説明

飲み口用キャップおよびマドラー

【課題】 衛生的で使い勝手がよい飲み口用キャップと、このキャップが取付けられるマドラーを提供する。
【解決手段】飲み口用開口6を有する蓋体4を備えたコップ1に使用されるマドラー10および飲み口用キャップ13であって、キャップ13を蓋体4の飲み口用開口6に差し込まれる栓体部17と、この栓体部17の上部に一体に設けられ飲み口用開口6の周縁部上面に密接する鍔部18と、この鍔部18の上部に一体に設けられた把持部19とで構成する。栓体部17は、下面にマドラー10の接続部14が分離可能に差し込まれる接続孔を有する。把持部19は、各種カード、メモ等の薄状物30を挟持する挟持片19A,19Bを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲み口用開口を有する蓋体を備えたコップとともに使用される飲み口用キャップおよびマドラーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
店でコーヒー、紅茶、ココアなどの飲料を使い捨てのコップに入れてお客に提供する場合、特に持ち帰りのお客に対しては、蓋をした状態で飲むための便を図るために、飲み口用の開口を有する蓋体によってコップの開口部を閉塞した状態で提供している。その場合、蓋体の飲み口用開口を通常シールで密閉し、持ち帰りの途中や車内でコップ内の飲料が飲み口用開口からこぼれ出さないようにしている。
【0003】
一方、飲料入りコップの付属品として提供されコーヒーなどの飲料の掻き混ぜに使用されるマドラーとしては、従来から種々提案されている(例えば、引用文献1〜3参照)。
【0004】
引用文献1に記載されているマドラーは、その上部にメモ等を挟むためのホルダー部を設けたものである。
【0005】
引用文献2に記載されているマドラーは、棒状のマドラー本体の一方の先端に掻き混ぜ部を設け、他方の先端にヒンジを介して折畳み自在な左ヒンジ部と右ヒンジ部とを設け、不使用時に左ヒンジ部と右ヒンジ部を折り畳んで短くし、コップの中に収納できるようにしたものである。
【0006】
引用文献3に記載されているマドラーは、飲み口用の開口を有する蓋体を備えたコップとともに使用されるマドラーに関するもので、飲料を撹拌する機能に加えて、蓋体の飲み口用開口をシールする機能を持たせたものである。このため、このマドラーは、蓋体の飲み口用開口の上端に係合する鍔と、この鍔に続いて設けられ飲み口用開口と略同じ断面を有する嵌合部とからなる開口密閉部を備え、この開口密閉部によって前記飲み口用開口を閉塞しておくと、持ち運ぶ途中でコップ内の飲料が蓋体の飲み口用開口からこぼれ出す心配がなく、安心して持ち運ぶことができるとしている。
【0007】
【特許文献1】特開平09−140538号公報
【特許文献2】特開2001−252166号公報
【特許文献3】特開2001−120414号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、蓋体の飲み口用開口を封止するシールは、シールを蓋体から剥がすとき、シールの裏面側に塗布されている接着剤がシールから剥がれて蓋体の表面側に残るとゴミ等が付着しやすく不衛生であるばかりか、口をコップの口当て部に当ててコップ内の飲料を飲むとき、口が接着剤に接触するとべとついて気持ちが悪く、味覚を低下させる。また、シールを剥がすとき、指が蓋体の口当て部や飲み口用開口に触れると、口当て部や飲み口用開口が汚るため不衛生である。
【0009】
また、シールによって飲み口用開口を密閉するとき、シール面全体が濡れてしまったり、あるいはシールを頻繁に着脱していると接着剤が効かなくなるため、新しいものと交換する必要があるなどの問題があった。
【0010】
特許文献1および特許文献2に記載されているマドラーは、蓋体の飲み口用開口を閉塞する機能を備えていないので、持ち帰りのお客に対しては、飲み口用開口を前述したシールによって閉塞せざるを得ず、上記した問題が生じる。
【0011】
特許文献3に記載されているマドラーは、開口密閉部を備えているので蓋体の飲み口用開口を閉塞することができるが、この開口密閉部はある特定の大きさの開口に対応するように形成されているため、サイズが異なる蓋体の飲み口用開口に対しては用いることができず、汎用性に欠けるという問題があった。すなわち、コップは通常高さおよび開口径が異なる大中小の3種類がある。このため、これに応じて蓋体のサイズ、さらには蓋体の飲み口用開口の大きさも異なり、サイズが異なる蓋体毎にマドラーを用意すると、その種類が増加し、製造コストが高くなる。したがって、各種サイズの蓋体に対して共通に使用することができる汎用性の高いマドラーの開発が要請されている。
【0012】
さらに、最近ではコーヒーの愛飲家の中では、健康上の理由等から砂糖やミルクを用いずブラックで飲む愛飲家の割合が増加してきているため、このような愛飲家にとってはマドラーを使用する必要性がなく、蓋体の飲み口用開口のシールのみが問題となる。しかしながら、現状では前述した接着タイプのシールしかなく、蓋体の飲み口用開口を閉塞する衛生的な飲み口用キャップの開発が要請されている。
【0013】
本発明は、上記した従来の問題および要請に応えるべくなされたものであり、その目的とするところは、衛生的で使い勝手がよく、必要に応じてマドラーに取付けられて使用することができる飲み口用キャップを提供することにある。
【0014】
また、本発明は、必要に応じて前記飲み口用キャップを取付けて使用することができ、お客の嗜好、飲み方等に対応したきめの細かいサービスを可能にしたマドラーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために第1の発明は、飲み口用開口を有する蓋体を備えたコップに使用される飲み口用キャップであって、前記蓋体の飲み口用開口に差し込まれる栓体部と、この栓体部の上部に一体に設けられ前記飲み口用開口の周縁部上面に密接する鍔部と、この鍔部の上部に一体に設けられた把持部とを備え、前記栓体部の下部にマドラーが分離可能に接続される接続孔を設け、前記把持部に、差し込み口が上方に位置し各種カード、メモ等の薄状物を挟持する挾持片を設けたものである。
【0016】
第2の発明は、前記第1の発明に係る飲み口用キャップにおいて、前記栓体部がサイズの最も小さい蓋体に形成されている飲み口用開口に対して挿入可能な大きさおよび形状をもって形成され、前記鍔部が各種サイズの蓋体の飲み口用開口に対応して上方に向かって大きくなるように段状に形成されており、対応する飲み口用開口の周縁部上面に接触することによりコップ内へのキャップの落下を防止する複数の鍔部で構成されているものである。
【0017】
第3の発明は、飲み口用開口を有する蓋体を備えたコップに使用されるマドラーにおいて、下部に掻き混ぜ部を有するマドラー本体の上部を前記請求項1または2に記載の飲み口用キャップの接続孔に分離可能に接続したものである。
【発明の効果】
【0018】
第1の発明に係る飲み口用キャップによれば、把持部を把持して栓体部を蓋体の飲み口用開口に挿入し、鍔部を前記開口の周縁部表面に密接するだけで飲み口用開口を閉塞することができるので、シールを用いる必要がなく、飲み口用開口を確実に閉塞することができ、コップ内の飲料がこぼれ出るのを防止することができる。また、把持部を備えているので、取り扱いが容易で、蓋体の口当て部や飲み口用開口を汚したりするおそれがなく衛生的である。
また、把持部の挟持片によって各種カード、メモ等の薄状物を挟持しておくと、お客へのきめ細かな各種サービス、案内等を提供することができる。薄状物としては、クーポン券、ウエイティングカード、インフォメーションカード、広告、サービス券等が考えられる。
【0019】
第2の発明に係る飲み口用キャップによれば、最もサイズの小さい蓋体の飲み口用開口に対して挿入可能な栓体部と、各種サイズの蓋体の飲み口用開口に対応した複数の鍔部を有しているので、各種サイズの蓋体に対して共通に使用することができ、キャップの種類を削減することができる。
【0020】
第3の発明に係るマドラーによれば、前記第1または第2の発明に係る飲み口用キャップを分離可能に接続して使用すると、シールを必要とせず、衛生的で飲み口用開口を確実に閉塞することができ、コップ内の飲料がこぼれ出るのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を図面に示す実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明に係る飲み口用キャップを備えたマドラーの一実施の形態を示す外観斜視図、図2は同マドラーと飲み口用キャップを分離した状態を示す正面図、図3は同マドラーを蓋体の飲み口用開口からコップ内に差し込んだ状態を示す外観斜視図、図4は同マドラーを蓋体の飲み口用開口からコップ内に差し込んだ状態を示す一部破断正面図である。これらの図において、参照符号1で示すものはコーヒー等の飲料2を収容する紙またはプラスチックからなる使い捨てのコップで、ラージサイズ(L)、ミディアムサイズ(M)、スモールサイズ(S)の3種類があり、サイズが大きくなるにしたがって高さおよび開口部3の径が大きくなっている。コップ1の上端は、断面円形または楕円形になるように外側に折り返されることにより、折り返し部1aを形成している。
【0022】
4はコップ1の開口部3を覆う紙またはプラスチック製の蓋体で、この蓋体4は上面中央に凹陥部5を有する円筒状の口当て部4Aと、この口当て部4Aの下端に続いてこれより大きな外径をもって一体に延設され前記コップ1の外周面上端部に嵌合することにより前記開口部3を覆う環状の周縁部4Bとで構成されている。口当て部4Aの上面には、蓋体4の内外を連通させる周方向に長い飲み口用の開口6と空気抜き用の小孔7とが形成されている。前記飲み口用開口6は、蓋体4によってコップ1の開口部3を閉塞した状態でコップ1内の飲料2を飲む際の飲み口として用いられる。小孔7は、前記飲み口用開口6と対向するように周方向に180°離間した位置に形成されている。
【0023】
蓋体4の周縁部4Bは、断面形状が略S字状に形成されることにより、内面側に前記コップ1の上端折り返し部1aを係止する係止部8を有している。係止部8は、周縁部4Bの内面に形成された環状溝で構成されており、コップ1の上端折り返し部1aが下方から押し込まれることによりコップ1と蓋体4が容易に外れないようにしている。また、コップ1の上端折り返し部1aと係止部8とは、互いに密接することによりコップ1の開口部3をシールし、内部の飲料2がこぼれ出ないようにしている。
【0024】
このような蓋体4は、コップ1のサイズに合わせて形成されることにより、コップ1と同様にラージサイズ、ミディアムサイズ、スモールサイズの3種類が用意される。蓋体4の飲み口用開口6の大きさは、蓋体4のサイズに応じて異なり、サイズが大きくなるにしたがって長さおよび幅が大きくなっている。因みに、飲み口用開口6の大きさは、ラージサイズの蓋体で13×8mm、ミディアムサイズの蓋体で12×7mm、スモールサイズの蓋体で10×6mm程度である。
【0025】
10は前記飲み口用開口6を有する蓋体4を備えたコップ1に使用されるマドラー10で、このマドラー10は、合成樹脂製の成形品からなり、マドラー本体11と、このマドラー本体11の下部に一体に設けられた掻き混ぜ部12とで構成され、上部に飲み口用キャップ13が分離可能に接続されている。
【0026】
マドラー10に飲み口用キャップ13を分離可能に接続した理由は、お客の希望に応じて飲み口用キャップ13を一体的に備えたマドラー10を提供したり、マドラー10と飲み口用キャップ13をそれぞれ単体で提供したりすることができるようにするためである。すなわち、コーヒーをブラックのままで飲む持ち帰りのお客の場合は、マドラーを不要としないことをお客に確認した上で、マドラー10の付いていない飲み口用キャップ13によって蓋体4の飲み口用開口6を閉塞し、飲料2が入ったコップ1をお客に提供する。一方、砂糖やミルクを入れて飲む持ち帰りのお客の場合は、マドラーを必要とすることをお客に確認した上で、飲み口用キャップ13付きのマドラー10を蓋体4の飲み口用開口6に装着し、飲料2が入ったコップ1をお客に提供する。店内で飲むお客の場合は、通常蓋体4を使用しないため、飲料2が入ったコップ1と飲み口用キャップ13の付いていないマドラー10をお客に提供する。
【0027】
また、マドラー10は、図2に示すように長短2種類のマドラー10A,10Bがコップ1のサイズに応じて用意される。長いマドラー10Aは、ラージサイズのコップに使用され、短いマドラー10Bはミディアムサイズとスモールサイズのコップ1に共通に使用される。マドラー10Aとマドラー10Bの異なる点は、マドラー本体11A,11Bの長さが異なる点のみであり、その他の構成は全く同一である。マドラー本体11Aの全長は、90mm程度、マドラー本体11Bの全長は75mm程度である。
【0028】
前記マドラー本体11(11A,11B)は、幅が2.5mm程度、厚さが1.5mm程度の細長い板状に形成されており、下端にコップ1内の飲料2を掻き混ぜる前記掻き混ぜ部12が一体に設けられ、上端部が前記飲み口用キャップ13との接続部14を形成している。掻き混ぜ部12は、正面視形状が縦長の略楕円形または逆三角形で、スモールサイズの蓋体4の飲み口用開口6よりも小さく形成されている。掻き混ぜ部12の長さは、11mm程度である。接続部14は、幅2.5mm、長さ(高さ)3mm、厚さ1mm程度の突起で構成されている。
【0029】
前記飲み口用キャップ13は、前記蓋体4の飲み口用開口6に挿入される栓体部17と、この栓体部17の上部に一体に設けられた鍔部18と、この鍔部18の上部に一体に設けられた把持部19とで構成されている。
【0030】
前記栓体部17は、上端から下端に向かうにしたがって幅および厚さが徐々に減少する正面視逆台形のブロックからなり、上端の平面視形状がスモールサイズの蓋体4の飲み口用開口6と略同一の大きさかもしくはこれより若干大きく形成されている。栓体部17の下面には、前記マドラー10との接続部を構成する接続孔21が形成されている。この接続孔21はマドラー10の接続部14と略同じ大きさの矩形穴で、接続部14が圧入される。このように接続部14を接続孔21に圧入すると、マドラー10と飲み口用キャップ13を確実に接続することができ、マドラー10が飲み口用キャップ13から不測に外れてコップ1内に落下するのを防止することができる。
【0031】
前記鍔部18は、各種サイズの蓋体4に形成されている飲み口用開口6に対応して、幅および厚さが下方から上方に向かって大きくなるように段状(階段状)に形成された第1〜第3の鍔部18A,18B,18Cで構成されている。
【0032】
下方に位置する第1の鍔部18Aは、スモールサイズの蓋体4の飲み口用開口6より若干大きく形成されることにより、外周縁部が栓体部17の上側外周縁より外側に突出しており、前記栓体部17がスモールサイズの蓋体4の飲み口用開口6に挿通されると、外周縁部下面が蓋体4の上面で飲み口用開口6の周縁部に接触して飲み口用キャップ13を係止し、飲み口用キャップ13がコップ1内に落ちないようにする。
【0033】
中間に位置する第2の鍔部18Bは、ミディアムサイズの蓋体4の飲み口用開口6より若干大きく形成されることにより、外周縁部が前記第1の鍔部18Aの上側外周縁より外側に突出しており、前記栓体部17と第1の鍔部18Aがミディアムサイズの蓋体4の飲み口用開口6に挿通されると、外周縁部下面が蓋体4の上面で飲み口用開口6の周縁部に接触して飲み口用キャップ13を係止し、飲み口用キャップ13がコップ1内に落ちないようにする。
【0034】
上方に位置する第3の鍔部18A〜18Cは、ラージサイズの蓋体4の飲み口用開口6より若干大きく形成されることにより、外周縁部が前記第2の鍔部18Bの上側外周縁より外側に突出しており、前記栓体部17および第1、第2の鍔部18A,18Bがラージサイズの蓋体4の飲み口用開口6に挿通されると、外周縁部下面が蓋体4の上面で飲み口用開口6の周縁部に接触して飲み口用キャップ13を係止し、飲み口用キャップ13がコップ1内に落ちないようにする。
【0035】
第1〜第3の鍔部18Cの外周縁は、縦断面形状が半円形(または半楕円形)に形成されている。このため、第1の鍔部18Aの外周縁部上面と第2の鍔部18Bの外周縁部下面との間には、略三角形の凹み24が第1の鍔部18Aの全周にわたって形成されている。この凹み24は、ミディアムサイズの蓋体4の飲み口用開口6に第1の鍔部18Aを押し込んだとき、飲み口用開口6の縁を係止する係止部として機能する。すなわち、飲み口用開口6は、第1の鍔部18Aによって押し広げられた後、第1の鍔部18Aが飲み口用開口6を完全に通り、蓋体4の上面と第2の鍔部18Bの外周縁部下面とが密接すると、元の大きさに復帰するため、飲み口用開口6の縁部が前記凹み24に係入し、これによって飲み口用キャップ13が飲み口用開口6に係止される。同様に、第2の鍔部18Bにも、同様に外周縁の縦断面形状が半円形(または反楕円形)に形成されることにより、第2の鍔部18Bの外周縁部上面と第3の鍔部18Cの外周縁部下面との間に、ラージサイズの蓋体4の飲み口用開口6を係止する略三角形の凹み25が形成されている。さらに、栓体部17の上端外周部に同様な略三角形の凹みを全周にわたって形成しておくと、スモールサイズの蓋体4の飲み口用開口6に栓体部17を挿入したとき、前記凹みによって前記飲み口用開口6の縁部を係止することができる。
【0036】
前記把持部19は、マドラー10を蓋体4の飲み口用開口6に差し込んだり、あるいは飲み口用キャップ13を単体で取り扱うときに把持される部分であり、各種カード、メモ等の薄状物30を挟持する挾持部としての機能をも有している。このため、この把持部19は、第3の鍔部18Cの上面に上方に向かって一体に突設された板厚方向(前後方向)に弾性変形可能な一対の挟持片19A,19Bとで構成されている。後方側に位置する挟持片19Aは、前方側に位置する挟持片19Bよりも上方に高く延在するように平板状に形成されている。また、後方側の挟持片19Aは、自然状態で若干前方に傾斜するように形成されることにより、前方への復帰習性が付与されている。
【0037】
一方、前方側の挟持片19Bは、後方に向かって傾斜するように形成されることにより、後方への復帰習性が付与されている。これらの挟持片19A,19Bの復帰習性は、薄状物30が差し込まれたとき、当該薄状物3を挟持する挾持力として薄状物30に作用する。前方側の挟持片19Bの上端付近部は、薄状物30の挟持を確実にするために前記後方側挟持片19Aの前面に接触している。また、この接触部31よりも上方部分32は、薄状物30の把持部19への上方からの差し込みを容易にするために前方側に所要角度をもって折り曲げられている。なお、後方側挟持片19Aの上端部表面と前方側挟持片19Bの上方部分32との間には、薄状物30の差し込み口となるV字状の空間が形成されている。
【0038】
前記薄状物30は、下端部が上方から前記差し込み口33を通って一対の挟持片19A,19B間に差し込まれると、これらの挟持片19A,19Bによって挾持される。薄状物30としては、お客へのサービスや情報等を提供するものであれば何でもよく、例えばクーポン券、ウエイティングカード、インフォメーションカード、広告、サービス券、メモ等が考えられる。
【0039】
図5〜図7はそれぞれ飲み口用キャップの他の実施の形態を示す斜視図、正面図および側面図である。なお、図1〜図4と同一構成部材、部分については同一符号をもって示し、その説明を省略する。図5において、飲み口用キャップ40は、栓体部17と、鍔部18と、把持部41とで構成されている。把持部41は、後方側挟持片41Aと前方側挟持片41Bとで構成されている。また、後方側挟持片41Aは、縦長の板状体に形成され、左右両側縁に一体に延設された左右一対のウイング42A,42Bを有している。前方側の挟持片41Bは、前記後方側挟持片41Aと略同一の幅でこれより高さが低く形成されている。また、これらの側挟持片41A,41Bは、薄状物30が上方から挿入されると、外側に弾性変形し、その復元力で薄状物30を挟持する。
【0040】
このような飲み口用キャップ40においては、一対の挟持片41A、41Bで薄状物30を挟持すると、薄状物30の裏面が後方側挟持片41Aと一対のウイング2A,42Bに接触して接触面積が増大するため、薄状物30をより安定した状態で保持することができる。
【0041】
図6は、図5に示した飲み口用キャップ40において、各ウイング42A,42Bの表裏面(またはいずれか一方の面)に点字50を表示し、視覚障害者に対するサービス、情報提供等を行うようにしたものである。
【0042】
図7は、飲み口用キャップ60の把持部61を、前後方向に並設された第1〜第3の挟持片61A,61B,61Cとで構成し、第1の挟持片61Aと第2の挟持片61Bとの間と、第2の挟持片61Bと第3の挟持片61Cとの間に、薄状物30,30をそれぞれ上方から差し込むようにしたものである。中央に位置する第2の挟持片61Bは略垂直な固定片を形成しており、表裏面の高さ方向中間部に第1、第3の挟持片61A,61Cが接触する突子62が一体に突設されている。第1、第3の挟持片61A,61Bは、第2の挟持片61Bより薄肉に形成されることにより板厚方向に弾性変形可能で、かつ第2の挟持片61側に傾斜して設けられている。
【0043】
このように本発明に係るマドラー10は、蓋体4の飲み口用開口6を閉塞する飲み口用キャップ13を分離可能に備えているので、シールを必要とせず、飲み口用キャップ13によって蓋体4の飲み口用開口6を確実に閉塞することができる。したがって、接着剤で飲み口用開口6の周囲を汚したりするおそれがなく衛生的である。また、飲料2が外気に直接触れたり、異物が飲み口用開口6からコップ1内に侵入するのを防止することができる。
【0044】
また、飲み口用キャップ13は、把持部19の把持により蓋体4の飲み口用開口6に対して着脱操作されるものであるため、飲料2に触れる栓体部17や鍔部18を把持したり、蓋体4の口当て部4Aや飲み口用開口6を手で触る必要がなく、この点からもきわめて衛生的である。
【0045】
また、マドラー10と飲み口用キャップ13とは分離可能に接続されているので、予め店に飲み口用キャップ13を備えたマドラー10と、互いに分離された単体からなるマドラー10と飲み口用キャップ13とを用意しておき、お客、特に持ち帰りのお客の場合、注文に応じて飲料入りのコップ1とその付属品であるマドラー10を提供する際、店員がそのお客の希望を確認してこれらのうちのいずれか1つを蓋体4の飲み口用開口部6に装着して提供するようにすればよい。すなわち、持ち帰りのお客の場合は、蓋体4を必要とするため、飲み口用キャップ13も必要となる。その場合、砂糖やミルクを入れずにブラックでコーヒーを飲むお客にとってはマドラー10を必要としないため、この点を確認してマドラー10の付いていない飲み口用キャップ13で蓋体4の飲み口用開口6を閉塞してお客に提供し、砂糖やミルクを入れてコーヒーを飲むお客に対しては、マドラー10のついた飲み口用キャップ13で蓋体4の飲み口用開口6を閉塞してお客に提供する。一方、店で飲んで帰るお客の場合は、蓋体4を必要としないため、その場合は飲料2の入ったコップ1と飲み口用キャップ13が付いていないマドラー10を提供する。このように、お客にあわせてマドラー10や飲み口用キャップ13を提供すると、過剰なサービスとならず、マドラー10や飲み口用キャップ13の使用量を削減することができる。
【0046】
また、キャップ付きのマドラー10または単体の飲み口用キャップ13を提供する際には、キャップ13の挾持部を兼用する把持部19(41,61)に各種カード、メモ等の薄状物30を予め挾持させておくと、お客へのよりきめ細かなサービス、情報提供等を行うことができる。
【0047】
さらに本発明においては、飲み口用キャップ13に、各サイズの蓋体4の飲み口用開口6の大きさに対応する3つの鍔部18A,18B,18Cを設けているので、サイズが異なる蓋体4であっても、その飲み口用開口6を確実に閉塞することができ、飲み口用キャップ13を共通部品として使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明に係る飲み口用キャップを備えたマドラーの一実施の形態を示す外観斜視図である。
【図2】同マドラーと飲み口用キャップを分離した状態を示す正面図である。
【図3】同マドラーを蓋体の飲み口用開口からコップ内に差し込んだ状態を示す外観斜視図である。
【図4】同マドラーを蓋体の飲み口用開口からコップ内に差し込んだ状態を示す一部破断正面図である。
【図5】飲み口用キャップの他の実施の形態を示す斜視図である。
【図6】飲み口用キャップの他の実施の形態を示す正面図である。
【図7】飲み口用キャップのさらに他の実施の形態を示す側面図である。
【符号の説明】
【0049】
1…コップ、2…飲料、3…コップの開口部、4…蓋体、6…飲み口用開口、10…マドラー、11…マドラー本体、12…掻き混ぜ部、13…飲み口用キャップ、14…接続部、17…栓体部、18,18A〜18C…鍔部、19…把持部、19A,19B…挟持片、21…接続孔、33…差し込み口、40,60…飲み口用キャップ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲み口用開口を有する蓋体を備えたコップに使用される飲み口用キャップであって、前記蓋体の飲み口用開口に差し込まれる栓体部と、この栓体部の上部に一体に設けられ前記飲み口用開口の周縁部上面に密接する鍔部と、この鍔部の上部に一体に設けられた把持部とを備え、
前記栓体部の下部にマドラーが分離可能に接続される接続孔を設け、
前記把持部に、差し込み口が上方に位置し各種カード、メモ等の薄状物を挟持する挾持片を設けたことを特徴とする飲み口用キャップ。
【請求項2】
前記栓体部は、サイズの最も小さい蓋体に形成されている飲み口用開口に対して挿入可能な大きさおよび形状をもって形成されており、
前記鍔部は、各種サイズの蓋体の飲み口用開口に対応して上方に向かって大きくなるように段状に形成されており、対応する飲み口用開口の周縁部上面に接触することによりコップ内へのキャップの落下を防止する複数の鍔部で構成されていることを特徴とする請求項1記載の飲み口用キャップ。
【請求項3】
飲み口用開口を有する蓋体を備えたコップに使用されるマドラーにおいて、
下部に掻き混ぜ部を有するマドラー本体の上部を前記請求項1または2に記載の飲み口用キャップの接続孔に分離可能に接続したことを特徴とするマドラー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−289258(P2007−289258A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−117996(P2006−117996)
【出願日】平成18年4月21日(2006.4.21)
【出願人】(391028340)水野産業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】