説明

食器用洗剤

【課題】 食器用洗剤において、洗浄性を損なうことなく手荒れを防止する手段を提供する。
【解決手段】 下記に示す一般式1に表されるアルカンジオールを食器用洗剤に含有させる。前記アルカンジオールの含有量としては、0.1〜5質量%であることが好ましく、更に、オレイン酸モノグリセリドを含有することが好ましい。前記オレイン酸モノグリセリドの含有量としては、0.1〜5質量%であることが好ましく、前記アルカンジオールとオレイン酸モノグリセリドの質量比は1:2〜2:1であることが好ましい。
【化1】


一般式1
(但し、式中mは3以上8以下の整数を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食器用洗剤に関し、更に詳細には手荒れの防止に有用な食器用洗剤に関する。
【背景技術】
【0002】
食の西欧化に伴い、食事における油脂類の使用量は高まっており、この様な文化的な背景を元に、種々の食器用の洗剤が食器の洗浄には用いられるようになってきている。この様な洗剤の洗浄成分としては、主として硫酸系のアニオン性界面活性剤や脂肪酸アミド系界面活性剤が使用されてきているが、この様な洗浄成分においては、油脂類に対する洗浄作用には優れるものの、手指の皮脂までも除去してしまうため、日常的に使用した場合において手荒れを生じやすい問題が存した。この様な皮脂の除去に伴う手荒れを防止する手段としては、ポリマー類の添加による手指の保護(例えば、特許文献1、特許文献2を参照)や多価アルコール、植物エキスの添加(例えば、特許文献3を参照)等が考案されているが、この様な成分の添加は一面では洗浄性を損なうことが少なくなく、この洗浄性の低下が洗剤使用量の増加を招き、結局添加物の添加が手荒れの改善につながらないような場合が少なくなかった。即ち、食器用洗剤においては、洗浄性を損なうことなく、手荒れを防止する手段の開発が望まれているといえる。
【0003】
一方、下記に示す一般式1に表されるアルカンジオールは、衣服用の洗剤では、溶剤効果を期待して使用されているものの(例えば、特許文献4、特許文献5、特許文献5を参照)、かかる成分を含有する食器用洗剤は知られていないし、この様なアルカンジオールの添加により、洗浄性を損なうことなく手荒れを防止することができることも全く知られていない。
【0004】
【化1】

一般式1
(但し、式中mは3以上8以下の整数を表す。)
【0005】
【特許文献1】特表2004−525225号公報
【特許文献2】特表2001−507003号公報
【特許文献3】特開2005−179438号公報
【特許文献4】特開平11−116987号公報
【特許文献5】特表2002−525440号公報
【特許文献6】特表2002−506491号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、この様な状況下為されたものであり、食器用洗剤において、洗浄性を損なうことなく手荒れを防止する手段を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この様な状況に鑑みて、本発明者らは、食器用洗剤において、洗浄性を損なうことなく手荒れを防止する手段を求めて、鋭意研究努力を重ねた結果、上記一般式1に表されるアルカンジオールを含有せしめることにより、この様な手荒れの防止ができることを見いだし、発明を完成させるに至った。即ち、本発明は以下に示す通りである。
(1)上記に示す一般式1に表されるアルカンジオールを含有することを特徴とする、食器用洗剤。
(2)前記アルカンジオールの含有量が、0.1〜5質量%であることを特徴とする、(1)に記載の食器用洗剤。
(3)更に、オレイン酸モノグリセリドを含有することを特徴とする、(1)又は(2)に記載の食器用洗剤。
(4)前記オレイン酸モノグリセリドの含有量が、0.1〜5質量%であることを特徴とする、(1)〜(3)何れか1項に記載の食器用洗剤。
(5)前記アルカンジオールとオレイン酸モノグリセリドの質量比が1:2〜2:1であることを特徴とする、(1)〜(4)何れか1項に記載の食器用洗剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、洗浄性を損なうことなく手荒れを防止する手段を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(1)本発明の食器用洗剤の必須成分であるアルカンジオール
本発明の食器洗剤は前記一般式1に洗わされるアルカンジオールを含有することを特徴とする。前記一般式1においてmは3〜8の整数を表す。mとしては5〜7の整数であることがより好ましい。これはmが小さすぎると手荒れ防止作用を発現しにくくなり、大きすぎると洗浄性への影響が大きくなる場合が存するためである。具体的なアルカンジオールとしては、例えば、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオール、1,2−ノナンジオール、1,2−デカンジオールが好ましく例示でき、中でも、1,2−ヘキサンジオールと1,2−オクタンジオールがより好ましく例示でき、1,2−オクタンジオールが特に好ましい。かかるアルカンジオールは唯一種を含有させることもできるし、二種以上を組み合わせて含有させることもできる。かかる成分は、洗剤の洗浄性、言い換えれば界面活性能力を損なわずに、手荒れを防止する。ここで手荒れの指標としては、経皮的散逸水分量(TEWL)が例示でき、本発明の食器用洗剤は、食器洗い作業を繰り返し行ってもTEWLの増加率が低い特徴を有する。この様な効果を奏するためには、必須成分であるアルカンジオールを、食器用洗剤全量に対して、総量で0.1〜5質量%、より好ましくは0.2〜3質量%含有することが好ましい。又、かかる成分はこの様な手荒れ抑制作用以外に抗菌性も有するため、副次的効果として、微生物汚染耐性を付与でき、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベンなどのパラベン類を含有しない、パラベンフリーであっても十分な防腐力を付与する作用を有する。この意味でもかかる成分を含有することが好ましい。
【0010】
(2)本発明の食器洗剤の好ましい成分であるオレイン酸モノグリセリド
本発明の食器用洗剤は、オレイン酸モノグリセリド(別名グリセリルモノオレート)を好ましい成分として含有する。かかる成分はグリセリンの3つの水酸基の一つにオレイン酸がエステル結合したものであり、化粧料原料などとして汎用されている。かかる成分は、その基源が種々存するが、ひまわり油を基源とするものを用いることが特に好ましく、この様なひまわり油を基源とするオレイン酸モノグリセリドとしては、コグニスジャパン株式会社より販売されている「モノムラス90−O」が特に好適な市販品として例示できる。かかる成分は、前記アルカンジオールの手荒れ防止効果をより高める作用を有する。この様な効果を奏するためには、かかる成分は、0.1〜5質量%、より好ましくは0.2〜3質量%含有することが好ましい。これは、少なすぎると手荒れ防止増強効果を奏さない場合が存し、多すぎると洗浄性を損なう場合が存するためである。又、かかる成分と前記アルカンジオールとの量比の関係においては、1:2〜2:1であることが好ましく、更に好ましくは2:1〜1:1がより好ましい。これはかかる成分の作用がアルカンジオールの効果の増強であるため、効果発現には、アルカンジオールとの質量比が重要になるためである。
【0011】
(3)本発明の食器用洗剤
本発明の食器用洗剤には、前記成分以外に、通常食器用洗剤で使用される任意成分を含有することができる。任意成分としては、洗浄の主体となる、ポリオキシエチレンが付加されていても良いアルキル硫酸及び/又はその塩、ポリオキシエチレンが付加されていても良いアルキルリン酸及び/又はその塩、ポリオキシエチレンが付加されていても良い脂肪酸ジエタノールアミド、ポリオキシエチレンが付加されていても良い脂肪酸モノエタノールアミド、ポリオキシエチレンが付加されていても良い脂肪酸アミド硫酸及び/又はその塩、ポリオキシエチレンが付加されていても良いスルホコハク酸アルキル硫酸及び/又はその塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンが付加されていても良いソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンが付加されていても良い脂肪酸グリセリル、アルキルグルコシド、アルキルアミンオキシド、脂肪酸アルカリ金属塩などの界面活性剤、エデト酸塩、エチルホスホン酸塩、クエン酸、グルタミン酸酢酸塩、ペンテト酸塩などのキレート剤、グリセリン、ジグリセリン、1,3−ブタンジオールなどの必須成分に分類されない多価アルコールなどが好適に例示できる。本発明の食器用洗剤は、かかる成分と、好ましい成分、必須成分とを常法に従って処理することにより製造することができる。
【0012】
以下に、実施例をあげて、本発明について更に詳細に説明を加えるが、本発明がかかる実施例にのみ限定されないことはいうまでもない。
【実施例1】
【0013】
以下に示す表1に従って、本発明の食器用洗剤を製造した。即ち、処方成分を80℃に加熱し、攪拌可溶化し、攪拌冷却して本発明の食器用洗剤である洗剤1を得た。
【0014】
【表1】

【0015】
<試験例1>
洗剤1の1,2−オクタンジオールを「モノムラス90−O」に置換した比較例1、「モノムラス90−O」を1,2−オクタンジオールに置換した、本発明の食器洗剤である洗剤2、及び、1,2−オクタンジオールを1,3−ブタンジオールに置換した比較例2を、洗剤1と同様に製造し、手荒れに対する作用を確かめた。即ち、1群4人4群計16人のパネラーを用意し、テヴァメーター(インテグラル社製)でTEWLを測定した後、それぞれの洗剤を用いて天ぷら油で汚した30枚の皿を40℃の温水を用いて洗浄してもらい、その後5分に再びTEWLを計測した。(洗浄後のTEWL−洗浄前のTEWL)/(洗浄前のTEWL)×100の式でTEWLの増加率(%)を算出した。各群ごとにTEWLの増加率の平均値を算出した。結果を表2に示す。又、別途洗浄した皿を乾燥させた後に、ヨウ素蒸気に当て、油汚れ部分を発色させ汚れの落ち具合を比較したが、各群に差は見られなかった。これより、本発明の食器用洗剤は洗浄効果を損なうことなく、手荒れを抑制していることがわかる。
【0016】
【表2】

【実施例2】
【0017】
洗剤1の1,2−オクタンジオールを1,2−ペンタンジオール(アルドリッチ社製、試薬グレード)に置換した洗剤3、1,2−ヘキサンジオール(アルドリッチ社製、試薬グレード)に置換した洗剤4及び1,2−デカンジオールに置換した洗剤5を作成し、試験例1の手技で評価した。結果を表3に示す。これより、1,2−オクタンジオールが特に一般式1のアルカンジオールとしては好ましいことがわかる。
【0018】
【表3】

【実施例3】
【0019】
下記の表4に示す処方に従って、実施例1と同様に、本発明の食器用洗剤である洗剤6を製造した。試験例1の手技に従って評価したところ、TEWL増加率は3.3±3.1で、洗剤1と変わりはなく、洗浄力はわずかに損なわれた。これより、アルカンジオールの添加量は5質量%を超える必要がないことがわかった。
【0020】
【表4】

【実施例4】
【0021】
前記洗剤1〜6について、防腐力を調べた。これらの防腐効果を調べた。防腐効果は、これらの化粧料20mlに対し、予備培養後、菌体乃至は分生子をPBSで1×106個/ml(終濃度)になるように菌液を加え、これをトリプトソイ寒天(TSA)培地、サブロー寒天(SDA)培地に20μl播種して、35℃で24〜48時間培養し、コロニー数をカウントした。結果をコロニー数として表5に示す。これより、本発明の洗剤はパラベンフリーであるにもかかわらず、優れた防腐力を有することがわかる。
【0022】
【表5】

【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は、食器用洗剤に応用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記に示す一般式1に表されるアルカンジオールを含有することを特徴とする、食器用洗剤。
【化1】

一般式1
(但し、式中mは3以上8以下の整数を表す。)
【請求項2】
前記アルカンジオールの含有量が、0.1〜5質量%であることを特徴とする、請求項1に記載の食器用洗剤。
【請求項3】
更に、オレイン酸モノグリセリドを含有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の食器用洗剤。
【請求項4】
前記オレイン酸モノグリセリドの含有量が、0.1〜5質量%であることを特徴とする、請求項1〜3何れか1項に記載の食器用洗剤。
【請求項5】
前記アルカンジオールとオレイン酸モノグリセリドの質量比が1:2〜2:1であることを特徴とする、請求項1〜4何れか1項に記載の食器用洗剤。

【公開番号】特開2007−161739(P2007−161739A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−355684(P2005−355684)
【出願日】平成17年12月9日(2005.12.9)
【出願人】(398041018)株式会社シーアンドジー (2)
【出願人】(000113470)ポーラ化成工業株式会社 (717)
【Fターム(参考)】