説明

食用の果物および野菜の殺微生物処理

バクテリア、イースト菌、および/または黴による食用の果物または野菜の汚染を抑制する方法は、水、および(A)(I)1分子中に少なくとも1個の臭素原子を有する固体状態の殺微生物性化合物;(II)(I)の化合物の水性溶液/スラリ;(III)水、および(i)BrClおよびBrおよび(ii)過剰塩基性アルカリ金属スルファミン酸塩からつくられ且つ(i)および(ii)の相対的割合は0.93より大きい窒素対活性臭素の原子比を与えるような割合である混合物から誘導される活性臭素含量が少なくとも50,000ppmであり、pHが7よりも大きい濃厚な水性組成物;(IV)(III)の組成物を脱水してつくられた固体状態の組成物、および(B)紫外線による溶液の劣化を抑制するための溶解されたアスコルビン酸またはその可食性の塩またはエステルからつくられた、紫外線により誘起される劣化に対して安定化された殺微生物剤水性組成物を、該果物または野菜に施用することを含んで成っている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は種々の病原菌、例えばリステリア(Listeria)、エスケリキア(Escherichia)、サルモネラ(Salmonella)、カンピロバクター(Campylobacter)およびその他の種によって食用の果物および野菜が汚染されることを抑制するための効果的な抗微生物剤溶液の使用に関する。本明細書において「食用の果物および野菜」という言葉は、単数および複数のどちらで使用されても、人間が消費するために成長させた、収穫されたまたは収穫されていない未調理の食用の果物または野菜を意味するものとする。
【背景技術】
【0002】
食用の果物および野菜の潜在的な汚染は長年に亙って存在している問題である。病原体の微生物による果物および野菜の汚染を防ぐことは公衆の健康を保護するために重要である。野菜および果物が生産される区域(例えば農場、果樹園等)、食品加工施設(例えば缶詰または冷凍食品製造施設)、食品乾燥施設、或いは果物または野菜の卸売または小売用流通センターまたは市場において微生物によって生じる腐敗を減少させることにより、生産品の貯蔵寿命を延長させ、廃棄物として棄てられる食品の量を減少させることができる。
【0003】
従来の努力にも拘わらず、食用の果物および野菜を生産し、加工し、流通させ、或いは販売する施設において微生物を抑制する改善された方法がなお必要とされている。このような操作の種々の異なった場所においてバクテリア、イースト菌、および黴が蓄積することができる。このような点で生育し得る微生物を抑制できる場所が多いほど、食品が汚染される機会が少なくなり、購入者が消費する食品は安全になる。
【0004】
特許文献1には、新鮮なまたは新しく切った食用の果物または野菜に注入(infuse)を行う方法が記載されている。果物または野菜は相対的に代謝的な停滞、即ち不活性な状態に達することができる。ここでは注入されるべき試薬を含む注入物(infusion)が提供され、果物または野菜はその試薬の中に浸漬されるかそれで被覆される。ここで挙げられた試薬の中には芳香増強剤、香味増強剤、甘味剤、色彩増強剤、栄養剤、植物化学剤(phytochemical)、医薬品等が含まれる。注入物には或る一定期間の間正または負の圧力をかける。該特許文献には、好ましくは果物または野菜の表面が漂白剤溶液および/または抗微生物石鹸の溶液で消毒され、さらに好ましくは該溶液の濃度は約0.01%〜約10%、最も好ましくは約2%であることが指摘されている。実験に使用された材料のリストにはClorox(R)Bleach(米国、カリフォルニア州、OaklandのThe Clorox Company販売)の2%溶液、またはSafesoap(R)抗微生物性液体ハンドソープ(米国、ニューヨーク州、New
YorkのColgate−Palmolive Company販売)の2%溶液が使用されたことが示されている。
【0005】
微生物による汚染に対し果物および野菜を処理するもっと簡単な方法を見出すことができたならば、特にもっと少量の殺微生物剤を効果的に使用することができるならば有利な結果が得られるであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6,660,310号明細書。
【発明の概要】
【0007】
本発明によれば食用の果物および野菜の生産、加工、流通または販売における種々の時点において、バクテリア、イースト菌、および/または黴による食用の果物および野菜の汚染を抑制する新規方法が提供される。この方法は極めて効果的な安定化された殺微生物
剤を簡単に施用し、殺微生物剤を果物または野菜の上に短時間滞在させた後、適当な洗浄操作を行う方法である。これに加えて殺微生物剤の使用量は上記従来法の特許に記載された量よりも少ない。
【0008】
食用の果物または野菜に施用する殺微生物剤水性組成物は紫外線により誘起される劣化に対して安定化されている。従ってこの具体化例は、バクテリア、イースト菌、および/または黴による少なくとも1種の果物または野菜の汚染を抑制する方法であって、該方法は紫外線により誘起される劣化に対して安定化された、100ppm(重量/重量)より少ない量の活性臭素を含む殺微生物剤水性組成物を果物または野菜に施用することを含んで成り、該組成物は水並びに
(A)(I) 分子中に少なくとも1個の臭素原子を有する少なくとも1種の固体状
態の殺微生物性化合物;
(II) 分子中に少なくとも1個の臭素原子を有する少なくとも1種の固体状
態の殺微生物性化合物の水溶液または水性スラリ;
(III)活性臭素含量が少なくとも50,000ppmの濃厚な殺微生物剤水
性組成物であって、この組成物は、水および(i)塩素と一緒に使用
される或いは使用されない塩化臭素または塩化臭素および臭素、およ
び(ii)スルファミン酸の過塩基性アルカリ金属塩および/または
スルファミン酸、アルカリ金属塩基、および水を含んで成る成分から
つくられ、ここで(i)および(ii)の相対的な割合は0.93よ
り大きい窒素対活性臭素の原子比を与えるような割合であり、且つ該
組成物のpHは7より大きい濃厚な殺微生物剤水性組成物;
(IV) 脱水された(III)の濃厚な殺微生物剤水性組成物である固体状態
の殺微生物剤組成物から選ばれた少なくとも1種の殺微生物性成分;
および
(B)(i)アスコルビン酸、(ii)デヒドロアスコルビン酸、(iii)アスコル
ビン酸の可食性の水溶性の塩またはエステル、(iv)デヒドロアスコルビン酸
の可食性の水溶性の塩またはエステル、または(v)(i)〜(iv)の2種以
上の混合物から選ばれた紫外線に対する安定剤
を含んで成る成分からつくられたものであることを特徴とする方法である。
【0009】
この具体化例に使用される殺微生物剤組成物をつくるためには、選ばれた(A)および(B)は別々に或いは予めつくられた混合物として水と混合することができる。
【0010】
好適具体化例においては、施用された殺微生物剤水性組成物は殺微生物的に効果的な期間、典型的には約10秒〜約30分の範囲の間、好ましくは約30秒〜約5分の範囲の間、食用の果物または野菜と接触したままの状態に保たれ、しかる後食用の果物または野菜は少なくとも1回、随時少なくとも1種の表面活性剤を含む水で十分に洗浄される。この点に関し一般的には、使用する殺微生物剤水性組成物中の臭素濃度が高いほど、殺微生物剤組成物を食用の果物または野菜と接触させる時間を短くしなければならない。使用される1回またはそれ以上の洗浄は、処理される食用の果物または野菜からすべての検出し得る量の抗微生物剤組成物を少なくとも除去するのに十分な洗浄でなければならない。1回またはそれ以上のこのような洗浄に表面活性剤を使用した場合、その後で1回またはそれ以上の水洗を行い、食用の果物または野菜から表面活性剤を確実に除去しなければならない。
【0011】
本発明の上記具体化例および他の具体化例並びに特徴は下記の説明および特許請求の範囲からさらに明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0012】
上記の説明からわかるように、本発明を実施するのに使用される臭素をベースにした殺微生物剤には一般的に四つのグループがある。下記にこれらをさらに詳細に説明する。
【0013】
グループ(I)の臭素をベースにした殺微生物剤
本発明を実施する際に使用される殺微生物剤組成物の中には、分子中に少なくとも1個の臭素原子を有する固体状態の殺微生物性化合物がある。このような化合物の例には(a)ハロゲン原子の両方が臭素原子であり、アルキル基の一つがメチル基であり他はC1〜4アルキル基である1,3−ジハロ−5,5−ジアルキルヒダントイン、および(b)ハロゲン原子の一つが臭素原子であって他は塩素原子であり、両方のアルキル基は独立にC1〜4アルキル基である1,3−ジハロ−5,5−ジアルキルヒダントインがある。その有効性および市販製品としての入手のし易さのために、これら(a)および(b)の固体状態の殺微生物性化合物は他の種類の固体状態の殺微生物性化合物よりも好適であり、(a)の方が優れた効果をもっているためにさらに幾分か好適であり、すべての中で1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントインが最も好適である。
【0014】
タイプ(a)の本発明を限定しない例には1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントイン、1,3−ジブロモ−5−エチル−5−メチルヒダントイン、1,3−ジブロモ−5−n−プロピル−5−メチルヒダントイン、1,3−ジブロモ−5−イソプロピル−5−メチルヒダントイン、1,3−ジブロモ−5−n−ブチル−5−メチルヒダントイン、1,3−ジブロモ−5−イソブチル−5−メチルヒダントイン、1,3−ジブロモ−5−sec−ブチル−5−メチルヒダントイン、1,3−ジブロモ−5−t−ブチル−5−メチルヒダントイン、およびこれらの2種以上の任意の混合物がある。これらの殺微生物剤の中でコスト効率の立場からすれば、このグループの中で1,3−ジブロモ−5−イソブチル−5−メチルヒダントイン、1,3−ジブロモ−5−n−プロピル−5−メチルヒダントイン、および1,3−ジブロモ−5−エチル−5−メチルヒダントインがそれぞれ、好適な、さらに好適な、およびもっと好適な化合物である。本発明に従って使用できる上記の殺微生物剤の混合物の中では、一つの化合物として1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントインを用いることが好適であり、1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントインと1,3−ジブロモ−5−エチル−5−メチルヒダントインとの混合物が特に好適である。このグループの殺微生物剤の最も好適なものは1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントインである。この化合物は錠剤または粒剤としてXtraBrom(R)111殺生物剤およびXtraBrom(R)111T殺生物剤(Albemarle
Corporation製)の商品名で市販されている。上記1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントインの2種またはそれ以上の混合物を本発明に従って使用する場合、混合物中の個々の殺微生物剤の割合は互いに任意であることができる。
【0015】
タイプ(b)の本発明を限定しない化合物の例にはN,N’−ブロモクロロ−5,5−ジメチルヒダントイン、N,N’−ブロモクロロ−5−エチル−5−メチルヒダントイン、N,N’−ブロモクロロ−5−プロピル−5−メチルヒダントイン、N,N’−ブロモクロロ−5−イソプロピル−5−メチルヒダントイン、N,N’−ブロモクロロ−5−ブチル−5−メチルヒダントイン、N,N’−ブロモクロロ−5−イソブチル−5−メチルヒダントイン、N,N’−ブロモクロロ−5−sec−ブチル−5−メチルヒダントイン、N,N’−ブロモクロロ−5−t−ブチル−5−メチルヒダントイン、N,N’−ブロモクロロ−5,5−ジエチルヒダントイン、およびこれらの任意の2種以上の混合物が含まれる。N,N’−ブロモクロロ−5,5−ジメチルヒダントインはBromicide(R)殺微生物剤 (Great Lakes Chemical Corporation)の商品名で入手できる。他の適切なブロモクロロヒダントイン混合物は主としてN,N’−ブロモクロロ−5,5−ジメチルヒダントインから成り、これに少量の割合の1,3−ジクロロ−5−エチル−5−メチルヒダントインが混ざったものである。この後者のタイプの混合物はDantobrom(R)殺微生物剤(Lonza Corporation)の商品名で市販されている。このような製品の中で、市場で入手し易く本発明を実施するのに適しているためにN,N’−ブロモクロロ−5,5−ジメチルヒダントインが好適な材料である。例えばN,N’−ブロモクロロ−5,5−ジメチルヒダントインに対してN,N’という表示は、この化合物が(1)1−ブロモ−3−クロロ−5,5−ジメチルヒダントイン、または(2)1−クロロ−3−ブロモ−5,5−ジメチルヒダントイン、或いは(3)1−ブロモ−3−クロロ−5,5−ジメチルヒダントインと1−クロロ−3−ブロモ−5,5−ジメチルヒダントインの混合物であることができることを意味する。また若干の1,3−ジクロロ−5,5−ジメチルヒダントインと1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントインとが(1)、(2)または(3)と混合して存在し得ることも意味している。
【0016】
上記タイプ(a)または(b)の化合物を製造する方法は公知であり、文献に報告されている。例えば米国特許第3,147,259号明細書;同第6,508,954号明細書;および同第6,809,205号明細書参照のこと。
【0017】
本発明に使用できる他の公知の固体状態の殺微生物剤には、N,N’−ジハロ−2−イミダゾリジノン、例えば1,3−ジブロモ−4,4,5,5−テトラメチル−2−イミダゾリジノン、1−ブロモ−3−クロロ−4,4,5,5−テトラメチル−2−イミダゾリジノン、l−クロロ−3−ブロモ−4,4,5,5−テトラメチル2−イミダゾリジノン、l,3−ジブロモ−2,2,5,5−テトラメチルイミダゾリジン−4−オン、l−ブロモ−3−クロロ−2,2,5,5−テトラメチルイミダゾリジ−4−オン、l−クロロ−3−ブロモ−2,2,5,5−テトラメチルイミダゾリジン−4−オンが含まれる。このような化合物の製造法は米国特許第4,681,948号明細書;同第4,767,542号明細書;および同第5,057,612号明細書に記載されている。
【0018】
本発明に使用できるさらに他の固体状態の殺微生物剤はスルフォニルオキシブロモアセトアニリド、例えばm−イソブチル−スルフォニルオキシブロモアセトアニリドおよびm−フェニル−スルフォニルオキシブロモアセトアニリドである。さらに他の例およびこのような化合物の製造法は米国特許第4,081,474号明細書に記載されている。
【0019】
本発明に使用できる他のタイプの固体状態の殺微生物剤は臭素含有α−ハロピルベートオキシム、例えば米国特許第4,740,524号明細書記載の化合物である。このような化合物にはエチル3−ブロモ−2−(4−クロロベンゾイルオキシイミノ)プロパノエート、エチル3−ブロモ−2−(N’−メチルカルボモイルオキシイミノ)プロパノエート(ethyl 3−bromo−2−(N’−methylcarbomoyloximino)propanoate)、およびエチル3−ブロモ−2−(4−メチルベンゾイルオキシイミノ)プロパノエートが含まれる。
【0020】
さらに他のタイプの使用できる臭素含有殺微生物性化合物は、米国特許第4,978,685号明細書記載の重合していない第4級アンモニウム多臭化物である。このような化合物の例には三臭化N−エチル−N,N,N−トリメチルアンモニウム;三臭化N−エチル−N−メチルモルフォリウム;二臭化塩化N−ベンジル−N,N−ジメチル−N−ミリスチルアンモニウム;三臭化N,N,N,N−テトラブチルアンモニウム;および二臭化塩化N,N,N,N−テトラブチルアンモニウムが含まれる。
【0021】
さらに他の固体状態の臭素含有殺微生物性化合物も公知であり文献に報告されている。
【0022】
グループ(II)の臭素をベースにした殺微生物剤
グループ(II)はその1種以上のものを本発明を実施するのに使用することができる臭素をベースにした殺微生物剤組成物の他のグループを構成している。これらは分子中に
少なくとも1個の臭素原子を有する少なくとも1種の固体状態の殺微生物性化合物の水溶液またはスラリである。グループ(I)に関連して上記に挙げた1種またはそれ以上の化合物はこれらの溶液またはスラリをつくるのに使用することができる。溶液は個々の化合物を飽和濃度までの任意の濃度で含んでいることができる。高い濃度が望ましい場合には、個々の飽和濃度よりも過剰な量を含むスラリを作って使用することができる。即ち、グループ(II)の化合物の本発明を限定しない若干の例としてはグループ(I)に関連して挙げた例を参照されたい。使用する溶液またはスラリの濃度は、通常果物または野菜に施用する洗浄溶液に望ましい最終的な濃度よりも高い。
【0023】
グループ(III)の臭素をベースにした殺微生物剤
いくつかの臭素をベースにした殺微生物剤は典型的には濃厚な水溶液としてつくられて提供され、これらの濃厚な水溶液は本発明による臭素をベースにした殺微生物剤のグループ(III)を構成している。このような殺微生物剤は、典型的にはそれをつくる際濃厚な溶液中における活性臭素に対して適当な安定剤化合物を生成物中に含ませることにより、活性臭素が化学的に分解したり物理的に蒸発することに対して安定化されている。このタイプの好適な液体状態の臭素をベースにした殺微生物剤は、水であってその溶液中(i)塩素を一緒に用いまたは用いないで塩化臭素または塩化臭素および臭素から誘導された少なくとも50,000ppm(重量/重量)、好ましくは少なくとも100,000ppm(重量/重量)の活性臭素含量を有する水ならびに(ii)スルファミン酸の過塩基性(overbased)アルカリ金属塩(好ましくはスルファミン酸のリチウム、ナトリウム、および/またはカリウム塩)および/またはスルファミン酸、アルカリ金属塩基(好ましくはリチウム、ナトリウム、および/またはカリウムの酸化物または水酸化物)と水を含む殺微生物水性組成物であって、ここで(i)および(ii)の相対的な割合は0.93より大きい窒素対活性臭素の原子比を与えるような割合であり、該組成物のpHは7より大きい、例えば約12〜14の範囲にある殺微生物剤水性組成物である。この種の濃厚溶液は例えばStabrom(R)909殺微生物剤(Albemarle Corporation)として市販されている。この濃厚な殺微生物剤水溶液をつくる一つの方法は2000年5月30日出願の共有米国特許第6,068,861号明細書に記載されている。この特許は引用により本明細書に包含される。本発明を実施するのに使用できる他の市販の濃厚な殺微生物剤水溶液はStabrexTM biocide(Nalco Chemical Company)の商品名で市販されている。この製品はまたスルファメートを含有させることにより活性臭素の化学的分解および物理的な蒸発に対して安定化された活性臭素を含んでいる。スルファミン酸を用いて安定化された殺微生物剤水溶液の製造に関するさらに他の詳細点については米国特許第6,007,726号明細書;同第6,156,229号明細書;および同第6,270,722号明細書を参照のこと。
【0024】
グループ(IV)の臭素をベースにした殺微生物剤
臭素をベースにした殺微生物剤のこのグループは、上記グループ(III)の活性臭素を含むスルファメートで安定化された濃厚水溶液を脱水する(即ち少なくともすべての液体状の水を除去する)ことによってつくられる固体状態の殺微生物剤組成物から成っている。このタイプの好適な固体状態の殺微生物剤組成物は殺微生物水性組成物を脱水することにより形成され、該水性組成物は、水であってその溶液中(i)塩素を一緒に用いまたは用いないで塩化臭素または塩化臭素および臭素から誘導された少なくとも50,000ppm(重量/重量)、好ましくは少なくとも100,000ppm(重量/重量)の活性臭素含量を有する水および(ii)スルファミン酸の過塩基性(overbased)アルカリ金属塩を含み、ここで(i)および(ii)の相対的な割合は0.93より大きい窒素対臭素の原子比を与えるような割合であり、該水性組成物のpHは7より大きく、例えば約12〜14の範囲である。上記のように、この種の溶液は例えばStabrom(R)909殺微生物剤(Albemarle Corporation)として市販されている。水の除去は、減圧下におけるフラッシュ蒸発または蒸溜、或いは好ましくは噴霧乾燥によって行うことができる。このような固体状態の生成物は典型的には粉末または小さい粒子の形をしているが、好ましくは1種またはそれ以上の結合剤を用い緻密化して大きな形にすることができる。このような方法のこれ以上の詳細点は米国公刊特許願第2004/0022874 Al号に記載されている。このような固体状態の組成物の生成に関するすべての記載についてこの特許願は引用により本明細書に包含される。この特許願には特に次のような組成物および方法が記載されている。
【0025】
(a)臭素、塩化臭素または塩化臭素と臭素の混合物から、(b)スルファミン酸のアルカリ金属塩、および/またはスルファミン酸、アルカリ金属の塩基および水、或いは(1)スルファミン酸のアルカリ金属塩および/またはスルファミン酸、(2)アルカリ金属の塩基および(3)水から形成されたスルファミン酸のアルカリ金属塩の水溶液を用いてつくられた活性臭素の水溶液を含んで成る濃厚な液体状の殺微生物剤組成物であって、このような活性臭素水溶液はpHが少なくとも約7であり、(a)および(b)の量は(i)活性臭素水溶液中の活性臭素の含量が約160,000ppm(重量/重量)であり、(ii)(a)および(b)から得られる窒素対活性臭素の原子比は、塩化臭素なしで臭素が使用された場合には1よりも大きく、臭素と共にまたは臭素なしで塩化臭素が使用された場合には0.93よりも大きくなるような量である殺微生物剤組成物。
【0026】
固体状態の臭素含有殺微生物剤組成物の製造法であって、該方法は(A)(i)臭素、(ii)塩化臭素、(iii)塩化臭素と臭素の混合物、(iv)Br対Clのモル比が少なくとも約1の臭素および塩素、または(v)Br対Clの全モル比が少なくとも約1の塩化臭素、臭素、および塩素、および(B)(i)スルファミン酸のアルカリ金属塩および/またはスルファミン酸、および(ii)アルカリ金属の塩基から水中においてつくられた生成物の水溶液またはスラリであり、ここでこのような水溶液またはスラリはpHが少なくとも7であり、(A)および(B)から得られる窒素対活性臭素の原子比は0.93よりも大きい水溶液またはスラリから水を除去する方法。
【0027】
使用する臭素をベースにした殺微生物剤の濃度
果物または野菜の上あるいは中におけるバクテリア、イースト菌、および/または黴による汚染を抑制するために施用する水性殺微生物剤組成物をつくるためには、殺微生物剤として有効な量の少なくとも1種の特定の成分をグループ(I)、(II)、(III)、および(IV)として上記に示した少なくとも一つのグループから選び、これを水に溶解する。殺微生物剤として有効な量は種々の因子、例えばグループ(I)、(II)、(III)、および(IV)から選ばれる特定の成分の種類、抑制されるべき病原菌の量および種類、および特定の果物または野菜の特性に依存して変化することができる。しかし本発明に従えば、グループ(I)、(II)、(III)、および/または(IV)の抗微生物剤組成物の殺微生物剤として有効な量は、水に加えた場合、得られる水溶液中において100ppmより少ない、好ましくは0.01〜75ppm(重量/重量)の範囲、さらに好ましくは0.01〜50ppm(重量/重量)の範囲の活性臭素を与えるような量である。
【0028】
果物または野菜に施用する水性殺微生物剤組成物は、該組成物中に少なくとも1種の紫外線安定剤を含ませて紫外線で誘起される劣化に対して安定化された殺微生物剤水性組成物である。
【0029】
紫外線安定剤
殺微生物剤組成物に使用される紫外線安定剤は(i)アスコルビン酸、(ii)デヒドロアスコルビン酸、(iii)アスコルビン酸の可食性の水溶性の塩またはエステル、(iv)デヒドロアスコルビン酸の可食性の水溶性の塩またはエステル、または(v)(i)〜(iv)の2種またはそれ以上の混合物から選ばれる。本明細書において「可食性」という言葉はその物質が無毒であり、人が摂取できることを意味し、また「水溶性」という言葉は、下記の「使用する紫外線安定剤の割合」という項目に記載されているように、成分(A)について少なくとも最低の割合が得られるのに十分な量だけ塩またはエステルが水中に溶解し得ることを意味する。紫外線安定剤が配合された水性の殺微生物剤組成物は、該組成物を紫外線に露出した際、臭素酸イオンの生成に対する抵抗性が増加することを特徴としている。
【0030】
好適な紫外線安定剤はアスコルビン酸、特にL−アスコルビン酸およびその可食性の水溶性の塩およびエステルである。
【0031】
アスコルビン酸またはデヒドロアスコルビン酸の本発明を限定しない例には、金属塩、例えばアスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カリウム、アスコルビン酸カルシウム、アスコルビン酸マグネシウム、アスコルビン酸亜鉛、およびアスコルビン酸の第4アンモニウム塩、並びにデヒドロアスコルビン酸の対応する塩が含まれる。アスコルビン酸、例えばL−アスコルビン酸、またはデヒドロアスコルビン酸のエステルは有機または無機酸を用いてつくることができる。適当なエステルの本発明を限定しない例にはL−アスコルビン酸2−0−硫酸エステル、L−アスコルビン酸2−0−燐酸エステル、L−アスコルビン酸3−0−燐酸エステル、L−アスコルビン酸6−ヘキサデカノエート、L−アスコルビン酸モノスチレート(monostyrate)、L−アスコルビン酸ジパルミテート等が含まれる。アスコルビン酸のアルコールエステル、例えばアスコルビン酸エチル、アスコルビン酸プロピル、アスコルビン酸イソプロピル、アスコルビン酸グリセリル、および同様なアルコールエステルも使用することができる。アスコルビン酸(ビタミンC)またはビタミンC活性をもった化合物(例えばデヒドロアスコルビン酸、L−アスコルビン酸,およびその可食性の酸またはエステル)はL−スレオニンのアルドノ−ラクトン、L−キシロン酸(xylonic acid)、L−リキソニン酸(lyxonic acid),およびL−スレオニン酸、L−キシロン酸、およびL−リキソニン酸の可食性の塩から成る群から選ばれる少なくとも1種の化合物と組み合わせて使用することができる。米国特許第4,822,816号明細書;同第4,968,716号明細書および同第5,070,085号明細書参照。
【0032】
使用する紫外線安定剤の割合
紫外線で誘起される劣化または分解に対する安定性を賦与するために、選ばれた殺微生物剤成分中の臭素の重量部当たり紫外線安定剤を最高約1重量部の量の、それがもつ紫外線による劣化を阻止する量で使用する。従って少なくとも1種の固体状態のグループ(I)の殺微生物剤(例えば1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントイン、またはN,N’−ブロモクロロ−5,5−ジメチルヒダントイン)、または少なくとも1種の固体状態のグループ(IV)の殺微生物剤(例えばStabrom(R)909殺微生物剤(Albemarle Corporation)から脱水によりつくられた脱水された濃厚な水性殺微生物剤組成物を使用する場合、紫外線安定剤の割合は固体状態の殺微生物性化合物または組成物中の臭素の重量を基準にしている。グループ(II)またはグループ(III)の特定の成分から選ばれた液体成分、例えばグループ(II)の1分子中に少なくとも一つの臭素原子を有する固体状態の殺微生物性化合物の水溶液またはスラリ、例えばl,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントイン、またはN,N’−ブロモクロロ−5,5−ジメチルヒダントインの水溶液、または液体のグループ(III)の濃厚な水性殺微生物剤、例えばStabrom(R)909殺微生物剤(Albemarle Corporation)、またはStabrexTM 殺微生物剤(Nalco Chemical Company)を使用する場合には、紫外線安定剤の割合は液体のグループ(II)またはグループ(III)の組成物中の活性臭素の重量を基準にしている。従って果物または野菜に施用される殺微生物剤水性組成物は、殺微生物剤としての有効な量のグループ(I)(II)(III)および/または(IV)の個々のメンバーから選ばれた少なくとも1種の抗微生物水性組成物、および選ばれた殺微生物剤組成物中の活性臭素の重量当たり最高約1重量部の紫外線による劣化を阻止する量の紫外線安定剤を含んでいる。
【0033】
好ましくは、果物または野菜に施用される紫外線に対して安定化された殺微生物剤水性組成物をつくるのに使用される固体状態の成分は、グループ(A)の少なくとも一つから選ばれる少なくとも1種の特定の成分、および紫外線安定剤(B)の少なくとも1種から、成分(A)中の臭素の各重量部当たり成分(B)が約0.25重量部、ないし成分(A)中の臭素の各重量部当たり成分(B)が約1重量部になるような重量比でつくられる。好ましくは果物または野菜に施用される紫外線に対して安定化された殺微生物剤水性組成物をつくるのに使用される液体状態の成分は、成分(A)および(B)から、成分(A)中の活性臭素の各重量部当たり成分(B)が約0.25重量部、ないし成分(A)中の活性臭素の各重量部当たり成分(B)が約1重量部になるような重量比でつくられる。
【0034】
果物または野菜に施用する紫外線に対して安定化された殺微生物剤水性組成物をつくるためには、成分(A)および(B)の固体状態の予めつくられた混合物を水に加えるか水と混合するか、或いは固体の形の成分(A)および(B)を固体の形の別の成分として水に加えるか混合することができる。成分(A)および(B)の予めつくられた固体状態の配合物を使用することは、それによって配合操作が簡単化され、誤った配合を行う機会が減少するので好適である。成分(A)および(B)の予めつくられた濃厚な水溶液またはスラリを典型的には少なくとも一つの段階において十分な水で希釈して紫外線に対して安定化された殺微生物剤組成物をつくり、これを果物または野菜に施用する。しかしこのような用途に使用する紫外線に対して安定化された殺微生物剤組成物をつくる場合他の方法を使用することもできる。例えば予めつくられた成分(A)および(B)の濃厚な水溶液またはスラリおよびそれよりも多量の水の両方を、最初の量の水または成分(A)のグループ(II)および/または(III)から選ばれた特定の液体状態の成分の液体状態の混合物に加え、成分(A)および(B)の予めつくられた濃厚な水溶液またはスラリおよび(A)から得られる固体状態の殺微生物性化合物または組成物の両方を水に加えることができる。
【0035】
分析方法
本発明の殺微生物剤水性組成物をつくるのに用いられる活性臭素の水中における量を測定するためには、標準的な良く知られた分析方法を使用することができる。勿論「活性臭素」と云う言葉は殺微生物活性をもっているすべての臭素含有化学種を意味するものとする。一般に当業界においては+1の酸化状態にあるすべての臭素は殺微生物活性をもっているとされており、従って「活性臭素」の中に含まれる。当業界において公知のように、臭素、塩化臭素、次亜臭素酸、次亜臭素酸イオン、三臭素化水素、三臭素酸イオン、および有機−N−臭素化化合物は+1の酸化状態をもっている。従ってこれらの化学種、およびそれらが存在する範囲において他の化学種も本発明の組成物の活性臭素含量を構成している。例えば米国特許第4,382,799号明細書および同第5,679,239号明細書参照。溶液中の活性臭素の量を決定する当業界において確立されている方法は澱粉−ヨード滴定法であり、これによってどのような化学種が活性臭素を構成しているかには無関係に試料中のすべての活性臭素が決定される。臭素および多くの他の酸化剤を定量する古典的な澱粉−ヨード法の有用性および精度は、Willard−FurmanのElementary Quantitative Analysis,第3版,D.Van Nostrand Company,Inc.,New York発行,Copyright 1933,1935,1940年の第14章に記載されているように久しい以前から知られている。
【0036】
活性臭素を決定する典型的な澱粉−ヨード滴定法は次のように行われる:磁気撹拌機と50mlの氷酢酸をヨードフラスコの中に入れる。活性臭素を決定すべき試料(通常約0.2〜0.5g)を秤量し、酢酸を含んだフラスコの中に加える。水(50ml)およびヨー化カリウム水溶液(15%(重量/重量);25ml)をフラスコに加える。水シールを用いてフラスコに栓をする。次にこの溶液を15分間撹拌した後、フラスコの栓を取り、栓とシールの区域を水で洗浄してフラスコの中に注ぐ。自動ビューレット(Metrohm Limited)に0.1規定のチオ硫酸ナトリウムを満たす。ヨードフラスコの中の溶液を0.1規定のチオ硫酸ナトリウムで滴定する。淡い黄色が観測されたら1重量%の澱粉水溶液1mlを加える。フラスコ中の溶液の色は淡黄色から青色に変わる。青色が消失するまでチオ硫酸ナトリウムによる滴定を続ける。活性臭素の量は試料の重量および滴定されたチオ硫酸ナトリウムの容積を用いて計算される。即ち、本発明の組成物中の活性臭素の量は、実際の化学的な形の如何に拘わらず、この方法を用いて決定することができる。
【0037】
活性臭素を決定する他の方法は通常DPD試験法として知られている。この方法は水性系中の極めて少量の活性臭素を決定するのに非常に適している。少量の活性ハロゲンを決定する標準的なDPD法は1974年にPalinによって考案された古典的な試験法に基礎を置いている。A.T.Palin,「Analytical Control of Water Disinfection With Special Reference to Differential DPD Methods For Chlorine,Chlorine Dioxide,Bromine,Iodine and Ozone」,J.Inst.Water Eng.,1974年,28巻,139頁参照。Palinの方法には種々の近代化された方法があるが、この試験法の中で推奨できる方法はHach WaterのAnalysis Handbook,第3版、1997年発行に詳細に記載されている。「全塩素」(即ち活性塩素)に対する方法はこの出版物の379頁の方法8167として規定されている。簡単に述べれば、「全塩素」試験では、活性ハロゲンを含む希薄水溶液試料の中にDPD指示薬粉末(N,N’−ジエチルジフェニレンジアミン )を含んで成る粉末、KI、および緩衝液を導入する。存在する活性ハロゲン種はKIと反応してヨード種を生じ、これがDPD指示薬を赤/ピンク色に変化させる。着色の程度は試料中に存在する「全塩素」種の濃度に依存する。この強度を比色較正法により測定し、強度の読みをmg/L Clの値の「全塩素」の値に変換する。存在する活性ハロゲンが活性臭素の場合には、mg/L Clの結果に2.25を乗じて活性臭素のmg/L Brの値にすることができる。
【0038】
さらに詳細にはDPD試験は次のように行われる:
1.「全塩素」試験に応答する水中に存在する化学種の量を決定するためには、水の試
料は採取後数分以内、好ましくは採取直後に分析しなければならない。
2.「全塩素」試験に応答する水中に存在する化学種の量を試験するHachの方法8
167ではHach Model DR 2010の比色計が使用される。塩素を
決定するために格納されたプログラム番号はキーボードに「80」と打ち込むこと
によって呼び出される。次に測定器の側面にあるダイアルを回して吸収波長を53
0nmに設定する。二つの同一の試料セルに10mLのマークが付いたところまで
試験すべき水を満たす。片方のセルにはブランク試料として任意のものを選ぶ。第
2のセルにはDPD全塩素粉末ピロー(DPD Total Chlorine
Powder Pillow)の内容物を加える。これを10〜20秒間振盪して
混合し、ピンク/赤の色が現れた場合、DPD「全塩素」試験試薬に積極的に応答
する化学種が水中に存在することが示される。キーボード上でSHIFT TIM
ERキーを押して3分間の反応時間を開始させる。3分後、測定装置は信号音を発
する。10mLのセル持上げ器を使用してブランク試料のセルをHach Mod
el DR 2010の試料室に入れ、遮光器を閉じて迷光の効果を防ぐ。次いで
ZEROキーを押す。数秒後、ディスプレーに0.00mg/L Clが表示さ
れる。装置に0値を設定するのに使用したブランク試料をHach Model
DR 2010の試料室から取り出し、試験試料と取り換え、これにDPD「全塩
素」試験試薬を加えた。次いでブランクに対してしたように遮光器を閉じ、REA
Dキーを押す。数秒以内でmg/L Cl単位の結果がディスプレー上に示され
る。これが検査した水試料の「全塩素」の値である。この値に2.25を乗じると
水試料中の活性臭素の値が与えられる。
【0039】
果物または野菜に対する水溶液の施用
殺微生物的に有効な量の安定化された抗微生物剤組成物を含む水溶液を果物または野菜に施用するには種々の方法を用いることができる。例えばこのような水溶液を含むタンクの中に果物または野菜を浸漬するか、または果物または野菜に対し1種またはそれ以上のこのような水溶液の噴霧または煙霧をかけることができる。果物または野菜を処理する施設の大きさに依存して手持ちの噴霧器または煙霧装置を用いて施用を行うことができる。別法として、噴霧または煙霧室またはその区域の内部に配置されたノズルまたは煙霧装置から噴霧または煙霧を噴射し、この中に果物または野菜をコンベヤベルトまたは他の自動運搬システムに乗せて運び込むことができる。殺微生物的に有効な量の安定化された抗微生物水性組成物は、果物または野菜を畠または果樹園から取り去る前の収穫前の果物または野菜に対して施用することができる。この目的に対しては、畠に生えている野菜、および木に実っている果物に対して組成物の噴霧を施用することができる。果樹の場合には、木の上部をプラスティックスのフィルムで覆い、その下の所で果物を含む木の上部に対し該組成物の細かい噴霧、煙霧または霧状物をかけることができる。
【0040】
上記のように、殺微生物剤の水溶液を果物または野菜に施用した後、果物または野菜を水で洗浄して果物または野菜から殺微生物剤組成物を十分に洗浄し去る。殺微生物剤水溶液の施用と水洗の開始との間の時間は、殺微生物剤水溶液をつくるのに使用した殺微生物剤の種類、使用した殺微生物剤水溶液中の殺微生物剤の濃度、および果物または野菜についているまたはついていそうな細菌、バクテリア、菌類、イースト菌、黴、または他の病原菌の種類および含量のような因子に依存して変化させることができる。しかし一般的に述べれば、殺微生物剤水溶液は約10秒〜約30分、好ましくは約30秒〜約5分の間果物または野菜と接触したままでいなければならない。その後迅速に十分な水洗を始めなければならない。必要に応じ洗浄操作に適当な無毒性の表面活性剤(洗剤など)を用い、水洗操作の洗浄活性を増加させることができる。洗浄媒体としての水の中に表面活性剤を使用した場合には、その後で果物または野菜は純水で十分に洗わなければならない。
【0041】
食用の果物または野菜
本明細書の冒頭部分に示したように、「食用の果物または野菜」という言葉は、人が消費するために成長させた、収穫されたまたは収穫されない未調理の食用の果物または野菜を意味する。従って本発明方法は広範囲の食用の果物または野菜に応用することができる。本発明を限定しない食用の果物の若干の例には特に、スモモ、アプリコット、桃、リンゴ、オレンジ、レモン、ライム、タンジェリン、グレープフルーツ、バナナ、洋梨、サクランボ、ブドウ、トマト、イチゴ、ツルコケモモ、ブルーベリー、ブラックベリー、ラズベリー、グズベリー、イチジク、パイナップル、スイカ、カボチャ、カンタロープ、マンゴー、パパイヤ、落花生、クルミ、ペカン、アーモンド、カシューナッツ、プリューン、レーズン、乾燥イチジク、乾燥アプリコット、乾燥パイナップル、乾燥クランベリー、乾燥リンゴ、および乾燥バナナが含まれる。本発明を限定しない食用の野菜の例には馬鈴薯、タマネギ、シャロット、ニンニク、ニンジン、カブ、ビート、パースニップ(アメリカボウフウ)、ラディッシュ、スエーデンカブ、セロリ、マッシュルーム、トウモロコシ、オクラ、ホウレン草、キャベツ、ケール(ハゴロモカンラン)、レタス、ブロッコリ、カリフラワー、莢豆、エンドウ、キュウリ、カボチャ、ズッキーニが含まれる。本発明は特に葉物の野菜、例えば白キャベツ、赤キャベツ、ケール、アイスバーグレタス、タチシチャ、ホウレン草、マスタードグリーン、コラード、クレソン、タンポポ、並びにスパイスとして使用される葉物の野菜、例えばローリエ、ミント、タチジャコウソウ、バジル、およびハナハッカの殺微生物処理に使用するのに特に有効であると考えられる。
【0042】
本明細書の任意の場所において化学名または化学式で引用された成分は、単数または複数で引用されているかどうかには拘わらず、化学名または化学的な型によって引用された他の物質(例えば他の成分、溶媒、等)と接触する前に存在したものとして認識される。得られた混合物または溶液の中でどのような化学変化、転移、および/または反応が起こっているかどうかは問題にならない。何故ならそのような変化、転移、および/または反応は本明細書の記載に従って要求される条件下において規定された成分を一緒にした当然の結果だからである。従って成分とは、所望の操作を行うかまたは所望の組成物をつくることに関連して一緒にされる要素であるとして認識される。また、以下の特許請求の範囲には現在形で物質、成分および/または要素が引用されている(「含んで成る」、「ある」等)が、物質、成分または要素は、本発明に従ってそれらが1種またはそれ以上の他の物質、成分、および/または要素と最初に接触、配合、または混合される直前の時期に存在したものとして引用されている。また、特許請求の範囲には現在形で物質が引用されている(「含んで成る」、「ある」等)が、物質は、本発明に従ってそれらが1種またはそれ以上の他の物質と最初に接触、配合、または混合される直前の時期に存在したものとして引用される。化学の専門家によって上記の説明のように操作が行われた場合、或る物質、成分または要素が、接触、配合または混合操作の際に、化学反応または転移によってその元の同一性を失うことができるという事実は実用的には何の関心もない問題である。
【0043】
特記しない限り、本明細書において使用された場合、冠詞「a」または「an」は本明細書に記載されているように、特許請求の範囲を該冠詞がつけられた単一の要素に限定するつもりはなく、またそれを限定すると考えるべきではない。そうではなく本明細書に使用された場合、および使用されているように、特記しない限り冠詞「a」または「an」は一つまたはそれ以上のこのような要素を含むものとする。
【0044】
本発明は実施する場合かなりの変形を行うことができる。従って上記の説明は本発明を上記に提示された特定の例に限定するものではなく、また限定すると考えるべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バクテリア、イースト菌、および/または黴による少なくとも1種の果物または野菜の汚染を抑制する方法であって、該方法は紫外線により誘起される劣化に対して安定化された殺微生物剤水性組成物を果物または野菜に施用することを含んで成り、該組成物は100ppm(重量/重量)より少ない量の活性臭素を含んでおり、
且つ水;並びに
(A)(I) 分子中に少なくとも1個の臭素原子を有する少なくとも1種の固体状
態の殺微生物性化合物;
(II) 分子中に少なくとも1個の臭素原子を有する少なくとも1種の固体状
態の殺微生物性化合物の水溶液または水性スラリ;
(III)活性臭素含量が少なくとも50,000ppmの濃厚な殺微生物剤水
性組成物であって、該組成物は、水および(i)塩素といっしょに使
用される或いは使用されない塩化臭素または塩化臭素および臭素、お
よび(ii)スルファミン酸の過塩基性アルカリ金属塩および/また
はスルファミン酸、アルカリ金属塩基、および水を含んで成る成分か
らつくられ、ここで(i)および(ii)の相対的な割合は0.93
より大きい窒素対活性臭素の原子比を与えるような割合であり、且つ
該組成物のpHは7より大きい濃厚な殺微生物剤水性組成物;
(IV) 脱水された(III)の濃厚な殺微生物剤水性組成物である固体状態
の殺微生物剤組成物から選ばれた少なくとも1種の殺微生物性成分;
および
(B)(i)アスコルビン酸、(ii)デヒドロアスコルビン酸、(iii)アスコル
ビン酸の可食性の水溶性の塩またはエステル、(iv)デヒドロアスコルビン酸
の可食性の水溶性の塩またはエステル、または(v)(i)〜(iv)の2種以
上の混合物から選ばれた紫外線に対する安定剤
を含んで成る成分からつくられることを特徴とする方法。
【請求項2】
該成分は(I)の少なくとも1種の固体状態の殺微生物性化合物であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
該成分は(II)の水溶液または水性スラリであることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項4】
該成分は(III)の濃厚な殺微生物剤水性組成物であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項5】
該成分は(IV)の固体状態の殺微生物剤組成物であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項6】
(I)の固体状態の該殺微生物性化合物は(a)両方のハロゲン原子が臭素原子であり、アルキル基の一つがメチル基であり他はC1〜4アルキル基である少なくとも1種の1,3−ジハロ−5,5−ジアルキルヒダントインであるか、または(b)ハロゲン原子の一つが臭素原子であって他が塩素原子であり、両方のアルキル基が独立にC1〜4アルキル基である少なくとも1種の1,3−ジハロ−5,5−ジアルキルヒダントインであることを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項7】
(I)の固体状態の該殺微生物性化合物は両方のハロゲン原子が臭素原子であり、アルキル基の一つがメチル基であり他はC1〜4アルキル基である少なくとも1種の1,3−ジハロ−5,5−ジアルキルヒダントインである請求項6記載の方法。
【請求項8】
該少なくとも1種の1,3−ジハロ−5,5−ジアルキルヒダントインは実質的に1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントインであることを特徴とする請求項7記載の方法。
【請求項9】
(I)の固体状態の該殺微生物性化合物はハロゲン原子の一つが臭素原子であって他が塩素原子であり、両方のアルキル基が独立にC1〜4アルキル基である少なくとも1種の1,3−ジハロ−5,5−ジアルキルヒダントインであることを特徴とする請求項6記載の方法。
【請求項10】
該少なくとも1種の1,3−ジハロ−5,5−ジアルキルヒダントインは実質的にN,N’−ブロモクロロ−5,5−ジメチルヒダントインであることを特徴とする請求項9記載の方法。
【請求項11】
該(II)の水溶液または水性スラリは(a)両方のハロゲン原子が臭素原子であり、アルキル基の一つがメチル基であり他はC1〜4アルキル基である少なくとも1種の1,3−ジハロ−5,5−ジアルキルヒダントイン、または(b)ハロゲン原子の一つが臭素原子であって他が塩素原子であり、両方のアルキル基が独立にC1〜4アルキル基である少なくとも1種の1,3−ジハロ−5,5−ジアルキルヒダントインの水溶液または水性スラリであることを特徴とする請求項3記載の方法。
【請求項12】
(II)の該水溶液または水性スラリは両方のハロゲン原子が臭素原子であり、アルキル基の一つがメチル基であり他はC1〜4アルキル基である少なくとも1種の1,3−ジハロ−5,5−ジアルキルヒダントインの水溶液または水性スラリであることを特徴とする請求項11記載の方法。
【請求項13】
該少なくとも1種の1,3−ジハロ−5,5−ジアルキルヒダントインは実質的に1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントインであることを特徴とする請求項12記載の方法。
【請求項14】
該(II)の水溶液または水性スラリはハロゲン原子の一つが臭素原子であって他が塩素原子であり、両方のアルキル基が独立にC1〜4アルキル基である少なくとも1種の1,3−ジハロ−5,5−ジアルキルヒダントインの水溶液または水性スラリであることを特徴とする請求項11記載の方法。
【請求項15】
該少なくとも1種の1,3−ジハロ−5,5−ジアルキルヒダントインは実質的にN,N’−ブロモクロロ−5,5−ジメチルヒダントインであることを特徴とする請求項14記載の方法。

【公表番号】特表2010−515759(P2010−515759A)
【公表日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−545711(P2009−545711)
【出願日】平成20年1月11日(2008.1.11)
【国際出願番号】PCT/US2008/050901
【国際公開番号】WO2008/089089
【国際公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(594066006)アルベマール・コーポレーシヨン (155)
【Fターム(参考)】