説明

飲料用容器の栓体

【課題】シール部材の取り付けの有無を簡単に確認できるようにする。
【解決手段】栓体3のシール部材18は下部内側円筒部15の外面に添着される周面部27と周面部27の下部に連設されて底壁17の下面に添着される底面部28を有する有底凹状に形成されている。底面部28の平面の中央に上向きの係合突起39を設ける。そして、栓体本体12の底壁17の中央に設けた係合穴44に係合突起39を栓体3の周方向で回転可能に挿入する。したがって、栓体3の中央部でシール部材18の着脱操作を行うことができる。また、栓体3を閉めた状態でシール部材18の有無を係合穴44に挿入した係合突起39を視認して簡単に確認することができる。栓体本体12、シール部材18の第一の注液穴24、第二の注液穴36は連通して液を吐出できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料用容器の栓体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の飲料用容器は、飲料用の容器本体の上部開口に螺子により被着された栓体の口部に蓋体が開閉自在に設けられており、前記栓体には容器本体の開口を水密に塞ぐシール部材が設けられており、このシール部材はリング状であって、栓体の下部外面に形成された取り付け用溝にややはみ出した状態で嵌着したものであり、このシール部材が容器本体の上部開口側の内面に水密に取り付けられるようになっている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−209764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術のようにシール部材が栓体の下部外面に形成された取り付け用溝に嵌着したものにおいては、シール部材を嵌着する溝が全周にあるため、シール部材をいったん伸ばして着脱しなければならず、着脱操作性に懸念があり、またシール部材の取り付けは、シール部材が取り付け用溝よりややはみ出た状態を視認することなどによって行うので取り付け状態の確認がしにくい。さらに栓体を回して開栓や閉栓をする時においてシール部材と上部開口の内面との間に摺動摩擦抵抗が発生し、この結果、回動による栓体の着脱の操作抵抗(トルク)が増加することで、操作が重くなるなど操作性が低くなり、そして、十分に締め付けしないと漏れてしまう懸念がある。
【0005】
解決しようとする問題点は、栓体本体にシール部材を設け飲料用容器の栓体において、シール部材の着脱操作性、さらには付け忘れや紛失の防止のためにシール部材の取り付け状態の視認性を向上する点である。また、開栓や閉栓をする時の栓体の回動による栓着脱操作性やシール部材の止水性、着脱耐久性、栓体の洗浄性を向上する点である。さらに、内部減圧状態での開栓時におけるシール部材の脱落防止を図る点である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明の飲料用容器の栓体は、飲料用の容器本体の上部開口に被着され口部を有する栓体本体と、前記栓体本体に被着され該栓体本体の口部を開閉する蓋体と、前記栓体本体に装着され前記上部開口を水密に塞ぐシール部材を有する飲料用容器の栓体において、内部に上下方向の流路を設けた前記栓体本体の下部に底壁を設け、前記底壁に上下方向の第一の注液穴を設けると共に該底壁の中央に係合穴を設け、前記シール部材を有底凹状に形成し、該シール部材の底面部に第二の注液穴を設けると共に、前記底面部の中央に上向きの係合突起を設け、該係合突起を前記係合穴に挿入することにより前記シール部材を前記栓体本体に周方向で回転可能に設けることを特徴とする。
【0007】
請求項2の発明の飲料用容器の栓体は、請求項1において、前記シール部材の上向きの係合突起の上端縁部に前記栓体本体の係合穴よりも径大の抜け止め鍔部を設けたことを特徴とする。
【0008】
請求項3の発明の飲料用容器の栓体は、請求項1又は2において、前記栓体本体、前記シール部材の前記第一、第二の注液穴は、おのおのの底壁、底面部の周縁に放射状に複数個配置し、前記第一、第二の注液穴の内周径と外周径がそれぞれ略同一にすると共に、前記シール部材が前記栓体に対して回動した場合にも相対した前記第一、第二の注液穴同士が総て覆われることなく前記栓体本体の内外へ連通する前記注液穴が液の吐出と通気に必要な開口面積、位置関係を保持することを特徴とする。
【0009】
請求項4の発明の飲料用容器の栓体は、請求項3において、前記栓体本体の第一の注液穴の第一の周方向の長さが前記シール部材の第二の注液穴の第二の周方向の長さよりも大であり、かつ前記栓体本体の第一の注液穴の個数が前記シール部材の第二の注液穴の個数よりも少ないこと又は同数であることを特徴とする。
【0010】
請求項5の発明の飲料用容器の栓体は、請求項1〜4において、前記シール部材の上向きの係合突起の上面の中央部に、前記シール部材を前記栓体に着脱するための指当て部を設けたことを特徴とする。
【0011】
請求項6の発明の飲料用容器の栓体は、請求項1〜5において、前記シール部材は、前記上部開口の内面の内向き止水突起に当接する第一の止水部及び前記内向き止水突起より上方側の内側面を水密に保つ第二の止水部を有すると共に、前記栓体を締め付けた際に前記シール部材の内面下部と前記栓体の内部外面下部の間を水密に保つ第三の止水部及び、前記シール部材上端の上向き面と前記栓体の外面上部の段部下向き面の間を水密に保つ第四の止水部を有することを特徴とする。
【0012】
請求項7の発明の飲料用容器の栓体は、請求項1〜6において、前記シール部材は前記栓体の内部外面に対して平滑に設けられて、開栓時に前記第二の止水部で生ずるシール部材と前記上部開口の内側面の摩擦により栓本体に対して下方にずれることで前記第三の止水部、第四の止水部の水密状態が解除されて通気路が確保され、かつ前記上部開口から前記栓体を外した際に前記シール部材がその弾性によって元の装着状態に戻ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、係合突起を係合穴に挿入することによりシール部材の取り付け状態を視認でき、付け忘れや紛失の防止を図ることができる。
【0014】
請求項2の発明によれば、抜け止め鍔部によってシール部材を確実に装着することができる。
【0015】
請求項3の発明によれば、液の吐出状態と通気状態を良好に確保することができる。
【0016】
請求項4の発明によれば、液の吐出状態と通気状態を良好にいっそう確保することができる。
【0017】
請求項5の発明によれば、指当て部によってシール部材の着脱操作性を向上することができる。
【0018】
請求項6の発明によれば、第二の液通孔から第一の液通孔を通らないで栓体の外部に漏れようとする液の止水を行うことができる。
【0019】
請求項7の発明によれば、容器本体の内部減圧状態での開栓時におけるシール部材の脱落防止を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施例1を示す閉栓時の断面図である
【図2】同開栓途中時の断面図である。
【図3】同栓体の底面図である。
【図4】同栓体の分解斜視図である。
【図5】本発明の実施例2を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明における好適な実施の形態について、添付図面を参照して説明する。尚、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を限定するものではない。また、以下に説明される構成の全てが、本発明の必須要件であるとは限らない。
【実施例1】
【0022】
図1〜4は実施例1を示しており、水、コーヒ、お茶或いは清涼飲料を収容する飲料用容器は、容器本体1の上部に円筒状に設けられている上部開口2に栓体3を被着すると共に、この栓体3には蓋体4が開閉自在に設けられている。容器本体1は、有底筒状の外筒5の内側に有底筒状の内筒6を配置すると共に、相互の上端を接合して上部開口2を形成しており、外筒5と内筒6との間には真空空間7が設けられる。そして上部開口2に連設する首部となっている外筒5の外周に第一の雄ネジ8が容器本体1の中心軸線9を中心として形成されている。また、上部開口2の内面の下部に内向き止水突起となる第一の段部10及びその上部に第二の段部11が設けられており、これら第一の段部10、第二の段部11はいずれも下方が上方よりも径小となるように中心軸線9を中心とした円環状に設けられている。
【0023】
前記栓体3の栓体本体12は、合成樹脂製であって、中心軸線9と同軸状のほぼ円筒形状であって、上部開口2上に被着され上端が口部13Aとなって飲み口または注ぎ口となる上部円筒部13と、この上部円筒部13の下方の外側に連設され外筒5の首部の外側に配置される下部外側円筒部14と、上部円筒部13の下方の内側に連設され上部開口2の内側に配置されて栓体3の内側を形成する下部内側円筒部15と、この下部内側円筒部15の下部に、容器本体1の内部から上部円筒部13に至る飲料の流路16を遮断するように中心軸線9を中心とした平面が円形の底壁17を設ける。そして、下部内側円筒部15の外面に止水のためのシリコンなどのゴム状弾性材からなるシール部材18が装着している。
【0024】
下部外側円筒部14の内面には第一の雄ネジ8に螺着する第一の雌ネジ19が形成されている。また、下部内側円筒部15の内面には第二の雌ネジ20が中心軸線9を中心として形成されており、この第二の雌ネジ20に蓋体4に設けた第二の雄ネジ21が螺着できるようになっている。尚、第二の雌ネジ20、第二の雄ネジ21は二条ネジであって、第二の雌ネジ20は後述するように吐出した液体の障壁を兼用する。更に、下部内側円筒部15の外面の上下方向のほぼ中間に第三の段部22が設けられ、この第三の段部22は下部内側円筒部15の上方よりも段部下向き面23を介して下方が径小に形成されている。
【0025】
さらに、底壁17の外周縁に沿って上下方向を貫通すると共に平面が円弧状の第一の注液穴24を複数円環状に配置することで、隣接する第一の注液穴24間には底壁17の周縁と第一の中底壁部25とを結ぶ第一の連絡橋部26が形成される。この第一の連絡橋部26は中心軸線9を中心とした放射方向に配置されている。実施例では第一の注液穴24は、等間隔に4箇所に設けられており、この結果第一の連絡橋部26も中心軸線9を中心として等間隔に4箇所に配置されており、また4箇所の注液穴24の上方に、螺旋方向に断続的に設けられる同数、実施例では4箇所の第二の雌ネジ20が正対向するように配置されている。
【0026】
前記シール部材18は、中心軸線9を中心とした有底短円筒形であって、下部内側円筒部15の外面に嵌着する短円筒状の周面部27と、この周面部27の下部に連設して下方を塞ぎ底壁17の下面に添着するように底壁17の下面を覆う底面部28とを有する。
【0027】
前記シール部材18の周面部27の外面は上部開口2側にある第一の段部10と第二の段部11との間に隙間29を介して対向しており、周面部27の外面の下部に第一の段部10に当接する第一の止水部30を一体に設ける。この第一の止水部30はその縦断面が先細な三角形或いは矩形の小突起状であって中心軸線9を中心として円環状に配置されており、第一の止水部30の先端が第一の段部10に当接できるようになっている。また、シール部材18の周面部27の外面の上部に第二の段部11の真上と真下に当接する上下一対の第二の止水部31を一体に設ける。この第二の止水部31はその縦断面が矩形或いは先細な三角形の小突起状であって中心軸線9を中心として円環状に配置されており、第二の止水部31の先端が第二の段部11の真上と真下にそれぞれ当接できるようになっている。
【0028】
また、外面に溝などがなく平坦面となっている下部内側円筒部15が底壁17の周縁より立設していることにより、下部内側円筒部15の外周面と底壁17の下面との接続部には円の略1/4円弧状の第一の角部32が形成されている。そして、シール部材18の周面部27の内面と底面部28の上面との接続箇所によって第二の角部33が形成されることにより、この第二の角部33の内面、上面によって第一の角部32の外面に当接して密着することで止水できる第三の止水部34が形成されている。
【0029】
さらに、周面部27の上端に水平な上向き面により第四の止水部35が形成されており、この第四の止水部35が段部下向き面23に当接して止水するようになっている。
【0030】
底面部28には、その外周縁に沿って上下方向を貫通すると共に平面が円弧状の第二の注液穴36を複数円環状に配置することで、隣接する第二の注液穴36間には底面部28の周縁と中心軸線9上の第二の中底面部37とを結ぶ第二の連絡橋部38が形成される。この第二の連絡橋部38は中心軸線9を中心とした放射方向に配置されている。尚、第一の注液穴24と第二の注液穴36における中心軸線9を中心とした外縁、内縁の半径はほぼ同じに形成されている。
【0031】
さらに、中心軸線9を中心として第一の中底壁部25、第二の中底面部37はほぼ同じ外径を有するものであって、第二の中底面部37の上面中央に縦断面がT字型となる係合突起39を上向きに突設する。すなわち、この係合突起39は上端に指当て可能なほぼ水平な平坦をなした上部指当て部40が設けられると共に、この上部指当て部40の外周に、第二の中底面部37よりもやや小径な抜け止め鍔部41を有する円柱状突起本体42を中心軸線9上に立設したものである。尚、上部指当て部40はやや上方に突設したり、やや下方に凹設してもよい。また、円柱状突起本体42の下面には上向きにやや凹設した下部指当て部43が設けられている。
【0032】
そして、第一の中底壁部25の中心軸線9上に形成され突起本体42とほぼ同径な平面円形な係合穴44に、突起本体42を下方から無理に挿入することで、係合穴44に突起本体42が係合し、抜け止め鍔部41が第一の中底壁部25の上面に係止すると共に第二の中底面部37が第一の中底壁部25の下面に係止することで、シール部材18が栓体3に周方向で回転可能に装着されるようになっている。
【0033】
さらに、中心軸線9を中心として第一の注液穴24、第二の注液穴36の内周径と外周径がそれぞれ略同一にすると共に、シール部材18が栓体3に対して回動した場合にも相対した第一の注液穴24、第二の注液穴36同士が総て覆われることなく栓体3内外へ連通する流路16が液の吐出と通気に必要な開口面積、位置関係を保持する構造となっている。このため、栓体3の第一の注液穴24の第一の周方向の長さAが前記シール部材18の第二の注液穴36の第二の周方向の長さBよりも大であり、かつ前記栓体3の第一の注液穴24の個数が前記シール部材18の第二の注液穴36の個数よりも少ないこと又は同数になっており、実施例では第一の周方向の長さAが、第二の周方向の長さBに第二の連絡橋部38の第三の周方向の長さCを加えたものより長く形成されている。尚、第二の雌ネジ20の第四の周方向の長さDは第一の周方向の長さAより短く、第二の周方向の長さBより長く形成されている。
【0034】
前記蓋体4は、合成樹脂製であって、その下面中央に小径で有底な蓋円筒部45が下向きに突設しており、この蓋円筒部45に断熱材46が充填されていると共に、蓋円筒部45の上部にリング状シール部材47が設けられ、このリング状シール部材47は閉蓋時に上部円筒部13の内面に当接するようになっている。また、蓋円筒部45の外面に前記第二の雄ネジ21が設けられている。
【0035】
次に前記構成について説明する。上部開口2から例えばお茶などの飲料液を容器本体1に収容した後に、第一の雌ネジ19を第一の雄ネジ8に螺着することで、容器本体1に栓体3を装着する。このため、第一〜四の止水部30,31,34,35は、それぞれ第一の段部10、第二の段部11、第一の角部32の外面、段部下向き面23に当接することで止水がなされる。さらに、第二の雌ネジ20に第二の雄ネジ21を螺着することで、栓体3に蓋体4を装着する。このためリング状シール部材47は閉蓋時に上部円筒部13の内周面に当接して液流路16が遮断されて、容器本体1に収容されているお茶の液は液密に保温される。
【0036】
飲料を飲むときには、蓋体4を回して第二の雌ネジ20より第二の雄ネジ21を脱して蓋体4を栓体3より上方へ外す。そして、栓体3を下向きになるように容器本体1を傾けることにより、収容されている飲料液は第二の注液穴36、第二の注液穴36と連通する第一の注液穴24の部位を通って上部円筒部13側に吐出され、口部13Aに唇(図示せず)を着けて飲用する。この際、第一の注液穴24より吐出された飲料液は第一の注液穴24と正対する第二の雌ネジ20が障壁となって二股状に別れ、そして第二の雌ネジ20の周方向の両端、すなわち断続的に複数設けられる第二の雌ネジ20相互間を通って飲み口側となる上部円筒部13側に吐出される。
【0037】
尚、容器本体1を傾けて収容されていた液を吐出する際、第二の注液穴36を通った液の一部が底壁17の下面と底面部28の上面との間に浸入したとしても、第三の止水部32で止水を行うことができ、さらに液が万一第三の止水部32を通ったとしても、液を第四の止水部35で止水することができ、液が栓体本体12とシール部材18との間から漏れるようなことはなくなる。
【0038】
このようにして飲料用容器として使用されている途中で、栓体3を水洗する場合には、栓体3を容器本体1に対して回すことで、第二の雌ネジ20と第二の雄ネジ21との螺着をやや緩める。この際、例えば容器本体1の内部が減圧状態の場合などでは、シール部材18の周面部27は下部内側円筒部15の外面に対して滑り、第一の角部32に対して第二の角部33、ひいては第三の止水部34が下降して両者間に僅かな第一の隙間Eが形成されると共に、段部下向き面23に対して第四の止水部35が下降して両者間に僅かな第二の隙間Fが形成される。これは合成樹脂製の下部内側円筒部15と、合成樹脂であるシリコン製のシール部材18との平滑な面接触による抜き出し摩擦力より、底面部28が下方に吸引される吸引力が勝ることで、第一の隙間E、第二の隙間Fを形成するものである。そして、このように第一の隙間E、第二の隙間Fを形成することで、これらの第一の隙間E、第二の隙間Fを介して外気が下部内側円筒部15と周面部27との僅かな通気路用隙間(図示せず)、底壁17と底面部28との僅かな通気路用隙間(図示せず)を通って減圧状態にある内筒6内に導入されることで、栓体3を弱い力で上部開口2より取り外すことができる。この際、シール部材18における周面部27、底面部28は自由度が向上した状態で弾性変形し、この結果周面部27、底面部28に大きな歪が生じようとしても、これを阻止でき、このため上部開口2より下部内側円筒部15を抜き出す際に栓体3のシール部材18に亀裂や栓体本体12からの分離・脱落が生じない。尚、容器本体1の内部が減圧状態ではなく、栓体3の取り付け、取り外し時にシール部材18に過大な力が加わったような状態でも、第一の隙間E、第二の隙間Fが形成されるようにすることでシール部材18の変形自由度を向上して破損を防ぐことができる。
【0039】
そして、栓体3を容器本体より外すとシール部材18の弾性復元力により底面部28は底壁17に密着するようになっている。
【0040】
さらに、シール部材18を底壁17より外すときは、上部指当て部40に指(図示せず)を多少無理に押圧することで、鍔部41、ひいては係合突起39が弾性変形して係合穴44を下方に抜け出ることで、シール部材18を取り出すことができる。
【0041】
一方、洗浄後に組み立てるときは、下部指当て部43に指(図示せず)を当てて、シール部材18の係合突起39を係合穴44にやや無理に挿入することで鍔部41を底壁17の上面に係止せしめて抜け止めする。この際、第三の止水部34、第四の止水部35はそれぞれ第一の角部32、段部下向き面23に隙間なく密着している。そして、シール部材18を上部開口2に押し込むようにして第一の雄ネジ8に第一の雌ネジ19を螺着することで、栓体3を上部開口2に装着することができる。
【0042】
以上のように、前記実施例においては、飲料用の容器本体1における平面が円形で上下方向に円筒状の上部開口2に被着され上部に上部円筒部13と平面円形の口部13Aを有する栓体本体12と、栓体本体12に被着され口部13Aを開閉する蓋体4と、栓体本体12に装着され容器本体1の上部開口2に挿入してその内側を水密に塞ぐゴム状の弾性を有するシール部材18を備え、栓体本体12はその内部に口部13Aに連通する上下方向の流路16を筒部を形成する上部円筒部13、下部内側円筒部15を介して設けると共に、下部に底壁17を設け、底壁17には上下方向の第一の注液穴24を設けると共に底壁17の中央に係合穴44を上下方向に設け、シール部材18は下部内側円筒部15の外面に添着される周面部27と周面部27の下部に連設されて底壁17の下面に添着される底面部28を有する有底凹状に形成され、シール部材18の底面部28に上下方向の第二の注液穴36を設けると共に、底面部28の平面の中央に上向きの係合突起39を設け、底壁17の平面の中央に設けた上下方向の係合穴44に係合突起39を栓体3の周方向で回転可能に挿入することにより、栓体3の中央部でシール部材18の着脱操作を行うことができる。また、栓体3を閉めた状態でシール部材18の有無を係合穴44に挿入した係合突起39を視認して簡単に確認することができる。そして、従来技術のように栓体本体12の周壁の外面にシール部材装着用の溝がなく、下部内側円筒部15の外面は平坦となるため、洗浄性の高い栓体3となる。
【0043】
また、シール部材18の上向きの係合突起39の上端縁部に底壁17の上面に係止可能で栓体3の係合穴44よりも径大の抜け止め鍔部41を設けたことにより、従来のように周方向の溝にシール部材を嵌合する必要がなくなり、係合突起39の上下にある上部指当て部40、下部指当て部43を指で押圧することで着脱が簡便になる。
【0044】
さらに、栓体本体12、シール部材18の第一の注液穴24、第二の注液穴36はおのおの底壁17、底面部28の周縁側に放射状に複数個配置し、第一の注液穴24、第二の注液穴36の内周径と外周径がそれぞれ略同一にすると共に、シール部材18が栓体本体12に対して回動した場合にも相対した第一の注液穴24、第二の注液穴36同士が総て覆われることなく栓体本体12の内外へ連通する通路が液の吐出と通気に必要な開口面積、位置関係を保持することができる。
【0045】
また、栓体本体12の第一の注液穴24の第一の周方向の長さAが第二の注液穴36の第二の周方向の長さBよりも大であり、かつ栓体本体12の第一の注液穴24の個数が第二の注液穴36の個数よりも少ないこと又は同数であることで、シール部材18の放射状の第二の注液穴36の弧長を栓体3に設けた放射状の第一の注液穴24の弧長より短くすることで、シール部材18中央部の剛性が高くなり、着脱耐久性が向上できる。そして栓体3の第一の注液穴24の数よりもシール部材18の第二の注液穴36の数を多く設けることで、常に安定した吐出量、及び吐出状態・通気状態を得られる。
【0046】
さらに、シール部材18の上向きの係合突起39の上面の中央部に、シール部材18を栓体3に脱するため第一の上部指当て部40を設け、他方、係合突起39の下面の中央部に、シール部材18を栓体3に挿着するため第二の上部指当て部43を設けたことで、シール部材18は指で上方から或いは下方から押圧するだけで簡単にシール部材を外したり、着けたりすることができる。
【0047】
また、シール部材18は、周面部27の外面に設けられる平面が円環状の第一の止水部30、第二の止水部31のほかに、下部内側円筒部15の第一の角部32に水密状態に当接する平面が円環状の第三の止水部32、さらに周面部27の外面に下方が径小となるように形成した段部下向き面23に水密状態に当接する上向きで平面が円環状の第四の止水部35を設けることで、容器本体1を傾けて収容されていた液を吐出する際、第二の注液穴36を通った液の一部が底壁17の下面と底面部28の上面との間に浸入したとしても、第三の止水部32で止水を行うことができ、さらに液が万一第三の止水部32を通ったとしても、液を第四の止水部35で止水することができ、液が栓体本体12とシール部材18との間から漏れるようなことはなく、より確実な止水が可能となる。
【0048】
さらに、下部内側円筒部15の外面と周面部27の外面とは平坦状に当接しており、栓体3を上部開口2から上方への引き上げる開栓時において、下部内側円筒部15の外面とシール部材18の内面間には、両者間の垂直方向変位を拘束する周方向突起又は溝がなく、開栓時に容器本体1の内部が減圧状態にあったり、或いは第一の止水部30又は及び第二の止水部31で生ずるシール部材18と上部開口2の内面との摩擦により、シール部材18が栓体本体12に対して下方にずれることで第三の止水部34、第四の止水部35の水密状態が解除されて通気路が確保され、かつ容器本体1から前記栓体3を外した際にシール部材18がその弾性によって元の装着状態に復元することにより、栓体3を容器本体1への着脱時に、シール部材18と栓体本体12が一体で回転しないため、上部開口2の内面と第三の止水部34、第四の止水部35間の摺動摩擦が低減し、突起状の第三の止水部34、第四の止水部35の捩れや破断による漏れを防ぐことができる。
【実施例2】
【0049】
図5は実施例2を示しており、前記実施例1と同一部分には同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。実施例2では第二の注液穴36´を多数の小径で上下方向の貫通穴によって形成したものであり、このような場合でも第一の注液穴24に対して多数の第二の注液穴36´の一部が連通状態となって液の吐出ができるようになっている。また、実施例では蓋体4は第二の雌ネジ20、第二の雄ネジ21により螺着できるものを示したが、栓体本体に対してヒンジ軸を介して蓋体を開閉自在に設けてもよく、また実施例では上部円筒部13の口部13Aによって飲み口を形成したものを示したが、上部円筒部13の上部に注ぎ口を設けるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0050】
以上のように本発明に係る飲料用容器の栓体は、各種の用途に適用できる。
【符号の説明】
【0051】
1 容器本体
2 上部開口
3 栓体
4 蓋体
10 第一の段部(内向き止水突起)
12 栓体本体
13A 口部
16 流路
17 底壁
18 シール部材
24 第一の注液穴
27 周面部
28 底面部
30 第一の止水部
31 第二の止水部
34 第三の止水部
35 第四の止水部
36 第二の注液穴
39 係合突起
40 上部指当て部
41 抜け止め鍔部
44 係合穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲料用の容器本体の上部開口に被着され口部を有する栓体本体と、前記栓体本体に被着され該栓体本体の口部を開閉する蓋体と、前記栓体本体に装着され前記上部開口を水密に塞ぐシール部材を有する飲料用容器の栓体において、内部に上下方向の流路を設けた前記栓体本体の下部に底壁を設け、前記底壁に上下方向の第一の注液穴を設けると共に該底壁の中央に係合穴を設け、前記シール部材を有底凹状に形成し、該シール部材の底面部に第二の注液穴を設けると共に、前記底面部の中央に上向きの係合突起を設け、該係合突起を前記係合穴に挿入することにより前記シール部材を前記栓体本体に周方向で回転可能に設けることを特徴とする飲料用容器の栓体。
【請求項2】
前記シール部材の上向きの係合突起の上端縁部に前記栓体本体の係合穴よりも径大の抜け止め鍔部を設けたことを特徴とする請求項1記載の飲料用容器の栓体。
【請求項3】
前記栓体本体、前記シール部材の前記第一、第二の注液穴は、おのおのの底壁、底面部の周縁に放射状に複数個配置し、前記第一、第二の注液穴の内周径と外周径がそれぞれ略同一にすると共に、前記シール部材が前記栓体に対して回動した場合にも相対した前記第一、第二の注液穴同士が総て覆われることなく前記栓体本体の内外へ連通する前記注液穴が液の吐出と通気に必要な開口面積、位置関係を保持することを特徴とする請求項1又は2記載の飲料用容器の栓体。
【請求項4】
前記栓体本体の第一の注液穴の第一の周方向の長さが前記シール部材の第二の注液穴の第二の周方向の長さよりも大であり、かつ前記栓体本体の第一の注液穴の個数が前記シール部材の第二の注液穴の個数よりも少ないこと又は同数であることを特徴とする請求項3記載の飲料用容器の栓体。
【請求項5】
前記シール部材の上向きの係合突起の上面の中央部に、前記シール部材を前記栓体に着脱するための指当て部を設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の飲料用容器の栓体。
【請求項6】
前記シール部材は、前記上部開口の内面の内向き止水突起に当接する第一の止水部及び前記内向き止水突起より上方側の内側面を水密に保つ第二の止水部を有すると共に、前記栓体を締め付けた際に前記シール部材の内面下部と前記栓体の内部外面下部の間を水密に保つ第三の止水部及び、前記シール部材上端の上向き面と前記栓体の外面上部の段部下向き面の間を水密に保つ第四の止水部を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の飲料用容器の栓体。
【請求項7】
前記シール部材は前記栓体の内部外面に対して平滑に設けられて、開栓時に前記第二の止水部で生ずるシール部材と前記上部開口の内側面の摩擦により栓本体に対して下方にずれることで前記第三の止水部、第四の止水部の水密状態が解除されて通気路が確保され、かつ前記上部開口から前記栓体を外した際に前記シール部材がその弾性によって元の装着状態に戻ることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の飲料用容器の栓体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−206764(P2012−206764A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−75359(P2011−75359)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(591261602)サーモス株式会社 (76)
【Fターム(参考)】