劣っている状態
2)安定性評価
低温(5℃)条件下で7日間保存した場合の、各煮物類用日持向上剤の安定性を、目視により評価した。結果を表7に示す。
【0063】
【表7】

【0064】
(実施例15〜18)
組成を、それぞれ下記表8に示す組成とした以外は、実施例12〜14と同様にして、実施例15〜18の煮物類用日持向上剤を調製した。また、得られた各煮物類用日持向上剤を含有する食品(肉じゃが)を、それぞれ製造した。得られた煮物類用日持向上剤及び肉じゃがについて、実施例12〜14と同様にして、各評価項目を評価した。結果を表8に示す。
【0065】
【表8】

【0066】
(実施例19〜22)
組成を、それぞれ下記表9に示す組成とした以外は、実施例12〜14と同様にして、実施例19〜22の煮物類用日持向上剤を調製した。また、得られた各煮物類用日持向上剤を含有する食品(肉じゃが)を、それぞれ製造した。得られた煮物類用日持向上剤及び肉じゃがについて、実施例12〜14と同様にして、各評価項目を評価した。結果を表9に示す。(なお、参考のため、表9には、実施例12の結果もあわせて示した。)
【0067】
【表9】

【0068】
(実施例23〜25)
組成を、それぞれ下記表10に示す組成とした以外は、実施例12〜14と同様にして、実施例23〜25の煮物類用日持向上剤を調製した。また、得られた各煮物類用日持向上剤を含有する食品(肉じゃが)を、それぞれ製造した。得られた煮物類用日持向上剤及び肉じゃがについて、実施例12〜14と同様にして、各評価項目を評価した。結果を表10に示す。(なお、参考のため、表10には、実施例12の結果もあわせて示した。)
【0069】
【表10】

【0070】
表7〜10の結果から、本発明の煮物類用日持向上剤(実施例12〜25)は、優れた静菌効果を発揮できることが判った。
【0071】
また、表7の結果からは、リンゴ酸の含有量が、煮物類用日持向上剤中、2〜7質量%の範囲内であり、乳酸の含有量が、煮物類用日持向上剤中、6〜11質量%の範囲内の場合に、より優れた静菌効果を発揮できることができることが判った。
また、表8の結果からは、酢酸ナトリウムの含有量が、煮物類用日持向上剤中、20〜30質量%の範囲内である場合に、製剤の安定性に悪影響を与えることなく、より優れた静菌効果を発揮できることが判った。
また、表9の結果からは、乳酸ナトリウムの含有量が、煮物類用日持向上剤中、2〜8質量%の範囲内であり、グリシンの含有量が、煮物類用日持向上剤中、3〜9質量%の範囲内である場合に、より優れた静菌効果を発揮できることが判った。
また、表10の結果からは、有機酸が、リンゴ酸及び乳酸の組み合わせである場合に、より優れた静菌効果を発揮できることが判った。
以上、表7〜10の結果から、本発明の煮物類用日持向上剤は、有機酸が、リンゴ酸及び乳酸の組み合わせであり、かつ、それぞれ煮物類用日持向上剤中における含有量として、リンゴ酸の含有量が2〜7質量%であり、乳酸の含有量が6〜11質量%であり、酢酸ナトリウムの含有量が20〜30質量%であり、乳酸ナトリウムの含有量が2〜8質量%であり、グリシンの含有量が3〜9質量%であることが、静菌性、官能性(味、臭いなど)、及び、製剤の安定性の全てについて、よりバランス良く優れている点で、好ましいことが判った。
【0072】
(実施例26)
組成を、下記表11に示す組成とした以外は、実施例12〜14と同様にして、実施例26の煮物類用日持向上剤を調製した。
【0073】
−煮物類用日持向上剤含有食品(がんもどきの煮物)の製造−
下記に示す処方に従って、前記実施例12、及び実施例26の煮物類用日持向上剤を含有するがんもどきの煮物を、それぞれ製造した。
醤油、砂糖、及び水を混合して、がんもどき用の調味液を調製した。前記実施例12、及び実施例26の各煮物類用日持向上剤を、前記調味液(200g)に対して1.5質量%(3g)、又は2.0質量%(6g)添加し、煮物類用日持向上剤含有調味液を得た。鍋に、前記煮物類用日持向上剤含有調味液の全量を入れ、弱火で過熱した。前記調味液が沸騰したら、がんもどきを加え、更に10分間煮た。製造されたがんもどき(添加サンプル)を、下記の各評価に供した。
また、前記煮物類用日持向上剤を添加しない以外は前記と同様にして、対照となるがんもどき(無添加サンプル)を製造した。
<がんもどきの処方>
がんもどき 50質量%(200g)
醤油 10質量%(40g)
砂糖 5質量%(20g)
水 35質量%(140g)
合計 100質量%(400g)
【0074】
[評価:がんもどきの煮物]
2)静菌効果の評価(バイオサーモアナライザー(BTA)試験)
前記肉じゃがの場合と同様にバイオサーモアナライザー(BTA)試験を行い、がんもどきの煮物に対する、各煮物類用日持向上剤の静菌効果を評価した。なお、対照となる無添加サンプルの細菌の増殖のし易さは、食品の種類により異なるため、がんもどきの煮物の静菌効果の評価基準については、前記肉じゃがの場合とは別に設定した。すなわち、無添加サンプルのピーク時間に対する、添加サンプルのピーク時間の比(添加サンプル/無添加サンプル)を、以下の評価基準(がんもどきの煮物)にあてはめて、評価した。結果を表11に示す。
−評価基準(がんもどきの煮物)−
◎ :1.8以上
○ :1.5〜1.8未満
△ :1.2〜1.5未満
× :1.2未満
3)官能評価
前記がんもどきを5名のパネラーに試食してもらい、それぞれの風味(味、臭い)について、無添加サンプルと比較し、前記肉じゃがの場合と同様の評価基準で評価した。結果を表11に示す。
【0075】
【表11】

【0076】
表11の結果から、本発明の煮物類用日持向上剤は、有機酸がリンゴ酸及び乳酸の組み合わせである場合に、より優れた静菌効果を発揮できることが判った。また、本発明の煮物類用日持向上剤は、濃度依存的に静菌効果が高まることが判った。また、本発明の煮物類用日持向上剤は、煮物の調味液に対する添加量を上げても、食品の風味に悪影響を及ぼさないことが判った。
【0077】
(比較例6)
組成を、下記表12に示す組成とした以外は、実施例12〜14と同様にして、比較例6の食品用日持向上剤を調製した。
【0078】
−食品用日持向上剤含有食品(ハンバーグ)の製造−
下記に示す処方に従って、前記実施例12、及び比較例6の食品用日持向上剤を含有するハンバーグを、それぞれ製造した。
下記処方に示す全ての原料を、フードカッター(DLC−6PRO;(株)クイジナートサンエイ製)を用いて、2分間、混合した。実施例12及び比較例6の煮物類用日持向上剤を、前記全ての原料の合計質量(300g)に対して、それぞれ1.0質量%(3g)、又は0.5質量%(1.5g)添加し、2分間、混合した。得られた混合物を、1個あたり25g、直径4cmのハンバーグ型に成型し、オーブン(230℃)で13分間、焼成した。製造されたハンバーグ(添加サンプル)を、下記の各評価に供した。
また、前記煮物類用日持向上剤を添加しない以外は前記と同様にして、対照となるハンバーグ(無添加サンプル)を製造した。
<ハンバーグの処方>
牛豚挽き肉 58.5質量%(175.5g)
玉ねぎ(ソテー済み) 20質量%(60.0g)
パン粉 7.5質量%(22.5g)
卵白 0.7質量%(2.1g)
食塩 0.4質量%(1.2g)
コショー 0.1質量%(0.3g)
ナツメグ 0.1質量%(0.3g)
グルタミン酸ナトリウム 0.1質量%(0.3g)
水 12.6質量%(37.8g)
合計 100質量%(300g)
【0079】
[評価:ハンバーグ]
4)静菌効果の評価(バイオサーモアナライザー(BTA)試験)
前記肉じゃがの場合と同様にバイオサーモアナライザー(BTA)試験を行い、ハンバーグに対する、各煮物類用日持向上剤の静菌効果を評価した。なお、対照となる無添加サンプルの細菌の増殖のし易さは、食品の種類により異なるため、ハンバーグの静菌効果の評価基準については、前記肉じゃがの場合とは別に設定した。すなわち、無添加サンプルのピーク時間に対する、添加サンプルのピーク時間の比(添加サンプル/無添加サンプル)を、以下の評価基準(ハンバーグ)にあてはめて、評価した。結果を表12に示す。
−評価基準(ハンバーグ)−
◎ :3.0以上
○ :2.5〜3.0未満
△ :2.0〜2.5未満
× :2.0未満
2)官能評価
前記ハンバーグを5名のパネラーに試食してもらい、それぞれの風味(味、臭い)について、無添加サンプルと比較し、前記肉じゃがの場合と同様の評価基準で評価した。結果を表12に示す。
【0080】
【表12】

【0081】
表12の結果から、本発明(実施例)の食品用日持向上剤は、煮物類以外の食品に適用しても、比較例の食品用日持向上剤と比較すると、優れた静菌効果を発揮できることが判った。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本件第1の発明に係る食品用日持向上剤は、各種食品に添加することにより、優れた静菌効果を付与可能であり、該食品の日持ちを向上することができるので、各種食品、主に惣菜食品への使用に好適である。中でも、本発明の食品用日持向上剤は、好ましくは液体状であることから、使用する調味液に添加し、混合することによって、容易に含有させることができるという点で、煮物類への使用に特に好適である。
また、本件第2の発明に係る煮物類用日持向上剤は、各種食品に添加することにより、優れた静菌効果を付与可能であり、該食品の日持ちを向上することができ、また、好ましくは液体状であることから、使用する調味液に添加し、混合することによって、容易に含有させることができるという点で、煮物類への使用に好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機酸としてリンゴ酸及び乳酸を含有することを特徴とする食品用日持向上剤。
【請求項2】
更に、有機酸塩及びアミノ酸を含有する請求項1に記載の食品用日持向上剤。
【請求項3】
有機酸塩が酢酸ナトリウム及び乳酸ナトリウムであり、アミノ酸がグリシンである請求項2に記載の食品用日持向上剤。
【請求項4】
リンゴ酸の含有量が2〜7質量%であり、乳酸の含有量が6〜11質量%であり、酢酸ナトリウムの含有量が20〜30質量%であり、乳酸ナトリウムの含有量が2〜8質量%であり、グリシンの含有量が3〜9質量%である請求項3に記載の食品用日持向上剤。
【請求項5】
食品が惣菜食品である請求項1から4のいずれかに記載の食品用日持向上剤。
【請求項6】
惣菜食品が煮物類である請求項5に記載の食品用日持向上剤。
【請求項7】
有機酸、有機酸塩、及びアミノ酸を含有することを特徴とする煮物類用日持向上剤。
【請求項8】
有機酸がリンゴ酸及び乳酸であり、有機酸塩が酢酸ナトリウム及び乳酸ナトリウムであり、アミノ酸がグリシンである請求項7に記載の煮物類用日持向上剤。
【請求項9】
リンゴ酸の含有量が2〜7質量%であり、乳酸の含有量が6〜11質量%であり、酢酸ナトリウムの含有量が20〜30質量%であり、乳酸ナトリウムの含有量が2〜8質量%であり、グリシンの含有量が3〜9質量%である請求項8に記載の煮物類用日持向上剤。
【請求項10】
請求項1から6に記載の食品用日持向上剤、及び請求項7から9に記載の煮物類用日持向上剤の少なくともいずれかを含有することを特徴とする食品。
【請求項11】
請求項1から6に記載の食品用日持向上剤、及び請求項7から9に記載の煮物類用日持向上剤の少なくともいずれかを食品に添加することを特徴とする食品の日持向上方法。

【公開番号】特開2007−222044(P2007−222044A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−45296(P2006−45296)
【出願日】平成18年2月22日(2006.2.22)
【出願人】(505080585)エーザイフード・ケミカル株式会社 (10)
【Fターム(参考)】