説明

飲酒運転表示装置

【課題】本発明は、アルコールを検出し、飲酒運転である旨を車両のフロントガラス等を通して車外に知らしめることで飲酒運転の摘発を行うことを可能とする飲酒運転表示装置を提供することを目的とするものである。
【解決手段】本発明は、車両4内のフロントガラス5、サイドガラス6、リアガラス7の少なくとも一のガラス面に取り付けられるシート2と、該シート2上に、運転者あるいは同乗者の呼気中のアルコールに反応するアルコール反応試薬と、該アルコール反応試薬に反応して発色する発色試薬が含浸される飲酒運転表示部10を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲酒運転表示装置に関する。詳しくはアルコールを検出して車外の者に飲酒の事実を知らせしめる表示装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来よりアルコールの検出やその濃度の測定には、酵素法と呼ばれる方法が広く採用されており、そのためにアルコールを検知できる酵素と発色試薬を含浸させた試験紙が開発されている。この酵素法に用いられる酵素としては、酵母由来のアルコールデヒドロゲナーゼやアルコールオキシダーゼなどが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、飲酒検出装置として例えば図4に示すような発明がある。この飲酒検出装置101は、車両を運転する乗務員であることを特定する本人特定音声識別手段と、当該乗務員の吸気中に含まれるアルコールを検出するアルコール検出手段を備え、本人特定音声識別手段における音声入力部102とアルコール検出手段における呼気吹き込み部103を互いに近接させた構成とされる(特許文献2参照。)。
【0004】
【特許文献1】特開平7−23798号公報
【0005】
【特許文献2】特開2004−305494号公報(要約書、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで飲酒運転は重大な交通事故の原因となる。その飲酒運転の可能性の有無をチェックするに際しては、検問などにより走行車両に一旦停止をしてもらい、車両内に酒気を感じた場合には、運転手の呼気を風船に吹き込んでもらい、その風船をアルコール検出装置にセットして、あるいは、ハンディタイプのアルコール検出器に呼気を直接に吹きかけてもらって、アルコール成分の有無を検出している。
【0007】
しかしながらすべての走行している車両に対して一旦停止させる場合には、停止してもらったすべての車両につき1台ずつチェックをするのは大変な手間と時間がかかる。また、運転手の呼気をかいでみて、飲酒の可能性があるかどうかを判断するのは、運転手の協力も必要となり、その後にアルコール成分の有無をアルコール検出装置による検査を行うために非常に手間と時間を要することになる。
したがって、飲酒運転の検問では全車両を停車させるのではなく、自家用車のみを停車させているケースが多いが、近頃ではトラックやタクシーなどの運転者の飲酒が多くなっており、充分な取締りができないのが現状である。
【0008】
いっぽう、前記特許文献2における飲酒検出装置では、業務としてトラックやバス、タクシー等を運転する乗務員による飲酒運転を検出し、車両を走行不能にするシステムであるが、その構成要件として本人特定音声手段と、アルコール検出手段と、車両走行不能手段が必要となり、これらを自家用車などの一般車両に取り付けるには非常なコスト高となる。
【0009】
また、自家用車は本人以外の家族が運転する場合も多く、本人特定音声手段と、アルコール検出手段とによって飲酒運転を検出する構成では自家用車などの一般車両では適応することができない問題がある。
【0010】
本発明は、以上の点に鑑みて創案されたものであって、アルコールを検出し、飲酒運転である旨を車両のフロントガラス等を通して車外に知らしめることで飲酒運転の摘発を行うことを可能とする飲酒運転表示装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明に係る飲酒運転表示装置は、車両内のフロントガラス、サイドガラス、リアガラスの少なくとも一のガラス面に取り付けられるシートと、前記シート上に、運転者あるいは同乗者の呼気中のアルコールに反応するアルコール反応試薬と、該アルコール反応試薬に反応して発色する発色試薬が含浸される飲酒運転表示部を備える。
【0012】
ここで、フロントガラス、サイドガラス、リアガラスの少なくとも一のガラス面に取り付け可能としたシール上に、アルコールデヒドロゲナーゼ、ヘキサシアノ酸塩などのアルコール反応試薬と該アルコール反応試薬に反応して発色するホルマザン系色素などの発色試薬を、例えば「飲酒運転中」などの文字形態として含浸させることによって、飲酒状態の運転者が乗車した場合に、運転者の呼気中のアルコール濃度によりアルコール反応試薬が反応し、このアルコール反応試薬の化学的反応によって発色試薬が還元して発色することでフロントガラス、サイドガラス、リアガラスを通して車外へ「飲酒運転中」である表示を行うことが可能となる。
【0013】
また、上記の目的を達成するために、本発明に係る飲酒運転表示装置は、運転者あるいは同乗者の呼気中に含まれるアルコールを検出するためのアルコールセンサーを備えたアルコール検出手段と、前記アルコール検出手段によってアルコールが検出されると同時に車外に表示される飲酒運転表示手段を備える。
なお、飲酒運転表示手段としては、フロントガラス、サイドガラス、リアガラスに取り付けられる他に、車両のバンパーやナンバープレートに取り付けることも可能となる。
【0014】
ここで、呼気中のアルコールを感知検出するアルコールセンサーを備えたアルコール検出部とアルコール検出部によってアルコールが検出されたと同時に例えば「飲酒運転中」などの文字を表示する飲酒運転表示部を備えることによって、飲酒状態の運転者が乗車した場合に、運転者の呼気中のアルコールがアルコールセンサーにより検出され、このアルコールセンサーにより検出されることによってLED表示灯が点灯されることでフロントガラス、サイドガラス、リアガラスを通して車外へ「飲酒運転中」である表示を行うことが可能となる。
【0015】
また、「飲酒運転中」である表示を行う手段として、例えば「飲酒中」、あるいは「飲んでます」などの文字によって表示を行うことにより、車外の者に明確に表示することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の飲酒運転表示装置では、道路交通法によって車両に飲酒運転表示装置を取り付けることを法律義務化することで、飲酒した運転者が自家用車等を運転した場合に、車両内のアルコールを検知して、車外に対して「飲酒運転中」である旨を表示することが可能となる。
【0017】
また、車外に対して「飲酒運転中」である旨が表示されることによって、検問中にあっては「飲酒運転中」などの文字が発色又は点灯している車両のみを停車させ、運転者か同乗者のどちらかが飲酒しているのかのアルコール検査を行うことで自家用車、タクシーやトラックなどの営業車など区別することなく均一な飲酒運転の摘発を行うことができる。
【0018】
また、車外に対して「飲酒運転中」である旨が表示されることによって、一般の通行人が警察に通報することによって飲酒運転による事故を未然に防ぐことが可能となり、通行人は他の車両も危険を察知することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面を参酌しながら説明し、本発明の理解に供する。
実施例1
図1に、本発明を適用した飲酒運転表示装置の一例を示す説明図である。
【0020】
ここで示す飲酒運転表示装置1は、運転手の呼気によるアルコールを検知できる酵素と発色試薬を含浸させた試験紙を利用するものである。
【0021】
そこで試験紙の一例として、レーヨン、ビニロン、ポリエステル、ナイロン、アクリルなどのシール2に、アルコールデヒドロゲナーゼ、ヘキサシアノ酸塩などのアルコール反応試薬を含浸させ、このアルコール反応試薬に反応して発色するホルマザン系色素などの発色試薬を含浸させる。
【0022】
ところで前記アルコール反応試薬および発色試薬を、例えば図中で示すように「飲酒運転中」などの文字3としてシール2上に含浸させる。そして飲酒した運転者からの呼気によるアルコール成分がアルコールデヒドロゲナーゼに触れることによって、アルコールデヒドロゲナーゼはアルコール(特にエタノール)と酵素反応を起こし、アルコールデヒドロゲナーゼは直ちにアセトアルデヒドと二酸化炭素に変換され、このとき同時に生成する電子がホルマザン系色素を還元し、発色あるいは褐色させることで「飲酒運転中」の文字を表示することになる。
【0023】
このようにシール2上に、飲酒を表示する文字として模られたアルコール反応試薬および発色試薬を文字3として含浸させ、これらのシール2を図2(イ)(ロ)で示すように、車両4のフロントガラス5、サイドガラス6およびリアガラス7の運転に支障のない上部に沿って貼り付ける構成とするものである。
【0024】
なお、本実施例1ではアルコールと反応して発色、あるいは変色する試験紙方式を詳述したが、この試験紙方式では一度アルコールと反応して発色、あるいは変色した場合には、反応前の状態に戻らないものが殆んどであるが、将来的には一定時間後に元の状態に戻るアルコール反応試薬および発色試薬が開発されることが予想される。この場合にはアルコール反応により発色、あるいは変色した飲酒運転表示装置を取り替える必要性は無くなるものである。
【0025】
また、前記飲酒運転表示装置を運転者がアルコール反応をしないように故意に剥がして不正を行おうとした場合には、アルコール反応試薬および発色試薬が全面的に変色して不正をしたことが明らかとなるような構成とする、あるいは飲酒運転表示装置の取替えを防止するために警察署発行の封印シールによって取り替えられないようにすることが望ましい。
【0026】
実施例2
図3は、本発明を適用した飲酒運転表示装置の他の例を示す説明図である。
【0027】
ここで示す飲酒運転表示装置1Aは、呼気中のアルコールを感知検出するアルコールセンサー8を備えたアルコール検出部9とアルコール検出部9によってアルコールが検出されたと同時に例えば「飲酒運転中」などの文字を表示する飲酒運転表示部10とから構成されるものである。
【0028】
そこで、前記アルコール検出部9は運転者からの呼気がアルコールセンサー8に触れることによって呼気中のアルコールが検出される。前記飲酒運転表示部10は、アルコールセンサー8によるアルコール検出信号によって発光する多数のLED表示灯11などによって文字状に模られた構成とするものである。
【0029】
したがって、運転者からの呼気中のアルコール濃度が道路交通法におけるアルコール濃度規定値以下となるまでアルコールセンサー8によって検出されると同時に「飲酒運転中」などの文字表示がLED表示灯11によって車外へ表示され続けられることとなり、アルコールが検出されなくなった場合にはLED表示灯11が消灯されるものである。
【0030】
なお、アルコールセンサーには、電子式アルコールセンサーあるいはアルコールガスセンサー等があり、運転者からの呼気中のアルコールを検知し、このアルコール検出を電気信号に変換して車外の者が色の変化や発光によって「飲酒運転中」であることが確認できるような構成とする。
【0031】
このような飲酒運転表示装置1Aを、車両4のフロントガラス5、サイドガラス6およびリアガラス7の運転に支障のない上部に沿って貼り付ける構成とするものである。
なお、本実施例2においては、LED表示灯によって「飲酒運転中」であることを表示する構成について詳述したが、必ずしもLED表示灯である必要性はなく、例えば、文字状に屈曲形成されるネオン灯や蛍光灯などであっても構わないものである。
【0032】
また、飲酒運転表示部は必ずしも車両のフロントガラス、サイドガラスおよびリアガラスに取り付ける必要性は無く、例えば自動車のバンパーやナンバープレートなど車外の者が「飲酒運転中」であることを確認できる個所であれば何れの個所であっても構わない。
【0033】
また、本実施例1および本実施例2における「飲酒運転中」であることを文字により表示することで車外の者に確認させる手段について詳述するものであるが、必ずしも文字表示である必要性は無く、例えば道路交通法等の法律によって「赤色」に発色、あるいは変色した場合には「飲酒運転中」であると規定した場合には、文字表示でなくとも「飲酒運転中」であることを確認することが可能となる。
【0034】
以上の構成よりなる本発明の飲酒運転表示装置では、まず、道路交通法等の法律によって車両に飲酒運転表示装置を取り付けることを義務化することが前提条件となる。この場合には飲酒運転表示装置を取り付けていない場合には罰則規定を設け、その検証は車検時ごとに行うとともに、その取り替えの義務化を行うことが望ましい。
【0035】
なお、実施例1における飲酒運転表示装置ではアルコールとの反応によって発色した場合には、元の状態に戻らないケースも考えられる。このような場合には指定機関で買い求めて取り替える構成とすることが望ましい。
また、タクシーなどの場合には飲酒の乗客を乗せることが多く、その都度アルコールとの反応によって発色した場合には取り替える必要が生じるために、実施例1における飲酒運転表示装置ではなく、実施例2におけるアルコールセンサーによる表示手段を採用することが望ましい。
【0036】
また、飲酒運転表示装置は新車時、あるいは車検時に取り付けた後に、運転者が故意に剥がしてアルコール反応ができないように改良を加えようとした場合には、再び取り付けることができなくする。あるいは、改良したことを色の現出によって表示するようにすることが望ましい。
【0037】
ここで、運転者、または同乗者が飲酒した状態で車両に乗った場合には、車両内のフロントガラス、サイドガラス、あるいはリアガラスに取り付けられた飲酒運転表示装置によって「飲酒運転中」などの文字が発色又は点灯することによって車外者から飲酒運転者、あるいは同乗者の飲酒の確認が行われる。
【0038】
したがって、検問中にあっては「飲酒運転中」などの文字が発色又は点灯している車両のみを停車させ、運転者か同乗者のどちらかが飲酒しているのかのアルコール検査を行うことで容易に飲酒運転の摘発を行うことができる。
【0039】
また、一人乗車をしている場合には、飲酒運転が確実であるために検問以外で他の者が「飲酒運転中」の文字が発色又は点灯するのを発見した場合には携帯電話等により警察に通報することにより重大な事故が発生する前に飲酒運転者を摘発することが可能となる。
【0040】
また、タクシーなどの場合には、乗客が飲酒している場合が多く、運転者が飲酒しているのかの判別は困難であるが、飲酒の乗客者が下車した場合には短時間で「飲酒運転中」の文字の発色又は点灯が消える飲酒運転表示装置を取り付けるようにすることによって運転者のみの飲酒運転の摘発が行える。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明を適用した飲酒運転表示装置の実施例1における説明図である。
【図2】本発明を適用した飲酒運転表示装置の取り付け状態を示す説明図である。
【図3】本発明を適用した飲酒運転表示装置の実施例2における説明図である。
【図4】従来の飲酒検出装置の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0042】
1、1A 飲酒運転表示装置
2 シール
3 文字
4 車両
5 フロントガラス
6 サイドガラス
7 リアガラス
8 アルコールセンサー
9 アルコール検出部
10 飲酒運転表示部
11 LED表示灯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両内のフロントガラス、サイドガラス、リアガラスの少なくとも一のガラス面に取り付けられるシートと、
前記シート上に、運転者あるいは同乗者の呼気中のアルコールに反応するアルコール反応試薬と、該アルコール反応試薬に反応して発色する発色試薬が含浸される飲酒運転表示部を備える
ことを特徴とする飲酒運転表示装置。
【請求項2】
運転者あるいは同乗者の呼気中に含まれるアルコールを検出するためのアルコールセンサーを備えたアルコール検出手段と、
前記アルコール検出手段によってアルコールが検出されると同時に車外に表示される飲酒運転表示手段を備える
ことを特徴とする飲酒運転表示装置。
【請求項3】
前記飲酒運転表示手段がLED表示灯によって構成される
ことを特徴とする請求項2記載の飲酒運転表示装置。
【請求項4】
前記飲酒運転表示が文字形態によって表示される
ことを特徴とする請求項1または2記載の飲酒運転表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−206534(P2008−206534A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−43293(P2007−43293)
【出願日】平成19年2月23日(2007.2.23)
【出願人】(507060273)有限会社グレイシー (1)
【Fターム(参考)】