説明

食品

【課題】具の水分の浸出を抑制し、良好な風味を長時間維持可能な食品を提供する。
【解決手段】
ころも3よりも水分を多く含む具2と、ころも3との間に水不透過層4が設けられている。水不透過層4は、米粉、タピオカ粉を混ぜて水で溶いた生地を焼くことにより得られるシート材によって構成される。水不透過層4により、具2からころも3への水の浸入が抑制され、ころも3の風味が維持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、具と具を包むころもからないる食品に係り、詳しくは、具の含有する水分量がころもの含有する水分量よりも多い食品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
饅頭、中華饅頭、菓子パンなどは、具と、この具を包むころもで構成されている。そして、具材を生地でくるみ、オーブンなどで焼き、又は蒸かし、或いは油で揚げるなどにより、食品が完成する。
【0003】
完成した食品は、ころもの内側に具が入っており、一般的には具の味が濃く、ころもの味は薄く構成され、ころもと具とを同時に食することにより、適度な味が得られるように作られている。
【0004】
【非特許文献1】http://www.oosumi-tamaya.com/about.html
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、水分の多い具を、ころもの内側に有する食品では、具の有する水分がころもに浸み出し、ころもが型崩れし、また食品全体の風味が損なわれるといった問題があった。
【0006】
さらに、上記非特許文献に記載されているような、具材として果物を収容するものでは、果物の周囲に餡子などの濃い味の具が位置することとなり、浸透圧によって、果物の水分が、隣接する具材に浸み出し、果物の風味を損ね、ひいては食品全体の味を損なうといった問題があった。
【0007】
この発明は、具の水分の浸出を抑制し、良好な風味を長時間維持可能な食品を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上のような問題を解決する本発明は、以下のような構成を有する。
【0009】
(1)ころもと、該ころもの内側に収容された具とを備え、前記具は、ころもよりも水分を多く含み、ころもと具の間には、水分を透過しない水分不透過層が設けられ、該水分不透過層は、でんぷんを主成分とする生地で構成されていることを特徴とする食品。
【0010】
(2)ころもと、前記ころもの内側に収容された第1の具と、第2の具とを有し、第1の具と第2の具は、各水分中に溶けている物質の濃度が異なっており、前記第1の具と前記第2の具の間には、水分を透過しない水分不透過層が設けられ、該水分不透過層は、でんぷんを主成分とする生地で構成されている食品。
【0011】
(3)前記水分不透過層は、米粉及びタピオカ澱粉を原料に含むものである上記(1)又は(2)に記載の食品。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、水分不透過層によって、具の水分がころもへ浸出することが抑制され、ころもの型崩れや、食品の風味が損なわれることが抑制される。また、水分不透過層は、でんぷんを主成分とし、可食成分で構成されるので、ころも及び具と同時に食することができる。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、濃度の異なる第1の具と第2の具の間に水分不透過層が設けられるので、濃度の低い具から高い具への、浸透圧による水分の浸出が抑制され、風味の低下を抑制することができる。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、水分不透過層を米粉及びタピオカ澱粉を原料とすることにより、安価で十分な水不透過効果を発揮する層を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】具ところもの間に水分不透過層を有する食品の断面正面図である。
【図2】2種類の具の間に水分不透過層を有する食品の断面正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下本発明の好適実施形態について詳説する。図1は、本発明の第1の実施形態である食品の断面正面図である。この食品1は、具2と、具2の外側全体を包み込むころも3と、ころも3と具2との間に設けられている水不透過層4とを備えている。ころも3は、例えば小麦粉に水を加えて作られた生地を、焼き、或いは蒸かすことにより、ころも3を生成する。ころも3は、また水でといだ小麦粉を揚げることにより、生成することもできる。また、ころも3の他の例としては、餅であってもよい。具2は、例えば、露を多く含む具材、例えば、苺、みかん等の果物、汁状のもの、豆腐などのように材料自体が水分を多く含むもの、ブランデーなどのアルコールを含む材料などが挙げられる。特に、水分を含むものであると、本発明の効果が発揮される。
【0017】
水不透過層4は、米に由来する澱粉(米粉)、或いはこの米澱粉にタピオカに由来する澱粉(タピオカ澱粉)を適量混合したものを水で溶き、これを薄く延ばしたものを乾燥させて生成したシート材によって構成される。シート材は、この他、米粉からではなく、米を一晩以上水につけておき、それを水とともにひいて液状にしたものを、蒸気の上に張った布の上にクレープ状に薄く延ばしてシート状とし、火を通した後、取り出して、乾燥用の網台に載せて乾燥させて生成することができる。
【0018】
水不透過層4として食品1に使用する場合には、前記乾燥したシート材に水分を添加し、柔らかいシートとしたものを袋状に形成し、この内側に具2を充填し、袋の口を塞ぎ、外側にころも3を設けることで、食品1の水不透過層4が形成される。具体的には、具2を充填し、袋の口を塞いだ状態のシート材にころも3を生成するまえの生地を被せ、焼く、或いは蒸すことで食品1が作られる。或いは、生地の変わりに水でといだ小麦粉をまぶし揚げることによっても、食品1が作られる。ころも3は、単に袋状のシート材を包む構成であってもよい。ころも3は、袋状のシート材の全周面を覆うものでなくても良く、巻物状に巻き付いた形状であってもよい。
【0019】
水不透過層4を構成する材料としては、米粉、タピオカ粉に加えて、他の食品の粉、例えばジャガイモ由来の澱粉、小麦粉等を添加してもよい。
【0020】
水不透過層4は、ある程度の水分を含む状態では、軟化しており、具2の形状に合わせて容易に変形し、また外側からの圧力によってころも3の全体形状が変形した場合には、それに応じて容易に変形する。また、食する場合にも、容易に噛み切ることがき、ころも3、具2と一体として食することができるようになっている。
【0021】
以上のように構成された食品1では、具2の水分は、水不透過層4の内側に保持された状態となり、ころも3には浸み出さない。従って、ころも3は、水分を吸収することなく、質感や歯ざわり、味などを従来より長い時間維持することが可能となる。
【0022】
図2は、本発明の第2の実施形態である食品の断面正面図である。ころも3の構成と水不透過層4は、図1に示されている第1の実施形態の食品1と同様であるので、説明を省略する。具2aは、それ自体が十分に水分を含む材料であり、例えば苺、バナナ、みかん等の果実が挙げられる。具2aは、外表面を水不透過層4により覆われている。具2bは、水不透過層4により覆われた具2aの外側を覆うように、これを包み込んだ状態で設けられる。具2bは、具2aに比較して、異なる成分(異なる濃度、或いは異なる成分)で構成された具である。例えば、具2aと具2bとは、一方の味が濃く、他方が薄く構成され、或いは、一方が甘ければ、他方が辛く、或いは酸っぱい、といった構成となっている。前者のように、具2aと具2bの双方が甘い材料であって、一方が薄味(糖分の濃度が一方より低い)、他方が濃い味(糖分の濃度が他方より高い)であった場合、水不透過層4を有さない場合には、具2aと具2bの間に浸透圧が生じ、薄い方の具から濃い方の具に水分が浸出し、味が薄い方の具の水分が減少する。一方、濃い方の具は、水の浸入によって味か薄まる。その結果として、作成した時の食品5の風味とは異なるものとなってしまう。
【0023】
水不透過層4は、このような水の移動を抑制する。このため各具2a、具2bは、食品5を作成した当初の味を維持し、風味の変わらない状態をより長時間維持することができる。さらに、具2bと具2aが、異なる味(例えば、具2aが甘く、具2bが塩味)である場合、水不透過層4は、具2aと具2bとの間の味の混合を抑制し、食品5の風味の変化を抑制することができる。ここで、具材2bは、例えば、餡子、シュークリーム、バタークリーム、レアチーズなどのペースト状の具材などが挙げられる。
【0024】
なお、水不透過層4は、必要に応じて具2bところも3の間に設けることもできる。この場合には、第1の実施形態の食品と同様に、ころも3の風味や食感を維持できるといった効果がある。また、この場合には、具2bをより水分の多い材料にすることもできる。
【0025】
以上説明した実施形態の他、水不透過層4で構成された袋状の容器に具を入れたものを、澱粉をペースト状にしたものを型に入れて焼成したコーンに入れ、食するような構成としてもよい。
【符号の説明】
【0026】
1 食品
2 具
3 ころも
4 水不透過層
5 食品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ころもと、該ころもの内側に収容された具とを備え、前記具は、ころもよりも水分を多く含み、ころもと具の間には、水分を透過しない水分不透過層が設けられ、該水分不透過層は、でんぷんを主成分とする生地で構成されていることを特徴とする食品。
【請求項2】
ころもと、前記ころもの内側に収容された第1の具と、第2の具とを有し、第1の具と第2の具は、各水分中に溶けている物質の濃度が異なっており、前記第1の具と前記第2の具の間には、水分を透過しない水分不透過層が設けられ、該水分不透過層は、でんぷんを主成分とする生地で構成されている食品。
【請求項3】
前記水分不透過層は、米粉、タピオカ澱粉を原料に含むものである請求項1又は2に記載の食品。

【図1】
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【図2】
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