説明

食物繊維と希少糖を含む生体機能改善組成物。

【課題】 食物繊維と希少糖のそれぞれが持つ欠点を補い、かつ新しい生体機能改善をも有する組成物を作り出すこと。
【解決手段】 食物繊維と、希少糖を有効成分として含有する生体機能改善組成物。食物繊維を組成物全体の1重量%以上、希少糖および/またはその誘導体を組成物全体の2重量%以上含有する。希少糖は、D-プシコースおよび/ またはその誘導体である。生体機能改善は、肝機能、血糖値、血清脂質値、体重増加、および内臓脂肪蓄積の一以上の改善である。食物繊維は水溶性食物繊維である。食物繊維は難消化性デキストリンである。上記いずれかに記載の生体機能改善組成物を含有する飲食品、健康食品、医薬品、医薬部外品、口腔用組成物、または化粧品。上記いずれかに記載の生体機能改善組成物を配合することを特徴とする飲食品、健康食品、医薬品、医薬部外品、口腔用組成物、または化粧品の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食物繊維と希少糖の組み合わせの応用技術に関するものである。より詳細には、食物繊維と希少糖、特にD-プシコースを有効成分とする生体機能改善組成物ならびにこれらを含む飲食品、健康食品、医薬品、医薬部外品、口腔用組成物、化粧品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の高まる健康ブームや特定保健健診など社会的な要請により、種々の生体機能を改善する飲食品や薬品が求められている。近年、日本においても食生活の欧米化および生活習慣の変化に伴い、糖尿病、高脂血症、高血圧、肥満などの生活習慣病が増加している。それらの疾病の予防を目的として特定保健用食品をはじめとするさまざまな健康食品の需要が高まっており、食品の生理機能があらためて注目を集めている。特に食物繊維は整腸作用、食後血糖上昇抑制作用を中心とする生理作用を有する事が知られており、食品の機能を高める素材としてよく利用されている。
【0003】
食物繊維には水溶性と不溶性があり、それぞれ物性および生理作用が異なる。セルロース、ヘミセルロースなどの不溶性食物繊維は、大腸において資化され難く、水分を含んで糞便中に排泄されるため、便量の増加、消化管の通過時間短縮などの生理作用を有する。水溶性食物繊維は、水に溶解した際の粘度が高いペクチン、サイリウム、グアーガムなどと、水に溶解しても粘度がない難消化性デキストリンやポリデキストロースなどに分けられる。粘度の高い水溶性食物繊維は、消化管内でゲルを形成するため、拡散阻害による栄養素の吸収遅延を起こす。例えば、糖の吸収遅延は血糖値の上昇を抑制し、それに伴いインスリンの過剰分泌を抑制する効果を発現する。毎食後の血糖値及びインスリン分泌をコントロールすることにより、長期的には耐糖能の改善、脂質代謝の改善が期待される。さらに、脂質の吸収遅延は食後中性脂肪値の上昇を抑制し、脂質代謝に影響を及ぼす。また、消化管の通過時間の短縮、排便量の増加より胆汁酸の排泄が促進され、体内のステロールグループが減少し、血清中のコレステロールが低下するなどの効果も現れる。しかし、粘度の高い食物繊維を食品に有効量添加することは、その食品の味、食感、形状などに影響を及ぼすため困難であり、利用される食品が限られていた。
【0004】
一方、水溶性の低粘性食物繊維では、澱粉を原料として製造される難消化性デキストリン(食物繊維含有デキストリン)が知られており、焙焼デキストリンにα−アミラーゼを作用させて難消化性デキストリンを製造する方法(特許文献1)、焙焼デキストリンにα−アミラーゼにつづいて、グルコアミラーゼを作用させ、クロマト分画で食物繊維分を採取して食物繊維高含有デキストリンを製造する方法、クロマト分画前にトランスグルコシダーゼを作用させて食物繊維の含有率を高める方法(特許文献2)などが開発されている。難消化性デキストリンは、食品に添加しやすい物性であるため広範囲の食品に食物繊維素材として利用されている。また、生理作用に関しては、整腸作用(特許文献3)、砂糖などの食品に添加することによる、食品に肥満、耐糖能障害の予防(特許文献4)、インスリン分泌の抑制(特許文献5)、血清脂質成分の低下作用(特許文献6)、高血圧低下作用(特許文献7)があり、特定保健用食品をはじめとする健康食品にも利用されている。
【0005】
このように食物繊維は、特定保健用食品として、整腸や食後血糖値の改善などの実績があり、一方希少糖は、活性酸素産生抑制作用、臓器虚血保護作用、糖尿病予防作用、動脈硬化防止作用など、医薬品、機能性食品、化粧品など人体への応用のみならず、他の動物、昆虫、微生物などへの応用、さらには植物への応用のほか、工業材料としての応用が注目されている。
希少糖のうち、D-プシコースに関して、低カロリー(非特許文献1)、血糖値改善(特許文献8、非特許文献2)、動脈硬化改善効果(特許文献8)などの報告があることから、生活習慣病予防素材や生体機能改善剤として期待されている。
しかしながら、これらを併用した場合の生体機能の改善を報告したものはこれまでなされていない。
【0006】
【特許文献1】特開平2−145169号
【特許文献2】特開平2−154664号
【特許文献3】特許第2007645号
【特許文献4】特開平6−166622号
【特許文献5】特許第2007644号
【特許文献6】特許第2007646号
【特許文献7】特許第2019839号
【特許文献8】再表03/097820号公報
【非特許文献1】J. Nutr .Sci. Vitaminol. 48, 77-80.
【非特許文献2】J. Nutr. Sci. Vitaminol.59, 191-121.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
食物繊維は広く食品業界で用いられているものであるが、多量に摂取すると下痢、嘔吐などの副作用を示すため摂取容量を制限しなくてはならないという問題点を持つ。また、希少糖D-プシコースにおいても、摂取容量が多い場合、代謝する量も多くなるため良好な生理作用を期待しつつ摂取量を減らす工夫が必要であった。
そこで、本発明は、これらの物質のそれぞれが持つ欠点を補い、かつ新しい生体機能改善をも有する組成物を作り出すことを目的とする。具体的には、希少糖および/ またはその誘導体を有効成分として含有する生体機能改善組成物を提供することを目的とする。より具体的には、D-プシコースおよび/ またはその誘導体を有効成分として含有する生体機能改善組成物を提供することを目的とする。
さらにまた、本発明は、食物繊維と希少糖、より具体的にはおよび/ またはその誘導体を含む生体機能改善組成物を含有する飲食品、医薬品もしくは医薬部外品、口腔用組成物、または化粧品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決すべく、鋭意研究を重ねてきた。その中で、食物繊維と希少糖を含む組成物が、肝機能、血糖値、血清脂質値、体重増加、内臓脂肪蓄積を改善する効果を持つこと、さらに、両物質を併用することにより、それぞれの含有量が個々に用いた場合より低含有量で効果を奏するものとすることができることを発見し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、食物繊維と、希少糖および/ またはその誘導体を有効成分として含有する生体機能改善組成物を要旨とする。
【0009】
また、本発明は、食物繊維と、希少糖および/ またはその誘導体を有効成分として、食物繊維を組成物全体の1重量%以上、希少糖および/またはその誘導体を組成物全体の2重量%以上含有する生体機能改善組成物含有する生体機能改善組成物を要旨とする。
【0010】
希少糖および/ またはその誘導体が、D-プシコースおよび/ またはその誘導体であり、その場合、本発明は、食物繊維と、D-プシコースおよび/ またはその誘導体を有効成分として含有する、好ましくは食物繊維を組成物全体の1重量%以上、D-プシコースおよび/またはその誘導体を組成物全体の2重量%以上含有する生体機能改善組成物を要旨とする。
【0011】
生体機能改善が、肝機能、血糖値、血清脂質値、体重増加、および内臓脂肪蓄積の一以上の改善であり、その場合、本発明は、食物繊維と、希少糖および/ またはその誘導体、好ましくはD-プシコースおよび/ またはその誘導体を有効成分として含有する、好ましくは食物繊維を組成物全体の1重量%以上、希少糖および/またはその誘導体を組成物全体の2重量%以上含有する、生体機能改善が、肝機能、血糖値、血清脂質値、体重増加、および内臓脂肪蓄積の一以上の改善である生体機能改善組成物を要旨とする。
【0012】
食物繊維が水溶性食物繊維、好ましくは難消化性デキストリンであり、その場合、本発明は、水溶性食物繊維、好ましくは難消化性デキストリンと、希少糖および/ またはその誘導体、好ましくはD-プシコースおよび/ またはその誘導体を有効成分として含有する、好ましくは水溶性食物繊維を組成物全体の1重量%以上、希少糖および/またはその誘導体を組成物全体の2重量%以上含有する生体機能改善組成物、具体的には生体機能改善が、肝機能、血糖値、血清脂質値、体重増加、内臓脂肪蓄積の改善である生体機能改善組成物を要旨とする。
【0013】
また、本発明は前記のいずれかに記載の生体機能改善組成物を含有する飲食品、健康食品、医薬品、医薬部外品、口腔用組成物、または化粧品を要旨とする。
【0014】
さらにまた、本発明は前記のいずれかに記載の生体機能改善組成物を配合することを特徴とする飲食品、健康食品、医薬品、医薬部外品、口腔用組成物、または化粧品の製造方法を要旨とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、広く食品業界で使われている食物繊維と希少糖、好ましくはD-プシコースおよび/またはその誘導体を併用することによって、生体機能的にお互いの短所を軽減するのみならず、長所を伸ばし、特に肝機能改善などに関しては相乗的な作用も認められる組成物およびその製造方法を提供することができる。
そして、本発明によれば、良好な生理作用を奏しつつ、多量に摂取すると下痢、嘔吐などの副作用を示す食物繊維の摂取容量を減じることができ、同じく、摂取容量が多い場合に代謝する量も多くなるなどのD-プシコースおよび/またはその誘導体の摂取容量を減じることができる。さらに、本発明によれは、現在まだ高価であるD-プシコースおよび/またはその誘導体の使用量を減じることができる。
さらにまた、本発明によれば、食物繊維と希少糖、好ましくはD-プシコースおよび/またはその誘導体を含む飲食品、医薬品、医薬部外品、口腔用組成物、または化粧品、ならびに、その製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
[食物繊維]
本発明で用いられる食物繊維としては、ポリデキストロース、アルギン酸ナトリウム、ペクチン、難消化性デキストリン等の水溶性食物繊維や、セルロース、リグニン、ヘミセルロース等の不溶性食物繊維等、またはこれらの酵素処理することにより得られる食物繊維、または天然にこれらの食物繊維を含むものなどが挙げられるが、特に限定されるものではない。
食物繊維には水に不溶性の食物繊維と水溶性の食物繊維がある。水に不溶性のものとしてはセルロース、小麦ふすま、アップルファイバー、さつまいもファイバー、キチンなどが例示される。水溶性のものとしてはさらに高粘性物と低粘性物に大別され、高粘性物としてはペクチン、コンニャクマンナン、アルギン酸、グアーガム、寒天など、低粘性物としては難消化性デキストリン、ポリデキストロース、グアーガム分解物などが例示される。日本国内で一般に知られている食物繊維の内、低粘性の水溶性食物繊維とは、50重量%以上の食物繊維を含有し、常温水に溶解して低粘性の溶液、おおむね5重量%水溶液で20mPas以下の粘度を示す溶液となる食物繊維素材を指称する。具体的には、難消化性デキストリン、グアーガム加水分解物、ライテス、ヘミセルローズ由来の物などが挙げられるが、この他にも低粘性、水溶性の条件を満たす食物繊維素材は何れも包含される。
【0017】
難消化性デキストリンは、澱粉を加熱、酵素処理して得られるもので、食物繊維の平均分子量が500から3000程度、グルコース残基がα−1,4、α−1,6、β−1,2、β−1,3、β−1,6−グルコシド結合し、還元末端の一部はレボグルコサン(1,6−アンヒドログルコース)である、分岐構造の発達したデキストリンである。「パインファイバー」、「ファイバーソル2」(松谷化学工業株式会社製)の商品名で市販されていて、詳しくは”食品新素材フォーラム”NO.3(1995、食品新素材協議会編)に記載されている。
【0018】
グアーガム加水分解物は、「サンファイバー」(太陽化学社)、「ファイバロン」(大日本製薬社)の商品名で、ヘミセルロース由来の物は「セルエース」(日本食品化工社)の商品名で市販されているし、「ライテス」(ファイザー社)はブドウ糖とソルビットより構成される食物繊維の商品名である。これらは何れも詳しくは上記の”食品新素材フォーラム”に記載されている。これ等について、さらに詳しく述べれば、以下の通りである。
【0019】
難消化デキストリンについては、各種の澱粉、例えば馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、コーンスターチ、小麦粉澱粉等を130℃以上で加熱分解し、これをアミラーゼで更に加水分解し、常法に従って、必要に応じ脱色、脱塩して製造したものである。平均分子量は1400〜2500好ましくは2000前後のデキストリンであり、その他物性としては水溶性、低粘性、低甘味である。
グアーガムの加水分解物はグアーガムを酵素により加水分解したもので、その性状は通常低粘性で冷水可溶、水溶液は中性で無色透明である。
ヘミセルロース由来の物は、通常コーンの外皮からアルカリで抽出し、精製して製造されたもので、平均分子量は約20万と大きいが、5%水溶液の粘度は10cps程度と低く、水に溶けて透明な液になる。
ライテスはブドウ糖とソルビトールをクエン酸の存在下で液圧加熱して重合させ、精製したもので水溶性で低粘性である。
これら低粘性の水溶性食物繊維の中でも、本発明の組成物としては難消化性デキストリンが最も効果的で好ましい。
【0020】
[希少糖]
希少糖とは、自然界に微量にしか存在しない単糖および糖アルコールと定義づけることができる。
六炭糖(ヘキソース)については、アルドースの場合はL-アロース、L-グロース、L-グルコース、L-ガラクトース、L-アルトロース、L-イドース、L-マンノース、L-タロース、D-タロース、D-マンノース、D-イドース、D-アルトロース、D-ガラクトース、D-グルコース、D-グロース、D-アロースの16種類、ケトースの場合はL-プシコース、L-ソルボース、L-フルクトース、L-タガトース、D-タガトース、D-フルクトース、D-ソルボース、D-プシコースの8種類が存在し、自然界に多量に存在する単糖は、D-グルコース、D-フラクトース、D-ガラクトース、D-マンノース、D-リボース、D-キシロース、L-アラビノースの7種類あり、それ以外の単糖は全て希少糖である。
D-プシコースは天然に微量ではあるが存在する単糖であって、これら希少糖はヒトに対する毒性の報告はなく、動物に対する毒性は低いと考えられる。
また、単糖類を還元すると、アルデヒド基およびケトン基はアルコール基となり、炭素原子と同数の多価アルコールとなる。ある出発化合物から分子の構造を化学反応により変換した化合物を出発化合物の誘導体と呼称することから、糖アルコールは糖誘導体である。
L-アルトリトール、L-グリトール、L-グルシトール、L-ガラクチトール、L-アルトリトール、L-イディトール、L-マンニトール、L-タリトール、D-タリトール、D-マンニトール、D-イディトール、D-アルトリトール、D-ガラクチトール、D-グルシトール、D-グリトール、D-アリトールが存在する。なお、ポリオール(糖アルコール)の場合は、二種類の名前として表示するが180度回転させると重なることからも同一物質である。D-グルシトールとL-グリトール、 L-タリトールとL-アルトリトール、D-グリトールとL-グルシトール、D-アルトリトールとD-タリトール、L-アリトールとD-アリトール、 L-ガラクチトールとD-ガラクチトールが同一物質である。自然界にはD-ソルビトール(D-グルシトール)が比較的多いがそれ以外のものは量的には少ないので、これらも広義の希少糖と考えられる。
【0021】
[D-プシコース]
D-プシコースは希少糖のうち、現在大量生産ができている希少糖である。D-プシコースは、希少糖に属するケトヘキソースに分類されるプシコースのD体であり六炭糖(C6H12O6)である。D-プシコース甘味は上品で爽やかで、サッカリンのような苦みや渋みを伴う不快感はなく、むしろフラクトースの甘味に類似している。甘味度は蔗糖の約70%である。
D-プシコースに関しては、現在フラクトースを酵素(エピメラーゼ)処理して得られる製法が一般的であるが、天然物から抽出される、もしくは天然物中に含まれるものをそのまま用いても良い。
D-プシコースを製造するに際し、精製酵素を使っても良いし、該酵素を生産する微生物でも良い。さらにケトヘキソース3−エピメラーゼは、フラクトースなどのケトヘキソースの3位のOHを異性化する酵素で、D-タガトース3−エピメラーゼやD-プシコース3−エピメラーゼを用いる方法も知られている(文献:特許第3333969号、非特許文献2)。また、精製酵素または、該酵素生産微生物を固定化した固定化酵素、固定化微生物でも良い。
本発明で用いるD-プシコースの誘導体について説明する。ある出発化合物から分子の構造を化学反応により変換した化合物を出発化合物の誘導体と呼称する。D-プシコースを含む六炭糖の誘導体には、糖アルコール(単糖類を還元すると、アルデヒド基およびケトン基はアルコール基となり、炭素原子と同数の多価アルコールとなる)や、ウロン酸(単糖類のアルコール基が酸化したもので、天然ではD-グルクロン酸、ガラクチュロン酸、マンヌロン酸が知られている)、アミノ糖(糖分子のOH基がNH基で置換されたもの、グルコサミン、コンドロサミン、配糖体などがある)などが一般的であるが、それらに限定されるものではない。
D-プシコースの誘導体としては、その糖アルコール、ウロン酸、アミノ糖などが好ましいものとして例示される。
【0022】
[配合割合]
また、本発明が提供する生体機能改善組成物にあっては、食物繊維と、希少糖および/ またはその誘導体を配合することを特徴とする。かかる食物繊維の配合は、一緒に摂取する希少糖および/ またはその誘導体と共に生体機能的にお互いの短所を軽減するのみならず、長所を伸ばし、特に肝機能改善などに関しては相乗的な作用も認められる。
【0023】
本発明の組成物の具体的態様は、食物繊維と希少糖および/ またはその誘導体を含み、好ましくは、食物繊維1重量%以上、希少糖および/ またはその誘導体2重量%以上(以下、重量%を単に%と記載する。)含む、肝機能改善や、肥満などの生活習慣病を予防できる生理作用を示す組成物である。
本発明の生体機能改善組成物は、例えば難消化性デキストリンの摂取量が、1日に取るべき食物繊維量15〜21gのうち、不足しているといわれ留量が5〜9gであることから、1日当たりの量として2000〜8000mgになるように用いることができる。
あるいはD-プシコースおよび/またはその誘導体の投与量は、経口投与の場合、成人に対しD-プシコースとして、1日量0.3〜50gを摂取するように用いることができる。
【0024】
本発明の組成物および製造法の概略を説明すると、その成分である食物繊維とD-プシコースおよび/ またはその誘導体の混合物であり、各成分を混合して得られる。混合方法は、ミキサーによる撹拌や、振盪など特に方法は問わない。
【0025】
このようにして得られた組成物は、目的や好みにより、他の生理活性成分や甘味料と併用混合して使用することもできる。
【0026】
本発明の組成物において、食物繊維およびD-プシコースの割合は、目的とする機能の度合い、使用態様、コスト等により適宜調整することができる。
【0027】
本発明の組成物は、食物繊維とD-プシコースを含有するもので、肝機能、血糖値、血清脂質値、体重増加、内臓脂肪蓄積の改善効果を有する。
食物繊維とD-プシコースの含有率は、食物繊維が全体の1%以上およびD-プシコースが全体の2%以上で、動物実験におけるラットの生体機能の改善効果を有する。
【0028】
本発明の組成物は、食品、保健用食品、患者用食品、食品素材、保健用食品素材、患者用食品素材、食品添加物、保健用食品添加物、患者用食品添加物、飲料、保健用飲料、患者用飲料、飲料水、保健用飲料水、患者用飲料水、薬剤、製剤原料、飼料、患畜および/または患獣用飼料になど、生体機能の改善効果を必要とするものすべてに使用することができる。
【0029】
本発明の組成物を食品に利用する場合、そのままの形態、オイルなどに希釈した形態、乳液状形態食、または食品業界で一般的に使用される担体を添加した形態などのものを調製してもよい。飲料の形態は、非アルコール飲料またはアルコール飲料である。非アルコール飲料としては、例えば、炭酸系飲料、果汁飲料、ネクター飲料などの非炭酸系飲料、清涼飲料、スポーツ飲料、茶、コーヒー、ココアなど、また、アルコール飲料の形態では薬用酒、酎ハイ、梅酒、ビール、発泡酒、第3ビールなどの一般食品の形態を挙げることができる。
本発明の組成物の、前記生体作用改善を目的とした食品素材あるいは食品添加物としての使用形態としては、錠剤、カプセル剤、飲料などに溶解させる粉末あるいは顆粒などの固形剤、ゼリーなどの半固形体、飲料水などの液体、希釈して用いる高濃度溶液などがある。
さらに、本発明の組成物を適宜食品に添加して生体機能改善などを目的とした保健食または病人食とすることができる。任意的成分として、通常食品に添加されるビタミン類、炭水化物、色素、香料など適宜配合することができる。食品は液状または固形の任意の形態で食することができる。ゼラチンなどで外包してカプセル化した軟カプセル剤として食することができる。カプセルは、例えば、原料ゼラチンに水を加えて溶解し、これに可塑剤(グリセリン、D-ソルビトールなど)を加えることにより調製したゼラチン皮膜でつくられる。
【0030】
本発明の組成物は甘味料と同様な用途でも用いることができる。また、調理やお茶、コーヒー、調味料(みりんなど)などにも使用できる。
【0031】
飲食物としては、具体的には以下のものを例示することができる。洋菓子類(プリン、ゼリー、グミキャンディー、キャンディー、ドロップ、キャラメル、チューインガム、チョコレート、ペストリー、バタークリーム、カスタードグリーム、シュークリーム、ホットケーキ、パン、ポテトチップス、フライドポテト、ポップコーン、ビスケット、クラッカー、パイ、スポンジケーキ、カステラ、ワッフル、ケーキ、ドーナツ、ビスケット、クッキー、せんべい、おかき、おこし、まんじゅう、あめなど)、乾燥麺製品(マカロニ、パスタ)、卵製品(
マヨネーズ、生クリーム)、飲料( 機能性飲料、乳酸飲料、乳酸菌飲料、濃厚乳性飲料、果汁飲料、無果汁飲料、果肉飲料、透明炭酸飲料、果汁入り炭酸飲料、果実着色炭酸飲料)、嗜好品(緑茶、紅茶、インスタントコーヒー、ココア、缶入りコーヒードリンク)、乳製品(アイスクリーム、ヨーグルト、コーヒー用ミルク、バター、バターソース、チーズ、発酵乳、加工乳)、ペースト類(マーマレード、ジャム、フラワーペースト、ピーナッツペースト、フルーツペースト、果実のシロップ漬け)、畜肉製品(ハム、ソーセージ、ベーコン、ドライソーセージ、ビーフジャーキー、ラード)、魚介類製品(
魚肉ハム、魚肉ソーセージ、蒲鉾、ちくわ、ハンペン、魚の干物、鰹節、鯖節、煮干し、うに、いかの塩辛、スルメ、魚のみりん干し、貝の干物、鮭などの燻製品)、佃煮類(小魚、貝類、山菜、茸、昆布)、カレー類(
即席カレー、レトルトカレー、缶詰カレー)、調味料剤(みそ、粉末みそ、醤油、粉末醤油、もろみ、魚醤、ソース、ケチャップ、オイスターソース、固形ブイヨン、焼き肉のたれ、カレールー、シチューの素、スープの素、だしの素、ペースト、インスタントスープ、ふりかけ、ドレッシング、サラダ油)、揚げ製品(油揚げ、油揚げ菓子、即席ラーメン)、豆乳、マーガリン、ショートニングなどを挙げることができる。
【0032】
上記飲食物は、組成物を常法に従って、一般食品の原料と配合することにより、加工製造することができる。上記飲食物への組成物の配合量は食品の形態により異なり特に限定されるものではないが、通常は0.1〜50重量%が好ましい。
【0033】
上記飲食物は、機能性食品、栄養補助食品或いは健康食品類としても用いることができる。その形態は、特に限定されるものではなく、例えば、食品の製造例としては、アミノ酸バランスのとれた栄養価の高い乳蛋白質、大豆蛋白質、卵アルブミンなどの蛋白質、これらの分解物、卵白のオリゴペプチド、大豆加水分解物などの他、アミノ酸単体の混合物などを、常法に従って使用することができる。また、ソフトカプセル、タブレットなどの形態で利用することもできる。
【0034】
栄養補助食品或いは機能性食品の例としては、糖類、脂肪、微量元素、ビタミン類、化剤、香料などが配合された流動食、半消化態栄養食、成分栄養食、ドリンク剤、カプセル剤、経腸栄養剤などの加工形態を挙げることができる。上記各種食品には、例えば、スポーツドリンク、栄養ドリンクなどの飲食物は、栄養バランス、風味を良くするために、更にアミノ酸、ビタミン類、ミネラル類などの栄養的添加物や組成物、香辛料、香料、色素などを配合することもできる。
【0035】
本発明の組成物は、家畜、家禽、ペット類の飼料用に応用することができる。例えば、ドライドッグフード、ドライキャットフード、ウェットドッグフード、ウェットキャットフード、セミモイストドックフード、養鶏用飼料、牛、豚などの家畜用飼料に配合することができる。飼料自体は、常法に従って調製することができる。
これらの治療剤および予防剤は、ヒト以外の動物、例えば、牛、馬、豚、羊などの家畜用哺乳類、鶏、ウズラ、ダチョウなどの家禽類、は虫類、鳥類或いは小型哺乳類などのペット類、養殖魚類などにも用いることができる。
【0036】
本発明の組成物の生体機能改善効果を生かした薬剤は、これらを単独で用いるほか、一般的賦形剤、安定剤、保存剤、結合剤、崩壊剤などの適当な添加剤を配合し、液剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、錠剤、カプセル剤、丸剤、軟膏剤、貼付剤、散布剤、スプレー剤または注射剤等の適当な剤型を選んで製剤し、経口的、経鼻的、経皮的あるいは経静脈的に投与することができる。
【0037】
経口投与、経鼻投与、経皮投与または経静脈投与に適した医薬用の有機又は無機の固体、半固体又は液体の担体、溶解剤もしくは希釈剤を、本発明の組成物を薬剤として調製するために用いることができる。水、ゼラチン、乳糖、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、タルク、動・植物油、ベンジルアルコール、ガム、ポリアルキレングリコール、石油樹脂、ヤシ油、ラノリン、又は医薬に用いられる他のキャリアー(担体)は全て、本発明の組成物を含む薬剤の担体として用いることができる。また、安定剤、湿潤剤、乳化剤や、浸透圧を変えたり、配合剤の適切なpHを維持するための塩類を補助薬剤として適宜用いることができる。
【0038】
また、化粧品等の製剤化に、可溶性フィルムが使用されるようになってきている。例えば、香料等を保持させたフレーバーフィルム等として気分転換、口臭予防等を目的として、可食性の可溶性フィルムが使用されている。また、保湿剤等を保持させた化粧品用フィルムを、パックとして使用したり、水に溶解して乳液として使用するといったアイディアも出されている。更に、抗炎症剤等を保持させて湿布薬として使用したりすることも検討されている。食品、医薬品等の包装材として、又食品、医薬品等の有効成分を保持する担体として、優れた溶解性とフィルム特性を示し、これらの用途に好適に用いることができる可溶性フィルムが提案されており(特開2007−91696号公報)、このようにして、本発明の組成物を医薬品もしくは医薬部外品、化粧品に適応することができる。
【0039】
本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は実施例によってなんら限定されるものではない。
【実施例1】
【0040】
〈食物繊維およびD-プシコースを含有する組成物の生体機能改善効果〉
食物繊維として難消化性デキストリンを用い、D-プシコースとの併用作用について、ラットを用いて検討を行った。
【0041】
[実験方法]
実験動物としては、3週齢の雄性Sprague-Dawley ラットを用いた。餌組成を表1に示す。群としては、コントロール群、3%D-プシコース摂取群、3%難消化性デキストリン摂取群、3%D-プシコース+3%難消化性デキストリン摂取群、2%D-プシコース+1%難消化性デキストリン摂取群とした。実験飼料(表1)と水を自由摂取とし6週間飼育した。
飼育終了後、解剖を行った。解剖時に採血および、内臓および体脂肪を採取しその重量を測定した。また、肝臓を取り出し、肝臓脂質を測定した。
結果を表2(コントロール群との差)に示す。コントロール群の平均値と各摂取群それぞれの平均値の差である。
なお、表2中の単位は、体重減少量、脂肪減少量:g、血糖値(随時)減少量、中性脂肪減少量、コレステロール減少量:mg/dL、ケトン体比増加量:無名数、肝臓脂質減少量:mg/Liver、肝臓増加量、腎臓増加量:g である。
【0042】
【表1】

【0043】
【表2】

【0044】
[結果について]
Sprague-Dawleyラットの実験開始時の平均体重は83.9±0.8gであった。
エサの摂餌量は、コントロール群、3%D-プシコース摂取群、3%難消化性デキストリン摂取群、3%D-プシコース+3%難消化性デキストリン摂取群、2%D-プシコース+1%難消化性デキストリン摂取群で有意差は認められなかった。(実験中の観察からは、動物の行動にも顕著な変化は認められなかった。)
体重および脂肪減少量は、D-プシコースと食物繊維を組み合わせることにより更なる減少が認められた。また、食物繊維単独であっても、3-ヒドロキシ酪酸の増加が認められ、このことから食物繊維が脂肪燃焼作用を持つことが明らかとなった。さらに、少ない量のD-プシコース(2%)と食物繊維(1%)の併用によっても減少効果が認められたことから、D-プシコースと食物繊維を組み合わせることにより、お互いの使用量を少なくして、なおかつ単独の使用量と同様な効果を示すことが明らかとなった。
血糖値については、今回の実験では、随時血糖値を測定しているので、(公知のD-プシコースの食後血糖低下作用とは異なり)3%D-プシコースの使用によって、コントロールよりも血糖値が上昇していることが観察されている。しかしながら、血糖値を減少させていない食物繊維の併用(D-プシコース(3%)と食物繊維(3%)の併用)によって、上昇が緩和された。さらに、他の長所を損なわない程度に、D-プシコースと食物繊維の濃度を下げることによって、血糖値がさらに改善された。つまり、D-プシコースの濃度を下げ、それを食物繊維で補うこと(D-プシコース(2%)と食物繊維(1%)の併用)によって、著しく血糖値が改善することが認められた。
コレステロール減少量に関しても、コレステロールを減少させていない食物繊維をD-プシコースと組み合わせることにより、コレステロールが減少した。
中性脂肪減少量に関しては、D-プシコースの摂取で上昇が認められたが、食物繊維との同時摂取によって上昇が抑制された。
ケトン体比に関しては、餌を随時食べている条件での測定であるため、D-プシコース摂取によりケトン対比が高くなり、ケトン体比のバランスを欠いている。一方、食物繊維の摂取によってケトン対比の減少が認められるが、D-プシコースと食物繊維の同時摂取によって、減少が緩和されるとともにケトン体比のバランスが改善され、肝機能の負担が軽減されることが認められた。
特に、肝臓脂質は、食物繊維とD-プシコースの同時摂取によって、明らかに相乗的な作用が認められたことから、肝機能の改善が示された。従来から、食物繊維や、非資化性単糖(D-プシコースもこれに該当する)の摂取によって、肝臓および腎臓の負担が増加し、臓器重量が増えることが報告されているが、今回食物繊維とD-プシコースの同時摂取によって、重量増加が抑制されたことから、併用作用によって負担が軽減されることが明らかになった。
以上の結果から、食物繊維と希少糖の一種であるD-プシコースを組み合わせることにより、生体機能的にお互いの短所が軽減するのみならず、長所を伸ばし、特に肝機能改善などに関しては大きな相乗的効果も認められた。
【実施例2】
【0045】
〈食物繊維(難消化性デキストリン)およびD-プシコースを含有する酸性飲料の製造〉
表3に示す割合にて新規組成物を用いた飲料を作成した。
【0046】
【表3】

【0047】
その結果、得られた両飲料は、ほぼ同様の好ましい甘味を示した。すなわち、本発明の組成物を含有する飲料は、生体機能改善効果を有するうえ、違和感なしで喫飲することのできるものである。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明により、肝機能、血糖値、血清脂質値、体重増加、内臓脂肪蓄積を改善する新規組成物を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食物繊維と、希少糖および/ またはその誘導体とを有効成分として含有する生体機能改善組成物。
【請求項2】
食物繊維を組成物全体の1重量%以上、希少糖および/またはその誘導体を組成物全体の2重量%以上含有する請求項1記載の生体機能改善組成物。
【請求項3】
希少糖および/ またはその誘導体が、D-プシコースおよび/ またはその誘導体である請求項1または2記載の生体機能改善組成物。
【請求項4】
生体機能改善が、肝機能、血糖値、血清脂質値、体重増加、および内臓脂肪蓄積の一以上の改善である請求項請求項1、2または3記載の生体機能改善組成物。
【請求項5】
食物繊維が水溶性食物繊維である請求項1ないし4のいずれかに記載の生体機能改善組成物。
【請求項6】
食物繊維が難消化性デキストリンである請求項5記載の生体機能改善組成物。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の生体機能改善組成物を含有する飲食品、健康食品、医薬品、医薬部外品、口腔用組成物、または化粧品。
【請求項8】
請求項1ないし6のいずれかに記載の生体機能改善組成物を配合することを特徴とする飲食品、健康食品、医薬品、医薬部外品、口腔用組成物、または化粧品の製造方法。








【公開番号】特開2010−18528(P2010−18528A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−178608(P2008−178608)
【出願日】平成20年7月9日(2008.7.9)
【出願人】(000188227)松谷化学工業株式会社 (102)
【Fターム(参考)】