説明

食物利用率を改良するための調製物

【課題】ヒトおよび動物における食物摂取量の減少および食物利用率の改良のための調製物、およびそれらの製造方法の提供。
【解決手段】カレンジュラ油を含有する食品調製物、食物調製物、または医薬調製物。カレンジュラ油には共役トランス/シス−オクタデカトリエン酸であるカレンジュラ酸(calendulic acid)を含有する。該調製物には、さらに、共役リノール酸(CLA)、リポ酸および/またはカルニチンを含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共役トランス/シス-オクタデカトリエン酸を含む食品調製物、栄養素調製物、または薬剤調製物、およびそれらの製造方法に関する。本発明に係る調製物は、好ましくは、カレンジン酸(calendic acid)を含む。本発明はまた、ヒトおよび動物において食物摂取量を減少させたり、ヒトおよび動物において食物利用率を改良したり、身体組成を変化させたりするための該調製物の使用、栄養素摂取量を減少させる方法、および本発明に係る調製物を含むキットに関する。
【背景技術】
【0002】
脂肪酸およびトリグリセリドは、食品産業、動物への栄養供給、化粧品および医薬品の分野において、多くの用途を有する。遊離の飽和もしくは不飽和脂肪酸であるかまたは高含有量の飽和もしくは不飽和脂肪酸を有するトリグリセリドであるかに応じて、それらは多種多様な用途に適合する。たとえば、不飽和脂肪酸を含有する脂質とくに多価不飽和脂肪酸を含有する脂質の含有量が高いことは、動物およびヒトにおいて栄養面で重要である。なぜなら、これらは、たとえば、血中のトリグリセリドレベルまたはコレステロールレベルに有益な影響を及ぼし、心臓疾患のリスクを低下させるからである。不飽和脂肪酸は、種々のダイエット食品または医薬品に使用される。
【0003】
とくに価値がありかつ需要の多い不飽和脂肪酸は、共役不飽和脂肪酸である。共役多価不飽和脂肪酸は、他の多価不飽和脂肪酸と比較していくら希少な物質である。
【0004】
CLAは、炭素原子8、9、10、または11の共役二重結合系により識別されるリノール酸の位置異性体および構造異性体に対する集合名である。これらの位置異性体にはそれぞれ、幾何異性体が存在する。すなわち、シス-シス体、トランス-シス体、シス-トランス体、トランス-トランス体が存在する。とくに、生物学的に最も活性な異性体を有するC18:2 cis-9, trans-11 CLASおよびC18:2 trans-10, cis-12 CLASは、癌を予防することが動物実験で証明され、抗動脈硬化作用を有し、ヒトおよび動物において体脂肪含有量を減少させるので、とくに興味深い。商業的には、CLAは、現在、主に遊離脂肪酸として市場に出されている。
【0005】
ヒトの場合、CLAの最も重要な天然源は、主に動物性脂肪である。たとえば、ウシ(Chin, Journal of Food Composition and Analysis, 5, 1992:185-197)やヒツジのような反芻動物の脂肪さらにまた乳製品は、非常に高いCLA濃度を有する。ウシでは、脂肪中の含有量が2.9〜8.9mg/gであることが見いだされている。これとは対照的に、植物油、マーガリン、および非反芻動物由来の脂肪では、脂肪中のCLA濃度は0.6〜0.9mg/gにすぎない。
【0006】
【化1】


いくつかの有益な効果がCLAで見いだされている。たとえば、共役リノール酸を投与すると、ヒトおよび動物において体脂肪が減少し、動物において体重1キログラムあたりの飼料要求率が増加する(WO 94/16690、WO 96/06605、WO 97/46230、WO 97/46118)。また、共役リノール酸の投与は、たとえば、アレルギー(WO 97/32008)、糖尿病(WO 99/29317)、または癌(Banni, Carcinogenesis, Vol. 20, 1999: 1019-1024, Thompson, Cancer, Res., Vol. 57, 1997: 5067-5072)に有益な影響を及ぼす。また、「栄養価を増大させる」ために、ならびに成長および脳の発達を確実に行えるようにする必須の構成要素として、多価不飽和脂肪酸がベビーフードに添加される。
【0007】
CLAには、上述したように、非常に広範にわたる有益な栄養的効果がある。しかしながら、CLAが有意な量で存在するのは、天然では反芻動物およびミルク、チーズのようなその産物に限られる。したがって、とくに、これらの動物性脂肪の供給が不十分であるかまたは合成調製物の価格が高すぎる低開発地域においてバランスのとられた健康的な栄養供給が確実に行えるように、これらの動物源に由来するCLAの代替物がおおいに必要とされている。しかしながら、それと同時に、健康上よくないと考えられる飽和脂肪酸の割合を低下させるために、先進地域では肉および乳製品の消費量が減少してきている。しかしながら、このことはまた、「健康によい」CLAの摂取が減少することを意味する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、CLAを含む調製物と同じように有利な栄養的効果のある代替調製物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
我々は、この目的が本発明の根底をなす実施形態により達成されることを見いだした。
【0010】
したがって、本発明は、共役トランス/シス-オクタデカトリエン酸を含む食品調製物、食品補助剤調製物、動物用飼料調製物、または薬剤調製物に関する。
【0011】
本発明の根底をなす驚くべき発見は、共役トランス/シス-オクタデカトリエン酸とくにカレンジン酸を食物に添加すると、食物摂取量を減少させても体重の減少が観測されないことである。すなわち、共役オクタデカトリエン酸を食物に添加すると、食物利用率は著しく改良される。本明細書中では、「オクタデカトリエン酸」という用語または「カレンジン酸」という用語には、遊離酸だけでなく塩およびエステルならびに無毒の誘導体も包含される。好ましくは、この用語には、以下に記載されているように、無毒の塩あるいはグリセリドとくにトリグリセリドまたはエチルエステルもしくはメチルエステルが包含される。
【0012】
驚くべきことに、共役トランス/シス-オクタデカトリエン酸とくにカレンジン酸を添加することにより、身体組成の変化を観測することができることも見いだした。カレンジン酸を添加すると動物体において体脂肪含有量が減少することを見いだした。
【0013】
したがって、本発明はさらに、調製物に共役トランス/シス-オクタデカトリエン酸を添加することを含む、食品調製物、食品補助剤調製物、動物用飼料調製物、または薬剤調製物の製造方法に関する。好ましくは、該トランス/シス-オクタデカトリエン酸は、t10, c12配置を有する。
【0014】
したがって、とくに好ましい実施形態では、該トランス/シス-オクタデカトリエン酸は、カレンジン酸である。カレンジン酸は、t8, t10, c12配置を有するC18:3脂肪酸である。
【0015】
【化2】


したがって、それは共役トランス/シス-オクタデカトリエン酸である。実施例においてトウモロコシ油を用いる比較実験により示されるように、カレンジン酸は、カレンジュラ油(calendula oil)を飼料に添加したとき本発明によりマウスで食物摂取量の減少および飼料利用率の改良が観測されることに関与している脂肪酸である。カレンジン酸の化学調製については、US 3,356,699に記載されている。カレンジン酸は、天然では、たとえばCalendula officinalisで生産される(Earle et al., Lipids, 1, 1964: 325-327, Takagi et al., Lipids, 17, 1981: 716-723, Ul'chenko et al., Lipids of Calendula officinalis, Chemistry of Natural Compounds, 34, 1998: 272-274)。カレンジン酸の合成に関する生化学研究については、Crombie et al., J. Chem. Soc. Chem. Commun., 15, 1984: 953-955およびJ. Chem. Soc. Perkin Trans., 1, 1985: 2425-2434に見いだしうる。
【0016】
他の共役トランス/シス-オクタデカトリエン酸は、リノレン酸を含有する油を化学修飾することにより、たとえば、アマニ油、ダイズ油、または大麻油から生成させることができる。
【0017】
本発明に係る調製物は、たとえば、食物においてまたは動物を肥育する場合、食品または飼料添加剤としてとりわけ好適である。すなわち、カレンジン酸は、たとえば、摂食挙動にも有利な影響を及ぼすヒトの体重の減少のために、ダイエットを支援するためのカロリー摂取量の減少と組合せてまたは単独で使用することができる。消費された食品の利用率を改良すれば、栄養素消費量が減少するので、とくに、食糧不足にある低開発地域または極限状況(疾患、エネルギー消費量の多いスポーツ)に有利であると考えられる。さらに、有利なことに、身体組成の変化とくに体内の脂肪含有量の減少を達成することが可能である。
【0018】
また、本発明に係る調製物は、とくに飼料の量または動物の脂肪含有量を減少させるために、動物への栄養供給において経済的にも生態学的にも有利に使用することができる。現在、食物の脂肪含有量に社会の大きな関心が寄せられている。肉の飽和脂肪酸と血中コレステロール含有量との関係が疑われるので、低脂肪食物が注目されている。したがって、たとえば、とくに本発明により、動物の脂肪含有量を減少させる方法に大きな関心がもたれる。
【0019】
一実施形態では、共役トランス/シス-オクタデカトリエン酸またはカレンジン酸は、カレンジュラ油として調製物中に存在する。
【0020】
「カレンジュラ油」とは、カレンジン酸を含有する脂肪酸混合物を意味するものとする。好ましくは、カレンジュラ油中のカレンジン酸の含有率は、約30%、より好ましくは50%、さらにより好ましくは60%、70%、80%、または90%である。最も好ましいのは、95%以上の含有率である。これに関連して、たとえば、脂肪酸の鹸化および脂肪酸からメチルエステルへの変換を行った後、ガスクロマトグラフィーによりカレンジン酸含有率を決定することができる。カレンジン酸のほかに、カレンジュラ油には、リノール酸、パルミチン酸などの種々の他の飽和もしくは不飽和脂肪酸が含まれている可能性がある。とくに製造方法に依存して、カレンジュラ油中の種々の脂肪酸の含有率は変化する可能性がある。各脂肪酸パターン、とくに、植物材料から油を製造するときに生成される脂肪酸パターンは、本発明の調製物に包含され、上記のカレンジュラ油含有量を有する。好ましくは、カレンジュラ油は異なる脂肪酸の変動が少なく、カレンジュラ油中の異なる脂肪酸の数は少ない。
【0021】
さらなる実施形態では、該調製物は他の添加剤を含む。「添加剤」とは、栄養供給または健康に有利な他の添加物、たとえば、「栄養素」、「食物添加剤」、または「活性化合物」を意味するものとする。動物もしくはヒトへの栄養供給または処置のために調製物に1種以上の添加剤を含有させることが可能であり、そして調製物をそれらで希釈したりそれらと混合したりすることができる。添加剤は、飼料、食品、食品補助剤、または薬物と共にまたは別に投与することができる。食品調製物、食品補助剤調製物、動物用飼料調製物、または薬剤調製物は、動物またはヒトへの栄養供給に有害であると考えられる添加剤はいかなる量であっても含有しない。
【0022】
「栄養素」とは、ヒトまたは動物への栄養供給に有利な添加剤を意味するものとする。したがって、好ましくは、本発明に係る調製物はまた、ビタミン、たとえば、ビタミンA、B1、B2、B6、B12、C、D3、および/またはE、葉酸、ニコチン酸、タウリン、カルボン酸、たとえば、トリカルボン酸、シトレート、イソシトレート、トランス/シス-アコニテート、および/またはホモシトレート、酵素、たとえば、フィターゼ、カロテノイド、ミネラル、たとえば、P、Ca、Mg、Mn、および/またはFe、タンパク質、炭水化物、脂肪、アミノ酸、および/または微量元素Snを含有する。またピルビン酸、L-カルニチン、リポ酸、補酵素Q10、アミノカルボン酸たとえばクレアチンを調製物に含有させることもできる。「活性化合物」とは、薬剤としての本発明に係る調製物の使用を支援する物質、または障害の処置、とくに、癌、糖尿病、AIDS、アレルギー、および心臓血管疾患の処置に役立つ作用を有する物質を意味するものとする(以下も参照されたい)。したがって、本発明に係る調製物はまた、保存剤、抗生物質、抗微生物添加剤、酸化防止剤、キレート化剤、不活性ガス、生理学的に無害な塩などを含有することができる。調製物に添加することが可能でありかつ薬剤、動物用飼料、食品補助剤、または食品添加剤としてのそれぞれの用途に好適である添加剤については、当業者であれば、熟知しているかまたは先行技術で公知の簡単な試験により決定することができる。
【0023】
「食物添加剤」とは、食物組成物としてまたは食物を支援する調製物として本発明に係る調製物を使用するのに必要とされる添加剤を意味するものとする。食物中の不要な物質の代替物として食物添加剤を機能させることもできる。そのような食物添加剤は、たとえば、カロリーを減少させた調製物で役に立つ。食物添加剤の例は、たとえば、ビタミン、ミネラル、微量元素、または電解質である。存在させうるビタミンは、たとえば、ビタミンA、B、D、E、K、チアミン、リボフラビン、ナイアシン、ビタミンB6、葉酸、ビタミンB12、ビオチン、パントテン酸(pantheonic acid)、ビタミンC、コリンである。ミネラルは、たとえば、カルシウム、リン、マグネシウムである。微量元素には、鉄、ヨウ素、亜鉛、フッ素、銅、マンガン、セレン、クロム、モリブデンが包含される。電解質は、たとえば、カリウム、ナトリウム、塩素である。存在させうる他の物質は、アミノ酸とくに必須アミノ酸である。好ましくは、食物添加剤を含む調製物は、飽和脂肪酸に関連した脂肪が少なく、コレステロールが低減されている。以下では、これを「食物組成物」と呼ぶ。食物組成物はまた、人工脂肪、たとえば、スクロースポリエステル(Olestra)、脂肪代用物、たとえば、炭水化物、および低カロリーのタンパク質、たとえば、カサリン(casarin)をベースとした濃縮タンパク質、ダイズタンパク質、またはデンプンの加水分解生成物、たとえば、マルトデキストリン、またはセルロースゲル、または糖代用物、たとえば、糖アルコールなどの成分を含有することができる。食物組成物はまた、それぞれの食物を支援する1種以上の添加剤、たとえば、食欲抑制剤、消化促進物質、または強力甘味剤を含有することができる。強力甘味剤は、たとえば、アセスルファーム、アスパルテーム、サッカリン、タウマチン、シクラメートである。消化促進物質は、たとえば、消化酵素(パンクレアチン)、食物繊維である。食欲抑制剤は、たとえば、SibutraminまたはXenicalである。
【0024】
「添加剤」はまた、酸化防止剤をも意味するものとする。酸化防止剤は、たとえば、脂肪酸の二重結合の酸化を防止するのに有利である。しかしながら、酸化防止剤は一般に健康増進作用があることも知られている。たとえば、動物に栄養供給する場合、エトキシキンが酸化防止剤として使用され;そのほかに、γおよびα-トコフェロール、トコトリエノール、ローズマリー抽出物、天然に存在するポリフェノール、たとえば、フラボノイド、イソフラボン、およびカロテノイドも使用される。
【0025】
さらなる実施形態では、当該調製物は、他の多価不飽和脂肪酸(PUFA)を含む。「脂肪酸」とは、16〜22の偶数の炭素原子を有する非分枝状カルボン酸を意味するものとする。本発明に係る「不飽和脂肪酸」とは、少なくとも2つの二重結合を有する脂肪酸を意味するものとする。「共役不飽和脂肪酸」とは、互いに共役した少なくとも2つの二重結合を有する不飽和脂肪酸を意味するものとする。好ましくは、調製物は、ω-3脂肪酸、たとえば、α-リノレン酸、ドコサトリエン酸、ドコサヘキサエン酸、ドコサペンタエン酸、および/またはエイコサペンタエン酸、ジモルフェコール酸(dimorphecolic acid)、パリナリン酸、および/または共役リノレン酸を含有する。該オクタデカトリエン酸とくにカレンジン酸を含有する油中の不飽和脂肪酸の含有率は、好ましくは30%、より好ましくは40%、さらにより好ましくは50%、60%、70%、80%、または90%である。最も好ましいのは、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の含有率である。
【0026】
とくに好ましい実施形態では、調製物は共役リノール酸(CLA)を含む。CLAと組合せた結果として、観測される食物摂取量の減少および/または食物利用率の改良が増大する可能性がある。このような組み合わせは、癌、アレルギー、糖尿病、および/または心臓血管疾患、たとえば動脈硬化症を処置するための薬剤を製造するのに有利なこともある。
【0027】
本発明に係る調製物は、固体の形をとることが可能であり、好ましくは、たとえば、水もしくは油または液体に自由に溶解可能である。調製物は、用途に応じて、たとえば、動物への栄養供給のために、食品添加剤として、または薬剤として、適切な剤形を有する。そのような剤形は、たとえば、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、糖衣剤、溶液剤、栄養素の規定された/バランスのとれた食物、たとえば、経腸処方物および乳児への栄養供給用の調製物、非経口栄養供給用の脂肪エマルジョン剤である。それぞれの用途に有利な調製物の剤形は当業者に公知である。脂肪酸とくに本発明に係る共役トランス/シスオクタデカトリエン酸、好ましくはカレンジン酸は、遊離の形態、無毒の塩とくにアルカリ金属塩の形態、またはエステル化された形態をとることが可能である。それらはエチルエステルもしくはメチルエステル、グリセリドとくにトリグリセリド、またはリン脂質の形態をとることが好ましい。好ましいトリグリセリドは、位置異性体が特定された構造化トリグリセリドであり、とくに好ましいのは、共役トランス/シスオクタデカトリエン酸がS2に存在しかつ他の短鎖脂肪酸がS1およびS3に存在するトリグリセリドである。グリセリドという用語には、好ましくはC1〜C22脂肪酸を含有するモノ、ジ、およびトリグリセリドが包含される。
【0028】
着香剤を該調製物に添加することもできる。
【0029】
食品では、調製物を慣用的な食品成分と組合せることができる。こうした食品成分には、植物製品だけでなく動物製品も包含され、とくに糖、適切であればシロップの形態の糖、果実調製物、たとえば、フルーツジュース、花蜜、果肉、ピューレ、または乾燥果実;穀物製品および該穀物のデンプン;乳製品、たとえば、乳タンパク質、乳清、ヨーグルト、レシチン、およびラクトースが挙げられる。さらなる添加剤については、たとえば、Park, Lipids, 32, 1997, p. 853に記載されている。
【0030】
一実施形態では、本発明に係る調製物は、動物への栄養供給に使用するのに好適であり、たとえば飼料添加剤を含む。「飼料添加剤」とは、粉塵挙動、流動性、吸水能、および保存安定性のような製品の性質を改良するのに役立つ物質を意味するものとする。そのような飼料添加剤および/またはそれらの混合物の例としては、ラクトースやマルトデキストリンなどの糖をベースにしたもの、粗びきトウモロコシ穂軸、コムギふすま、ダイズ粕などの穀物またはマメ科植物の製品をベースにしたもの、ミネラル塩、とくにカルシウム塩、マグネシウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩をベースにしたもの、さらにまたD-パントテン酸またはその塩自体(化学的にまたは発酵により調製されるD-パントテン酸の塩)を挙げることができる。
【0031】
本発明はさらに、該オクタデカトリエン酸とくにカレンジン酸または他の添加剤を生産する生物を不活性量、生存可能量、および/または増殖量で含む調製物に関する。好ましくは、これらは、微生物、好ましくは、真菌、酵母、および/または細菌である。とくに好ましくは、本発明に係る動物用飼料は、Mucor属の真菌、Saccharomyces属の酵母、および/または細菌、たとえば、E. coliのようなEnterobacteriaceae、Salmonella typhimuriumのようなSalmonellae、Proteus vulgaris、Pseudomonas matophilaのようなPseudomonads、Bacillus subtilisもしくはBacillus cereusのようなBacillaceae、Corynebacterium glutamicumのようなコリネ型細菌群、またはBrevibacterium breveおよび/またはActinum mycetalis、ならびに/あるいはそれらの混合物を、不活性量、生存可能量、および/または増殖量で含む。なかでもとくに好ましいのは、Bacillus属の細菌、その場合にはBacillus subtilis種の細菌である。また、本発明に係る調製物の生産に好適な遺伝子改変生物および/またはトランスジェニック生物および/または生産株は、本発明に包含される。本発明は以上に列挙したものに限定されるものではない。共役トランス/シス-オクタデカトリエン酸とくにカレンジン酸を個別にまたは飼料に組合せて投与する場合、活性化合物は、純物質としてまたは慣用的な飼料成分と共に物質もしくは液体エキスもしくは固体エキスの混合物として投与される。慣用的な飼料成分の例は次のとおりである:トウモロコシ、オオムギ、コムギ、エンバク、ライムギ、ライコムギ、モロコシ、コメおよび糠、セモリナふすまおよびこれらの穀物の粉、ダイズ、ダイズ抽出粕のようなダイズ製品、ナタネ、ナタネ抽出粕、綿実および抽出粕、ヒマワリの種、ヒマワリの種の抽出粕、アマニ、アマニ抽出粕、油料種子搾油粕、ソラマメ、エンドウマメ、グルテン、ゼラチン、タピオカ、酵母、単細胞タンパク質、魚粉、塩、ミネラル、微量元素、ビタミン、アミノ酸、油/脂肪など。有利な組成物については、たとえば、Jeroch, H. et al. Ernaehrung landwirtschaftlicher Nutztiere (Farm animal nutrition), UTBに記載されている。
【0032】
さらに好適な添加剤については、Park, Lipids, 32, 1997, p. 853に記載されている。
【0033】
本発明に係る調製物は、粉末、顆粒、ペレット、被覆押出物、および/またはそれらの組合せとして存在することができる。コーティング化合物を利用することにより本発明に係る動物用飼料の調製物は、粉塵挙動、流動性、吸水能、および保存安定性のような製品の性質を改良するのに役立つ。そのような調製物は、先行技術で広く知られている。たとえば、動物への栄養供給を行う場合、数キロの固体凝集形状を保持する混合物の集塊が使用される。
【0034】
動物用食物は、それぞれの動物種に対する栄養素必要量を最適に満たすように構成される。一般的には、選択される粗タンパク質源は、コーンミール、コムギミールまたはオオムギミール、ダイズ全粒粉、ダイズ抽出粕、アマニ抽出粕、ナタネ抽出粕、緑色粉すなわち粉砕エンドウマメのような植物飼料成分である。飼料中の適切なエネルギー含有量を確保するために、ダイズ油または他の動物性もしくは植物性脂肪が添加される。植物タンパク質源には不十分な量のいくつかの必須アミノ酸が含まれるにすぎないので、多くの場合、飼料はアミノ酸で強化される。これらは主にリシンおよびメチオニンである。家畜にミネラルおよびビタミンが確実に供給されるように、これらもまた添加される。添加されるミネラルおよびビタミンのタイプおよび量は、動物種に依存し、当業者には公知である(たとえば、Jeroch et al., Ernaehrung landwirtschaftlicher Nutztiere, Ulmer, UTBを参照されたい)。栄養素およびエネルギーの必要量を満たすように、互いに必要量を満たす比で栄養素をすべて含む完全飼料を使用することができる。これは、その動物専用の飼料を形成する。他の選択肢として、補助飼料を穀物飼料に添加することができる。補助飼料は、タンパク質、ミネラル、およびビタミンに富んだ飼料混合物であり、穀物飼料を補足するのに有用である。また、本発明により飼料利用率を改良できることは、とくに動物に栄養供給する場合に有利である。したがって、実施例またはCLAに関する先行技術に記載されているように、動物への栄養供給を改良すべく本発明を使用することが可能であり、高いコストを節約することができる。
【0035】
このほか、本発明は、薬剤である本発明に係る調製物に関する。カレンジン酸で観測されたように食物変換率を改良することにより、たとえば疾病により衰弱したヒトまたは動物の場合、回復期間をより短くすることができる。また、本発明に係る調製物は、身体組成を変化させるために使用することもできる。とくに、脂肪含有量の減少を達成することができる。このほか、たとえば、身体でTNFなどのサイトカイニンの排泄量が増大したときに生じる体タンパク質の消失を防止する調製物が必要とされている。
【0036】
驚くべきことに、カレンジン酸はCLAと類似の性質を有すると考えられる。したがって、本発明に係る調製物を用いて製造された薬剤は、癌、心臓血管疾患、たとえばアテローム性動脈硬化症(MacDonald, J. J. American College of Nutrition, (2000) 19, 111S-118S)、糖尿病(WO 99/29317)、アレルギーを処置するために、および障害に伴うときの治療食に、使用することもできる。
【0037】
この場合、たとえば、化学療法や体重の減少を伴う比較的長期にわたる疾病の後、身体の形成を速めて回復過程を支援または加速するように該調製物を使用することが有利である。
【0038】
このほか、薬剤は、他の活性化合物たとえば上記のまたは他の化合物を含有することができる。活性化合物は、癌、心臓血管疾患たとえば動脈硬化症、糖尿病、アレルギーを処置するために、および食物を支援したりまたは本発明に係る調製物の作用を増強したりするために、使用することができる。糖尿病を処置するための薬剤としては、たとえば、インスリン、スルホニル尿素、スルホンアミド、リポ酸、γ-グルコシダーゼ阻害剤、チアゾリジンジオン、メトホルミン、および/またはアセチルサリチル酸を挙げることができる。癌は、たとえば、ビンカアルカロイドのような細胞増殖抑制剤、クロラムブシル、メルファラン、チオ-TEPA、シクロホスファミドなどのアルキル化剤を添加することにより、アミノプテリンもしくはメトトレキセートのような葉酸類似体により、またはシクロホスファミドやアザチオプリンなどの免疫抑制剤、プレドニゾロンのようなグルココルチコイド、シクロスポリンを添加することにより処置される。HIV感染症すなわちAIDSは、たとえば、逆転写酵素阻害剤および/またはプロテアーゼ阻害剤を投与することにより処置することができる。アレルギーは、たとえば、クロモグリケート(cromoglyxate)などを用いてマスト細胞を安定化させることにより、H1-抗ヒスタミン剤などでヒスタミンレセプターを遮断することにより、またはα-交感神経興奮剤、アドレナリン、β2-交感神経興奮剤、テオフィリン、イプラトロピウム、もしくはグルココルチコイドなどのようにアレルギーメディエーターの機能性アンタゴニストにより、処置される。心臓血管疾患は、凝固阻害剤、ACE阻害剤、スタチンやフィブレートのようなコレステロール降下剤、ナイアシン、およびコレスチラミンを用いて処置される。
【0039】
薬剤は、薬学的適合しうる担体を含むことができる。薬学的適合しうる好適な担体の例は先行技術で公知であり、生理学的に無害な塩たとえばリン酸緩衝食塩水、水、エマルジョン剤たとえば油/水エマルジョン剤、無菌溶液などが包含される。無菌溶液は、たとえば水性または非水性溶液であってよい。水溶液は、たとえば、水、アルコール/水溶液、乳濁液、または懸濁液であり、塩化ナトリウム溶液、Ringerデキストロース、デキストロース、塩化ナトリウムなどが包含される。非水性溶液の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、有機エステルたとえばオレイン酸エチルである。このほか、薬剤は、上記の好適な添加剤のうちの1つを含むことができる。薬剤は、従来の手順で経口的または非経口的(皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内)に投与することができる。それらはまた、蒸気またはスプレーを用いて鼻腔/咽腔を介して投与することができる。
【0040】
用量は、患者の年齢、状態、および体重ならびに適用のタイプに依存する。一般的には、活性化合物の一日用量は、経口投与の場合、約0.05〜100mg/kg体重、非経口投与の場合、約0.01〜20mg/kg体重である。とくに好ましいのは、0.5〜50mg/kgである。
【0041】
新規な化合物は、従来の医薬用剤形の固体または液体の状態で、たとえば、錠剤、フィルム錠剤、カプセル剤、粉剤、顆粒剤、糖衣剤、坐剤、溶液剤、ローション剤、クリーム剤、またはスプレー剤として使用することができる。注射剤に用いられる溶液剤または懸濁剤に滅菌水を添加してもよい。これらの剤形は、従来の手順で製造される。この場合、錠剤結合剤、充填剤、保存剤、錠剤崩壊剤、粘度調整剤、皮膚軟化剤、湿潤剤、分散剤、乳化剤、溶媒、遅延剤、酸化防止剤、および/または噴射剤ガスのような慣用的な医薬助剤と共に活性化合物を処理することができる(H. Sucker et al.: Pharmazeutische Technologie [Pharmaceutical technology], Thieme-Verlag, Stuttgart, 1991参照)。得られた剤形は、カレンジン酸またはカレンジュラ油をはじめとする活性化合物を、通常0.1〜90重量%の量で含む。
【0042】
本発明に係る調製物とくに本発明に係る薬剤または食物組成物は、たとえば、カレンジン酸を含む植物または微生物から粗抽出物を生成しそれを製剤化することにより製造することができる。薬剤または食物組成物の標準的製造方法については、当業者であれば熟知している。
【0043】
さらなる実施形態では、本発明に係る調製物は、食物組成物であってよく;ヒトまたは動物の脂肪含有量を減少させるために該食物組成物を使用することが有利なこともある。食物組成物は、上記の食物添加剤またはその他の栄養素もしくは添加剤を含むことができる。好適な添加剤は、たとえば、食物繊維、キトサン、カルニチン、コリン、カフェイン、またはアミノ酸、たとえば、チロシン、バリン、ロイシン、トレオニン、トリプトファン、メチオニン、アルギニン、ヒスチジン、もしくはグルタミンなどの必須アミノ酸である。目的に応じて、使用するカレンジン酸などの共役トランス/シスオクタデカトリエン酸の量を適合させなければならない。使用するカレンジン酸の量は、たとえば、食物に添加される脂肪の量の0.01%または0.1%にすることができる。また好ましいのは、0.5%、1%、2%または3%、5%または10%のカレンジン酸である。これはまた、他の脂肪酸にも適用することができる。
【0044】
さらに、本発明に係る調製物は、ヒトまたは動物において、食物摂取量を減少させたり、身体組成を変化させたり、食物利用率を改良したりするために使用することができる。とくに、本発明に係る調製物は、体タンパク質含有量に関連した脂肪含有量を減少させるために使用することができる。
【0045】
動物では、とくに肥育する場合、食物利用率を改良することは有利である。食物摂取量が少し減少しただけでも、飼料コストが顕著に減少しうる。好ましくは、飼料消費量を、1%または2%、さらにより好ましくは3%、さらにより好ましくは5%、10%、またはそれ以上減少させることができる。
【0046】
脂肪含有量を減少させるために、供給される脂肪分を共役トランス/シス-オクタデカトリエン酸で置換える。好ましくは、供給された脂肪中の共役トランス/シス-オクタデカトリエン酸の含有率は、30%の脂肪からなるエネルギー摂取量すなわち約70〜90gの脂肪/日に基づいて、少なくとも0.1〜50重量%、好ましくは0.5〜30重量%、より好ましくは1〜20重量%である(Referenzwerte fuer die Naehrstoffzufuhr [Reference Values for Nutrient Supply], 2000, Deutsche Gesellschaft fuer Ernaehrung, Umschau Braus GmbH Verlagsgesellschaftに記載されている)。
【0047】
さらなる実施形態では、本発明は、食物の脂肪担体に共役トランス/シス-オクタデカトリエン酸とくにカレンジン酸を添加することを含む、食物への本発明に係る調製物の添加方法に関する。
【0048】
本発明に係る調製物を製造するための種々の製造方法が当業者に公知である。使用する出発物質は、たとえば植物材料であってもよい。カレンジュラ油は、たとえば、Calendula officinalis(マリゴールド)の種子から得ることができる。表2は、マリゴールドの種子から得られるさまざまなカレンジュラ油の脂肪酸パターンがその製造方式に依存して変化することを示している。そのような変化は本発明の調製物に含まれると考えられる。カレンジュラ油は、たとえば高い殻含有率を有する種子または殻を除いた種子を圧搾することにより、植物種子から得ることができる。圧搾粕を繰返し圧搾することもできる。カレンジン酸を含有する任意の植物から得られる植物種子または植物の他の部分、たとえば、葉、塊茎、茎、花、果物などを使用することができる。植物全体を使用することもできる。Calendula officinalisは高いカレンジン酸含有量を有していることが知られており、したがって、カレンジュラ油の生産にとくに好適である。しかしながら、カレンジン酸さらにはカレンジュラ油もまた、合成により製造することもできる(米国特許第3,356,694号)。
【0049】
ウィッティヒ反応またはメタセシスによる二重結合の選択的導入により、カレンジン酸を調製することもできる。他の選択肢として、オクタデカトリエン酸を含有する油からカレンジン酸を調製することもできる。150℃でプロピレングリコールを用いて、これらのオクタデカトリエン酸を共役させることができる。
【0050】
NaHSO4またはKHSO4の存在下でオクタデカトリエン酸の二重結合位置で異性化させることにより、カレンジン酸またはそのエステルを調製することができる。この反応は、脱水ヒマシ油についてDE 114 16 90に記載されているように行なうことができる。
【0051】
CLAの調製方法と類似の方法で、オクタデカトリエン酸を含有する油からカレンジン酸を調製することができる:たとえば、一方法では、リノール酸含有油の異性化は、150℃においてプロピレングリコール中でKOHを用いて行われる。ごく低い含有率で不要の異性体を有する遊離のCLA酸が得られる(EP-839897)。有利な方法では、触媒量(0.3〜1%)の塩基(カリウムアルコキシド)を用いて、リノール酸のアルキルエステルを異性化させることができ、その場合には高純度のCLAアルキルエステルが得られる(DE-1156788およびDE-1156789)。共役脂肪酸およびそのエステルは、たとえばNaHSO4またはKHSO4の存在下で、二重結合位置で異性化させることができる。DE-1141690も参照されたい。
【0052】
また、CLAと対比して多くの共役トランス/シス-オクタデカトリエン酸とくにカレンジン酸が植物中で合成されることが有利である。植物は、簡単にかつ大量に育成することが可能であるため、たとえばカレンジュラ油またはカレンジン酸を生産するための安価な資源である。とくに、栄養提供および給餌にたいへん重要な植物種、たとえば、種々の穀物種、ジャガイモ、イネ、トウモロコシなどを、たとえばカレンジン酸を合成するように形質転換させることができる。こうすれば、単なる基本食料品により、集団への包括的供給を達成することができるという利点が得られるであろう。一方、特定の油生産植物種、たとえば、ナタネ、ダイズ、ルリジサ、オリーブ、アマニ、ヒマワリなどを、大量のカレンジュラ油を生産するようにまたはそれらからカレンジン酸が単離されるように、形質転換することができる。
【0053】
微生物、たとえば、thraustochytriuinまたはschizochytrium株、Phaeodactylum tricornutumまたはCrypthecodinium種のような藻類、StylonychiaまたはColpidiumのような繊毛虫、Mortierella、Entomorphthora、またはMucorのような真菌もまた、共役トランス/シス-オクタデカトリエン酸とくにカレンジン酸を生産するのに好適である。株の選択により、PUFAをはじめとするいくつかの望ましい化合物を生産し当該脂肪酸または油の生産にも好適である対応する微生物のいくつかの突然変異株が育成されている。とくに、たとえばデサチュラーゼまたはエロンガーゼをコードする核酸分子を用いる好適な形質転換により、微生物を生産することができる。
【0054】
カレンジュラ油もしくはカレンジン酸、他のPUFA、および/または本発明に係る調製物中に存在するたとえばビタミンなどの添加剤は、合成的に調製するかまたは生物とくに微生物および植物から上述したように単離することができる。カレンジン酸、他のPUFA、およびいくつかの他の当該成分たとえばビタミンを単離するために、とくに、1つ以上の当該成分を過剰発現/過剰合成するように形質転換されたトランスジェニックな微生物または植物が好適である。たとえば、当該成分は、Calendula stellata、Osteospermum spinescensまたはOsteospermum hyoseroidesのような植物、藻類、渦鞭毛虫、または真菌のような他の真核生物から単離することが可能である。本発明に係る調製物は、当該成分を合成する生物からの粗抽出物、およびこれらの抽出物の他の分取処理物、たとえば、乾燥、蒸留、分別などの処理物を包含しうる。粗抽出物とは、供給源の最小分取処理物であり、たとえば、カレンジン酸を合成する植物の葉を乾燥させたり、培養物などから合成性微生物をペレット化したりすることにより得られる処理物である。植物および植物の一部分(種子、葉など)もまた、食物に直接または濃厚形態(サイレージ、乾草)で添加することができる。
【0055】
植物または微生物で生産された発明に係る共役シス/トランス-オクタデカトリエン酸を仕上げ処理する必要がない場合、たとえば、食物摂取に直接供される植物で生産される場合、またはチーズ、ヨーグルト、ビールの製造などの発酵プロセスに使用される微生物で生産される場合、とくに有利である。したがって、本発明はまた、そのような植物に関する。とくに、トランスジェニックな実用植物、たとえば、トウモロコシ、イネ、穀物、ジャガイモ、またはカレンジン酸を生産するトランスジェニックな油生産植物、たとえば、アマニ、ヒマワリ、オリーブ、あるいは天然のカレンジン酸含有率が古典的もしくはトランスジェニックな交配により増大された植物である。
【0056】
さらなる実施形態では、本発明はまた、本発明に係る調製物を含むキットに関する。1つ以上の容器に調製物をパッケージ化することができる。本発明に係る調製物の構成成分とくにカレンジュラ油またはカレンジン酸をキットの容器に別々にまたは一緒にパッケージ化することができる。キットは、本発明に係る方法を実施するために使用することができ、それを実施するための説明書を含むことができる。
【0057】
本明細書の本文には種々の文献が引用されている。文献(製造業者の説明書および明細書を含む)のそれぞれは、参照により本明細書に組み入れられるものとする。しかしながら、このことは、該文献のすべてが実際に本発明の先行技術であることを意味するものではない。
【0058】
以下の実施例および図面により本発明について説明するが、これらになんら限定されるものではない。
【実施例】
【0059】
動物、食物、および身体組成の分析
6週齢の雄および雌のICRマウスをCharles Riverから入手した。24匹の動物(12 w/m)を、それぞれの実験グループにランダムに割当てた。4匹の動物からなるグループについて、25℃および相対湿度60%で動物を飼育した。Park, Y. Lipids 1997; 32, 853-858に記載されているように、半合成飼料を調製した。この飼料は次の成分を含んでいた:スクロース、カゼイン、トウモロコシデンプン、5.5%トウモロコシ油、ミネラルおよびビタミンミックス、ならびにエトキシキン(100ppm)。実験飼料では、トウモロコシ油を適切な量の粗製カレンジュラ油(BiRo, Sommerschenburg, Germany)で置換えた。
【表1】


【0060】
使用したカレンジュラ油には、約62%のカレンジン酸が含まれていた(トリグリセリドとして)。カレンジュラ油の脂肪酸組成を表2に示す。
【表2】


【0061】
対照飼料を用いる1週間の適応期間の後、4週間にわたる実験を行った。体重および飼料摂取量を毎週測定した。研究終了時、動物を屠殺し、肝臓、心臓、および肺臓のような内臓および器官を除去した。空の胴体を液体窒素中で冷凍し、ホモジナイズし、そして標準的方法(LUFA Speyer)により、乾燥重量、タンパク質、脂肪、および灰分を決定した。
【0062】
4匹の動物からなるグループについて、体重、飼料摂取量、および飼料利用率を計算し、結果を平均で示した。飼料にカレンジン酸を使用したことにより、体重増加に影響することなく(図1)、研究対象のマウスの飼料摂取量が減少した(図2)。飼料摂取量減少に対する用量依存的影響が雄の動物で観測された。飼料利用率も、用量依存的に雄の動物で著しく改良された(図3)。類似の傾向が雌の動物で観測された(図3)。観測された飼料摂取量の減少は、カレンジン酸を投与した後、飼料利用率が改良された結果であった(図4)。動物は通常の体重増加を保持することができた(図3)。
【0063】
実施例2:
身体組成に及ぼすカレンジン酸の影響
5〜6週齢の雄および雌のICRマウスをCharles Riverから入手した。18匹の動物(9 m/w)を、それぞれの実験グループにランダムに割当てた。3匹の動物からなるグループについて、20℃において12時間の明/暗周期で動物を飼育した。Park, Lipids 1997; 32: 853-858[コピーを入手されたい]に記載されているように、半合成飼料を調製した。この飼料は次の成分を含んでいた:スクロース、カゼイン、トウモロコシデンプン、DL-メチオニン、5.5%の植物油の混合物(その結果、飼料は全脂質の0.6%のリノレン酸および3%のリノール酸を含有する)、ミネラルおよびビタミンミックス、ならびにエトキシキン(0.1g/kg)。実験飼料では、植物油をその量に対応する量のカレンジン酸で置換えた。ここでは、カレンジン酸は、エチルエステルとして存在し、カレンジュラ油(BiRo, Sommerschenburg, Germany)から得たものであった。
【表3】


【0064】
対照飼料による1週間の適応期間の後、6週間にわたる実験を行った。体重および飼料摂取量を毎週測定した。研究終了時、動物を屠殺し、肝臓、心臓、および肺臓のような内臓および器官を除去した。空の胴体を液体窒素中で冷凍し、ホモジナイズし、そして標準的方法により、脂肪、タンパク質、および灰分の含有率を決定した。
【0065】
結果
2つのグループの体重の変化は同等であった。しかしながら、動物の身体組成、とくに体脂肪含有率には、顕著な差異があった。
【0066】
カレンジン酸は、実験動物の脂肪含有率を著しく減少させた。この影響は、雌の動物よりも雄の動物のほうが大きかった:
【表4】


【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】カレンジン酸で処置した後の体重の変化を示している。
【図2】カレンジン酸で処置した後の雌および雄のマウスの飼料摂取量を示している。
【図3】カレンジン酸で処置した後の雌および雄のマウスの飼料利用率を示している。
【図4】カレンジン酸で処置した後の雌のマウスの体脂肪および体タンパク質の組成を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトまたは動物において食物摂取量を減少させて体内の脂肪含有量を減少させるための、カレンジン酸を含む組成物。
【請求項2】
ヒトまたは動物において食物利用率を改良するための、カレンジュラ油を含む組成物。
【請求項3】
カレンジュラ油がカレンジン酸を含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
組成物が他の多価不飽和脂肪酸をさらに含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
薬学的に適合しうる担体をさらに含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
栄養素、食物添加剤、活性化合物および酸化防止剤からなる群から選択される1種以上の添加剤をさらに含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
薬剤としての本発明に係る調製物の使用を支援する物質、または障害の処置を支援する物質の群から選択される1種以上の活性化合物をさらに含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
カレンジュラ油と、さらに共役リノール酸(CLA)、リポ酸および/またはカルニチンを含む、ヒトまたは動物において食物摂取量を減少させて体内の脂肪含有量を減少させるための組成物。
【請求項9】
カレンジン酸を少なくとも30%含有し、さらにリポ酸、共役リノール酸(CLA)および/またはカルニチンを含有する脂肪酸混合物を含む、ヒトまたは動物において食物摂取量を減少させて体内の脂肪含有量を減少させるための食品調製物、食品補助剤調製物または動物用飼料調製物。
【請求項10】
カレンジュラ油を含む組成物を動物用飼料に加えることを含む、動物において食物摂取量を減少させて体内の脂肪含有量を減少させるための方法。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物を含むキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−132721(P2009−132721A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−306944(P2008−306944)
【出願日】平成20年12月2日(2008.12.2)
【分割の表示】特願2002−557224(P2002−557224)の分割
【原出願日】平成14年1月16日(2002.1.16)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】