説明

飲料用容器の栓体

【課題】金属製バネを使用することなく、確実な開閉動作を可能とし、しかも安価で組立てやすくする。
【解決手段】容器本体2の上部開口に着脱自在に取り付けられる栓体本体3と、栓体本体3の後ろ側で該栓体本体3に回動自在に軸支され液流路を開閉する蓋体4と、蓋体4を開方向へ付勢する非金属製の弾性部材61とを備える。蓋体4の回動軸6の外周面6aに沿って細長状の弾性部材61を設置し、該弾性部材61の長手方向の収縮力が回動軸6の接線方向に作用することにより、前記弾性部材61が前記蓋体4を開方向に付勢するようにする。金属製バネを使用することなく蓋体4を開方向へ付勢でき、さらに、弾性部材61の収縮力により蓋体4を開方向へ確実に付勢でき、しかも弾性部材61はゴム状であるので安価になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、栓体の注ぎ口又は飲み口を覆う蓋体が栓体本体にヒンジにより軸支され、蓋体が閉状態に係止される飲料用容器の栓体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のものとして蓋体を常時開方向に付勢する弾性部材として金属製バネを蓋体と栓体本体とに介在したものが知られている(例えば特許文献1〜5)。
【0003】
このような金属製バネ用いたものでは、バネが長期間の使用により金属疲労による弾性の劣化により機能不全(蓋体が開かない)となることがあったり、バネが金属製のために、長期間の使用により錆が発生し不衛生になることが懸念され、また錆による機能不全となるおそれがある。劣化や錆により破断した場合、破片が飲料物に混入して誤飲してしまうおそれがある。またバネが金属製のため、端部エッジのバリ処理が不十分の場合に蓋体などの樹脂部品との接合部がバリ、エッジにより引っ掛かり、傷付いたり良好な回動作動の妨げとなる。しかも金属製バネの場合にはコストが比較的高くなり、また組立ても比較的難しくなってしまう。
【0004】
このような問題を解決するには、蓋体を常時開方向に付勢する弾性部材を、ゴムなどの非金属製とするものが知られている。例えば、栓体本体の天板に空気孔を設け、非金属製の弾性部材を蓋体に設けるとともに、該弾性部材を、前記蓋体が全閉した際に前記空気孔を閉塞する位置に設けたもの(例えば特許文献6)や、キャップ本体(栓体本体に相当)にヒンジを介して上蓋(蓋体に相当)が開閉自在に配設され、キャップ本体及び上蓋に形成された係止機構により上蓋が閉蓋されるキャップ(栓体に相当)において、キャップ本体または上蓋の少なくとも一方のヒンジ近傍にゴム状弾性体が装着され、上蓋の閉蓋時にゴム状弾性体がキャップ本体及び上蓋間で弾性変形するよう構成され、このゴム状弾性体は、一端部がキャップ本体に固定され、他端部が先細りの楔形状に形成され、この他端部が上蓋に押圧されて圧縮及び曲げ変形可能に設けられたもの、またゴム状弾性体は、一端部が上蓋に固定され、他端部がキャップ本体の拘束壁に押圧されて圧縮及び曲げ変形可能に構成されたもの、さらにゴム状弾性体は、キャップ本体に突出状態で固定され、上蓋に押圧されて圧縮変形可能に設けられたもの、さらにはゴム状弾性体は断面コ字形状に形成され、両端部がキャップ本体及び上蓋のそれぞれに固定されて曲げ変形可能に構成されたもの、ゴム状弾性体は断面コ字形状に形成され、一端部がキャップ本体に固定されるとともに、他端部が上蓋に対しクリアランスを有して遊嵌され、この他端部が圧縮及び曲げ変形可能に構成されたもの等が知られている(例えば特許文献7)。
【0005】
また金属バネを使用しないものとして、開閉蓋(蓋体に相当)とキャップ本体(栓体本体に相当)とを左右一対のヒンジにより起伏自在に設けると共に、このヒンジと平行に弾性部材を開閉蓋とキャップ本体を一体に設け、この弾性部材は開閉蓋が閉止状態又は開放状態となる方向に付勢するように設けたものも知られている(例えば特許文献8)。
【特許文献1】特許第3620040号公報
【特許文献2】特許第3620038号公報
【特許文献3】特許第3620039号公報
【特許文献4】特許第3620042号公報
【特許文献5】特許第3075175号公報
【特許文献6】特開2003−212258号公報
【特許文献7】特開平7−61456号公報
【特許文献8】特開2000−85820号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献6では蓋体の全閉から全開へ回動する全行程ではなく閉位置から開き始めた後のある程度の角度から先は弾性力が作用しないため、蓋体が最後まで開かないようになるおそれがある。前記特許文献7では弾性部材の曲がり弾性により両端の係止部(栓体や蓋体側)が係止受部(栓体本体や蓋体側)から外れ方向への力が加わった場合に、弾性部材が離脱して機能不全(蓋体が開かない)となるおそれがある。さらに、前記特許文献8では、弾性部材と栓体本体、蓋体が一体に成形されているため、蓋体の開方向へ安定した開き弾性力を作用させることが難しく、蓋体の開き角度によっては逆向き(閉方向)の回動力が作用することがある。
【0007】
解決しようとする問題点は、栓体本体に蓋体をヒンジ軸を介して回動自在に設けると共に、該蓋体を常時開方向に付勢する弾性体を栓体本体と蓋体に介在した飲料用容器の栓体において、金属製バネを使用することなく、確実な開閉動作を可能とし、しかも安価で組立てしやすい飲料用容器の栓体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、容器本体の上部開口に着脱自在に取り付けられる栓体本体と、該栓体本体内側に形成された液流路と、該液流路の上部かつ前記栓体本体の前側に設けた注ぎ口又は飲み口と、前記栓体本体の後ろ側で該栓体本体に水平方向の回動軸を介して回動自在に軸支され前記液流路を開閉する蓋体と、該蓋体に設けられ前記液流路を上方から液密に密閉する止水部材と、前記蓋体を閉状態に係止する係止部材と、前記蓋体を開方向へ付勢する非金属製の弾性部材とを備えた飲料用容器の栓体において、
前記蓋体は、前記回動軸を中心として上方に回動して蓋開状態となり、
細長状の前記弾性部材の一側部を前記栓体本体の前記回動軸の中心軸線よりも前記容器本体の中心側でかつ下方に配置すると共に、前記弾性部材の他側部を前記蓋体に配置し、
蓋閉状態で前記弾性部材の中間部を前記回動軸の外周面後ろ側略半周に巻きつけると共に、前記弾性部材の他側部を前記回動軸の中心軸線の上方に配置することにより、蓋閉状態と中開き時には、前記弾性部材は、回動軸に掛けられて折り返されるようにし、
蓋開状態で前記弾性部材の中間部を前記回動軸の下方に位置して後方へ直線状に配置し、前記弾性部材が前記回動軸の中心軸線の下方に位置するように配置して、
前記回動軸の中心軸線と前記中間部の中心軸線との距離と前記弾性部材の収縮力とのトルクにより前記蓋体を開方向へ付勢することを特徴とする飲料用容器の栓体である。
【0009】
請求項2の発明は、前記弾性部材の両端に係止部を設けると共に、前記栓体本体と前記蓋体の各々に前記弾性部材の一端と他端の係止部をそれぞれ係止する係止受け部を設けたことを特徴とする請求項1記載の飲料用容器の栓体である。
【0010】
請求項3の発明は、前記弾性部材の一端側の係止受け部は、前記蓋体の回動軸を有する栓体本体の軸支部であることを特徴とする請求項2記載の飲料用容器の栓体である。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、金属製バネを使用しないので、破損金属片の弊害などのおそれはなく、また弾性部材の収縮力により蓋体を開方向へ確実に付勢でき、しかも弾性部材は安価となる。
【0012】
請求項2の発明によれば、係止部を係止受け部に係止することで、弾性部材を栓体本体と蓋体との間に簡単に組立てすることができる。
【0013】
請求項3の発明によれば、軸支部により回動軸を支持すると共に、弾性部材を係止でき、部品数の減少を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明における好適な実施の形態について、添付図面を参照して説明する。尚、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を限定するものではない。また、以下に説明される構成の全てが、本発明の必須要件であるとは限らない。
【実施例1】
【0015】
以下、本発明を、図1〜6に示す実施形態例に基づいて説明する。魔法瓶等の液体容器の栓体1は、容器本体2の開口部に着脱自在に取り付けられる外栓等と称する栓体本体3と、該栓体本体3の上部に上下方向にヒンジ回動可能に設けられて栓体本体3の上部開口を開閉する内栓等と称する蓋体4と、該蓋体4を前記栓体本体3に閉状態に係止する係止部材5とを有している。容器本体2は外容器2aと内容器2bの間に真空等の断熱層2cを介在している。
【0016】
前記栓体本体3は、有底筒状に形成された栓体部31と、該栓体部31を組み付けた容器本体2への取付部32とからなり、栓体部31を容器本体2の開口部内に挿入して、取付部32内周に形成されたネジ部33を容器本体2の首部外周のネジ部21に螺合することにより容器本体2の開口部に取り付けられる。前記取付部32の上部一側に、前記蓋体4が水平方向の支軸や回転中心軸等とも称する回動軸6にて上下方向にヒンジ回動可能に取り付けられている。これにより、栓体1は、回動軸6と径方向に対向する側が注ぎ口30になる。
【0017】
前記栓体部31は、上面のほぼ中央に、底壁34を回動軸6側から注ぎ口30側へ低くなるよう傾斜して形成されている。底壁34の周縁よりほぼ垂直に立ち上がり栓体部31の上面より上方にやや突出する周壁40の前側は前方に向けて先細形状として前記注ぎ口30を形成する。そして底壁34の低い方に液通孔35を、高い方に空気孔36をそれぞれ穿設して、該底壁34から上部開口、すなわち注ぎ口30の間を液流路37としている。そして、液流路37を平面略楕円形に形成すると共に、該液流路37の前後方向(回動軸6の軸方向に直交する方向)の径Aを長径、左右方向(回動軸6の軸方向と平行な方向)の径Bを短径(A>B)としている。そのため底壁34自体も同様に前後方向を長径、左右方向を短径としている。また、栓体部31の下部外周には、栓体本体3を容器本体2に取り付けたときに、容器本体2の外周の段部22に、密着するリング状のシール部材38が備えられている。
【0018】
前記蓋体4は、有底筒状に形成された蓋下部41と、該蓋下部41の上部開口を覆う蓋部42とからなり、蓋下部41は、胴部43と底壁44とを有し、胴部43の外周にはシール部材取付用の溝45が周設されている。底壁44は、前記栓体本体3の底壁34に対応して略楕円形に形成されており、さらに傾斜して形成されており、その下面には、前記液通孔35と前記空気孔36にそれぞれ対応する位置にシール部材取付用の突起46,47が形成されている。液通孔35に対応する突起46には空気抜き孔46aが穿設されている。
【0019】
また、前記蓋下部41には、ゴム、エラストマー等のゴム状の弾性体からなるシール部材7が設けられている。このシール部材7は、前記蓋体4を閉じたときに、前記液通孔35を上方から密閉する止水部材である流入口シール部71と、前記空気孔36を上方から密閉する空気孔シール部72と、前記栓体本体3の上部開口近傍内周壁に密着する流出口シール部73とを一体に形成したもので、流入口シール部71を前記突起46に、空気孔シール部72を前記突起47にそれぞれ外嵌し、流出口シール部73を前記溝45に嵌合して蓋下部41に取り付けられる。流入口シール部71は、突起46との間に空洞部75を形成して設けられる。なお、本実施形態例では一体型のシール部材を用いたが、流入口シール部71、空気孔シール部72及び流出口シール部73はそれぞれ別部品でもよい。
前 記蓋部42の上面には、前記係止部材5が設けられている。該係止部材5は、前記蓋下部41の左右外周壁から左右方向にそれぞれ突出して前記周壁40の左右にそれぞれ形成した係止受け部39に係止する係止爪52を有し、該係止爪52の突出方向、すなわち、回動軸6から注ぎ口30方向に往復動可能に設けられ、蓋部42の側壁との間に縮設されたコイルスプリング51により閉蓋状態において常時注ぎ口30方向へ付勢されている。また、蓋部42の上面には、係止爪52に接続して該係止爪52を操作する操作部53を形成していると共に、蓋部42の前部に、蓋押し部位である指掛け部53aが形成されている。
【0020】
この係止部材5は、栓体本体3の上部開口を蓋体4で閉じた際に、係止爪52が前記係止受け部39と係止して蓋体4を閉状態に保持する。また、操作部53を前記コイルスプリング51の付勢力に抗して回動軸6側へ動かすことにより、係止爪52が前記回動軸6側へ移動することにより前記係止受け部39との係止を解除する。前記周壁40の左右の中間を切り欠くようにして周壁前側40aと周壁後ろ側40bに区画されており、前記切り欠かれたほぼ中間位置に前記係止受け部39が、液流路37の外周外側に左右一対に配置されるものであり、周壁前側40aの後ろ側端面において、前方へ向けてくぼむようになる凹部を形成することにより配置されるものである。そして凹部の後方(回動軸6方向)を開口した前記係止受け部39内の上面(倒凹部の内天面)はほぼ水平に形成され、さらに係止受け部39の上部上面、すなわち周壁前側40aの後ろ側端面の上面39aは後方に向けて一様に下方になるように傾斜している。一方、係止爪52は閉蓋途中で上面39aにいったん面接触するように係止爪52の下面54も後方に向けて一様に下方になるように傾斜していると共に、係止爪52の上面55は蓋閉時に係止受け部39内の上面に係止可能なようにほぼ水平に形成されている。
【0021】
回動軸6には、蓋体4を常時開方向(上方)に付勢する弾性部材61が設けられ、この弾性部材61の付勢力によって蓋体4は上方に回動して開く。この蓋体4は、回動軸6を中心として閉状態から約180°開き、容器本体2を傾けて液体を注ぐ際には、弾性部材61の付勢力によって蓋体4の閉方向への回動が規制され開状態を維持する。
【0022】
さらに、弾性部材61まわりについて詳述する。栓体本体3の取付部32の上面の後ろ側に回動軸6の中央部が貫通する軸受け等とも称する軸支部62が設けられている。この軸支部62は、中心軸線(図示せず)を回動軸6の中心軸線6Zと一致させるようにした円柱形状になしており、その両端面62aは、取付部32の上面より垂直に立設している。一方、蓋体4の蓋部42の後ろ側に、蓋閉時において前方へ向けた凹部64の両側に左右一対の二股部65を設けており、凹部64の上部64aの横幅Cは、軸支部62の幅(両端面62a間の長さ)とほぼ同じ長さに形成している。さらに、凹部64の下部64bの横幅Dは、軸支部62の幅よりも大きい長さに形成している。そして、回動軸6は凹部64の下部64bを通って二股部65に挿入している。
【0023】
また、弾性部材61は、Oリングや輪ゴムのようなゴム、エラストマー等の環状をなした細長な紐状形状であって、ゴム状弾性材からなり、実施例では円形リング状に形成されているものを取り付けている。そして、このリング状の弾性部材61を、開蓋時に平面を矩形になるようにしてその一側部である第1の係止部としての一側辺部61aを軸支部62の前側下部に係止する。この係止は、軸支部62の前側下部、すなわち回動軸6の中心軸線6Zよりも前側でかつ下方に、該中心軸線6Zと平行に第1の係止受け部66を前側と左右両側を開口した溝状に形成する。したがって、一側辺部61aの中心軸線(図示せず)は回動軸6の中心軸線6Zよりも前側でかつ下方に配置されることとなる。一方、弾性部材61の左右に配置される中間部である弾性部材本体としての左右辺部61bは、閉蓋時と中開き時に回動軸6に掛けて折り返していると共に、全開蓋時に回動軸6の下方に位置して後方へ直線状に配置されている。この左右辺部61bの折り返しは、一側辺部61a側より回動軸6の外周面6aの下部に接触して通ってから外周面6aの他側(後ろ側)に接触して上向きに折り返すように掛け止められている。尚、左右辺部61bの折り返し部位は、左右における凹部64の下部64bと軸支部62の両端面62aとの間の隙間に配置されるようになっている。
【0024】
さらに左右辺部61bの先端側、すなわち他側部である第2の係止部としての他側辺部61cを蓋体4側に接続している。この他側辺部61cは、蓋閉時において、一側辺部61aよりも前方に位置して、しかも回動軸6の中心軸線6Zの上方に配置される。このため、蓋部42における軸支部62の近傍には、回動軸6と平行に第2の係止受け部67を上向きの溝状に形成している。
【0025】
さらに、蓋体4を180゜開いた状態で係止するために、軸支部62の外周面の後部に係止受け用突起68を中心軸線6Zと平行に形成すると共に、蓋体4の軸支部62の近傍に係止用突起69を中心軸線6Zと平行に形成しており、この係止用突起69は蓋体4の回動方向において係止受け用突起68を乗り越え可能に設けられている。
【0026】
次に前記構成についてその作用を説明する。係止爪52の上面55が係止受け部39内の上面(倒凹部の内天面)に係止することで、弾性部材61の弾性力に抗して閉蓋状態を維持する。この状態ではコイルスプリング51の付勢力にしたがって係止爪52が前方に付勢され続ける。そして、流入口シール部71、空気孔シール部72により液通孔35、空気孔36を封ずるようにしている。
【0027】
また、この蓋閉状態では、図4に示すように左右辺部61bは側面が倒J字形状になって長手方向に伸張し、左右辺部61bの復元弾性力である長手方向の収縮力Fは最大に伸張しており、その収縮力Fの方向は、左右辺部61bの長手方向となり、左右辺部61bが回動軸6の外周面6aに接触する部位においては、前記長手方向は外周面6aの接線方向となる。そして、回動軸6の中心軸線6Zと左右辺部61bの中心軸線との距離Lが、トルクにおける腕の長さとなり、この結果、蓋体4を回動軸6を回転中心として時計方向にトルクが付加されている。尚、このトルクTは、T=F×Lとなる。このトルクに抗して係止爪52が係止受け部39に係止している。
【0028】
一方、閉蓋状態の蓋体4を蓋開するときは、操作部53をコイルスプリング51の付勢力に抗して後方にスライドすることで係止爪52を後方に移動することにより、係止受け部39との係止を解除する。この係止解除により、図5に示すように、前記トルクにより蓋体4は回動軸6を回転中心として時計方向に全閉と前開の途中である中開き状態となって回動する。さらに、弾性部材61の弾性復元力に基づく前記トルクにより図6に示すように蓋体4が回動軸6を中心として全開状態となり、この結果流入口シール部71、空気孔シール部72が離れた液通孔35、空気孔36は開口する。
【0029】
この状態で、容器本体2を傾斜することで、収容した液体は、液通孔35を通過して液流路37を介して注ぎ口30より注ぎ出る。この際、前後方向(回動軸6の軸方向に直交する方向)の径Aを長径、左右方向(回動軸6の軸方向と平行な方向)の径Bを短径(A>B)としているので、液流路37において液体は左右に広がるようなことなく、注ぎ口30方向に向けて細長くなるように流れ出る。
【0030】
この全開状態においても、左右辺部61bの長手方向の収縮力fは最小となって残存しており(F>f)、この復元弾性力fと腕の長さLによるトルクによって蓋体4は回動軸6を回転中心として時計方向回りに付勢されるが、蓋部42の後端が栓体本体3(取付部32)の後ろ側に係止されて、それ以上の回動が阻止されている。そして、この回動阻止の直前には、係止用突起69が係止受け用突起68を両者間の弾性変形を利用して乗り越え、この結果蓋体4が振動などの比較的小さい力で逆戻りできないようになっている。
【0031】
この後、回動軸6を中心として弾性部材61に抗して、蓋体4を閉じるように指掛け部53aに指を当てて押し付けると、係止爪52の傾斜した下面54が、上面39aに当接し、さらに蓋体4を押し付けると係止爪52の傾斜した下面54が上面39aの傾斜に沿って後ろ側に移動する。この移動はコイルスプリング51の付勢力に抗してなされる。係止爪52が係止爪52の傾斜した下面に達すると両者間の当接状態が解除されて、コイルスプリング51の付勢力で係止爪52は倒凹部からなる係止受け部39に押込まれて係止状態を維持する。
【0032】
このような回動軸6を中心として弾性部材61に抗して、蓋体4を閉じるときには、再び左右辺部61bは回動軸6に掛け止められて折り返すことにより、弾性復元力を次第に大きくするものである。
【0033】
以上のように、前記実施例では容器本体2の上部開口に着脱自在に取り付けられる栓体本体3と、該栓体本体3内側に形成された液流路37と、該液流路37の上部かつ前記栓体本体3の前側に設けた注ぎ口30と、前記栓体本体3の後ろ側で該栓体本体3に回動自在に軸支され前記液流路37を開閉する蓋体4と、該蓋体4に設けられ前記液流路37を上方から液密に密閉する流入口シール部71と、前記蓋体4を閉状態に係止する係止部材5と、前記蓋体4を開方向へ付勢する非金属製の弾性部材61とを備え、前記蓋体6の回動軸6の外周面6aに沿って細長状の弾性部材61を設置し、該弾性部材61の長手方向の収縮力F,fが前記回動軸6の接線方向に作用することにより、前記弾性部材61が前記蓋体4を開方向に付勢するようにしたことにより、金属製バネを使用することなく蓋体4を開方向へ付勢でき、さらに、弾性部材61の収縮力F,fにより蓋体4を開方向へ確実に付勢でき、しかも弾性部材61はゴム状であるので安価になる。
【0034】
また、前記弾性部材61の両端に係止部としての一側辺部61a及び他側辺部61cを設けると共に、前記栓体本体3と前記蓋体4の各々に前記弾性部材61の一端と他端の一側辺部61a及び他側辺部61cをそれぞれ係止する係止受け部66,67を設けることで、ゴム状の弾性部材61を前記栓体本体3と前記蓋体4との間に簡単に組立てすることができる。
【0035】
さらに、前記弾性部材61の一端側の係止受け部66は、前記蓋体4の回動軸6を有する栓体本体3の軸支部62であることにより、軸支部62により回動軸6を支持すると共に、弾性部材61の一端側を係止でき、部品数の減少を図ることができる。
【0036】
しかも、前記実施例では前部に注ぎ口30を有する栓体本体3の後ろ側に軸支部62を立設して、この軸支部62に回動軸6を左右方向に設けると共に、蓋体4の後ろ側を回動軸6に接続して該蓋体4を前後方向に180°開閉自在に設け、そして栓体本体3の後ろ側と蓋体4の後ろ側を接続し、該蓋体4を常時開方向に付勢するOリング状或いは輪ゴム状の弾性部材61は、その一側辺部61aを回動軸6より下方前側に接続するようにし、また他側辺部61cは閉蓋時は蓋体4の後ろ側であって回動軸6の上方に、開蓋時は蓋体4の後ろ側であって回動軸6の下方に設けられ、そして左右辺部61bは開蓋時には回動軸6の下方位置で後方に向けて設けられると共に、閉蓋時には回動軸6の下方から後方にかけて再び前方へ向かうように略倒U字形状となって回動軸6の外周面6aに沿って掛け止められて、その収縮力F,fと、左右辺部61bと中心軸線6Z間の腕の長さLによるトルクによって蓋体4を常時開方向に付勢でき、さらに、弾性部材61はOリング、輪ゴムのような環状であるので、左右辺部61bを回動軸6の外周面6aの後ろ側略半周に掛け巻きつけると共に、一側辺部61a及び他側辺部61cを栓体本体3と蓋体4に掛け止めして係止することで、弾性部材61を簡単に取り付けすることができる。
【実施例2】
【0037】
以下に他の実施例について説明する。尚、前記実施例1と同一部分には同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0038】
図7は実施例2を示しており、前記栓体部31の上面より上方に突出する周壁40を高く形成することで、飲み口81を形成したものである。そして、係止部材5は、蓋下部41の左右外周壁からの一方から左右方向に突出しており、係止部材5が係止可能な栓体本体3の係止受け部39を、係止部材5に対応して前記液流路37の外周外側の左右いずれか一方に配置している。
【0039】
このような注ぎ口30ではなく、飲み口81を設けたものにおいても、飲み口51の下方には従来技術のような係止部材などによる凹部や突起物はなくなるため、液だれして凹部に飲料が溜まり残留汚れになることなどがなくなる。
【実施例3】
【0040】
図8は実施例3を示しており、実施例1では左右一対の左右辺部61bが設けられていたが、実施例3では左右辺部61bをそれぞれ独立するようにしたものであり、弾性部材61´は、Oリングや輪ゴムのような環状のものではなく、紐ゴムのように直線状の1本ものであり、この弾性部材61´の両端にリング状の第1,2の係止部61a´,61c´を設け、そして第1,2の係止部61a´,61c´を栓体本体3と蓋体4にそれぞれ設けた突起状の第1,2の係止受け部66´,67´に係止して接続しているものである。この弾性部材61´により左右辺部61bと同様の作用を奏することができる。尚、弾性部材61´は左右辺部61bを独立させた合計2個ではなく、左右いずれか一方に1個のみ設けることとしてもよい。
【実施例4】
【0041】
図9に示す実施例4では、両端にリング状の第1,2の係止部61a´,61c´を設けた弾性部材61´を液流路37の長径Aの延長方向に配置するように、軸支部62を、長径Aの延長方向ではなくそれより偏位するように回動軸6の中心軸線6Zの方向のいずれか一方、すなわち左右いずれか側にシフトしたものである。したがって、第1の係止部61a´を栓体部31の上面において軸支部62の前部に突設した係止受け用突起66´に係止して接続し、辺部61b´を回動軸6の下方を通して第2の係止部61c´を第2の係止受け部67´に係止することで、弾性部材61´が蓋体4を開方向に付勢するようになっている。
【実施例5】
【0042】
図10に示す実施例5では、両端にリング状の第1,2の係止部61a´,61c´を設けた弾性部材61´を液流路37の長径Aの延長方向に配置するように、軸支部62において長径Aの延長方向に弾性部材61´の辺部61b´が挿通する溝92を形成している。
【0043】
したがって、第1の係止部61a´を栓体部31の上面において軸支部62の前部に突設した係止受け用突起66´に係止して接続し、第2の係止部61c´を第2の係止受け部67´に係止することで、弾性部材61´が蓋体4を開方向に付勢するようになっている。
【産業上の利用可能性】
【0044】
以上のように本発明に係る飲料用容器の栓体は、各種の用途に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の実施例1を示す閉蓋状態の斜視図である。
【図2】本発明の実施例1を示す開蓋状態の斜視図である。
【図3】本発明の実施例1を示す平面図である。
【図4】本発明の実施例1を示す全閉時の断面図であり、図4(A)は全体の断面図であり、図4(B)は要部の断面図である。
【図5】本発明の実施例1を示す開く途中の断面図であり、図5(A)は全体の断面図であり、図5(B)は要部の断面図である。
【図6】本発明の実施例1を示す全開時の断面図であり、図6(A)は全体の断面図であり、図6(B)は要部の断面図である。
【図7】本発明の実施例2を示す斜視図である。
【図8】本発明の実施例3を示す斜視図である。
【図9】本発明の実施例4を示す斜視図である。
【図10】本発明の実施例5を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0046】
2 容器本体
3 栓体本体
4 蓋体
5 係止部材
6 回動軸
6a 外周面
30 注ぎ口
37 液流路
61 弾性部材
61a 一側辺部(係止部)
61c 他側辺部(係止部)
62 軸支部
66,67 係止受け部
71 流入口シール部(止水部材)
81 飲み口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体の上部開口に着脱自在に取り付けられる栓体本体と、該栓体本体内側に形成された液流路と、該液流路の上部かつ前記栓体本体の前側に設けた注ぎ口又は飲み口と、前記栓体本体の後ろ側で該栓体本体に水平方向の回動軸を介して回動自在に軸支され前記液流路を開閉する蓋体と、該蓋体に設けられ前記液流路を上方から液密に密閉する止水部材と、前記蓋体を閉状態に係止する係止部材と、前記蓋体を開方向へ付勢する非金属製の弾性部材とを備えた飲料用容器の栓体において、
前記蓋体は、前記回動軸を中心として上方に回動して蓋開状態となり、
細長状の前記弾性部材の一側部を前記栓体本体の前記回動軸の中心軸線よりも前記容器本体の中心側でかつ下方に配置すると共に、前記弾性部材の他側部を前記蓋体に配置し、
蓋閉状態で前記弾性部材の中間部を前記回動軸の外周面後ろ側略半周に巻きつけると共に、前記弾性部材の他側部を前記回動軸の中心軸線の上方に配置することにより、蓋閉状態と中開き時には、前記弾性部材は、回動軸に掛けられて折り返されるようにし、
蓋開状態で前記弾性部材の中間部を前記回動軸の下方に位置して後方へ直線状に配置し、前記弾性部材が前記回動軸の中心軸線の下方に位置するように配置して、
前記回動軸の中心軸線と前記中間部の中心軸線との距離と前記弾性部材の収縮力とのトルクにより前記蓋体を開方向へ付勢することを特徴とする飲料用容器の栓体。
【請求項2】
前記弾性部材の両端に係止部を設けると共に、前記栓体本体と前記蓋体の各々に前記弾性部材の一端と他端の係止部をそれぞれ係止する係止受け部を設けたことを特徴とする請求項1記載の飲料用容器の栓体。
【請求項3】
請求項3の発明は、前記弾性部材の一端側の係止受け部は、前記蓋体の回動軸を有する栓体本体の軸支部であることを特徴とする請求項2記載の飲料用容器の栓体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−98781(P2011−98781A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−283177(P2010−283177)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【分割の表示】特願2006−335066(P2006−335066)の分割
【原出願日】平成18年12月12日(2006.12.12)
【出願人】(591261602)サーモス株式会社 (76)
【Fターム(参考)】