食用油の酵素的脱ガム方法
リン脂質の大部分からアシル基を、一又は二以上のアシル受容体に転移するための、脂質アシルトランスフェラーゼによる食用油の処理を含む、食用油を酵素的に脱ガムする方法であり、アシル受容体は、ヒドロキシ基を含む任意の化合物である。一実施形態では、好ましくはアシル受容体は水であり、別の実施例では、好ましくはアシル受容体は一又は二以上のステロール及び/又はスタノールである。アシル受容体が、スタノール及び/又はステロールであるとき、一又は二以上のステロールエステル及び/又はスタノールエステルが作られる。本発明の処理において使われる脂質アシルトランスフェラーゼは、一又は二以上の以下のアミノ酸配列、即ち、配列番号1、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号36、配列番号38、配列番号40、配列番号41、配列番号45、配列番号47、配列番号50、又はこれらの配列と75%若しくはそれ以上の同一性を有するアミノ酸配列を含む。配列番号16に示されるアミノ酸配列を含む新しい脂質アシルトランスフェラーゼについても教示されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂質アシルトランスフェラーゼを使用して食用油を酵素的に脱ガムする方法に関する。
【0002】
本発明はさらに、一又は二以上の脂質アシルトランスフェラーゼに関する。
【0003】
本発明はさらに、食用油の脱ガムにおける脂質アシルトランスフェラーゼの使用に関する。
【背景技術】
【0004】
伝統的に、油の脱ガムについては物理的脱ガム及び化学的脱ガム工程という二つの工程が使用されてきた。1990年代に遡ると酵素的脱ガム工程は膵臓由来のホスホリパーゼの使用により発展してきた。この酵素はコーシャーではなかったので、ホスホリパーゼは微生物由来のホスホリパーゼA1に置き換えられた。酵素的工程は化学的、若しくは物理的脱ガム工程に比べ経費削減、より高い収率、そしてより環境にやさしい工程であることを含め、いくつかの利点がある。
【0005】
以下の関連文献、即ち、1999年7月20日に出願された米国特許出願第09/750,990号、米国特許出願第10/409,391号、WO2004/064537、WO2004/064987、PCT/IB2004/004378及びPCT/IB2004/004374を参照されたい。これらの出願の各々、及びこれらの出願の各々において引用されたそれぞれの文書(「出願引用文書」)、及び明細書中でも、若しくはこれらの出願の手続き中のいずれにおいても、並びにそのような手続き中に提出された特許性を支持するすべての意見書(argument)を参照により、本明細書に援用する。様々な文書がまた、本明細書でも引用されている(「本願引用文書」)。本願引用文書の各々、及び本願引用文書中で引用又は参照された各文書を参照により本明細書に援用する。
【発明の開示】
【発明の効果】
【0006】
第一の態様では、本発明は、ここに定義されているとおり脂質アシルトランスフェラーゼを使用した植物油又は食用油を酵素的に脱ガムする方法を提供する。
【0007】
本発明は、また、リン脂質の大部分を除去することについての本発明による脂質アシルトランスフェラーゼで食用又は植物油を処理することを含む、植物又は食用油の酵素的脱ガムの工程を提供する。
【0008】
本発明はまた、リン脂質の大部分からアシル基を、一又は二以上のアシル受容体に、例えば一又は二以上のステロール及び/又はスタノールに転移するために、本発明による脂質アシルトランスフェラーゼで食用油又は植物油を処理することを含む、植物又は食用油の酵素的脱ガムの工程を提供する。
【0009】
別の態様では、本発明は1又は二以上の脂質アシルトランスフェラーゼを提供する。
【0010】
一態様では、本発明は、配列番号16に示されるアミノ酸配列を含む脂質アシルトランスフェラーゼを提供する。
【0011】
別の態様では、本発明は、配列番号16に示されるアミノ酸配列を、或いは配列番号16と75%若しくはそれ以上、好ましくは85%若しくはそれ以上、より好ましくは90%若しくはそれ以上、さらにより好ましくは95%若しくはそれ以上、さらにより好ましくは98%若しくはそれ以上、又はさらにより好ましくは99%若しくはそれ以上の同一性を有するアミノ酸配列を含む脂質アシルトランスフェラーゼを提供する。
【0012】
さらに別の実施態様では、本発明は、(i)リン脂質(ホスファチジルコリンなどの)を除去するために、並びに/或いは(ii)油におけるステロールエステル及び/又はスタノールエステルの形成を増加させるために、並びに/或いは(iii)実質的に油における遊離脂肪酸を増加させることなく、リン脂質(ホスファチジルコリンなどの)を除去するために、及び/又は油におけるステロールエステル及び/若しくはスタノールエステルの形成を増加させるために、食用油の脱ガムにおける脂質アシルトランスフェラーゼの使用を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明において使われる脂質アシルトランスフェラーゼは、天然脂質アシルトランスフェラーゼであり、又は脂質アシルトランスフェラーゼの変異体である。
【0014】
例えば、本発明の方法及び使用において使われる脂質アシルトランスフェラーゼは、例えばWO2004/064537、WO2004/064987、PCT/IB2004/004378、又はGB0513859.9に記述されているうちの一つである。
【0015】
本明細書で使用される「脂質アシルトランスフェラーゼ」なる用語は、アシルトランスフェラーゼ活性(一般的にはE.C.2.3.1.xと分類されている)を意味し、酵素は、アシル基を脂質から一又は二以上の受容体基質へ転移することができ、受容体基質は、ステロール、スタノール、炭水化物、タンパク質、タンパク質サブユニット、グリセロールから選択される1又は2以上のものであり、好ましくはステロール及び/又はスタノールである。
【0016】
好ましくは、本発明による、又は本発明の方法及び/若しくは使用において使われる脂質アシルトランスフェラーゼは、アシル基を脂質(本明細書で定義される)から一又は二以上の以下のアシル受容体基質、即ちステロール又はスタノール、好ましくはステロールに、転移することができる。
【0017】
いくつかの態様では、本発明による「アシル受容体」は、例えば、グリセロ−ルを含む多価アルコール等のヒドロキシ基(−OH)を含む化合物と、ステロールと、スタノールと、炭水化物と、フルーツ酸、クエン酸、酒石酸、酪酸及びアスコルビン酸を含むヒドロキシ酸と、タンパク質又は、例えばアミノ酸、加水分解タンパク質、ペプチド(部分的に分解されたタンパク質)のようなタンパク質のサブユニット及びそれらの混合物又は派生物である。好ましくは、本発明による「アシル受容体」は、水ではない。
【0018】
アシル受容体は、好ましくはモノグリセリドでない。
【0019】
一態様では、本発明による、又は本発明の方法及び/若しくは使用において使われる脂質アシルトランスフェラーゼは、アシル基を脂質からステロール及び/又はスタノールに転移(transfer)できると同様、加えて、アシル基を脂質から、炭水化物、タンパク質、タンパク質サブユニット、グリセロールのうち1又は2以上に転移できる。
【0020】
好ましくは、本発明による脂質アシルトランスフェラーゼが作用する脂質基質は、一又は二以上の以下の脂質、例えばホスファチジルコリンなどのレシチンのようなリン脂質である。
【0021】
この脂質基質は、本明細書では「脂質アシル供与体(lipid acyl donor)」と呼ばれる。本明細書で使われるレシチンという用語は、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン及び、ホスファチジルグリセロールを含む。
【0022】
いくつかの態様では、好ましくは、本発明による、又は本発明の方法及び/若しくは使用において使われる脂質アシルトランスフェラーゼが作用する脂質基質は、例えばホスファチジルコリンなどのレシチンのようなリン脂質である。
【0023】
いくつかの態様では、好ましくは、本発明による、又は本発明の方法及び/若しくは使用において使われる脂質アシルトランスフェラーゼは、トリグリセリド及び/又は1−モノグリセリド及び/又は2−モノグリセリドには作用することができない、或いは実質的に作用することができない。
【0024】
好適には、本発明による、又は本発明の方法及び/若しくは使用において使われる脂質アシルトランスフェラーゼは、一又は二以上の、以下のホスホリパーゼ活性、即ちホスホリパーゼA2活性(E.C.3.1.1.4)又はホスホリパーゼA1活性(E.C.3.1.1.32)を示す。
【0025】
好適には、いくつかの態様では、本発明による、又は本発明の方法及び/若しくは使用において使われる脂質アシルトランスフェラーゼは、アシル基をリン脂質からステロール及び/又はスタノールに転移することができる。
【0026】
いくつかの態様では、好ましくは、本発明による、又は本発明の方法及び/若しくは使用において使われる脂質アシルトランスフェラーゼは、アシル基をリン脂質から、少なくともステロールエステル又は/及びスタノールエステルを形成するように、ステロール及び/又はスタノールに転移することができる。
【0027】
いくつかの態様では、好ましくは、本発明による、又は本発明の方法及び/若しくは使用において使われる脂質アシルトランスフェラーゼは、トリアシルグリセロールリパーゼ活性(E.C.3.1.1.3)を示さず、若しくは有意なトリアシルグリセロールリパーゼ活性(E.C.3.1.1.3)を示さない。
【0028】
本発明による、又は本発明の方法及び/若しくは使用において使われる脂質アシルトランスフェラーゼは、アシル基をリン脂質からステロール及び/又はスタノールに転移することができる。それゆえ、一実施形態では、本発明による「アシル受容体」はステロール、又はスタノール、又はステロールとスタノール両方の組合せのいずれかである。
【0029】
好ましくは、本発明による、又は本発明の方法及び/若しくは使用において使われる脂質アシルトランスフェラーゼは、以下の基準、即ち、
(i) 酵素が、脂質アシル供与体の元のエステル結合のアシル部分が、新しいエステルを形成するためにアシル受容体に転移される、エステル転移活性として定義されるアシルトランスフェラーゼ活性を有すること、
(ii)酵素が、アミノ酸配列モチーフGDSXを含み、Xが、以下のアミノ酸残基、L、A、V、I、F、Y、H、Q、T、N、M、又はSの一又は二以上であること、
を使用することで特徴づけられる。
【0030】
好ましくは、GDSXモチーフのXは、L又はYである。より好ましくは、GDSXモチーフのXは、Lである。それゆえ、好ましくは、本発明による酵素はアミノ酸配列モチーフGDSLを含む。
【0031】
GDSXモチーフは、4つの保存されたアミノ酸で構成されている。好ましくは、モチーフ内のセリンは脂質アシルトランスフェラーゼ酵素の触媒作用的セリンである。好適には、GDSXモチーフのセリンは、Brumlik & Buckley (Journal of Bacteriology Apr.1996, Vol.178,No.7, p2060-2064)に教示されているアエロモナス・ハイドロフィラの脂肪分解性酵素におけるセリン−16に相当するポジションである。
【0032】
タンパク質が、本発明によるGDSXモチーフを有するかどうかを決定するために、配列は、WO2004/064537又はWO2004/064987に教示されている手順によりpfamデータベースの隠れマルコフモデルプロファイル(hidden markov model profiles)(HMM profiles)と、好ましくは比較される。
【0033】
Pfamは、タンパク質のドメインファミリーのデータベースである。Pfamは新しい配列におけるこれらのドメインを同定するため、プロファイル隠れマルコフモデル(profiles HMMs)とともに、各々のファミリーの、管理された配列多重アラインメント(curated multiple sequence alignments)を含む。Pfamの紹介は、Bateman A et al.(2002) Nucleic Acids Res. 30;276-280で見ることができる。隠れマルコフモデルは、タンパク質を分類することを目的とするいくつかのデータベースで使用されており、概説としては、Bateman A and Haft DH(2002) Brief Bioinform 3;236-245を参照。
【0034】
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?cmd=Retrieve&db=PubMed&list uids=12230032&dopt=Abstract
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?cmd=Retrieve&db=PubMed&list uids=11752314&dopt=Abstract
隠れマルコフモデルと、それらがPfamデータベースにどのように適用されているかについての詳細な説明は、Durbin R, Eddy S, Krogh A (1998) Biological sequence analysis; probabilistic models of proteins and nucleic acids. Cambridge University Press, ISBN 0-521-62041-4を参照せよ。ハンマー(Hammer)ソフトウェアパッケージが、Washington University, St Louis, USA より入手できる。
【0035】
或いは、GDSXモチーフは、ハンマーソフトウェアパッケージによっても同定されることができ、その使用説明は、Durbin R, Eddy S,and Krogh A (1998) Biological sequence analysis; probabilistic models of proteins and nucleic acids. Cambridge University Press, ISBN 0-521-62041-4及びその参照文献、及び仕様書において提供されるHMMER2プロファイルにおいて提供される。
【0036】
PFAMデータベースは、例えば、現在以下のウェブサイトにあるいくつかのサーバーを通じてアクセスできる。
【0037】
http://www.sanger.ac.uk/Software/Pfam/index.shtml
http://pfam.wustl.edu/
http://pfam.jouy.inra.fr/
http://pfam.cgb.ki.se/
データベースは、タンパク質配列を入力することができる検索機能を提供している。データベースのデフォルトパラメーター(default parameters)を使用し、タンパク質配列は、その後Pfamドメインの存在について分析される。GDSXドメインは、データベースにおいて確立したドメインであり、いかなるクエリー配列(query sequence)においても、その存在は認識されるであろう。データベースは、クエリー配列に対してpfam00657共通配列のアラインメント(alignment)を返答してくるであろう。
【0038】
好ましくは、本発明の方法及び使用において使われる脂質アシルトランスフェラーゼ酵素は、Pfam00657共通配列を使用してアライン(align)されることができる(詳述については、WO2004/064537又はWO2004/064987を参照せよ)。
【0039】
好ましくは、pfam00657ドメインファミリーの、隠れマルコフモデルプロファイル(HMM profile)との肯定的な適合(positive match)は、本発明によるGDSL又はGDSXドメインの存在を示すものである。
【0040】
好ましくは、Pfam00657共通配列とアラインした場合には、本発明の方法又は使用において使われる脂質アシルトランスフェラーゼは、少なくとも1つ、好ましくは2以上の、好ましくは3以上の、以下のようなGDSxブロック(block)、GANDYブロック、HPTブロックを有する。好適には、脂質アシルトランスフェラーゼは、GDSxブロック及びGANDYブロックを有する。或いは、酵素は、GDSxブロック、及びHPTブロックを有する。好ましくは、酵素は少なくともGDSxブロックを含む。
【0041】
好ましくは、GANDYモチーフの残基は、GANDY、GGNDA、GGNDL、最も好ましくはGANDYから選択される。
【0042】
好ましくは、Pfam00657共通配列とアラインした場合には、本発明の方法又は使用において使われる酵素は、アエロモナス・ハイドロフィラのポリペプチド配列との照会、即ち、配列番号1:28hid,29hid,30hid,31hid,32gly,33Asp,34Ser,35hid,130hid,131Gly,132Hid,133Asn,134Asp,135hid,309Hisと比較したときに、少なくとも1つ、好ましくは2以上、好ましくは3以上、好ましくは4以上、好ましくは5以上、好ましくは6以上、好ましくは7以上、好ましくは8以上、好ましくは9以上、好ましくは10以上、好ましくは11以上、好ましくは12以上、好ましくは13以上、好ましくは14以上、好ましくは15以上のアミノ酸残基を有する。
【0043】
pfam00657GDSXドメインは、他の酵素からこのドメインを有するタンパク質を識別するユニークな鑑定者(identifier)である。
【0044】
pfam00657共通配列は、図12に配列番号2として示されている。これは、本明細書ではpfam00657.6としても言及されている、pfamファミリー00657、データベースversion6の同定から得られる。
【0045】
共通配列は、pfamデータベースの追加のリリース(further releases)(例えばWO2004/064537又はWO2004/064987を参照せよ)を使用することで更新される。
【0046】
GDSx、GANDY、及びHPTブロックの存在は、双方のデータベースのリリースによりpfamファミリー00657に見出される。pfamデータベースの将来的なリリースは、pfamファミリー00657を同定するのに使用されることができる。
【0047】
一実施形態では、本発明の方法及び使用において使われる脂質アシルトランスフェラーゼ酵素は、以下の基準、即ち、
(i)酵素が、脂質アシル供与体の元のエステル結合のアシル部分が、新しいエステルを形成するためにアシル受容体に転移される、エステル転移活性として定義されるアシルトランスフェラーゼ活性を有すること、
(ii)酵素が、アミノ酸配列モチーフGDSXを含み、Xが、L、A、V、I、F、Y、H、Q、T、N、M、又はSから選択される1又は2以上のアミノ酸残基であること、
(iii)酵素が、His-309を含み、或いは図11及び13(配列番号1又は配列番号3)に示されるアエロモナス・ハイドロフィラ由来の脂質アシルトランスフェラーゼ酵素の、His-309位に相当するポジションにヒスチジン残基を含むこと、
を使用することで特徴づけられる。
【0048】
好ましくは、GDSXモチーフのアミノ酸残基はLである。
【0049】
配列番号3又は配列番号1における最初の18アミノ酸残基は、シグナル配列を形成する。シグナル配列を含むタンパク質である完全長配列のHis-309は、タンパク質の成熟部分の、即ちシグナル配列を含まない配列の、His-291に一致する。
【0050】
一実施形態では、本発明の方法及び使用において使われる脂質アシルトランスフェラーゼ酵素が、以下の触媒三つ組(catalytic triad)、Ser-34、Asp-134及びHis-309を含み、或いは図13(配列番号3)、又は図11(配列番号1)に示される、アエロモナス・ハイドロフィラ由来の脂質アシルトランスフェラーゼ酵素におけるSer-34、Asp-134及びHis-309に相当するポジションにおいて、それぞれセリン残基、アスパラギン酸残基及びヒスチジン残基を含む。上述のように、配列番号3又は配列番号1に示される配列において、最初の18アミノ酸残基は、シグナル配列を形成する。シグナル配列を含むタンパク質である、完全長配列のSer-34、Asp-134及びHis-309は、タンパク質の成熟部分の、即ちシグナル配列を含まない配列の、Ser-16、Asp-116及びHis-291に一致する。図12(配列番号2)で示されるpfam00657共通配列において、活性部位残基は、Ser-7、Asp-157及びHis-348に相当する。
【0051】
一実施形態では、本発明の方法及び使用において使われる脂質アシルトランスフェラーゼ酵素は、以下の基準、即ち、
(i)酵素が、一番目の脂質アシル供与体の元のエステル結合のアシル部分が、新しいエステルを形成するためにアシル受容体に転移される、エステル転移活性として定義されうるアシルトランスフェラーゼ活性を有すること、
及び、
(ii)酵素は、少なくとも、Gly-32、Asp-33、Ser-34、Asp-134及びHis-309を含み、或いは図13(配列番号3)若しくは図11(配列番号1)に示される、アエロモナス・ハイドロフィラ由来の脂質アシルトランスフェラーゼ酵素においては、Gly-32、Asp-33、Ser-34、Asp-134、及びHis-309に相当するポジションにおいてそれぞれ、グリシン、アスパラギン酸、セリン、アスパラギン酸、及びヒスチジン残基を含むこと、
を使用することで特徴づけられる。
【0052】
好適には、本発明の方法及び使用において使われる脂質アシルトランスフェラーゼ酵素は、一又は二以上の以下のアミノ酸配列、即ち、
(i) 配列番号3(図13参照)に示されるアミノ酸配列
(ii) 配列番号4(図14参照)に示されるアミノ酸配列
(iii) 配列番号5(図15参照)に示されるアミノ酸配列
(iv) 配列番号6(図16参照)に示されるアミノ酸配列
(v) 配列番号7(図17参照)に示されるアミノ酸配列
(vi) 配列番号8(図18参照)に示されるアミノ酸配列
(vii) 配列番号9(図19参照)に示されるアミノ酸配列
(viii) 配列番号10(図20参照)に示されるアミノ酸配列
(ix) 配列番号11(図21参照)に示されるアミノ酸配列
(x) 配列番号12(図22参照)に示されるアミノ酸配列
(xi) 配列番号13(図23参照)に示されるアミノ酸配列
(xii) 配列番号14(図24参照)に示されるアミノ酸配列
(xiii) 配列番号1 (図11参照)に示されるアミノ酸配列
(xiv) 配列番号15(図25参照)に示されるアミノ酸配列
を、
或いは、配列番号1、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15に示される配列のいずれか1つと75%若しくはそれ以上の同一性を有するアミノ酸配列を、含む。
【0053】
好適には、本発明の方法及び使用において使われる脂質アシルトランスフェラーゼ酵素は、配列番号3又は配列番号4又は配列番号1又は配列番号15で示されるアミノ酸配列のいずれかを有し、或いは、配列番号3に示されるアミノ酸配列、又は配列番号4に示されるアミノ酸配列、又は配列番号1に示されるアミノ酸配列、又は配列番号15に示されるアミノ酸配列と、75%若しくはそれ以上、好ましくは80%若しくはそれ以上、好ましくは85%若しくはそれ以上、好ましくは90%若しくはそれ以上、好ましくは95%若しくはそれ以上の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0054】
好適には、本発明の方法及び使用において使われる脂質アシルトランスフェラーゼ酵素は、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号1、又は配列番号15に示される配列のいずれか1つと80%若しくはそれ以上、好ましくは85%若しくはそれ以上、より好ましくは90%若しくはそれ以上、及びさらにより好ましくは95%若しくはそれ以上、同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0055】
好適には、本発明の方法及び使用において使われる脂質アシルトランスフェラーゼ酵素は、一又は二以上の以下のアミノ酸配列、即ち、
(a)配列番号3又は配列番号1の1〜100位のアミノ酸残基に示されるアミノ酸配列、
(b)配列番号3又は配列番号1の101〜200位のアミノ酸残基に示されるアミノ酸配列、
(c)配列番号3又は配列番号1の201〜300位のアミノ酸残基に示されるアミノ酸配列、又は、
(d)上記(a)〜(c)に定義されたアミノ酸配列のいずれか1つと、75%若しくはそれ以上、好ましくは85%若しくはそれ以上、より好ましくは90%若しくはそれ以上、さらにより好ましくは95%若しくはそれ以上の、同一性を有するアミノ酸配列、
を含む。
【0056】
好適には、本発明の方法及び使用において使われる脂質アシルトランスフェラーゼ酵素は、一又は二以上の以下のアミノ酸配列、即ち、
(a) 配列番号3又は配列番号1のアミノ酸残基28〜39位に示されるアミノ酸配列、
(b) 配列番号3又は配列番号1のアミノ酸残基77〜88位に示されるアミノ酸配列、
(c)配列番号3又は配列番号1のアミノ酸残基126〜136位に示されるアミノ酸配列、
(d)配列番号3又は配列番号1のアミノ酸残基163〜175位に示されるアミノ酸配列、
(e)配列番号3又は配列番号1のアミノ酸残基304〜311位に示されるアミノ酸配列、又は、
(f)上記(a)〜(e)に定義されたアミノ酸配列のいずれか1つと、75%若しくはそれ以上、好ましくは85%若しくはそれ以上、より好ましくは90%若しくはそれ以上、さらにより好ましくは95%若しくはそれ以上の同一性を有するアミノ酸配列、
を含む。
【0057】
一態様では、本発明の方法及び使用において使われる脂質アシルトランスフェラーゼは、EP1275711で教示されている、カンジダ・パラプシロシス由来の脂質アシルトランスフェラーゼである。それゆえ、一態様では、本発明の方法及び使用において使われる脂質アシルトランスフェラーゼは、配列番号17(図28)、又は配列番号18(図29)で教示されるアミノ酸配列のうちの1つを含む、脂質アシルトランスフェラーゼである。
【0058】
さらに好ましくは、本発明の方法及び使用において使われる脂質アシルトランスフェラーゼは、配列番号16(図10)に示されるアミノ酸配列を含み、或いは75%若しくはそれ以上、好ましくは85%若しくはそれ以上、より好ましくは90%若しくはそれ以上、さらに好ましくは95%若しくはそれ以上、さらにより好ましくは98%若しくはそれ以上、さらにより好ましくは99%若しくはそれ以上、配列番号16と同一性を有するアミノ酸配列を含む脂質アシルトランスフェラーゼである。この酵素は、酵素の変異体が考慮される。
【0059】
一態様では,本発明の方法及び使用において使われる脂質アシルトランスフェラーゼは、レシチンコレステロールアシルトランスフェラーゼ(LCAT)、又はその変異体(例えば、分子進化により作られた変異体)である。
【0060】
好適なLCATは、当業界に知られており、例えば、以下の、哺乳類、ラット、マウス、ニワトリ、黄色ショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)、シロイヌナズナ及びイネを含む植物、線虫、真菌、酵母などの生物の一又は二以上から得られる。
【0061】
一実施形態では、本発明の方法及び使用に使われる脂質アシルトランスフェラーゼは、それぞれアクセッション番号NCIMB41204及びNCIMB41205により、2003年12月22日にNational Collection of Industrial, Marine and Food Bacteria(NCIMB)、23 St.マハル通り、アバディーン、スコットランド、GBにおいて特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブタペスト条約の下に、Danisco A/S社 Langebrogade 1, DK-1001 Copenhagen K,デンマークより寄託されたpPet12aAhydro、及びpPet12aASalmoをハーバリングしている大腸菌株TOP 10から得られる、好ましくは得られた脂質アシルトランスフェラーゼである。
【0062】
非常に好まれて本発明の方法に使われる脂質アシルトランスフェラーゼは、アエロモナス種から単離されたものを含み、好ましくは、アエロモナス・ハイドロフィラ又はアエロモナス・サルモニシダであり、最も好ましくはアエロモナス・サルモニシダである。最も好まれて本発明において使われる脂質アシルトランスフェラーゼは、配列番号1、3、4、15、16によりコードされるものである。アシルトランスフェラーゼのシグナルペプチドがトランスフェラーゼの発現の間に切断されていることが好ましいことは、当業者に認識されるであろう。配列番号1、3、4、15、及び16のシグナルペプチドは、アミノ酸1〜18位である。したがって、最も好ましい領域は、配列番号1及び配列番号3(アエロモナス・ハイドロフィラ)のアミノ酸19〜335位、並びに配列番号4、配列番号15、及び配列番号16(アエロモナス・サルモニシダ)のアミノ酸19〜336位である。アミノ酸配列の同一性の相同性を決定するために使用される場合は、本明細書で記述されているアラインメントは成熟配列を使用することが好ましい。
【0063】
したがって、相同性(同一性)を決定する最も好ましい領域は、配列番号1及び配列番号3(アエロモナス・ハイドロフィラ)のアミノ酸19〜335位、並びに配列番号4、15、及び16(アエロモナス・サルモニシダ)のアミノ酸19〜336位である。配列番号34及び35は、それぞれアエロモナス・ハイドロフィラとアエロモナス・サルモニシダ由来の、非常に好まれる脂質アシルトランスフェラーゼの成熟タンパク質配列である。
【0064】
本発明において使われる脂質アシルトランスフェラーゼはまた、サーモビフィダ、好ましくはサーモビフィダ・フスカ、最も好ましくは配列番号28によってコード化されているものから単離される。
【0065】
本発明において使われる脂質アシルトランスフェラーゼはまた、ストレプトマイセス、好ましくはストレプトマイセス・アベルミチリス、最も好ましくは、配列番号32によってコード化されているものから単離される。ストレプトマイセス由来の本発明において使われる他の可能性のある酵素は、配列番号5、6、9、10、11、12、13、14、31、33によってコード化されているものを含む。実施例は、配列番号33でコード化されている酵素は、酵素的脱ガムにおいて高度に効果的であることを示している。
【0066】
本発明において使われる酵素はまた、コリネバクテリウム、好ましくはコリネバクテリウム・エフィシェンス、最も好ましくは、配列番号29によってコード化されているものから単離される。
【0067】
好適には、本発明による方法及び使用において使われる脂質アシルトランスフェラーゼは、配列番号37、38、40、41、43、45若しくは47で示されるアミノ酸配列のうちいずれか1つを、又はこれらの配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、若しくは98%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、或いは、配列番号36、39、42、44、46、若しくは48に示されるヌクレオチド配列のうちいずれか1つにより、又はこれらの配列と、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、若しくは98%の同一性を有するヌクレオチド配列によってコード化されている脂質アシルトランスフェラーゼである。
【0068】
好ましくは、本発明による方法及び使用において使われる脂質アシルトランスフェラーゼは、少なくともガラクト脂質を加水分解することができ、且つ/或いはアシル基を、少なくともガラクト脂質から一又は二以上のアシル受容体基質に転移することができる、脂質アシルトランスフェラーゼであり、酵素は、ストレプトマイセス種から得ることができる、好ましくは得られたものである。
【0069】
一実施形態では、本発明による方法及び使用において使われる脂質アシルトランスフェラーゼは、好ましくは、少なくともガラクト脂質を加水分解することができ、且つ/或いはアシル基を少なくともガラクト脂質から一又は二以上のアシル受容体基質に転移することができる脂質アシルトランスフェラーゼであり、酵素は、以下よりなる群、即ち、
a)配列番号36に示されるヌクレオチド配列を含む核酸、
b) 遺伝子コードの変性により、配列番号36のヌクレオチド配列と関連している核酸、及び
c)配列番号36に示されるヌクレオチド配列と少なくとも70%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む核酸、
から選択される核酸によりコード化されている。
【0070】
一実施形態では、本発明の方法及び使用において使われる脂質アシルトランスフェラーゼは、好ましくは、配列番号37に示されるアミノ酸配列を、又はこの配列と少なくとも60%の同一性を有するアミノ酸配列を含む脂質アシルトランスフェラーゼである。
【0071】
別の実施形態では、本発明による方法及び使用において使われる脂質アシルトランスフェラーゼは、好ましくは、少なくともガラクト脂質を加水分解することができ、且つ/或いはアシル基を少なくともガラクト脂質から一又は二以上のアシル受容体基質に転移することができる、脂質アシルトランスフェラーゼであり、酵素は、配列番号37に示されるアミノ酸配列、又はこの配列と少なくとも60%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0072】
好ましくは、本発明による方法及び使用において使われる脂質アシルトランスフェラーゼは、少なくともガラクト脂質を加水分解することができ、且つ/或いはアシル基を少なくともガラクト脂質から一又は二以上のアシル受容体基質にアシル基を転移することができる、脂質アシルトランスフェラーゼであり、酵素は、サーモビフィダ種、好ましくはサーモビフィダ・フスカから得ることができる、好ましくは得られたものである。
【0073】
好ましくは、本発明による方法及び使用において使われる脂質アシルトランスフェラーゼは、少なくともガラクト脂質を加水分解することができ、且つ/或いはアシル基を少なくともガラクト脂質から一又は二以上のアシル受容体基質に、転移することができる脂肪分解酵素であり、酵素は、コリネバクテリウム種、好ましくはコリネバクテリウム・エフィシェンスから得ることができる、好ましくは得られたものである。
【0074】
追加的な実施形態では、本発明による方法及び使用において使われる脂質アシルトランスフェラーゼは、配列番号37、38、40、41、43、45、若しくは47で示されるアミノ酸配列のうちいずれか1つを、又はこれらの配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、若しくは98%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、或いは、配列番号39、42、44、46、若しくは48に示されるヌクレオチド配列のうちいずれか1つにより、又はこれらの配列と、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、若しくは98%の同一性を有するヌクレオチド配列によってコード化されている脂質アシルトランスフェラーゼである。
【0075】
追加的な実施形態では、本発明による方法及び使用において使われる脂質アシルトランスフェラーゼは、配列番号38、40、41、45、若しくは47で示されるアミノ配列のうちいずれか1つを、又は本明細書で記述されている使用のためのこれらの配列と、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、若しくは98%の同一性を有するアミノ酸配列を含む脂質アシルトランスフェラーゼである。
【0076】
追加的な実施形態では、本発明による方法及び使用において使われる脂質アシルトランスフェラーゼは、配列番号38、40、若しくは47で示されるアミノ酸配列のうちいずれか1つを、又は本明細書で記述されている使用のためのこれらの配列と、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、若しくは98%の同一性を有するアミノ酸配列を含む脂質アシルトランスフェラーゼである。
【0077】
より好ましくは一実施形態では、本発明による方法及び使用において使われる脂質アシルトランスフェラーゼは、配列番号47で示されるアミノ酸配列を、又はこの配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、若しくは98%の同一性を有するアミノ酸配列を含む脂質アシルトランスフェラーゼである。
【0078】
別の実施形態では、本発明による方法及び使用において使われる脂質アシルトランスフェラーゼは、配列番号43若しくは44で示されるアミノ酸配列を、又はこれらの配列と、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、若しくは98%の同一性を有するアミノ酸配列を含む脂質アシルトランスフェラーゼである。
【0079】
別の実施形態では、本発明による方法及び使用において使われる脂質アシルトランスフェラーゼは、配列番号41で示されるアミノ酸配列を、又はこの配列と、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、若しくは98%の同一性を有するアミノ酸配列を含む脂質アシルトランスフェラーゼである。
【0080】
一実施形態では、本発明による方法及び使用において使われる脂質アシルトランスフェラーゼは、少なくともガラクト脂質を加水分解することができ、且つ/或いはアシル基を、少なくともガラクト脂質から一又は二以上のアシル受容体基質に転移することができる、脂質アシルトランスフェラーゼであり、酵素は、以下よりなる群、即ち、
a)配列番号36に示されるヌクレオチド配列を含む核酸、
b)遺伝子コードの変性により、配列番号36のヌクレオチド配列と関連をもつ核酸、及び
c)配列番号36に示されるヌクレオチド配列と少なくとも70%の同一性があるヌクレオチド配列を含む核酸、
から選択される核酸によりコード化されている。
【0081】
一実施形態では、本発明による脂質アシルトランスフェラーゼは、それぞれアクセッション番号NCIMB41226及びNCIMB41227により、2004年6月25日にNCIMB(National Collection of Industrial, Marine and Food Bacteria)、23 St.マハル通り、アバディーン、スコットランド、GBにおいて特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブタペスト条約の下に、Danisco A/S社 Langebrogade 1, DK-1001 Copenhagen K,デンマークより寄託されたストレプトマイセス株L130若しくはL131から得られる、好ましくは得られた脂質アシルトランスフェラーゼである。
【0082】
本発明による及び/又は本発明の方法における使用のための脂質アシルトランスフェラーゼは、以下のアミノ酸配列のいずれか1つを含み、且つ/又は以下のヌクレオチド配列によりコード化されている、
本発明による脂質アシルトランスフェラーゼをコード化するポリヌクレオチド(配列番号16)
本発明の脂質アシルトランスフェラーゼのアミノ酸配列(配列番号17)である。
【0083】
本発明の方法において使われる好適な脂質アシルトランスフェラーゼは、デフォルト設定を使用したベクターNTI(VectorNTI)のクラスタルW.ペアワイズアラインメントアルゴリズム(Clustal W pairwise alignment algorithm)のアラインXを使用して、L131(配列番号37)についてのアラインメントにより同定される。
【0084】
L131のアラインメント、並びにストレプトマイセス・アベルミチリス及びサーモビフィダ・フスカ由来の相同物は、GDSxモチーフ(L131、及びストレプトマイセス・アベルミチリス、及びサーモビフィダ・フスカにおけるGDSY)と、GGNDA又はGGNDLのいずれかであるGANDYボックスと、HPTブロック(保存された触媒的ヒスタジン)との保存を説明するものである。これらの三つの保存されたブロックは、図61にハイライトされている。
【0085】
pfamPfam00657共通配列(WO04/064987に記述されているように)、及び/又は本明細書に開示されている(配列番号37)L131の配列のいずれかとアラインした場合、三つの保存されたブロックである、GDSxブロック、GANDYブロック、及びHTPブロックを同定することが可能である(より詳細は、WO04/064987を参照せよ)。
【0086】
PfamPfam00657共通配列(WO04/064987に記述されているように)及び/又は本明細書に開示されている(配列番号37)L131の配列のいずれかとアラインした場合、
i) 本発明の、又は本発明の方法において使われる脂質アシルトランスフェラーゼ酵素は、好ましくはGDSxモチーフを、より好ましくはGDSL若しくはGDSYモチーフから選択されるGDSxモチーフを有し、
且つ/又は
ii)本発明の、又は本発明の方法において使われる脂質アシルトランスフェラーゼ酵素は、好ましくはGANDYブロックを、より好ましくはアミノ基GGNDxで、より好ましくはGGNDA若しくはGGNDLを含む、GANDYブロックを有し、
且つ/又は
iii)本発明の、又は本発明の方法において使われる酵素は、好ましくはHTPブロックを有し、
且つ好ましくは、
iv)本発明の、又は本発明の方法において使われるガラクトリパーゼ/脂質アシルトランスフェラーゼ酵素は、好ましくはGDSx又はGDSYモチーフ、及びアミノ基GGNDxで、好ましくはGGNDA若しくはGGNDLを含むGANDYブロック、及びHTPブロック(保存されたヒスタジン)を有する。
【0087】
本発明による方法又は使用において使われる脂質アシルトランスフェラーゼは、脂質アシルトランスフェラーゼの変異体である場合、酵素は、酵素がアミノ酸配列モチーフGDSXを含み、Xが、以下のアミノ酸残基L、A、V、I、F、Y、H、Q、T、N、M、又はSの一又は二以上であり、酵素の変異体が、セット2、又はセット4、又はセット6又はセット7(定義は後述)において定義されるアミノ酸残基のいずれか一又は二以上の箇所で親配列と比較した場合に、一又は二以上のアミノ酸の改変を含んでいる、ということで特徴づけられる。
【0088】
例えば、本発明の方法又は使用において使われる脂質アシルトランスフェラーゼの変異体は、酵素が、アミノ酸配列モチーフGDSXを含み、Xが、以下のアミノ酸残基L、A、V、I、F、Y、H、Q、T、N、M、又はSの一又は二以上であり、酵素の変異体が、本明細書で教示されている1IVN.PDB及び/又は1DEO.PDBとp10480の結晶構造座標(crystal structure coordinates)の構造アラインメントにより好ましくは得られる、本明細書で定義されるp10480構造モデル(structural model)と構造的にアラインされている前記親配列により同定されるセット2、又はセット4、又はセット6、又はセット7(定義は後述)において詳細に記述されるアミノ酸残基のいずれか一又は二以上の箇所で親配列と比較した場合に、一又は二以上のアミノ酸の改変を含んでいる、ということで特徴づけられる。
【0089】
追加的な実施形態では、発明の方法又は使用において使われる脂質アシルトランスフェラーゼの変異体は、酵素が、アミノ酸配列モチーフGDSXを含み、Xが、以下のアミノ酸残基L、A、V、I、F、Y、H、Q、T、N、M、又はSの一又は二以上であり、酵素の変異体が、前記親配列がpfam共通配列(配列番号2−図12)にアラインしたとき、また本明細書で教示されているベストフィットオーバーラップ(best fit overlap)(図30を参照)を確かにするためにp10480の構造モデルにより改変されたときに、同定されたセット2において教示のあるアミノ酸残基の一又は二以上の箇所で親配列と比較した場合に、一又は二以上のアミノ酸の改変を含んでいる、ということで特徴づけられる。
【0090】
好適には、脂質アシルトランスフェラーゼ酵素の変異体は、配列番号34の配列アラインメントにより同定される、セット2、又はセット4、又はセット6、又はセット7(定義は後述)において定義される、一又は二以上のいずれかのアミノ酸残基における、一若しくは二以上のアミノ酸の変異を除いた、配列番号34、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号19、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号1、配列番号15、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号32、又は配列番号33に示されるアミノ酸配列である、アミノ酸配列を含む。
【0091】
或いは、脂質アシルトランスフェラーゼ酵素の変異体は、本明細書で教示されている1IVN.PDB及び/又は1DEO.PDBとp10480の結晶構造座標の構造アラインメントにより好ましくは得られる、本明細書で定義されるp10480構造モデルと構造的にアラインされている親配列により同定される、セット2、又はセット4、又はセット6、又はセット7において定義される、一又は二以上のいずれかのアミノ酸残基における、一若しくは二以上のアミノ酸の変異を除いた、配列番号34、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号19、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号1、配列番号15、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号32、又は配列番号33に示されるアミノ酸配列である、アミノ酸配列を含む酵素の変異体である。
【0092】
或いは、脂質アシルトランスフェラーゼ酵素の変異体は、親配列がpfam共通配列(セット2)とアラインするとき、また下記に記述されているようにベストフィットオーバーラップを確かにするためにP10480を構造モデルにより改変されているときに、同定されたセット2において教示される、一又は二以上のいずれかのアミノ酸残基における、一若しくは二以上のアミノ酸の変異を除いた、配列番号34、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号19、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号1、配列番号15、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号32、又は配列番号33に示されるアミノ酸配列である、アミノ酸配列を含む酵素の変異体である。
【0093】
本明細書で使用される「改変する」(modifying)という用語は、付加、置換、及び/又は削除することを意味する。好ましくは、「改変する」という用語は、置換するという意味である。
【0094】
誤解を避けるため、アミノ酸が親酵素において置換される場合、好ましくは、アミノ酸は、親酵素におけるポジションに元々あるアミノ酸と異なるアミノ酸と置換され、それゆえ酵素の変異体を作り出す。言いかえれば、「置換」という用語は、アミノ酸を同一のアミノ酸と代替することを対象としない。
【0095】
好ましくは、親酵素は、配列番号34、及び/又は配列番号15、及び/又は配列番号35に示されるアミノ酸配列を含む酵素である。
【0096】
好ましくは、酵素の変異体は、セット2、又はセット4、又はセット6、又はセット7において定義される、一又は二以上のいずれかのアミノ酸残基における、一又は二以上のアミノ酸の改変を除いた、配列番号34又は配列番号35に示されるアミノ酸配列である、アミノ酸配列を含む酵素である。
【0097】
一実施形態では、好ましくは、酵素の変異体は、セット4で定義されたアミノ酸残基の少なくとも1つにおいて、親配列と比較して一又は二以上のアミノ酸の改変を含む。
【0098】
好適には、酵素の変異体は、親酵素を比較して、一又は二以上の以下のアミノ酸の改変
S3E、A、G、K、M、Y、R、P、N、T又はG
E309Q、R、又はA、好ましくはQ又はR
―318Y、H、S、又はY、好ましくはY、
を含む。
【0099】
好ましくは、GDSXモチーフのXは、Lである。それゆえ、好ましくは、親酵素はアミノ酸配列モチーフGDSLを含む。
【0100】
好ましくは、脂質アシルトランスフェラーゼ酵素の変異体を作り出す方法は、さらに一又は二以上の以下の
・ 構造的相同性マッピング(structural homology mapping)、又は
・ 配列相同性アラインメント、
のステップを含む。
【0101】
好適には、構造的相同性マッピングは、一又は二以上の以下の
i) 図46に示される構造モデル(1IVN.PDB)と親配列をアラインするステップ
ii) 活性部位(図47参照)(セット1又はセット2において定義される一又は二以上のアミノ酸残基のような)におけるグリセロール分子の中心炭素原子を中心として10Å以内にある一又は二以上のアミノ酸残基を選択するステップ
iii) 前記親配列において、ステップ(ii)により選択された一又は二以上のアミノ酸を改変するステップ
を含む。
【0102】
一実施形態では、選択されたアミノ酸残基は、活性部位(図47参照)におけるグリセロール分子の中心炭素原子を中心として9以内、好ましくは、8、7、6、5、4又は3Å以内に存在する。
【0103】
好適には、構造的相同性マッピングは、一又は二以上の以下の、
i) 図46に示される構造モデル(1IVN.PDB)と親配列をアラインするステップ
ii) 活性部位(図47参照)(セット1又はセット2において定義される一又は二以上のアミノ酸残基のような)におけるグリセロール分子の中心炭素原子を中心として10Å以内にある一又は二以上のアミノ酸を選択するステップ
iii)ステップ(ii)により選択された一又は二以上のアミノ酸が、高度に保存されている(特に、活性部位、及び/又はGDSxモチーフの一部、及び/又はGANDYモチーフの一部)かどうかを決定するステップ、及び
iv) 前記親配列においてステップ(iii)により同定された保存領域を除いた、ステップ(ii)により選択された一又は二以上のアミノ酸を改変するステップ
を含む。
【0104】
一実施形態では、選択されたアミノ酸残基は、活性部位(図47参照)におけるグリセロール分子の中心炭素原子を中心として9以内、好ましくは、8、7、6、5、4又は3Å以内に存在する。
【0105】
或いは、又は上述の構造的相同性マッピングと組み合わせて、構造的相同的マッピングは、P10480モデルと1IVNに覆われた(overlaid)、pfamアラインメント(アラインメント2、図48)から由来する特異的なループ領域(LRs)又は介在領域(intervening regions)(IVRs)によって行われる。ループ領域(LRs)又は介在領域(IVRs)は、以下の表に定義されている。
【0106】
【表1】
本発明のいくつかの実施形態では、本発明の方法及び使用に使われる脂質アシルトランスフェラーゼ酵素の変異体は、セット1〜4及び6〜7のいずれの1つにおいて定義される、一又は二以上のアミノ酸においてアミノ酸の改変を含むだけでなく、上記に定義された介在領域(IVR1〜6)(好ましくはIVR3、5、及び6の一又は二以上において、より好ましくはIVR5若しくはIVR6において)の一又は二以上において、並びに/或いは、上記に定義されているループ領域(LR1〜5)(好ましくは、LR1、LR2若しくはLR5の一又は二以上において、より好ましくはLR5において)の一又は二以上において、少なくとも1つのアミノ酸の改変をもまた含む。
【0107】
一実施形態では、本発明の方法及び使用において使われるアシルトランスフェラーゼの変異体は、セット2、4、6及び7の一又は二以上によって定義されるのみでなく、IVR1〜6(好ましくはIVR3、5、若しくは6において、より好ましくはIVR5若しくはLVR6において)の一又は二以上において、或いはLR1〜5(好ましくはLR1、LR2若しくはLR5において、より好ましくはLR5において)の一又は二以上において、一又は二以上のアミノ酸改変をもまた含む。
【0108】
好適には、本発明の方法及び使用において使われるアシルトランスフェラーゼの変異体は、セット1又は2においてだけでなくIVR3においても、一又は二以上のアミノ酸改変を含む。
【0109】
好適には、本発明の方法及び使用において使われるアシルトランスフェラーゼの変異体は、セット1又は2においてだけでなくIVR5においても、一又は二以上のアミノ酸改変を含む。
【0110】
好適には、本発明の方法及び使用において使われるアシルトランスフェラーゼの変異体は、セット1又は2においてだけでなくIVR6においても、一又は二以上のアミノ酸改変を含む。
【0111】
好適には、本発明の方法及び使用において使われるアシルトランスフェラーゼの変異体は、セット1又は2だけでなくLR1においても、一又は二以上のアミノ酸改変を含む。
【0112】
好適には、本発明の方法及び使用において使われるアシルトランスフェラーゼの変異体は、セット1又は2においてだけでなくLR2においても、一又は二以上のアミノ酸改変を含む。
【0113】
同様に、本発明のいくつかの実施形態では、本発明の方法及び使用において使われるアシルトランスフェラーゼの変異体は、活性部位(図47参照)におけるグリセロール分子の中心炭素原子を中心として10、好ましくは、9、8、7、6、5、4又は3Å以内に存在する一又は二以上のアミノ酸におけるアミノ酸残基の改変を含むだけでなく、一又は二以上の上記に定義されている介在領域(IVR1〜6)(好ましくはIVR3、5、若しくは6の一又は二以上において、より好ましくはIVR5若しくはLVR6において)の一又は二以上において、並びに/或いは上記に定義されたループ領域(LR1〜5)(好ましくはLR1、LR2若しくはLR5の一又は2以上において、より好ましくはLR5において)の一又は二以上において、少なくとも1つのアミノ酸改変をもまた含む。
【0114】
一実施形態では、好ましくは、アミノ酸改変は、10Å以内であって、且つLR5内に存在する一又は二以上のアミノ酸残基の位置である。
【0115】
それゆえ、構造的相同性マッピングは、一又は二以上の以下の、
i) 親配列を、図46に示される構造モデル(1IVN.PDB)とアラインするステップ
ii) 活性部位(図47参照)(セット1又はセット2において定義される一又は二以上のアミノ酸残基のような)において、グリセロール分子の中心炭素原子を中心として10Å以内に存在する、一又は二以上のアミノ酸残基を選択し、
且つ/或いは、
IVR1〜6において(好ましくはIVR3、5、若しくは6において、より好ましくはIVR5若しくはLVR6において)、一又は二以上のアミノ酸残基を選択し、
且つ/或いは、
LR1〜5において(好ましくはLR1、LR2若しくはLR5において、より好ましくはLR5において)、一又は二以上のアミノ酸残基を選択するステップ
iii)前記親配列において、ステップii)により選択された一又は二以上のアミノ酸を改変するステップ
を含む。
【0116】
一実施形態では、選択されたアミノ酸残基は、活性部位(図47参照)においてグリセロール分子の中心炭素原子を中心として9以内、好ましくは8、7、6、5、4又は3Å以内に存在する。
【0117】
好適には、構造的相同性マッピングは一又は二以上の以下の、
i) 親配列を、図46に示される構造モデル(1IVN.PDB)とアラインするステップ、
ii) 活性部位(図47参照)(セット1又はセット2に定義される一又は二以上のアミノ酸残基のように)においてグリセロール分子の中心炭素原子を中心として10Å以内に存在する、一又は二以上のアミノ酸残基を選択し、
且つ/或いは、
IVR1〜6(好ましくはIVR3、5、若しくは6において、より好ましくはIVR5若しくはLVR6において)において、一又は二以上のアミノ酸残基を選択し、
且つ/或いは、
LR1〜5(好ましくはLR1、LR2若しくはLR5において、より好ましくはLR5において)において、一又は二以上のアミノ酸残基を選択するステップ、
iii)ステップ(ii)により選択された一又は二以上のアミノ酸が、高度に保存されている(特に、活性部位、及び/又はGDSxモチーフの一部、及び/又はGANDYモチーフの一部が、)かどうかを決定するステップ、
且つ、
前記親配列においてステップ(iii)により同定された高度に保存されている領域を除いた、ステップ(ii)により選択された一又は二以上のアミノ酸を改変するステップ、
を含む。
【0118】
好適には、上記に詳述された方法において選択された一又は二以上のアミノ酸は、活性部位(図47参照)(セット1又はセット2に定義される一又は二以上のアミノ酸残基のように)においてグリセロール分子の中心炭素原子を中心として10Å以内に存在するばかりでなく、IVR1〜6(好ましくはIVR3、5、若しくは6において、より好ましくはIVR5若しくはLVR6において)の一又は二以上において、或いはLR1〜5(好ましくはLR1、LR2若しくはLR5において、より好ましくはLR5において)の一又は二以上においてもまた存在する。
【0119】
一実施形態では、好ましくは、一又は二以上のアミノ酸改変は、LR5において行われる。改変がLR5にあるときは、改変は、セット5において定義されるものではない。好適には、一又は二以上のアミノ酸改変は、LR5によって定義される領域にあるだけではなく、セット2、セット4、セット6、セット7の一又は二以上におけるアミノ酸を構成する。
【0120】
好適には、配列相同性アラインメントは、一又は二以上の以下の、
i) 一番目の親脂質アシルトランスフェラーゼを選ぶステップ、
ii) 目的の(desirable)活性を有する二番目に関連した脂質アシルトランスフェラーゼを同定するステップ、
iii)前記一番目の親脂質アシルトランスフェラーゼと二番目に関連した脂質アシルトランスフェラーゼをアラインするステップ、
iv) 2つの配列の間の異なるアミノ酸残基を同定するステップ、
及び
v) 前記親脂質アシルトランスフェラーゼにおいて、ステップ(iv)により同定されたアミノ酸残基の一又は二以上を改変するステップ、
を含む。
【0121】
好適には、配列相同性アラインメントは、一又は二以上の以下の、
i) 一番目の親脂質アシルトランスフェラーゼを選ぶステップ、
ii) 目的の活性を有する二番目に関連した脂質アシルトランスフェラーゼを同定するステップ、
iii)前記一番目の親脂質アシルトランスフェラーゼと二番目に関連した脂質アシルトランスフェラーゼをアラインするステップ、
iv) 2つの配列の間の異なるアミノ酸残基を同定するステップ、
v) ステップ(iv)により選択されたアミノ酸残基の一又は二以上が、高度に保存された(特に活性部位の残基及び/又はGDSxモチーフの一部及び/又はGANDYモチーフの一部)であるかを決定するステップ、
及び
vi) 前記親配列におけるステップ(v)により同定される保存領域を排除するステップ(iv)により同定されたアミノ酸残基の一又は二以上を改変するステップ、
を含む。
【0122】
好適には、一番目の親脂質アシルトランスフェラーゼは、以下のアミノ酸配列、配列番号34、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号19、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号1、配列番号15、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号32、配列番号33のいずれか1つを含む。
【0123】
好適には、二番目に関連した脂質アシルトランスフェラーゼは、以下のアミノ酸配列、配列番号3、配列番号34、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号19、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号1、配列番号15、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号32、配列番号33のいずれか1つを含む。
【0124】
酵素の変異体は、少なくとも、親酵素と比較して少なくとも1つのアミノ酸改変を含まなければならない。いくつかの実施形態では、酵素の変異体は、少なくとも2、好ましくは少なくとも3、好ましくは少なくとも4、好ましくは少なくとも5、好ましくは少なくとも6、好ましくは少なくとも7、好ましくは少なくとも8、好ましくは少なくとも9、好ましくは少なくとも10の親配列と比較したアミノ酸改変を含む。
【0125】
本明細書の特異的なアミノ酸残基に対応した場合、番号付与は、配列の変異体と、配列番号34若しくは配列番号35に示された参照配列とのアラインメントより得られるものである。
一態様では、好ましくは、酵素の変異体は、一又は二以上の以下のアミノ酸置換を含む。
S3A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、T、V、W、又はY、及び/又は、
L17A、C、D、E、F、G、H、I、K、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、又はY、及び/又は、
S18A、C、D、E、F、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、T、W、又はY、及び/又は、
K22A、C、D、E、F、G、H、I、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、又はY、及び/又は、
M23A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、N、P、Q、R、S、T、V、W、又はY、及び/又は、
Y30A、C、D、E、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、又はW、及び/又は、
G40A、C、D、E、F、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、又はY、及び/又は、
N80A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、P、Q、R、S、T、V、W、又はY、及び/又は、
P81A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、Q、R、S、T、V、W、又はY、及び/又は、
K82A、C、D、E、F、G、H、I、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、又はY、及び/又は、
N87A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、P、Q、R、S、T、V、W、又はY、及び/又は、
N88A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、P、Q、R、S、T、V、W、又はY、及び/又は、
W111A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、又はY、及び/又は、
V112A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、W、又はY、及び/又は、
A114C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、又はY、及び/又は、
Y117A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、又はW、及び/又は、
L118A、C、D、E、F、G、H、I、K、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、又はY、及び/又は、
P156A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、Q、R、S、T、V、W、又はY、及び/又は、
D157A、C、E、F、G、H、I、K、L、M、P、Q、R、S、T、V、W、又はY、及び/又は、
G159A、C、D、E、F、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、又はY、及び/又は、
Q160A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、R、S、T、V、W、又はY、及び/又は、
N161A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、P、Q、R、S、T、V、W、又はY、及び/又は、
P162A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、Q、R、S、T、V、W、又はY、及び/又は、
S163A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、T、V、W、又はY、及び/又は、
A164C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、又はY、及び/又は、
R165A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、S、T、V、W、又はY、及び/又は、
S166A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、T、V、W、又はY、及び/又は、
Q167A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、R、S、T、V、W、又はY、及び/又は、
K168A、C、D、E、F、G、H、I、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、又はY、及び/又は、
V169A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、W、又はY、及び/又は、
V170A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、W、又はY、及び/又は、
E171A、C、D、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、又はY、及び/又は、
A172C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、又はY、及び/又は、
Y179A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V又はW、及び/又は、
H180A、C、D、E、F、G、I、K、L、M、P、Q、R、S、T、V、W、又はY、及び/又は、
N181A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、P、Q、R、S、T、V、W、又はY、及び/又は、
Q182A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、R、S、T、V、W、又はY、好ましくはK、及び/又は、
M209A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、N、P、Q、R、S、T、V、W、又はY、及び/又は、
L210A、C、D、E、F、G、H、I、K、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、又はY、及び/又は、
R211A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、又はY、及び/又は、
N215A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、又はY、及び/又は、
Y226A、C、D、E、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、又はW、及び/又は、
Y230A、C、D、E、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、又はW、及び/又は、
K284A、C、D、E、F、G、H、I、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、又はY、及び/又は、
M285A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、N、P、Q、R、S、T、V、W、又はY、及び/又は、
Q289A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、R、S、T、V、W、又はY、及び/又は、
V290A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、W、又はY、及び/又は、
E309A、C、D、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、又はY、及び/又は、
S310A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、T、V、W、又はY
それに加えて、又は或いは、一又は二以上のC末端の伸長がある。好ましくは、付加的なC−末端の伸長は、一又は二以上の脂肪族のアミノ酸から、好ましくは、非極性のアミノ酸から、より好ましくは、I,L,V,又はGから成るものである。それゆえ、本発明はさらに、以下のC−末端の伸長、即ち318I、318L、318V、318Gの一又は二以上を含む酵素の変異体を提供するものである。
【0126】
親バックボーン(backbone)の残基が、p10480及び/又は1IVNの相同性アラインメント及び/又は構造アラインメントにより決定されるような、p10480(配列番号2)における残基とは異なる場合には、P10480(配列番号2)における以下のアミノ酸残基、即ちSer3、Leu17、Lys22、Met23、Gly40、Asn80、Pro81、Lys82、Asn87、Asn88、Trp111、Val112、Ala114、Tyr117、Leu118、Pro156、Gly159、Gln160、Asn161、Pro162、Ser163、Ala164、Arg165、Ser166、Gln167、Lys168、Val169、Val170、Glu171、Ala172、Tyr179、His180、Asn181、Gln182、Met209、Leu210、Arg211、Asn215、Lys284、Met285、Gln289、Val290、Glu309、又はSer310)の一又は二以上のいずれかとアラインする残基とP10480に見い出されるそれぞれの残基とを置換することが望ましい。
【0127】
ホスファチジルコリン(PC)などのリン脂質に対する、減少した加水分解活性を有する酵素の変異体はまた、リン脂質からの増加したトランスフェラーゼ活性を有する。
【0128】
ホスファチジルコリン(PC)などのリン脂質からの、増加したトランスフェラーゼ活性を有する酵素の変異体はまた、増加した加水分解活性を有する。
【0129】
好適には、一又は二以上の以下の部位、即ちLeu17、Ala114、Tyr179、His180、Asn181、Met209、Leu210、Arg211、Asn215、Lys284、Met285、Gln289、Val290は結合している基質に関係する。
【0130】
一又は二以上の以下の残基の改変は、リン脂質に対して絶対的に増加したトランスフェラーゼ活性を有する酵素の変異体を生じる。
【0131】
S3、D157、S310、E309、Y179、N215、K22、Q289、M23、H180、M209、L210、R211、P81、V112、N80、L82、N88、N87
リン脂質からの改良されたトランスフェラーゼ活性を有する酵素の変異体を供給する特異的な改変は、一又は二以上の以下の、
S3A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、T、V、W又はY、好ましくは、N、E、K,R、A、P、又はM、最も好ましくはS3A
D157A、C、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W又はY、好ましくは、D157S、R、E、N,G、T、V、Q,K又はC
S310A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、T、V、W又はY、好ましくはS310T−318E
E309A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、T、V、W又はY、好ましくはE309R、E、L、R又はA
Y179A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V又はW、好ましくは、Y179D、T、E、R、N、V、K,Q又はS、最も好ましくはE、R、N、V、K又はQ
N215A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、P、Q、R、S、T、V、W又はY、好ましくは、N215S、L、R又はY
K22A、C、D、E、F、G、H、I、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W又はY、好ましくは、K22E、R、C、又はA
Q289A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、R、S、T、V、W又はY、好ましくは、Q289R、E、G、P又はN
M23A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、N、P、Q、R、S、T、V、W又はY、好ましくは、M23K、Q、L、G、T又はS
H180A、C、D、E、F、G、I、K、L、M、P、Q、R、S、T、V、W又はY、好ましくは、H180Q、R又はK
M209A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、N、P、Q、R、S、T、V、W又はY、好ましくは、M209Q、S、R、A、N、Y、E、V又はL
L210A、C、D、E、F、G、H、I、K、M、N、P、Q、R、S、T、V、W又はY、好ましくは、L210R、A、V、S、T、I、W又はM
R211A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、S、T、V、W又はY、好ましくは、R211T
P81A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、Q、R、S、T、V、W又はY、好ましくは、P81G
V112A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、W又はY、好ましくは、V112C
N80A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、P、Q、R、S、T、V、W又はY、好ましくは、N80R、G、N、D、P、T、E、V、A又はG
L82A、C、D、E、F、G、H、I、M、N、P、Q、R、S、T、V、W又はY、好ましくは、L82N、S又はE
N88A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、P、Q、R、S、T、V、W又はY、好ましくは、N88C
N87A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、P、Q、R、S、T、V、W又はY、好ましくは、N87M又はG
から選択される。
【0132】
一又は二以上の以下の残基の改変、即ち、
S3 N、R、A、G
M23 K、Q、L、G、T、S
H180 R
L82 G
Y179 E、R、N、V、K又はQ
E309 R、S、L又はA
は、リン脂質に対する絶対的に増加したトランスフェラーゼ活性を有する酵素の変異体を生じる。
【0133】
一つの好ましい改変は、N80Dである。これは、特に参照配列の配列番号35を使用したときの場合である。それゆえ、本発明の好ましい実施形態では、本発明による脂質アシルトランスフェラーゼは、配列番号35を含む。
【0134】
上述したように、本明細書で特異的なアミノ酸残基を参照している場合、番号付与は、配列番号34又は配列番号35に示される参照配列の、配列の変異体のアラインメントから得られたものである。
【0135】
非常に好ましくは、本発明の方法及び使用において使われる脂質アシルトランスフェラーゼは、配列番号16(図10)に示されるアミノ酸配列と、又は75%若しくはそれ以上、好ましくは85%若しくはそれ以上、より好ましくは90%若しくはそれ以上、さらにより好ましくは95%若しくはそれ以上、さらにより好ましくは98%若しくはそれ以上、さらにより好ましくは99%若しくはそれ以上、配列番号16との同一性を有するアミノ酸配列を含む脂質アシルトランスフェラーゼである。この酵素は、酵素の変異体と見なされる。
【0136】
誤解を避けるため、特異的なアミノ酸が特異的部位、例えばL118である旨教示があるとき、これは、特に断りが無い場合は、配列番号34の残基番号118における特異的なアミノ酸に対応するものである。しかしながら、異なる親酵素における118位におけるアミノ酸残基は、ロイシンとは異なる。
【0137】
それゆえ、アミノ酸を118位の残基において置換することが教示されているとき、参照ではL118を作るようになっているが,配列番号34で示されるアミノ酸配列を有する酵素でない親配列のアミノ酸を置換するとき、新しい(置換する)アミノ酸は、配列番号34で教示されているものと同じである。これは、例えば、残基118位のアミノ酸がロイシンでなく、それゆえ、配列番号34における残基118位のアミノ酸と異なる場合である。言い換えれば、例えば118位において、親酵素は、そのポジションにロイシン以外のアミノ酸を有している場合、このアミノ酸は、本発明によりロイシンと置き換えられる。
【0138】
本発明の目的のため、同一性の程度は、同じ配列因子の番号に基づいている。本発明による同一性の程度は、好適には、以下のようなポリペプチド配列比較、即ちGAPクリエーションペナルティー3.0及びGAPエクステンションペナルティー0.1を使用して、GCGプログラムパッケージ(Program Manual for the Wisconsin Package, Version 8, August 1994, Genetics Computer Group, 575 Science Drive, Madison, Wisconsin, US53711)(Needleman & Wunsch (1970),J of Molecular Biology 48,443-45)において提供されているGAPのような、当業者に知られているコンピュータープログラムの手段によって決定される。好適には、アミノ酸配列に関しての同一性の程度は、少なくとも20以上の隣接するアミノ酸、好ましくは少なくとも30以上の隣接するアミノ酸、好ましくは少なくとも40以上の隣接するアミノ酸、好ましくは少なくとも50以上の隣接するアミノ酸、好ましくは少なくとも60以上の隣接するアミノ酸によって決定される。
【0139】
好適には、本発明による脂質アシルトランスフェラーゼ酵素は、以下の、アエロモナス、ストレプトマイセス、サッカロミセス、ラクトコッカス、マイコバクテリウム、ストレプトコッカス、ラクトバチルス、デサルフィトバクテリウム、バチルス、カンピロバクター、ビブリオナシエ、キシレラ、スルフォロブス、アスペルギルス、シゾサッカロミセス、リステリア、ナイセリア、メソルヒゾビウム、ラルストニア、ザントモナス、カンジダ、サーモビフィダ、及びコリネバクテリウム由来の一又は二以上の属の生物から得ることができる、又は得られたものである。
【0140】
好適には、本発明による脂質アシルトランスフェラーゼ酵素は、以下の、アエロモナス・ハイドロフィラ、アエロモナス・サルモニシダ、ストレプトマイセス・コレリコロル、ストレプトマイセス・リモスス、マイコバクテリウム、ストレプトコッカス・ピオゲネス、ラクトコッカス・ラクティス、ストレプトコッカス・ピオゲネス、ストレプトコッカス・サーモフィルス、ストレプトマイセス・サーモサッカリ、ストレプトマイセス・アベルミチリス、ラクトバチルス・ヘルべティカス、デサルフィトバクテリウム・デハロゲナンス、バチルス種、カンピロバクター・ジェジュニ、ビブリオナシエ、キシレラ・ファスティディオサ、スルフォロブス・ソルファタリクス、サッカロミセス・セルビシエ、アスペルギルス・テレウス、シゾサッカロミセス・ポンベ、リステリア・イノキュア、リステリア・モノサイトゲネス、ナイセリア・メニンギチジス、メソルヒゾビウム・ロティ、ラルストニア・ソラナセアラム、ザントモナス・カンペストリス、ザントモナス・アクソノポディス、カンジダ・パラプシロシス、サーモビフィダ・フスカ、及びコリネバクテリウム・エフィシェンスの、一又は二以上の生物から得ることができる、好ましくは得られたものである。
【0141】
一態様では、好ましくは本発明による脂質アシルトランスフェラーゼは、好ましくは一又は二以上の、アエロモナス・ハイドロフィラ、又はアエロモナス・サルモニシダから得ることができる、好ましくは得られたものである。
【0142】
一実施形態では、好適には、ステノール及び/又はスタノールは、一又は二以上の以下の構造的特徴、
i) 3−ベータヒドロキシ基、又は3−アルファヒドロキシ基、及び/又は
ii)シスポジションにおけるA:Bリング、又はトランスポジションにおけるA:Bリング、又はC5−C6が不飽和であること、
を有する。
【0143】
好適なステロールアシル受容体は、コレステロール、フィトステロール、例えば、アルファ−シトステロール、ベータ−シトステロール、スティグマステロール、エルゴステロール、カンペステロール、5,6−デヒドロステロール、ブラシカステロール、アルファ−スピナステロール、ベータ−スピナステロール、ガンマ−スピナステロール、デルタ−スピナステロール、フコステロール、ディモステロール、アスコステロール、セレビステロール、エピステロール、アナステロール、ハイポステロール、コンドリラステロール、デズモステロール、チャリノステロール、ポリフェラステロール、クリオナステロール、ステロールグリコシド、トコフェロール、トコトリエール、並びに他の天然の、又は合成の異性体及び派生物を含む。
【0144】
有利な一実施形態では、ステロールアシル受容体はトコフェロールである。好適には、トコフェロールは、一又は二以上のガンマ、デルタ、ベータ、又は、例えばd−アルファトコフェロール酸コハク酸を含むd−アルファトコフェロールである。一実施形態では、好ましくは、ステロールアシル受容体は、アルファトコフェロールである。
【0145】
一実施形態では、好ましくは、本発明による方法は、油にトコフェロールを、好ましくはアルファトコフェロールを添加するステップを含む。
【0146】
一実施形態では、好ましくは、ステロールアシル受容体は、コレステロールである。
【0147】
一態様では、好ましくは、ステロール及び/又はスタノールのアシル受容体は、コレステロール以外のステロール及び/又はスタノールである。
【0148】
本発明の一態様では、好適には二以上のステロール及び/又はスタノールは、アシル受容体として役割を果たし、好適には三以上のステロール及び/又はスタノールは、アシル受容体として役割を果たす。言い換えれば、本発明の一態様では、好適には、二以上のステロールエステル及び/又はスタノールエステルが作り出される。好適には、コレステロールがアシル受容体であるとき、一若しくは二以上の他のステロール、又は一若しくは二以上のスタノールもまた、アシル受容体として役割を果たす。それゆえ、一態様では、本発明は、トコフェロールエステルと、少なくとも1つの他のステロール又はスタノールエステルの組合せとの両方の、インサイチュの形成の方法を提供する。言い換えれば、本発明のいくつかの態様における脂質アシルトランスフェラーゼは、アシル基を脂質からトコフェロールと、少なくとも1つの他の別のステロール及び/又は少なくとも一のスタノールとの両方に転移する。
【0149】
いくつかの態様では、本発明により調整される油は、循環器系疾患のリスクを軽減するために使用される。
【0150】
一態様では、本発明により調整される油は、血清中のコレステロールを減らし、及び/又は低比重リポタンパク質を減らす。血清コレステロールと低比重リポタンパク質は例えばアテローム性動脈硬化症、及び/又は心疾患などのある種の人間の病気に関連しているものである。それゆえ、本発明により調整される油は、これらの病気のリスクを軽減するために使用されることが予想される。
【0151】
別の態様では、本発明は、循環器系疾患の治療及び/又は予防において使用される本発明による食用油の使用を提供する。
【0152】
それゆえ、本発明の一態様では、本発明は、アテローム性動脈硬化症及び/又は心疾患の治療及び/又は予防において使用される本発明による食用油の使用を提供する。
【0153】
さらに別の態様では、本発明は、本発明による食用油を含む薬剤を提供する。
【0154】
さらに別の態様では、本発明は、本発明による食用油の効果的な量を患者に投与することを含む方法であって、人間又は動物の患者における病気を治療及び/又は予防する方法を提供する。
【0155】
好適には、ステロールアシル受容体は、自然界で食用又は植物油に見出されるものである。
【0156】
或いは、又は加えて、ステロールアシル受容体は、食用又は植物油に加えられるものである。
【0157】
ステロール及び/又はスタノールが食用油に加えられる場合、ステロール及び/又はスタノールは、本発明による脂質アシルトランスフェラーゼを添加する前に、同時に、及び/又は後に加えられる。好適には、本発明は、本発明による酵素を添加する前に、又は同時に食用又は植物油に外生のステロール/スタノール、特にフィトステロール/フィトスタノールを加えることを含む。
【0158】
いくつかの態様では、食用油に存在するステロールの一又は二以上は、本発明により脂質アシルトランスフェラーゼが添加される前に、又は同時に一又は二以上のスタノールに変換される。ステロールをスタノールに変換する適切な方法が使用される。例えば、変換は、例えば化学的な水素化により行われる。変換は、本発明による脂質アシルトランスフェラーゼの添加の前に、又は本発明による脂質アシルトランスフェラーゼの添加と同時に行われる。好適には、ステロールをスタノールに変換する酵素は、WO00/061771に教示されている。
【0159】
好適には、本発明は、食用油の中でインサイチュにフィトスタノールエステルを作り出すために使用される。フィトスタノールエステルは、脂質の膜を通じることで増加した溶解性、生物学的利用能、及び増進された健康効果を有する(WO92/99640を参照せよ)。
【0160】
本発明の有利な点は、ステロール及び/又はスタノールエステルが、脱ガムの間に食用油で形成されることである。さらに有利な点は、酵素が食用油の遊離脂肪酸量が増加せず、又は実質的な増加をせずに脱ガムがなされることである。遊離脂肪酸の形成は、食用油においては有害である。好ましくは、本発明による方法は、遊離脂肪酸の蓄積が減少及び/又は除去されるように、食用油の脱ガムを行うことができる。理論にしばられることなく、本発明による、脂肪から除去された脂肪酸は、脂質アシルトランスフェラーゼにより、例えば、ステロール及び/又はスタノールのようなアシル受容体に転移される。それゆえ、食材における遊離脂肪酸の全体的なレベルは、有意な程度にまでも増加しない、又は増加するということはない。このことは、レシターゼウルトラ(登録商標)(Lecitase UltraTM)のようなホスホリパーゼが、食用油の酵素的脱ガムにおいて使用される場合の状況とは、鋭く対比される。特に、そのようなホスホリパーゼの使用は、食用油において有害となりうる遊離脂肪酸の量の増加をもたらす。レシターゼウルトラのようなホスホリパーゼA酵素が、本発明による脂質アシルトランスフェラーゼの代わりに使われたとしたならば蓄積するであろう遊離脂肪酸の量と比較した場合、本発明では、遊離脂肪酸の蓄積は減少し、且つ/又は除かれる。
【0161】
本発明による脂質アシルトランスフェラーゼは、植物又は食用油の酵素的脱ガムにおける使用に適切である。植物又は食用油の処理において、リン脂質の大部分を加水分解するために、食用又は植物油は本発明による脂質アシルトランスフェラーゼで処理される。好ましくは、脂質アシル基は、極性脂質からアシル受容体に転移される。脱ガム工程は典型的に、リン脂質の大部分(即ち50%以上)の加水分解のため食用油における、極性脂質の、特にリン脂質の含有量の減少を招く。典型的には、加水分解されたリン脂質を含む水相は、油から分離する。好適には、食用又は植物油は、始めに(本発明による酵素による前処理)、50〜250ppmのリン含有量を有する。
【0162】
当業者であれば承知しているように、本明細書で使用される「脱ガム」という用語は、ホスファチド(レシチン、リン脂質及び閉塞油(occluded oil)など)を、水和できる(hydratable)ホスファチドに変換することによる油の精製を意味する。脱ガムされた油は、より流動性があり、それゆえ脱ガムされていない油よりもよりよい取扱適性がある。
【0163】
本明細書における「トランスフェラーゼ」という用語は、「脂質アシルトランスフェラーゼ」という用語と置換え可能である。
【0164】
好適には、本明細書で定義される脂質アシルトランスフェラーゼは、一又は二以上の以下の、インターエステル交換(interesterification)、トランスエステル交換(transesterification)、アルコーリシス(alcoholysis)、加水分解といった反応を触媒する。
【0165】
「インターエステル交換」という用語は、脂質供与体が遊離アシル基でない場合に、脂質供与体と脂質受容体との間の、アシル基の酵素的に触媒された転移に対応する。
【0166】
本明細書で使われる「トランスエステル交換」という用語は、脂質供与体(遊離脂肪酸以外)からアシル受容体(水以外)への、酵素的に触媒されたアシル基の転移をいう。
【0167】
本明細書で使われるように、「アルコーリシス」という用語は、生成物の1つがアルコールのHと結合し、他の生成物がアルコールのORと結合するような、アルコールROHとの反応による酸誘導体の共有結合の酵素的開裂に対応する。
【0168】
本明細書で使われるように、「アルコール」という用語は、ヒドロキシ基を含むアルキル化合物に対応する。
【0169】
本明細書で使われるように、「加水分解」という用語は、アシル基の、脂質から水分子のOH基への酵素的触媒転移に対応する。
【0170】
本明細書で使われるように、「遊離脂肪酸量が増加せず、又は実質的な増加をせずに」という用語は、好ましくは、本発明による脂質アシルトランスフェラーゼが100%のトランスフェラーゼ活性を有している(即ち、アシル基の100%をアシル供与体からアシル受容体に、加水分解活性なしに転移する)ことを意味するが、しかしながら、酵素は、脂質アシル供与体に存在するアシル基の100%未満をアシル受容体に転移する。どのケースにおいても、好ましくは、アシルトランスフェラーゼ活性は、少なくとも5%、より好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、及びより好ましくは少なくとも98%の総酵素活性を占める。トランスフェラーゼ活性の%(即ち、総酵素活性のパーセンテージとしてのトランスフェラーゼ活性)は、以下のプロトコルにより決定される。
【0171】
本発明の方法において使われる適当な酵素は、好ましくは、後述のとおりの標準的なホスホリパーゼ活性アッセイにおけるホスホリパーゼ活性を有する。
【0172】
ホスホリパーゼ活性の決定(ホスホリパーゼ活性アッセイ(PLU−7)
基質
0.6%L−αホスファチジルコリン95% Plant(Avanti社製#441601)、0.4% Triton-X 100(Sigma社製X-100)及び5mMCaCl2 を0.05M HEPES緩衝剤pH7中に溶解した。
【0173】
アッセイ手順
400μlの基質が、1.5mlエッペンドルフチューブに加えられ、エッペンドルフサーモミキサー内に37℃にて5分間置かれた。T=0minに、50μlの酵素溶液が加えられた。酵素の代わりに水をいれたブランクも分析された。試料は、エッペンドルフサーモミキサー内において、37℃にて10分間10x100rpmで混合された。t=10minに、エッペンドルフチューブは、反応を停止するため、別のサーモミキサー内に99℃にて10分間置かれた。
【0174】
試料内の遊離脂肪酸は、Wako GmbH社製 NEFA C kitを用いて分析された。
【0175】
酵素活性PLU−7 pH7が、アッセイ条件下において1分ごとに形成されたマイクロモル脂肪酸として計算された。
【0176】
より好ましくは、脂質アシルトランスフェラーゼは、下記のプロトコルに定義されたトランスフェラーゼ活性をも有するであろう。
【0177】
アシルトランスフェラーゼ活性%の決定のためのプロトコル
本発明による脂質アシルトランスフェラーゼに加えられている食用油は、CHCl3:CH3OH2:1との以下の酵素反応で抽出され、脂質物質を含む有機相が単離され、下記に詳細が記されている手順により、GLC及びHPLCにより分析される。GLC及びHPLC分析から、遊離脂肪酸と一又は二以上のステロール/スタノールエステルとの量が決定される。本発明による酵素が添加されていないコントロールの食用油が、同様に分析される。
【0178】
計算
GLC及びHPLCの結果から、遊離脂肪酸とステロール/スタノールエステルの増加が計算される
Δ%脂肪酸 =% 脂肪酸(酵素)− % 脂肪酸(コントロール)
Mv脂肪酸 =脂肪酸の平均分子量
A=Δ%ステロールエステル/Mvステロールエステル(Δ%ステロールエステル=%ステロール/スタノールエステル(酵素)− %ステロール/スタノールエステル(コントロール)及びMvステロールエステル=ステロール/スタノールエステルの平均分子量である場合)。
【0179】
トランスフェラーゼ活性は、総酵素活性のパーセンテージとして計算される。
【0180】
%トランスフェラーゼ活性 = A x 100
A + Δ%脂肪酸(Mv脂肪酸)
遊離脂肪酸が食用油において増加しているとしても、それらは、好ましくは、実質的に、即ち有意な程度には増加していない。これにより我々において、遊離脂肪酸の増加は、食用油の質に不利に作用することはないことを意味する。
【0181】
アシルトランスフェラーゼ活性アッセイのために使用される食用油は、好ましくは、実施例3の方法を使用して、植物ステロール(1%)及びホスファチジルコリン(2%)の油が補完された大豆油である。アッセイのために使用された酵素濃度は、好ましくは0.2PLU−7/g油であり、より好ましくは0.08PLU−7/g油である。油に存在するリン脂質のレベル及び/又はステロールの変換の%は、好ましくは4時間後、より好ましくは20時間後に決定される。
【0182】
本発明のいくつかの態様では、本明細書で使用される「遊離脂肪酸量が実質的な増加をせずに」という用語は、本発明による脂質アシルトランスフェラーゼにより処理される食用油内の遊離脂肪酸の量が、従来のホスホリパーゼ酵素、例えばレシターゼウルトラ(Novoenzymes A/S社製、デンマーク)などが使われたときに形成された遊離脂肪酸の量と比較されるときのように、本発明による脂質アシルトランスフェラーゼ以外の酵素が使われた場合には、食用油内で形成される遊離脂肪酸の量よりも少ないことを意味する。
【0183】
油(上記の)の%トランスフェラーゼ活性を評価することに加えて、又はその代わりに、本発明の方法において使用するために最も好ましい脂質アシルトランスフェラーゼ酵素を同定するために、「本発明において使われる脂質アシルトランスフェラーゼを同定するためのプロトコル」と題されている以下のアッセイが用いられる。
【0184】
脂質アシルトランスフェラーゼを同定するためのプロトコル
本発明による脂質アシルトランスフェラーゼは、以下の結果をもたらす。
【0185】
i) 実施例3で教示されている方法を使用して、植物ステロール(1%)及びホスファチジルコリン(2%)油で補完された大豆油に存在するリン脂質の除去
及び/又は
ii)実施例3で教示されている方法を使用して、加えられたステロールの、ステロールエステルへの変換(変換%)。例5に教示されているステロールとステロールエステルのレベルを決定するGLCの方法が使用される。
【0186】
アッセイのために使用される酵素量は、0.2PLU−7/g油、好ましくは、0.08PLU−7/g油である。油に存在するリン脂質のレベル及び/又はステロールの変換(変換%)は、好ましくは4時間後、より好ましくは20時間後に決定される。
【0187】
脂質アシルトランスフェラーゼを同定するためのプロトコルにおいて、酵素処理後5%の水が好ましくは加えられ完全に油と混合される。油は、その後遠心分離(”Enzyme-catalyzed degumming of vegetable oils”by Buchold, H.and Laurgi A.-G., Fett Wissenschaft Technologie (1993),95(8),300-4,ISSN:0931-5985参照せよ)を使用して油及び水の相に分離され、油相は、その後以下のプロトコル(リン含有量のアッセイ)を使用して、リン含有量について分析される。
【0188】
リン含有量のアッセイ
脱ガム後の油に存在するリン脂質のレベルは、AOAC公定法(official method)999.10(>鉛、カドミウム、亜鉛、銅、又は鉄のマイクロ波分解後の食品原子吸光光度計における、ファーストアクション1999NMKL−AOAC方法)において教示されている試料調製による油の試料の最初の調製により決定される。油におけるリン脂質の量は、AOAC公定法985.01〔>植物とペットフードにおける金属と他の成分、誘導結合プラズマスペクトロスコーピック分析法(Inductively Coupled Plasma Spectroscopic Method)ファーストアクション1985ファイナルアクション1988〕による脱ガム後の油の試料におけるリン含有量を分析することにより測定される。
【0189】
脱ガム後の油に存在するリン含有量は、好ましくは50ppm未満、好ましくは40ppm未満、好ましくは30ppm未満、好ましくは20ppm未満、好ましくは10ppm未満、好ましくは5ppm未満である。脱ガム後の油は、実施例に説明されているように、実質的にリン脂質を含んでいない、即ち1ppm未満のリン脂質を含む。
【0190】
油に存在するステロールの変換%は、少なくとも1%、好ましくは少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、好ましくは少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%である。
【0191】
一実施形態では、油に存在するステロールの変換%は、少なくとも5%、好ましくは少なくとも20%である。
【0192】
低水分脱ガム
驚くべきことに、脂質アシルトランスフェラーゼが食用油の酵素的脱ガムの処理において使用される場合、酵素的脱ガムは、とても低い水分環境において行うことができることが見出された。幾分かの水分は、それでもやはり必要であるが、例えば、油に酵素を添加するときに、酵素は、1%未満、好ましくは0.5%、より好ましくは0.2%未満、より好ましくは1%未満といった少量の水に加えられる。
【0193】
好ましくは、本発明による処理及び使用における食用油の水分量は、1%未満、好ましくは0.5%未満、より好ましくは0.2%未満、より好ましくは0.1%未満である。
【0194】
それゆえ、本発明の有利な点の一つは、少量の水分(即ち、<5%、好ましくは<1%、好ましくは<0.5%、好ましくは<0.2%)が、酵素的脱ガムの間に使用されたとき、ガム(即ちリンを含む部分)は、例えば、固体沈殿物の形で油から分離する。固体沈殿物は、単に油を静かに移す、又は例えば濾過によりガムを除去するなどの方法により、脱ガムされた油から容易に除去されうる。
【0195】
このことは、油に相当量の水が加えられる従来の酵素的脱ガム処理とはっきりと対照をなすものである。これは、従来の酵素的脱ガム処理においては、脱ガム後、高い水分量のためリンを含む部分(たとえばリゾ脂質を含む部分)を含む水相を得ることになるからである。この水相は、除去されなければならないものであり、例えば、遠心分離により除去されうるものである。しかしながら、水相の除去は、本発明の処理に使用する場合に得られる固体沈殿物の除去よりも、かなり困難である。
【0196】
それゆえ、本発明における酵素的脱ガム処理は、「低水分脱ガム処理」として見なすことができる。
【0197】
本発明の一実施形態では、ガムは、油の遠心分離により、油を水分5%に調整することにより除去される(”Enzyme-catalyzed degumming of vegetable oils”by Buchold, H. and Laurgi A.-G.,Fett Wissenschaft Technologie (1993),95(8), 300-4参照)。
【0198】
それゆえ、本発明は、膵臓由来のホスホリパーゼ及びレシターゼウルトラのような従来のホスホリパーゼを使用するときに必要とされる、脱ガム前の前洗浄ステップ及び/又は脱ガムの間に加えられる水を除去するステップのいずれをも必要とせずに、粗食用油(例えば粗大豆油)のような食用油の脱ガムのための処理を提供する。
【0199】
好ましくは、食用油は、4.5%未満、好ましくは4%未満、3%未満、2%未満、1%未満、0.5%未満の水分量を有する。
【0200】
好適には、食用油は、少なくとも0.3%、0.4%又は0.5%というような、少なくとも0.1%の水分を含む。
【0201】
本発明において使われる好ましい脂質アシルトランスフェラーゼは、油環境においてリン脂質に対し、高いリン脂質加水分解活性若しくは高いリン脂質のトランスフェラーゼ活性のような高い活性を有するものとして同定され、最も好ましくは、酵素的脱ガムにおいて使われる脂質アシルトランスフェラーゼは、リン脂質からステロールへの高いトランスフェラーゼ活性を有する。
【0202】
上記に詳述されているように、本発明の方法において使われる適当な他のアシルトランスフェラーゼは、pFam00657共通配列(配列番号1)のアラインメント及び/又は例えば配列番号28のGDSxアシルトランスフェラーゼのアラインメントのいずれかにより、GDSx、GANDY及びHPTブロックの存在を同定することにより同定される。脱ガムの適合性を調査するため、即ち総酵素活性の少なくとも5%、より好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも98%のトランスフェラーゼ活性を有する酵素を同定するためには、そのようなアシルトランスフェラーゼは、上記に詳述されている「アシルトランスフェラーゼ活性%の決定のためのプロトコル」を使用して試験される。
【0203】
本発明は、食用植物油及び/若しくは食用油の脱ガムにおける本発明による脂質アシルトランスフェラーゼの使用、並びに食用若しくは植物油の脱ガムのための方法に関する。
【0204】
一態様では、本発明は、水和できないリン(NHP)含有量を、比較的高いNHP量を含む油において、除去するために脂質アシルトランスフェラーゼを使用を含む方法を提供する。
【0205】
本明細書で使用される「食用油(edible oil)」という用語は、植物油を含む。
【0206】
好ましくは、本発明による処理の前の食用油は、50〜250ppm、好ましくは少なくとも60ppm、より好ましくは少なくとも100ppm、及びさらにより好ましくは少なくとも200ppm、さらにより好ましくは250ppm以上の水和できないリン含有量を含む。
【0207】
より好ましくは、本発明による処理の前の食用油は、60〜500ppmの範囲で、より好ましくは100〜500ppmの範囲で、及びさらにより好ましくは200〜500ppmの範囲で、水和できないリン含有量を含む。
【0208】
本明細書に対応する食用油は、比較的多量の水和できないリンを有するいずれかの油であり、これらは、水により脱ガムされた油、又はより好ましくは粗油若しくは準粗油である。
【0209】
一態様では、粗食用油は、本発明の方法を行う前に、350ppm以上、より好ましくは400ppm以上、さらにより好ましくは500ppm以上、及び最も好ましくは600ppm以上のリン含有量を有する。
【0210】
本発明による方法に含まれる油は、これらに限定されるわけではないが、一又は二以上の大豆油、キャノーラ油、コーン油、綿実油、パーム油、ココナッツ油、ピーナッツ油、オリーブ油、ベニハナ油、パーム核油、菜種油、及びひまわり油である。
【0211】
好ましくは、油は、一又は二以上の大豆油、ひまわり油及び菜種油(キャノーラ油と呼ばれることもある)である。
【0212】
より好ましくは、油は、一又は二以上の大豆油、ひまわり油又は菜種油である。
【0213】
より好ましくは、油は、一又は二以上の大豆油である。
【0214】
これらの油は、粗油、準粗油、又は水により脱ガムされた油の形である。
【0215】
本明細書に使われる「粗油(crude oil)」(脱ガムされていない油として本明細書で言及されている)は、圧搾された、若しくは抽出された油、又は例えば菜種、大豆、ひまわりからの油の混合物である。粗油におけるホスファチド含有量は、200〜1200ppmの範囲の、より好ましくは250〜1200ppmの範囲のリン含有量に相当する、0.5〜3%w/wの範囲で変化する。ホスファチドは別として、粗油は、低濃度の炭水化物、糖類(sugar compounds)、及び金属/ホスファチド酸、Ca、Mg若しくはFeの錯体を含む。
【0216】
本明細書で使用されるように、「準粗油」は、粗油ではないが、ホスファチド含有量が250ppm以上、より好ましくは500ppm以上であるいずれかの油に対応する。そのような油は、例えば、粗油を下記に述べられている水による脱ガム処理に類似する処理を行うことで得ることができる。
【0217】
本明細書で使用されるように、「水−脱ガム油」は、1〜3%w/wの熱水を温かい(60〜90℃)の粗油と混合することを含む水−脱ガム処理により、典型的に得られる。通常の処理時間は、30〜60分である。水−脱ガムステップは、水和したときに油の中で不溶性になるホスファチドと粘着性のガムを除去する。水和したホスファチドとガムは、定着(settling)、濾過又は遠心分離により油から分離させることができるが、遠心分離がより普及した方法である。前記の水−脱ガム処理における本質的な目的は、水和したホスファチドを油から分離することである。上述の、油に熱水を混合することは、当業界における標準的な水−脱ガム手順において水溶液を油に混合することとして広く理解されている。
【0218】
長所として、本発明の方法及び使用は、低い水分(<5%、好ましくは2%未満、より好ましくは1%未満)環境における食用油の脱ガムを可能にする。それゆえ、脱ガムは、従来の酵素を使うときよりも少ない水を加えることでも行うことができる。本発明の更なる有利な点は、ステロールエステル(特にトコフェロールエステル)の形成である。さらに、本発明の長所として、リン脂質の除去(好ましくは完全な除去)がある。本発明の更なる長所は、フィトステロール、特にトコフェロールを除去せずにリン脂質を除去(好ましくは完全な除去)することである。フィトステロールのエステル化のため、油からのトコフェロールなどのフィトステロールの有意な除去は無く、その代わりに単にエステル化されることが好まれる。しかしながら、一実施例において、トコフェロールなどのフィトステロールの量は、減少する。そのような実施例においては、トコフェロールなどのフィトステロールの絶対的レベルは、好ましくは10%を超えない、或いは25%を超えない、或いは50%を超えない、或いは75%を超えずに減少する。本発明の更なる長所は、トリグリセリドの加水分解の無いリン脂質の除去(好ましくは完全な除去)である。
【0219】
参照を容易にするために、本発明のこれらの、又は追加的な態様は、適切な項目の見出しで論じられている。しかしながら、それぞれの項目における教示は、必ずしもそれぞれの個々の項目に限られるものではない。
【0220】
セットの定義
アミノ酸セット1
アミノ酸セット1
Gly8、Asp9、Ser10、Leu11、Ser12、Tyr15、Gly44、Asp45、Thr46、Glu69、Leu70、Gly71、Gly72、Asn73、Asp74、Gly75、Leu76、Gln106、Ile107、Arg108、Leu109、Pro110、Tyr113、Phe121、Phe139、Phe140、Met141、Tyr145、Met151、Asp154、His157、Gly155、Ile156、Pro158
GDSxと触媒残基のように高度に保存されたモチーフは、セット1(残基は下線が引かれている)から除外された。誤解を避けるため、セット1は、1IVNモデルの活性部位におけるグリセロールの中心炭素原子から10Å以内にあるアミノ酸残基を定義するものとする。
【0221】
アミノ酸セット2
アミノ酸セット2(アミノ酸の番号は、P10480成熟配列におけるアミノ酸に対応することに留意すること)
Leu17、Lys22、Met23、Gly40、Asn80、Pro81、Lys82、Asn87、Asn88、Trp111、Val112、Ala114、Tyr117、Leu118、Pro156、Gly159、Gln160、Asn161、Pro162、Ser163、Ala164、Arg165、Ser166、Gln167、Lys168、Val169、Val170、Glu171、Ala172、Tyr179、His180、Asn181、Met209、Leu210、Arg211、Asn215、Lys284、Met285、Gln289、及びVal290。
【0222】
【表2】
【0223】
アミノ酸セット3
アミノ酸セット3は、セット2と同一であるが、アエロモナス・サルモニシダ(配列番号28)コード配列に対応しており、即ちセット3においては、シグナル配列(配列番号28)を含むタンパク質と比較した、成熟タンパク質(配列番号2)におけるアミノ酸番号付与との間の違いを反映するので、アミノ酸残基番号が18個より多いものとなっている。
【0224】
アエロモナス・サルモニシダGDSX(配列番号28)の成熟タンパク質、及びアエロモナス・ハイドロフィラGDSX(配列番号26)では、5つのアミノ酸が異なる。それらは、Thr3Ser、Gln182Lys、Glu309Ala、Ser310Asn、Gly318―、であり、サルモニシダ残基は最初に記載され、ハイドロフィラ残基は、最後に記載されている(図59)。ハイドロフィラタンパク質は、317アミノ酸長のみであり、318位の残基を欠いている。アエロモナス・サルモニシダ GDSXは、アエロモナス・ハイドロフィラタンパク質よりも、ガラクト脂質基質のような極性脂質に対して相当高い活性を有する。部分的走査は、5つのアミノ酸位のすべてにおいて行なわれた。
【0225】
アミノ酸セット4
アミノ酸セット4は、S3、Q182、E309、S310及び―318である。
【0226】
アミノ酸セット5
F13S、D15N、S18G、S18V、Y30F、D116N、D116E、D157N、Y226F、D228N Y230F。
【0227】
アミノ酸セット6
アミノ酸セット6は、Ser3、Leu17、Lys22、Met23、Gly40、Asn80、Pro81、Lys82、Asn87、Asn88、Trp111、Val112、Ala114、Tyr117、Leu118、Pro156、Gly159、Gln160、Asn161、Pro162、Ser163、Ala164、Arg165、Ser166、Gln167、Lys168、Val169、Val170、Glu171、Ala172、Tyr179、His180、Asn181、Gln182、Met209、Leu210、Arg211、Asn215、Lys284、Met285、Gln289、Val290、Glu309、Ser310、―318である。
【0228】
セット6におけるアミノ酸の番号付与は、P10480(配列番号2)におけるアミノ酸残基に対応し、他の配列のバックボーンにおいて相当するアミノ酸は、P10480及び/又は1IVNに対する相同性アラインメント及び/又は構造アラインメントにより決定される。
【0229】
アミノ酸セット7
アミノ酸セット7は、Ser3、Leu17、Lys22、Met23、Gly40、Asn80、Pro81、Lys82、Asn87、Asn88、Trp111、Val112、Ala114、Tyr117、Leu118、Pro156、Gly159、Gln160、Asn161、Pro162、Ser163、Ala164、Arg165、Ser166、Gln167、Lys168、Val169、Val170、Glu171、Ala172、Tyr179、His180、Asn181、Gln182、Met209、Leu210、Arg211、Asn215、Lys284、Met285、Gln289、Val290、Glu309、Ser310、―318、Y30X(Xは、A、C、D、E、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、又はWから選択される)、Y226X(Xは、A、C、D、E、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、又はWから選択される)、Y230X(Xは、A、C、D、E、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、又はWから選択される)、S18X(Xは、A、C、D、E、F、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、T、W、又はYから選択される)、D157X(Xは、A、C、E、F、G、H、I、K、L、M、P、Q、R、S、T、V、W、又はYから選択される)である。
【0230】
セット7におけるアミノ酸の番号付与は、P10480(配列番号2)におけるアミノ酸残基に対応し、他の配列のバックボーンにおいて対応するアミノ酸は、P10480、及び/又は1IVNの相同性アラインメント及び/又は構造アラインメントにより決定される。
【0231】
単離された
ある態様において、好ましくは、本発明における使用のためのポリペプチド又はタンパク質は、単離された形態である。「単離された」という用語は、配列が、自然界においてその配列に自然に会合する他の成分を少なくとも実質的に有さず、自然界で存在する状態にあることを意味する。
【0232】
精製された
ある態様において、好ましくは本発明における使用のためのポリペプチド又はタンパク質は、精製された形態である。「精製された」という用語は、配列が、比較的純粋状態にあること、例えば少なくとも約51%純粋、又は少なくとも約75%純粋、又は少なくとも約80%純粋、又は少なくとも約90%純粋、又は少なくとも約95%純粋、又は少なくとも約98%純粋であるということを意味する。
【0233】
本発明によるポリペプチドをコード化しているヌクレオチド配列のクローニング
本明細書で定義される特異性を有するポリペプチド、又は改変に適しているポリペプチドのいずれかは、前記ポリペプチドを作り出す任意の細胞又は生物から単離される。ヌクレオチド配列の単離については当業界において様々な方法がよく知られている。
【0234】
例えば、ゲノムDNA及び/又はcDNAライブラリーは、ポリペプチドを作り出す生物由来の染色体DNA又はメッセンジャーRNAを使用して構築されることができる。ポリペプチドのアミノ酸配列が知られている場合、オリゴヌクレオチド標識プローブが合成され、且つ生物から作成された、ゲノムライブラリー由来のポリペプチドでコード化しているクローンを同定するために使用される。或いは、別の既知のポリペプチド遺伝子と相同の配列を含むオリゴヌクレオチド標識プローブは、ポリペプチドでコード化しているクローンを同定するために使用されうる。後者の場合、ストリンジェンシーがより低いハイブリダイゼーションと洗浄の条件が使用される。
【0235】
或いは、ポリペプチドでコード化しているクローンは、プラスミドのような発現ベクターにゲノムDNAの断片を挿入し、その結果得られたゲノムDNAライブラリーと酵素陰性のバクテリアをもって形質転換し、それから形質転換されたバクテリアをポリペプチドによって阻害された酵素を含む寒天培地に培養し、それによってポリペプチドを発現するクローンが同定されうる。
【0236】
さらに他には、ポリペプチドをコード化しているヌクレオチド配列は、確立された標準的な方法、例えばBeucage S.L. et al (1981) Tetrahedron Letters 22, p1859-1869 に記述されているphosphoroamidite法、又はMatthes et al (1984) EMBO J.3, p801-805 に記述されている方法により、合成で作成される。phosphoroamidite法においては、例えば、自動DNA合成機によってオリゴヌクレオチドが合成され、精製され、再会合され、連結され、そして適切なベクターにおいてクローン化される。
【0237】
ヌクレオチド配列は、合成、ゲノム又はcDNA由来の断片を標準的な技術により(適宜)連結することで作成された、ゲノム由来配列と合成配列との混合配列、合成配列とcDNA由来配列との混合配列、又はゲノム由来配列とcDNA由来配列との混合配列である。それぞれの連結された断片は、ヌクレオチド配列全体の様々な部分に相当する。DNA配列は、例えばUS4、683、202又は、Saiki R K et al(Science (1988) 239, pp487-491)に記述されているように、特定のプライマーを使用したポリメレラーゼ連鎖反応(PCR)によっても作成される。
【0238】
ヌクレオチド配列
本発明は、本明細書に定義されている特異性を有するポリペプチドをコード化するヌクレオチド配列をも含む。本明細書で使用される「ヌクレオチド配列」という用語は、オリゴヌクレオチド配列若しくはポリヌクレオチド配列、及び変異体、相同物、断片、それらの(それらの一部などの)派生物に対応する。ヌクレオチド配列は、ゲノム、又は合成、又は組換え由来であって、二重鎖又はセンス若しくはアンチセンス鎖のいずれかに相当する一本鎖である。
【0239】
本発明に関する「ヌクレオチド配列」という用語は、ゲノムDNA、cDNA、合成DNA、及びRNAを含む。好ましくはDNAを意味し、より好ましくは配列をコードするcDNAを意味する。
【0240】
好ましい実施例において、自然界に存在する野生型(native)ヌクレオチド配列が、やはり自然界に存在し前記野生型ヌクレオチド配列と自然に会合する配列に結合している場合、かかる野生型ヌクレオチド配列は、本明細書で定義される特異性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列自体には含まれない。参照を容易にするために、本発明者らは、この好ましい実施例を「非野生型(non-native)ヌクレオチド配列」と呼ぶ。この関連で、「野生型ヌクレオチド配列」とは、自然界に存在する配列が、その配列と自然に会合し、やはり自然界にある完全プロモーターと作動的に結合している完全ヌクレオチド配列をいう。それゆえ、本発明のポリペプチドは、それが由来する生物におけるヌクレオチド配列によって発現させることができるが、それが可能なのは、このヌクレオチド配列が、かかる生物内で自然に会合するプロモーターの制御下にない場合である。
【0241】
好ましくは、ポリペプチドは、野生型ポリペプチドではない。この関連で、「野生型ポリペプチド」という用語は、野生型ヌクレオチド配列により発現されているときの、自然環境におけるポリペプチド全体を意味する。
典型的には、本明細書で定義される特異性を有するポリペプチドをコード化するヌクレオチド配列は、組換えDNA技術(即ち組換えDNA)を使用して作成される。しかしながら、発明の別の実施例においては、全体若しくは部分において、当業界によく知られた化学的方法(Caruthers MH et al (1980) Nuc Acids Res Symp Ser 215-23、及び Horn T et al (1980) Nuc Acids Res Symp Ser 225-232 参照せよ)を使用して、ヌクレオチド配列は合成されうる。
【0242】
分子進化
酵素をコード化しているヌクレオチド配列が単離されて、又は推測上の酵素をコード化しているヌクレオチド配列が同定されると、選択されたヌクレオチド配列を改変することが望ましく、例えば本発明による酵素を作成するために、配列を変異させることが望ましい。
【0243】
変異は、合成オリゴヌクレオチドを使用して導入される。これらのオリゴヌクレオチドは、目的とする変異部位と隣接するヌクレオチド配列を含む。
【0244】
適当な方法は、Morinaga et al (Biotechnology (1984)2, p646-649) に開示されている。酵素をコード化するヌクレオチド配列に変異を導入する別の方法は、Nelson and Long (Analytical Biochemistry(1989),180,p147-151)に記述されている。
【0245】
上述のような、部位特異的突然変異誘発法の代わりに、例えばStratagene社製GeneMorph PCR mutagenesisキット、又はClontech社製 Diversify PCR random mutagenesisキットのような商業的キットを使用して、変異を無作為に導入することができる。EP0583265は、PCRを基礎とした突然変異生成を至適化する方法について言及しており、EP0866796で記述されているような変異DNA類似体の使用と組み合せることもできる。間違いの発生しやすいPCR技術は、好ましい特徴をもつ脂質アシルトランスフェラーゼの変異体の作成に適している。WO0206457は、リパーゼの分子進化について言及している。
【0246】
新規の配列を得る3番目の方法は、任意の数の制限酵素、若しくはDnaseIのような酵素のいずれかを使用して、同一でないヌクレオチド配列を断片化し、機能的なタンパク質をコードしている完全長のヌクレオチド配列を再構築することである。或いは、一又は複数野の同一でないヌクレオチド配列を使用し、完全長のヌクレオチド配列の再構築する間に変異を導入することができる。DNAシャッフリングとファミリーシャッフリング技術は、好ましい特徴をもつ脂質アシルトランスフェラーゼの変異体の作成に適している。シャッフリングを起こす適当な方法は、EP0752008、EP1138763、EP1103606で見られる。シャッフリングは、US6、180、406及びWO01/34835に記述されているようなDNAの突然変異生成の他の形態と組み合せることもできる。
【0247】
それゆえ、ヌクレオチド配列に多数の部位特異的な、又は無作為の変異を、インビボ又はインビトロのいずれかにおいて作り出し、且つコード化されたポリペプチドの改良された機能性を、様々な手段により実質的に選別することは可能である。コンピューター及びexo mediatedを組み合せた方法(WO00/58517、US6、344、328、US6、361、974参照)を使用して、例えば、分子進化は、作成された変異体が既知の酵素及びタンパク質ととても低い相同性を保持する場合でも行なわれることができる。それによって得られたそのような変異体は、既知のトランスフェラーゼ酵素の重要な構造的類似性を有するが、とても低いアミノ酸配列相同性を有する。
【0248】
非制限的な例として、加えて、ポリヌクレオチド配列の変異体又は自然変異体は、新しい変異体を作り出すための野生型又は他の変異又は自然変異体のいずれかと組み合せられることができる。そのような新しい変異体は、コード化されたポリペプチドの改良された機能性について選別されることもできる。
【0249】
上記の及び類似の分子進化技術の適用は、タンパク質構造又は機能のいずれの以前の知識なしに、好ましい特徴を有する本発明の酵素変異体の同定及び選択を許容し、予測できない、しかし有用な変異又は変異体の作成を許容するものである。酵素活性の至適化又は変更について、当業界においては分子進化の適用について多数の例があり、そのような例は、それに限定されるものではないが、一又は二以上の以下の、宿主細胞又はインビトロにおける至適化された発現若しくは活性、増加した酵素活性、変更された基質及び/若しくは生成物の特異性、増加した若しくは減少した酵素的又は構造的安定性、例えば温度、pH,及び/若しくは基質といった好ましい環境状況における変更された酵素活性/特異性を含む。
【0250】
当業者には明らかであろうが、分子進化手段を使用することで、酵素は、酵素の機能性を改良するために変更される。
【0251】
好適には、本発明において使用される脂質アシルトランスフェラーゼは変異体であり、即ち親酵素と比較したときに、少なくとも一のアミノ酸の置換、欠失、付加を含む。酵素の変異体は、少なくとも1%、2%、3%、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、97%、99%の親酵素との相同性を保持する。好適な親酵素は、エステラーゼ若しくはリパーセ活性のあるいずれかの酵素を含む。好ましくは、親酵素はpfam00657共通配列とアラインする。
【0252】
好ましい実施例では、脂質アシルトランスフェラーゼ酵素の変異体は、GDSx、GANDY,及びHPTブロックに見出される、少なくとも一又は二以上のpfam00657共通配列アミノ酸残基を保持し、又は組み入れている。
【0253】
水性環境において脂質アシルトランスフェラーゼ活性がない又は低い、リパーゼのような酵素は、本発明の構成及び方法における使用のために適当で重要なトランスフェラーゼ活性をもつ脂質アシルトランスフェラーゼ酵素を作成するように、トランスフェラーゼ活性を導入若しくは増強するために分子進化手段を使用して、変異をさせることができる。
【0254】
好適には、発明における使用のための脂質アシルトランスフェラーゼは、親酵素と比較した場合、リン脂質の酵素活性が増強された変異体である。好ましくは、そのような変異体はまた、リゾ極性脂質に対して活性が低い、若しくは無い。リン脂質についての増強された活性は、加水分解及び/又は、トランスフェラーゼ活性、又は両者の組合せの結果である。
【0255】
本発明における使用のための脂質アシルトランスフェラーゼの変異体は、親酵素と比較して、トリグリセリド、及び/又はモノグリセリド、及び/又はジグリセリドについて低下した活性を有する。
【0256】
好適には、酵素の変異体は、トリグリセリド、及び/又はモノグリセリド、及び/又はジグリセリドについて活性を有しない。
【0257】
或いは、発明における使用のための酵素の変異体は、トリグリセリドについて増加した活性を有し、且つ/又は一又は二以上の以下の極性脂質、リン脂質、レシチン、ホスファチジルコリンについて増加した活性を有する。
【0258】
脂質アシルトランスフェラーゼの変異体は知られており、一若しくは二以上のそのような変異体は、本発明による方法及び使用において、及び/又は本発明による酵素構成において使用されるために適しているものである。一例としてのみであるが、脂質アシルトランスフェラーゼの変異体は、以下の文献、即ちHilton & Buckley J Biol. Chem. 1991 Jan 15:266(2): 997-1000; Robertson et al J. Biol. Chem. 1994 Jan 21; 269(3): 2146-50; Brumlik et al J. Bacteriol 1996 Apr; 178(7): 2060-4; Peelman et al Protein Sci. 1998 Mar; 7(3): 587-99、に記述されており、本発明により使用される。
【0259】
アミノ酸配列
本発明はまた、本発明に定義されている特異性を有するポリペプチドのアミノ酸配列を含む。
【0260】
本明細書に使用されているように、「アミノ酸配列」という用語は、「ポリペプチド」という用語、及び/又は「タンパク質」という用語と同義語である。いくつかの例においては、「アミノ酸配列」という用語は、「ペプチド」という用語と同義語である。
【0261】
アミノ酸配列は、適当な起源から作製され/単離され、又は合成により作られ、組換えDNA技術の使用により作製される。
【0262】
好適には、アミノ酸配列は、標準的な技術により本明細書に教示されているように、単離されたポリペプチドにより得られる。
【0263】
単離されたポリペプチドからアミノ酸配列を決定する適当な方法の1つは、以下の通りである。
【0264】
精製ポリペプチドを凍結乾燥し、凍結乾燥した原料100μgを、8Mの尿素と0.4Mの炭酸水素アンモニウムとの混合液50μlに溶解させる。溶解させたタンパク質を窒素で覆い、45mMのジチオスレイトール5μlを加えて、15分間50℃にて変性させ、還元させる。室温に冷却後、100mMのヨードアセトアミド5μlを加え、暗所窒素下で15分間室温にてシステイン残基を誘導体化する。
【0265】
135μlの水及び5μlの水に溶解した5μgのLys−Cエンドプロテアーゼは、上述の反応混合液に加えられ、37℃にて窒素下で24時間消化が行なわれた。
【0266】
結果として生じたペプチドは、水に溶解した0.1%TFAである溶媒Aと、アセトニトリルに溶解した0.1%のTFAである溶媒Bを使用して、VYDAC C18カラム(0.46×15cm;10μm;The Separation Group社製, California, USA)により逆相HPLCで分離される。選択されたペプチドは、N−末端の配列決定の前に同じ溶媒系を使用してDevelosil、C18カラムにより、再度クロマトグラフされる。配列決定は、パルス液体高速周期を使いApplied Biosystems 476Aシーケンサーを用いて、製造者(Applied Biosystems社 California, USA)の指示により行なわれる。
【0267】
配列の同一性、又は配列の相同性
本発明はまた、本明細書で定義される特異性を有するポリペプチドの、若しくはそのようなポリペプチドをコード化しているいずれかのヌクレオチド配列(以後相同配列と呼ぶ)の、アミノ酸配列とある程度の配列の同一性若しくは配列の相同性を有している配列の使用を含む。ここで、「相同物」という用語は、対象となるアミノ酸配列、及び対象となるヌクレオチド配列とある程度の相同性を有するエンティティ(entity)を意味する。ここで、「相同性」という用語は、同一性と同義である。
【0268】
相同性のあるアミノ酸配列及び/若しくはヌクレオチド配列は、機能活性を保持し且つ/又は酵素の活性を増強するポリペプチドを、提供及び/又はコード化するものでなければならない。
【0269】
現在の状況において、相同配列は、少なくとも75、85、若しくは90%同一、好ましくは少なくとも95若しくは98%対象となる配列と同一であるアミノ酸配列を含むように取得される。典型的には、相同物は、対象となるアミノ酸配列と同じ活性部位などを含むであろう。相同性は、類似という観点でも考慮され得るが(即ち、類似の化学的特性/機能を有するアミノ酸残基)、本発明との関連では、配列の同一性という観点で相同性は表現されるのが好ましい。
【0270】
現在の状況において、相同配列は、少なくとも75、85、若しくは90%同一、好ましくは少なくとも95、若しくは98%本発明のポリペプチドをコード化するヌクレオチド配列(対象配列)と同一であるヌクレオチド配列を含むように取得される。典型的には、相同物は、活性部位をコードする対象配列と同じ配列などを含むであろう。相同性は、類似という観点でも考慮され得るが(即ち、類似の化学的特性/機能を有するアミノ酸残基)、本発明との関連では、配列の同一性という観点で相同性は表現されるのが好ましい。
【0271】
相同性の比較は、視覚により、またより通常には、すぐに入手できる配列比較プログラムを用いて行なうことができる。これらの商業的に利用できるコンピュータープログラムは、二又は三以上の配列の間の相同性の%を計算することができる。
【0272】
相同性%は、隣接する配列について計算され、即ち1つの配列は、他の配列とアラインされ、1つの配列の中のそれぞれのアミノ酸は、他の配列において対応するアミノ酸と一残基ずつ直接比較される。これは、ギャップのない(ungapped)アラインメントと呼ばれる。典型的には、そのようなギャップのないアラインメントは、比較的残基数が少ない場合についてのみ行なわれる。
【0273】
これは、とても簡単で、一貫性のある方法であるが、例えば、同一の一対の配列において、1つの挿入又は欠失が、以下のアミノ酸残基をアラインメントから締め出すということを起こすであろう。それゆえ、潜在的には、広範囲のアラインメントが行なわれる場合は、相同性の%が大幅に低下する。結果的には、ほとんどの配列比較方法は、全体的な相同性のスコアを過度に不利にすることなく、可能な挿入と欠失を考慮に入れる至適なアラインメントを作成するように設計されている。これは、局部的な相同性を最大化するように試みる配列アラインメントにおけるギャップを挿入することによる達成される。
【0274】
しかしながら、これらのより複雑な方法は、同じ数の同一のアミノ酸について、比較する配列の間のより高い関係性を反映して、できるだけギャップ数が少ない配列アラインメントが、ギャップ数の多いものよりも高スコアを得るよう、ギャップペナルティーをアラインメントにおけるそれぞれのギャップに割り当てる。「アフィンギャップコスト」は、典型的にギャップが存在すると比較的高いコストを課し、ギャップ中において次に続く各残基については、より少ないペナルティーを課す。これは、最も一般的に使用されているギャップスコアリングシステムである。高いギャップペナルティーは、もちろんより少ないギャップについて至適化されたアラインメントを作り出すであろう。ほとんどのアラインメントプログラムでは、ギャップペナルティーを変更することができる。しかしながら、そのようなソフトウェアを配列比較のために使用するときは、デフォルト値を使用することが好ましい。例えば、GCGウィスコンシンベストフィットパッケージ(GCG Wisconsin Bestfit package)を使用するときは、アミノ酸配列のデフォルトギャップペナルティーは、ギャップにつき−12であり、各伸長につき−4である。
【0275】
最大の相同性%の計算は、それゆえ第一に、ギャップペナルティーを考慮に入れつつ至適なアラインメントの作成を要求する。そのようなアラインメントを実行するための好適なコンピュータープログラムは、GCGウィスコンシンベストフィットパッケージ(Devereux et al 1984 Nuc.Acids Research 12 p387)である。配列比較を行なうことができる他のソフトウェアの例は、これらに制限されないが、BLASTパッケージ(Ausubel et al 1999 Short Protocols in Molecular Biology, 4th Ed-Chapter 18参照)、FASTA(Altschul et al 1990 J. Mol. Biol.403-410参照)、及びGENEWORKS比較手段セットである。BLASTとFASTAは両方とも、オフラインとオンラインの検索で利用できる(Ausubel et al 1999、pages 7-58 to 7-60参照)。しかしながら、いくつかの適用においてGCGウィスコンシンベストフィットプログラムを使用することが好ましい。BLAST2配列と呼ばれる新しい手段は、タンパク質とヌクレオチド配列を比較することにも利用できる(FEMS Microbiol Lett 1999 174 (2): 247-50; FEMS Microbiol Lett 1999 177(1):187-8 及び tatiana@ncbi.nlm.nih.gov参照)。
【0276】
最終的な相同性%は、同一性に関して測定されるが、アラインメントの過程それ自体は、典型的にオールオアナッシングの一対比較に基づくものではない。それよりむしろ、スケール(scaled)類似スコアマトリックスは、一般的に、化学的類似性又は進化距離に基づくそれぞれの一対ごとに比較をスコアとするように使用されている。通常使用されているそのようなマトリックスの例は、BLASTのプログラム一式のデフォルトマトリックスである、BLOSUM62マトリックスである。GCGウィスコンシンプログラム(GCG Wisconsin programs)は、一般的に、もし提供されるならば(詳細は使用説明書参照)、公的デフォルトバリュー、又はカスタムシンボル比較表(custom symbol comparison table)のいずれかを使用する。いくつかの適用については、GCGパッケージのための公的デフォルトバリューを、又は他のソフトウェアの場合はBLOSUM62のようなデフォルトマトリックスを使用するのが好ましい。
【0277】
或いは、相同性のパーセンテージは、CLUSTAL(Higgins DB & Sharp PM (1988), Gene 73(1),237-244)に類似する演算手順に基づいて、DNASISTM(Hitachi Software社製)において、複合的なアラインメントの特徴を使用して計算される。
【0278】
一旦ソフトウェアが至適なアラインメントを作り出したならば、相同性%、好ましくは配列の同一性の%を計算することが可能である。ソフトウェアは、典型的には、配列比較の一部としてこれを行ない、数値結果を出力する。
【0279】
本発明の好ましい態様では、以下のソフトウェアと、相同性/同一性のパーセンテージを計算する設定とが使用される。アミノ酸配列について、同一性(相同性)のパーセンテージ、又は「正数(positive)」は、アラインXベクターNTI(Vector NTI Advance 9.1 Invitrogen Corporation社製,Carlsbad, California, USA.)により計算され、アミノ酸配列のそれぞれの可能な一対について、設定は、デフォルトパラメーター(Gap opening penalty-10、Gap extension penalty 0.1)である。
【0280】
配列はまた、沈黙の変更を作り出し、且つ機能的には同等の物質を生じる、アミノ酸残基の欠失、挿入又は置換を有するかもしれない。意図的なアミノ酸の置換は、対象の二次的結合活性が保持される限り、残基の極性、電荷、溶解性、疎水性、親水性、及び/又は両親媒性の性質における類似性に基づいて作られる。例えば、負に帯電したアミノ酸は、アスパラギン酸及びグルタミン酸を含み、正に帯電したアミノ酸は、リジンやアルギニンを含み、類似の疎水性価を有する荷電していない極性頭部基を伴うアミノ酸は、ロイシン、イソロイシン、バリン、グリシン、アラニン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、フェニルアラニン、及びチロシンを含む。
【0281】
保存的な置換は、例えば下記の表のとおり行なわれる。2列目の同じ区画におけるアミノ酸と好ましくは3列目の同じ行のアミノ酸は、お互いに置換できる。
【0282】
【表3】
本発明はまた、相同的な置換(置換と代替は、双方とも本明細書では、既存のアミノ酸残基と別の残基との交換を意味するために使用される)、即ち塩基性と塩基性、酸性と酸性、極性と極性等のような同種置換(like-for-like substitution)を起こしうるものを含む。非相同の、即ち一の部類の残基から他の部類へ、或いはオルニチン(以下Zと呼ぶ)、diaminobutyric acid ornithine(以下Bと呼ぶ)、norleucin ornithine(以下Oと呼ぶ)、pyriylalanine、thienylalanine、naphtyl alanine、及びphenylglycineのような不自然なアミノ酸の包含に関わるような置換もまた起こる。
【0283】
代替は、非天然アミノ酸によっても作り出されうる。
【0284】
アミノ酸配列の変異体は、グリシン又はβ―アラニン残基のようなアミノ酸スペーサーに加えて、メチル、エチル、又はプロピル基のようなアルキル基を含む配列のいずれか二つのアミノ酸残基の間に挿入される適切なスペーサー群を含む。ペプトイド形の一又は二以上のアミノ酸残基の存在に関わるさらに進んだ形の変異は、当業者にとって良く理解されるであろう。誤解を避けるため、ペプトイド形とは、α―炭素置換基が、残基のα―炭素ではなく窒素原子上のアミノ酸残基変異体を意味する。ペプトイド形のペプチドを作成する過程は、当業者には、知られており、例えば、Simon RJ et al.,PNAS(1992)89(20),9367-9371及び Horwell DC,Trends Biotechnol.(1995) 13 (4), 132-134である。
【0285】
本発明において使用されるヌクレオチド配列、又は本明細書に定義されている特異性を有するコード化されているポリペプチドは、合成の、又は改変されたヌクレオチドをそれらの中に含む。オリゴヌクレオチドについての多くの異なったタイプの改変が当業界に知られている。これらは、メチルホスホネート、及びホスホロチオエートのバックボーン並びに/或いは分子の3’及び/又は5’末端にアクリジン 若しくはポリリジン鎖の付加を含む。本発明の目的は、本明細書に記述されているヌクレオチド配列が、当業界で利用できるいずれの方法によっても改変されることが理解されるということである。そのような改変は、インビボ活性、又はヌクレオチド配列の寿命を増強するために行なわれる。
【0286】
本発明はまた、本明細書で論じられている配列と相補的なヌクレオチド配列、又は派生物、断片若しくはそれらの派生物のいずれかの使用を含む。配列がその断片と相補的であれば、配列は、他の生物等において類似のコード配列を同定するプローブとして使用することができる。
【0287】
本発明の配列と100%相同ではないが、本発明の範囲に入るポリヌクレオチドは、多くの方法で得ることができる。
【0288】
本明細書に記述されている配列の他の変異体は、例えば、個人、例えば母集団の異なる個人の範囲で作られたDNAライブラリーを精査することで得られる。加えて、他のウイルス/バクテリア、又は細胞の相同物、特に哺乳類の細胞(ラット、ネズミ、ウシ、若しくは霊長類の細胞)に見出される細胞の相同物が得られ、そのような相同物とその断片は一般に、本明細書に記載されている配列に示される配列と選択的にハイブリダイズすることができるであろう。そのような配列は、他の動物種から作成されたcDNAライブラリー又はゲノムDNAライブラリーを精査することで、並びにそのようなライブラリーを添付されている配列リストのいずれか一の配列のすべて又は一部を含むプローブを用いて、中程度から高度のストリンジェンシーを有する条件下で探索することで得ることができる。同様の考慮は、相同分子種、及び本発明のポリペプチド又はヌクレオチド配列の対立遺伝子多型を得ることについて適用する。
【0289】
変異体及び菌株/種の相同物はまた、本発明の配列内の保存されたアミノ酸配列をコード化する変異体及び相同物における配列を標的とするために設計されたプライマーを使用する縮重PCRを使用して得られる。保存された配列は、例えば、いくつかの変異体/相同物からアミノ酸配列をアラインすることで、予想されることができる。配列アラインメントは、当業界に知られたコンピューターソフトウェアを使用することで行なわれる。例えば、GCGウィスコンシンパイルアップ(GCG Wisconsin PileUp)プログラムが広く使用されている。
【0290】
縮重PCRにおいて使用されるプライマーは、一又は二以上の縮重位置を含み、且つ既知の配列に対して単一の配列プライマーで配列をクローニングするために使用されるよりも、低いストリンジェンシー条件で使用されるものである。
【0291】
或いは、そのようなポリヌクレオチドは、特徴ある配列の部位特異的突然変異誘発により得ることができる。このことは、例えば、ポリヌクレオチド配列が発現している特定の宿主細胞についてコドン選択を至適化するために、沈黙のコドン配列の変更が要求される場合に有用である。他の配列変更は、制限的なポリペプチドの認識部位を導入し、又はポリヌクレオチドにコード化されているポリペプチドの特性若しくは機能を変更するために望ましいものである。
【0292】
本発明のポリヌクレオチド(ヌクレオチド配列)は、プライマー、例えばPCRプライマーで、選択的な増幅反応のためのプライマー、プローブ例えば放射性若しくは非放射性の標識を使用した常法による明白な(retrieving)標識により標識されたもの、を作成するために使用され、或いは、ポリヌクレオチドはベクターにクローニングされる。そのようなプライマー、プローブ及び他の断片は、少なくとも15、好ましくは少なくとも20、例えば少なくとも25、30、又は40ヌクレオチド長であり、且つ本明細書で使用される本発明のポリヌクレオチドという用語の範疇にある。
【0293】
DNAポリヌクレオチドのようなポリヌクレオチド及び本発明によるプローブは、組換えにより、合成により、又は当業者に利用可能ないずれかの手段によって作成されうる。それらもまた、標準的な技術によりクローンされる。
【0294】
一般的にプライマーは、一ヌクレオチドずつ作製して所望のヌクレオチド配列を得るという段階的な作製法を含む合成手法によって作製される。これを達成するための自動化された技術を使用した技術は、既に当業界で利用可能である。
【0295】
より長いポリヌクレオチドは一般的に組換え手段を使用して、例えばPCR(ポリメレラーゼ連鎖反応)クローン技術を使用して作成される。これは、クローンすることが望まれる脂質標的配列領域に隣接する一対のプライマー(例えば約15から30ヌクレオチド)を作ること、動物や人間の細胞から得られたmRNA又はcDNAとプライマーを接触させること、目的とする領域の増幅を起こす条件下でポリメレラーゼ連鎖反応を行なうこと、目的とする増幅された断片(例えばアガロースゲル上で反応混合物を精製することにより)を単離すること、及び増幅されたDNAを回復することに関わるものである。プライマーは、増幅されたDNAが適当なクローニングベクターでクローンされることができるように、適当な制限酵素認識部位を含むように設計される。
【0296】
ハイブリダイゼーション
本発明はまた、本発明の配列と相補的な配列、又は本発明の配列若しくはそれと相補的な配列のいずれかとハイブリダイズすることができる配列を含む。
【0297】
「ハイブリダイゼーション」という用語は、本明細書で使用されているように、ポリメレラーゼ連鎖反応(PCR)技術において行なわれる増幅の過程と同様、核酸鎖が塩基対を通じて相補鎖と結合する過程を含む。
【0298】
本発明はまた、本明細書で論じられている対象配列、又は派生物、断片若しくはその派生物のいずれかと相補的である配列とハイブリダイズできるヌクレオチド配列の使用を含む。
【0299】
本発明はまた、本明細書で論じられているヌクレオチド配列とハイブリダイズできる配列と相補的である配列を含む。
【0300】
ハイブリダイゼーションの条件は、Berger and Kimmel(1987,Guide to Molecular Cloning Techniques, Methods in Enzymology,Vol.152,Academic Press, San Diego CA)で教示されているように、ヌクレオチドの結合複合体の融解温度(Tm)に基づき、且つ下記に説明されるように、定義された「ストリンジェンシー」を付与するものである。
【0301】
最高度のストリンジェンシーは、典型的には、約Tm−5℃(プローブのTmの5℃下)、高度のストリンジェンシーは、Tmの5℃から10℃下、中程度のストリンジェンシーは、Tmの10℃から20℃下、低いストリンジェンシーはTmの20℃から25℃下で起こる。当業者には理解されるように、中程度の(若しくは低い)ストリンジェンシーでのハイブリダイゼーションが、類似の、又は関連したポリヌクレオチド配列を同定又は検出するために使用されることができるのに対し、最高度のストリンジェンシーでのハイブリダイゼーションは、同一のヌクレオチド配列を同定又は検出するために使用されることができる。
【0302】
好ましくは、本発明は、本明細書で定義されている特異性を有するポリペプチドをコード化するヌクレオチド配列を、高度のストリンジェンシーの条件、又は中程度のストリンジェンシーの条件下においてハイブリダイズすることができる配列に相補的な配列を含む。
【0303】
より好ましくは、本発明は、高度のストリンジェンシーの条件下(例えば、65℃で0.1xSSC{1xSSC=0.15M NaCl,0.015M Na-citrate pH7.0})で、本明細書で定義される特異性を有するポリペプチドをコード化するヌクレオチド配列とハイブリダイズすることができる配列と相補的な配列を含む。
【0304】
本発明はまた、本明細書で論じられているヌクレオチド配列(本明細書で論じられているものと相補的な配列を含む)とハイブリダイズできるヌクレオチド配列と関連する。
【0305】
本発明はまた、本明細書で論じられているヌクレオチド配列(本明細書で論じられているものと相補的な配列を含む)とハイブリダイズできる配列と相補的なヌクレオチド配列と関連する。
【0306】
また、本発明の範囲内に含まれるのは、中程度から最高度のストリンジェンシーの条件下で、本明細書に論じられているヌクレオチド配列とハイブリダイズすることができるポリヌクレオチド配列である。
【0307】
好ましい態様では、本発明は、本明細書で論じられているヌクレオチド配列とハイブリダイズできるヌクレオチド配列を、又はストリンジェントな条件(例えば、50℃及び0.2×SSC)下で、その相補体を対象とする。
【0308】
より好ましい態様では、本発明は、本明細書で論じられているヌクレオチド配列とハイブリダイズできるヌクレオチド配列を、又は高度のストリンジェントな条件下(例えば、65℃及び0.1×SSC)でその相補体を対象とする。
【0309】
ポリペプチドの発現
本発明における使用のための、又は本明細書で定義される特異性を有するポリペプチドをコード化するためのヌクレオチド配列は、複製可能な組換えベクターに組み入れられることができる。ベクターは、ヌクレオチド配列をポリペプチドの形で、適合性のある宿主細胞内で及び/又は宿主細胞から複製又は発現するために使用される。発現は、プロモーター/エンハンサー及び他の発現調節シグナルを含む制御配列(control sequences)を使用することで調整される。原核生物のプロモーターと真核細胞において機能できるプロモーターが使用される。細胞組織特有の又は刺激特有のプロモーターが使用される。上述の2又は3以上の異なるプロモーター由来の配列要素を含むキメラのプロモーターもまた使用される。
【0310】
ヌクレオチド配列の発現による宿主組換え細胞によって作製されたポリペプチドは、使用した配列及び/若しくはベクターに応じて、分泌され、或いは細胞内に含まれる。コード配列は、配列をコードする物質の、特定の原核又は真核細胞膜を介した分泌を誘導するシグナル配列を用いて設計することができる。
【0311】
発現ベクター
発現ベクターという用語は、インビボ又はインビトロの発現ができる構築物(construct)を意味する。
【0312】
好ましくは、発現ベクターは、生物のゲノムに組み入れられる。好ましくは、「組み入れられる」という用語は、ゲノムの中に安定して組み入れられることを対象とする。
【0313】
本発明の、又は本明細書で定義される特異性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、調節配列(regulatory sequences)が適当な宿主生物によるヌクレオチド配列の発現を提供できる調節配列であるようにヌクレオチド配列が調節配列に作動的に連結しているベクターに存在する、即ちベクターは発現ベクターである。
本発明のベクターは、後述のように本明細書に定義される特異性を有するポリペプチドの発現を提供するための適当な宿主細胞に形質転換される。
【0314】
ベクターの選択は、例えばプラスミド、コスミド、ウイルス、ファージ又はベクターであり、多くの場合導入される宿主細胞に応じたものとなろう。
【0315】
ベクターは、抗生物質抵抗性の、例えばアンピシリン、カナマイシン、クロラムフェニコール、テトラサイクリン抵抗を有する遺伝子のような一又は二以上の選択できるマーカー遺伝子を含むことができる。或いは、選択は(WO91/17243に記述されているように)同時形質転換によって達成される。
【0316】
ベクターは、例えばRNAの作成のためにインビトロで使用され、又は宿主細胞の形質移入若しくは形質転換のために使用される。
【0317】
それゆえ、更なる実施例において、本発明は、本発明のヌクレオチド配列、又はヌクレオチド配列を複製可能なベクターに導入することにより、ベクターを互換性のある宿主細胞に導入することにより、及びベクターの複製を引き起こす条件下で宿主細胞を培養することにより、本明細書に定義される特異性を有するポリペプチドをコード化するヌクレオチド配列を作る方法を提供する。
【0318】
ベクターは、さらに問題となっている宿主細胞においてベクターを複製させるヌクレオチド配列を含む。そのような配列の例は、プラスミドpUC19、pACYC177、pUB110、pE194、pAMB1、及びpIJ702の複製起点である。
【0319】
調節配列
いくつかの適用においては、本発明における使用のためのヌクレオチド配列は、又は本明細書に定義される特異性を有するポリペプチドをコード化するヌクレオチド配列は、選択された宿主細胞による場合のように、ヌクレオチド配列の発現を提供できる調節配列に作動的に連結(operably linked)される。一例として、本発明は、そのような調節配列に作動的に連結する本発明のヌクレオチド配列を含むベクター、即ちベクターは発現ベクターである、を対象とする。
【0320】
「作動的に連結された」という用語は、記述された要素が、意図されたように機能することができるような並列関係を意味する。コード配列に「作動的に連結された」調節配列は、制御配列に適合する条件下でコード配列が発現されるように連結されている。
【0321】
「調節配列」という用語は、プロモーターとエンハンサー及び他の発現調節シグナルを含む。
【0322】
「プロモーター」という用語は、当業界の普通の意味で使用され、例えばRNAポリメラーゼ結合部位である。
【0323】
本明細書に定義される特異性を有する酵素をコード化するヌクレオチド配列の発現増強は、非相同性の調節領域、例えばプロモーター、分泌リーダー、及びターミネーター領域、の選択によっても達成される。
【0324】
好ましくは、本発明のヌクレオチド配列は、少なくともプロモーターに作動的に連結される。
【0325】
バクテリア、真菌、酵母宿主におけるヌクレオチド配列の転写を誘導する適当なプロモーターの例は、当業界によく知られている。
【0326】
構築物
「構築物」という用語は、「抱合体」(conjugate)、「カセット」、及び「ハイブリッド」の同義語であり、直接的に又は間接的にプロモーターに結合している本発明による使用のために本明細書に定義される特異性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む。間接的な結合の例は、プロモーターと本発明のヌクレオチド配列の間に介在するSh1−イントロン若しくは、ADHイントロンのような適当なイントロン配列などの適当なスペーサー群の提供である。同様のことは、直接的又は間接的な結合を含む本発明との関係で「融合する(fused)」という用語についてもあてはまる。いくつかのケースにおいては、この用語は、双方がそれらの自然環境に存在する場合に、野生型遺伝子のプロモーターと通常に会合するタンパク質をコードするヌクレオチド配列の自然な組合せを対象としていない。
【0327】
構築物は、遺伝的構築物の選択を可能とするマーカーを含み、又は発現させることができる。
【0328】
いくつかの適用において好ましくは、構築物は、少なくとも本発明のヌクレオチド配列、又はプロモーターに作動的に連結している、本明細書で定義される特異性を有するポリペプチドをコード化するヌクレオチド配列を含む。
【0329】
宿主細胞
本発明との関連における「宿主細胞」という用語は、本明細書で定義される特異性を有するポリペプチドをコード化するヌクレオチド配列、又は上述の本明細書で定義される特異性を有するポリペプチドの組換え体産生において使用される発現ベクターのいずれかを含む任意の細胞を含む。
【0330】
それゆえ、本発明の更なる実施例は、形質転換された、若しくは本発明のヌクレオチド配列により形質移入された宿主細胞、又は本明細書で定義される特異性を有するポリペプチドを発現するヌクレオチド配列を提供する。細胞は、前記ベクターと互換性があるように選択され、例えば、原核生物(例えばバクテリア)、真菌、酵母、又は植物細胞である。好ましくは、宿主細胞は人間の細胞ではない。
【0331】
適当なバクテリアの宿主生物は、グラム陽性細菌又はグラム陽性細菌である。
【0332】
本明細書で定義される特異性を有するポリペプチドをコード化するヌクレオチド配列の性質の、及び/又は発現されるタンパク質の更なる修飾の望ましい状況に応じて、酵母や他の真菌のような真核生物の宿主が好まれる。一般的に、操作がより簡単なため、酵母細胞が真菌の細胞よりも好まれる。しかしながら、いくつかのタンパク質は、酵母細胞からの分泌が乏しいか、いくつかのケースでは正しく修飾されない(例えば酵母では過剰糖鎖付加)かのいずれかである。
【0333】
酵母、真菌、及び植物宿主細胞のような適当な宿主細胞の使用は、本発明の組換え発現生成物の至適な生物的活性を与えることが必要されたうえで、翻訳後の修飾(例えば、ミリストイル化、糖鎖付加、切断(truncation)、投石(lapidation)、及びチロシン、セリン、若しくはトレオニンのリン酸化)を提供する。
【0334】
宿主細胞は、プロテアーゼ欠損又は、プロテアーゼマイナス株である。
【0335】
生物
本発明との関連における「生物」(organism)という用語は、本発明によるヌクレオチド配列、又は本明細書で定義される特異性を有するポリペプチドをコード化するヌクレオチド配列及び/又はそれらから得られる産生物を含むことができるいかなる生物を含む。
【0336】
好適な生物は、原核生物、真菌、酵母、又は植物である。
【0337】
本発明との関係においての、「遺伝子導入生物」(transgenic organism)という用語は、本明細書で定義される特異性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列と、及び/若しくはそれから得られる生成物とを含み、並びに/又はプロモーターは、生物に本明細書で定義される特異性のあるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を発現させることができる、いかなる生物をも含んでおり、好ましくはヌクレオチド配列が、生物のゲノムに組み入れられたものである。
【0338】
「遺伝子導入生物」という用語は、自然環境においても野生型のプロモーターの制御下にある場合に、自然の環境において配列をコードする野生のヌクレオチドを対象としない。
【0339】
従って、本発明の遺伝子導入生物は、本明細書で定義される特異性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、本明細書で定義される構築物、本明細書で定義されるベクター、本明細書で定義されるプラスミド、本明細書で定義される細胞又はその産生物のいずれかを含む生物を含む。例えば、遺伝子導入生物は、非相同のプロモーターの制御下で、本明細書で定義される特異性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列をも含むこともできる。
【0340】
宿主細胞/生物の形質転換
先に述べたように、宿主生物は、原核又は真核生物でありうる。好適な原核生物の宿主の例としては、大腸菌及び枯草菌が含まれる。
【0341】
一実施例では、宿主細胞はバクテリア、好ましくはグラム陽性菌であり、好ましくはビフィドバクテリア及びアエロモナス、特に好ましくはアエロモナス・サルモニシダのようなアクチノバクテリアから選択された宿主細胞である。さらにより好ましくは、コリネバクテリア、とりわけコリネバクテリウム・グルタミカム及びノカルディアである。特に好ましいのは、ストレプトマイセス、特にストレプトマイセス・リビダンスのようなストレプトマイセス科のものが好まれる。
【0342】
微生物の宿主は、例えば真正細菌、古細菌、酵母を含む真菌などの、ガラクトリパーゼ遺伝子の発現に使用される。好まれるのは真正細菌であり、例えば枯草菌や他のバチルス種のようなファーミキューテス(グラム陽性低GC含量細菌)、ラクトバチルス及びラクトコッカス属の菌種などの乳酸菌である。
【0343】
また、グラム陰性プロテオバクテリア、特にシュードモナス、ザントモナス、シトロバクターと、エシェリキア属特に大腸菌に属する宿主種のような、ガンマプロテオバクテリアが好ましい。
【0344】
好ましくは、宿主種は、英国出願番号0513859.9に詳述されているアエロモナス・サルモニシダ、ストレプトマイセス・リビダンス、又はコリネバクテリウム・グルタミカムのようなグラム陽性発現宿主である。
【0345】
他の実施例では、宿主細胞は野生の宿主種と同じ属であり、即ち組換え遺伝子は、組換え遺伝子が単離された種と同じ種に再導入され、且つ発現している。
【0346】
他の実施例では、宿主細胞は野生の宿主種であり、即ち組換え遺伝子は、組換え遺伝子が単離された種と同じ種に再導入され、且つ発現している。
【0347】
当業界では、原核生物の宿主の形質転換についての教示は充分に文書化されている。例えば、Sambrook et al (Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2ndedition, 1989, Cold Spring Harbor Laboratory Press) を参照せよ。原核生物の宿主が使用される場合、ヌクレオチド配列は形質転換の前に、例えばイントロンの除去のように、適切に改変される必要がある。
【0348】
別の実施例では、遺伝子導入生物は酵母でありうる。
【0349】
糸状体の真菌は、プロトプラスト形成と、既知の方法で細胞壁の再生を伴うプロトプラストの形質転換とに関わる処理のような、当業界に知られた様々な方法を使用して形質転換される。アスペルギルスの宿主微生物としての使用は、EP0238023に記述されている。
【0350】
別の宿主生物は、植物でありうる。植物を形質転換するのに使用される一般的技術の概説は、Potrykus(Annu Rev Plant Physiol Plant Mol Biol (1991)42:205-225)及び Christou (Agro-Food-Industry Hi-Tech March/April 1994 17-27) の論文に見られる。植物の形質転換についての更なる教示は、EP−A−0449375に見られる。
【0351】
真菌、酵母、及び植物の形質転換についての一般的教示は、以下の項で示されている。
【0352】
形質転換された真菌
宿主生物は、糸状菌のような真菌でありうる。好適な宿主の例としては、テルモマイセス、アクレモニウム、アスペルギルス、ペニシリウム、ムコール、ニューロスポラ、トリコデルマ属などに属する任意の菌を含む。
【0353】
糸状菌の形質転換についての教示は、当業界によく知られている糸状菌の形質転換及び真菌の培養の標準的な技術を記載しているUS−A−5741665に概説されている。ニューロスポラ・クラッサに適用される技術の広範囲にわたる概説が、例えば、Davis and de Serres, Methods Enzymol (1971)17A: 79-143 に見られる。
【0354】
さらに、US−A5674707に糸状菌の真菌の形質転換についての教示が総説されている。
【0355】
一態様では、宿主生物はアスペルギルス・ニガーのようなアスペルギルス属のものである。
【0356】
本発明による遺伝子導入アスペルギルスは、以下の例えばTurner G. 1994 (Vectors for genetic manipulation. In: Martinelli S.D.,Kinghorn J.R.(Editors) Aspergillus: 50 years on. Progress in industrial microbiology vol 29. Elsevier Amsterdam 1994. pp641-666)の教示により作成される。
【0357】
糸状菌の遺伝子発現は、Punt et al.(2002) Trends Biotechnol 2002 May;20(5):200-6, Archer & Peberdy Crit Rev Biotechnol (1997)17(4):273-306 で概説されている。
【0358】
形質転換酵母
別の実施例では、遺伝子導入生物が酵母でありうる。
【0359】
酵母における非相同遺伝子発現の原理の概説は、例えば、Methods Mol Biol (1995),49:341-4, 及び Curr Opin Biotechnol(1997) Oct;8(5):554-60にて提供されている。
【0360】
この点で、サッカロミセス・セルビシ(saccharomyces cerevisi)、又はピキア・パストリス種(FEMS Microbiol Rev(2000 24(1):45-66 参照) のような酵母が、非相同遺伝子発現の媒体として使用される。
【0361】
サッカロミセス・セルビシエにおける、非相同遺伝子発現、及び遺伝子産生物の分泌についての原理の概説は、E Kenny (1993, “Yeast as a vehicle for the expression of heterologous genes”, Yeasts, Vol 5, Anthony H Rose and J Stuart Harrison, eds, 2nd edition, Academic Press Ltd.)に示されている。
【0362】
酵母の形質転換のためには、いくつかの形質転換プロトコルが開発されている。例えば、本発明による遺伝子導入サッカロミセスは、以下の Hinnen et al.,(1978, Proceedings of the National Academy of Sciences of the USA 75, 1929); Beggs, J D (1978, Nature, London, 275,104); 及び Ito, H et al (1983, J Bacteriology 153, 163-168) の教示により作成されうる。
【0363】
形質転換された酵母細胞は、栄養要求性マーカーや、優性抗生物質マーカーのような、様々な選択マーカーを使用して選択できる。
【0364】
好適な酵母宿主生物は、バイオ技術的に適切な、これらに制限されるものではないが、ピキア種、ハンゼヌラ種、クルイベロマイセス、Yarrowinia種,サッカロミセス・セルビシエを含むサッカロミセス種、又はシゾサッカロミセス・ポンベを含むシゾサッカロミセス種のような、酵母菌種から選択できる。
【0365】
メチロトローフ酵母種であるピキア・パストリスの菌株が、宿主として使用される。
【0366】
一実施例では、宿主は、ハンゼヌラ・ポリモルファ(WO01/39544に記述されている)のようなハンゼヌラ種である。
【0367】
形質転換植物/植物細胞
本発明に適した宿主生物は、植物でありうる。一般的技術の概説については、Potrykus(Annu Rev Plant Physiol Plant Mol Biol (1991) 42:205-225)及びChristou (Agro-Food-Industry Hi-Tech March/April 1994 17-27)又は、WO01/16308に見られる。
【0368】
分泌物
しばしばポリペプチドは、分泌される酵素がより容易に回収されうる培地へ、発現宿主から分泌されることが望ましい。本発明によれば、分泌リーダー配列は、目的とする発現宿主を基に選択される。ハイブリッドシグナル配列もまた、本発明を背景として使用される。
【0369】
非相同分泌リーダー配列の典型的な例は、真菌のアミログルコシダーゼ(AG)遺伝子(glaA−双方とも、例えばアスペルギルス由来の18及び24アミノ酸の種類)、a−ファクター遺伝子(酵母、例えば、サッカロミセス、クルイベロマイセス、及びハンゼヌラ)又は、α−アミラーゼ遺伝子(バチルス)由来の配列である。
【0370】
検出
アミノ酸配列の発現を検出及び測定するための様々なプロトコルが、当業界に知られている。例としては、酵素結合免疫吸着定量法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、及び蛍光抗体法(FACS)が含まれる。
【0371】
多様な標識及びコンジュゲイション(conjugation)技術が当業者に知られており、様々な核酸及びアミノ酸アッセイにおいて使用可能である。
【0372】
Pharmacia Biotech社(Piscatway, NJ), Promega社(Madison, WI)、 及びUS Biochemical Corp社(Cleveland, OH) のような多数の会社が、これらの手順についての市販キットやプロトコルを供給している。
【0373】
適切なレポーター分子又は標識は、基質、補因子、阻害物質、磁粉などと同様にこれらの放射性核種、酵素、蛍光、化学発光法、色原体を含む。これらの標識の使用について特許では、US−A−3,817,837、US−A−3,850,752、US−A−3,939、350、US−A−3,996,345、US−A−4,277,437、US−A−4,275,149、及びUS−A−4,366,241を含む。
【0374】
また、組換え免疫グロブリンは、US−A−4,816,567に示されるように作成される。
【0375】
融合タンパク質
本明細書で定義される特異性を有するポリペプチドは、例えば、抽出、精製において補助となる融合タンパク質として生産される。融合タンパク質の相手の例としては、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、6×His、GAL4(DNA結合及び/若しくは転写の活性化ドメイン)、並びにβ―ガラクトシダーゼを含む。融合タンパク質の相手と興味あるタンパク質配列の間にある、融合タンパク質配列の除去を可能とするタンパク質分解的切断部位を含むことも便宜となりうる。好ましくは、融合タンパク質は、タンパク質配列の活性の妨げにならないものである。
【0376】
大腸菌における遺伝子融合発現システムは、Curr. Opin. Biotechnol. (1995)6(5):501-6で概説されている。
【0377】
本発明の別の実施例では、本発明で定義される特異性を有するポリペプチドのアミノ酸配列は、融合タンパク質をコードするために非相同配列に連結される。例えば、物質(substance)の活性に影響を与えることができる試薬についてのペプチドライブラリーの選別にとって、商業的に利用可能な抗体により認識される非相同的なエピトープを発現するキメラの物質をコード化する。
【0378】
実施例
この研究は, 大豆油、ひまわり油、菜種油のような植物油の脱ガムにおける脂質アシルトランスフェラーゼ(本明細書においては、グリセロリン脂質コレステロールアシル−トランスフェラーゼ(GCAT)と呼ばれることがある)の使用可能性について検討することを目的とする。
【0379】
この研究の目的の1つは、特に、脂質アシルトランスフェラーゼ変異体(N80D)が、脱ガムにより適した酵素であるかどうかを調査することにある。従前の研究により、脂質アシルトランスフェラーゼ(特にGCATS)は、リン脂質からステロールへの脂肪酸のアシル転移を触媒し、リゾレシチンとステロールエステルを生成することが知られている。
【0380】
今回の研究は、ホスファチジルコリンと植物ステロールが添加された精製された大豆油に基づくモデルにおいて行なわれた。このモデルは、粗大豆油を使用する代わりに、モデルシステムにおいて反応生成物を分析することがより容易であることから選択された。
大豆油や菜種油を含む植物油の酵素的脱ガム工程は、この工程が油からレシチンを除去するのにより安価であり、より優れた工程であるので、近年拡大している。油の脱ガムに使用される酵素は、ホスホリパーゼA1(レシターゼウルトラ、又は膵臓由来のホスホリパーゼA2−Novoenzymes A/S社製、デンマーク)である。
【0381】
脱ガムに使用される本発明に関する酵素の、以前の当業界におけるホスホリパーゼA1と比較したときの利点の一つは、本発明による酵素は、脱ガム工程中にステロールエステルの生成を促進し、ステロールエステルの蓄積に寄与することであり、このことは、現時点で使用されているホスホリパーゼA1(レシターゼウルトラ)については、現時点では達成されていない。
【0382】
材料及び方法
酵素
・ 本発明による脂質アシルトランスフェラーゼ:アエロモナス・サルモニシダ由来の酵素の変異体Asn80Asp(成熟酵素のアミノ酸80)(配列番号16(図10参照))
・ レシターゼウルトラ(#3108)Novozymes社製、デンマーク
大豆油 : Soya olie IP (Item No. 005018/バッチ番号T-618-4)
レシチン : L−αホスファチジルコリン95%Plant(Avanti社製 #441601)
植物ステロール : Generol 122N Henkel社製、ドイツ
トコフェロール : アルファートコフェロール
(Item no.050908/lot.nr4010140554)
【0383】
ホスホリパーゼ活性
基質
0.6%L−αホスファチジルコリン95%Plant(Avanti社製#441601)、
0.4% Triton-X100(Sigma社製 X-100)及び5mM CaCl2 を0.05MHEPES緩衝剤pH7中に溶解した。
【0384】
アッセイ手順
400μlの基質が、1.5mlエッペンドルフチューブに加えられ、エッペンドルフサーモミキサー内に37℃にて5分間置かれた。T=0minに、50μlの酵素溶液が加えられた。酵素の代わりに水をいれたブランクも分析された。試料は、エッペンドルフサーモミキサー内において、37℃にて10分間10x100rpmで混合された。T=10minに、エッペンドルフチューブは、反応を停止するため、別のエッペンドルフサーモミキサー内に99℃にて10分間置かれた。
【0385】
試料内の遊離脂肪酸は、Wako GmbH社製NEFA C kitを用いて分析された。
【0386】
酵素活性PLU−NEFA pH7が、アッセイ条件下において1分ごとに形成されたマイクロモル脂肪酸として計算された。
【0387】
高性能薄層クロマトグラフィー
装置 :Automatic TLC sampler4、CAMAG社製
高性能薄層クロマトグラフィープレート:20x10cm,Merck社製 no.1.05641.
使用前に160℃にて30分間活性化された。
【0388】
手順 : 緩衝液中に8%溶液とした油1μlを自動TLCアプリケーターを使用して高性能薄層クロマトグラフィープレートに用いる。
【0389】
展開溶媒1: P-エーテル:メチル-tert-ブチルエーテル:酢酸 60:40:1
展開溶媒4: クロロホルム:メタノール:水 75:25:4
展開溶媒5: P-エーテル:メチル-tert-ブチルエーテル:酢酸 70:30:1
処理/溶出時間 展開溶媒1:12分
展開溶媒4:20分
展開溶媒5:10分
検出
プレートは乾燥器内で10分間160℃にて乾燥させ、冷却し、16%H3PO4に溶解した6%酢酸銅(cupri acetate)に浸漬する。さらに10分間160℃にて乾燥させ、直接評価される。
【実施例1】
【0390】
酵素精製
試料: 脂質アシルトランスフェラーゼ(Asn80Asp)(配列番号16)は、0.8/0.22μmフィルターで濾過された。510mlの濾液が採取された。
【0391】
ステップ1. 脱塩、 Sephadex 25G, 3.21g ゲル (10cm id)
Sephadexカラムは、製造者(Amersham biosciences社)の記述により調整された。カラムは20mM Na-P-緩衝液pH8.0で平衡化された。試料(510ml)は流出速度25ml/分でカラムに展開された。815mlの脱塩された試料が採取され、+4℃にて保持された。
【0392】
ステップ2. 陰イオン交換クロマトグラフィー、Q-Sepharose FF 300mlゲル(XK50)
Q−SepharoseFFカラムは、製造者(Amersham biosciences社)の記述により調整された。カラムは20mM Na-P-緩衝液pH8.0で平衡化された。脱塩された試料は、流出速度15ml/分でカラムに展開された。その後カラムは緩衝液Aで洗われた。リパーゼは、20mMNa-P-緩衝液(pH8.0、緩衝液B)中に0〜0.4MNaClの直線的濃度勾配をもって溶出された。リパーゼは、約0.2MNaClにより溶出し、リパーゼ活性は、展開中の画分を通じて検出されなかった。
【0393】
PNP−カプリル酸塩による酵素アッセイ
PNP−カプリル酸塩を基質として使用するアッセイは以下のとおり行なわれた。
【0394】
1mlのエタノールに溶解した10mgの基質は、0.4%TX100を含む9mlの50mM Tris-HCl緩衝液(pH7.3)に混合された。
【0395】
240μlの基質は35℃にてプレインキュベートされた。反応は25μlの試料及びブランクを加えることで開始された。混合液は、5分間35℃にて振盪しながらインキュベートされた。分光光度計を使用し、PNPの生成は、410nmにおいて連続して測定された。ブランクは、試料以外のすべての構成成分と緩衝液を含んでいる。リパーゼ活性の1ユニットは、35℃にて分単位で遊離カプリル酸1μlを放出する酵素量として定義された。
【0396】
分子量と純度の決定
SDS−PAGEは4−12%Nu-PAGEゲル(+DTT)により行なわれ、製造者(Novex社 アメリカ)の指示どおりにクーマシーで染色された。スタンダードマーカーは、See Blue Plus2であり、Novex社 アメリカより得た。
【0397】
結果
脂質アシルトランスフェラーゼ変異体N80Dのイオン交換クロマトグラフィー(IEC)による精製のクロマトグラムを、表1に示す。採取された画分はリパーゼ活性(PNP−カプリル酸塩アッセイに基づく)が分析された。画分ごとの活性を表1−aに示す。
【0398】
脂質アシルトランスフェラーゼ活性を含む画分(27−39、195ml)はプールされた。部分的に精製された脂質アシルトランスフェラーゼの最終的な回収率は、約80%であった(PNP−カプリル酸塩によるアッセイに基づく)。
【0399】
精製された脂質アシルトランスフェラーゼの画分は、SDS−PAGEに付された。
【0400】
SDS−PAGEのゲルは、脂質アシルトランスフェラーゼタンパク質が、分子量約28KDaであることを示した。部分的に精製された脂質アシルトランスフェラーゼは、10KDaの微量の不純物を含んでいた(図2参照)。
【0401】
IEC後の脂質アシルトランスフェラーゼプール27−39は、ホスホリパーゼ活性について分析され、20.4PLU−7/mlの結果を得た。
【0402】
全体的な精製スキームを表1に示す。脂質アシルトランスフェラーゼは、80%の回収率で部分的に精製されていた。
【0403】
【表4】
【実施例2】
【0404】
脱ガム実験
実施例1による脂質アシルトランスフェラーゼの試料は、表2に示されている処方により脱ガムの研究に使用された。
【0405】
植物ステロール、アルファ−トコフェロール及びホスファチジルコリンを90℃に温めた大豆油に溶解した。油はその後約40℃に冷却され酵素が添加された。試料は、17時間撹拌されながら40℃にて置かれ、その後試料採取されてクロロホルム:メタノール 2:1に溶解して、高性能薄層クロマトグラフィーが行なわれた。
【0406】
【表5】
高性能薄層クロマトグラフィーの結果を図3及び図4に示す。
【0407】
図3に示される薄層クロマトグラフィーの結果は、油に脂質アシルトランスフェラーゼを加えることにより、ホスファチジルコリンがほぼ100%除去されることを明白に示している。試料10のみが少量のホスファチジルコリンを含んでいる。試料10は水分量が一番高いので、水分量が低い場合に酵素がより働くのかもしれないということを示しており、或いは、試料10は5%水分を含んでいるので、二相が形成されて酵素と反応物質の接触が起こりにくくなっているかもしれないということにより説明可能かもしれない。
【0408】
図4に示された結果からは、少量の脂肪酸が生成されていることが観察された。しかし、ステロール又はアルファ−トコフェロールも油に存在するときは、ホスファチジルコリン由来の脂肪酸はステロールやトコフェロールに転移してステロールエステルやトコフェロールエステルを生成するので、遊離脂肪酸量はより少ない。
【0409】
ステロールエステルの生成は、図5に示された薄層クロマトグラフィーの結果から明らかに観察される。使用された対照材料であるコレステロールエステルは、植物ステロールエステルと同じ保持時間をとっていることに注意すべきである。
【実施例3】
【0410】
脱ガム実験(2)
もう1つの実験において、IECクロマトグラフィーから得られた脂質アシルトランスフェラーゼプール27−39は、酵素の添加量、及びホスファチジルコリンと植物ステロールを含んだ大豆油における水分量を変えて試験がされた。この実験では、市販のホスホリパーゼであるレシターゼウルトラも供給者が脱ガムについて推奨する濃度において試験がされた。
【0411】
この実験における試料の組成を表3に示す。
【0412】
【表6】
植物ステロールとホスファチジルコリンは、95℃に温めた大豆油に撹拌しながら溶解された。油はその後約40℃に冷却され酵素が添加された。試料はマグネティックスターラで撹拌されながら40℃で維持され、4又は20時間後に取り出されて、薄層クロマトグラフィーによって分析された。4又は20時間後に取り出された試料の高性能薄層クロマトグラフィー分析の結果を図6−9に示す。
【0413】
脂質アシルトランスフェラーゼの最低量の添加(油0.08PLU−7/gに対応する0.4%)は、20時間の反応時間後に大豆油中のホスファチジルコリンを除去するに充分であることを、高性能薄層クロマトグラフィーの結果は、示している。水を最大量含んだ場合(5%)は、油中のホスファチジルコリンの加水分解について脂質アシルトランスフェラーゼに悪影響を与えているようであることが観察される。それゆえ、最も高い濃度の脂質アシルトランスフェラーゼの試料におけるより低い程度の加水分解は、より多くの水分も加えられているという事実により説明される。これと反対に、レシターゼウルトラ は最低量の水分(1%)において、より少量のホスファチジルコリンを加水分解をしており、一方で、レシターゼウルトラは、5%水分の試料においては、ホスファチジルコリンをほぼ完全に除去することが観察される。
【0414】
図7の結果はまた、植物ステロールの大部分は、脂質アシルトランスフェラーゼによって処理された試料内で植物ステロールエステルに変換されているが、レシターゼウルトラによって処理された試料内ではステロールエステルは生成しないということを示している。図7は、レシターゼウルトラが、脂質アシルトランスフェラーゼよりも遊離脂肪酸(FFA)を多く形成することを示している。
【0415】
結論
ホスファチジルコリン、植物ステロール及びトコフェロールを含む大豆油モデルにおける脱ガム実験は、部分的に精製された脂質アシルトランスフェラーゼ酵素が、植物ステロールエステル生成を伴い、またごく少量の遊離脂肪酸を形成するが、ホスファチジルコリンをすべて除去できることを示している。
【0416】
脂質アシルトランスフェラーゼのさらなる利点の一つは、ステロールエステル、特にトコフェロールエステルの形成である。なぜなら、ステロールエステル(トコフェロールエステルを含む)は、健康に有益な特質を有するからである。通常の食用油の加工においては、脱ガムに引続き、加水分解された極性を有する脂質(リン脂質及び/又は糖脂質)を含む水相が、油から分離される。従来法では、ステロールは油精製工程で食用油から除かれる(本明細書では、脱臭と呼ばれることがある)。しかしながら、ステロールエステル(及びトコフェロールエステル)は脱臭に抗し、それゆえ油に残存する。油中にステロールエステルが蓄積することは魅力的である。なぜなら植物ステロールエステルの高摂取は人間の循環器系疾患のリスクを軽減するからである。
【0417】
実験は、脂質アシルトランスフェラーゼが、これもまた油に蓄積するトコフェロールエステルを形成できるということをも示している。
【0418】
これは、油の酸化に対する安定性の改善に寄与するものであり、それゆえ本発明による脂質アシルトランスフェラーゼを脱ガムに使用することの更なる有利な点である。
【実施例4】
【0419】
粗油における脱ガム実験
別の実験では、イオン交換クロマトグラフィーにより得られた脂質アシルトランスフェラーゼプール27−39は、Solae Company社, Aarhus, Denmarkより得た粗大豆油(脱ガム前)について、酵素濃度及び水分量を変えて試験がなされた。この実験では、商業用ホスホリパーゼであるレシターゼウルトラについても供給者が脱ガムについて推奨する濃度において試験がなされた。この試験における試料の組成を表4に示す。
【0420】
試料は、マグネティックスターラで撹拌しながら、40℃にてヒーティングブロック内に置かれた。20時間後分析のため試料は取り出された。
【0421】
【表7】
油の試料は高性能薄層クロマトグラフィーによって分析された。結果を図26及び27に示す。
【0422】
図26における高性能薄層クロマトグラフィー分析は、脂質アシルトランスフェラーゼが、試料(試料3、4、6及び7)にリゾレシチンを何ら残存させること無く、粗大豆油からリン脂質を効果的に除去することを示すものである。レシターゼウルトラもリン脂質(PC)を除去するが、クロマトグラムにはいくつかのバンドが残っており、リゾレシチンであると思われる。脂質アシルトランスフェラーゼは非常に低い水分環境においても作用するが、レシターゼウルトラは、作用するには1%から5%の水分を必要とすることも観察される。
【0423】
図27の結果は、脂質アシルトランスフェラーゼは、遊離ステロールをステロールエステルに変換し、レシターゼウルトラはステロールには何の効果も及ぼさないことを確認するものである。 図27の結果はまた、脂質アシルトランスフェラーゼ及びレシターゼウルトラを加えた試料双方において、いくらかの遊離脂肪酸が生成していることを示している。脂質アシルトランスフェラーゼによる遊離脂肪酸の生成理由は、アシル供与体(ステロール)が充分に存在せず、それゆえ加水分解も起こるということで説明される。
【0424】
表4においては試料1、2、3、6、8及び10がGLCで分析され、ステロール及びステロールエステル量が定量化された。結果を表5に示す。
【0425】
【表8】
表5における結果は、本発明における脂質アシルトランスフェラーゼは、粗大豆油中のすべてのステロールをステロールエステルに変換でき、商業用ホスホリパーゼであるレシターゼウルトラはステロールに何ら効果を及ぼさないということを確認するものである。
【0426】
結論
本発明の脂質アシルトランスフェラーゼの粗大豆油に対する効果は、本発明の脂質アシルトランスフェラーゼが、粗大豆油のリン脂質を効果的に除去し、ステロールエステルの生成を伴うことを確認するものである。
【実施例5】
【0427】
さらに実験において、ストレプトマイセス・サーモサッカリL131由来のホスホリパーゼが粗大豆油において試験された。
【0428】
結果は、ストレプトマイセス・サーモサッカリL131由来のホスホリパーゼは、粗大豆油におけるリン脂質を効果的に加水分解し、植物油の脱ガムについて代替酵素として適していることを確認するものである。
【0429】
大豆油及び菜種油を含む植物油の酵素的脱ガム工程は、この工程が費用があまりかからず、レシチンを植物油から取り除くのにより良い工程であるので、現在拡大している。脱ガムに使用されている商業用の酵素は、微生物由来のホスホリパーゼA1及び動物由来のホスホリパーゼA2である。
【0430】
ストレプトマイセス・サーモサッカリL131由来の(リン)脂質アシルトランスフェラーゼは脱ガムに使用可能なもう1つの酵素である。
【0431】
序文
この研究の目的は、大豆油、ひまわり油又は菜種油のような植物油の脱ガムについて、ストレプトマイセス・サーモサッカリL131由来の脂質アシルトランスフェラーゼの使用の可能性について調査することである。
【0432】
伝統的に油の脱ガムについては、二つの工程が使用されてきた。すなわち物理的脱ガム及び化学的脱ガムである。1990年代に遡り、膵臓由来のホスホリパーゼの使用に基づいて酵素的脱ガム工程は発展した。この酵素は、コーシャーではなかったので、ホスホリパーゼは微生物由来のホスホリパーゼA1に置き換えられた。酵素的工程は化学的或は物理的脱ガム工程に比べ経費削減、より高い収率、そしてより環境面で望ましい工程であることを含め、いくつかの利点がある。
【0433】
この研究の目的は、ストレプトマイセス・サーモサッカリL131由来の脂質アシルトランスフェラーゼが、脱ガムに適した酵素であるかどうかを調査することであった。上述の研究により、ストレプトマイセス・サーモサッカリL131は、トリグリセリドに対して何らの活性を示さずに、ガラクト脂質及びリン脂質に対して加水分解能力を有することが知られており、この酵素はある種の低水分環境でトランスフェラーゼの反応を促進することが期待される。この研究は天然のリン脂質を含む粗大豆油により行なわれた。
【0434】
材料及び方法
酵素
K371(jour2390-30):デンプン上で凍結乾燥されたストレプトマイセス・サーモサッカリL131/ストレプトマイセス・リビダンス
(活性:108PLU−7/g)
レシターゼウルトラ(#3108)Novozymes社製 デンマーク
コレステロールエステル、 Fluka 26950
植物ステロール:Generol122N Henkel社、ドイツ
粗大豆油:Solae社製 Aarhus デンマーク
レシチン:L−αホスファチジルコリン95%Plant(Avanti#441601)
【0435】
ホスホリパーゼ活性
基質:
0.6%L−αホスファチジルコリン95%Plant(Avanti#441601)、0.4% Triton−X100(Sigma X-100)、及び5mM CaCl2は、0.05MHEPES緩衝液pH7に溶解された。
【0436】
アッセイ方法
400μlの基質は、1.5mlのエッペンドルフチューブに加えられ、エッペンドルフサーモメーター内に37℃にて5分間置かれた。T=0minに、50μlの酵素溶液が加えられた。酵素の代わりに水を加えたブランクも分析された。試料は、エッペンドルフサーモミキサー内において、37℃にて10分間10*100rpmで混合された。T=10minに、エッペンドルフチューブをもう1つのエッペンドルフサーモミキサー内に99℃にて10分間置くことで反応は中止された。試料内の遊離脂肪酸量は、 Wako GmbH社製 NEFA C kitを用いて分析された。
【0437】
酵素活性PLU−NEFApH7がアッセイ条件における1分ごとの脂肪酸のマイクロモル量として計算された。
【0438】
GLC(ガスクロマトグラフィー)
WCOT溶融シリカカラム12.5m x 0.25ID x 0.1μm 5%フェニル−メチル−シリコーン(CPSil8CB Crompack社製))を用いたPerkin Elmer 8420キャピラリーガスクロマトグラフ
キャリヤー: ヘリウム
インジェクション: 1.5μL スプリット
検出器: FID. 385℃
乾燥機プログラム: 1 2 3 4
乾燥機温度(℃) 80 200 240 360
等温、時間(分) 2 0 0 10
昇温速度(℃/分) 20 10 12
試料調整:
0.2gの試料から抽出された脂質を、2mg/mLのヘプタデカンを内部標準として含む2mLのヘプタン:ピリジン2:1に溶解した。500μLの試料はクリンプバイアルに移された。100μLのMSTFA(N−メチル−N−トリメチルシリル−トリフルオロアセアミドが加えられ、15分間90℃にて保温されて反応を行なった。
【0439】
高性能薄層クロマトグラフィー
装置 : Automatic TLC sampler4、CAMAG社製
高性能薄層クロマトグラフィープレート 20x10cm,Merck社製no.1.05641.
使用前に160℃にて30分間活性化する。
【0440】
手順 : 緩衝液に溶解し8%溶液とした油1μlを高性能薄層クロマトグラフィープレートに用いた。
【0441】
展開溶媒4: クロロホルム:メタノール:水 75:25:4
展開溶媒5: P-エーテル:メチル-tert-ブチルエーテル:酢酸 70:30:1
手順/溶出時間
展開溶媒4 :20分
展開溶媒5 :10分
検出
プレートは160℃に保った乾燥機内で10分間乾燥させ、冷却し、16%H3PO4に溶解した6%cupri acetateに浸漬した。さらに10分間乾燥させて直接評価された。
【0442】
結果
脱ガム実験
ストレプトマイセス・サーモサッカリL131が表6に示す処方により脱ガム研究に使用された。
【0443】
試料は18時間撹拌されながら40℃にて置かれ、その後試料は採取されてクロロホルム:メタノール 2:1に溶解して高性能薄層クロマトグラフィーが行なわれた。
【0444】
【表9】
高性能薄層クロマトグラフィーでの分析結果を、図59及び60に示す。
【0445】
図59、表6による粗大豆油試料を酵素処理した反応生成物の高性能薄層クロマトグラフィー(溶媒4)。参考として、ホスファチジルコリン(PC)も分析された。ホスファチジルエタノールアミン(PE)及びリゾホスファチジルコリン(LPC)についても示されている。
【0446】
図60、表6による粗大豆油を酵素処理した反応生成物の高性能薄層クロマトグラフィー(溶媒5)。コレステロール、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリドにも言及している。遊離脂肪酸(FFA)についても示されている。
【0447】
図59に示された薄層クロマトグラフィーの結果は、ストレプトマイセス・サーモサッカリL131を油に加えることによりホスファチジルコリンは、完全に除去されたことを、明白に示すものである。最低濃度のもの(試料2)のみが、リン脂質を完全に加水分解しなかった。レシターゼウルトラも、5%水分が存在するとき(試料6)にはリン脂質を加水分解したが、余分に水分を加えないとき(試料5)は、部分的にのみリン脂質は加水分解された。
【0448】
図60に示されている結果は、リン脂質の加水分解は遊離脂肪酸の生成と同時に行なわれていることを示唆している。
【0449】
結論
ストレプトマイセス・サーモサッカリL131は、粗大豆油において遊離脂肪酸を生成し、リン脂質を効果的に加水分解する。
【0450】
前述の規格に言及されたすべての文献は、ここにおいて参照文献に組み入れられている。本発明の様々な改変や記述されている方法やシステムの変更は、本発明の範囲を逸脱するものでないことは当業者にとっては明らかなものであろう。本発明は、特定の好適な実施例に関して説明されてきたが、本発明が請求するように、そのような特異な実施例のみに、不当に制限されることがあってはならないことは理解されなければならない。実際、発明を実行するために記載された方法を様々に改変することは、生化学やバイオテクノロジーや関連分野の当業者にとっては明らかであり、以下の請求の範囲に収まることを意図するものである。
【図面の簡単な説明】
【0451】
【図1】陰イオン交換クロマトグラフィー(IEC)後得られた、脂質アシルトランスフェラーゼ活性(PNP―カプリル酸アッセイ)の分析結果を示すものである.
【図2】精製された脂質アシルトランスフェラーゼの画分(4〜12% Mes、+DTT、40/10 μl 試料がゲルにふされた。)のSDS−PAGE分析の結果を示すものである. レーン1. 脱塩後の脂質アシルトランスフェラーゼ試料、40μlがゲルにふされた。 レーン2. 脱塩後の脂質アシルトランスフェラーゼ試料、10μlがゲルにふされた。 レーン3. IEC後の精製された脂質アシルトランスフェラーゼリパーゼ(プール27〜39)、40μlがゲルにふされた。 レーン4. IEC後の精製された脂質アシルトランスフェラーゼリパーゼ(プール27〜39)、10μlがゲルにふされた。
【図3】表2により、大豆油の試料を脂質アシルトランスフェラーゼで処理した反応生成物のTLC(溶媒4)を示すものである。対照として、ホスファチジルコリン(PC)も分析された。
【図4】表2により、大豆油の試料を脂質アシルトランスフェラーゼで処理した反応生成物のTLC(溶媒1)を示すものである。対照として、遊離脂肪酸(FFA)とモノ−ジ−トリグリセリド(TRI/DI/MONO)も分析された。
【図5】表2により、大豆油の試料を脂質アシルトランスフェラーゼで処理した反応生成物のTLC(溶媒5)を示すものである。対照として、コレステロール(CHL)及びコレステロールエステル(CHLエステル)も分析された。
【図6】表3により、20時間、大豆油の試料を脂質アシルトランスフェラーゼ又はレシターゼウルトラで処理した反応生成物のTLC(溶媒4)を示すものである。
【図7】表3により、20時間、大豆油の試料を脂質アシルトランスフェラーゼ又はレシターゼウルトラで処理した反応生成物のTLC(溶媒5)を示すものである。コレステロールエステル(CHLエステル);モノ−ジ−トリグリセリド(MONO/DI/TRI)及び、植物ステロールもまた、対照として分析された。遊離脂肪酸(FFA)の同定も示されている。
【図8】表3により、4時間、大豆油の試料を脂質アシルトランスフェラーゼ又はレシターゼウルトラで処理した反応生成物のTLC(溶媒4)を示すものである。
【図9】表3により、4時間、大豆油の試料を脂質アシルトランスフェラーゼ又はレシターゼウルトラで処理した反応生成物のTLC(溶媒5)を示すものである。コレステロールエステル(CHLエステル)、モノ−ジ−トリグリセリド(MONO/DI/TRI)、及び植物ステロールもまた、対照として分析された。遊離脂肪酸(FFA)の同定も示されている。
【図10】Asn80Aspの変異による(明白に、アミノ酸80は成熟酵素に存在する)、アエロモナス・サルモニシダの成熟脂質アシルトランスフェラーゼ(GCAT)の変異体のアミノ酸配列示すものである。
【図11】アエロモナス・ハイドロフィラ (ATCC #7965) 由来の脂質アシルトランスフェラーゼ(配列番号1)のアミノ酸配列を示すものである。
【図12】データベースversion6(配列番号2)からのpfam00657の共通配列を示すものである。
【図13】生物アエロモナス・ハイドロフィラ (P10480;GI:121051)から得られた、アミノ酸配列(配列番号3)を示すものである。
【図14】生物アエロモナス・サルモニシダ (AAG098404;GI:9964017)から得られた、アミノ酸配列(配列番号4)を示すものである。
【図15】生物ストレプトマイセス・コエリコロルA3(2) (Genbank アクセッション番号NP_631558)〜得られた、アミノ酸配列(配列番号5)を示すものである。
【図16】生物ストレプトマイセス・コエリコロルA3(2) (Genbank アクセッション番号CAC42140)から得られた、アミノ酸配列(配列番号6)を示すものである。
【図17】生物サッカロミセス・セルビシエ(Genbank アクセッション番号P41734)から得られた、アミノ酸配列(配列番号7)を示すものである。
【図18】生物ラルスト二ア (Genbank アクセッション番号AL646052)から得られた、アミノ酸配列(配列番号8)を示すものである。
【図19】Scoe1 NCBI タンパク質アクセッションコード CAB39707.1 GI:4539178保存されている、立体構造は解かれたけれども機能がわからないタンパク質 (hypothetical protein) [ストレプトマイセス・コレリコロルA3(2)]配列番号9を示すものである。
【図20】Scoe2NCBIタンパク質アクセッションコード CAC01477.1 GI:9716139保存されている、立体構造は解かれたけれども機能がわからないタンパク質[ストレプトマイセス・コレリコロルA3(2)] 配列番号10によって示されるアミノ酸を示すものである。
【図21】Scoe3NCBIタンパク質アクセッションコードCAB88833.1 GI:7635996の推定分泌タンパク質[ストレプトマイセス・コレリコロルA3(2)]のアミノ酸配列(配列番号11)を示すものである。
【図22】Scoe4NCBIタンパク質アクセッションコードCAB89450.1 GI:7672261の推定分泌タンパク質[ストレプトマイセス・コレリコロルA3(2)]のアミノ酸配列(配列番号12)を示すものである。
【図23】Scoe5NCBIタンパク質アクセッションコードCAB62724.1 GI:6562793の推定リポタンパク質[ストレプトマイセス・コレリコロルA3(2)]のアミノ酸配列(配列番号13)を示すものである。
【図24】Srim1NCBIタンパク質アクセッションコードAAK84028.1 GI:15082088 GDSL−リパーゼ[ストレプトマイセス・リモスス]のアミノ酸配列(配列番号14)を示すものである。
【図25】アエロモナス・サルモニシダ subsp.サルモニシダ(ATCC#14174)由来の脂質アシルトランスフェラーゼのアミノ酸配列(配列番号15)を示すものである。
【図26】表4により、試料1〜10の粗大豆油の試料を酵素で20時間処理した反応生成物のTLC(溶媒4)を示すものである。PCは、5種類の異なる濃度(対照材料)に加えられたホスファチジルコリンである。
【図27】表4により(20時間)、粗大豆油の試料を脂質アシルトランスフェラーゼ又はレシターゼウルトラで処理した反応生成物のTLC(溶媒5)を示すものである。コレステロールエステル(CHL−エステル)、モノ−ジ−トリグリセリド(MONO/DI/TRI)、及び植物ステロールもまた参照として分析された。遊離脂肪酸の同定もまた、示されている。
【図28】カンジダ・パラプシロシス由来の脂質アシルトランスフェラーゼのアミノ酸配列である配列番号17を示すものである。
【図29】カンジダ・パラプシロシス由来の脂質アシルトランスフェラーゼのアミノ酸配列である配列番号18を示すものである。
【図30】アラインメント1を示すものである。
【図31】Scoe1NCBIタンパク質アクセッションコードCAB39707.1 GI:4539178保存されている、立体構造は解かれたけれども機能がわからないタンパク質[ストレプトマイセス・コレリコロルA3(2)]配列番号19を示すものである。
【図32】アエロモナス・ハイドロフィラ脂質アシルトランスフェラーゼ遺伝子の突然変異生成のために使用される融合構築物のアミノ酸配列(配列番号25)を示すものである。下線の引かれたアミノ酸は、キシラナーゼ(xylanase)のシグナルペプチドである。
【図33】ストレプトマイセス由来の脂質アシルトランスフェラーゼ酵素のポリペプチド配列(配列番号26)を示すものである。
【図34】サーモビフィダ由来の脂質アシルトランスフェラーゼ酵素のポリペプチド配列(配列番号27)を示すものである。
【図35】サーモビフィダ由来の脂質アシルトランスフェラーゼ酵素のポリペプチド配列(配列番号28)を示すものである。
【図36】コリネバクテリウム・エフィシェンスGDSx 300アミノ酸由来の脂質アシルトランスフェラーゼ酵素のポリペプチド(配列番号29)を示すものである。
【図37】ノボスフィンゴビウム・アロマチシボランス(Novosphingobium aromaticivorans)GDSx284アミノ酸由来の脂質アシルトランスフェラーゼ酵素のポリペプチド(配列番号30)を示すものである。
【図38】ストレプトマイセス・コレリコロルGDSx269aa由来の脂質アシルトランスフェラーゼ酵素のポリペプチド(配列番号31)を示すものである。
【図39】ストレプトマイセス・アベルミチリス/GDSx269アミノ酸由来の脂質アシルトランスフェラーゼ酵素のポリペプチド(配列番号32)を示すものである。
【図40】ストレプトマイセス由来の脂質アシルトランスフェラーゼ酵素のポリペプチド(配列番号33)を示すものである。
【図41】活性部位にグリセロールを有する1IVN.PDB結晶構造のリボン表現(ribbon representation)を示すものである。図は、Deep View Swiss−PDB viewerを使用して作成された。
【図42】Deep View Swiss−PDB viewerを使用した、活性部位にグリセロールを有する1IVN.PDB結晶構造―側面を示すものである。グリセロールの活性部位から10Å以内にある残基は、黒く塗られている。
【図43】アラインメント2を示すものである。
【図44】生物アエロモナス・ハイドロフィラ(P10480;GI121051)(明白に、これは成熟配列である。)から得られたアミノ酸配列(配列番号34)を示すものである。
【図45】アエロモナス・サルモニシダ成熟脂質アシルトランスフェラーゼ(GCAT)(明白に、これは成熟配列である。)の変異体のアミノ酸配列(配列番号35)を示すものである。
【図46】ストレプトマイセス・サーモサッカリ由来のヌクレオチド配列(配列番号36)を示すものである。
【図47】ストレプトマイセス・サーモサッカリ由来のアミノ酸配列(配列番号37)を示すものである。
【図48】サーモビフィダ・フスカ/GDSx548アミノ酸由来のアミノ酸配列(配列番号38)を示すものである。
【図49】サーモビフィダ・フスカ由来のヌクレオチド配列(配列番号39)を示すものである。
【図50】サーモビフィダ・フスカ/GDSx由来のアミノ酸配列(配列番号40)を示すものである。
【図51】コリネバクテリウム・エフィシェンス/GDSx300アミノ酸由来のアミノ酸配列(配列番号41)を示すものである。
【図52】コリネバクテリウム・エフィシェンス由来のヌクレオチド配列(配列番号42)を示すものである。
【図53】ストレプトマイセス・コレリコロル/GDSx268アミノ酸由来のアミノ酸配列(配列番号43)を示すものである。
【図54】ストレプトマイセス・コレリコロル由来のヌクレオチド配列(配列番号44)を示すものである。
【図55】ストレプトマイセス・アベルミチリス由来のアミノ酸配列(配列番号45)を示すものである。
【図56】ストレプトマイセス・アベルミチリス由来のヌクレオチド配列(配列番号46)を示すものである。
【図57】サーモビフィダ・フスカ/GDSx由来のアミノ酸配列(配列番号47)を示すものである。
【図58】サーモビフィダ・フスカ/GDSx由来のヌクレオチド配列(配列番号48)を示すものである。
【図59】表6により、粗大豆油の試料を酵素で処理した反応生成物のTLC(溶媒4)を示すものである。対照として、ホスファチジルコリン(PC)もまた分析された。PEホスファチジルエタノールアミン(PE)とリゾホスファチジルコリン(LPC)もまた、示されている。
【図60】表6により、粗大豆油の試料を酵素で処理した反応生成物のTLC(溶媒5)を示すものである。コレステロールエステル、モノ−ジ−トリグリセリドと植物ステロールが対照とされている。遊離脂肪酸(FFA)もまた、示されている。
【図61】L131のアラインメントを示し、ストレプトマイセス・アベルミチリス及びサーモビフィダ・フスカ由来の相同物は、GDSxモチーフ(L131及びストレプトマイセス・アベルミチリス及びサーモビフィダ・フスカにおけるGDSY)、GGNDA又はGGNDLいずれかのGANDYボックス、及びHPTブロック(保存された触媒的ヒスタジンとみなされている)の保存を説明する。これらの3つの保存されたブロックは、ハイライトされている。
【0452】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂質アシルトランスフェラーゼを使用して食用油を酵素的に脱ガムする方法に関する。
【0002】
本発明はさらに、一又は二以上の脂質アシルトランスフェラーゼに関する。
【0003】
本発明はさらに、食用油の脱ガムにおける脂質アシルトランスフェラーゼの使用に関する。
【背景技術】
【0004】
伝統的に、油の脱ガムについては物理的脱ガム及び化学的脱ガム工程という二つの工程が使用されてきた。1990年代に遡ると酵素的脱ガム工程は膵臓由来のホスホリパーゼの使用により発展してきた。この酵素はコーシャーではなかったので、ホスホリパーゼは微生物由来のホスホリパーゼA1に置き換えられた。酵素的工程は化学的、若しくは物理的脱ガム工程に比べ経費削減、より高い収率、そしてより環境にやさしい工程であることを含め、いくつかの利点がある。
【0005】
以下の関連文献、即ち、1999年7月20日に出願された米国特許出願第09/750,990号、米国特許出願第10/409,391号、WO2004/064537、WO2004/064987、PCT/IB2004/004378及びPCT/IB2004/004374を参照されたい。これらの出願の各々、及びこれらの出願の各々において引用されたそれぞれの文書(「出願引用文書」)、及び明細書中でも、若しくはこれらの出願の手続き中のいずれにおいても、並びにそのような手続き中に提出された特許性を支持するすべての意見書(argument)を参照により、本明細書に援用する。様々な文書がまた、本明細書でも引用されている(「本願引用文書」)。本願引用文書の各々、及び本願引用文書中で引用又は参照された各文書を参照により本明細書に援用する。
【発明の開示】
【発明の効果】
【0006】
第一の態様では、本発明は、ここに定義されているとおり脂質アシルトランスフェラーゼを使用した植物油又は食用油を酵素的に脱ガムする方法を提供する。
【0007】
本発明は、また、リン脂質の大部分を除去することについての本発明による脂質アシルトランスフェラーゼで食用又は植物油を処理することを含む、植物又は食用油の酵素的脱ガムの工程を提供する。
【0008】
本発明はまた、リン脂質の大部分からアシル基を、一又は二以上のアシル受容体に、例えば一又は二以上のステロール及び/又はスタノールに転移するために、本発明による脂質アシルトランスフェラーゼで食用油又は植物油を処理することを含む、植物又は食用油の酵素的脱ガムの工程を提供する。
【0009】
別の態様では、本発明は1又は二以上の脂質アシルトランスフェラーゼを提供する。
【0010】
一態様では、本発明は、配列番号16に示されるアミノ酸配列を含む脂質アシルトランスフェラーゼを提供する。
【0011】
別の態様では、本発明は、配列番号16に示されるアミノ酸配列を、或いは配列番号16と75%若しくはそれ以上、好ましくは85%若しくはそれ以上、より好ましくは90%若しくはそれ以上、さらにより好ましくは95%若しくはそれ以上、さらにより好ましくは98%若しくはそれ以上、又はさらにより好ましくは99%若しくはそれ以上の同一性を有するアミノ酸配列を含む脂質アシルトランスフェラーゼを提供する。
【0012】
さらに別の実施態様では、本発明は、(i)リン脂質(ホスファチジルコリンなどの)を除去するために、並びに/或いは(ii)油におけるステロールエステル及び/又はスタノールエステルの形成を増加させるために、並びに/或いは(iii)実質的に油における遊離脂肪酸を増加させることなく、リン脂質(ホスファチジルコリンなどの)を除去するために、及び/又は油におけるステロールエステル及び/若しくはスタノールエステルの形成を増加させるために、食用油の脱ガムにおける脂質アシルトランスフェラーゼの使用を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明において使われる脂質アシルトランスフェラーゼは、天然脂質アシルトランスフェラーゼであり、又は脂質アシルトランスフェラーゼの変異体である。
【0014】
例えば、本発明の方法及び使用において使われる脂質アシルトランスフェラーゼは、例えばWO2004/064537、WO2004/064987、PCT/IB2004/004378、又はGB0513859.9に記述されているうちの一つである。
【0015】
本明細書で使用される「脂質アシルトランスフェラーゼ」なる用語は、アシルトランスフェラーゼ活性(一般的にはE.C.2.3.1.xと分類されている)を意味し、酵素は、アシル基を脂質から一又は二以上の受容体基質へ転移することができ、受容体基質は、ステロール、スタノール、炭水化物、タンパク質、タンパク質サブユニット、グリセロールから選択される1又は2以上のものであり、好ましくはステロール及び/又はスタノールである。
【0016】
好ましくは、本発明による、又は本発明の方法及び/若しくは使用において使われる脂質アシルトランスフェラーゼは、アシル基を脂質(本明細書で定義される)から一又は二以上の以下のアシル受容体基質、即ちステロール又はスタノール、好ましくはステロールに、転移することができる。
【0017】
いくつかの態様では、本発明による「アシル受容体」は、例えば、グリセロ−ルを含む多価アルコール等のヒドロキシ基(−OH)を含む化合物と、ステロールと、スタノールと、炭水化物と、フルーツ酸、クエン酸、酒石酸、酪酸及びアスコルビン酸を含むヒドロキシ酸と、タンパク質又は、例えばアミノ酸、加水分解タンパク質、ペプチド(部分的に分解されたタンパク質)のようなタンパク質のサブユニット及びそれらの混合物又は派生物である。好ましくは、本発明による「アシル受容体」は、水ではない。
【0018】
アシル受容体は、好ましくはモノグリセリドでない。
【0019】
一態様では、本発明による、又は本発明の方法及び/若しくは使用において使われる脂質アシルトランスフェラーゼは、アシル基を脂質からステロール及び/又はスタノールに転移(transfer)できると同様、加えて、アシル基を脂質から、炭水化物、タンパク質、タンパク質サブユニット、グリセロールのうち1又は2以上に転移できる。
【0020】
好ましくは、本発明による脂質アシルトランスフェラーゼが作用する脂質基質は、一又は二以上の以下の脂質、例えばホスファチジルコリンなどのレシチンのようなリン脂質である。
【0021】
この脂質基質は、本明細書では「脂質アシル供与体(lipid acyl donor)」と呼ばれる。本明細書で使われるレシチンという用語は、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン及び、ホスファチジルグリセロールを含む。
【0022】
いくつかの態様では、好ましくは、本発明による、又は本発明の方法及び/若しくは使用において使われる脂質アシルトランスフェラーゼが作用する脂質基質は、例えばホスファチジルコリンなどのレシチンのようなリン脂質である。
【0023】
いくつかの態様では、好ましくは、本発明による、又は本発明の方法及び/若しくは使用において使われる脂質アシルトランスフェラーゼは、トリグリセリド及び/又は1−モノグリセリド及び/又は2−モノグリセリドには作用することができない、或いは実質的に作用することができない。
【0024】
好適には、本発明による、又は本発明の方法及び/若しくは使用において使われる脂質アシルトランスフェラーゼは、一又は二以上の、以下のホスホリパーゼ活性、即ちホスホリパーゼA2活性(E.C.3.1.1.4)又はホスホリパーゼA1活性(E.C.3.1.1.32)を示す。
【0025】
好適には、いくつかの態様では、本発明による、又は本発明の方法及び/若しくは使用において使われる脂質アシルトランスフェラーゼは、アシル基をリン脂質からステロール及び/又はスタノールに転移することができる。
【0026】
いくつかの態様では、好ましくは、本発明による、又は本発明の方法及び/若しくは使用において使われる脂質アシルトランスフェラーゼは、アシル基をリン脂質から、少なくともステロールエステル又は/及びスタノールエステルを形成するように、ステロール及び/又はスタノールに転移することができる。
【0027】
いくつかの態様では、好ましくは、本発明による、又は本発明の方法及び/若しくは使用において使われる脂質アシルトランスフェラーゼは、トリアシルグリセロールリパーゼ活性(E.C.3.1.1.3)を示さず、若しくは有意なトリアシルグリセロールリパーゼ活性(E.C.3.1.1.3)を示さない。
【0028】
本発明による、又は本発明の方法及び/若しくは使用において使われる脂質アシルトランスフェラーゼは、アシル基をリン脂質からステロール及び/又はスタノールに転移することができる。それゆえ、一実施形態では、本発明による「アシル受容体」はステロール、又はスタノール、又はステロールとスタノール両方の組合せのいずれかである。
【0029】
好ましくは、本発明による、又は本発明の方法及び/若しくは使用において使われる脂質アシルトランスフェラーゼは、以下の基準、即ち、
(i) 酵素が、脂質アシル供与体の元のエステル結合のアシル部分が、新しいエステルを形成するためにアシル受容体に転移される、エステル転移活性として定義されるアシルトランスフェラーゼ活性を有すること、
(ii)酵素が、アミノ酸配列モチーフGDSXを含み、Xが、以下のアミノ酸残基、L、A、V、I、F、Y、H、Q、T、N、M、又はSの一又は二以上であること、
を使用することで特徴づけられる。
【0030】
好ましくは、GDSXモチーフのXは、L又はYである。より好ましくは、GDSXモチーフのXは、Lである。それゆえ、好ましくは、本発明による酵素はアミノ酸配列モチーフGDSLを含む。
【0031】
GDSXモチーフは、4つの保存されたアミノ酸で構成されている。好ましくは、モチーフ内のセリンは脂質アシルトランスフェラーゼ酵素の触媒作用的セリンである。好適には、GDSXモチーフのセリンは、Brumlik & Buckley (Journal of Bacteriology Apr.1996, Vol.178,No.7, p2060-2064)に教示されているアエロモナス・ハイドロフィラの脂肪分解性酵素におけるセリン−16に相当するポジションである。
【0032】
タンパク質が、本発明によるGDSXモチーフを有するかどうかを決定するために、配列は、WO2004/064537又はWO2004/064987に教示されている手順によりpfamデータベースの隠れマルコフモデルプロファイル(hidden markov model profiles)(HMM profiles)と、好ましくは比較される。
【0033】
Pfamは、タンパク質のドメインファミリーのデータベースである。Pfamは新しい配列におけるこれらのドメインを同定するため、プロファイル隠れマルコフモデル(profiles HMMs)とともに、各々のファミリーの、管理された配列多重アラインメント(curated multiple sequence alignments)を含む。Pfamの紹介は、Bateman A et al.(2002) Nucleic Acids Res. 30;276-280で見ることができる。隠れマルコフモデルは、タンパク質を分類することを目的とするいくつかのデータベースで使用されており、概説としては、Bateman A and Haft DH(2002) Brief Bioinform 3;236-245を参照。
【0034】
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?cmd=Retrieve&db=PubMed&list uids=12230032&dopt=Abstract
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?cmd=Retrieve&db=PubMed&list uids=11752314&dopt=Abstract
隠れマルコフモデルと、それらがPfamデータベースにどのように適用されているかについての詳細な説明は、Durbin R, Eddy S, Krogh A (1998) Biological sequence analysis; probabilistic models of proteins and nucleic acids. Cambridge University Press, ISBN 0-521-62041-4を参照せよ。ハンマー(Hammer)ソフトウェアパッケージが、Washington University, St Louis, USA より入手できる。
【0035】
或いは、GDSXモチーフは、ハンマーソフトウェアパッケージによっても同定されることができ、その使用説明は、Durbin R, Eddy S,and Krogh A (1998) Biological sequence analysis; probabilistic models of proteins and nucleic acids. Cambridge University Press, ISBN 0-521-62041-4及びその参照文献、及び仕様書において提供されるHMMER2プロファイルにおいて提供される。
【0036】
PFAMデータベースは、例えば、現在以下のウェブサイトにあるいくつかのサーバーを通じてアクセスできる。
【0037】
http://www.sanger.ac.uk/Software/Pfam/index.shtml
http://pfam.wustl.edu/
http://pfam.jouy.inra.fr/
http://pfam.cgb.ki.se/
データベースは、タンパク質配列を入力することができる検索機能を提供している。データベースのデフォルトパラメーター(default parameters)を使用し、タンパク質配列は、その後Pfamドメインの存在について分析される。GDSXドメインは、データベースにおいて確立したドメインであり、いかなるクエリー配列(query sequence)においても、その存在は認識されるであろう。データベースは、クエリー配列に対してpfam00657共通配列のアラインメント(alignment)を返答してくるであろう。
【0038】
好ましくは、本発明の方法及び使用において使われる脂質アシルトランスフェラーゼ酵素は、Pfam00657共通配列を使用してアライン(align)されることができる(詳述については、WO2004/064537又はWO2004/064987を参照せよ)。
【0039】
好ましくは、pfam00657ドメインファミリーの、隠れマルコフモデルプロファイル(HMM profile)との肯定的な適合(positive match)は、本発明によるGDSL又はGDSXドメインの存在を示すものである。
【0040】
好ましくは、Pfam00657共通配列とアラインした場合には、本発明の方法又は使用において使われる脂質アシルトランスフェラーゼは、少なくとも1つ、好ましくは2以上の、好ましくは3以上の、以下のようなGDSxブロック(block)、GANDYブロック、HPTブロックを有する。好適には、脂質アシルトランスフェラーゼは、GDSxブロック及びGANDYブロックを有する。或いは、酵素は、GDSxブロック、及びHPTブロックを有する。好ましくは、酵素は少なくともGDSxブロックを含む。
【0041】
好ましくは、GANDYモチーフの残基は、GANDY、GGNDA、GGNDL、最も好ましくはGANDYから選択される。
【0042】
好ましくは、Pfam00657共通配列とアラインした場合には、本発明の方法又は使用において使われる酵素は、アエロモナス・ハイドロフィラのポリペプチド配列との照会、即ち、配列番号1:28hid,29hid,30hid,31hid,32gly,33Asp,34Ser,35hid,130hid,131Gly,132Hid,133Asn,134Asp,135hid,309Hisと比較したときに、少なくとも1つ、好ましくは2以上、好ましくは3以上、好ましくは4以上、好ましくは5以上、好ましくは6以上、好ましくは7以上、好ましくは8以上、好ましくは9以上、好ましくは10以上、好ましくは11以上、好ましくは12以上、好ましくは13以上、好ましくは14以上、好ましくは15以上のアミノ酸残基を有する。
【0043】
pfam00657GDSXドメインは、他の酵素からこのドメインを有するタンパク質を識別するユニークな鑑定者(identifier)である。
【0044】
pfam00657共通配列は、図12に配列番号2として示されている。これは、本明細書ではpfam00657.6としても言及されている、pfamファミリー00657、データベースversion6の同定から得られる。
【0045】
共通配列は、pfamデータベースの追加のリリース(further releases)(例えばWO2004/064537又はWO2004/064987を参照せよ)を使用することで更新される。
【0046】
GDSx、GANDY、及びHPTブロックの存在は、双方のデータベースのリリースによりpfamファミリー00657に見出される。pfamデータベースの将来的なリリースは、pfamファミリー00657を同定するのに使用されることができる。
【0047】
一実施形態では、本発明の方法及び使用において使われる脂質アシルトランスフェラーゼ酵素は、以下の基準、即ち、
(i)酵素が、脂質アシル供与体の元のエステル結合のアシル部分が、新しいエステルを形成するためにアシル受容体に転移される、エステル転移活性として定義されるアシルトランスフェラーゼ活性を有すること、
(ii)酵素が、アミノ酸配列モチーフGDSXを含み、Xが、L、A、V、I、F、Y、H、Q、T、N、M、又はSから選択される1又は2以上のアミノ酸残基であること、
(iii)酵素が、His-309を含み、或いは図11及び13(配列番号1又は配列番号3)に示されるアエロモナス・ハイドロフィラ由来の脂質アシルトランスフェラーゼ酵素の、His-309位に相当するポジションにヒスチジン残基を含むこと、
を使用することで特徴づけられる。
【0048】
好ましくは、GDSXモチーフのアミノ酸残基はLである。
【0049】
配列番号3又は配列番号1における最初の18アミノ酸残基は、シグナル配列を形成する。シグナル配列を含むタンパク質である完全長配列のHis-309は、タンパク質の成熟部分の、即ちシグナル配列を含まない配列の、His-291に一致する。
【0050】
一実施形態では、本発明の方法及び使用において使われる脂質アシルトランスフェラーゼ酵素が、以下の触媒三つ組(catalytic triad)、Ser-34、Asp-134及びHis-309を含み、或いは図13(配列番号3)、又は図11(配列番号1)に示される、アエロモナス・ハイドロフィラ由来の脂質アシルトランスフェラーゼ酵素におけるSer-34、Asp-134及びHis-309に相当するポジションにおいて、それぞれセリン残基、アスパラギン酸残基及びヒスチジン残基を含む。上述のように、配列番号3又は配列番号1に示される配列において、最初の18アミノ酸残基は、シグナル配列を形成する。シグナル配列を含むタンパク質である、完全長配列のSer-34、Asp-134及びHis-309は、タンパク質の成熟部分の、即ちシグナル配列を含まない配列の、Ser-16、Asp-116及びHis-291に一致する。図12(配列番号2)で示されるpfam00657共通配列において、活性部位残基は、Ser-7、Asp-157及びHis-348に相当する。
【0051】
一実施形態では、本発明の方法及び使用において使われる脂質アシルトランスフェラーゼ酵素は、以下の基準、即ち、
(i)酵素が、一番目の脂質アシル供与体の元のエステル結合のアシル部分が、新しいエステルを形成するためにアシル受容体に転移される、エステル転移活性として定義されうるアシルトランスフェラーゼ活性を有すること、
及び、
(ii)酵素は、少なくとも、Gly-32、Asp-33、Ser-34、Asp-134及びHis-309を含み、或いは図13(配列番号3)若しくは図11(配列番号1)に示される、アエロモナス・ハイドロフィラ由来の脂質アシルトランスフェラーゼ酵素においては、Gly-32、Asp-33、Ser-34、Asp-134、及びHis-309に相当するポジションにおいてそれぞれ、グリシン、アスパラギン酸、セリン、アスパラギン酸、及びヒスチジン残基を含むこと、
を使用することで特徴づけられる。
【0052】
好適には、本発明の方法及び使用において使われる脂質アシルトランスフェラーゼ酵素は、一又は二以上の以下のアミノ酸配列、即ち、
(i) 配列番号3(図13参照)に示されるアミノ酸配列
(ii) 配列番号4(図14参照)に示されるアミノ酸配列
(iii) 配列番号5(図15参照)に示されるアミノ酸配列
(iv) 配列番号6(図16参照)に示されるアミノ酸配列
(v) 配列番号7(図17参照)に示されるアミノ酸配列
(vi) 配列番号8(図18参照)に示されるアミノ酸配列
(vii) 配列番号9(図19参照)に示されるアミノ酸配列
(viii) 配列番号10(図20参照)に示されるアミノ酸配列
(ix) 配列番号11(図21参照)に示されるアミノ酸配列
(x) 配列番号12(図22参照)に示されるアミノ酸配列
(xi) 配列番号13(図23参照)に示されるアミノ酸配列
(xii) 配列番号14(図24参照)に示されるアミノ酸配列
(xiii) 配列番号1 (図11参照)に示されるアミノ酸配列
(xiv) 配列番号15(図25参照)に示されるアミノ酸配列
を、
或いは、配列番号1、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15に示される配列のいずれか1つと75%若しくはそれ以上の同一性を有するアミノ酸配列を、含む。
【0053】
好適には、本発明の方法及び使用において使われる脂質アシルトランスフェラーゼ酵素は、配列番号3又は配列番号4又は配列番号1又は配列番号15で示されるアミノ酸配列のいずれかを有し、或いは、配列番号3に示されるアミノ酸配列、又は配列番号4に示されるアミノ酸配列、又は配列番号1に示されるアミノ酸配列、又は配列番号15に示されるアミノ酸配列と、75%若しくはそれ以上、好ましくは80%若しくはそれ以上、好ましくは85%若しくはそれ以上、好ましくは90%若しくはそれ以上、好ましくは95%若しくはそれ以上の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0054】
好適には、本発明の方法及び使用において使われる脂質アシルトランスフェラーゼ酵素は、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号1、又は配列番号15に示される配列のいずれか1つと80%若しくはそれ以上、好ましくは85%若しくはそれ以上、より好ましくは90%若しくはそれ以上、及びさらにより好ましくは95%若しくはそれ以上、同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0055】
好適には、本発明の方法及び使用において使われる脂質アシルトランスフェラーゼ酵素は、一又は二以上の以下のアミノ酸配列、即ち、
(a)配列番号3又は配列番号1の1〜100位のアミノ酸残基に示されるアミノ酸配列、
(b)配列番号3又は配列番号1の101〜200位のアミノ酸残基に示されるアミノ酸配列、
(c)配列番号3又は配列番号1の201〜300位のアミノ酸残基に示されるアミノ酸配列、又は、
(d)上記(a)〜(c)に定義されたアミノ酸配列のいずれか1つと、75%若しくはそれ以上、好ましくは85%若しくはそれ以上、より好ましくは90%若しくはそれ以上、さらにより好ましくは95%若しくはそれ以上の、同一性を有するアミノ酸配列、
を含む。
【0056】
好適には、本発明の方法及び使用において使われる脂質アシルトランスフェラーゼ酵素は、一又は二以上の以下のアミノ酸配列、即ち、
(a) 配列番号3又は配列番号1のアミノ酸残基28〜39位に示されるアミノ酸配列、
(b) 配列番号3又は配列番号1のアミノ酸残基77〜88位に示されるアミノ酸配列、
(c)配列番号3又は配列番号1のアミノ酸残基126〜136位に示されるアミノ酸配列、
(d)配列番号3又は配列番号1のアミノ酸残基163〜175位に示されるアミノ酸配列、
(e)配列番号3又は配列番号1のアミノ酸残基304〜311位に示されるアミノ酸配列、又は、
(f)上記(a)〜(e)に定義されたアミノ酸配列のいずれか1つと、75%若しくはそれ以上、好ましくは85%若しくはそれ以上、より好ましくは90%若しくはそれ以上、さらにより好ましくは95%若しくはそれ以上の同一性を有するアミノ酸配列、
を含む。
【0057】
一態様では、本発明の方法及び使用において使われる脂質アシルトランスフェラーゼは、EP1275711で教示されている、カンジダ・パラプシロシス由来の脂質アシルトランスフェラーゼである。それゆえ、一態様では、本発明の方法及び使用において使われる脂質アシルトランスフェラーゼは、配列番号17(図28)、又は配列番号18(図29)で教示されるアミノ酸配列のうちの1つを含む、脂質アシルトランスフェラーゼである。
【0058】
さらに好ましくは、本発明の方法及び使用において使われる脂質アシルトランスフェラーゼは、配列番号16(図10)に示されるアミノ酸配列を含み、或いは75%若しくはそれ以上、好ましくは85%若しくはそれ以上、より好ましくは90%若しくはそれ以上、さらに好ましくは95%若しくはそれ以上、さらにより好ましくは98%若しくはそれ以上、さらにより好ましくは99%若しくはそれ以上、配列番号16と同一性を有するアミノ酸配列を含む脂質アシルトランスフェラーゼである。この酵素は、酵素の変異体が考慮される。
【0059】
一態様では,本発明の方法及び使用において使われる脂質アシルトランスフェラーゼは、レシチンコレステロールアシルトランスフェラーゼ(LCAT)、又はその変異体(例えば、分子進化により作られた変異体)である。
【0060】
好適なLCATは、当業界に知られており、例えば、以下の、哺乳類、ラット、マウス、ニワトリ、黄色ショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)、シロイヌナズナ及びイネを含む植物、線虫、真菌、酵母などの生物の一又は二以上から得られる。
【0061】
一実施形態では、本発明の方法及び使用に使われる脂質アシルトランスフェラーゼは、それぞれアクセッション番号NCIMB41204及びNCIMB41205により、2003年12月22日にNational Collection of Industrial, Marine and Food Bacteria(NCIMB)、23 St.マハル通り、アバディーン、スコットランド、GBにおいて特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブタペスト条約の下に、Danisco A/S社 Langebrogade 1, DK-1001 Copenhagen K,デンマークより寄託されたpPet12aAhydro、及びpPet12aASalmoをハーバリングしている大腸菌株TOP 10から得られる、好ましくは得られた脂質アシルトランスフェラーゼである。
【0062】
非常に好まれて本発明の方法に使われる脂質アシルトランスフェラーゼは、アエロモナス種から単離されたものを含み、好ましくは、アエロモナス・ハイドロフィラ又はアエロモナス・サルモニシダであり、最も好ましくはアエロモナス・サルモニシダである。最も好まれて本発明において使われる脂質アシルトランスフェラーゼは、配列番号1、3、4、15、16によりコードされるものである。アシルトランスフェラーゼのシグナルペプチドがトランスフェラーゼの発現の間に切断されていることが好ましいことは、当業者に認識されるであろう。配列番号1、3、4、15、及び16のシグナルペプチドは、アミノ酸1〜18位である。したがって、最も好ましい領域は、配列番号1及び配列番号3(アエロモナス・ハイドロフィラ)のアミノ酸19〜335位、並びに配列番号4、配列番号15、及び配列番号16(アエロモナス・サルモニシダ)のアミノ酸19〜336位である。アミノ酸配列の同一性の相同性を決定するために使用される場合は、本明細書で記述されているアラインメントは成熟配列を使用することが好ましい。
【0063】
したがって、相同性(同一性)を決定する最も好ましい領域は、配列番号1及び配列番号3(アエロモナス・ハイドロフィラ)のアミノ酸19〜335位、並びに配列番号4、15、及び16(アエロモナス・サルモニシダ)のアミノ酸19〜336位である。配列番号34及び35は、それぞれアエロモナス・ハイドロフィラとアエロモナス・サルモニシダ由来の、非常に好まれる脂質アシルトランスフェラーゼの成熟タンパク質配列である。
【0064】
本発明において使われる脂質アシルトランスフェラーゼはまた、サーモビフィダ、好ましくはサーモビフィダ・フスカ、最も好ましくは配列番号28によってコード化されているものから単離される。
【0065】
本発明において使われる脂質アシルトランスフェラーゼはまた、ストレプトマイセス、好ましくはストレプトマイセス・アベルミチリス、最も好ましくは、配列番号32によってコード化されているものから単離される。ストレプトマイセス由来の本発明において使われる他の可能性のある酵素は、配列番号5、6、9、10、11、12、13、14、31、33によってコード化されているものを含む。実施例は、配列番号33でコード化されている酵素は、酵素的脱ガムにおいて高度に効果的であることを示している。
【0066】
本発明において使われる酵素はまた、コリネバクテリウム、好ましくはコリネバクテリウム・エフィシェンス、最も好ましくは、配列番号29によってコード化されているものから単離される。
【0067】
好適には、本発明による方法及び使用において使われる脂質アシルトランスフェラーゼは、配列番号37、38、40、41、43、45若しくは47で示されるアミノ酸配列のうちいずれか1つを、又はこれらの配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、若しくは98%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、或いは、配列番号36、39、42、44、46、若しくは48に示されるヌクレオチド配列のうちいずれか1つにより、又はこれらの配列と、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、若しくは98%の同一性を有するヌクレオチド配列によってコード化されている脂質アシルトランスフェラーゼである。
【0068】
好ましくは、本発明による方法及び使用において使われる脂質アシルトランスフェラーゼは、少なくともガラクト脂質を加水分解することができ、且つ/或いはアシル基を、少なくともガラクト脂質から一又は二以上のアシル受容体基質に転移することができる、脂質アシルトランスフェラーゼであり、酵素は、ストレプトマイセス種から得ることができる、好ましくは得られたものである。
【0069】
一実施形態では、本発明による方法及び使用において使われる脂質アシルトランスフェラーゼは、好ましくは、少なくともガラクト脂質を加水分解することができ、且つ/或いはアシル基を少なくともガラクト脂質から一又は二以上のアシル受容体基質に転移することができる脂質アシルトランスフェラーゼであり、酵素は、以下よりなる群、即ち、
a)配列番号36に示されるヌクレオチド配列を含む核酸、
b) 遺伝子コードの変性により、配列番号36のヌクレオチド配列と関連している核酸、及び
c)配列番号36に示されるヌクレオチド配列と少なくとも70%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む核酸、
から選択される核酸によりコード化されている。
【0070】
一実施形態では、本発明の方法及び使用において使われる脂質アシルトランスフェラーゼは、好ましくは、配列番号37に示されるアミノ酸配列を、又はこの配列と少なくとも60%の同一性を有するアミノ酸配列を含む脂質アシルトランスフェラーゼである。
【0071】
別の実施形態では、本発明による方法及び使用において使われる脂質アシルトランスフェラーゼは、好ましくは、少なくともガラクト脂質を加水分解することができ、且つ/或いはアシル基を少なくともガラクト脂質から一又は二以上のアシル受容体基質に転移することができる、脂質アシルトランスフェラーゼであり、酵素は、配列番号37に示されるアミノ酸配列、又はこの配列と少なくとも60%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0072】
好ましくは、本発明による方法及び使用において使われる脂質アシルトランスフェラーゼは、少なくともガラクト脂質を加水分解することができ、且つ/或いはアシル基を少なくともガラクト脂質から一又は二以上のアシル受容体基質にアシル基を転移することができる、脂質アシルトランスフェラーゼであり、酵素は、サーモビフィダ種、好ましくはサーモビフィダ・フスカから得ることができる、好ましくは得られたものである。
【0073】
好ましくは、本発明による方法及び使用において使われる脂質アシルトランスフェラーゼは、少なくともガラクト脂質を加水分解することができ、且つ/或いはアシル基を少なくともガラクト脂質から一又は二以上のアシル受容体基質に、転移することができる脂肪分解酵素であり、酵素は、コリネバクテリウム種、好ましくはコリネバクテリウム・エフィシェンスから得ることができる、好ましくは得られたものである。
【0074】
追加的な実施形態では、本発明による方法及び使用において使われる脂質アシルトランスフェラーゼは、配列番号37、38、40、41、43、45、若しくは47で示されるアミノ酸配列のうちいずれか1つを、又はこれらの配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、若しくは98%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、或いは、配列番号39、42、44、46、若しくは48に示されるヌクレオチド配列のうちいずれか1つにより、又はこれらの配列と、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、若しくは98%の同一性を有するヌクレオチド配列によってコード化されている脂質アシルトランスフェラーゼである。
【0075】
追加的な実施形態では、本発明による方法及び使用において使われる脂質アシルトランスフェラーゼは、配列番号38、40、41、45、若しくは47で示されるアミノ配列のうちいずれか1つを、又は本明細書で記述されている使用のためのこれらの配列と、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、若しくは98%の同一性を有するアミノ酸配列を含む脂質アシルトランスフェラーゼである。
【0076】
追加的な実施形態では、本発明による方法及び使用において使われる脂質アシルトランスフェラーゼは、配列番号38、40、若しくは47で示されるアミノ酸配列のうちいずれか1つを、又は本明細書で記述されている使用のためのこれらの配列と、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、若しくは98%の同一性を有するアミノ酸配列を含む脂質アシルトランスフェラーゼである。
【0077】
より好ましくは一実施形態では、本発明による方法及び使用において使われる脂質アシルトランスフェラーゼは、配列番号47で示されるアミノ酸配列を、又はこの配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、若しくは98%の同一性を有するアミノ酸配列を含む脂質アシルトランスフェラーゼである。
【0078】
別の実施形態では、本発明による方法及び使用において使われる脂質アシルトランスフェラーゼは、配列番号43若しくは44で示されるアミノ酸配列を、又はこれらの配列と、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、若しくは98%の同一性を有するアミノ酸配列を含む脂質アシルトランスフェラーゼである。
【0079】
別の実施形態では、本発明による方法及び使用において使われる脂質アシルトランスフェラーゼは、配列番号41で示されるアミノ酸配列を、又はこの配列と、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、若しくは98%の同一性を有するアミノ酸配列を含む脂質アシルトランスフェラーゼである。
【0080】
一実施形態では、本発明による方法及び使用において使われる脂質アシルトランスフェラーゼは、少なくともガラクト脂質を加水分解することができ、且つ/或いはアシル基を、少なくともガラクト脂質から一又は二以上のアシル受容体基質に転移することができる、脂質アシルトランスフェラーゼであり、酵素は、以下よりなる群、即ち、
a)配列番号36に示されるヌクレオチド配列を含む核酸、
b)遺伝子コードの変性により、配列番号36のヌクレオチド配列と関連をもつ核酸、及び
c)配列番号36に示されるヌクレオチド配列と少なくとも70%の同一性があるヌクレオチド配列を含む核酸、
から選択される核酸によりコード化されている。
【0081】
一実施形態では、本発明による脂質アシルトランスフェラーゼは、それぞれアクセッション番号NCIMB41226及びNCIMB41227により、2004年6月25日にNCIMB(National Collection of Industrial, Marine and Food Bacteria)、23 St.マハル通り、アバディーン、スコットランド、GBにおいて特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブタペスト条約の下に、Danisco A/S社 Langebrogade 1, DK-1001 Copenhagen K,デンマークより寄託されたストレプトマイセス株L130若しくはL131から得られる、好ましくは得られた脂質アシルトランスフェラーゼである。
【0082】
本発明による及び/又は本発明の方法における使用のための脂質アシルトランスフェラーゼは、以下のアミノ酸配列のいずれか1つを含み、且つ/又は以下のヌクレオチド配列によりコード化されている、
本発明による脂質アシルトランスフェラーゼをコード化するポリヌクレオチド(配列番号16)
本発明の脂質アシルトランスフェラーゼのアミノ酸配列(配列番号17)である。
【0083】
本発明の方法において使われる好適な脂質アシルトランスフェラーゼは、デフォルト設定を使用したベクターNTI(VectorNTI)のクラスタルW.ペアワイズアラインメントアルゴリズム(Clustal W pairwise alignment algorithm)のアラインXを使用して、L131(配列番号37)についてのアラインメントにより同定される。
【0084】
L131のアラインメント、並びにストレプトマイセス・アベルミチリス及びサーモビフィダ・フスカ由来の相同物は、GDSxモチーフ(L131、及びストレプトマイセス・アベルミチリス、及びサーモビフィダ・フスカにおけるGDSY)と、GGNDA又はGGNDLのいずれかであるGANDYボックスと、HPTブロック(保存された触媒的ヒスタジン)との保存を説明するものである。これらの三つの保存されたブロックは、図61にハイライトされている。
【0085】
pfamPfam00657共通配列(WO04/064987に記述されているように)、及び/又は本明細書に開示されている(配列番号37)L131の配列のいずれかとアラインした場合、三つの保存されたブロックである、GDSxブロック、GANDYブロック、及びHTPブロックを同定することが可能である(より詳細は、WO04/064987を参照せよ)。
【0086】
PfamPfam00657共通配列(WO04/064987に記述されているように)及び/又は本明細書に開示されている(配列番号37)L131の配列のいずれかとアラインした場合、
i) 本発明の、又は本発明の方法において使われる脂質アシルトランスフェラーゼ酵素は、好ましくはGDSxモチーフを、より好ましくはGDSL若しくはGDSYモチーフから選択されるGDSxモチーフを有し、
且つ/又は
ii)本発明の、又は本発明の方法において使われる脂質アシルトランスフェラーゼ酵素は、好ましくはGANDYブロックを、より好ましくはアミノ基GGNDxで、より好ましくはGGNDA若しくはGGNDLを含む、GANDYブロックを有し、
且つ/又は
iii)本発明の、又は本発明の方法において使われる酵素は、好ましくはHTPブロックを有し、
且つ好ましくは、
iv)本発明の、又は本発明の方法において使われるガラクトリパーゼ/脂質アシルトランスフェラーゼ酵素は、好ましくはGDSx又はGDSYモチーフ、及びアミノ基GGNDxで、好ましくはGGNDA若しくはGGNDLを含むGANDYブロック、及びHTPブロック(保存されたヒスタジン)を有する。
【0087】
本発明による方法又は使用において使われる脂質アシルトランスフェラーゼは、脂質アシルトランスフェラーゼの変異体である場合、酵素は、酵素がアミノ酸配列モチーフGDSXを含み、Xが、以下のアミノ酸残基L、A、V、I、F、Y、H、Q、T、N、M、又はSの一又は二以上であり、酵素の変異体が、セット2、又はセット4、又はセット6又はセット7(定義は後述)において定義されるアミノ酸残基のいずれか一又は二以上の箇所で親配列と比較した場合に、一又は二以上のアミノ酸の改変を含んでいる、ということで特徴づけられる。
【0088】
例えば、本発明の方法又は使用において使われる脂質アシルトランスフェラーゼの変異体は、酵素が、アミノ酸配列モチーフGDSXを含み、Xが、以下のアミノ酸残基L、A、V、I、F、Y、H、Q、T、N、M、又はSの一又は二以上であり、酵素の変異体が、本明細書で教示されている1IVN.PDB及び/又は1DEO.PDBとp10480の結晶構造座標(crystal structure coordinates)の構造アラインメントにより好ましくは得られる、本明細書で定義されるp10480構造モデル(structural model)と構造的にアラインされている前記親配列により同定されるセット2、又はセット4、又はセット6、又はセット7(定義は後述)において詳細に記述されるアミノ酸残基のいずれか一又は二以上の箇所で親配列と比較した場合に、一又は二以上のアミノ酸の改変を含んでいる、ということで特徴づけられる。
【0089】
追加的な実施形態では、発明の方法又は使用において使われる脂質アシルトランスフェラーゼの変異体は、酵素が、アミノ酸配列モチーフGDSXを含み、Xが、以下のアミノ酸残基L、A、V、I、F、Y、H、Q、T、N、M、又はSの一又は二以上であり、酵素の変異体が、前記親配列がpfam共通配列(配列番号2−図12)にアラインしたとき、また本明細書で教示されているベストフィットオーバーラップ(best fit overlap)(図30を参照)を確かにするためにp10480の構造モデルにより改変されたときに、同定されたセット2において教示のあるアミノ酸残基の一又は二以上の箇所で親配列と比較した場合に、一又は二以上のアミノ酸の改変を含んでいる、ということで特徴づけられる。
【0090】
好適には、脂質アシルトランスフェラーゼ酵素の変異体は、配列番号34の配列アラインメントにより同定される、セット2、又はセット4、又はセット6、又はセット7(定義は後述)において定義される、一又は二以上のいずれかのアミノ酸残基における、一若しくは二以上のアミノ酸の変異を除いた、配列番号34、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号19、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号1、配列番号15、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号32、又は配列番号33に示されるアミノ酸配列である、アミノ酸配列を含む。
【0091】
或いは、脂質アシルトランスフェラーゼ酵素の変異体は、本明細書で教示されている1IVN.PDB及び/又は1DEO.PDBとp10480の結晶構造座標の構造アラインメントにより好ましくは得られる、本明細書で定義されるp10480構造モデルと構造的にアラインされている親配列により同定される、セット2、又はセット4、又はセット6、又はセット7において定義される、一又は二以上のいずれかのアミノ酸残基における、一若しくは二以上のアミノ酸の変異を除いた、配列番号34、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号19、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号1、配列番号15、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号32、又は配列番号33に示されるアミノ酸配列である、アミノ酸配列を含む酵素の変異体である。
【0092】
或いは、脂質アシルトランスフェラーゼ酵素の変異体は、親配列がpfam共通配列(セット2)とアラインするとき、また下記に記述されているようにベストフィットオーバーラップを確かにするためにP10480を構造モデルにより改変されているときに、同定されたセット2において教示される、一又は二以上のいずれかのアミノ酸残基における、一若しくは二以上のアミノ酸の変異を除いた、配列番号34、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号19、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号1、配列番号15、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号32、又は配列番号33に示されるアミノ酸配列である、アミノ酸配列を含む酵素の変異体である。
【0093】
本明細書で使用される「改変する」(modifying)という用語は、付加、置換、及び/又は削除することを意味する。好ましくは、「改変する」という用語は、置換するという意味である。
【0094】
誤解を避けるため、アミノ酸が親酵素において置換される場合、好ましくは、アミノ酸は、親酵素におけるポジションに元々あるアミノ酸と異なるアミノ酸と置換され、それゆえ酵素の変異体を作り出す。言いかえれば、「置換」という用語は、アミノ酸を同一のアミノ酸と代替することを対象としない。
【0095】
好ましくは、親酵素は、配列番号34、及び/又は配列番号15、及び/又は配列番号35に示されるアミノ酸配列を含む酵素である。
【0096】
好ましくは、酵素の変異体は、セット2、又はセット4、又はセット6、又はセット7において定義される、一又は二以上のいずれかのアミノ酸残基における、一又は二以上のアミノ酸の改変を除いた、配列番号34又は配列番号35に示されるアミノ酸配列である、アミノ酸配列を含む酵素である。
【0097】
一実施形態では、好ましくは、酵素の変異体は、セット4で定義されたアミノ酸残基の少なくとも1つにおいて、親配列と比較して一又は二以上のアミノ酸の改変を含む。
【0098】
好適には、酵素の変異体は、親酵素を比較して、一又は二以上の以下のアミノ酸の改変
S3E、A、G、K、M、Y、R、P、N、T又はG
E309Q、R、又はA、好ましくはQ又はR
―318Y、H、S、又はY、好ましくはY、
を含む。
【0099】
好ましくは、GDSXモチーフのXは、Lである。それゆえ、好ましくは、親酵素はアミノ酸配列モチーフGDSLを含む。
【0100】
好ましくは、脂質アシルトランスフェラーゼ酵素の変異体を作り出す方法は、さらに一又は二以上の以下の
・ 構造的相同性マッピング(structural homology mapping)、又は
・ 配列相同性アラインメント、
のステップを含む。
【0101】
好適には、構造的相同性マッピングは、一又は二以上の以下の
i) 図46に示される構造モデル(1IVN.PDB)と親配列をアラインするステップ
ii) 活性部位(図47参照)(セット1又はセット2において定義される一又は二以上のアミノ酸残基のような)におけるグリセロール分子の中心炭素原子を中心として10Å以内にある一又は二以上のアミノ酸残基を選択するステップ
iii) 前記親配列において、ステップ(ii)により選択された一又は二以上のアミノ酸を改変するステップ
を含む。
【0102】
一実施形態では、選択されたアミノ酸残基は、活性部位(図47参照)におけるグリセロール分子の中心炭素原子を中心として9以内、好ましくは、8、7、6、5、4又は3Å以内に存在する。
【0103】
好適には、構造的相同性マッピングは、一又は二以上の以下の、
i) 図46に示される構造モデル(1IVN.PDB)と親配列をアラインするステップ
ii) 活性部位(図47参照)(セット1又はセット2において定義される一又は二以上のアミノ酸残基のような)におけるグリセロール分子の中心炭素原子を中心として10Å以内にある一又は二以上のアミノ酸を選択するステップ
iii)ステップ(ii)により選択された一又は二以上のアミノ酸が、高度に保存されている(特に、活性部位、及び/又はGDSxモチーフの一部、及び/又はGANDYモチーフの一部)かどうかを決定するステップ、及び
iv) 前記親配列においてステップ(iii)により同定された保存領域を除いた、ステップ(ii)により選択された一又は二以上のアミノ酸を改変するステップ
を含む。
【0104】
一実施形態では、選択されたアミノ酸残基は、活性部位(図47参照)におけるグリセロール分子の中心炭素原子を中心として9以内、好ましくは、8、7、6、5、4又は3Å以内に存在する。
【0105】
或いは、又は上述の構造的相同性マッピングと組み合わせて、構造的相同的マッピングは、P10480モデルと1IVNに覆われた(overlaid)、pfamアラインメント(アラインメント2、図48)から由来する特異的なループ領域(LRs)又は介在領域(intervening regions)(IVRs)によって行われる。ループ領域(LRs)又は介在領域(IVRs)は、以下の表に定義されている。
【0106】
【表1】
本発明のいくつかの実施形態では、本発明の方法及び使用に使われる脂質アシルトランスフェラーゼ酵素の変異体は、セット1〜4及び6〜7のいずれの1つにおいて定義される、一又は二以上のアミノ酸においてアミノ酸の改変を含むだけでなく、上記に定義された介在領域(IVR1〜6)(好ましくはIVR3、5、及び6の一又は二以上において、より好ましくはIVR5若しくはIVR6において)の一又は二以上において、並びに/或いは、上記に定義されているループ領域(LR1〜5)(好ましくは、LR1、LR2若しくはLR5の一又は二以上において、より好ましくはLR5において)の一又は二以上において、少なくとも1つのアミノ酸の改変をもまた含む。
【0107】
一実施形態では、本発明の方法及び使用において使われるアシルトランスフェラーゼの変異体は、セット2、4、6及び7の一又は二以上によって定義されるのみでなく、IVR1〜6(好ましくはIVR3、5、若しくは6において、より好ましくはIVR5若しくはLVR6において)の一又は二以上において、或いはLR1〜5(好ましくはLR1、LR2若しくはLR5において、より好ましくはLR5において)の一又は二以上において、一又は二以上のアミノ酸改変をもまた含む。
【0108】
好適には、本発明の方法及び使用において使われるアシルトランスフェラーゼの変異体は、セット1又は2においてだけでなくIVR3においても、一又は二以上のアミノ酸改変を含む。
【0109】
好適には、本発明の方法及び使用において使われるアシルトランスフェラーゼの変異体は、セット1又は2においてだけでなくIVR5においても、一又は二以上のアミノ酸改変を含む。
【0110】
好適には、本発明の方法及び使用において使われるアシルトランスフェラーゼの変異体は、セット1又は2においてだけでなくIVR6においても、一又は二以上のアミノ酸改変を含む。
【0111】
好適には、本発明の方法及び使用において使われるアシルトランスフェラーゼの変異体は、セット1又は2だけでなくLR1においても、一又は二以上のアミノ酸改変を含む。
【0112】
好適には、本発明の方法及び使用において使われるアシルトランスフェラーゼの変異体は、セット1又は2においてだけでなくLR2においても、一又は二以上のアミノ酸改変を含む。
【0113】
同様に、本発明のいくつかの実施形態では、本発明の方法及び使用において使われるアシルトランスフェラーゼの変異体は、活性部位(図47参照)におけるグリセロール分子の中心炭素原子を中心として10、好ましくは、9、8、7、6、5、4又は3Å以内に存在する一又は二以上のアミノ酸におけるアミノ酸残基の改変を含むだけでなく、一又は二以上の上記に定義されている介在領域(IVR1〜6)(好ましくはIVR3、5、若しくは6の一又は二以上において、より好ましくはIVR5若しくはLVR6において)の一又は二以上において、並びに/或いは上記に定義されたループ領域(LR1〜5)(好ましくはLR1、LR2若しくはLR5の一又は2以上において、より好ましくはLR5において)の一又は二以上において、少なくとも1つのアミノ酸改変をもまた含む。
【0114】
一実施形態では、好ましくは、アミノ酸改変は、10Å以内であって、且つLR5内に存在する一又は二以上のアミノ酸残基の位置である。
【0115】
それゆえ、構造的相同性マッピングは、一又は二以上の以下の、
i) 親配列を、図46に示される構造モデル(1IVN.PDB)とアラインするステップ
ii) 活性部位(図47参照)(セット1又はセット2において定義される一又は二以上のアミノ酸残基のような)において、グリセロール分子の中心炭素原子を中心として10Å以内に存在する、一又は二以上のアミノ酸残基を選択し、
且つ/或いは、
IVR1〜6において(好ましくはIVR3、5、若しくは6において、より好ましくはIVR5若しくはLVR6において)、一又は二以上のアミノ酸残基を選択し、
且つ/或いは、
LR1〜5において(好ましくはLR1、LR2若しくはLR5において、より好ましくはLR5において)、一又は二以上のアミノ酸残基を選択するステップ
iii)前記親配列において、ステップii)により選択された一又は二以上のアミノ酸を改変するステップ
を含む。
【0116】
一実施形態では、選択されたアミノ酸残基は、活性部位(図47参照)においてグリセロール分子の中心炭素原子を中心として9以内、好ましくは8、7、6、5、4又は3Å以内に存在する。
【0117】
好適には、構造的相同性マッピングは一又は二以上の以下の、
i) 親配列を、図46に示される構造モデル(1IVN.PDB)とアラインするステップ、
ii) 活性部位(図47参照)(セット1又はセット2に定義される一又は二以上のアミノ酸残基のように)においてグリセロール分子の中心炭素原子を中心として10Å以内に存在する、一又は二以上のアミノ酸残基を選択し、
且つ/或いは、
IVR1〜6(好ましくはIVR3、5、若しくは6において、より好ましくはIVR5若しくはLVR6において)において、一又は二以上のアミノ酸残基を選択し、
且つ/或いは、
LR1〜5(好ましくはLR1、LR2若しくはLR5において、より好ましくはLR5において)において、一又は二以上のアミノ酸残基を選択するステップ、
iii)ステップ(ii)により選択された一又は二以上のアミノ酸が、高度に保存されている(特に、活性部位、及び/又はGDSxモチーフの一部、及び/又はGANDYモチーフの一部が、)かどうかを決定するステップ、
且つ、
前記親配列においてステップ(iii)により同定された高度に保存されている領域を除いた、ステップ(ii)により選択された一又は二以上のアミノ酸を改変するステップ、
を含む。
【0118】
好適には、上記に詳述された方法において選択された一又は二以上のアミノ酸は、活性部位(図47参照)(セット1又はセット2に定義される一又は二以上のアミノ酸残基のように)においてグリセロール分子の中心炭素原子を中心として10Å以内に存在するばかりでなく、IVR1〜6(好ましくはIVR3、5、若しくは6において、より好ましくはIVR5若しくはLVR6において)の一又は二以上において、或いはLR1〜5(好ましくはLR1、LR2若しくはLR5において、より好ましくはLR5において)の一又は二以上においてもまた存在する。
【0119】
一実施形態では、好ましくは、一又は二以上のアミノ酸改変は、LR5において行われる。改変がLR5にあるときは、改変は、セット5において定義されるものではない。好適には、一又は二以上のアミノ酸改変は、LR5によって定義される領域にあるだけではなく、セット2、セット4、セット6、セット7の一又は二以上におけるアミノ酸を構成する。
【0120】
好適には、配列相同性アラインメントは、一又は二以上の以下の、
i) 一番目の親脂質アシルトランスフェラーゼを選ぶステップ、
ii) 目的の(desirable)活性を有する二番目に関連した脂質アシルトランスフェラーゼを同定するステップ、
iii)前記一番目の親脂質アシルトランスフェラーゼと二番目に関連した脂質アシルトランスフェラーゼをアラインするステップ、
iv) 2つの配列の間の異なるアミノ酸残基を同定するステップ、
及び
v) 前記親脂質アシルトランスフェラーゼにおいて、ステップ(iv)により同定されたアミノ酸残基の一又は二以上を改変するステップ、
を含む。
【0121】
好適には、配列相同性アラインメントは、一又は二以上の以下の、
i) 一番目の親脂質アシルトランスフェラーゼを選ぶステップ、
ii) 目的の活性を有する二番目に関連した脂質アシルトランスフェラーゼを同定するステップ、
iii)前記一番目の親脂質アシルトランスフェラーゼと二番目に関連した脂質アシルトランスフェラーゼをアラインするステップ、
iv) 2つの配列の間の異なるアミノ酸残基を同定するステップ、
v) ステップ(iv)により選択されたアミノ酸残基の一又は二以上が、高度に保存された(特に活性部位の残基及び/又はGDSxモチーフの一部及び/又はGANDYモチーフの一部)であるかを決定するステップ、
及び
vi) 前記親配列におけるステップ(v)により同定される保存領域を排除するステップ(iv)により同定されたアミノ酸残基の一又は二以上を改変するステップ、
を含む。
【0122】
好適には、一番目の親脂質アシルトランスフェラーゼは、以下のアミノ酸配列、配列番号34、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号19、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号1、配列番号15、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号32、配列番号33のいずれか1つを含む。
【0123】
好適には、二番目に関連した脂質アシルトランスフェラーゼは、以下のアミノ酸配列、配列番号3、配列番号34、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号19、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号1、配列番号15、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号32、配列番号33のいずれか1つを含む。
【0124】
酵素の変異体は、少なくとも、親酵素と比較して少なくとも1つのアミノ酸改変を含まなければならない。いくつかの実施形態では、酵素の変異体は、少なくとも2、好ましくは少なくとも3、好ましくは少なくとも4、好ましくは少なくとも5、好ましくは少なくとも6、好ましくは少なくとも7、好ましくは少なくとも8、好ましくは少なくとも9、好ましくは少なくとも10の親配列と比較したアミノ酸改変を含む。
【0125】
本明細書の特異的なアミノ酸残基に対応した場合、番号付与は、配列の変異体と、配列番号34若しくは配列番号35に示された参照配列とのアラインメントより得られるものである。
一態様では、好ましくは、酵素の変異体は、一又は二以上の以下のアミノ酸置換を含む。
S3A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、T、V、W、又はY、及び/又は、
L17A、C、D、E、F、G、H、I、K、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、又はY、及び/又は、
S18A、C、D、E、F、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、T、W、又はY、及び/又は、
K22A、C、D、E、F、G、H、I、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、又はY、及び/又は、
M23A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、N、P、Q、R、S、T、V、W、又はY、及び/又は、
Y30A、C、D、E、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、又はW、及び/又は、
G40A、C、D、E、F、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、又はY、及び/又は、
N80A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、P、Q、R、S、T、V、W、又はY、及び/又は、
P81A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、Q、R、S、T、V、W、又はY、及び/又は、
K82A、C、D、E、F、G、H、I、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、又はY、及び/又は、
N87A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、P、Q、R、S、T、V、W、又はY、及び/又は、
N88A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、P、Q、R、S、T、V、W、又はY、及び/又は、
W111A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、又はY、及び/又は、
V112A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、W、又はY、及び/又は、
A114C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、又はY、及び/又は、
Y117A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、又はW、及び/又は、
L118A、C、D、E、F、G、H、I、K、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、又はY、及び/又は、
P156A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、Q、R、S、T、V、W、又はY、及び/又は、
D157A、C、E、F、G、H、I、K、L、M、P、Q、R、S、T、V、W、又はY、及び/又は、
G159A、C、D、E、F、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、又はY、及び/又は、
Q160A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、R、S、T、V、W、又はY、及び/又は、
N161A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、P、Q、R、S、T、V、W、又はY、及び/又は、
P162A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、Q、R、S、T、V、W、又はY、及び/又は、
S163A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、T、V、W、又はY、及び/又は、
A164C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、又はY、及び/又は、
R165A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、S、T、V、W、又はY、及び/又は、
S166A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、T、V、W、又はY、及び/又は、
Q167A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、R、S、T、V、W、又はY、及び/又は、
K168A、C、D、E、F、G、H、I、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、又はY、及び/又は、
V169A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、W、又はY、及び/又は、
V170A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、W、又はY、及び/又は、
E171A、C、D、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、又はY、及び/又は、
A172C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、又はY、及び/又は、
Y179A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V又はW、及び/又は、
H180A、C、D、E、F、G、I、K、L、M、P、Q、R、S、T、V、W、又はY、及び/又は、
N181A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、P、Q、R、S、T、V、W、又はY、及び/又は、
Q182A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、R、S、T、V、W、又はY、好ましくはK、及び/又は、
M209A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、N、P、Q、R、S、T、V、W、又はY、及び/又は、
L210A、C、D、E、F、G、H、I、K、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、又はY、及び/又は、
R211A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、又はY、及び/又は、
N215A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、又はY、及び/又は、
Y226A、C、D、E、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、又はW、及び/又は、
Y230A、C、D、E、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、又はW、及び/又は、
K284A、C、D、E、F、G、H、I、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、又はY、及び/又は、
M285A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、N、P、Q、R、S、T、V、W、又はY、及び/又は、
Q289A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、R、S、T、V、W、又はY、及び/又は、
V290A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、W、又はY、及び/又は、
E309A、C、D、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、又はY、及び/又は、
S310A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、T、V、W、又はY
それに加えて、又は或いは、一又は二以上のC末端の伸長がある。好ましくは、付加的なC−末端の伸長は、一又は二以上の脂肪族のアミノ酸から、好ましくは、非極性のアミノ酸から、より好ましくは、I,L,V,又はGから成るものである。それゆえ、本発明はさらに、以下のC−末端の伸長、即ち318I、318L、318V、318Gの一又は二以上を含む酵素の変異体を提供するものである。
【0126】
親バックボーン(backbone)の残基が、p10480及び/又は1IVNの相同性アラインメント及び/又は構造アラインメントにより決定されるような、p10480(配列番号2)における残基とは異なる場合には、P10480(配列番号2)における以下のアミノ酸残基、即ちSer3、Leu17、Lys22、Met23、Gly40、Asn80、Pro81、Lys82、Asn87、Asn88、Trp111、Val112、Ala114、Tyr117、Leu118、Pro156、Gly159、Gln160、Asn161、Pro162、Ser163、Ala164、Arg165、Ser166、Gln167、Lys168、Val169、Val170、Glu171、Ala172、Tyr179、His180、Asn181、Gln182、Met209、Leu210、Arg211、Asn215、Lys284、Met285、Gln289、Val290、Glu309、又はSer310)の一又は二以上のいずれかとアラインする残基とP10480に見い出されるそれぞれの残基とを置換することが望ましい。
【0127】
ホスファチジルコリン(PC)などのリン脂質に対する、減少した加水分解活性を有する酵素の変異体はまた、リン脂質からの増加したトランスフェラーゼ活性を有する。
【0128】
ホスファチジルコリン(PC)などのリン脂質からの、増加したトランスフェラーゼ活性を有する酵素の変異体はまた、増加した加水分解活性を有する。
【0129】
好適には、一又は二以上の以下の部位、即ちLeu17、Ala114、Tyr179、His180、Asn181、Met209、Leu210、Arg211、Asn215、Lys284、Met285、Gln289、Val290は結合している基質に関係する。
【0130】
一又は二以上の以下の残基の改変は、リン脂質に対して絶対的に増加したトランスフェラーゼ活性を有する酵素の変異体を生じる。
【0131】
S3、D157、S310、E309、Y179、N215、K22、Q289、M23、H180、M209、L210、R211、P81、V112、N80、L82、N88、N87
リン脂質からの改良されたトランスフェラーゼ活性を有する酵素の変異体を供給する特異的な改変は、一又は二以上の以下の、
S3A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、T、V、W又はY、好ましくは、N、E、K,R、A、P、又はM、最も好ましくはS3A
D157A、C、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W又はY、好ましくは、D157S、R、E、N,G、T、V、Q,K又はC
S310A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、T、V、W又はY、好ましくはS310T−318E
E309A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、T、V、W又はY、好ましくはE309R、E、L、R又はA
Y179A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V又はW、好ましくは、Y179D、T、E、R、N、V、K,Q又はS、最も好ましくはE、R、N、V、K又はQ
N215A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、P、Q、R、S、T、V、W又はY、好ましくは、N215S、L、R又はY
K22A、C、D、E、F、G、H、I、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W又はY、好ましくは、K22E、R、C、又はA
Q289A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、R、S、T、V、W又はY、好ましくは、Q289R、E、G、P又はN
M23A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、N、P、Q、R、S、T、V、W又はY、好ましくは、M23K、Q、L、G、T又はS
H180A、C、D、E、F、G、I、K、L、M、P、Q、R、S、T、V、W又はY、好ましくは、H180Q、R又はK
M209A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、N、P、Q、R、S、T、V、W又はY、好ましくは、M209Q、S、R、A、N、Y、E、V又はL
L210A、C、D、E、F、G、H、I、K、M、N、P、Q、R、S、T、V、W又はY、好ましくは、L210R、A、V、S、T、I、W又はM
R211A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、S、T、V、W又はY、好ましくは、R211T
P81A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、Q、R、S、T、V、W又はY、好ましくは、P81G
V112A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、W又はY、好ましくは、V112C
N80A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、P、Q、R、S、T、V、W又はY、好ましくは、N80R、G、N、D、P、T、E、V、A又はG
L82A、C、D、E、F、G、H、I、M、N、P、Q、R、S、T、V、W又はY、好ましくは、L82N、S又はE
N88A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、P、Q、R、S、T、V、W又はY、好ましくは、N88C
N87A、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、P、Q、R、S、T、V、W又はY、好ましくは、N87M又はG
から選択される。
【0132】
一又は二以上の以下の残基の改変、即ち、
S3 N、R、A、G
M23 K、Q、L、G、T、S
H180 R
L82 G
Y179 E、R、N、V、K又はQ
E309 R、S、L又はA
は、リン脂質に対する絶対的に増加したトランスフェラーゼ活性を有する酵素の変異体を生じる。
【0133】
一つの好ましい改変は、N80Dである。これは、特に参照配列の配列番号35を使用したときの場合である。それゆえ、本発明の好ましい実施形態では、本発明による脂質アシルトランスフェラーゼは、配列番号35を含む。
【0134】
上述したように、本明細書で特異的なアミノ酸残基を参照している場合、番号付与は、配列番号34又は配列番号35に示される参照配列の、配列の変異体のアラインメントから得られたものである。
【0135】
非常に好ましくは、本発明の方法及び使用において使われる脂質アシルトランスフェラーゼは、配列番号16(図10)に示されるアミノ酸配列と、又は75%若しくはそれ以上、好ましくは85%若しくはそれ以上、より好ましくは90%若しくはそれ以上、さらにより好ましくは95%若しくはそれ以上、さらにより好ましくは98%若しくはそれ以上、さらにより好ましくは99%若しくはそれ以上、配列番号16との同一性を有するアミノ酸配列を含む脂質アシルトランスフェラーゼである。この酵素は、酵素の変異体と見なされる。
【0136】
誤解を避けるため、特異的なアミノ酸が特異的部位、例えばL118である旨教示があるとき、これは、特に断りが無い場合は、配列番号34の残基番号118における特異的なアミノ酸に対応するものである。しかしながら、異なる親酵素における118位におけるアミノ酸残基は、ロイシンとは異なる。
【0137】
それゆえ、アミノ酸を118位の残基において置換することが教示されているとき、参照ではL118を作るようになっているが,配列番号34で示されるアミノ酸配列を有する酵素でない親配列のアミノ酸を置換するとき、新しい(置換する)アミノ酸は、配列番号34で教示されているものと同じである。これは、例えば、残基118位のアミノ酸がロイシンでなく、それゆえ、配列番号34における残基118位のアミノ酸と異なる場合である。言い換えれば、例えば118位において、親酵素は、そのポジションにロイシン以外のアミノ酸を有している場合、このアミノ酸は、本発明によりロイシンと置き換えられる。
【0138】
本発明の目的のため、同一性の程度は、同じ配列因子の番号に基づいている。本発明による同一性の程度は、好適には、以下のようなポリペプチド配列比較、即ちGAPクリエーションペナルティー3.0及びGAPエクステンションペナルティー0.1を使用して、GCGプログラムパッケージ(Program Manual for the Wisconsin Package, Version 8, August 1994, Genetics Computer Group, 575 Science Drive, Madison, Wisconsin, US53711)(Needleman & Wunsch (1970),J of Molecular Biology 48,443-45)において提供されているGAPのような、当業者に知られているコンピュータープログラムの手段によって決定される。好適には、アミノ酸配列に関しての同一性の程度は、少なくとも20以上の隣接するアミノ酸、好ましくは少なくとも30以上の隣接するアミノ酸、好ましくは少なくとも40以上の隣接するアミノ酸、好ましくは少なくとも50以上の隣接するアミノ酸、好ましくは少なくとも60以上の隣接するアミノ酸によって決定される。
【0139】
好適には、本発明による脂質アシルトランスフェラーゼ酵素は、以下の、アエロモナス、ストレプトマイセス、サッカロミセス、ラクトコッカス、マイコバクテリウム、ストレプトコッカス、ラクトバチルス、デサルフィトバクテリウム、バチルス、カンピロバクター、ビブリオナシエ、キシレラ、スルフォロブス、アスペルギルス、シゾサッカロミセス、リステリア、ナイセリア、メソルヒゾビウム、ラルストニア、ザントモナス、カンジダ、サーモビフィダ、及びコリネバクテリウム由来の一又は二以上の属の生物から得ることができる、又は得られたものである。
【0140】
好適には、本発明による脂質アシルトランスフェラーゼ酵素は、以下の、アエロモナス・ハイドロフィラ、アエロモナス・サルモニシダ、ストレプトマイセス・コレリコロル、ストレプトマイセス・リモスス、マイコバクテリウム、ストレプトコッカス・ピオゲネス、ラクトコッカス・ラクティス、ストレプトコッカス・ピオゲネス、ストレプトコッカス・サーモフィルス、ストレプトマイセス・サーモサッカリ、ストレプトマイセス・アベルミチリス、ラクトバチルス・ヘルべティカス、デサルフィトバクテリウム・デハロゲナンス、バチルス種、カンピロバクター・ジェジュニ、ビブリオナシエ、キシレラ・ファスティディオサ、スルフォロブス・ソルファタリクス、サッカロミセス・セルビシエ、アスペルギルス・テレウス、シゾサッカロミセス・ポンベ、リステリア・イノキュア、リステリア・モノサイトゲネス、ナイセリア・メニンギチジス、メソルヒゾビウム・ロティ、ラルストニア・ソラナセアラム、ザントモナス・カンペストリス、ザントモナス・アクソノポディス、カンジダ・パラプシロシス、サーモビフィダ・フスカ、及びコリネバクテリウム・エフィシェンスの、一又は二以上の生物から得ることができる、好ましくは得られたものである。
【0141】
一態様では、好ましくは本発明による脂質アシルトランスフェラーゼは、好ましくは一又は二以上の、アエロモナス・ハイドロフィラ、又はアエロモナス・サルモニシダから得ることができる、好ましくは得られたものである。
【0142】
一実施形態では、好適には、ステノール及び/又はスタノールは、一又は二以上の以下の構造的特徴、
i) 3−ベータヒドロキシ基、又は3−アルファヒドロキシ基、及び/又は
ii)シスポジションにおけるA:Bリング、又はトランスポジションにおけるA:Bリング、又はC5−C6が不飽和であること、
を有する。
【0143】
好適なステロールアシル受容体は、コレステロール、フィトステロール、例えば、アルファ−シトステロール、ベータ−シトステロール、スティグマステロール、エルゴステロール、カンペステロール、5,6−デヒドロステロール、ブラシカステロール、アルファ−スピナステロール、ベータ−スピナステロール、ガンマ−スピナステロール、デルタ−スピナステロール、フコステロール、ディモステロール、アスコステロール、セレビステロール、エピステロール、アナステロール、ハイポステロール、コンドリラステロール、デズモステロール、チャリノステロール、ポリフェラステロール、クリオナステロール、ステロールグリコシド、トコフェロール、トコトリエール、並びに他の天然の、又は合成の異性体及び派生物を含む。
【0144】
有利な一実施形態では、ステロールアシル受容体はトコフェロールである。好適には、トコフェロールは、一又は二以上のガンマ、デルタ、ベータ、又は、例えばd−アルファトコフェロール酸コハク酸を含むd−アルファトコフェロールである。一実施形態では、好ましくは、ステロールアシル受容体は、アルファトコフェロールである。
【0145】
一実施形態では、好ましくは、本発明による方法は、油にトコフェロールを、好ましくはアルファトコフェロールを添加するステップを含む。
【0146】
一実施形態では、好ましくは、ステロールアシル受容体は、コレステロールである。
【0147】
一態様では、好ましくは、ステロール及び/又はスタノールのアシル受容体は、コレステロール以外のステロール及び/又はスタノールである。
【0148】
本発明の一態様では、好適には二以上のステロール及び/又はスタノールは、アシル受容体として役割を果たし、好適には三以上のステロール及び/又はスタノールは、アシル受容体として役割を果たす。言い換えれば、本発明の一態様では、好適には、二以上のステロールエステル及び/又はスタノールエステルが作り出される。好適には、コレステロールがアシル受容体であるとき、一若しくは二以上の他のステロール、又は一若しくは二以上のスタノールもまた、アシル受容体として役割を果たす。それゆえ、一態様では、本発明は、トコフェロールエステルと、少なくとも1つの他のステロール又はスタノールエステルの組合せとの両方の、インサイチュの形成の方法を提供する。言い換えれば、本発明のいくつかの態様における脂質アシルトランスフェラーゼは、アシル基を脂質からトコフェロールと、少なくとも1つの他の別のステロール及び/又は少なくとも一のスタノールとの両方に転移する。
【0149】
いくつかの態様では、本発明により調整される油は、循環器系疾患のリスクを軽減するために使用される。
【0150】
一態様では、本発明により調整される油は、血清中のコレステロールを減らし、及び/又は低比重リポタンパク質を減らす。血清コレステロールと低比重リポタンパク質は例えばアテローム性動脈硬化症、及び/又は心疾患などのある種の人間の病気に関連しているものである。それゆえ、本発明により調整される油は、これらの病気のリスクを軽減するために使用されることが予想される。
【0151】
別の態様では、本発明は、循環器系疾患の治療及び/又は予防において使用される本発明による食用油の使用を提供する。
【0152】
それゆえ、本発明の一態様では、本発明は、アテローム性動脈硬化症及び/又は心疾患の治療及び/又は予防において使用される本発明による食用油の使用を提供する。
【0153】
さらに別の態様では、本発明は、本発明による食用油を含む薬剤を提供する。
【0154】
さらに別の態様では、本発明は、本発明による食用油の効果的な量を患者に投与することを含む方法であって、人間又は動物の患者における病気を治療及び/又は予防する方法を提供する。
【0155】
好適には、ステロールアシル受容体は、自然界で食用又は植物油に見出されるものである。
【0156】
或いは、又は加えて、ステロールアシル受容体は、食用又は植物油に加えられるものである。
【0157】
ステロール及び/又はスタノールが食用油に加えられる場合、ステロール及び/又はスタノールは、本発明による脂質アシルトランスフェラーゼを添加する前に、同時に、及び/又は後に加えられる。好適には、本発明は、本発明による酵素を添加する前に、又は同時に食用又は植物油に外生のステロール/スタノール、特にフィトステロール/フィトスタノールを加えることを含む。
【0158】
いくつかの態様では、食用油に存在するステロールの一又は二以上は、本発明により脂質アシルトランスフェラーゼが添加される前に、又は同時に一又は二以上のスタノールに変換される。ステロールをスタノールに変換する適切な方法が使用される。例えば、変換は、例えば化学的な水素化により行われる。変換は、本発明による脂質アシルトランスフェラーゼの添加の前に、又は本発明による脂質アシルトランスフェラーゼの添加と同時に行われる。好適には、ステロールをスタノールに変換する酵素は、WO00/061771に教示されている。
【0159】
好適には、本発明は、食用油の中でインサイチュにフィトスタノールエステルを作り出すために使用される。フィトスタノールエステルは、脂質の膜を通じることで増加した溶解性、生物学的利用能、及び増進された健康効果を有する(WO92/99640を参照せよ)。
【0160】
本発明の有利な点は、ステロール及び/又はスタノールエステルが、脱ガムの間に食用油で形成されることである。さらに有利な点は、酵素が食用油の遊離脂肪酸量が増加せず、又は実質的な増加をせずに脱ガムがなされることである。遊離脂肪酸の形成は、食用油においては有害である。好ましくは、本発明による方法は、遊離脂肪酸の蓄積が減少及び/又は除去されるように、食用油の脱ガムを行うことができる。理論にしばられることなく、本発明による、脂肪から除去された脂肪酸は、脂質アシルトランスフェラーゼにより、例えば、ステロール及び/又はスタノールのようなアシル受容体に転移される。それゆえ、食材における遊離脂肪酸の全体的なレベルは、有意な程度にまでも増加しない、又は増加するということはない。このことは、レシターゼウルトラ(登録商標)(Lecitase UltraTM)のようなホスホリパーゼが、食用油の酵素的脱ガムにおいて使用される場合の状況とは、鋭く対比される。特に、そのようなホスホリパーゼの使用は、食用油において有害となりうる遊離脂肪酸の量の増加をもたらす。レシターゼウルトラのようなホスホリパーゼA酵素が、本発明による脂質アシルトランスフェラーゼの代わりに使われたとしたならば蓄積するであろう遊離脂肪酸の量と比較した場合、本発明では、遊離脂肪酸の蓄積は減少し、且つ/又は除かれる。
【0161】
本発明による脂質アシルトランスフェラーゼは、植物又は食用油の酵素的脱ガムにおける使用に適切である。植物又は食用油の処理において、リン脂質の大部分を加水分解するために、食用又は植物油は本発明による脂質アシルトランスフェラーゼで処理される。好ましくは、脂質アシル基は、極性脂質からアシル受容体に転移される。脱ガム工程は典型的に、リン脂質の大部分(即ち50%以上)の加水分解のため食用油における、極性脂質の、特にリン脂質の含有量の減少を招く。典型的には、加水分解されたリン脂質を含む水相は、油から分離する。好適には、食用又は植物油は、始めに(本発明による酵素による前処理)、50〜250ppmのリン含有量を有する。
【0162】
当業者であれば承知しているように、本明細書で使用される「脱ガム」という用語は、ホスファチド(レシチン、リン脂質及び閉塞油(occluded oil)など)を、水和できる(hydratable)ホスファチドに変換することによる油の精製を意味する。脱ガムされた油は、より流動性があり、それゆえ脱ガムされていない油よりもよりよい取扱適性がある。
【0163】
本明細書における「トランスフェラーゼ」という用語は、「脂質アシルトランスフェラーゼ」という用語と置換え可能である。
【0164】
好適には、本明細書で定義される脂質アシルトランスフェラーゼは、一又は二以上の以下の、インターエステル交換(interesterification)、トランスエステル交換(transesterification)、アルコーリシス(alcoholysis)、加水分解といった反応を触媒する。
【0165】
「インターエステル交換」という用語は、脂質供与体が遊離アシル基でない場合に、脂質供与体と脂質受容体との間の、アシル基の酵素的に触媒された転移に対応する。
【0166】
本明細書で使われる「トランスエステル交換」という用語は、脂質供与体(遊離脂肪酸以外)からアシル受容体(水以外)への、酵素的に触媒されたアシル基の転移をいう。
【0167】
本明細書で使われるように、「アルコーリシス」という用語は、生成物の1つがアルコールのHと結合し、他の生成物がアルコールのORと結合するような、アルコールROHとの反応による酸誘導体の共有結合の酵素的開裂に対応する。
【0168】
本明細書で使われるように、「アルコール」という用語は、ヒドロキシ基を含むアルキル化合物に対応する。
【0169】
本明細書で使われるように、「加水分解」という用語は、アシル基の、脂質から水分子のOH基への酵素的触媒転移に対応する。
【0170】
本明細書で使われるように、「遊離脂肪酸量が増加せず、又は実質的な増加をせずに」という用語は、好ましくは、本発明による脂質アシルトランスフェラーゼが100%のトランスフェラーゼ活性を有している(即ち、アシル基の100%をアシル供与体からアシル受容体に、加水分解活性なしに転移する)ことを意味するが、しかしながら、酵素は、脂質アシル供与体に存在するアシル基の100%未満をアシル受容体に転移する。どのケースにおいても、好ましくは、アシルトランスフェラーゼ活性は、少なくとも5%、より好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、及びより好ましくは少なくとも98%の総酵素活性を占める。トランスフェラーゼ活性の%(即ち、総酵素活性のパーセンテージとしてのトランスフェラーゼ活性)は、以下のプロトコルにより決定される。
【0171】
本発明の方法において使われる適当な酵素は、好ましくは、後述のとおりの標準的なホスホリパーゼ活性アッセイにおけるホスホリパーゼ活性を有する。
【0172】
ホスホリパーゼ活性の決定(ホスホリパーゼ活性アッセイ(PLU−7)
基質
0.6%L−αホスファチジルコリン95% Plant(Avanti社製#441601)、0.4% Triton-X 100(Sigma社製X-100)及び5mMCaCl2 を0.05M HEPES緩衝剤pH7中に溶解した。
【0173】
アッセイ手順
400μlの基質が、1.5mlエッペンドルフチューブに加えられ、エッペンドルフサーモミキサー内に37℃にて5分間置かれた。T=0minに、50μlの酵素溶液が加えられた。酵素の代わりに水をいれたブランクも分析された。試料は、エッペンドルフサーモミキサー内において、37℃にて10分間10x100rpmで混合された。t=10minに、エッペンドルフチューブは、反応を停止するため、別のサーモミキサー内に99℃にて10分間置かれた。
【0174】
試料内の遊離脂肪酸は、Wako GmbH社製 NEFA C kitを用いて分析された。
【0175】
酵素活性PLU−7 pH7が、アッセイ条件下において1分ごとに形成されたマイクロモル脂肪酸として計算された。
【0176】
より好ましくは、脂質アシルトランスフェラーゼは、下記のプロトコルに定義されたトランスフェラーゼ活性をも有するであろう。
【0177】
アシルトランスフェラーゼ活性%の決定のためのプロトコル
本発明による脂質アシルトランスフェラーゼに加えられている食用油は、CHCl3:CH3OH2:1との以下の酵素反応で抽出され、脂質物質を含む有機相が単離され、下記に詳細が記されている手順により、GLC及びHPLCにより分析される。GLC及びHPLC分析から、遊離脂肪酸と一又は二以上のステロール/スタノールエステルとの量が決定される。本発明による酵素が添加されていないコントロールの食用油が、同様に分析される。
【0178】
計算
GLC及びHPLCの結果から、遊離脂肪酸とステロール/スタノールエステルの増加が計算される
Δ%脂肪酸 =% 脂肪酸(酵素)− % 脂肪酸(コントロール)
Mv脂肪酸 =脂肪酸の平均分子量
A=Δ%ステロールエステル/Mvステロールエステル(Δ%ステロールエステル=%ステロール/スタノールエステル(酵素)− %ステロール/スタノールエステル(コントロール)及びMvステロールエステル=ステロール/スタノールエステルの平均分子量である場合)。
【0179】
トランスフェラーゼ活性は、総酵素活性のパーセンテージとして計算される。
【0180】
%トランスフェラーゼ活性 = A x 100
A + Δ%脂肪酸(Mv脂肪酸)
遊離脂肪酸が食用油において増加しているとしても、それらは、好ましくは、実質的に、即ち有意な程度には増加していない。これにより我々において、遊離脂肪酸の増加は、食用油の質に不利に作用することはないことを意味する。
【0181】
アシルトランスフェラーゼ活性アッセイのために使用される食用油は、好ましくは、実施例3の方法を使用して、植物ステロール(1%)及びホスファチジルコリン(2%)の油が補完された大豆油である。アッセイのために使用された酵素濃度は、好ましくは0.2PLU−7/g油であり、より好ましくは0.08PLU−7/g油である。油に存在するリン脂質のレベル及び/又はステロールの変換の%は、好ましくは4時間後、より好ましくは20時間後に決定される。
【0182】
本発明のいくつかの態様では、本明細書で使用される「遊離脂肪酸量が実質的な増加をせずに」という用語は、本発明による脂質アシルトランスフェラーゼにより処理される食用油内の遊離脂肪酸の量が、従来のホスホリパーゼ酵素、例えばレシターゼウルトラ(Novoenzymes A/S社製、デンマーク)などが使われたときに形成された遊離脂肪酸の量と比較されるときのように、本発明による脂質アシルトランスフェラーゼ以外の酵素が使われた場合には、食用油内で形成される遊離脂肪酸の量よりも少ないことを意味する。
【0183】
油(上記の)の%トランスフェラーゼ活性を評価することに加えて、又はその代わりに、本発明の方法において使用するために最も好ましい脂質アシルトランスフェラーゼ酵素を同定するために、「本発明において使われる脂質アシルトランスフェラーゼを同定するためのプロトコル」と題されている以下のアッセイが用いられる。
【0184】
脂質アシルトランスフェラーゼを同定するためのプロトコル
本発明による脂質アシルトランスフェラーゼは、以下の結果をもたらす。
【0185】
i) 実施例3で教示されている方法を使用して、植物ステロール(1%)及びホスファチジルコリン(2%)油で補完された大豆油に存在するリン脂質の除去
及び/又は
ii)実施例3で教示されている方法を使用して、加えられたステロールの、ステロールエステルへの変換(変換%)。例5に教示されているステロールとステロールエステルのレベルを決定するGLCの方法が使用される。
【0186】
アッセイのために使用される酵素量は、0.2PLU−7/g油、好ましくは、0.08PLU−7/g油である。油に存在するリン脂質のレベル及び/又はステロールの変換(変換%)は、好ましくは4時間後、より好ましくは20時間後に決定される。
【0187】
脂質アシルトランスフェラーゼを同定するためのプロトコルにおいて、酵素処理後5%の水が好ましくは加えられ完全に油と混合される。油は、その後遠心分離(”Enzyme-catalyzed degumming of vegetable oils”by Buchold, H.and Laurgi A.-G., Fett Wissenschaft Technologie (1993),95(8),300-4,ISSN:0931-5985参照せよ)を使用して油及び水の相に分離され、油相は、その後以下のプロトコル(リン含有量のアッセイ)を使用して、リン含有量について分析される。
【0188】
リン含有量のアッセイ
脱ガム後の油に存在するリン脂質のレベルは、AOAC公定法(official method)999.10(>鉛、カドミウム、亜鉛、銅、又は鉄のマイクロ波分解後の食品原子吸光光度計における、ファーストアクション1999NMKL−AOAC方法)において教示されている試料調製による油の試料の最初の調製により決定される。油におけるリン脂質の量は、AOAC公定法985.01〔>植物とペットフードにおける金属と他の成分、誘導結合プラズマスペクトロスコーピック分析法(Inductively Coupled Plasma Spectroscopic Method)ファーストアクション1985ファイナルアクション1988〕による脱ガム後の油の試料におけるリン含有量を分析することにより測定される。
【0189】
脱ガム後の油に存在するリン含有量は、好ましくは50ppm未満、好ましくは40ppm未満、好ましくは30ppm未満、好ましくは20ppm未満、好ましくは10ppm未満、好ましくは5ppm未満である。脱ガム後の油は、実施例に説明されているように、実質的にリン脂質を含んでいない、即ち1ppm未満のリン脂質を含む。
【0190】
油に存在するステロールの変換%は、少なくとも1%、好ましくは少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、好ましくは少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%である。
【0191】
一実施形態では、油に存在するステロールの変換%は、少なくとも5%、好ましくは少なくとも20%である。
【0192】
低水分脱ガム
驚くべきことに、脂質アシルトランスフェラーゼが食用油の酵素的脱ガムの処理において使用される場合、酵素的脱ガムは、とても低い水分環境において行うことができることが見出された。幾分かの水分は、それでもやはり必要であるが、例えば、油に酵素を添加するときに、酵素は、1%未満、好ましくは0.5%、より好ましくは0.2%未満、より好ましくは1%未満といった少量の水に加えられる。
【0193】
好ましくは、本発明による処理及び使用における食用油の水分量は、1%未満、好ましくは0.5%未満、より好ましくは0.2%未満、より好ましくは0.1%未満である。
【0194】
それゆえ、本発明の有利な点の一つは、少量の水分(即ち、<5%、好ましくは<1%、好ましくは<0.5%、好ましくは<0.2%)が、酵素的脱ガムの間に使用されたとき、ガム(即ちリンを含む部分)は、例えば、固体沈殿物の形で油から分離する。固体沈殿物は、単に油を静かに移す、又は例えば濾過によりガムを除去するなどの方法により、脱ガムされた油から容易に除去されうる。
【0195】
このことは、油に相当量の水が加えられる従来の酵素的脱ガム処理とはっきりと対照をなすものである。これは、従来の酵素的脱ガム処理においては、脱ガム後、高い水分量のためリンを含む部分(たとえばリゾ脂質を含む部分)を含む水相を得ることになるからである。この水相は、除去されなければならないものであり、例えば、遠心分離により除去されうるものである。しかしながら、水相の除去は、本発明の処理に使用する場合に得られる固体沈殿物の除去よりも、かなり困難である。
【0196】
それゆえ、本発明における酵素的脱ガム処理は、「低水分脱ガム処理」として見なすことができる。
【0197】
本発明の一実施形態では、ガムは、油の遠心分離により、油を水分5%に調整することにより除去される(”Enzyme-catalyzed degumming of vegetable oils”by Buchold, H. and Laurgi A.-G.,Fett Wissenschaft Technologie (1993),95(8), 300-4参照)。
【0198】
それゆえ、本発明は、膵臓由来のホスホリパーゼ及びレシターゼウルトラのような従来のホスホリパーゼを使用するときに必要とされる、脱ガム前の前洗浄ステップ及び/又は脱ガムの間に加えられる水を除去するステップのいずれをも必要とせずに、粗食用油(例えば粗大豆油)のような食用油の脱ガムのための処理を提供する。
【0199】
好ましくは、食用油は、4.5%未満、好ましくは4%未満、3%未満、2%未満、1%未満、0.5%未満の水分量を有する。
【0200】
好適には、食用油は、少なくとも0.3%、0.4%又は0.5%というような、少なくとも0.1%の水分を含む。
【0201】
本発明において使われる好ましい脂質アシルトランスフェラーゼは、油環境においてリン脂質に対し、高いリン脂質加水分解活性若しくは高いリン脂質のトランスフェラーゼ活性のような高い活性を有するものとして同定され、最も好ましくは、酵素的脱ガムにおいて使われる脂質アシルトランスフェラーゼは、リン脂質からステロールへの高いトランスフェラーゼ活性を有する。
【0202】
上記に詳述されているように、本発明の方法において使われる適当な他のアシルトランスフェラーゼは、pFam00657共通配列(配列番号1)のアラインメント及び/又は例えば配列番号28のGDSxアシルトランスフェラーゼのアラインメントのいずれかにより、GDSx、GANDY及びHPTブロックの存在を同定することにより同定される。脱ガムの適合性を調査するため、即ち総酵素活性の少なくとも5%、より好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも98%のトランスフェラーゼ活性を有する酵素を同定するためには、そのようなアシルトランスフェラーゼは、上記に詳述されている「アシルトランスフェラーゼ活性%の決定のためのプロトコル」を使用して試験される。
【0203】
本発明は、食用植物油及び/若しくは食用油の脱ガムにおける本発明による脂質アシルトランスフェラーゼの使用、並びに食用若しくは植物油の脱ガムのための方法に関する。
【0204】
一態様では、本発明は、水和できないリン(NHP)含有量を、比較的高いNHP量を含む油において、除去するために脂質アシルトランスフェラーゼを使用を含む方法を提供する。
【0205】
本明細書で使用される「食用油(edible oil)」という用語は、植物油を含む。
【0206】
好ましくは、本発明による処理の前の食用油は、50〜250ppm、好ましくは少なくとも60ppm、より好ましくは少なくとも100ppm、及びさらにより好ましくは少なくとも200ppm、さらにより好ましくは250ppm以上の水和できないリン含有量を含む。
【0207】
より好ましくは、本発明による処理の前の食用油は、60〜500ppmの範囲で、より好ましくは100〜500ppmの範囲で、及びさらにより好ましくは200〜500ppmの範囲で、水和できないリン含有量を含む。
【0208】
本明細書に対応する食用油は、比較的多量の水和できないリンを有するいずれかの油であり、これらは、水により脱ガムされた油、又はより好ましくは粗油若しくは準粗油である。
【0209】
一態様では、粗食用油は、本発明の方法を行う前に、350ppm以上、より好ましくは400ppm以上、さらにより好ましくは500ppm以上、及び最も好ましくは600ppm以上のリン含有量を有する。
【0210】
本発明による方法に含まれる油は、これらに限定されるわけではないが、一又は二以上の大豆油、キャノーラ油、コーン油、綿実油、パーム油、ココナッツ油、ピーナッツ油、オリーブ油、ベニハナ油、パーム核油、菜種油、及びひまわり油である。
【0211】
好ましくは、油は、一又は二以上の大豆油、ひまわり油及び菜種油(キャノーラ油と呼ばれることもある)である。
【0212】
より好ましくは、油は、一又は二以上の大豆油、ひまわり油又は菜種油である。
【0213】
より好ましくは、油は、一又は二以上の大豆油である。
【0214】
これらの油は、粗油、準粗油、又は水により脱ガムされた油の形である。
【0215】
本明細書に使われる「粗油(crude oil)」(脱ガムされていない油として本明細書で言及されている)は、圧搾された、若しくは抽出された油、又は例えば菜種、大豆、ひまわりからの油の混合物である。粗油におけるホスファチド含有量は、200〜1200ppmの範囲の、より好ましくは250〜1200ppmの範囲のリン含有量に相当する、0.5〜3%w/wの範囲で変化する。ホスファチドは別として、粗油は、低濃度の炭水化物、糖類(sugar compounds)、及び金属/ホスファチド酸、Ca、Mg若しくはFeの錯体を含む。
【0216】
本明細書で使用されるように、「準粗油」は、粗油ではないが、ホスファチド含有量が250ppm以上、より好ましくは500ppm以上であるいずれかの油に対応する。そのような油は、例えば、粗油を下記に述べられている水による脱ガム処理に類似する処理を行うことで得ることができる。
【0217】
本明細書で使用されるように、「水−脱ガム油」は、1〜3%w/wの熱水を温かい(60〜90℃)の粗油と混合することを含む水−脱ガム処理により、典型的に得られる。通常の処理時間は、30〜60分である。水−脱ガムステップは、水和したときに油の中で不溶性になるホスファチドと粘着性のガムを除去する。水和したホスファチドとガムは、定着(settling)、濾過又は遠心分離により油から分離させることができるが、遠心分離がより普及した方法である。前記の水−脱ガム処理における本質的な目的は、水和したホスファチドを油から分離することである。上述の、油に熱水を混合することは、当業界における標準的な水−脱ガム手順において水溶液を油に混合することとして広く理解されている。
【0218】
長所として、本発明の方法及び使用は、低い水分(<5%、好ましくは2%未満、より好ましくは1%未満)環境における食用油の脱ガムを可能にする。それゆえ、脱ガムは、従来の酵素を使うときよりも少ない水を加えることでも行うことができる。本発明の更なる有利な点は、ステロールエステル(特にトコフェロールエステル)の形成である。さらに、本発明の長所として、リン脂質の除去(好ましくは完全な除去)がある。本発明の更なる長所は、フィトステロール、特にトコフェロールを除去せずにリン脂質を除去(好ましくは完全な除去)することである。フィトステロールのエステル化のため、油からのトコフェロールなどのフィトステロールの有意な除去は無く、その代わりに単にエステル化されることが好まれる。しかしながら、一実施例において、トコフェロールなどのフィトステロールの量は、減少する。そのような実施例においては、トコフェロールなどのフィトステロールの絶対的レベルは、好ましくは10%を超えない、或いは25%を超えない、或いは50%を超えない、或いは75%を超えずに減少する。本発明の更なる長所は、トリグリセリドの加水分解の無いリン脂質の除去(好ましくは完全な除去)である。
【0219】
参照を容易にするために、本発明のこれらの、又は追加的な態様は、適切な項目の見出しで論じられている。しかしながら、それぞれの項目における教示は、必ずしもそれぞれの個々の項目に限られるものではない。
【0220】
セットの定義
アミノ酸セット1
アミノ酸セット1
Gly8、Asp9、Ser10、Leu11、Ser12、Tyr15、Gly44、Asp45、Thr46、Glu69、Leu70、Gly71、Gly72、Asn73、Asp74、Gly75、Leu76、Gln106、Ile107、Arg108、Leu109、Pro110、Tyr113、Phe121、Phe139、Phe140、Met141、Tyr145、Met151、Asp154、His157、Gly155、Ile156、Pro158
GDSxと触媒残基のように高度に保存されたモチーフは、セット1(残基は下線が引かれている)から除外された。誤解を避けるため、セット1は、1IVNモデルの活性部位におけるグリセロールの中心炭素原子から10Å以内にあるアミノ酸残基を定義するものとする。
【0221】
アミノ酸セット2
アミノ酸セット2(アミノ酸の番号は、P10480成熟配列におけるアミノ酸に対応することに留意すること)
Leu17、Lys22、Met23、Gly40、Asn80、Pro81、Lys82、Asn87、Asn88、Trp111、Val112、Ala114、Tyr117、Leu118、Pro156、Gly159、Gln160、Asn161、Pro162、Ser163、Ala164、Arg165、Ser166、Gln167、Lys168、Val169、Val170、Glu171、Ala172、Tyr179、His180、Asn181、Met209、Leu210、Arg211、Asn215、Lys284、Met285、Gln289、及びVal290。
【0222】
【表2】
【0223】
アミノ酸セット3
アミノ酸セット3は、セット2と同一であるが、アエロモナス・サルモニシダ(配列番号28)コード配列に対応しており、即ちセット3においては、シグナル配列(配列番号28)を含むタンパク質と比較した、成熟タンパク質(配列番号2)におけるアミノ酸番号付与との間の違いを反映するので、アミノ酸残基番号が18個より多いものとなっている。
【0224】
アエロモナス・サルモニシダGDSX(配列番号28)の成熟タンパク質、及びアエロモナス・ハイドロフィラGDSX(配列番号26)では、5つのアミノ酸が異なる。それらは、Thr3Ser、Gln182Lys、Glu309Ala、Ser310Asn、Gly318―、であり、サルモニシダ残基は最初に記載され、ハイドロフィラ残基は、最後に記載されている(図59)。ハイドロフィラタンパク質は、317アミノ酸長のみであり、318位の残基を欠いている。アエロモナス・サルモニシダ GDSXは、アエロモナス・ハイドロフィラタンパク質よりも、ガラクト脂質基質のような極性脂質に対して相当高い活性を有する。部分的走査は、5つのアミノ酸位のすべてにおいて行なわれた。
【0225】
アミノ酸セット4
アミノ酸セット4は、S3、Q182、E309、S310及び―318である。
【0226】
アミノ酸セット5
F13S、D15N、S18G、S18V、Y30F、D116N、D116E、D157N、Y226F、D228N Y230F。
【0227】
アミノ酸セット6
アミノ酸セット6は、Ser3、Leu17、Lys22、Met23、Gly40、Asn80、Pro81、Lys82、Asn87、Asn88、Trp111、Val112、Ala114、Tyr117、Leu118、Pro156、Gly159、Gln160、Asn161、Pro162、Ser163、Ala164、Arg165、Ser166、Gln167、Lys168、Val169、Val170、Glu171、Ala172、Tyr179、His180、Asn181、Gln182、Met209、Leu210、Arg211、Asn215、Lys284、Met285、Gln289、Val290、Glu309、Ser310、―318である。
【0228】
セット6におけるアミノ酸の番号付与は、P10480(配列番号2)におけるアミノ酸残基に対応し、他の配列のバックボーンにおいて相当するアミノ酸は、P10480及び/又は1IVNに対する相同性アラインメント及び/又は構造アラインメントにより決定される。
【0229】
アミノ酸セット7
アミノ酸セット7は、Ser3、Leu17、Lys22、Met23、Gly40、Asn80、Pro81、Lys82、Asn87、Asn88、Trp111、Val112、Ala114、Tyr117、Leu118、Pro156、Gly159、Gln160、Asn161、Pro162、Ser163、Ala164、Arg165、Ser166、Gln167、Lys168、Val169、Val170、Glu171、Ala172、Tyr179、His180、Asn181、Gln182、Met209、Leu210、Arg211、Asn215、Lys284、Met285、Gln289、Val290、Glu309、Ser310、―318、Y30X(Xは、A、C、D、E、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、又はWから選択される)、Y226X(Xは、A、C、D、E、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、又はWから選択される)、Y230X(Xは、A、C、D、E、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、又はWから選択される)、S18X(Xは、A、C、D、E、F、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、T、W、又はYから選択される)、D157X(Xは、A、C、E、F、G、H、I、K、L、M、P、Q、R、S、T、V、W、又はYから選択される)である。
【0230】
セット7におけるアミノ酸の番号付与は、P10480(配列番号2)におけるアミノ酸残基に対応し、他の配列のバックボーンにおいて対応するアミノ酸は、P10480、及び/又は1IVNの相同性アラインメント及び/又は構造アラインメントにより決定される。
【0231】
単離された
ある態様において、好ましくは、本発明における使用のためのポリペプチド又はタンパク質は、単離された形態である。「単離された」という用語は、配列が、自然界においてその配列に自然に会合する他の成分を少なくとも実質的に有さず、自然界で存在する状態にあることを意味する。
【0232】
精製された
ある態様において、好ましくは本発明における使用のためのポリペプチド又はタンパク質は、精製された形態である。「精製された」という用語は、配列が、比較的純粋状態にあること、例えば少なくとも約51%純粋、又は少なくとも約75%純粋、又は少なくとも約80%純粋、又は少なくとも約90%純粋、又は少なくとも約95%純粋、又は少なくとも約98%純粋であるということを意味する。
【0233】
本発明によるポリペプチドをコード化しているヌクレオチド配列のクローニング
本明細書で定義される特異性を有するポリペプチド、又は改変に適しているポリペプチドのいずれかは、前記ポリペプチドを作り出す任意の細胞又は生物から単離される。ヌクレオチド配列の単離については当業界において様々な方法がよく知られている。
【0234】
例えば、ゲノムDNA及び/又はcDNAライブラリーは、ポリペプチドを作り出す生物由来の染色体DNA又はメッセンジャーRNAを使用して構築されることができる。ポリペプチドのアミノ酸配列が知られている場合、オリゴヌクレオチド標識プローブが合成され、且つ生物から作成された、ゲノムライブラリー由来のポリペプチドでコード化しているクローンを同定するために使用される。或いは、別の既知のポリペプチド遺伝子と相同の配列を含むオリゴヌクレオチド標識プローブは、ポリペプチドでコード化しているクローンを同定するために使用されうる。後者の場合、ストリンジェンシーがより低いハイブリダイゼーションと洗浄の条件が使用される。
【0235】
或いは、ポリペプチドでコード化しているクローンは、プラスミドのような発現ベクターにゲノムDNAの断片を挿入し、その結果得られたゲノムDNAライブラリーと酵素陰性のバクテリアをもって形質転換し、それから形質転換されたバクテリアをポリペプチドによって阻害された酵素を含む寒天培地に培養し、それによってポリペプチドを発現するクローンが同定されうる。
【0236】
さらに他には、ポリペプチドをコード化しているヌクレオチド配列は、確立された標準的な方法、例えばBeucage S.L. et al (1981) Tetrahedron Letters 22, p1859-1869 に記述されているphosphoroamidite法、又はMatthes et al (1984) EMBO J.3, p801-805 に記述されている方法により、合成で作成される。phosphoroamidite法においては、例えば、自動DNA合成機によってオリゴヌクレオチドが合成され、精製され、再会合され、連結され、そして適切なベクターにおいてクローン化される。
【0237】
ヌクレオチド配列は、合成、ゲノム又はcDNA由来の断片を標準的な技術により(適宜)連結することで作成された、ゲノム由来配列と合成配列との混合配列、合成配列とcDNA由来配列との混合配列、又はゲノム由来配列とcDNA由来配列との混合配列である。それぞれの連結された断片は、ヌクレオチド配列全体の様々な部分に相当する。DNA配列は、例えばUS4、683、202又は、Saiki R K et al(Science (1988) 239, pp487-491)に記述されているように、特定のプライマーを使用したポリメレラーゼ連鎖反応(PCR)によっても作成される。
【0238】
ヌクレオチド配列
本発明は、本明細書に定義されている特異性を有するポリペプチドをコード化するヌクレオチド配列をも含む。本明細書で使用される「ヌクレオチド配列」という用語は、オリゴヌクレオチド配列若しくはポリヌクレオチド配列、及び変異体、相同物、断片、それらの(それらの一部などの)派生物に対応する。ヌクレオチド配列は、ゲノム、又は合成、又は組換え由来であって、二重鎖又はセンス若しくはアンチセンス鎖のいずれかに相当する一本鎖である。
【0239】
本発明に関する「ヌクレオチド配列」という用語は、ゲノムDNA、cDNA、合成DNA、及びRNAを含む。好ましくはDNAを意味し、より好ましくは配列をコードするcDNAを意味する。
【0240】
好ましい実施例において、自然界に存在する野生型(native)ヌクレオチド配列が、やはり自然界に存在し前記野生型ヌクレオチド配列と自然に会合する配列に結合している場合、かかる野生型ヌクレオチド配列は、本明細書で定義される特異性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列自体には含まれない。参照を容易にするために、本発明者らは、この好ましい実施例を「非野生型(non-native)ヌクレオチド配列」と呼ぶ。この関連で、「野生型ヌクレオチド配列」とは、自然界に存在する配列が、その配列と自然に会合し、やはり自然界にある完全プロモーターと作動的に結合している完全ヌクレオチド配列をいう。それゆえ、本発明のポリペプチドは、それが由来する生物におけるヌクレオチド配列によって発現させることができるが、それが可能なのは、このヌクレオチド配列が、かかる生物内で自然に会合するプロモーターの制御下にない場合である。
【0241】
好ましくは、ポリペプチドは、野生型ポリペプチドではない。この関連で、「野生型ポリペプチド」という用語は、野生型ヌクレオチド配列により発現されているときの、自然環境におけるポリペプチド全体を意味する。
典型的には、本明細書で定義される特異性を有するポリペプチドをコード化するヌクレオチド配列は、組換えDNA技術(即ち組換えDNA)を使用して作成される。しかしながら、発明の別の実施例においては、全体若しくは部分において、当業界によく知られた化学的方法(Caruthers MH et al (1980) Nuc Acids Res Symp Ser 215-23、及び Horn T et al (1980) Nuc Acids Res Symp Ser 225-232 参照せよ)を使用して、ヌクレオチド配列は合成されうる。
【0242】
分子進化
酵素をコード化しているヌクレオチド配列が単離されて、又は推測上の酵素をコード化しているヌクレオチド配列が同定されると、選択されたヌクレオチド配列を改変することが望ましく、例えば本発明による酵素を作成するために、配列を変異させることが望ましい。
【0243】
変異は、合成オリゴヌクレオチドを使用して導入される。これらのオリゴヌクレオチドは、目的とする変異部位と隣接するヌクレオチド配列を含む。
【0244】
適当な方法は、Morinaga et al (Biotechnology (1984)2, p646-649) に開示されている。酵素をコード化するヌクレオチド配列に変異を導入する別の方法は、Nelson and Long (Analytical Biochemistry(1989),180,p147-151)に記述されている。
【0245】
上述のような、部位特異的突然変異誘発法の代わりに、例えばStratagene社製GeneMorph PCR mutagenesisキット、又はClontech社製 Diversify PCR random mutagenesisキットのような商業的キットを使用して、変異を無作為に導入することができる。EP0583265は、PCRを基礎とした突然変異生成を至適化する方法について言及しており、EP0866796で記述されているような変異DNA類似体の使用と組み合せることもできる。間違いの発生しやすいPCR技術は、好ましい特徴をもつ脂質アシルトランスフェラーゼの変異体の作成に適している。WO0206457は、リパーゼの分子進化について言及している。
【0246】
新規の配列を得る3番目の方法は、任意の数の制限酵素、若しくはDnaseIのような酵素のいずれかを使用して、同一でないヌクレオチド配列を断片化し、機能的なタンパク質をコードしている完全長のヌクレオチド配列を再構築することである。或いは、一又は複数野の同一でないヌクレオチド配列を使用し、完全長のヌクレオチド配列の再構築する間に変異を導入することができる。DNAシャッフリングとファミリーシャッフリング技術は、好ましい特徴をもつ脂質アシルトランスフェラーゼの変異体の作成に適している。シャッフリングを起こす適当な方法は、EP0752008、EP1138763、EP1103606で見られる。シャッフリングは、US6、180、406及びWO01/34835に記述されているようなDNAの突然変異生成の他の形態と組み合せることもできる。
【0247】
それゆえ、ヌクレオチド配列に多数の部位特異的な、又は無作為の変異を、インビボ又はインビトロのいずれかにおいて作り出し、且つコード化されたポリペプチドの改良された機能性を、様々な手段により実質的に選別することは可能である。コンピューター及びexo mediatedを組み合せた方法(WO00/58517、US6、344、328、US6、361、974参照)を使用して、例えば、分子進化は、作成された変異体が既知の酵素及びタンパク質ととても低い相同性を保持する場合でも行なわれることができる。それによって得られたそのような変異体は、既知のトランスフェラーゼ酵素の重要な構造的類似性を有するが、とても低いアミノ酸配列相同性を有する。
【0248】
非制限的な例として、加えて、ポリヌクレオチド配列の変異体又は自然変異体は、新しい変異体を作り出すための野生型又は他の変異又は自然変異体のいずれかと組み合せられることができる。そのような新しい変異体は、コード化されたポリペプチドの改良された機能性について選別されることもできる。
【0249】
上記の及び類似の分子進化技術の適用は、タンパク質構造又は機能のいずれの以前の知識なしに、好ましい特徴を有する本発明の酵素変異体の同定及び選択を許容し、予測できない、しかし有用な変異又は変異体の作成を許容するものである。酵素活性の至適化又は変更について、当業界においては分子進化の適用について多数の例があり、そのような例は、それに限定されるものではないが、一又は二以上の以下の、宿主細胞又はインビトロにおける至適化された発現若しくは活性、増加した酵素活性、変更された基質及び/若しくは生成物の特異性、増加した若しくは減少した酵素的又は構造的安定性、例えば温度、pH,及び/若しくは基質といった好ましい環境状況における変更された酵素活性/特異性を含む。
【0250】
当業者には明らかであろうが、分子進化手段を使用することで、酵素は、酵素の機能性を改良するために変更される。
【0251】
好適には、本発明において使用される脂質アシルトランスフェラーゼは変異体であり、即ち親酵素と比較したときに、少なくとも一のアミノ酸の置換、欠失、付加を含む。酵素の変異体は、少なくとも1%、2%、3%、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、97%、99%の親酵素との相同性を保持する。好適な親酵素は、エステラーゼ若しくはリパーセ活性のあるいずれかの酵素を含む。好ましくは、親酵素はpfam00657共通配列とアラインする。
【0252】
好ましい実施例では、脂質アシルトランスフェラーゼ酵素の変異体は、GDSx、GANDY,及びHPTブロックに見出される、少なくとも一又は二以上のpfam00657共通配列アミノ酸残基を保持し、又は組み入れている。
【0253】
水性環境において脂質アシルトランスフェラーゼ活性がない又は低い、リパーゼのような酵素は、本発明の構成及び方法における使用のために適当で重要なトランスフェラーゼ活性をもつ脂質アシルトランスフェラーゼ酵素を作成するように、トランスフェラーゼ活性を導入若しくは増強するために分子進化手段を使用して、変異をさせることができる。
【0254】
好適には、発明における使用のための脂質アシルトランスフェラーゼは、親酵素と比較した場合、リン脂質の酵素活性が増強された変異体である。好ましくは、そのような変異体はまた、リゾ極性脂質に対して活性が低い、若しくは無い。リン脂質についての増強された活性は、加水分解及び/又は、トランスフェラーゼ活性、又は両者の組合せの結果である。
【0255】
本発明における使用のための脂質アシルトランスフェラーゼの変異体は、親酵素と比較して、トリグリセリド、及び/又はモノグリセリド、及び/又はジグリセリドについて低下した活性を有する。
【0256】
好適には、酵素の変異体は、トリグリセリド、及び/又はモノグリセリド、及び/又はジグリセリドについて活性を有しない。
【0257】
或いは、発明における使用のための酵素の変異体は、トリグリセリドについて増加した活性を有し、且つ/又は一又は二以上の以下の極性脂質、リン脂質、レシチン、ホスファチジルコリンについて増加した活性を有する。
【0258】
脂質アシルトランスフェラーゼの変異体は知られており、一若しくは二以上のそのような変異体は、本発明による方法及び使用において、及び/又は本発明による酵素構成において使用されるために適しているものである。一例としてのみであるが、脂質アシルトランスフェラーゼの変異体は、以下の文献、即ちHilton & Buckley J Biol. Chem. 1991 Jan 15:266(2): 997-1000; Robertson et al J. Biol. Chem. 1994 Jan 21; 269(3): 2146-50; Brumlik et al J. Bacteriol 1996 Apr; 178(7): 2060-4; Peelman et al Protein Sci. 1998 Mar; 7(3): 587-99、に記述されており、本発明により使用される。
【0259】
アミノ酸配列
本発明はまた、本発明に定義されている特異性を有するポリペプチドのアミノ酸配列を含む。
【0260】
本明細書に使用されているように、「アミノ酸配列」という用語は、「ポリペプチド」という用語、及び/又は「タンパク質」という用語と同義語である。いくつかの例においては、「アミノ酸配列」という用語は、「ペプチド」という用語と同義語である。
【0261】
アミノ酸配列は、適当な起源から作製され/単離され、又は合成により作られ、組換えDNA技術の使用により作製される。
【0262】
好適には、アミノ酸配列は、標準的な技術により本明細書に教示されているように、単離されたポリペプチドにより得られる。
【0263】
単離されたポリペプチドからアミノ酸配列を決定する適当な方法の1つは、以下の通りである。
【0264】
精製ポリペプチドを凍結乾燥し、凍結乾燥した原料100μgを、8Mの尿素と0.4Mの炭酸水素アンモニウムとの混合液50μlに溶解させる。溶解させたタンパク質を窒素で覆い、45mMのジチオスレイトール5μlを加えて、15分間50℃にて変性させ、還元させる。室温に冷却後、100mMのヨードアセトアミド5μlを加え、暗所窒素下で15分間室温にてシステイン残基を誘導体化する。
【0265】
135μlの水及び5μlの水に溶解した5μgのLys−Cエンドプロテアーゼは、上述の反応混合液に加えられ、37℃にて窒素下で24時間消化が行なわれた。
【0266】
結果として生じたペプチドは、水に溶解した0.1%TFAである溶媒Aと、アセトニトリルに溶解した0.1%のTFAである溶媒Bを使用して、VYDAC C18カラム(0.46×15cm;10μm;The Separation Group社製, California, USA)により逆相HPLCで分離される。選択されたペプチドは、N−末端の配列決定の前に同じ溶媒系を使用してDevelosil、C18カラムにより、再度クロマトグラフされる。配列決定は、パルス液体高速周期を使いApplied Biosystems 476Aシーケンサーを用いて、製造者(Applied Biosystems社 California, USA)の指示により行なわれる。
【0267】
配列の同一性、又は配列の相同性
本発明はまた、本明細書で定義される特異性を有するポリペプチドの、若しくはそのようなポリペプチドをコード化しているいずれかのヌクレオチド配列(以後相同配列と呼ぶ)の、アミノ酸配列とある程度の配列の同一性若しくは配列の相同性を有している配列の使用を含む。ここで、「相同物」という用語は、対象となるアミノ酸配列、及び対象となるヌクレオチド配列とある程度の相同性を有するエンティティ(entity)を意味する。ここで、「相同性」という用語は、同一性と同義である。
【0268】
相同性のあるアミノ酸配列及び/若しくはヌクレオチド配列は、機能活性を保持し且つ/又は酵素の活性を増強するポリペプチドを、提供及び/又はコード化するものでなければならない。
【0269】
現在の状況において、相同配列は、少なくとも75、85、若しくは90%同一、好ましくは少なくとも95若しくは98%対象となる配列と同一であるアミノ酸配列を含むように取得される。典型的には、相同物は、対象となるアミノ酸配列と同じ活性部位などを含むであろう。相同性は、類似という観点でも考慮され得るが(即ち、類似の化学的特性/機能を有するアミノ酸残基)、本発明との関連では、配列の同一性という観点で相同性は表現されるのが好ましい。
【0270】
現在の状況において、相同配列は、少なくとも75、85、若しくは90%同一、好ましくは少なくとも95、若しくは98%本発明のポリペプチドをコード化するヌクレオチド配列(対象配列)と同一であるヌクレオチド配列を含むように取得される。典型的には、相同物は、活性部位をコードする対象配列と同じ配列などを含むであろう。相同性は、類似という観点でも考慮され得るが(即ち、類似の化学的特性/機能を有するアミノ酸残基)、本発明との関連では、配列の同一性という観点で相同性は表現されるのが好ましい。
【0271】
相同性の比較は、視覚により、またより通常には、すぐに入手できる配列比較プログラムを用いて行なうことができる。これらの商業的に利用できるコンピュータープログラムは、二又は三以上の配列の間の相同性の%を計算することができる。
【0272】
相同性%は、隣接する配列について計算され、即ち1つの配列は、他の配列とアラインされ、1つの配列の中のそれぞれのアミノ酸は、他の配列において対応するアミノ酸と一残基ずつ直接比較される。これは、ギャップのない(ungapped)アラインメントと呼ばれる。典型的には、そのようなギャップのないアラインメントは、比較的残基数が少ない場合についてのみ行なわれる。
【0273】
これは、とても簡単で、一貫性のある方法であるが、例えば、同一の一対の配列において、1つの挿入又は欠失が、以下のアミノ酸残基をアラインメントから締め出すということを起こすであろう。それゆえ、潜在的には、広範囲のアラインメントが行なわれる場合は、相同性の%が大幅に低下する。結果的には、ほとんどの配列比較方法は、全体的な相同性のスコアを過度に不利にすることなく、可能な挿入と欠失を考慮に入れる至適なアラインメントを作成するように設計されている。これは、局部的な相同性を最大化するように試みる配列アラインメントにおけるギャップを挿入することによる達成される。
【0274】
しかしながら、これらのより複雑な方法は、同じ数の同一のアミノ酸について、比較する配列の間のより高い関係性を反映して、できるだけギャップ数が少ない配列アラインメントが、ギャップ数の多いものよりも高スコアを得るよう、ギャップペナルティーをアラインメントにおけるそれぞれのギャップに割り当てる。「アフィンギャップコスト」は、典型的にギャップが存在すると比較的高いコストを課し、ギャップ中において次に続く各残基については、より少ないペナルティーを課す。これは、最も一般的に使用されているギャップスコアリングシステムである。高いギャップペナルティーは、もちろんより少ないギャップについて至適化されたアラインメントを作り出すであろう。ほとんどのアラインメントプログラムでは、ギャップペナルティーを変更することができる。しかしながら、そのようなソフトウェアを配列比較のために使用するときは、デフォルト値を使用することが好ましい。例えば、GCGウィスコンシンベストフィットパッケージ(GCG Wisconsin Bestfit package)を使用するときは、アミノ酸配列のデフォルトギャップペナルティーは、ギャップにつき−12であり、各伸長につき−4である。
【0275】
最大の相同性%の計算は、それゆえ第一に、ギャップペナルティーを考慮に入れつつ至適なアラインメントの作成を要求する。そのようなアラインメントを実行するための好適なコンピュータープログラムは、GCGウィスコンシンベストフィットパッケージ(Devereux et al 1984 Nuc.Acids Research 12 p387)である。配列比較を行なうことができる他のソフトウェアの例は、これらに制限されないが、BLASTパッケージ(Ausubel et al 1999 Short Protocols in Molecular Biology, 4th Ed-Chapter 18参照)、FASTA(Altschul et al 1990 J. Mol. Biol.403-410参照)、及びGENEWORKS比較手段セットである。BLASTとFASTAは両方とも、オフラインとオンラインの検索で利用できる(Ausubel et al 1999、pages 7-58 to 7-60参照)。しかしながら、いくつかの適用においてGCGウィスコンシンベストフィットプログラムを使用することが好ましい。BLAST2配列と呼ばれる新しい手段は、タンパク質とヌクレオチド配列を比較することにも利用できる(FEMS Microbiol Lett 1999 174 (2): 247-50; FEMS Microbiol Lett 1999 177(1):187-8 及び tatiana@ncbi.nlm.nih.gov参照)。
【0276】
最終的な相同性%は、同一性に関して測定されるが、アラインメントの過程それ自体は、典型的にオールオアナッシングの一対比較に基づくものではない。それよりむしろ、スケール(scaled)類似スコアマトリックスは、一般的に、化学的類似性又は進化距離に基づくそれぞれの一対ごとに比較をスコアとするように使用されている。通常使用されているそのようなマトリックスの例は、BLASTのプログラム一式のデフォルトマトリックスである、BLOSUM62マトリックスである。GCGウィスコンシンプログラム(GCG Wisconsin programs)は、一般的に、もし提供されるならば(詳細は使用説明書参照)、公的デフォルトバリュー、又はカスタムシンボル比較表(custom symbol comparison table)のいずれかを使用する。いくつかの適用については、GCGパッケージのための公的デフォルトバリューを、又は他のソフトウェアの場合はBLOSUM62のようなデフォルトマトリックスを使用するのが好ましい。
【0277】
或いは、相同性のパーセンテージは、CLUSTAL(Higgins DB & Sharp PM (1988), Gene 73(1),237-244)に類似する演算手順に基づいて、DNASISTM(Hitachi Software社製)において、複合的なアラインメントの特徴を使用して計算される。
【0278】
一旦ソフトウェアが至適なアラインメントを作り出したならば、相同性%、好ましくは配列の同一性の%を計算することが可能である。ソフトウェアは、典型的には、配列比較の一部としてこれを行ない、数値結果を出力する。
【0279】
本発明の好ましい態様では、以下のソフトウェアと、相同性/同一性のパーセンテージを計算する設定とが使用される。アミノ酸配列について、同一性(相同性)のパーセンテージ、又は「正数(positive)」は、アラインXベクターNTI(Vector NTI Advance 9.1 Invitrogen Corporation社製,Carlsbad, California, USA.)により計算され、アミノ酸配列のそれぞれの可能な一対について、設定は、デフォルトパラメーター(Gap opening penalty-10、Gap extension penalty 0.1)である。
【0280】
配列はまた、沈黙の変更を作り出し、且つ機能的には同等の物質を生じる、アミノ酸残基の欠失、挿入又は置換を有するかもしれない。意図的なアミノ酸の置換は、対象の二次的結合活性が保持される限り、残基の極性、電荷、溶解性、疎水性、親水性、及び/又は両親媒性の性質における類似性に基づいて作られる。例えば、負に帯電したアミノ酸は、アスパラギン酸及びグルタミン酸を含み、正に帯電したアミノ酸は、リジンやアルギニンを含み、類似の疎水性価を有する荷電していない極性頭部基を伴うアミノ酸は、ロイシン、イソロイシン、バリン、グリシン、アラニン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、フェニルアラニン、及びチロシンを含む。
【0281】
保存的な置換は、例えば下記の表のとおり行なわれる。2列目の同じ区画におけるアミノ酸と好ましくは3列目の同じ行のアミノ酸は、お互いに置換できる。
【0282】
【表3】
本発明はまた、相同的な置換(置換と代替は、双方とも本明細書では、既存のアミノ酸残基と別の残基との交換を意味するために使用される)、即ち塩基性と塩基性、酸性と酸性、極性と極性等のような同種置換(like-for-like substitution)を起こしうるものを含む。非相同の、即ち一の部類の残基から他の部類へ、或いはオルニチン(以下Zと呼ぶ)、diaminobutyric acid ornithine(以下Bと呼ぶ)、norleucin ornithine(以下Oと呼ぶ)、pyriylalanine、thienylalanine、naphtyl alanine、及びphenylglycineのような不自然なアミノ酸の包含に関わるような置換もまた起こる。
【0283】
代替は、非天然アミノ酸によっても作り出されうる。
【0284】
アミノ酸配列の変異体は、グリシン又はβ―アラニン残基のようなアミノ酸スペーサーに加えて、メチル、エチル、又はプロピル基のようなアルキル基を含む配列のいずれか二つのアミノ酸残基の間に挿入される適切なスペーサー群を含む。ペプトイド形の一又は二以上のアミノ酸残基の存在に関わるさらに進んだ形の変異は、当業者にとって良く理解されるであろう。誤解を避けるため、ペプトイド形とは、α―炭素置換基が、残基のα―炭素ではなく窒素原子上のアミノ酸残基変異体を意味する。ペプトイド形のペプチドを作成する過程は、当業者には、知られており、例えば、Simon RJ et al.,PNAS(1992)89(20),9367-9371及び Horwell DC,Trends Biotechnol.(1995) 13 (4), 132-134である。
【0285】
本発明において使用されるヌクレオチド配列、又は本明細書に定義されている特異性を有するコード化されているポリペプチドは、合成の、又は改変されたヌクレオチドをそれらの中に含む。オリゴヌクレオチドについての多くの異なったタイプの改変が当業界に知られている。これらは、メチルホスホネート、及びホスホロチオエートのバックボーン並びに/或いは分子の3’及び/又は5’末端にアクリジン 若しくはポリリジン鎖の付加を含む。本発明の目的は、本明細書に記述されているヌクレオチド配列が、当業界で利用できるいずれの方法によっても改変されることが理解されるということである。そのような改変は、インビボ活性、又はヌクレオチド配列の寿命を増強するために行なわれる。
【0286】
本発明はまた、本明細書で論じられている配列と相補的なヌクレオチド配列、又は派生物、断片若しくはそれらの派生物のいずれかの使用を含む。配列がその断片と相補的であれば、配列は、他の生物等において類似のコード配列を同定するプローブとして使用することができる。
【0287】
本発明の配列と100%相同ではないが、本発明の範囲に入るポリヌクレオチドは、多くの方法で得ることができる。
【0288】
本明細書に記述されている配列の他の変異体は、例えば、個人、例えば母集団の異なる個人の範囲で作られたDNAライブラリーを精査することで得られる。加えて、他のウイルス/バクテリア、又は細胞の相同物、特に哺乳類の細胞(ラット、ネズミ、ウシ、若しくは霊長類の細胞)に見出される細胞の相同物が得られ、そのような相同物とその断片は一般に、本明細書に記載されている配列に示される配列と選択的にハイブリダイズすることができるであろう。そのような配列は、他の動物種から作成されたcDNAライブラリー又はゲノムDNAライブラリーを精査することで、並びにそのようなライブラリーを添付されている配列リストのいずれか一の配列のすべて又は一部を含むプローブを用いて、中程度から高度のストリンジェンシーを有する条件下で探索することで得ることができる。同様の考慮は、相同分子種、及び本発明のポリペプチド又はヌクレオチド配列の対立遺伝子多型を得ることについて適用する。
【0289】
変異体及び菌株/種の相同物はまた、本発明の配列内の保存されたアミノ酸配列をコード化する変異体及び相同物における配列を標的とするために設計されたプライマーを使用する縮重PCRを使用して得られる。保存された配列は、例えば、いくつかの変異体/相同物からアミノ酸配列をアラインすることで、予想されることができる。配列アラインメントは、当業界に知られたコンピューターソフトウェアを使用することで行なわれる。例えば、GCGウィスコンシンパイルアップ(GCG Wisconsin PileUp)プログラムが広く使用されている。
【0290】
縮重PCRにおいて使用されるプライマーは、一又は二以上の縮重位置を含み、且つ既知の配列に対して単一の配列プライマーで配列をクローニングするために使用されるよりも、低いストリンジェンシー条件で使用されるものである。
【0291】
或いは、そのようなポリヌクレオチドは、特徴ある配列の部位特異的突然変異誘発により得ることができる。このことは、例えば、ポリヌクレオチド配列が発現している特定の宿主細胞についてコドン選択を至適化するために、沈黙のコドン配列の変更が要求される場合に有用である。他の配列変更は、制限的なポリペプチドの認識部位を導入し、又はポリヌクレオチドにコード化されているポリペプチドの特性若しくは機能を変更するために望ましいものである。
【0292】
本発明のポリヌクレオチド(ヌクレオチド配列)は、プライマー、例えばPCRプライマーで、選択的な増幅反応のためのプライマー、プローブ例えば放射性若しくは非放射性の標識を使用した常法による明白な(retrieving)標識により標識されたもの、を作成するために使用され、或いは、ポリヌクレオチドはベクターにクローニングされる。そのようなプライマー、プローブ及び他の断片は、少なくとも15、好ましくは少なくとも20、例えば少なくとも25、30、又は40ヌクレオチド長であり、且つ本明細書で使用される本発明のポリヌクレオチドという用語の範疇にある。
【0293】
DNAポリヌクレオチドのようなポリヌクレオチド及び本発明によるプローブは、組換えにより、合成により、又は当業者に利用可能ないずれかの手段によって作成されうる。それらもまた、標準的な技術によりクローンされる。
【0294】
一般的にプライマーは、一ヌクレオチドずつ作製して所望のヌクレオチド配列を得るという段階的な作製法を含む合成手法によって作製される。これを達成するための自動化された技術を使用した技術は、既に当業界で利用可能である。
【0295】
より長いポリヌクレオチドは一般的に組換え手段を使用して、例えばPCR(ポリメレラーゼ連鎖反応)クローン技術を使用して作成される。これは、クローンすることが望まれる脂質標的配列領域に隣接する一対のプライマー(例えば約15から30ヌクレオチド)を作ること、動物や人間の細胞から得られたmRNA又はcDNAとプライマーを接触させること、目的とする領域の増幅を起こす条件下でポリメレラーゼ連鎖反応を行なうこと、目的とする増幅された断片(例えばアガロースゲル上で反応混合物を精製することにより)を単離すること、及び増幅されたDNAを回復することに関わるものである。プライマーは、増幅されたDNAが適当なクローニングベクターでクローンされることができるように、適当な制限酵素認識部位を含むように設計される。
【0296】
ハイブリダイゼーション
本発明はまた、本発明の配列と相補的な配列、又は本発明の配列若しくはそれと相補的な配列のいずれかとハイブリダイズすることができる配列を含む。
【0297】
「ハイブリダイゼーション」という用語は、本明細書で使用されているように、ポリメレラーゼ連鎖反応(PCR)技術において行なわれる増幅の過程と同様、核酸鎖が塩基対を通じて相補鎖と結合する過程を含む。
【0298】
本発明はまた、本明細書で論じられている対象配列、又は派生物、断片若しくはその派生物のいずれかと相補的である配列とハイブリダイズできるヌクレオチド配列の使用を含む。
【0299】
本発明はまた、本明細書で論じられているヌクレオチド配列とハイブリダイズできる配列と相補的である配列を含む。
【0300】
ハイブリダイゼーションの条件は、Berger and Kimmel(1987,Guide to Molecular Cloning Techniques, Methods in Enzymology,Vol.152,Academic Press, San Diego CA)で教示されているように、ヌクレオチドの結合複合体の融解温度(Tm)に基づき、且つ下記に説明されるように、定義された「ストリンジェンシー」を付与するものである。
【0301】
最高度のストリンジェンシーは、典型的には、約Tm−5℃(プローブのTmの5℃下)、高度のストリンジェンシーは、Tmの5℃から10℃下、中程度のストリンジェンシーは、Tmの10℃から20℃下、低いストリンジェンシーはTmの20℃から25℃下で起こる。当業者には理解されるように、中程度の(若しくは低い)ストリンジェンシーでのハイブリダイゼーションが、類似の、又は関連したポリヌクレオチド配列を同定又は検出するために使用されることができるのに対し、最高度のストリンジェンシーでのハイブリダイゼーションは、同一のヌクレオチド配列を同定又は検出するために使用されることができる。
【0302】
好ましくは、本発明は、本明細書で定義されている特異性を有するポリペプチドをコード化するヌクレオチド配列を、高度のストリンジェンシーの条件、又は中程度のストリンジェンシーの条件下においてハイブリダイズすることができる配列に相補的な配列を含む。
【0303】
より好ましくは、本発明は、高度のストリンジェンシーの条件下(例えば、65℃で0.1xSSC{1xSSC=0.15M NaCl,0.015M Na-citrate pH7.0})で、本明細書で定義される特異性を有するポリペプチドをコード化するヌクレオチド配列とハイブリダイズすることができる配列と相補的な配列を含む。
【0304】
本発明はまた、本明細書で論じられているヌクレオチド配列(本明細書で論じられているものと相補的な配列を含む)とハイブリダイズできるヌクレオチド配列と関連する。
【0305】
本発明はまた、本明細書で論じられているヌクレオチド配列(本明細書で論じられているものと相補的な配列を含む)とハイブリダイズできる配列と相補的なヌクレオチド配列と関連する。
【0306】
また、本発明の範囲内に含まれるのは、中程度から最高度のストリンジェンシーの条件下で、本明細書に論じられているヌクレオチド配列とハイブリダイズすることができるポリヌクレオチド配列である。
【0307】
好ましい態様では、本発明は、本明細書で論じられているヌクレオチド配列とハイブリダイズできるヌクレオチド配列を、又はストリンジェントな条件(例えば、50℃及び0.2×SSC)下で、その相補体を対象とする。
【0308】
より好ましい態様では、本発明は、本明細書で論じられているヌクレオチド配列とハイブリダイズできるヌクレオチド配列を、又は高度のストリンジェントな条件下(例えば、65℃及び0.1×SSC)でその相補体を対象とする。
【0309】
ポリペプチドの発現
本発明における使用のための、又は本明細書で定義される特異性を有するポリペプチドをコード化するためのヌクレオチド配列は、複製可能な組換えベクターに組み入れられることができる。ベクターは、ヌクレオチド配列をポリペプチドの形で、適合性のある宿主細胞内で及び/又は宿主細胞から複製又は発現するために使用される。発現は、プロモーター/エンハンサー及び他の発現調節シグナルを含む制御配列(control sequences)を使用することで調整される。原核生物のプロモーターと真核細胞において機能できるプロモーターが使用される。細胞組織特有の又は刺激特有のプロモーターが使用される。上述の2又は3以上の異なるプロモーター由来の配列要素を含むキメラのプロモーターもまた使用される。
【0310】
ヌクレオチド配列の発現による宿主組換え細胞によって作製されたポリペプチドは、使用した配列及び/若しくはベクターに応じて、分泌され、或いは細胞内に含まれる。コード配列は、配列をコードする物質の、特定の原核又は真核細胞膜を介した分泌を誘導するシグナル配列を用いて設計することができる。
【0311】
発現ベクター
発現ベクターという用語は、インビボ又はインビトロの発現ができる構築物(construct)を意味する。
【0312】
好ましくは、発現ベクターは、生物のゲノムに組み入れられる。好ましくは、「組み入れられる」という用語は、ゲノムの中に安定して組み入れられることを対象とする。
【0313】
本発明の、又は本明細書で定義される特異性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、調節配列(regulatory sequences)が適当な宿主生物によるヌクレオチド配列の発現を提供できる調節配列であるようにヌクレオチド配列が調節配列に作動的に連結しているベクターに存在する、即ちベクターは発現ベクターである。
本発明のベクターは、後述のように本明細書に定義される特異性を有するポリペプチドの発現を提供するための適当な宿主細胞に形質転換される。
【0314】
ベクターの選択は、例えばプラスミド、コスミド、ウイルス、ファージ又はベクターであり、多くの場合導入される宿主細胞に応じたものとなろう。
【0315】
ベクターは、抗生物質抵抗性の、例えばアンピシリン、カナマイシン、クロラムフェニコール、テトラサイクリン抵抗を有する遺伝子のような一又は二以上の選択できるマーカー遺伝子を含むことができる。或いは、選択は(WO91/17243に記述されているように)同時形質転換によって達成される。
【0316】
ベクターは、例えばRNAの作成のためにインビトロで使用され、又は宿主細胞の形質移入若しくは形質転換のために使用される。
【0317】
それゆえ、更なる実施例において、本発明は、本発明のヌクレオチド配列、又はヌクレオチド配列を複製可能なベクターに導入することにより、ベクターを互換性のある宿主細胞に導入することにより、及びベクターの複製を引き起こす条件下で宿主細胞を培養することにより、本明細書に定義される特異性を有するポリペプチドをコード化するヌクレオチド配列を作る方法を提供する。
【0318】
ベクターは、さらに問題となっている宿主細胞においてベクターを複製させるヌクレオチド配列を含む。そのような配列の例は、プラスミドpUC19、pACYC177、pUB110、pE194、pAMB1、及びpIJ702の複製起点である。
【0319】
調節配列
いくつかの適用においては、本発明における使用のためのヌクレオチド配列は、又は本明細書に定義される特異性を有するポリペプチドをコード化するヌクレオチド配列は、選択された宿主細胞による場合のように、ヌクレオチド配列の発現を提供できる調節配列に作動的に連結(operably linked)される。一例として、本発明は、そのような調節配列に作動的に連結する本発明のヌクレオチド配列を含むベクター、即ちベクターは発現ベクターである、を対象とする。
【0320】
「作動的に連結された」という用語は、記述された要素が、意図されたように機能することができるような並列関係を意味する。コード配列に「作動的に連結された」調節配列は、制御配列に適合する条件下でコード配列が発現されるように連結されている。
【0321】
「調節配列」という用語は、プロモーターとエンハンサー及び他の発現調節シグナルを含む。
【0322】
「プロモーター」という用語は、当業界の普通の意味で使用され、例えばRNAポリメラーゼ結合部位である。
【0323】
本明細書に定義される特異性を有する酵素をコード化するヌクレオチド配列の発現増強は、非相同性の調節領域、例えばプロモーター、分泌リーダー、及びターミネーター領域、の選択によっても達成される。
【0324】
好ましくは、本発明のヌクレオチド配列は、少なくともプロモーターに作動的に連結される。
【0325】
バクテリア、真菌、酵母宿主におけるヌクレオチド配列の転写を誘導する適当なプロモーターの例は、当業界によく知られている。
【0326】
構築物
「構築物」という用語は、「抱合体」(conjugate)、「カセット」、及び「ハイブリッド」の同義語であり、直接的に又は間接的にプロモーターに結合している本発明による使用のために本明細書に定義される特異性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む。間接的な結合の例は、プロモーターと本発明のヌクレオチド配列の間に介在するSh1−イントロン若しくは、ADHイントロンのような適当なイントロン配列などの適当なスペーサー群の提供である。同様のことは、直接的又は間接的な結合を含む本発明との関係で「融合する(fused)」という用語についてもあてはまる。いくつかのケースにおいては、この用語は、双方がそれらの自然環境に存在する場合に、野生型遺伝子のプロモーターと通常に会合するタンパク質をコードするヌクレオチド配列の自然な組合せを対象としていない。
【0327】
構築物は、遺伝的構築物の選択を可能とするマーカーを含み、又は発現させることができる。
【0328】
いくつかの適用において好ましくは、構築物は、少なくとも本発明のヌクレオチド配列、又はプロモーターに作動的に連結している、本明細書で定義される特異性を有するポリペプチドをコード化するヌクレオチド配列を含む。
【0329】
宿主細胞
本発明との関連における「宿主細胞」という用語は、本明細書で定義される特異性を有するポリペプチドをコード化するヌクレオチド配列、又は上述の本明細書で定義される特異性を有するポリペプチドの組換え体産生において使用される発現ベクターのいずれかを含む任意の細胞を含む。
【0330】
それゆえ、本発明の更なる実施例は、形質転換された、若しくは本発明のヌクレオチド配列により形質移入された宿主細胞、又は本明細書で定義される特異性を有するポリペプチドを発現するヌクレオチド配列を提供する。細胞は、前記ベクターと互換性があるように選択され、例えば、原核生物(例えばバクテリア)、真菌、酵母、又は植物細胞である。好ましくは、宿主細胞は人間の細胞ではない。
【0331】
適当なバクテリアの宿主生物は、グラム陽性細菌又はグラム陽性細菌である。
【0332】
本明細書で定義される特異性を有するポリペプチドをコード化するヌクレオチド配列の性質の、及び/又は発現されるタンパク質の更なる修飾の望ましい状況に応じて、酵母や他の真菌のような真核生物の宿主が好まれる。一般的に、操作がより簡単なため、酵母細胞が真菌の細胞よりも好まれる。しかしながら、いくつかのタンパク質は、酵母細胞からの分泌が乏しいか、いくつかのケースでは正しく修飾されない(例えば酵母では過剰糖鎖付加)かのいずれかである。
【0333】
酵母、真菌、及び植物宿主細胞のような適当な宿主細胞の使用は、本発明の組換え発現生成物の至適な生物的活性を与えることが必要されたうえで、翻訳後の修飾(例えば、ミリストイル化、糖鎖付加、切断(truncation)、投石(lapidation)、及びチロシン、セリン、若しくはトレオニンのリン酸化)を提供する。
【0334】
宿主細胞は、プロテアーゼ欠損又は、プロテアーゼマイナス株である。
【0335】
生物
本発明との関連における「生物」(organism)という用語は、本発明によるヌクレオチド配列、又は本明細書で定義される特異性を有するポリペプチドをコード化するヌクレオチド配列及び/又はそれらから得られる産生物を含むことができるいかなる生物を含む。
【0336】
好適な生物は、原核生物、真菌、酵母、又は植物である。
【0337】
本発明との関係においての、「遺伝子導入生物」(transgenic organism)という用語は、本明細書で定義される特異性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列と、及び/若しくはそれから得られる生成物とを含み、並びに/又はプロモーターは、生物に本明細書で定義される特異性のあるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を発現させることができる、いかなる生物をも含んでおり、好ましくはヌクレオチド配列が、生物のゲノムに組み入れられたものである。
【0338】
「遺伝子導入生物」という用語は、自然環境においても野生型のプロモーターの制御下にある場合に、自然の環境において配列をコードする野生のヌクレオチドを対象としない。
【0339】
従って、本発明の遺伝子導入生物は、本明細書で定義される特異性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、本明細書で定義される構築物、本明細書で定義されるベクター、本明細書で定義されるプラスミド、本明細書で定義される細胞又はその産生物のいずれかを含む生物を含む。例えば、遺伝子導入生物は、非相同のプロモーターの制御下で、本明細書で定義される特異性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列をも含むこともできる。
【0340】
宿主細胞/生物の形質転換
先に述べたように、宿主生物は、原核又は真核生物でありうる。好適な原核生物の宿主の例としては、大腸菌及び枯草菌が含まれる。
【0341】
一実施例では、宿主細胞はバクテリア、好ましくはグラム陽性菌であり、好ましくはビフィドバクテリア及びアエロモナス、特に好ましくはアエロモナス・サルモニシダのようなアクチノバクテリアから選択された宿主細胞である。さらにより好ましくは、コリネバクテリア、とりわけコリネバクテリウム・グルタミカム及びノカルディアである。特に好ましいのは、ストレプトマイセス、特にストレプトマイセス・リビダンスのようなストレプトマイセス科のものが好まれる。
【0342】
微生物の宿主は、例えば真正細菌、古細菌、酵母を含む真菌などの、ガラクトリパーゼ遺伝子の発現に使用される。好まれるのは真正細菌であり、例えば枯草菌や他のバチルス種のようなファーミキューテス(グラム陽性低GC含量細菌)、ラクトバチルス及びラクトコッカス属の菌種などの乳酸菌である。
【0343】
また、グラム陰性プロテオバクテリア、特にシュードモナス、ザントモナス、シトロバクターと、エシェリキア属特に大腸菌に属する宿主種のような、ガンマプロテオバクテリアが好ましい。
【0344】
好ましくは、宿主種は、英国出願番号0513859.9に詳述されているアエロモナス・サルモニシダ、ストレプトマイセス・リビダンス、又はコリネバクテリウム・グルタミカムのようなグラム陽性発現宿主である。
【0345】
他の実施例では、宿主細胞は野生の宿主種と同じ属であり、即ち組換え遺伝子は、組換え遺伝子が単離された種と同じ種に再導入され、且つ発現している。
【0346】
他の実施例では、宿主細胞は野生の宿主種であり、即ち組換え遺伝子は、組換え遺伝子が単離された種と同じ種に再導入され、且つ発現している。
【0347】
当業界では、原核生物の宿主の形質転換についての教示は充分に文書化されている。例えば、Sambrook et al (Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2ndedition, 1989, Cold Spring Harbor Laboratory Press) を参照せよ。原核生物の宿主が使用される場合、ヌクレオチド配列は形質転換の前に、例えばイントロンの除去のように、適切に改変される必要がある。
【0348】
別の実施例では、遺伝子導入生物は酵母でありうる。
【0349】
糸状体の真菌は、プロトプラスト形成と、既知の方法で細胞壁の再生を伴うプロトプラストの形質転換とに関わる処理のような、当業界に知られた様々な方法を使用して形質転換される。アスペルギルスの宿主微生物としての使用は、EP0238023に記述されている。
【0350】
別の宿主生物は、植物でありうる。植物を形質転換するのに使用される一般的技術の概説は、Potrykus(Annu Rev Plant Physiol Plant Mol Biol (1991)42:205-225)及び Christou (Agro-Food-Industry Hi-Tech March/April 1994 17-27) の論文に見られる。植物の形質転換についての更なる教示は、EP−A−0449375に見られる。
【0351】
真菌、酵母、及び植物の形質転換についての一般的教示は、以下の項で示されている。
【0352】
形質転換された真菌
宿主生物は、糸状菌のような真菌でありうる。好適な宿主の例としては、テルモマイセス、アクレモニウム、アスペルギルス、ペニシリウム、ムコール、ニューロスポラ、トリコデルマ属などに属する任意の菌を含む。
【0353】
糸状菌の形質転換についての教示は、当業界によく知られている糸状菌の形質転換及び真菌の培養の標準的な技術を記載しているUS−A−5741665に概説されている。ニューロスポラ・クラッサに適用される技術の広範囲にわたる概説が、例えば、Davis and de Serres, Methods Enzymol (1971)17A: 79-143 に見られる。
【0354】
さらに、US−A5674707に糸状菌の真菌の形質転換についての教示が総説されている。
【0355】
一態様では、宿主生物はアスペルギルス・ニガーのようなアスペルギルス属のものである。
【0356】
本発明による遺伝子導入アスペルギルスは、以下の例えばTurner G. 1994 (Vectors for genetic manipulation. In: Martinelli S.D.,Kinghorn J.R.(Editors) Aspergillus: 50 years on. Progress in industrial microbiology vol 29. Elsevier Amsterdam 1994. pp641-666)の教示により作成される。
【0357】
糸状菌の遺伝子発現は、Punt et al.(2002) Trends Biotechnol 2002 May;20(5):200-6, Archer & Peberdy Crit Rev Biotechnol (1997)17(4):273-306 で概説されている。
【0358】
形質転換酵母
別の実施例では、遺伝子導入生物が酵母でありうる。
【0359】
酵母における非相同遺伝子発現の原理の概説は、例えば、Methods Mol Biol (1995),49:341-4, 及び Curr Opin Biotechnol(1997) Oct;8(5):554-60にて提供されている。
【0360】
この点で、サッカロミセス・セルビシ(saccharomyces cerevisi)、又はピキア・パストリス種(FEMS Microbiol Rev(2000 24(1):45-66 参照) のような酵母が、非相同遺伝子発現の媒体として使用される。
【0361】
サッカロミセス・セルビシエにおける、非相同遺伝子発現、及び遺伝子産生物の分泌についての原理の概説は、E Kenny (1993, “Yeast as a vehicle for the expression of heterologous genes”, Yeasts, Vol 5, Anthony H Rose and J Stuart Harrison, eds, 2nd edition, Academic Press Ltd.)に示されている。
【0362】
酵母の形質転換のためには、いくつかの形質転換プロトコルが開発されている。例えば、本発明による遺伝子導入サッカロミセスは、以下の Hinnen et al.,(1978, Proceedings of the National Academy of Sciences of the USA 75, 1929); Beggs, J D (1978, Nature, London, 275,104); 及び Ito, H et al (1983, J Bacteriology 153, 163-168) の教示により作成されうる。
【0363】
形質転換された酵母細胞は、栄養要求性マーカーや、優性抗生物質マーカーのような、様々な選択マーカーを使用して選択できる。
【0364】
好適な酵母宿主生物は、バイオ技術的に適切な、これらに制限されるものではないが、ピキア種、ハンゼヌラ種、クルイベロマイセス、Yarrowinia種,サッカロミセス・セルビシエを含むサッカロミセス種、又はシゾサッカロミセス・ポンベを含むシゾサッカロミセス種のような、酵母菌種から選択できる。
【0365】
メチロトローフ酵母種であるピキア・パストリスの菌株が、宿主として使用される。
【0366】
一実施例では、宿主は、ハンゼヌラ・ポリモルファ(WO01/39544に記述されている)のようなハンゼヌラ種である。
【0367】
形質転換植物/植物細胞
本発明に適した宿主生物は、植物でありうる。一般的技術の概説については、Potrykus(Annu Rev Plant Physiol Plant Mol Biol (1991) 42:205-225)及びChristou (Agro-Food-Industry Hi-Tech March/April 1994 17-27)又は、WO01/16308に見られる。
【0368】
分泌物
しばしばポリペプチドは、分泌される酵素がより容易に回収されうる培地へ、発現宿主から分泌されることが望ましい。本発明によれば、分泌リーダー配列は、目的とする発現宿主を基に選択される。ハイブリッドシグナル配列もまた、本発明を背景として使用される。
【0369】
非相同分泌リーダー配列の典型的な例は、真菌のアミログルコシダーゼ(AG)遺伝子(glaA−双方とも、例えばアスペルギルス由来の18及び24アミノ酸の種類)、a−ファクター遺伝子(酵母、例えば、サッカロミセス、クルイベロマイセス、及びハンゼヌラ)又は、α−アミラーゼ遺伝子(バチルス)由来の配列である。
【0370】
検出
アミノ酸配列の発現を検出及び測定するための様々なプロトコルが、当業界に知られている。例としては、酵素結合免疫吸着定量法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、及び蛍光抗体法(FACS)が含まれる。
【0371】
多様な標識及びコンジュゲイション(conjugation)技術が当業者に知られており、様々な核酸及びアミノ酸アッセイにおいて使用可能である。
【0372】
Pharmacia Biotech社(Piscatway, NJ), Promega社(Madison, WI)、 及びUS Biochemical Corp社(Cleveland, OH) のような多数の会社が、これらの手順についての市販キットやプロトコルを供給している。
【0373】
適切なレポーター分子又は標識は、基質、補因子、阻害物質、磁粉などと同様にこれらの放射性核種、酵素、蛍光、化学発光法、色原体を含む。これらの標識の使用について特許では、US−A−3,817,837、US−A−3,850,752、US−A−3,939、350、US−A−3,996,345、US−A−4,277,437、US−A−4,275,149、及びUS−A−4,366,241を含む。
【0374】
また、組換え免疫グロブリンは、US−A−4,816,567に示されるように作成される。
【0375】
融合タンパク質
本明細書で定義される特異性を有するポリペプチドは、例えば、抽出、精製において補助となる融合タンパク質として生産される。融合タンパク質の相手の例としては、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、6×His、GAL4(DNA結合及び/若しくは転写の活性化ドメイン)、並びにβ―ガラクトシダーゼを含む。融合タンパク質の相手と興味あるタンパク質配列の間にある、融合タンパク質配列の除去を可能とするタンパク質分解的切断部位を含むことも便宜となりうる。好ましくは、融合タンパク質は、タンパク質配列の活性の妨げにならないものである。
【0376】
大腸菌における遺伝子融合発現システムは、Curr. Opin. Biotechnol. (1995)6(5):501-6で概説されている。
【0377】
本発明の別の実施例では、本発明で定義される特異性を有するポリペプチドのアミノ酸配列は、融合タンパク質をコードするために非相同配列に連結される。例えば、物質(substance)の活性に影響を与えることができる試薬についてのペプチドライブラリーの選別にとって、商業的に利用可能な抗体により認識される非相同的なエピトープを発現するキメラの物質をコード化する。
【0378】
実施例
この研究は, 大豆油、ひまわり油、菜種油のような植物油の脱ガムにおける脂質アシルトランスフェラーゼ(本明細書においては、グリセロリン脂質コレステロールアシル−トランスフェラーゼ(GCAT)と呼ばれることがある)の使用可能性について検討することを目的とする。
【0379】
この研究の目的の1つは、特に、脂質アシルトランスフェラーゼ変異体(N80D)が、脱ガムにより適した酵素であるかどうかを調査することにある。従前の研究により、脂質アシルトランスフェラーゼ(特にGCATS)は、リン脂質からステロールへの脂肪酸のアシル転移を触媒し、リゾレシチンとステロールエステルを生成することが知られている。
【0380】
今回の研究は、ホスファチジルコリンと植物ステロールが添加された精製された大豆油に基づくモデルにおいて行なわれた。このモデルは、粗大豆油を使用する代わりに、モデルシステムにおいて反応生成物を分析することがより容易であることから選択された。
大豆油や菜種油を含む植物油の酵素的脱ガム工程は、この工程が油からレシチンを除去するのにより安価であり、より優れた工程であるので、近年拡大している。油の脱ガムに使用される酵素は、ホスホリパーゼA1(レシターゼウルトラ、又は膵臓由来のホスホリパーゼA2−Novoenzymes A/S社製、デンマーク)である。
【0381】
脱ガムに使用される本発明に関する酵素の、以前の当業界におけるホスホリパーゼA1と比較したときの利点の一つは、本発明による酵素は、脱ガム工程中にステロールエステルの生成を促進し、ステロールエステルの蓄積に寄与することであり、このことは、現時点で使用されているホスホリパーゼA1(レシターゼウルトラ)については、現時点では達成されていない。
【0382】
材料及び方法
酵素
・ 本発明による脂質アシルトランスフェラーゼ:アエロモナス・サルモニシダ由来の酵素の変異体Asn80Asp(成熟酵素のアミノ酸80)(配列番号16(図10参照))
・ レシターゼウルトラ(#3108)Novozymes社製、デンマーク
大豆油 : Soya olie IP (Item No. 005018/バッチ番号T-618-4)
レシチン : L−αホスファチジルコリン95%Plant(Avanti社製 #441601)
植物ステロール : Generol 122N Henkel社製、ドイツ
トコフェロール : アルファートコフェロール
(Item no.050908/lot.nr4010140554)
【0383】
ホスホリパーゼ活性
基質
0.6%L−αホスファチジルコリン95%Plant(Avanti社製#441601)、
0.4% Triton-X100(Sigma社製 X-100)及び5mM CaCl2 を0.05MHEPES緩衝剤pH7中に溶解した。
【0384】
アッセイ手順
400μlの基質が、1.5mlエッペンドルフチューブに加えられ、エッペンドルフサーモミキサー内に37℃にて5分間置かれた。T=0minに、50μlの酵素溶液が加えられた。酵素の代わりに水をいれたブランクも分析された。試料は、エッペンドルフサーモミキサー内において、37℃にて10分間10x100rpmで混合された。T=10minに、エッペンドルフチューブは、反応を停止するため、別のエッペンドルフサーモミキサー内に99℃にて10分間置かれた。
【0385】
試料内の遊離脂肪酸は、Wako GmbH社製NEFA C kitを用いて分析された。
【0386】
酵素活性PLU−NEFA pH7が、アッセイ条件下において1分ごとに形成されたマイクロモル脂肪酸として計算された。
【0387】
高性能薄層クロマトグラフィー
装置 :Automatic TLC sampler4、CAMAG社製
高性能薄層クロマトグラフィープレート:20x10cm,Merck社製 no.1.05641.
使用前に160℃にて30分間活性化された。
【0388】
手順 : 緩衝液中に8%溶液とした油1μlを自動TLCアプリケーターを使用して高性能薄層クロマトグラフィープレートに用いる。
【0389】
展開溶媒1: P-エーテル:メチル-tert-ブチルエーテル:酢酸 60:40:1
展開溶媒4: クロロホルム:メタノール:水 75:25:4
展開溶媒5: P-エーテル:メチル-tert-ブチルエーテル:酢酸 70:30:1
処理/溶出時間 展開溶媒1:12分
展開溶媒4:20分
展開溶媒5:10分
検出
プレートは乾燥器内で10分間160℃にて乾燥させ、冷却し、16%H3PO4に溶解した6%酢酸銅(cupri acetate)に浸漬する。さらに10分間160℃にて乾燥させ、直接評価される。
【実施例1】
【0390】
酵素精製
試料: 脂質アシルトランスフェラーゼ(Asn80Asp)(配列番号16)は、0.8/0.22μmフィルターで濾過された。510mlの濾液が採取された。
【0391】
ステップ1. 脱塩、 Sephadex 25G, 3.21g ゲル (10cm id)
Sephadexカラムは、製造者(Amersham biosciences社)の記述により調整された。カラムは20mM Na-P-緩衝液pH8.0で平衡化された。試料(510ml)は流出速度25ml/分でカラムに展開された。815mlの脱塩された試料が採取され、+4℃にて保持された。
【0392】
ステップ2. 陰イオン交換クロマトグラフィー、Q-Sepharose FF 300mlゲル(XK50)
Q−SepharoseFFカラムは、製造者(Amersham biosciences社)の記述により調整された。カラムは20mM Na-P-緩衝液pH8.0で平衡化された。脱塩された試料は、流出速度15ml/分でカラムに展開された。その後カラムは緩衝液Aで洗われた。リパーゼは、20mMNa-P-緩衝液(pH8.0、緩衝液B)中に0〜0.4MNaClの直線的濃度勾配をもって溶出された。リパーゼは、約0.2MNaClにより溶出し、リパーゼ活性は、展開中の画分を通じて検出されなかった。
【0393】
PNP−カプリル酸塩による酵素アッセイ
PNP−カプリル酸塩を基質として使用するアッセイは以下のとおり行なわれた。
【0394】
1mlのエタノールに溶解した10mgの基質は、0.4%TX100を含む9mlの50mM Tris-HCl緩衝液(pH7.3)に混合された。
【0395】
240μlの基質は35℃にてプレインキュベートされた。反応は25μlの試料及びブランクを加えることで開始された。混合液は、5分間35℃にて振盪しながらインキュベートされた。分光光度計を使用し、PNPの生成は、410nmにおいて連続して測定された。ブランクは、試料以外のすべての構成成分と緩衝液を含んでいる。リパーゼ活性の1ユニットは、35℃にて分単位で遊離カプリル酸1μlを放出する酵素量として定義された。
【0396】
分子量と純度の決定
SDS−PAGEは4−12%Nu-PAGEゲル(+DTT)により行なわれ、製造者(Novex社 アメリカ)の指示どおりにクーマシーで染色された。スタンダードマーカーは、See Blue Plus2であり、Novex社 アメリカより得た。
【0397】
結果
脂質アシルトランスフェラーゼ変異体N80Dのイオン交換クロマトグラフィー(IEC)による精製のクロマトグラムを、表1に示す。採取された画分はリパーゼ活性(PNP−カプリル酸塩アッセイに基づく)が分析された。画分ごとの活性を表1−aに示す。
【0398】
脂質アシルトランスフェラーゼ活性を含む画分(27−39、195ml)はプールされた。部分的に精製された脂質アシルトランスフェラーゼの最終的な回収率は、約80%であった(PNP−カプリル酸塩によるアッセイに基づく)。
【0399】
精製された脂質アシルトランスフェラーゼの画分は、SDS−PAGEに付された。
【0400】
SDS−PAGEのゲルは、脂質アシルトランスフェラーゼタンパク質が、分子量約28KDaであることを示した。部分的に精製された脂質アシルトランスフェラーゼは、10KDaの微量の不純物を含んでいた(図2参照)。
【0401】
IEC後の脂質アシルトランスフェラーゼプール27−39は、ホスホリパーゼ活性について分析され、20.4PLU−7/mlの結果を得た。
【0402】
全体的な精製スキームを表1に示す。脂質アシルトランスフェラーゼは、80%の回収率で部分的に精製されていた。
【0403】
【表4】
【実施例2】
【0404】
脱ガム実験
実施例1による脂質アシルトランスフェラーゼの試料は、表2に示されている処方により脱ガムの研究に使用された。
【0405】
植物ステロール、アルファ−トコフェロール及びホスファチジルコリンを90℃に温めた大豆油に溶解した。油はその後約40℃に冷却され酵素が添加された。試料は、17時間撹拌されながら40℃にて置かれ、その後試料採取されてクロロホルム:メタノール 2:1に溶解して、高性能薄層クロマトグラフィーが行なわれた。
【0406】
【表5】
高性能薄層クロマトグラフィーの結果を図3及び図4に示す。
【0407】
図3に示される薄層クロマトグラフィーの結果は、油に脂質アシルトランスフェラーゼを加えることにより、ホスファチジルコリンがほぼ100%除去されることを明白に示している。試料10のみが少量のホスファチジルコリンを含んでいる。試料10は水分量が一番高いので、水分量が低い場合に酵素がより働くのかもしれないということを示しており、或いは、試料10は5%水分を含んでいるので、二相が形成されて酵素と反応物質の接触が起こりにくくなっているかもしれないということにより説明可能かもしれない。
【0408】
図4に示された結果からは、少量の脂肪酸が生成されていることが観察された。しかし、ステロール又はアルファ−トコフェロールも油に存在するときは、ホスファチジルコリン由来の脂肪酸はステロールやトコフェロールに転移してステロールエステルやトコフェロールエステルを生成するので、遊離脂肪酸量はより少ない。
【0409】
ステロールエステルの生成は、図5に示された薄層クロマトグラフィーの結果から明らかに観察される。使用された対照材料であるコレステロールエステルは、植物ステロールエステルと同じ保持時間をとっていることに注意すべきである。
【実施例3】
【0410】
脱ガム実験(2)
もう1つの実験において、IECクロマトグラフィーから得られた脂質アシルトランスフェラーゼプール27−39は、酵素の添加量、及びホスファチジルコリンと植物ステロールを含んだ大豆油における水分量を変えて試験がされた。この実験では、市販のホスホリパーゼであるレシターゼウルトラも供給者が脱ガムについて推奨する濃度において試験がされた。
【0411】
この実験における試料の組成を表3に示す。
【0412】
【表6】
植物ステロールとホスファチジルコリンは、95℃に温めた大豆油に撹拌しながら溶解された。油はその後約40℃に冷却され酵素が添加された。試料はマグネティックスターラで撹拌されながら40℃で維持され、4又は20時間後に取り出されて、薄層クロマトグラフィーによって分析された。4又は20時間後に取り出された試料の高性能薄層クロマトグラフィー分析の結果を図6−9に示す。
【0413】
脂質アシルトランスフェラーゼの最低量の添加(油0.08PLU−7/gに対応する0.4%)は、20時間の反応時間後に大豆油中のホスファチジルコリンを除去するに充分であることを、高性能薄層クロマトグラフィーの結果は、示している。水を最大量含んだ場合(5%)は、油中のホスファチジルコリンの加水分解について脂質アシルトランスフェラーゼに悪影響を与えているようであることが観察される。それゆえ、最も高い濃度の脂質アシルトランスフェラーゼの試料におけるより低い程度の加水分解は、より多くの水分も加えられているという事実により説明される。これと反対に、レシターゼウルトラ は最低量の水分(1%)において、より少量のホスファチジルコリンを加水分解をしており、一方で、レシターゼウルトラは、5%水分の試料においては、ホスファチジルコリンをほぼ完全に除去することが観察される。
【0414】
図7の結果はまた、植物ステロールの大部分は、脂質アシルトランスフェラーゼによって処理された試料内で植物ステロールエステルに変換されているが、レシターゼウルトラによって処理された試料内ではステロールエステルは生成しないということを示している。図7は、レシターゼウルトラが、脂質アシルトランスフェラーゼよりも遊離脂肪酸(FFA)を多く形成することを示している。
【0415】
結論
ホスファチジルコリン、植物ステロール及びトコフェロールを含む大豆油モデルにおける脱ガム実験は、部分的に精製された脂質アシルトランスフェラーゼ酵素が、植物ステロールエステル生成を伴い、またごく少量の遊離脂肪酸を形成するが、ホスファチジルコリンをすべて除去できることを示している。
【0416】
脂質アシルトランスフェラーゼのさらなる利点の一つは、ステロールエステル、特にトコフェロールエステルの形成である。なぜなら、ステロールエステル(トコフェロールエステルを含む)は、健康に有益な特質を有するからである。通常の食用油の加工においては、脱ガムに引続き、加水分解された極性を有する脂質(リン脂質及び/又は糖脂質)を含む水相が、油から分離される。従来法では、ステロールは油精製工程で食用油から除かれる(本明細書では、脱臭と呼ばれることがある)。しかしながら、ステロールエステル(及びトコフェロールエステル)は脱臭に抗し、それゆえ油に残存する。油中にステロールエステルが蓄積することは魅力的である。なぜなら植物ステロールエステルの高摂取は人間の循環器系疾患のリスクを軽減するからである。
【0417】
実験は、脂質アシルトランスフェラーゼが、これもまた油に蓄積するトコフェロールエステルを形成できるということをも示している。
【0418】
これは、油の酸化に対する安定性の改善に寄与するものであり、それゆえ本発明による脂質アシルトランスフェラーゼを脱ガムに使用することの更なる有利な点である。
【実施例4】
【0419】
粗油における脱ガム実験
別の実験では、イオン交換クロマトグラフィーにより得られた脂質アシルトランスフェラーゼプール27−39は、Solae Company社, Aarhus, Denmarkより得た粗大豆油(脱ガム前)について、酵素濃度及び水分量を変えて試験がなされた。この実験では、商業用ホスホリパーゼであるレシターゼウルトラについても供給者が脱ガムについて推奨する濃度において試験がなされた。この試験における試料の組成を表4に示す。
【0420】
試料は、マグネティックスターラで撹拌しながら、40℃にてヒーティングブロック内に置かれた。20時間後分析のため試料は取り出された。
【0421】
【表7】
油の試料は高性能薄層クロマトグラフィーによって分析された。結果を図26及び27に示す。
【0422】
図26における高性能薄層クロマトグラフィー分析は、脂質アシルトランスフェラーゼが、試料(試料3、4、6及び7)にリゾレシチンを何ら残存させること無く、粗大豆油からリン脂質を効果的に除去することを示すものである。レシターゼウルトラもリン脂質(PC)を除去するが、クロマトグラムにはいくつかのバンドが残っており、リゾレシチンであると思われる。脂質アシルトランスフェラーゼは非常に低い水分環境においても作用するが、レシターゼウルトラは、作用するには1%から5%の水分を必要とすることも観察される。
【0423】
図27の結果は、脂質アシルトランスフェラーゼは、遊離ステロールをステロールエステルに変換し、レシターゼウルトラはステロールには何の効果も及ぼさないことを確認するものである。 図27の結果はまた、脂質アシルトランスフェラーゼ及びレシターゼウルトラを加えた試料双方において、いくらかの遊離脂肪酸が生成していることを示している。脂質アシルトランスフェラーゼによる遊離脂肪酸の生成理由は、アシル供与体(ステロール)が充分に存在せず、それゆえ加水分解も起こるということで説明される。
【0424】
表4においては試料1、2、3、6、8及び10がGLCで分析され、ステロール及びステロールエステル量が定量化された。結果を表5に示す。
【0425】
【表8】
表5における結果は、本発明における脂質アシルトランスフェラーゼは、粗大豆油中のすべてのステロールをステロールエステルに変換でき、商業用ホスホリパーゼであるレシターゼウルトラはステロールに何ら効果を及ぼさないということを確認するものである。
【0426】
結論
本発明の脂質アシルトランスフェラーゼの粗大豆油に対する効果は、本発明の脂質アシルトランスフェラーゼが、粗大豆油のリン脂質を効果的に除去し、ステロールエステルの生成を伴うことを確認するものである。
【実施例5】
【0427】
さらに実験において、ストレプトマイセス・サーモサッカリL131由来のホスホリパーゼが粗大豆油において試験された。
【0428】
結果は、ストレプトマイセス・サーモサッカリL131由来のホスホリパーゼは、粗大豆油におけるリン脂質を効果的に加水分解し、植物油の脱ガムについて代替酵素として適していることを確認するものである。
【0429】
大豆油及び菜種油を含む植物油の酵素的脱ガム工程は、この工程が費用があまりかからず、レシチンを植物油から取り除くのにより良い工程であるので、現在拡大している。脱ガムに使用されている商業用の酵素は、微生物由来のホスホリパーゼA1及び動物由来のホスホリパーゼA2である。
【0430】
ストレプトマイセス・サーモサッカリL131由来の(リン)脂質アシルトランスフェラーゼは脱ガムに使用可能なもう1つの酵素である。
【0431】
序文
この研究の目的は、大豆油、ひまわり油又は菜種油のような植物油の脱ガムについて、ストレプトマイセス・サーモサッカリL131由来の脂質アシルトランスフェラーゼの使用の可能性について調査することである。
【0432】
伝統的に油の脱ガムについては、二つの工程が使用されてきた。すなわち物理的脱ガム及び化学的脱ガムである。1990年代に遡り、膵臓由来のホスホリパーゼの使用に基づいて酵素的脱ガム工程は発展した。この酵素は、コーシャーではなかったので、ホスホリパーゼは微生物由来のホスホリパーゼA1に置き換えられた。酵素的工程は化学的或は物理的脱ガム工程に比べ経費削減、より高い収率、そしてより環境面で望ましい工程であることを含め、いくつかの利点がある。
【0433】
この研究の目的は、ストレプトマイセス・サーモサッカリL131由来の脂質アシルトランスフェラーゼが、脱ガムに適した酵素であるかどうかを調査することであった。上述の研究により、ストレプトマイセス・サーモサッカリL131は、トリグリセリドに対して何らの活性を示さずに、ガラクト脂質及びリン脂質に対して加水分解能力を有することが知られており、この酵素はある種の低水分環境でトランスフェラーゼの反応を促進することが期待される。この研究は天然のリン脂質を含む粗大豆油により行なわれた。
【0434】
材料及び方法
酵素
K371(jour2390-30):デンプン上で凍結乾燥されたストレプトマイセス・サーモサッカリL131/ストレプトマイセス・リビダンス
(活性:108PLU−7/g)
レシターゼウルトラ(#3108)Novozymes社製 デンマーク
コレステロールエステル、 Fluka 26950
植物ステロール:Generol122N Henkel社、ドイツ
粗大豆油:Solae社製 Aarhus デンマーク
レシチン:L−αホスファチジルコリン95%Plant(Avanti#441601)
【0435】
ホスホリパーゼ活性
基質:
0.6%L−αホスファチジルコリン95%Plant(Avanti#441601)、0.4% Triton−X100(Sigma X-100)、及び5mM CaCl2は、0.05MHEPES緩衝液pH7に溶解された。
【0436】
アッセイ方法
400μlの基質は、1.5mlのエッペンドルフチューブに加えられ、エッペンドルフサーモメーター内に37℃にて5分間置かれた。T=0minに、50μlの酵素溶液が加えられた。酵素の代わりに水を加えたブランクも分析された。試料は、エッペンドルフサーモミキサー内において、37℃にて10分間10*100rpmで混合された。T=10minに、エッペンドルフチューブをもう1つのエッペンドルフサーモミキサー内に99℃にて10分間置くことで反応は中止された。試料内の遊離脂肪酸量は、 Wako GmbH社製 NEFA C kitを用いて分析された。
【0437】
酵素活性PLU−NEFApH7がアッセイ条件における1分ごとの脂肪酸のマイクロモル量として計算された。
【0438】
GLC(ガスクロマトグラフィー)
WCOT溶融シリカカラム12.5m x 0.25ID x 0.1μm 5%フェニル−メチル−シリコーン(CPSil8CB Crompack社製))を用いたPerkin Elmer 8420キャピラリーガスクロマトグラフ
キャリヤー: ヘリウム
インジェクション: 1.5μL スプリット
検出器: FID. 385℃
乾燥機プログラム: 1 2 3 4
乾燥機温度(℃) 80 200 240 360
等温、時間(分) 2 0 0 10
昇温速度(℃/分) 20 10 12
試料調整:
0.2gの試料から抽出された脂質を、2mg/mLのヘプタデカンを内部標準として含む2mLのヘプタン:ピリジン2:1に溶解した。500μLの試料はクリンプバイアルに移された。100μLのMSTFA(N−メチル−N−トリメチルシリル−トリフルオロアセアミドが加えられ、15分間90℃にて保温されて反応を行なった。
【0439】
高性能薄層クロマトグラフィー
装置 : Automatic TLC sampler4、CAMAG社製
高性能薄層クロマトグラフィープレート 20x10cm,Merck社製no.1.05641.
使用前に160℃にて30分間活性化する。
【0440】
手順 : 緩衝液に溶解し8%溶液とした油1μlを高性能薄層クロマトグラフィープレートに用いた。
【0441】
展開溶媒4: クロロホルム:メタノール:水 75:25:4
展開溶媒5: P-エーテル:メチル-tert-ブチルエーテル:酢酸 70:30:1
手順/溶出時間
展開溶媒4 :20分
展開溶媒5 :10分
検出
プレートは160℃に保った乾燥機内で10分間乾燥させ、冷却し、16%H3PO4に溶解した6%cupri acetateに浸漬した。さらに10分間乾燥させて直接評価された。
【0442】
結果
脱ガム実験
ストレプトマイセス・サーモサッカリL131が表6に示す処方により脱ガム研究に使用された。
【0443】
試料は18時間撹拌されながら40℃にて置かれ、その後試料は採取されてクロロホルム:メタノール 2:1に溶解して高性能薄層クロマトグラフィーが行なわれた。
【0444】
【表9】
高性能薄層クロマトグラフィーでの分析結果を、図59及び60に示す。
【0445】
図59、表6による粗大豆油試料を酵素処理した反応生成物の高性能薄層クロマトグラフィー(溶媒4)。参考として、ホスファチジルコリン(PC)も分析された。ホスファチジルエタノールアミン(PE)及びリゾホスファチジルコリン(LPC)についても示されている。
【0446】
図60、表6による粗大豆油を酵素処理した反応生成物の高性能薄層クロマトグラフィー(溶媒5)。コレステロール、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリドにも言及している。遊離脂肪酸(FFA)についても示されている。
【0447】
図59に示された薄層クロマトグラフィーの結果は、ストレプトマイセス・サーモサッカリL131を油に加えることによりホスファチジルコリンは、完全に除去されたことを、明白に示すものである。最低濃度のもの(試料2)のみが、リン脂質を完全に加水分解しなかった。レシターゼウルトラも、5%水分が存在するとき(試料6)にはリン脂質を加水分解したが、余分に水分を加えないとき(試料5)は、部分的にのみリン脂質は加水分解された。
【0448】
図60に示されている結果は、リン脂質の加水分解は遊離脂肪酸の生成と同時に行なわれていることを示唆している。
【0449】
結論
ストレプトマイセス・サーモサッカリL131は、粗大豆油において遊離脂肪酸を生成し、リン脂質を効果的に加水分解する。
【0450】
前述の規格に言及されたすべての文献は、ここにおいて参照文献に組み入れられている。本発明の様々な改変や記述されている方法やシステムの変更は、本発明の範囲を逸脱するものでないことは当業者にとっては明らかなものであろう。本発明は、特定の好適な実施例に関して説明されてきたが、本発明が請求するように、そのような特異な実施例のみに、不当に制限されることがあってはならないことは理解されなければならない。実際、発明を実行するために記載された方法を様々に改変することは、生化学やバイオテクノロジーや関連分野の当業者にとっては明らかであり、以下の請求の範囲に収まることを意図するものである。
【図面の簡単な説明】
【0451】
【図1】陰イオン交換クロマトグラフィー(IEC)後得られた、脂質アシルトランスフェラーゼ活性(PNP―カプリル酸アッセイ)の分析結果を示すものである.
【図2】精製された脂質アシルトランスフェラーゼの画分(4〜12% Mes、+DTT、40/10 μl 試料がゲルにふされた。)のSDS−PAGE分析の結果を示すものである. レーン1. 脱塩後の脂質アシルトランスフェラーゼ試料、40μlがゲルにふされた。 レーン2. 脱塩後の脂質アシルトランスフェラーゼ試料、10μlがゲルにふされた。 レーン3. IEC後の精製された脂質アシルトランスフェラーゼリパーゼ(プール27〜39)、40μlがゲルにふされた。 レーン4. IEC後の精製された脂質アシルトランスフェラーゼリパーゼ(プール27〜39)、10μlがゲルにふされた。
【図3】表2により、大豆油の試料を脂質アシルトランスフェラーゼで処理した反応生成物のTLC(溶媒4)を示すものである。対照として、ホスファチジルコリン(PC)も分析された。
【図4】表2により、大豆油の試料を脂質アシルトランスフェラーゼで処理した反応生成物のTLC(溶媒1)を示すものである。対照として、遊離脂肪酸(FFA)とモノ−ジ−トリグリセリド(TRI/DI/MONO)も分析された。
【図5】表2により、大豆油の試料を脂質アシルトランスフェラーゼで処理した反応生成物のTLC(溶媒5)を示すものである。対照として、コレステロール(CHL)及びコレステロールエステル(CHLエステル)も分析された。
【図6】表3により、20時間、大豆油の試料を脂質アシルトランスフェラーゼ又はレシターゼウルトラで処理した反応生成物のTLC(溶媒4)を示すものである。
【図7】表3により、20時間、大豆油の試料を脂質アシルトランスフェラーゼ又はレシターゼウルトラで処理した反応生成物のTLC(溶媒5)を示すものである。コレステロールエステル(CHLエステル);モノ−ジ−トリグリセリド(MONO/DI/TRI)及び、植物ステロールもまた、対照として分析された。遊離脂肪酸(FFA)の同定も示されている。
【図8】表3により、4時間、大豆油の試料を脂質アシルトランスフェラーゼ又はレシターゼウルトラで処理した反応生成物のTLC(溶媒4)を示すものである。
【図9】表3により、4時間、大豆油の試料を脂質アシルトランスフェラーゼ又はレシターゼウルトラで処理した反応生成物のTLC(溶媒5)を示すものである。コレステロールエステル(CHLエステル)、モノ−ジ−トリグリセリド(MONO/DI/TRI)、及び植物ステロールもまた、対照として分析された。遊離脂肪酸(FFA)の同定も示されている。
【図10】Asn80Aspの変異による(明白に、アミノ酸80は成熟酵素に存在する)、アエロモナス・サルモニシダの成熟脂質アシルトランスフェラーゼ(GCAT)の変異体のアミノ酸配列示すものである。
【図11】アエロモナス・ハイドロフィラ (ATCC #7965) 由来の脂質アシルトランスフェラーゼ(配列番号1)のアミノ酸配列を示すものである。
【図12】データベースversion6(配列番号2)からのpfam00657の共通配列を示すものである。
【図13】生物アエロモナス・ハイドロフィラ (P10480;GI:121051)から得られた、アミノ酸配列(配列番号3)を示すものである。
【図14】生物アエロモナス・サルモニシダ (AAG098404;GI:9964017)から得られた、アミノ酸配列(配列番号4)を示すものである。
【図15】生物ストレプトマイセス・コエリコロルA3(2) (Genbank アクセッション番号NP_631558)〜得られた、アミノ酸配列(配列番号5)を示すものである。
【図16】生物ストレプトマイセス・コエリコロルA3(2) (Genbank アクセッション番号CAC42140)から得られた、アミノ酸配列(配列番号6)を示すものである。
【図17】生物サッカロミセス・セルビシエ(Genbank アクセッション番号P41734)から得られた、アミノ酸配列(配列番号7)を示すものである。
【図18】生物ラルスト二ア (Genbank アクセッション番号AL646052)から得られた、アミノ酸配列(配列番号8)を示すものである。
【図19】Scoe1 NCBI タンパク質アクセッションコード CAB39707.1 GI:4539178保存されている、立体構造は解かれたけれども機能がわからないタンパク質 (hypothetical protein) [ストレプトマイセス・コレリコロルA3(2)]配列番号9を示すものである。
【図20】Scoe2NCBIタンパク質アクセッションコード CAC01477.1 GI:9716139保存されている、立体構造は解かれたけれども機能がわからないタンパク質[ストレプトマイセス・コレリコロルA3(2)] 配列番号10によって示されるアミノ酸を示すものである。
【図21】Scoe3NCBIタンパク質アクセッションコードCAB88833.1 GI:7635996の推定分泌タンパク質[ストレプトマイセス・コレリコロルA3(2)]のアミノ酸配列(配列番号11)を示すものである。
【図22】Scoe4NCBIタンパク質アクセッションコードCAB89450.1 GI:7672261の推定分泌タンパク質[ストレプトマイセス・コレリコロルA3(2)]のアミノ酸配列(配列番号12)を示すものである。
【図23】Scoe5NCBIタンパク質アクセッションコードCAB62724.1 GI:6562793の推定リポタンパク質[ストレプトマイセス・コレリコロルA3(2)]のアミノ酸配列(配列番号13)を示すものである。
【図24】Srim1NCBIタンパク質アクセッションコードAAK84028.1 GI:15082088 GDSL−リパーゼ[ストレプトマイセス・リモスス]のアミノ酸配列(配列番号14)を示すものである。
【図25】アエロモナス・サルモニシダ subsp.サルモニシダ(ATCC#14174)由来の脂質アシルトランスフェラーゼのアミノ酸配列(配列番号15)を示すものである。
【図26】表4により、試料1〜10の粗大豆油の試料を酵素で20時間処理した反応生成物のTLC(溶媒4)を示すものである。PCは、5種類の異なる濃度(対照材料)に加えられたホスファチジルコリンである。
【図27】表4により(20時間)、粗大豆油の試料を脂質アシルトランスフェラーゼ又はレシターゼウルトラで処理した反応生成物のTLC(溶媒5)を示すものである。コレステロールエステル(CHL−エステル)、モノ−ジ−トリグリセリド(MONO/DI/TRI)、及び植物ステロールもまた参照として分析された。遊離脂肪酸の同定もまた、示されている。
【図28】カンジダ・パラプシロシス由来の脂質アシルトランスフェラーゼのアミノ酸配列である配列番号17を示すものである。
【図29】カンジダ・パラプシロシス由来の脂質アシルトランスフェラーゼのアミノ酸配列である配列番号18を示すものである。
【図30】アラインメント1を示すものである。
【図31】Scoe1NCBIタンパク質アクセッションコードCAB39707.1 GI:4539178保存されている、立体構造は解かれたけれども機能がわからないタンパク質[ストレプトマイセス・コレリコロルA3(2)]配列番号19を示すものである。
【図32】アエロモナス・ハイドロフィラ脂質アシルトランスフェラーゼ遺伝子の突然変異生成のために使用される融合構築物のアミノ酸配列(配列番号25)を示すものである。下線の引かれたアミノ酸は、キシラナーゼ(xylanase)のシグナルペプチドである。
【図33】ストレプトマイセス由来の脂質アシルトランスフェラーゼ酵素のポリペプチド配列(配列番号26)を示すものである。
【図34】サーモビフィダ由来の脂質アシルトランスフェラーゼ酵素のポリペプチド配列(配列番号27)を示すものである。
【図35】サーモビフィダ由来の脂質アシルトランスフェラーゼ酵素のポリペプチド配列(配列番号28)を示すものである。
【図36】コリネバクテリウム・エフィシェンスGDSx 300アミノ酸由来の脂質アシルトランスフェラーゼ酵素のポリペプチド(配列番号29)を示すものである。
【図37】ノボスフィンゴビウム・アロマチシボランス(Novosphingobium aromaticivorans)GDSx284アミノ酸由来の脂質アシルトランスフェラーゼ酵素のポリペプチド(配列番号30)を示すものである。
【図38】ストレプトマイセス・コレリコロルGDSx269aa由来の脂質アシルトランスフェラーゼ酵素のポリペプチド(配列番号31)を示すものである。
【図39】ストレプトマイセス・アベルミチリス/GDSx269アミノ酸由来の脂質アシルトランスフェラーゼ酵素のポリペプチド(配列番号32)を示すものである。
【図40】ストレプトマイセス由来の脂質アシルトランスフェラーゼ酵素のポリペプチド(配列番号33)を示すものである。
【図41】活性部位にグリセロールを有する1IVN.PDB結晶構造のリボン表現(ribbon representation)を示すものである。図は、Deep View Swiss−PDB viewerを使用して作成された。
【図42】Deep View Swiss−PDB viewerを使用した、活性部位にグリセロールを有する1IVN.PDB結晶構造―側面を示すものである。グリセロールの活性部位から10Å以内にある残基は、黒く塗られている。
【図43】アラインメント2を示すものである。
【図44】生物アエロモナス・ハイドロフィラ(P10480;GI121051)(明白に、これは成熟配列である。)から得られたアミノ酸配列(配列番号34)を示すものである。
【図45】アエロモナス・サルモニシダ成熟脂質アシルトランスフェラーゼ(GCAT)(明白に、これは成熟配列である。)の変異体のアミノ酸配列(配列番号35)を示すものである。
【図46】ストレプトマイセス・サーモサッカリ由来のヌクレオチド配列(配列番号36)を示すものである。
【図47】ストレプトマイセス・サーモサッカリ由来のアミノ酸配列(配列番号37)を示すものである。
【図48】サーモビフィダ・フスカ/GDSx548アミノ酸由来のアミノ酸配列(配列番号38)を示すものである。
【図49】サーモビフィダ・フスカ由来のヌクレオチド配列(配列番号39)を示すものである。
【図50】サーモビフィダ・フスカ/GDSx由来のアミノ酸配列(配列番号40)を示すものである。
【図51】コリネバクテリウム・エフィシェンス/GDSx300アミノ酸由来のアミノ酸配列(配列番号41)を示すものである。
【図52】コリネバクテリウム・エフィシェンス由来のヌクレオチド配列(配列番号42)を示すものである。
【図53】ストレプトマイセス・コレリコロル/GDSx268アミノ酸由来のアミノ酸配列(配列番号43)を示すものである。
【図54】ストレプトマイセス・コレリコロル由来のヌクレオチド配列(配列番号44)を示すものである。
【図55】ストレプトマイセス・アベルミチリス由来のアミノ酸配列(配列番号45)を示すものである。
【図56】ストレプトマイセス・アベルミチリス由来のヌクレオチド配列(配列番号46)を示すものである。
【図57】サーモビフィダ・フスカ/GDSx由来のアミノ酸配列(配列番号47)を示すものである。
【図58】サーモビフィダ・フスカ/GDSx由来のヌクレオチド配列(配列番号48)を示すものである。
【図59】表6により、粗大豆油の試料を酵素で処理した反応生成物のTLC(溶媒4)を示すものである。対照として、ホスファチジルコリン(PC)もまた分析された。PEホスファチジルエタノールアミン(PE)とリゾホスファチジルコリン(LPC)もまた、示されている。
【図60】表6により、粗大豆油の試料を酵素で処理した反応生成物のTLC(溶媒5)を示すものである。コレステロールエステル、モノ−ジ−トリグリセリドと植物ステロールが対照とされている。遊離脂肪酸(FFA)もまた、示されている。
【図61】L131のアラインメントを示し、ストレプトマイセス・アベルミチリス及びサーモビフィダ・フスカ由来の相同物は、GDSxモチーフ(L131及びストレプトマイセス・アベルミチリス及びサーモビフィダ・フスカにおけるGDSY)、GGNDA又はGGNDLいずれかのGANDYボックス、及びHPTブロック(保存された触媒的ヒスタジンとみなされている)の保存を説明する。これらの3つの保存されたブロックは、ハイライトされている。
【0452】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン脂質の大部分からアシル基を、一又は二以上のアシル受容体に転移するための、脂質アシルトランスフェラーゼによる食用油の処理を含むことを特徴とする、食用油を酵素的に脱ガムする方法。
【請求項3】
アシル受容体が、ヒドロキシ基を含むいずれかの化合物である請求項1記載の方法。
【請求項4】
アシル受容体が、水である請求項1記載の方法。
【請求項5】
アシル受容体が、一又は二以上のステロール及び/又はスタロールである請求項1及び2記載の方法。
【請求項6】
ステロールエステル及び/又はスタロールエステルが形成される、請求項4記載の方法。
【請求項7】
アシル受容体が、ステロールである、請求項4記載の方法。
【請求項8】
リン脂質がレシチンである、請求項1〜7いずれか記載の方法。
【請求項9】
脂質アシルトランスフェラーゼが、脂質からステロール及び/又はスタノールにアシル基を転移できると同様に、加えて、脂質から一又は二以上の炭水化物、タンパク質、タンパク質サブユニット、及びグリセロールにアシル基を転移する、請求項4〜6いずれか記載の方法。
【請求項10】
脂質アシルトランスフェラーゼが、天然の脂質アシルトランスフェラーゼである、請求項1〜9いずれか記載の方法。
【請求項11】
脂質アシルトランスフェラーゼが、脂質アシルトランスフェラーゼの変異体である、請求項1〜10いずれか記載の方法。
【請求項12】
脂質アシルトランスフェラーゼが、以下の属、即ちアエロモナス、ストレプトマイセス、サッカロミセス、ラクトコッカス、マイコバクテリウム、ストレプトコッカス、ラクトバチルス、デサルフィトバクテリウム、バチルス、カンピロバクター、ビブリオナシエ、キシレラ、スルフォロブス、アスペルギルス、シゾサッカロミセス、リステリア、ナイセリア、メソルヒゾビウム、ラルストニア、ザントモナス、カンジダ、サーモビフィダ、及びコリネバクテリウムの、一又は二以上に由来する生物から得ることができる、請求項1〜11いずれか記載の方法。
【請求項13】
脂質アシルトランスフェラーゼが、アエロモナス・ハイドロフィラ、アエロモナス・サルモニシダ、ストレプトマイセス・コレリコロル、ストレプトマイセス・リモスス、ストレプトマイセス・サーモサッカリ、ストレプトマイセス・アベルミチリス、マイコバクテリウム、ストレプトコッカス・ピオゲネス、ラクトコッカス・ラクティス、ストレプトコッカス・ピオゲネス、ストレプトコッカス・サーモフィルス、ラクトバチルス・ヘルべティカス、デサルフィトバクテリウム・デハロゲナンス、バチルス種、カンピロバクター・ジェジュニ、ビブリオナシエ、キシレラ・ファスティディオサ、スルフォロブス・ソルファタリクス、サッカロミセス・セルビシエ、アスペルギルス・テレウス、シゾサッカロミセス・ポンベ、リステリア・イノキュア、リステリア・モノサイトゲネス、ナイセリア・メニンギチジス、メソルヒゾビウム・ロティ、ラルストニア・ソラナセアラム、ザントモナス・カンペストリス、ザントモナス・アクソノポディス、カンジダ・パラプシロシス、サーモビフィダ・フスカ、及びコリネバクテリウム・エフィシェンスの、一又は二以上から得ることができる、請求項1〜12いずれか記載の方法。
【請求項14】
脂質アシルトランスフェラーゼが、
(a)脂質アシルトランスフェラーゼが、脂質アシル供与体の元のエステル結合のアシル部分が、新しいエステルを形成するためにアシル受容体に転移される、エステル転移活性として定義されるアシルトランスフェラーゼ活性を有すること、及び
(b)酵素が、アミノ酸配列モチーフGDSXを含み、Xが、以下のアミノ酸残基、L、A、V、I、F、Y、H、Q、T、N、M、又はSの一又は二以上であること、
を特徴とする請求項1〜13いずれか記載の方法。
【請求項15】
GDSXモチーフのXがLである、請求項14記載の方法。
【請求項16】
脂質アシルトランスフェラーゼが、以下のアミノ酸配列、即ち配列番号1、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号36、配列番号38、配列番号40、配列番号41、配列番号45、配列番号47、配列番号50、又はこれらの配列と75%若しくはそれ以上の同一性を有するアミノ酸配列の、一又は二以上を含む、請求項1〜15いずれか記載の方法。
【請求項17】
脂質アシルトランスフェラーゼが、以下のアミノ酸配列、即ち配列番号3、配列番号4、配列番号1、配列番号15、又は配列番号15、又はこれらの配列と75%若しくはそれ以上の同一性を有するアミノ酸配列の、一又は二以上を含む、請求項16記載の方法。
【請求項18】
脂質アシルトランスフェラーゼが、以下のアミノ酸配列、即ち配列番号36、配列番号38、配列番号40、配列番号41、配列番号45、配列番号47、配列番号50、又はこれらの配列と少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列の、一又は二以上を含む、請求項16記載の方法。
【請求項19】
脂質アシルトランスフェラーゼが、配列番号17、配列番号18、又はこれらの配列と70%若しくはそれ以上の相同性があるアミノ酸配列の、一又は二以上を含む、請求項16記載の方法。
【請求項20】
脂質アシルトランスフェラーゼが、配列番号16で示されるアミノ酸配列、又はこの配列と75%若しくはそれ以上の相同性があるアミノ酸配列を含む、請求項16記載の方法。
【請求項21】
脂質アシルトランスフェラーゼが、配列番号16に示されるアミノ酸配列を含む、請求項16記載の方法。
【請求項22】
脂質アシルトランスフェラーゼが、酵素がアミノ酸配列モチーフGDSXを含み、Xが、以下のアミノ酸残基、L、A、V、I、F、Y、H、Q、T、N、M、又はSの一又は二以上であり、且つ酵素の変異体が、セット2、又はセット4、又はセット6、又はセット7において定義されるアミノ酸残基の、一又は二以上のいずれかにおいて、親配列と比較して一又は二以上のアミノ酸変異を含むことを特徴とする請求項10記載の方法。
【請求項23】
脂質アシルトランスフェラーゼが、配列番号34の配列アラインメントにより同定された、セット2、又はセット4、又はセット6、又はセット7において定義されるアミノ酸残基の、一又は二以上のいずれかにおいて、一若しくは二以上のアミノ酸の変異を除いた、配列番号34、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号19、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号1、配列番号15、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、又は配列番号33に示されるアミノ酸配列の1つを含む、請求項22記載の方法。
【請求項24】
脂質アシルトランスフェラーゼが、セット2、又はセット4、又はセット6、又はセット7において定義されるアミノ酸残基の一又は二以上のいずれかにおいて、一若しくは二以上のアミノ酸の変異を除いた、配列番号34又は配列番号35に示される配列を含む、請求項23記載の方法。
【請求項25】
脂質アシルトランスフェラーゼが、配列番号16に示されるアミノ酸配列、又はこの配列と75%若しくはそれ以上の相同性があるアミノ酸配列を含む、請求項10、23又は24記載の方法。
【請求項26】
脂質アシルトランスフェラーゼが、配列番号16に示されるアミノ酸配列を含む、請求項10、23又は24記載の方法。
【請求項27】
処理する間の食用油中の水分が1%未満である、請求項1〜26いずれか記載の方法。
【請求項28】
水分が0.5%未満である、請求項27記載の方法。
【請求項29】
水分が0.1%未満である、請求項28記載の方法。
【請求項30】
脂質アシルトランスフェラーゼの作用で形成されたリゾリン脂質の濾過による除去を含む、請求項1〜29いずれか記載の方法。
【請求項31】
食用油の脱ガムにおいて、リン脂質を除去し、また選択的には、油において、ステロールエステル及び/又はスタノールエステルの形成を増加させるための、脂質アシルトランスフェラーゼの使用。
【請求項32】
処理後に、油中の遊離脂肪酸の顕著な増加がない、請求項31記載の使用。
【請求項33】
リン脂質がレシチンである、請求項31又は32記載の使用。
【請求項34】
脂質アシルトランスフェラーゼが、天然脂質アシルトランスフェラーゼである、請求項31〜33いずれか記載の使用。
【請求項35】
脂質アシルトランスフェラーゼが、脂質アシルトランスフェラーゼの変異体である、請求項31〜33いずれか記載の使用。
【請求項36】
脂質アシルトランスフェラーゼが、以下の属、即ちアエロモナス、ストレプトマイセス、サッカロミセス、ラクトコッカス、マイコバクテリウム、ストレプトコッカス、ラクトバチルス、デサルフィトバクテリウム、バチルス、カンピロバクター、ビブリオナシエ、キシレラ、スルフォロブス、アスペルギルス、シゾサッカロミセス、リステリア、ナイセリア、メソルヒゾビウム、ラルストニア、ザントモナス、カンジダ、サーモビフィダ、及びコリネバクテリウムの、一又は二以上に由来する生物から得ることができる、請求項31〜35いずれか記載の使用。
【請求項37】
脂質アシルトランスフェラーゼが、アエロモナス・ハイドロフィラ、アエロモナス・サルモニシダ、ストレプトマイセス・コエリコロル、ストレプトマイセス・リモスス、ストレプトマイセス・サーモサッカリ、ストレプトマイセス・アベルミチリス、マイコバクテリウム、ストレプトコッカス・ピオゲネス、ラクトコッカス・ラクティス、ストレプトコッカス・ピオゲネス、ストレプトコッカス・サーモフィルス、ラクトバチルス・ヘルベティカス、デサルフィトバクテリウム・デハロゲナンス、バチルス種、カンピロバクター・ジェジュニ、ビブリオナシエ、キシレラ・ファスティディオサ、スルフォロブス・ソルファタリクス、サッカロミセス・セルビシエ、アスペルギルス・テレウス、シゾサッカロミセス・ポンベ、リステリア・イノキュア、リステリア・モノサイトゲネス、ナイセリア・メニンギチジス、メソルヒゾビウム・ロティ、ラルストニア・ソラナセアラム、ザントモナス・カンペストリス、ザントモナス・アクソノポディス、カンジダ・パラプシロシス、サーモビフィダ・フスカ、及びコリネバクテリウム・エフィシェンスの、一又は二以上から得ることができる、請求項31〜36いずれか記載の使用。
【請求項38】
脂質アシルトランスフェラーゼが、
(iii)脂質アシルトランスフェラーゼが、脂質アシル供与体の元のエステル結合のアシル部分が、新しいエステルを形成するためにアシル受容体に転移される、エステル転移活性として定義されるアシルトランスフェラーゼ活性を有すること、及び
(iv)酵素が、アミノ酸配列モチーフGDSXを含み、Xが、以下のアミノ酸残基、L、A、V、I、F、Y、H、Q、T、N、M、又はSの一又は二以上であること
を特徴とする請求項31〜37いずれか記載の使用。
【請求項39】
GDSXモチーフのXがLである、請求項38記載の使用。
【請求項40】
脂質アシルトランスフェラーゼが、以下のアミノ酸配列、即ち配列番号1、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号36、配列番号38、配列番号40、配列番号41、配列番号45、配列番号47、又は配列番号50、又はこれらの配列と75%若しくはそれ以上の同一性を有するアミノ酸配列の、一又は二以上を含む、請求項31〜39いずれか記載の使用。
【請求項41】
脂質アシルトランスフェラーゼが、以下のアミノ酸配列、即ち配列番号3、配列番号4、配列番号1、配列番号15、又は配列番号15、又はこれらの配列と75%若しくはそれ以上の同一性を有するアミノ酸配列の、一又は二以上を含む、請求項40記載の使用。
【請求項42】
脂質アシルトランスフェラーゼが、以下のアミノ酸配列、即ち配列番号36、配列番号38、配列番号40、配列番号41、配列番号45、配列番号47、配列番号50、又はこれらの配列と少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列の、一又は二以上を含む、請求項40記載の使用。
【請求項43】
脂質アシルトランスフェラーゼが、配列番号17、配列番号18、又はこれらの配列と70%若しくはそれ以上の相同性があるアミノ酸配列の、一又は二以上を含む、請求項40記載の使用。
【請求項44】
脂質アシルトランスフェラーゼが、配列番号16に示されるアミノ酸配列、又はこの配列と75%若しくはそれ以上の相同性があるアミノ酸配列を含む、請求項40記載の使用。
【請求項45】
脂質アシルトランスフェラーゼが、配列番号16に示されるアミノ酸配列を含む、請求項40記載の使用。
【請求項46】
脂質アシルトランスフェラーゼが、酵素がアミノ酸配列モチーフGDSXを含み、Xが、以下のアミノ酸残基、L、A、V、I、F、Y、H、Q、T、N、M、又はSの一又は二以上であり、且つ酵素の変異体が、セット2、又はセット4、又はセット6、又はセット7において定義されるアミノ酸残基の、一又は二以上のいずれかにおいて、親配列と比較して一又は二以上のアミノ酸変異を含むことを特徴とする請求項35記載の使用。
【請求項47】
脂質アシルトランスフェラーゼが、配列番号34の配列アラインメントにより同定された、セット2、又はセット4、又はセット6、又はセット7において定義されるアミノ酸残基の、一又は二以上のいずれかにおいて、一若しくは二以上のアミノ酸の変異を除いた、配列番号34、配列番号35、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号19、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号1、配列番号15、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、又は配列番号33に示されるアミノ酸配列の一つを含む、請求項46記載の使用。
【請求項48】
脂質アシルトランスフェラーゼが、セット2、又はセット4、又はセット6、又はセット7において定義されるアミノ酸残基の一又は二以上のいずれかにおいて、一若しくは二以上のアミノ酸の変異を除いた、配列番号34又は配列番号35に示される配列を含む、請求項47記載の使用。
【請求項49】
脂質アシルトランスフェラーゼが、配列番号16で示されるアミノ酸配列、又はこの配列と75%若しくはそれ以上の相同性があるアミノ酸配列を含む、請求項35記載の使用。
【請求項50】
脂質アシルトランスフェラーゼが、配列番号16に示されるアミノ酸配列を含む、請求項49記載の使用。
【請求項51】
処理の間、食用油中の水分が1%未満である、請求項31〜50いずれか記載の使用。
【請求項52】
水分が0.5%未満である、請求項51記載の使用。
【請求項53】
水分が0.1%未満である、請求項52記載の使用。
【請求項54】
配列番号16に示されるアミノ酸を含む脂質アシルトランスフェラーゼ。
【請求項55】
本明細書及び図面に関連して記載されている脂質アシルトランスフェラーゼ。
【請求項56】
本明細書及び図面に関連して記載されている前記の方法。
【請求項57】
本明細書及び図面に関連して記載されている前記の使用。
【請求項1】
リン脂質の大部分からアシル基を、一又は二以上のアシル受容体に転移するための、脂質アシルトランスフェラーゼによる食用油の処理を含むことを特徴とする、食用油を酵素的に脱ガムする方法。
【請求項3】
アシル受容体が、ヒドロキシ基を含むいずれかの化合物である請求項1記載の方法。
【請求項4】
アシル受容体が、水である請求項1記載の方法。
【請求項5】
アシル受容体が、一又は二以上のステロール及び/又はスタロールである請求項1及び2記載の方法。
【請求項6】
ステロールエステル及び/又はスタロールエステルが形成される、請求項4記載の方法。
【請求項7】
アシル受容体が、ステロールである、請求項4記載の方法。
【請求項8】
リン脂質がレシチンである、請求項1〜7いずれか記載の方法。
【請求項9】
脂質アシルトランスフェラーゼが、脂質からステロール及び/又はスタノールにアシル基を転移できると同様に、加えて、脂質から一又は二以上の炭水化物、タンパク質、タンパク質サブユニット、及びグリセロールにアシル基を転移する、請求項4〜6いずれか記載の方法。
【請求項10】
脂質アシルトランスフェラーゼが、天然の脂質アシルトランスフェラーゼである、請求項1〜9いずれか記載の方法。
【請求項11】
脂質アシルトランスフェラーゼが、脂質アシルトランスフェラーゼの変異体である、請求項1〜10いずれか記載の方法。
【請求項12】
脂質アシルトランスフェラーゼが、以下の属、即ちアエロモナス、ストレプトマイセス、サッカロミセス、ラクトコッカス、マイコバクテリウム、ストレプトコッカス、ラクトバチルス、デサルフィトバクテリウム、バチルス、カンピロバクター、ビブリオナシエ、キシレラ、スルフォロブス、アスペルギルス、シゾサッカロミセス、リステリア、ナイセリア、メソルヒゾビウム、ラルストニア、ザントモナス、カンジダ、サーモビフィダ、及びコリネバクテリウムの、一又は二以上に由来する生物から得ることができる、請求項1〜11いずれか記載の方法。
【請求項13】
脂質アシルトランスフェラーゼが、アエロモナス・ハイドロフィラ、アエロモナス・サルモニシダ、ストレプトマイセス・コレリコロル、ストレプトマイセス・リモスス、ストレプトマイセス・サーモサッカリ、ストレプトマイセス・アベルミチリス、マイコバクテリウム、ストレプトコッカス・ピオゲネス、ラクトコッカス・ラクティス、ストレプトコッカス・ピオゲネス、ストレプトコッカス・サーモフィルス、ラクトバチルス・ヘルべティカス、デサルフィトバクテリウム・デハロゲナンス、バチルス種、カンピロバクター・ジェジュニ、ビブリオナシエ、キシレラ・ファスティディオサ、スルフォロブス・ソルファタリクス、サッカロミセス・セルビシエ、アスペルギルス・テレウス、シゾサッカロミセス・ポンベ、リステリア・イノキュア、リステリア・モノサイトゲネス、ナイセリア・メニンギチジス、メソルヒゾビウム・ロティ、ラルストニア・ソラナセアラム、ザントモナス・カンペストリス、ザントモナス・アクソノポディス、カンジダ・パラプシロシス、サーモビフィダ・フスカ、及びコリネバクテリウム・エフィシェンスの、一又は二以上から得ることができる、請求項1〜12いずれか記載の方法。
【請求項14】
脂質アシルトランスフェラーゼが、
(a)脂質アシルトランスフェラーゼが、脂質アシル供与体の元のエステル結合のアシル部分が、新しいエステルを形成するためにアシル受容体に転移される、エステル転移活性として定義されるアシルトランスフェラーゼ活性を有すること、及び
(b)酵素が、アミノ酸配列モチーフGDSXを含み、Xが、以下のアミノ酸残基、L、A、V、I、F、Y、H、Q、T、N、M、又はSの一又は二以上であること、
を特徴とする請求項1〜13いずれか記載の方法。
【請求項15】
GDSXモチーフのXがLである、請求項14記載の方法。
【請求項16】
脂質アシルトランスフェラーゼが、以下のアミノ酸配列、即ち配列番号1、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号36、配列番号38、配列番号40、配列番号41、配列番号45、配列番号47、配列番号50、又はこれらの配列と75%若しくはそれ以上の同一性を有するアミノ酸配列の、一又は二以上を含む、請求項1〜15いずれか記載の方法。
【請求項17】
脂質アシルトランスフェラーゼが、以下のアミノ酸配列、即ち配列番号3、配列番号4、配列番号1、配列番号15、又は配列番号15、又はこれらの配列と75%若しくはそれ以上の同一性を有するアミノ酸配列の、一又は二以上を含む、請求項16記載の方法。
【請求項18】
脂質アシルトランスフェラーゼが、以下のアミノ酸配列、即ち配列番号36、配列番号38、配列番号40、配列番号41、配列番号45、配列番号47、配列番号50、又はこれらの配列と少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列の、一又は二以上を含む、請求項16記載の方法。
【請求項19】
脂質アシルトランスフェラーゼが、配列番号17、配列番号18、又はこれらの配列と70%若しくはそれ以上の相同性があるアミノ酸配列の、一又は二以上を含む、請求項16記載の方法。
【請求項20】
脂質アシルトランスフェラーゼが、配列番号16で示されるアミノ酸配列、又はこの配列と75%若しくはそれ以上の相同性があるアミノ酸配列を含む、請求項16記載の方法。
【請求項21】
脂質アシルトランスフェラーゼが、配列番号16に示されるアミノ酸配列を含む、請求項16記載の方法。
【請求項22】
脂質アシルトランスフェラーゼが、酵素がアミノ酸配列モチーフGDSXを含み、Xが、以下のアミノ酸残基、L、A、V、I、F、Y、H、Q、T、N、M、又はSの一又は二以上であり、且つ酵素の変異体が、セット2、又はセット4、又はセット6、又はセット7において定義されるアミノ酸残基の、一又は二以上のいずれかにおいて、親配列と比較して一又は二以上のアミノ酸変異を含むことを特徴とする請求項10記載の方法。
【請求項23】
脂質アシルトランスフェラーゼが、配列番号34の配列アラインメントにより同定された、セット2、又はセット4、又はセット6、又はセット7において定義されるアミノ酸残基の、一又は二以上のいずれかにおいて、一若しくは二以上のアミノ酸の変異を除いた、配列番号34、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号19、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号1、配列番号15、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、又は配列番号33に示されるアミノ酸配列の1つを含む、請求項22記載の方法。
【請求項24】
脂質アシルトランスフェラーゼが、セット2、又はセット4、又はセット6、又はセット7において定義されるアミノ酸残基の一又は二以上のいずれかにおいて、一若しくは二以上のアミノ酸の変異を除いた、配列番号34又は配列番号35に示される配列を含む、請求項23記載の方法。
【請求項25】
脂質アシルトランスフェラーゼが、配列番号16に示されるアミノ酸配列、又はこの配列と75%若しくはそれ以上の相同性があるアミノ酸配列を含む、請求項10、23又は24記載の方法。
【請求項26】
脂質アシルトランスフェラーゼが、配列番号16に示されるアミノ酸配列を含む、請求項10、23又は24記載の方法。
【請求項27】
処理する間の食用油中の水分が1%未満である、請求項1〜26いずれか記載の方法。
【請求項28】
水分が0.5%未満である、請求項27記載の方法。
【請求項29】
水分が0.1%未満である、請求項28記載の方法。
【請求項30】
脂質アシルトランスフェラーゼの作用で形成されたリゾリン脂質の濾過による除去を含む、請求項1〜29いずれか記載の方法。
【請求項31】
食用油の脱ガムにおいて、リン脂質を除去し、また選択的には、油において、ステロールエステル及び/又はスタノールエステルの形成を増加させるための、脂質アシルトランスフェラーゼの使用。
【請求項32】
処理後に、油中の遊離脂肪酸の顕著な増加がない、請求項31記載の使用。
【請求項33】
リン脂質がレシチンである、請求項31又は32記載の使用。
【請求項34】
脂質アシルトランスフェラーゼが、天然脂質アシルトランスフェラーゼである、請求項31〜33いずれか記載の使用。
【請求項35】
脂質アシルトランスフェラーゼが、脂質アシルトランスフェラーゼの変異体である、請求項31〜33いずれか記載の使用。
【請求項36】
脂質アシルトランスフェラーゼが、以下の属、即ちアエロモナス、ストレプトマイセス、サッカロミセス、ラクトコッカス、マイコバクテリウム、ストレプトコッカス、ラクトバチルス、デサルフィトバクテリウム、バチルス、カンピロバクター、ビブリオナシエ、キシレラ、スルフォロブス、アスペルギルス、シゾサッカロミセス、リステリア、ナイセリア、メソルヒゾビウム、ラルストニア、ザントモナス、カンジダ、サーモビフィダ、及びコリネバクテリウムの、一又は二以上に由来する生物から得ることができる、請求項31〜35いずれか記載の使用。
【請求項37】
脂質アシルトランスフェラーゼが、アエロモナス・ハイドロフィラ、アエロモナス・サルモニシダ、ストレプトマイセス・コエリコロル、ストレプトマイセス・リモスス、ストレプトマイセス・サーモサッカリ、ストレプトマイセス・アベルミチリス、マイコバクテリウム、ストレプトコッカス・ピオゲネス、ラクトコッカス・ラクティス、ストレプトコッカス・ピオゲネス、ストレプトコッカス・サーモフィルス、ラクトバチルス・ヘルベティカス、デサルフィトバクテリウム・デハロゲナンス、バチルス種、カンピロバクター・ジェジュニ、ビブリオナシエ、キシレラ・ファスティディオサ、スルフォロブス・ソルファタリクス、サッカロミセス・セルビシエ、アスペルギルス・テレウス、シゾサッカロミセス・ポンベ、リステリア・イノキュア、リステリア・モノサイトゲネス、ナイセリア・メニンギチジス、メソルヒゾビウム・ロティ、ラルストニア・ソラナセアラム、ザントモナス・カンペストリス、ザントモナス・アクソノポディス、カンジダ・パラプシロシス、サーモビフィダ・フスカ、及びコリネバクテリウム・エフィシェンスの、一又は二以上から得ることができる、請求項31〜36いずれか記載の使用。
【請求項38】
脂質アシルトランスフェラーゼが、
(iii)脂質アシルトランスフェラーゼが、脂質アシル供与体の元のエステル結合のアシル部分が、新しいエステルを形成するためにアシル受容体に転移される、エステル転移活性として定義されるアシルトランスフェラーゼ活性を有すること、及び
(iv)酵素が、アミノ酸配列モチーフGDSXを含み、Xが、以下のアミノ酸残基、L、A、V、I、F、Y、H、Q、T、N、M、又はSの一又は二以上であること
を特徴とする請求項31〜37いずれか記載の使用。
【請求項39】
GDSXモチーフのXがLである、請求項38記載の使用。
【請求項40】
脂質アシルトランスフェラーゼが、以下のアミノ酸配列、即ち配列番号1、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号36、配列番号38、配列番号40、配列番号41、配列番号45、配列番号47、又は配列番号50、又はこれらの配列と75%若しくはそれ以上の同一性を有するアミノ酸配列の、一又は二以上を含む、請求項31〜39いずれか記載の使用。
【請求項41】
脂質アシルトランスフェラーゼが、以下のアミノ酸配列、即ち配列番号3、配列番号4、配列番号1、配列番号15、又は配列番号15、又はこれらの配列と75%若しくはそれ以上の同一性を有するアミノ酸配列の、一又は二以上を含む、請求項40記載の使用。
【請求項42】
脂質アシルトランスフェラーゼが、以下のアミノ酸配列、即ち配列番号36、配列番号38、配列番号40、配列番号41、配列番号45、配列番号47、配列番号50、又はこれらの配列と少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列の、一又は二以上を含む、請求項40記載の使用。
【請求項43】
脂質アシルトランスフェラーゼが、配列番号17、配列番号18、又はこれらの配列と70%若しくはそれ以上の相同性があるアミノ酸配列の、一又は二以上を含む、請求項40記載の使用。
【請求項44】
脂質アシルトランスフェラーゼが、配列番号16に示されるアミノ酸配列、又はこの配列と75%若しくはそれ以上の相同性があるアミノ酸配列を含む、請求項40記載の使用。
【請求項45】
脂質アシルトランスフェラーゼが、配列番号16に示されるアミノ酸配列を含む、請求項40記載の使用。
【請求項46】
脂質アシルトランスフェラーゼが、酵素がアミノ酸配列モチーフGDSXを含み、Xが、以下のアミノ酸残基、L、A、V、I、F、Y、H、Q、T、N、M、又はSの一又は二以上であり、且つ酵素の変異体が、セット2、又はセット4、又はセット6、又はセット7において定義されるアミノ酸残基の、一又は二以上のいずれかにおいて、親配列と比較して一又は二以上のアミノ酸変異を含むことを特徴とする請求項35記載の使用。
【請求項47】
脂質アシルトランスフェラーゼが、配列番号34の配列アラインメントにより同定された、セット2、又はセット4、又はセット6、又はセット7において定義されるアミノ酸残基の、一又は二以上のいずれかにおいて、一若しくは二以上のアミノ酸の変異を除いた、配列番号34、配列番号35、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号19、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号1、配列番号15、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、又は配列番号33に示されるアミノ酸配列の一つを含む、請求項46記載の使用。
【請求項48】
脂質アシルトランスフェラーゼが、セット2、又はセット4、又はセット6、又はセット7において定義されるアミノ酸残基の一又は二以上のいずれかにおいて、一若しくは二以上のアミノ酸の変異を除いた、配列番号34又は配列番号35に示される配列を含む、請求項47記載の使用。
【請求項49】
脂質アシルトランスフェラーゼが、配列番号16で示されるアミノ酸配列、又はこの配列と75%若しくはそれ以上の相同性があるアミノ酸配列を含む、請求項35記載の使用。
【請求項50】
脂質アシルトランスフェラーゼが、配列番号16に示されるアミノ酸配列を含む、請求項49記載の使用。
【請求項51】
処理の間、食用油中の水分が1%未満である、請求項31〜50いずれか記載の使用。
【請求項52】
水分が0.5%未満である、請求項51記載の使用。
【請求項53】
水分が0.1%未満である、請求項52記載の使用。
【請求項54】
配列番号16に示されるアミノ酸を含む脂質アシルトランスフェラーゼ。
【請求項55】
本明細書及び図面に関連して記載されている脂質アシルトランスフェラーゼ。
【請求項56】
本明細書及び図面に関連して記載されている前記の方法。
【請求項57】
本明細書及び図面に関連して記載されている前記の使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【図51】
【図52】
【図53】
【図54】
【図55】
【図56】
【図57】
【図58】
【図59】
【図60】
【図61】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【図51】
【図52】
【図53】
【図54】
【図55】
【図56】
【図57】
【図58】
【図59】
【図60】
【図61】
【公表番号】特表2008−506381(P2008−506381A)
【公表日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−520902(P2007−520902)
【出願日】平成17年7月18日(2005.7.18)
【国際出願番号】PCT/GB2005/002823
【国際公開番号】WO2006/008508
【国際公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【出願人】(397060588)ダニスコ エイ/エス (67)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年7月18日(2005.7.18)
【国際出願番号】PCT/GB2005/002823
【国際公開番号】WO2006/008508
【国際公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【出願人】(397060588)ダニスコ エイ/エス (67)
【Fターム(参考)】
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