説明

飲料容器

【課題】耐久性を向上させ、蓋の開閉部材を繰り返し操作しても通気部材が損傷することを回避し、液漏れを有効に防止することができる飲料容器を提供すること。
【解決手段】容器のスライド蓋15が飲用位置である開状態で、前記スライド蓋の先端15aが前記ストロー20と接触せず、前記飲用位置からスライド移動すると、該先端付近が前記ストローに当接してその上に乗り上げて、ストロー20の弾性力により押し上げられることにより、該スライド蓋15が変形して該スライド蓋の基端側が前記通気部材16から離れ、前記スライド蓋が完全に閉止されるまでスライド移動した状態では、前記スライド蓋15の先端部に対して下からストローの弾性力が押し上げるように力を加えることから、該ストローを下から当接支持している前記支持壁先端を支点として、前記スライド蓋の基端側は下方へ付勢されることにより、前記通気部材に当接する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミルクや果汁等の飲料を収容する蓋付きのストロー式飲料容器の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば乳幼児等がミルクや果汁、お茶等の飲料を飲む飲料容器として、飲み口であるストロー等が付いている飲料容器を使用している。このような飲料容器では、ストローで吸いあげて飲用できるだけでなく、不使用時には、このストローを折りたたんで蓋を閉止することができるようになっているものがある。
ここで、このような飲料容器内に飲料として温かいミルク等を入れ、蓋を閉めてストローを密閉すると、容器内部が陽圧となり、実際に乳幼児等が飲む際に蓋を開くと同時にストローを開状態にすると、温かいミルク等がストローから噴出するおそれがある。
そこで、従来から、このような飲料容器には、通気孔を形成して内部の圧力を解放し、ストローからミルク等が噴出するのを防止する構成となっている。
【0003】
また、このような通気孔は、可動カバーや逆止弁を備えるようにすることで、容器内の飲料が外に漏れ出ないようにされている。
ところが、このように、通気孔や可動カバーを設ける従来の飲料容器では、主として、次のような不具合があった。
【0004】
可動カバーを開くと通気孔を解放するものでは、飲用時に通気孔が開状態となるため、使用者が飲料を飲んでも、容器内が負圧とならず、飲みやすいという利点があるが、可動カバーを開いた状態で容器を傾けると飲料が通気孔から漏れ出すという問題があった。
【0005】
そこで、本出願人は、使用者がストロー等の飲み口部で容器本体内の飲料を飲む際、容器本体を傾けても、飲料が漏れ出すことなく、且つ、容器本体内が負圧等となって飲料が飲みにくくなるのを未然に防ぐことができる飲料容器として、特許文献1の飲料容器を提案している。
この飲料容器は、特許文献1の図2に示すように、容器本体11と、ドーム状のベース部材12と、ベース部材12の上で該ベース部材12の外形に沿ってスライドする蓋体であるスライド蓋15とを有している。ベース部材12には、容器本体11内の圧力変化を調整する第一通気部18と、逆止弁付き通気孔である第二通気部17が備えられ、スライド蓋15には、第一通気部18を、通気状態又は閉塞状態に変更可能な通気開閉手段15a等が形成されている。通気開閉手段は、使用者が飲料容器を携帯可能となる携帯状態(図5参照)及び、飲み口部が使用者にとって使用可能となる飲用状態(図2参照)では、第一通気部18を閉塞状態とする。図4の操作状態では、該第一通気部18を通気状態とする構成となっている。
【0006】
これにより、蓋体であるスライド蓋15を閉めて携行する状態、飲料容器の逆止弁付き通気孔である第二通気部17が通気開閉手段15aにより閉塞状態となっているので、容器本体11内に収容されている液体飲料が第二通気部17から漏れ出すことがないし、開口状の通気孔である第一通気部18からも液体飲料が漏れ出すことがない。
また、飲用のためにスライド蓋15を開くように移動させる中間位置である操作状態に配置したとき第一通気部18は通気状態となっている。このため、容器本体11内に温かいミルク等を収容し、容器内部の圧力が外部に対して陽圧となっている場合でも、その圧力は第一通気部18を介して大気開放される。
スライド蓋15をさらに移動させて開きを大きくし、飲用状態に配置すると、第一通気部18が閉塞状態となるので、容器本体11を傾けて内部の液体飲料を使用者が飲み口部から飲んでも、内部の液体飲料が第一通気部18から漏れ出すことがない。しかしながら、ベース部材13には第二通気部17が形成されている。
このため、使用者が飲み口部から容器本体11内の液体飲料を飲み、内容量が減少し、容器本体11内が負圧となっても、第二通気部17の逆止弁が開き、外気が容器本体11内に導かれ、容器本体11内の負圧状態が解消されることになる。したがって、容器本体11内が負圧状態となり、使用者が飲み口部から飲料を飲みにくくなるという事態の発生を未然に防ぐことができるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO2007/148441号公報(図2等参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1のストロー付き飲料容器では、容器本体11の開口部を塞ぐとともに、上に向かって凸となった円弧状の上面を有するベース部材12を有しており、該ベース部材12の上面には、通気部材16が外部に突出して形成されている。
さらに、該ベース部材の円弧状の上面の上を断面円弧状スライド蓋15が摺動して、蓋開閉を行う構成である。
このため、常にスライド蓋15と通気部材16の上端が接触しており、長期間の使用により通気部材16の上端が摩耗し、当該摩耗が進行すると、液漏れの可能性を完全に否定することはできない。
【0009】
この発明は、上記課題を解決するためになされたもので、耐久性を向上させ、蓋の開閉部材を繰り返し操作しても通気部材が損傷することを回避し、液漏れを有効に防止することができる飲料容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、液体飲料を収容し、該液体飲料を入れるための容器開口部を有する容器本体と、前記容器開口部を覆うと共に飲み口部として弾性変形可能なストローを備えるベース部材とを有する飲料容器であって、前記ベース部材が外方に凸となった湾曲面を有し、該ベース部材の該湾曲面の上をスライドして移動する、外方に凸となった湾曲面を有するスライド蓋とを備え、該スライド蓋の移動によりその先端が前記ストローの長さ方向の途中位置に当接すると共に、当該途中位置においては該ストローの反対側で前記ベース部材に立設された支持壁が該ストローを支持しており、前記スライド蓋が前記当接位置よりさらに閉止方向にスライド移動することで、前記ストローが前記支持壁に支持されつつ、該支持位置で折り曲げられることにより閉塞され、該ストローから液漏れしない状態として携行可能とするようになっており、前記ベース部材には、前記スライド蓋より内側で通気部材が露出して形成されていて、該通気部材は、前記容器本体と外部とを連通させ、該本体内の圧力変化を調整する第一通気部と、前記容器本体内が外部に対して負圧状態となったときに外部から空気を導入すると共に、前記容器本体内の液体飲料の漏出を防ぐことができる第二通気部とを有しており、前記スライド蓋のスライド移動により、使用者が容器を携行できるように前記ストロー曲折して塞ぐ携行位置及び前記ストローの曲折を解除して使用可能となるように、前記ストローが露出して延びるまで前記スライド蓋を移動配置した飲用位置では、第一通気部を閉塞状態とし、前記携行位置及び前記飲用位置の中間位置に前記スライド蓋が移動配置される操作状態では、前記第一通気部を通気状態とする構成とされていて、かつ、前記スライド蓋が飲用位置である完全に開いた状態では、前記スライド蓋の先端は前記ストローと実質的に接触せず、該スライド蓋が前記飲用位置からスライド移動すると、該スライド蓋の先端付近が前記ストローに当接して該ストローを曲折させつつその上に乗り上げて、ストローの弾性力により押し上げられることにより、該スライド蓋が変形して該スライド蓋の基端側が前記通気部材から離れ、前記スライド蓋が完全に閉止されるまでスライド移動した状態では、前記スライド蓋の先端部に対して下からストローの弾性力が押し上げるように力を加えることから、該ストローを下から当接支持している前記支持壁先端を支点として、前記スライド蓋の基端側は下方へ付勢されることにより、前記通気部材に当接する構成としたことを特徴とする。
【0011】
上記構成によれば、飲用位置以外の操作位置にある際には、ストローの弾性力を利用しシーソーの原理により、通気部材を開放して、容器本体内に、例えば、高い温度の飲料や炭酸飲料等が収容されていることに基づく陽圧が、大気開放されて調整されるので、ストローからの飲料の噴き出しを効果的に防止することができる。
前記スライド蓋が完全に閉止される位置においては、前記スライド蓋の先端部に対して下からストローの弾性力が押し上げるように力を加えることから、該ストローを下から当接支持している前記支持壁先端を支点として、前記スライド蓋の基端側は下方へ付勢されることにより、この「シーソー」の原理に基づいて前記スライド蓋の基端側は前記通気部材に当接するので、液漏れを有効に防止することができる。
このように、飲用位置と閉止位置以外の操作位置では、スライド蓋が通気部材に接触したり擦ったりすることがほとんど無く、通気部材の摩耗を有効に防止することができ、長期間使用しても液漏れを生じることがない。
【0012】
好ましくは、前記ベース部材には、該ベース部材の前記湾曲面の中心に対して、前記スライド蓋の前記スライド移動により開閉されるスリットの基端側に寄った位置に、前記通気部材が配置されており、該通気部材は、上端が前記基端側に向かって下がる勾配を有する傾斜面を有するとともに、該傾斜面において、前記第1通気部と前記第2通気部の各外側開口が露出されていることを特徴とする。
上記構成によれば、ストローを曲折させてその上に乗り上げてスライド移動するスライド蓋が、該ストローの弾性を、「シーソー」の原理に基づく力点として利用して、スライド蓋の基端側を前記通気部材に対して当接・離間できるとともに、該通気部材を前記基端側に向かって下がる勾配を有する傾斜面を有する構成としたので、スライド蓋の移動における摩擦を生じにくい。
【0013】
好ましくは、前記第1通気部と第2通気部の前記各外側開口は、前記傾斜面からそれぞれ僅かに突出して形成されており、前記スライド蓋内面には、前記飲用位置において前記通気部材の前記第1通気部だけに当接して第2通気部の機能を発揮させ、前記操作位置においては、前記通気部材を開放することで、第2通気部の機能を発揮させ、前記携行位置においては前記通気部材の第1通気部第2通気部の各通気部にそれぞれ当接する複数の突起状の通気開閉部を備えることを特徴とする。
上記構成によれば、前記スライド蓋のスライド移動を行うだけで、ストローからの飲料の噴き出しを防止し、飲用の際に容器本体内を大気圧に調整して飲みやすくし、しかも携行時には液漏れしない飲料容器を得ることができる。
【0014】
好ましくは、前記スライド蓋が湾曲した帯状の部材であり、該帯状のスライド蓋の幅方向の両側縁に設けた突起またはスライド用リブが、前記ベース部材に形成した帯状開口の幅方向両側部において、前記スライド方向に沿って形成した突起またはスライド溝に支持されてスライド移動される構成としたことを特徴とする。
上記構成によれば、蓋体がヒンジ等により回動して開閉する構成と比べると、軸受け側面側等に隙間が生じることがなく、指を挟んだりする危険がない。
【0015】
好ましくは、前記ベース部材には、前記スライド蓋がスライド移動する領域に対応して幅の広いスリットが形成されたフード部材が装着されており、前記スライド蓋は常に前記幅広のスリット内を移動する構成としたことを特徴とする。
上記構成によれば、スライド蓋は常にフード部材の内側で動くので、不要な突起や突部が外部に露出することがなく、引掛けて思わぬ怪我をしたり、誤操作の原因となることもない。
【0016】
好ましくは、前記スライド蓋の先端上面には上方向かって突出する指掛かりが形成されており、前記フード部材の前記スリットの基端部には、下方に向かって突出する突起または壁がストッパとして形成されていて、前記スライド蓋には、前記指掛かりよりも基端側に上方に突出するストッパが形成されていることを特徴とする。
上記構成によれば、前記指掛かりを利用してスライド蓋を容易に閉止方向に操作することができる。また、スライド蓋を開く際には、飲用位置である全開状態において、スライド壁の前記ストッパがフード部材のストッパに当接して、容易に飲用位置に位置合わせすることができる。
【発明の効果】
【0017】
耐久性を向上させ、スライド蓋の開閉部材を繰り返し操作しても通気部材が損傷することを回避し、液漏れを有効に防止することができる飲料容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に係る飲料容器の全体を示す概略斜視図である。
【図2】図1の飲料容器の分解斜視図である。
【図3】図1の飲料容器の通気部材の構成例を示す概略正面図である。
【図4】(A)は図3のA−A線切断端面図であり、(B)は図3のB−B線切断端面図である。
【図5】図1の飲料容器のスライド蓋の裏面の要部を示す概略斜視図である。
【図6】図1の飲料容器の飲用位置における要部の概略断面図である。
【図7】図1の飲料容器の操作位置の初期位置における要部の概略断面図である。
【図8】図1の飲料容器の操作位置の中間位置においてスライド蓋がストローに完全に乗り上げた段階の要部の概略断面図である。
【図9】図1の飲料容器の操作位置において、スライド蓋の後端が通気部材の上に移動した段階の要部の概略断面図である。
【図10】図1の飲料容器の操作位置において、スライド蓋の先端がフード部材に当接した段階の要部の概略断面図である。
【図11】図1の飲料容器の携行位置であるスライド蓋が完全に閉じた段階の要部の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明の好適な実施の形態を添付図面等を参照しながら、詳細に説明する。
尚、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0020】
図1及び図2を参照して、本発明の実施の形態に係る飲料容器の全体構成について説明する。
これらの図において、飲料容器10は、液体飲料としての例えば、温めた状態のミルクを収容する容器本体11を有している。容器本体11は中空の液体容器であり、外部から中身の種類や量を視認するためには透明もしくは半透明とすることが好ましい。
なお、容器本体11は、上述のように、温めたミルクを収容することに限らず、常温ないし冷やした液体飲料であってもよい。
この容器本体11の上部には外方に凸となった湾曲面として、例えば、略ドーム状の外形を有するベース部材13が配置されている。ベース部材13には、飲み口部である、ストロー20が、ストロー孔13d(図6参照)に挿入されることにより取り付けられている。ストロー20は、繰り返し曲折されても弾性復帰できる軟らかくて弾性に富んだ丈夫な材料で形成されており、例えばシリコーンで形成されている。
【0021】
図2に示すように、ストロー20は、取付け部21を介して、容器本体11内において、底部付近まで、ストロー本体20aが深く延びている。
ストロー20の取付位置に隣接して、図2において手前側には、突起である支持壁22が立設されている。この支持壁22は、ベース部材13の上面と略同一の高さを有している。支持壁22は、後述するスライド蓋15の開閉によりストロー20が押しつけられることで、その上端においてストロー20を曲折する支持壁である。
【0022】
ベース部材13には、これを上から覆うようにフード部材14が取付けられている。フード部材14もベース部材13の形状に対応してその外側に配置できるように、ほぼドーム状の外形とされている。フード部材14は、ベース部材13を覆うとともに、容器本体11の外周に設けたネジ部と螺合されることで着脱自在に取り付けられている。
ベース部材13とフード部材14は、それぞれ上部を湾曲した短冊状に除去することにより帯状の開口とされた態様でなるスリット13a,14aが設けられている。本実施形態では、これらスリット13a,14aは、ベース部材13とフード部材14の各ドーム形態の頂部を半周よりやや大きく切り欠いた程度の大きさである。
スリット13a,14aは、後述するスライド蓋15によって開閉されるようになっている。スライド蓋15は、スリット13a,14aを塞ぐ形状及び大きさでなり、ある程度弾性変形可能な合成樹脂等の成形品であり、その構成については後で詳しく説明する。
また、ベース部材13には、図6に表れているように、深さ方向に延びる有底の筒体が一体に形成されており、スライド蓋15が開かれた際にこれを収容する収容部19とされている。
【0023】
ベース部材13と容器本体11の間には、液密的に封止するためのシール部材としてリング状のパッキン31と取手32とが介挿されている。そして、飲料容器10は、容器本体11の上端側に、取手32、パッキン31、ベース部材13が積層され、これらをフード部材14により挟むことで固定される。
この場合、取手32は、リング状の本体33を容器本体11の上端部に嵌めこむことで着脱できるようにされており、該リング状の本体33からは一対のハンドル状の持ち手34,34が延びている。また、取手32は、本体33の内周面の2箇所に設けられた係合片33aを有する。この本体33の係合片33aは、容器本体11の対応する位置に設けられる係合凹部11aに係合されることで、取手32が所定位置に固定され、回動しないようにされている。
【0024】
ベース部材13、フード部材14、スライド蓋15周辺の構造について、図1と図2及び図6を参照して説明する。なお、図6は、飲料容器10の上部の構造について、図1のC−C線に沿って切断した概略断面図である。
ベース部材13のスリット13aの長手方向の内側の両側部に沿って、それぞれスライド溝13bが設けられている(図2参照)。このスライド溝13bには、スライド蓋15がスライド移動可能に取り付けられている。
図5は、スライド蓋15の基端部15b周辺について、裏側から見た概略斜視図である。スライド蓋15には、図5に示すように、その幅方向の両端部である両側縁に沿って突起としての例えば、スライド用リブ35,35が形成されている。
このスライド用リブ35,35をベース部材13のスライド溝13bに挿入することにより、溝方向に沿ってスライド蓋15がスライド移動することができ、ベース部材13のスリット13aを開閉するようになっている。
【0025】
また、スライド蓋15内面の基端部15bの近傍には、僅かに突出する突部36,37が並列的に形成されている。この突部36,37は、それぞれ後述する通気部材16の通気開閉部を構成するもので、一方の突部36が容器本体11と外部とを連通させ、本体11内の圧力変化を調整する第一通気部に当接して塞ぐ第1通気開閉部であり、他方の突部37が容器本体11内が外部に対して負圧状態となったときに外部から空気を導入すると共に、容器本体11内の液体飲料の漏出を防ぐことができる第二通気部に当接して塞ぐ第2通気開閉部である。また、スライド蓋15の長手方向、すなわち移動方向に沿って図2の先端部15aに寄った位置にさらにひとつの突部38が形成されており、該突部38は、第1通気部を開閉するものである。
スライド蓋15の内面に形成される突部36〜38は、後述する通気部材16の第1通気部17及び第2通気部18の開口と比して長手方向にやや延伸した形状に形成されている。これは、使用者が誤って、スライド蓋15が後述する飲用位置、携行位置のそれぞれの位置に達する直前の操作位置において、飲用したり携行状態とした場合に、液漏れをしないようにするためである。
さらに、スライド蓋15の内面には、そのスライド移動方向に沿って延びており、僅かに厚み方向に凸となった凸条もしくは線状リブ39が形成されている。好ましくは、図5に示すように凸条39は、複数本平行に形成されており、折り曲げられたストロー20上をスライド蓋15が摺動する際の摺動抵抗を低減する効果を発揮するようになっている。
【0026】
図6において、スライド蓋15の先端15a上面は上方に向かって突出する指掛かりとされている。
また、フード部材14のスリット14aの奥側である基端部には、下方に向かって突出する突起であるストッパ14bが形成されていて、これに対して、スライド蓋15には、上述の指掛かりよりも基端側に上方に突出するストッパ15cが形成されている。
このため、スライド蓋15は、指掛かりである先端部15aを利用して該スライド蓋15を容易に閉止することができるし、スライド蓋15を開く際には、図6で示す飲用位置である全開状態において、スライド蓋15のストッパ15cがフード部材14のストッパ14bに当接して、容易に飲用位置に位置合わせすることができる。
【0027】
図2及び図3を参照して、通気部材16について説明する。
通気部材16は、図3に示すように、第1通気部17と第2通気部18とからなる。
通気部材16は、図2に示すように、ベース部材13の上面である湾曲面13c(図6参照)の中心位置に対して、スリット13aの基端側に寄った位置に配置されている。通気部材16は、その上端がスリット13aの基端側に向かって下がる勾配となる傾斜面を有するとともに、この傾斜面において、第1通気部17と第2通気部18の各外側開口が露出されている。以下、具体的に説明する。
【0028】
図3に示すように、通気部材16は、樹脂成形品でなり、本体41と、本体41から下方に向かって平行に突出した第1通気部17と第2通気部18とを有している。
第1通気部17は、図4(A)に示すように、通気部材16の本体41の鉛直方向に沿って延びる管状の通気路を形成しており、常に開口されている。第2通気部18は、図4(B)に示すように、通気部材16の本体41の鉛直方向に沿って延びる管状の通気路の下端に逆止弁を形成したものであり、ベース部材13に装着されて、容器本体11内の液体が外に漏れないように閉弁するが、容器本体11内が負圧になると開弁して容器本体11内を大気圧にするものである。
通気部材16の本体41の上面は、図3において、紙面の手前に向かって徐々に下降する傾斜面44とされている。この傾斜面44には、第1通気部17と連通して上端が開口されるとともに、上方に僅かに突出する当接部42と、第2通気部18と連通して上端が開口されるとともに、上方に僅かに突出する当接部43とが形成されている。
【0029】
次に、図6ないし図11を参照して、本実施形態の動作を説明する。
図6は、飲料容器10を使用して液体飲料を飲むことができる状態であり、スライド蓋15の飲用位置を示している。
図7、図8、図9、図10は、飲用位置からスライド蓋15をスライド移動させて、閉める操作を行う操作位置を示している。
図11は、スライド蓋15を完全に閉止して、母親等が、バッグなどにいれて液漏れしないで持ち運ぶことができる、いわゆる携行位置を示している。
【0030】
(飲用位置)
容器本体11内の液体飲料を飲むときは、図6に示すように、スライド蓋15を矢印E方向にスライド移動させて、全開状態とする。
この際には、スライド蓋15の先端に近いストッパ15cがフード部材14のストッパ14bと当接してそれ以上開かない。この位置では、スライド溝13b(「図2参照」、以下同じ。)の溝幅が狭くほとんど遊びがないので、スライド蓋15はガタツキなく開き状態を保持される。そしてこの位置においては、図5で説明したスライド蓋15の裏面の突部38は、ベース部材14に取り付けられた通気部材16の第1通気部17の当接部42をガタツキなく塞いでいる。また、この位置においては、スライド蓋15は、その先端部15aがストロー20と接触することがなく、ストロー20を折り曲げず吸飲の妨げとならない。
これにより、飲料容器10の容器本体11内から液体飲料を吸引し、容器本体11内が負圧(陰圧)となると、第2通気部18の逆止弁が開弁して容器本体11内を大気解放するので、液体飲料を吸いにくい状態になることがない。また、スライド蓋15の突部38が第1通気部17を閉塞しているので、容器本体11を傾けることによる液漏れが発生しない。
【0031】
(操作位置)
図7を参照する。
図7は、図1の飲料容器10の操作位置における初期位置を示しており、スライド蓋15の先端部15aを指掛かりとして、矢印D方向にスライド移動させる。これにより、図2に示すスライド溝13bからスライド蓋15の先端部15a側が引き出されて、ストロー20の長さ方向の途中位置に当たり、ストロー20に乗り上げる。このとき、ストロー20は、当接された反対側が支持壁22に支持されているので、当該支持壁22の上端付近で曲折される。
そして、曲折されたストロー20が戻ろうとする力を受けたスライド蓋15の先端部15a側は押し上げられて、図5で説明したスライド蓋15の裏面の突部38は、ベース部材13に取り付けられた通気部材16の第1通気部17の当接部42から離れる。すなわち、スライド蓋15は、図6に示す飲用位置においては、ベース部材13の湾曲面13c上と接する位置にあるが、ストロー20に乗り上がることで、ストロー20の略厚み分だけ、ベース部材13の湾曲面13cから離間する。これにより、スライド蓋15の突部38は、第1通気部17の当接部42から離間することとなり、容器本体11内は外部と連通する。
【0032】
図8は、飲料容器10の操作位置の中間位置を示している。
図示されているように、スライド蓋15は、矢印D方向への移動が進み、ストロー20の上に完全に乗り上げると、ベース部材13の湾曲面13c上から離間した位置を摺動移動することとなる。このとき、スライド蓋15は、その先端部15a側が支持壁22よりベース部材13のスリット13aの先端側に位置している。したがって、ストロー20は、支持壁22とスライド蓋15とにより折り曲げられた状態となる。
【0033】
図9は、飲料容器10の操作位置において、スライド蓋15の後端(基端側)が通気部材16上に移動した段階を示している。このとき、スライド蓋15は、ベース部材13のスリット13aを完全に閉塞した位置である携行位置に達していないが、スライド蓋15裏面の突部36,37が、スライド蓋15の長手方向、すなわちスライド移動方向に延伸されて形成されていることから、通気部材16上に位置している。
スライド蓋15の先端部15aには、使用者の指の力がF1として加えられており、その力は支持壁22の先端付近を支点として、スライド蓋15の基端部15b側をシーソーの原理により上方へ動かすので、通気部材16の当接部42,43に対して、スライド蓋15裏面の突部36,37は接触していない。これにより、通気部材16は、スライド蓋15のスライド移動により摩耗することがほとんどなく、損傷することが有効に防止される。また、飲料容器10は、スライド蓋15裏面の突部36,37を当接部42,43と比してスライド移動方向に延伸した形状とすることで、スライド蓋15を誤って携行位置の直前の操作位置に停止した状態としても、通気部材16を閉塞した状態とすることができる。
【0034】
図10は、飲料容器10の操作位置において、スライド蓋15の先端部15aがフード部材14に当接した段階を示している。
スライド蓋15は、これ以上矢印Dの方向に動くことはできず、この状態で通気部材16の直上にスライド蓋15裏面の突部36,37は位置している。しかし、使用者の指がスライド蓋15の先端部15aに置かれている限り、その力F1は支持壁22の先端付近を支点として、スライド蓋15の基端部15b側をシーソーの原理により上方へ動かすので、通気部材16の当接部42,43に対して、スライド蓋15裏面の突部36,37は接触しない状態を維持している。
【0035】
(携行位置)
次いで、図11では、使用者の指がスライド蓋15の先端部15aから離れると、ストロー20の先端側が復帰しようとする弾性力F2が図示するように、該スライド蓋15の先端部15aを上方へ付勢するので、支持壁22の先端付近を支点として、該スライド蓋15の基端部15b側をシーソーの原理により下方へ動かすので、通気部材16の当接部42,43に対して、スライド蓋15裏面の突部36,37が当接し、第1通気部17と第2通気部18とを同時に閉塞する。
これにより、スライド蓋15は、飲料容器の本体11を液密的に封止することができ、携行しても液漏れが生じる恐れはない。
【0036】
なお、スライド蓋15の先端部15aに指をかけて開こうとすると、直ちに図10の状態となるので、第1通気部17が開口され、容器本体11内に温度の高いミルク等が収容されていることによる陽圧は直ちに大気解放されるので、ストロー20から高温のミルクが噴き出す事態も有効に防止することができる。
【0037】
上述の実施形態では、ストロー20を曲折させてその上に乗り上げてスライド移動するスライド蓋15が、ストローの弾性を、「シーソー」の原理を利用した力点として利用して、スライド蓋15の基端部15b側を通気部材16に対して当接・離間できるとともに、該通気部材16をスライド蓋15の基端側に向かって下がる勾配である傾斜面(図3の符号44参照)を有する構成としたので、スライド蓋15の移動における摩擦を生じにくい。
【0038】
しかも、スライド蓋15のスライド移動を行うだけで、ストロー20からの飲料の噴き出しを防止し、飲用の際に容器本体11内を大気圧に調整して飲みやすくし、しかも携行時には液漏れしない飲料容器10を得ることができる。
そして、スライド蓋15が湾曲した帯状の部材であり、該帯状のスライド蓋15の幅方向の両側縁に設けたスライド用リブ35が、ベース部材13に形成した帯状開口であるスリット13aの幅方向両側部において、前記スライド方向に沿って形成したスライド溝13bに支持されてスライド移動される構成とした。このため、蓋体がヒンジ等により回動して開閉する構成と比べると、軸受け側面側等に隙間が生じることがなく、指を挟んだりする危険がない。
【0039】
さらに、スライド蓋15は、帯状開口(スリット13a)の基端付近でスライド溝13bに支持されているが、飲用位置を除いて、スライド溝13bの溝幅がスライド蓋15のスライド用リブ35の厚みt(図5参照)と比して大きく形成されている。したがって、スライド蓋15は、スライド移動してストロー20を曲折し、当該ストロー20に乗り上げることができ、その過程では、「シーソー」の原理により、ストロー20の弾性力でスライド蓋15の先端15a側が浮き上がる。スライド蓋15がストロー20に乗り上げてその先端が前記支持壁22を超えると、スライド蓋15の基端部15b側が下方へ押し下げられるので、通気部材16を塞ぐことができる。
【0040】
この実施形態では、スライド蓋15は、常にフード部材14の内側で動くので、不要な突起や突部が外部に露出することがなく、引掛けて思わぬ怪我をしたり、誤操作の原因となることもない。
また、スライド蓋15の先端部15a上面には、上方向かって突出する指掛かりが形成されており、フード部材14のスリット14aの基端部には、下方に向かって突出する突起または壁状のストッパ14bが形成されていて、さらに、スライド蓋15には、指掛かりよりも基端側に上方に突出するストッパ15cが形成されている。このため、指掛かりを利用してスライド蓋15を容易に閉止方向に操作することができる。また、スライド蓋15を開く際には、飲用位置である全開状態において、スライド蓋15のストッパ15cがフード部材14のストッパ14bに当接して、容易に飲用位置に位置合わせすることができる。
【0041】
本発明は、上述の各実施の形態に限定されない。例えば、第1通気部と第2通気部は別体に設けてもよい。また、上述の実施形態の個別の構成は、その一部を省略し、あるいは説明しない別の構成と任意に組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0042】
10・・・飲料容器、11・・・容器本体、13・・・ベース部材、14・・・フード部材、15・・・スライド蓋、16・・・通気部材、17・・・第1通気部、18・・・第2通気部、20・・・ストロー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体飲料を収容し、該液体飲料を入れるための容器開口部を有する容器本体と、
前記容器開口部を覆うと共に飲み口部として弾性変形可能なストローを備えるベース部材と
を有する飲料容器であって、
前記ベース部材が外方に凸となった湾曲面を有し、該ベース部材の該湾曲面の上をスライドして移動する、外方に凸となった湾曲面を有するスライド蓋とを備え、
該スライド蓋の移動によりその先端が前記ストローの長さ方向の途中位置に当接すると共に、当該途中位置においては該ストローの反対側で前記ベース部材に立設された支持壁が該ストローを支持しており、前記スライド蓋が前記当接位置よりさらに閉止方向にスライド移動することで、前記ストローが前記支持壁に支持されつつ、該支持位置で折り曲げられることにより閉塞され、該ストローから液漏れしない状態として携行可能とするようになっており、
前記ベース部材には、前記スライド蓋より内側で通気部材が露出して形成されていて、
該通気部材は、
前記容器本体と外部とを連通させ、該容器本体内の圧力変化を調整する第一通気部と、
前記容器本体内が外部に対して負圧状態となったときに外部から空気を導入すると共に、前記容器本体内の液体飲料の漏出を防ぐことができる第二通気部と
を有しており、
前記スライド蓋のスライド移動により、使用者が携行できるように前記ストローを曲折して塞ぐ携行位置及び前記ストローの曲折を解除して使用可能となるように、前記ストローが露出して延びるまで前記スライド蓋を移動配置した飲用位置では、前記第一通気部を閉塞状態とし、前記携行位置及び前記飲用位置の中間位置に前記スライド蓋が移動配置される操作状態では、前記第一通気部を通気状態とする構成とされていて、
かつ、前記スライド蓋が飲用位置である完全に開いた状態では、前記スライド蓋の先端は前記ストローと実質的に接触せず、該スライド蓋が前記飲用位置からスライド移動すると、該スライド蓋の先端付近が前記ストローに当接して該ストローを曲折させつつその上に乗り上げて、ストローの弾性力により押し上げられることにより、該スライド蓋の基端側が前記通気部材から離れ、
前記スライド蓋が完全に閉止されるまでスライド移動した状態では、前記スライド蓋の先端部に対して下からストローの弾性力が押し上げるように力を加えることから、該ストローを下から当接支持している前記支持壁先端を支点として、前記スライド蓋の基端側は下方へ付勢されることにより、前記通気部材に当接する構成とした
ことを特徴とする飲料容器。
【請求項2】
前記ベース部材には、該ベース部材の前記湾曲面の中心に対して、前記スライド蓋の前記スライド移動により開閉されるスリットの基端側に寄った位置に、前記通気部材が配置されており、該通気部材は、上端が前記基端側に向かって下がる勾配を有する傾斜面を有するとともに、該傾斜面において、前記第1通気部と前記第2通気部の各外側開口が露出されていることを特徴とする請求項1に記載の飲料容器。
【請求項3】
前記第1通気部と第2通気部の前記各外側開口は、前記傾斜面からそれぞれ僅かに突出して形成されており、前記スライド蓋内面には、前記飲用位置において前記通気部材の前記第1通気部だけに当接して第2通気部の機能を発揮させ、前記操作位置においては、前記通気部材を開放することで、第2通気部の機能を発揮させ、前記携行位置においては前記通気部材の第1通気部、第2通気部の各通気部にそれぞれ当接する複数の突起状の通気開閉部を備えることを特徴とする請求項2に記載の飲料容器。
【請求項4】
前記スライド蓋が湾曲した帯状の部材であり、該帯状のスライド蓋の幅方向の両側縁に設けた突起またはスライド用リブが、前記ベース部材に形成した帯状開口の幅方向両側部において、前記スライド方向に沿って形成した突起またはスライド溝に支持されてスライド移動される構成とした請求項2又は3のいずれかに記載の飲料容器。
【請求項5】
前記ベース部材には、前記スライド蓋がスライド移動する領域に対応して幅の広いスリットが形成されたフード部材が装着されており、前記スライド蓋は常に前記幅広のスリット内を移動する構成としたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の飲料容器。
【請求項6】
前記スライド蓋の先端上面には上方向かって突出する指掛かりが形成されており、前記フード部材の前記スリットの基端部には、下方に向かって突出する突起または壁がストッパとして形成されていて、前記スライド蓋には、前記指掛かりよりも基端側に上方に突出するストッパが形成されていることを特徴とする請求項5に記載の飲料容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−20783(P2012−20783A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−161732(P2010−161732)
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【出願人】(000112288)ピジョン株式会社 (144)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】