説明

食器洗い機用洗浄剤組成物

【課題】油洗浄力、スケール洗浄力があり、低泡性が良好で、かつ耐ケーキング性に優れた食器洗い機用洗浄剤組成物を提供する。
【解決手段】
(A)ポリカルボン酸系高分子化合物 8質量%以上、(B)無機過酸化物、(C)非イオン界面活性剤 からなり(A)/(B)重量比が0.5以上である、食器洗い機用粒状洗剤組成物

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は食器洗い機用洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に食器洗い機用洗浄剤組成物は粉末状であり、その製品形態としては、スプーン付きの箱形容器に収納されている形態が多い。また詰め替え用としてパウチ形態の製品もある。
食器洗い機用洗浄剤組成物の成分については、界面活性剤、漂白剤、漂白活性化剤、酵素やビルダーを含有させることにより、洗浄性能の向上が図られている。
また、下記特許文献1には高分子ポリカルボン酸またはその塩と低泡性非イオン活性剤を配合しグラスの曇りと油の洗浄力の良好な食器洗い機用洗浄剤を得る技術についての開示がある。
下記文献2には成分の添加方法や混合方法を規定することで、低泡性かつ粉体物性(使用性)の良好な食器洗い機用洗浄剤を得る技術についての開示がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−321424号公報
【特許文献2】特開2006−206893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
食器洗い機用洗浄剤製品においては、油汚れおよびスケール汚れ(くすみ)をきれいに洗浄できる程度の高い洗浄力が求められている。同時に食器洗い機のポンプに負荷がかからない程度の低泡性も求められている。さらに使用時に速やかに溶解してその洗浄性能が充分に発揮されるためには、保存中にケーキングを起こし難くて保存性が良好であることも重要である。また、スプーンですくい易く、所定量を計量し易いという使い勝手の良さに対する要求も高い。
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、油汚れおよびスケール汚れに対して高い洗浄力を達成できるともに、低泡性を確保し、保存性が良く、使い勝手が良好な食器洗い機用洗浄剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、本発明は(A)ポリカルボン酸系高分子化合物 8質量%以上、(B)無機過酸化物、(C)非イオン界面活性剤 を含有し、(A)/(B)重量比が0.5以上である、食器洗い機用粒状洗剤組成物を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の食器洗い機用洗浄剤組成物は、油汚れ、スケール汚れに対して高い洗浄力と低泡性を達成できるとともに、耐ケーキング性も良好である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
(A)ポリカルボン酸系高分子化合物
本発明においてポリカルボン酸系高分子化合物とは、カルボキシ基を含む構成単位を有する重合物を意味し、好ましくは重量平均分子量が1000以上の重合物である。
(A)成分の重量平均分子量としては、1000以上が好ましく、1500〜200000の範囲がより好ましく、2000〜10000の範囲がさらに好ましい。(A)成分の重量平均分子量が1000以上、特に1500以上であると、酸化触媒としての性能が向上し、200000以下であると、(A)成分の粘度の増加が抑制されて取扱い性が良好となる。
なお、本発明において、重量平均分子量とは、標準物質をポリエチレングリコール(PEG)としてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で分析を行った値を示す。
【0008】
(A)成分の好適なものとしては、炭化水素基又はポリエチレンイミノ基を有する主鎖に、カルボキシ基又はカルボキシ基を含有する側鎖を導入したものが挙げられる。
たとえば、下記の一般式(I)又は一般式(II)で表される構成単位を有するものが好ましく挙げられる。
【0009】
【化1】

【0010】
【化II】

[式(I)および式(II)中、Aは水素原子、直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基、又は下記一般式(II)で表される基を表す。各式における複数のAは同一であってもよく、異なっていてもよい。ただし、各式において、複数のAのうち、少なくとも一つは下記一般式(II)で表される基であって、Yがカルボキシ基である。]
【0011】
【化2】

[式(III)中、Yはカルボキシ基又はアミノ基を表す。nは0から2の整数を表す。]
【0012】
前記式(I)および式(II)中、Aは、水素原子、直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基、又は前記一般式(III)で表される基を表す。
Aにおけるアルキル基としては、炭素数1〜4であることが好ましく、炭素数1〜3であることがより好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基等が挙げられる。
前記式(III)中、Yは、カルボキシ基又はアミノ基を表す。
Yにおけるアミノ基としては、−NR(ただし、R、Rはそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基である)等が好ましく挙げられる。
は、0から2の整数を表し、0が好ましい。
式(I)および式(II)中、複数のAは、互いに、同一であってもよく、異なっていてもよい。
ただし、各式において、複数のAのうち、少なくとも一つは前記一般式(III)で表される基であって、Yがカルボキシ基である。
【0013】
(A)成分は、同一の構成単位から構成される重合体であってもよく、複数種の構成単位からなる共重合体であってもよい。
(A)成分の具体例としては、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸、ポリヒドロキシアクリル酸、ポリフマル酸、ポリアセタールカルボン酸、アクリル酸とマレイン酸との共重合体(アクリル酸/マレイン酸共重合体)、アクリル酸とアクリル酸アミドとの共重合体(アクリル酸/アクリル酸アミド共重合体)、アミノポリカルボン酸系の重合体、又はこれらの塩などが挙げられる。
上記の中でも、茶渋汚れや油性汚れ等の落ちにくい汚れに対する洗浄力が良好であることから、ポリアクリル酸又はその塩、アクリル酸/マレイン酸共重合体又はその塩、アミノポリカルボン酸系の重合体又はその塩が好ましく、ポリアクリル酸又はその塩、アクリル酸/マレイン酸共重合体又はその塩がより好ましく、アクリル酸/マレイン酸共重合体又はその塩が特に好ましい。
【0014】
アクリル酸/マレイン酸共重合体又はその塩としては、例えばBASF製のソカランCP5、ソカランCP7、ソカランCP12S(いずれも商品名)や、日本触媒(株)製のTLシリーズ(商品名)等の市販品が好適なものとして挙げられる。
アミノポリカルボン酸系の重合体又はその塩としては、例えばBASF社製のTrilonP(商品名)等の市販品が好適なものとして挙げられる。
【0015】
(A)成分は、単独(1種)で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0016】
(B)無機過酸化物としては、アルカリ金属の過ホウ酸塩、過炭酸塩、過ケイ酸塩、過硫酸塩等、水溶液中で過酸化水素を発生する無機過酸化物を使用することができる。これらは、単独(1種)で又は2種以上を混合して用いることができる。
より高い漂白効果の点から、過硫酸水素カリウム、過ホウ酸ナトリウム、過炭酸ナトリウムが望ましく、特に過炭酸ナトリウムが望ましい。
(B)無機過酸化物の表面被覆の有無は特に限定されないが、漂白効果の持続性や酸化性固体を安全に貯蔵するといった観点から、(B)無機過酸化物を炭酸ナトリウムや炭酸水素ナトリウム等の無機塩で被覆した形態で用いるのが好ましい。
(B)無機過酸化物は、前記表面被覆された、または表面被覆されない粒子状で用いることが好ましい。その粒子径は特に限定されるものではないが、ケーキングを防止する観点から平均粒子径200〜1200μmが好ましく、200〜700μmが特に好ましい。
食器洗い機用洗浄剤組成物の全量に対して、(B)無機過酸化物の含有量は、特に限定するものではないが、2〜70質量%が好ましく、5〜50質量%がより好ましい。(B)無機過酸化物の含有量が上記範囲の下限値未満では充分な漂白効果が得られない場合があり、上記範囲の上限値を超える場合には漂白効果は頭打ちとなり、格段の漂白効果の向上が認められないことがある。
スケール汚れに対する洗浄力と耐ケーキング性を両立させるためには(A)成分と(B)成分の重量比(A)/(B)を0.5以上とすることが好ましく、0.5未満であるとスケール汚れに対する洗浄力と耐ケーキング性の両方を確保することが困難となる。
【0017】
(C)成分は非イオン性界面活性剤であり、食器洗浄機用洗浄剤という用途の特性上、低泡性であることが好ましく、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。本発明で用いる(C)成分としては特に限定されないが、例えば、下記一般式(IV)で示されるポリオキシアルキレン型非イオン性界面活性剤が好適に用いられる。
【0018】
【化IV】

但し、式中、Rは水素または炭素数8〜20、好ましくは10〜16のアルキル基またはアルケニル基であり、直鎖であっても分岐鎖であっても良い。
上記一般式(IV)の出発原料である高級アルコールとしては、天然または合成の、1級または2級アルコール、具体的には、オクチルアルコール、デシルアルコール、ドデシルアルコール、トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、アラキルアルコール等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。これらの高級アルコールは単独でも混合されていても良く、天然でも合成でも良く、ドバノックス(登録商標)、ダイヤドール(登録商標)、ネオドール(登録商標)、サフォール(登録商標)等の1級合成アルコールや、椰子油高級アルコール等の天然アルコール、更にはソフタノール(登録商標)等の2級アルコールがあげられる。このうち、ドデシルアルコール、ミリスチルアルコール、トリデカノール、ドバノックス(登録商標)、ダイヤドール(登録商標)、ネオドール(登録商標)、サフォール(登録商標)等の1級合成アルコールや椰子油高級アルコール等の天然アルコールが好ましい。
【0019】
EOはエチレンオキサイド、AOはC3〜5のアルキレンオキサイドであり、好ましくはプロピレンオキサイド(PO)、ブチレンオキサイド(BO)である。n及びmは平均付加モル数を示し、nは1〜20が好ましく、より好ましくは2〜10である。
また、上記一般式(IV)のポリオキシアルキレンアルキルエーテルにおけるエチレンオキサイドの平均付加モル数nは、1〜20が好ましく、より好ましくは2〜10である。
【0020】
更に好ましいものとして、上記一般式(IV)のポリオキシアルキレンアルキルエーテルにおいて、エチレンオキサイドは狭い付加モル分布でアルコールに付加していることが挙げられる。具体的には、特開平1−164437号公報及び特開2000−61304号公報記載の方法を用いれば、狭いEO付加モル分布をもったポリオキシエチレンアルキルエーテルを容易に得ることができる。これにAOを所定量付加重合することにより、上記一般式(IV)に示す非イオン性界面活性剤が得られる。
【0021】
プロピレンオキサイドの平均付加モル数mは、1〜20が好ましく、より好ましくは2〜10である。
【0022】
具体的な市販品の例として、ソフタノールEPシリーズ(日本触媒社製)、プルラファックシリーズ(BASF社製)、レオックス、レオコン、ライオノールシリーズ(ライオン社製)等が例示できる。ただし、これらに限定されるものではない。
【0023】
これらの(C)成分の合計含有量は、好ましくは、0.1〜20質量%、更に好ましくは、0.5〜10質量%とすることが望ましい。(C)成分の含有量が0.1質量%未満では食器の仕上がりが不十分となる場合があり、一方、20質量%を超えても効果が飽和するので好ましくない。
【0024】
本発明品には漂白活性化剤も用いることができ、漂白活性化剤としては、例えば、テトラアセチルエチレンジアミン(TAED)、テトラアセチルグリコリルウリル、グルコースペンタアセテート、アセトキシベンゼンスルホン酸塩、デカノイルオキシ安息香酸塩、ノナノイルオキシベンゼンスルホン酸塩等が挙げられる。これらは、単独(1種)で又は2種以上を混合して用いることができる。より高い漂白効果の点から、テトラアセチルエチレンジアミン(TAED)が望ましい。
【0025】
漂白活性化剤を用いる場合、食器洗い機用洗浄剤組成物の全量に対して、漂白活性化剤の含有量は、0.1〜10質量%が好ましく、0.5〜5質量%がより好ましい。漂白活性化剤の含有量が上記範囲の下限値未満では充分な漂白効果が得られない場合があり、上記範囲の上限値を超える場合には漂白効果は頭打ちとなり、格段の漂白効果の向上が認められないことがある。
【0026】
漂白活性化剤は貯蔵安定性の点から造粒物として配合されることが好ましい。造粒物の処方については特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば特開2004−210862号公報の段落0010〜段落0011記載の方法が好ましい。
【0027】
〔その他の成分〕
本発明の食器洗い機用洗浄剤組成物には、本発明の効果を妨げない範囲で、上記以外の他の成分を含有させてもよい。他の成分は、用途等に応じて公知の慣用成分を用いることができる。
他の成分の具体例としては、酵素成分、香料、植物抽出エキス、アルコール、食器表面保護剤(アルミン酸ナトリウム等)などが挙げられる。
酵素成分の具体例としてはアミラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ等が挙げられる。酵素成分は、粒子状で用いることが好ましい。
【0028】
食器洗い機用洗浄剤組成物の嵩比重は0.8g/mL以上であり、好ましくは0.9g/mL以上、より好ましくは1.0g/mL以上である。嵩比重を上記範囲とすることにより、特に流動性が良好となる。該嵩比重の上限は特に制限されないが、使用時や詰め替え時の粉体の飛散防止の点からは1.6g/mL以下が好ましく、1.5g/mL以下がより好ましい。
食器洗い機用洗浄剤組成物の安息角は50°以下であり、好ましくは45°以下、より好ましくは40°以下である。前記安息角を上記範囲とすることにより、特に流動性が良好となる。
食器洗い機用洗浄剤組成物のロート流動時間は8秒以下であり、好ましくは7秒以下である。流動時間の下限値は特に限定されないが、好ましくは4秒以上、より好ましくは5秒以上である。
ロート流動時間を上記範囲とすることにより、特にスプーンですくい易く、所定量を計量し易いという使い勝手の良さが向上する。又、詰め替えもし易くなる。
【0029】
食器洗い機用洗浄剤組成物の平均粒子径は200〜600μmであり、好ましい範囲は250〜550μmである。本発明における平均粒子径の値は、下記に記載した測定方法により得られる「質量平均分子量(質量50%)」の値とする。該平均粒子径を、下限値以上とすることにより粉体の凝集が抑えられ、上限値以下とすることにより溶解性が良好となる。
【0030】
〔平均粒子径の測定方法〕
目開き1680μm、1410μm、1190μm、1000μm、710μm、500μm、350μm、250μm、149μm、の9段の篩と受け皿を用いて分級操作を行なった。分級操作は、受け皿に目開きの小さな篩から目開きの大きな篩の順に積み重ね、最上部の1680μmの篩の上から100g/回のベースサンプルを入れ、蓋をしてロータップ型ふるい振盪機((株)飯田製作所製、タッピング:156回/分、ローリング:290回/分)に取り付け、10分間振動させた後、それぞれの篩及び受け皿上に残留したサンプルを篩目ごとに回収する操作を行った。
回収により、粒子径がそれぞれ1410〜1680μm(1410μm.on)、1190〜1410μm(1190μm.on)、1000〜1190μm(1000μm.on)、1000〜710μm(710μm.on)、500〜710μm(500μm.on)、350〜500μm(350μm.on)、250〜350μm(250μm.on)、149〜250μm(149μm.on)、(受け皿)〜149μm(149μm.pass)の各分級サンプルが得られるので、それぞれについて質量を測定し、ベースサンプル(100g)に対する質量頻度(質量%)を算出した。
次に、算出した質量頻度が50質量%以上となる最初の篩の目開きを(a)μmとし、該(a)μmよりも一段大きい篩の目開きを(b)μmとし、受け皿から(a)μmの篩までの質量頻度の積算を(c)%、また(a)μmの篩上の質量頻度を(d)%として、下記数式によって平均粒子径(質量50%)(単位はμm)を求めた。
【数1】

【0031】
食器洗い機用洗浄剤組成物において、粒子径が710μm以上である粒子の割合(以下、粒度分布1ということもある)は12質量%未満であり、好ましくは11質量%以下である。ゼロでもよい。粒度分布1の値を上記範囲とすることにより、特に、良好な溶解性が得られる。
食器洗い機用洗浄剤組成物において、粒子径が180μm未満である粒子の割合(以下、粒度分布2ということもある)は12質量%以下であり、好ましくは11質量%以下である。ゼロでもよい。粒度分布2の値を上記範囲とすることにより、特に粉体の凝集を抑えることができる。
食器洗い機用洗浄剤組成物の平均粒子径および粒度分布は、製造に用いる粉体原料の粒子径の選択や、製造時に篩い分け等の分級操作を行うことにより制御することができる。
【0032】
上記物性を有する本発明の食器洗い機用洗浄剤組成物は、以下の製造方法で製造することができる。
出発原料として、(C)成分を含む液体成分、芒硝とシリコーン消泡剤成分とを含む第1の粉体成分、及び無水ケイ酸を含む第2の粉体成分を用いる。前記液体成分には界面活性剤のほかに、アルコール、香料や植物抽出エキス等のその他の液体成分を、本発明の効果を損なわない範囲で含有させることができる。
【0033】
まず、流動状態にある前記第1の粉体成分に、前記液体成分を添加して混合して液体−粉体混合物を形成する。液体成分の添加方法は限定されるものではないが、液体成分の局在化を回避してより短時間で効率的に均一な液体−粉体混合物を形成せしめるためには噴霧ノズルを用いた混合方式がより好ましい。
具体的には、第1の粉体成分を混合機中に投入し、攪拌しながら前記(C)成分を含む液体成分を噴霧することが好ましい。
混合機は汎用のものを適宜用いることができるが、好ましい範囲の安息角、平均粒子径、粒度分布、ロート流動時間を有する食器洗い機用洗浄剤組成物を得るためには、例えば、リボンミキサー、V型ミキサー、二重円錐型ミキサー等の混合機を用いることが好ましい。
また液体成分の噴霧には通常の噴霧ノズルを用いることができるが、好ましい範囲の安息角、平均粒子径、粒度分布、ロート流動時間を有する食器洗い機用洗浄剤組成物を得るためには、扇形ノズル、充円錐ノズル、空円錐ノズルを用いることが好ましい。
【0034】
次に、液体成分の噴霧終了後、前記第2の粉体成分を投入して攪拌することにより、粉体混合物としての食器洗い機用洗浄剤組成物が得られる。
食器洗い機用洗浄剤組成物に漂白成分および/または酵素を含有させる場合は、第2の粉体成分の投入および攪拌後に、これらを添加して混合することが好ましい。
また、得られた粉体混合物に対して、篩い分け等の分級操作を行って、粗粉及び/または微粉が除去された食器洗い機用洗浄剤組成物を得ることも好ましい。
【0035】
上述の製造方法によれば、上記のような優れた特性を有する本発明の食器洗い機用洗浄剤組成物を製造することができる。
本製造方法においては、まず液体−粉体混合物を形成することにより、第1の粉体成分が液体成分により均一にコートされた状態となり、その後了後、第2の粉体成分を投入して攪拌を行うことにより、液体−粉体混合物表面の液体成分が効率的に第2の粉体成分に移行すると考えられる。本発明者等は、本発明の方法で製造された食器洗い機用洗浄剤組成物において、第2の粉体成分の粒子表面の細孔内に液体成分が浸透(含浸)していることを顕微鏡観察により確認している。
その結果、上記のような優れた特性を有する食器洗い機用洗浄剤組成物が得られるものと考えられる。
また、上述の製造方法により得られる食器洗い機用洗浄剤組成物の特徴として、第1の粉体成分に含まれる粒子どうしの造粒はほとんど生じておらず、芒硝成分を含む粒子、および消泡剤成分を含む粒子のほとんどは、それぞれ別個の粒子とし存在している。このことは、本発明における保存性(耐ケーキング性)、スプーンでのすくい易さ、および計量性の向上に寄与していると考えられる。
【0036】
本発明の食器洗い機用洗浄剤組成物によれば、油洗浄力、スケール洗浄力があり、低泡性が良好で、かつ、保存中のケーキングが生じ難く良好な保存性を有する。また溶解性が良好であるため含有されている洗浄成分による洗浄性能が効率良く発揮され、高い洗浄力が得られる。またスプーンですくい易く、所望の量に計量する操作のし易さ(計量性)も良好である。
【実施例】
【0037】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
以下の実施例および比較例において、物性の測定方法および特性の評価方法は、以下の方法で行った。
【0038】
〔スケール汚れ洗浄力の評価法〕
ガラスコップ(上径63mm、下径53mm、高さ100mm)を自動食器洗い乾燥機に充填し、炭酸ナトリウム1.2gを機内に入れ、洗浄〜すすぎの全行程を30度硬水で行うことにより得られたスケール汚れの付着したコップを自動食器洗い乾燥機「松下電器産業(株)製、機種NP−40SX2」に装填し、調製した組成物6gを使用して標準コース洗浄を行い、仕上がり具合を以下の評価基準に基づいて官能評価した。○以上を合格とする。
評価基準:
◎:白化物は全く残留しておらず、ざらつき等の違和感も感じられない。
○:部分的にかすかに白化物の残留が認められる。
△:白化物の残留が目視で若干認められ、全体的に透明感が失われている。
×:白化物が落ちていない。
【0039】
〔油洗浄力の評価法〕
牛脂/ラード/バター/サラダ油=3/3/3/1の混合油3gとレトルトカレー(ボンカレーゴールド21辛口)6gで汚染したポリプロピレン製弁当箱(縦110mm、横170mm、高さ35mm)を自動食器洗い乾燥機「松下電器産業(株)製、機種NP−40SX2」に装填し、調製した組成物6gを使用して標準コース洗浄を行い、仕上がり具合を以下の評価基準に基づいて官能評価した。○以上を合格とする。
評価基準:
◎:油は全く残留しておらず、ヌルつき等の違和感も感じられない。
○:油の残留は目視では認められないが、触ると若干のヌルつき等の違和感を感じる。
△:油の残留が目視で若干認められる。
×:油がべっとりと残っている。
【0040】
〔低泡性の評価法〕
当該洗浄剤組成物6gを食器洗い機に投入して、5℃の水を用いて標準コースで運転を行った。洗浄開始1分後に運転を止めると同時に扉を開け、15秒後に庫内の泡立ちをスケールで測定した。その際、庫内の3箇所をランダムに選択し、該箇所の泡高(mm)をそれぞれ測定し、その平均値を求めた。10mm以下を合格とする。
【0041】
〔耐ケーキング性の評価法〕
食器洗い機用洗浄剤組成物600g〜800gをスプーン付き容器(160mm×110mm×90mm)に充填した食器洗い機用洗浄剤製品を、45℃、85%RH条件下に1ヶ月保存した後、全量を40×28cm、深さ4.5cm、目開き4.8mmのふるいの上にゆっくりあけ、サンプル全量の質量に対するふるい上の残渣(ケーキング残渣)の質量の割合を算出する。評価基準は以下の通りとし、4点以上を合格とする。
評価基準 :
5点・・・20%未満。
4点・・・20%以上〜40%未満。
3点・・・40%以上〜60%未満。
2点・・・60%以上〜80%未満。
1点・・・80%以上
【0042】
(実施例1〜2、比較例1〜9)
表1および表2に示す配合で食器洗い機用洗浄剤組成物を製造した。配合量は質量%で記載した。製造方法は下記の(イ)を用いた。いずれの製造方法においても、食器洗い機用洗浄剤組成物の調製には(株)吉田製作所製、リボンミキサー1102−1500型(巾900mm×長さ1800mm×深さ1100mm)を用いた。
上記に記載した方法で食器洗い機用洗浄剤組成物の物性および特性を評価した。その結果を表1および表2に記載する。
【0043】
〔製造方法(イ)〕
まず、粉体であるシリコーン消泡剤、および無水芒硝をリボンミキサーに入れ25rpmで攪拌しながら、液体成分である、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、香料、を(株)いけうち製ノズルJPX020を用いて0.4MPaの圧力で噴霧して液体−粉体混合物を調製した。
液体成分の噴霧終了後、該液体−粉体混合物に、粉体である無水ケイ酸を添加して25rpm、10分間混合して粉体混合物を調製した。
さらにこの粉体混合物に過炭酸ナトリウム、テトラアセチルエチレンジアミン、酵素、ポリカルボン酸系高分子を添加して25rpm、5分間混合して食器洗い機用洗浄剤組成物を得た。
【0044】
【表1】

【表2】

表1および表2の共通成分X:
・ローズマリーの水抽出エキス 0.15%
・香料 0.1%
・シリコーン消泡剤 0.3%
・テトラアセチルエチレンジアミン 1%
・アミラーゼ 1%
・プロテアーゼ 1%
・無水ケイ酸 1.5%
【0045】
表1および表2に記載されている各使用原料は以下のものを用いた。
・(A)ポリカルボン酸系高分子
アクリル酸マレイン酸コポリマー;製品名 ソカランCP7、BASF社製
・(B)無機過酸化物
過炭酸ナトリウム;製品名 SPC−G、三菱瓦斯化学社製
・(C)非イオン性界面活性剤
ポリオキシアルキレンアルキルエーテル;製品名 NNAEP−3030、ライオン社製
・(C)の比較品
ポリオキシエチレン(20)ラウリルエーテル;商品名 エマレックス720、日本エマルジョン製
・テトラアセチルエチレンジアミン;製品名 ペラクティブAN、クラリアント社製
・アミラーゼ;製品名 デュラミル120T、ノボザイムズ社製。
・プロテアーゼ;製品名 ピュラフェクトOX6000E、ジェネンコア社製。
・無水ケイ酸;製品名 トクシールNP、トクヤマ社製。
・無水芒硝;製品名 無水芒硝K(2)、日本化学社製。
・ローズマリーの水抽出エキス;製品名 水溶性ローズマリーエキス、豊玉香料社製。
・香料;特開2002−146399号公報の表11〜18に記載の香料組成物。
・シリコーン消泡剤 商品名シリコーンコンパウンド2−4248S、ダウコーニング社製
【0046】
表1および表2の結果より、実施例1〜2においては、スケール洗浄力、油洗浄力、低泡性、耐ケーキング性のいずれにも優れていた。
これに対して、(A)、(B)、(C)成分のすべてもしくはいずれかを配合しなかった比較例1〜8では、スケール洗浄力と油洗浄力と低泡性と耐ケーキング性を同時に達成することはできなかった。
また、(A)/(B)の重量比が0.5より小さい比較例8では、(A)〜(C)成分を含有しているにもかかわらず、良好なスケール洗浄力が得られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は食器洗い機用洗浄剤組成物に関する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)〜(C)成分を含有し、(A)/(B)重量比が0.5以上であることを特徴とする食器洗い機用粒状洗剤組成物。
(A)ポリカルボン酸系高分子化合物 8質量%以上
(B)無機過酸化物
(C)非イオン界面活性剤
【請求項2】
(C)が低泡性の非イオン界面活性剤であることを特徴とする請求項1に記載の食器洗い機用粒状洗剤組成物。
【請求項3】
(A)がマレイン酸/アクリル酸共重合体であることを特徴とする請求項1〜2いずれかに記載の食器洗い機用粒状洗剤組成物。

【公開番号】特開2010−159384(P2010−159384A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−24276(P2009−24276)
【出願日】平成21年1月9日(2009.1.9)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】