説明

飽和およびトランス不飽和脂肪酸含量の低い食用製品

本発明は、構造化された、油脂が連続した食用製品であって、食用製品が、製品全重量を基に表すと、35重量%未満の飽和脂肪酸、20〜100重量%の間のトリグリセリド組成、0〜80%の間の充填剤、15重量%未満の水を含む、食用製品に関する。トリグリセリド組成は、50重量%未満の飽和脂肪酸、10重量%未満のトランス不飽和脂肪酸、Pがパルミチン酸、Oがオレイン酸であるところの、少なくとも10重量%のPOPトリグリセリド、少なくとも1.3のSUS/SUU比、少なくとも15のSUS/S3比、少なくとも90重量%のC8〜18の脂肪酸、少なくとも1のC16/C18飽和脂肪酸比を含む。トリグリセリド組成は、20℃において3〜55%の間のSFCを有する。本発明はまた、このような製品の製造方法およびこのような製品への使用に適したトリグリセリド組成にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は請求項1の前文に記載のように構造化された、油脂が連続した食用製品に関する。本発明はまた、このような食用製品への使用に適したトリグリセリド組成物およびこのような食用製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
広く様々な食品において、油脂はその栄養上の重要性によるだけでなく、その広範な機能特性、およびその広く様々な乾燥原料、多くは粉末原料との混合への適合性により様々な用途が見出されている。このような用途において、油脂部分は通常、液体状態またはショートニング化した状態で均質化した乾燥原料の生地に加えられる。油脂はまた、水およびいくつかの乾燥原料と混合され得る。油脂と水が乳化するとき、均質化した製品が得られる。
【0003】
製品の構造はその配合、すなわち製品中の油脂および他の原料の量および性質、ならびにその製品の製造に使用される工程によって決定される。乳化、加熱、テンパリング、といった加工工程が製品の構造に影響を及ぼす。油脂はその機能特性により、具体的には最終食品の構造へのその影響により、配合される。油脂の性質が顕著な効果を有する食品の例はチョコレートであり、その硬い構造は固形油脂であるココアバターの存在によるものである。やや硬いサンド用クリームのような製菓用クリームは半固形油脂を含み;例えばチョコレートスプレッドのようなスプレッドは特有のやわらかさおよび塗りやすさを最終製品に付与する多量の液体油を含む。これらの例において、油脂相は少なくとも1つの粉末原料と混合される(例えば、砂糖、粉乳、ココアパウダー等)。配合製品の自然のおよび予想される構造によって、温度関数である特定の固体脂含有量(SFC)をもつ油脂が選ばれるであろう。異なる用途における典型的なSFC−プロファイルはEP−A−739.589 表22aにて説明されている。SFC−プロファイルは主にトリグリセリド組成において、油脂の(トリ)グリセリドを形成している脂肪酸の性質ならびに油脂を固化させるために使用する方法、具体的には結晶化の時間および温度、製品がテンパリングに供されるか否か、等によって決定する。ある温度において油脂が液体になるか固体になるかは、脂肪酸の鎖長だけでなく、具体的には脂肪酸の型すなわち飽和か不飽和かおよび不飽和脂肪酸の場合は異性体の型がシスまたはトランスかどうかによっても決定される。より硬い構造が必要な製品は、通常は油脂が相当多い量の飽和脂肪酸および/または不飽和脂肪酸のトランス異性体を含むであろうより高いSFC−プロファイルをもつ油脂を含むであろう。
【0004】
飽和脂肪酸(SAFA)は、ココアバター、パーム油、パーム核油、ココナッツ油、牛脂等のような天然油脂中に豊富に存在する。天然由来のトランス脂肪酸(TFA)は主に反芻動物の油脂中に見出される。天然の植物油脂には当該トランス異性体は含まれない。TFAは不飽和脂肪酸であるけれども、それらの構造および融解プロファイルは対応するシス型のものよりも、飽和脂肪酸により近い。
【0005】
現在、構造化された製品の製造に適した硬い構造の油脂が、広い範囲で当然に使用可能である。しかしながら、固体構造を有し、大部分がC14〜C20の炭素鎖をもつ脂肪酸を基とする油脂にいまだ需要がある。大豆、菜種、ひまわり、落花生油のような液体油の水素添加、それは「硬化」とも呼ばれるものは、固形油脂を得る技術として広く用いられている。工科は、不飽和脂肪酸の飽和脂肪酸(SAFA)への変換と同時に、シス不飽和脂肪酸のトランス異性体(TFA)への変換をも生じ、その両方が、水素添加による液体油から固形油脂への変換に寄与している。所望の構造を得るという機能的な理由からは、多量のSAFAおよび/またはTFAが推奨されるであろうけれども、栄養の点では、これらの脂肪酸の消費量は、それらが心臓疾患の発生のリスクを増加するとして、制限される。それゆえ、WHOのような公的機関では、SAFAおよびTFAの一日あたり摂取量の推奨上限値を公表している。トランスフェアスタディのような、食品中の油脂の消費傾向の調査では、SAFAおよびTFAの一日あたりの摂取量がいくつかの国で高すぎることを示す。
【0006】
このように、目的とする用途に適した所望の固形または半固形構造を示しているにも関わらず、SAFAおよび/またはTFAの量が制限されたトリグリセリドを含む食品系、構造化された食品および構造化された食用製品の必要性が存在する。一方では十分な固形構造をもつ食用製品の製造に使用可能であり、他方ではSAFAおよび/またはTFAの量が制限されているようなトリグリセリド組成物の必要性が存在する。そのような組成物の製造方法についての必要性もまた存在する。
【0007】
先行技術文献
EP−A−719.090は飽和脂肪酸含量が35重量%未満、5〜45重量%のS2U、0〜60重量%のSU2、5〜95重量%のU3および0〜8重量%のS3を含むスプレッドまたはマーガリンに使用するための油脂を開示する。マーガリン油脂中のジグリセリドの存在が結晶化反応に悪い影響を与えると信じられていることから、ジグリセリド含量は5重量%未満である。EP−A−719.090で開示されている油脂は、マーガリンに典型的な平坦なSFC−プロファイルであり、N5およびN20がそれぞれ5および20℃でのSFCであり、(N5−N20)が10未満で表されることを特徴としている。油脂組成によって提供される構造化の特性は、主に1.5〜4重量%のベヘン酸の存在の結果によるものと考えられる。これらの油脂を含む油中水型エマルジョンは良好な硬さを示す。スプレッドは、油脂、水ならびにいくつかの他の原料および添加物を混合し、85℃で殺菌し、続いて冷却および結晶化工程を行うことにより製造された。
【0008】
EP−A−875.152は層状特性(lamination properties)および構造化の特性を向上し、具体的には低飽和脂肪酸含量で良好な硬さとなる層状油脂(lamination fats)に関する。EP−A−875.152によると、このことは、長鎖脂肪酸を含むトリグリセリドが少量に存在、具体的には少量のアラキジン酸およびベヘン酸が存在することによりもたらされる。油脂混合物はさらに70〜85重量%の液体油および少なくとも15重量%の(H2M+H3)トリグリセリドを含み、50重量%未満の飽和脂肪酸含量、35未満のN35、および15〜40重量%のN20を有する。Hは少なくとも16個の炭素原子をもつ飽和脂肪酸を意味し、Mは6〜14個のC原子をもつ飽和脂肪酸を意味する。混合品は、いくらかの最低限のスティーブンス硬度を有していることを特徴とし、それによりパフペストリーでの使用に適している。20℃においてスティーブンステクスチャーアナライザーで直径4.4mmの円筒プローブを用いて測定した、油脂混合品のスティーブンス硬度は少なくとも150g、好ましくは150〜800gの間である。実施例にて開示された油脂混合品のSAFA含量は29〜35.2%の範囲であり、35℃での固体脂含量は10.6〜23.3%の範囲である。
【0009】
EP−A−687.142は飽和脂肪酸含量が40重量%未満、トランス脂肪酸含量が5重量%未満、N20が少なくとも10%、S2U含量が5〜50重量%、(U2S+U3)含量が少なくとも35重量%、およびS3含量が0〜37重量%のベーカリー用油脂を開示する。ベーカリー製品の特性は、高い飽和脂肪酸含量を有するこれらの製品と、少なくとも同等であると説明される。これを得るために、ドウ油脂はSUS−トリグリセリドが豊富であり、好ましくは5〜30重量%のベヘン酸を含む成分Aを含む。実施例から、ドウの調製は融解した油脂成分を混合し、続いてドウの残りの乾燥原料および水と混合するのに適した可塑化した油脂を得るために、融解物を冷却して一晩冷蔵保管することにより行われることが見受けられる。
【0010】
EP−A−731.645は、砂糖と、フィリング油脂およびアイスクリームコーティングでの使用に適した、通常より低い、すなわち45重量%未満のSAFA含量を有するトリグリセリド成分の混合品を開示する。トリグリセリド成分は少なくとも40重量%のSU2および3〜50重量%のS2Uを含み、TFAが無く、少なくとも35のN20および10未満のN30を有する。トリグリセリド成分が少なくとも10重量%のベヘン酸、25重量%未満のStUSt(U=不飽和脂肪酸;St=C18:0)を含むこと、および0.1〜10重量%のトリ飽和トリグリセリド、具体的にはパーム油のステアリン、の存在が良好な構造特性をもたらすことが説明される。それらの限定されたSAFA−含量にかかわらず、混合品は、許容できるテクスチャー、満足できる高い硬度および良好な口どけ特性という意味の、良好な製品の性能を示す。フィリングおよびコーティングは、原料の混合、ロールリファイニングおよびコンチングに続いて、20℃より低い、好ましくは15℃より低い温度への冷却工程(「テンパリング」と呼ばれる)によって調製される。冷却工程の間に、作用量の油脂のシード、例えばココアバターのシードを添加してもよい。実施例では、フィリングの冷却および低温での長期間(例えば7℃16時間、続いて13℃1週間またはシード剤を用いる場合は13℃18時間)の貯蔵の後に許容できる硬度が発見されたと説明する。実施例4は、20℃でのスティーブンス硬度が158gであり、フィリングが50重量%の油脂を含み、油脂が41.7重量%のSAFAを含むフィリング油脂を開示する。
【0011】
EP−A−1.543.728より、油脂ベースの組成の増粘に適した、油脂を含む増粘組成が知られている。増粘組成は15〜45重量%の間の少なくとも1の硬化油脂および85〜55重量%の間の少なくとも1の液体油を含む。硬化油脂は好ましくは、少なくとも15重量%の18より多いC原子を有する脂肪酸、好ましくは最大で22個の炭素原子をもつ極度硬化油脂である。好ましい硬化油脂は硬化高エルカ酸菜種油である。実施例1によると、25部の極度硬化高エルカ酸菜種油と75部の菜種油の混合品の冷却が固体の最終製品を与える。
【0012】
上記の特許公報の全てが、SAFAが低く、許容される硬度を示し、最終製品での使用に好適な、構造化された油脂組成の提供という問題を扱う。しかしながら、この問題はいつでも構造化剤としてのベヘン酸および/またはアラキジン酸、すなわち長鎖脂肪酸を含む油脂成分の使用によって解決される。ベヘン酸は主に硬化によって得られる。1以上のこれらの脂肪酸を含むトリグリセリドは、35℃で高い固体脂含有量が見られるように、それらの高い融点によって食べたときにワキシー(waxy)な口当たりを生じる恐れがある。1以上のこれらの長鎖脂肪酸を含む高融点のトリグリセリドの存在を避けるために、化学的または酵素的エステル交換がしばしば利用され、続いて分別される。しかしながら、これは複雑で高価な製造方法である。加えて、ベヘン酸およびアラキジン酸の起源原料はそれらの入手がかなり限定されている通り、かなり高価である。
【0013】
WO2006/136536は構造化された製品の製造に適した粒状組成について記載する。WO2006/136536は、しかしながら比較例7Cの表5から見えるように、どのようにして高POPおよび低SAFA−含量で固体構造が得られるかを教示していない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
発明の目的
このように、飽和および/またはトランス脂肪酸の含量がわずかであるトリグリセリドを含み、十分に高い硬度を有し、目的とする用途に適した、構造化された油脂が連続した食用製品の必要性がある。このような、食用製品への使用に適した特性を示すトリグリセリド組成、およびこのような食用製品を製造する方法にも必要性がある。
【0015】
それゆえ、本発明の目的はこのような構造化された、油脂が連続した食用製品であり、加えて許容できるテクスチャー、良好な口当たりおよび良好な栄養的なプロファイルを有する食用製品を今まで得られるものよりもより手ごろなコストで提供することである。特に、本発明の目的は本発明の食用製品に存在するトリグリセリド組成の存在に基づいて、具体的には飽和およびトランス脂肪酸含量に基づいて予期できるよりもより硬い構造をもつこのような食用製品の提供である。
【0016】
本発明のさらなる目的は、先行技術での教示から予期できるよりも有意に少ない飽和およびトランス脂肪酸の濃度において十分な硬度を示すこのような構造化された、油脂が連続した食用製品を製造する方法を提供することである。
【0017】
本発明の目的はまた、当該食用製品で使用するためのトリグリセリド組成物を手ごろなコストで提供することでもある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
発明の記載
この目的は、請求項1の特徴部分の技術的特徴に示されている、構造化された、油脂が連続した食用製品という本発明によって達成される。
【0019】
それによると、食用製品が、製品全体を基として表すと、
a)35重量%未満の飽和脂肪酸、
b)20〜100重量%の間のトリグリセリド組成、
c)0〜80重量%の間の充填剤、
d)15重量%未満の水、
このうちトリグリセリド組成がトリグリセリド組成の重量に対して、
e)50重量%未満の飽和脂肪酸、
f)10重量%未満のトランス不飽和脂肪酸、
g)Pはパルミチン酸、Oはオレイン酸であるところの、少なくとも10重量%のPOPトリグリセリド、
h)Sは16〜18個の炭素原子を有する飽和脂肪酸を意味し、Uは18個以上の炭素原子を有する不飽和脂肪酸を意味するところの、少なくとも1.3のSUS/SUU比、
i)Sは16〜18個の炭素原子を有する飽和脂肪酸を意味し、Uは18個以上の炭素原子を有する不飽和脂肪酸を意味するところの、少なくとも15のSUS/S3比、
j)少なくとも90重量%のC8〜18の脂肪酸、
a)少なくとも1のC16/C18飽和脂肪酸比を含み、
トリグリセリド組成が20℃において3〜55%の間のSFCを有する。
【0020】
上記の充填剤は非グリセリドの食用固体原料を意味し、好ましくは粉状で存在する。
【0021】
これらの技術的特徴を示す食用製品は、たとえ一部分のトリグリセリド組成しか結晶化形態でなくても、固体構造をとることが見出されている。本発明の食用製品を製造後にいくらかの時間放置することにより、結晶化した油脂の安定化および食用製品の硬度の増加が得られる。本発明者らは、本発明の食用製品が製品に含まれる飽和脂肪酸含量から予期されるよりも硬く、類似の含量の飽和およびトランス脂肪酸もしくは類似の20℃での固体脂含有量(SFC)をもつ従来から知られた製品よりも硬いテクスチャーを特徴とすることを見出している。
【0022】
本発明の構造化された食用製品は高い油保持能を示すという利点を示し、たとえ食用製品が比較的やわらかいクリームの形態をとる場合でも、製品が通常消費される温度において予期される製品からの油脂の自然分離が起こらない。本発明の製品は室温または室温よりも低い冷蔵庫の温度で消費してもよいが、好ましくは0℃または3℃より高い温度である。組成のトリグリセリド部分が低い〜とても低い飽和脂肪酸(SAFA)含量および/または20℃での低いSFCを有しており、このことは驚くべきことである。この低いSAFAにより、当業者は、室温で自然な油分離が起こることのない、請求項1のトリグリセリド組成をもつ油脂を基にした構造化された食用製品を得ることができるとは決して予期しないであろう。発明者が大変驚くことに、油が分離する傾向、すなわち固体脂からの液体油の分離がなく、液体油が食用製品の母体中に保持された状態のままである。油を吸収する能力のある他の製品と接触した場合でも、本発明の食用製品からの油の損失は無視できる程度にとどまる。次の利点は本発明の食用製品がたとえ油を吸収する能力を有する、および/またはその傾向を示す他の製品と接触した場合でも、油の移行に対して高い抵抗性を示すことである。このような製品の例は、チョコレート外殻と接触している場合、またはビスケットに付けた場合でもそこに存在する液体油の大部分が失われないようなクリームである。不良な油保持能を示すクリームでは、速やかに、チョコレート外殻の軟化およびブルーミングならびに液体油部分の喪失によるクリームの硬化という結果になるであろう。
【0023】
本発明の構造化された食用製品は、POP油脂がその主原料がパーム油であることから、手ごろなコストで豊富に入手できるとして、経済的な観点から魅力がある。
【0024】
本発明の範囲内において、油脂が連続した製品とは連続相が油脂で形成されている製品を指すものと理解される。このような油脂が連続した製品の例はチョコレートフィリングおよびスプレッドである。ベーカリー製品またはフライドポテトはそこに含まれる油脂によってこれらの製品の連続相が形成されていないことから、本発明の範囲内の油脂が連続した製品とはみなされない。本発明の範囲内において、「構造化された製品」はその製品が通常消費される温度にて24時間未満の貯蔵後に自然におよび視覚的に2以上の相に分離することのない構造をもつ製品を意味する。これは室温でもよいが、例えば冷蔵庫の温度または他の0℃より高い温度のようなより低い温度でもよい。
【0025】
充填剤に含まれる油脂もまたトリグリセリド組成部分とみなさなければならず、原料の油脂の無い部分は充填剤の一部とみなす。本発明の範囲内において、存在するならば、充填剤は本発明の食用製品に意図的に添加される原料である。ゆえに、100%油料種子を粉砕したものからなる製品は、たとえそれが充填剤とみなされるようなペーストを形成する場合でも、これらの成分は意図的に混合されているものではないことから、油脂が連続した製品とはみなされても、本発明における食用製品とはみなされない。
【0026】
本発明の食用製品において、脂肪酸の大部分は8〜18までの間の炭素原子の鎖長を有する。残りの部分は、より短いまたは長い鎖の脂肪酸となれる。より短鎖の脂肪酸は通常、食用製品が例えば乳脂肪を含む場合に存在し、より長鎖の脂肪酸は食用製品が例えば落花生油を含む場合に存在する。
【0027】
液体油または半液体油の水素添加は、固形油脂を製造する技術として広く使用されている。しかしながら、水素添加は油脂組成の飽和脂肪酸の量を増加する。部分的な水素添加の場合、健康に悪い影響を与えるトランス脂肪酸が形成される。この理由から、水素添加はむしろ悪い意味合いを得るに至っている。本発明の食用製品は油脂の水素添加を含んでいてもよいけれども、最小限か、さらには使用を避けることが好ましい。従って、本発明はトリグリセリド組成中の水素添加した製品の使用を最小限とする傾向であり、実質的に硬化油脂成分の無いトリグリセリド組成を使用する傾向である。
【0028】
好ましい実施形態によると、本発明の食用製品は製品の全重量に対して表すと30重量%未満、好ましくは25重量%未満の飽和脂肪酸を含む。好ましいトリグリセリド組成はその全重量に対して45重量%未満、好ましくは40重量%未満、より好ましくは35重量%未満、最も好ましくは30重量%未満の飽和脂肪酸を含む。好ましいトリグリセリド組成は5重量%未満、より好ましくは2重量%未満のトランス不飽和脂肪酸、および少なくとも15重量%、より好ましくは少なくとも20重量%、最も好ましくは少なくとも25重量%のPOPを含む。トリグリセリド組成の好ましいC16/C18飽和脂肪酸比は少なくとも1.5、より好ましくは少なくとも2、最も好ましくは少なくとも4である。
【0029】
本発明において、高い量のSU2の存在は食用製品の硬度に不利な効果を及ぼすことが見出された。これは、EP−A−731.645の教示とは逆である。この知見を考慮して、本発明のグリセリド組成および構造化された製品中のSU2トリグリセリド濃度は好ましくは限定される。これを達成するため、本発明のトリグリセリド組成は、Sが16〜18個の炭素原子を有する飽和脂肪酸、Uが18個以上の炭素原子を有する不飽和脂肪酸であるところの、少なくとも1.3、好ましくは少なくとも2、より好ましくは少なくとも2.5、最も好ましくは少なくとも3のSUS/SUU比を有する。
【0030】
従来、より硬い構造をもつ油脂組成または油脂を含む食用製品を得るために、トリ飽和トリグリセリド(S3)のような高い融点のトリグリセリドが油脂組成または食用製品に組み込まれていた。これらの高融点トリグリセリドは油脂の極度硬化または天然油脂の分別によって得られる。高融点トリグリセリドはそれらの構造特性により使用されるけれども、それらは融点が高く、ワキシーな口当たりの原因となり得ることから、大抵限定された量のみ配合されている。現在驚くべきことに、高含量のS3トリグリセリドが本発明の食用製品の硬化に不利な効果を有することが見出されている。従って、グリセリド組成中のS3濃度が限定され、Sが16〜18個の炭素原子を有する飽和脂肪酸、Uが18個以上の炭素原子を有する不飽和脂肪酸であるところの、少なくとも15、好ましくは少なくとも20、より好ましくは少なくとも25のSUS/S3比をもつトリグリセリド組成を使用することが好ましい。
【0031】
本発明の食用製品の好ましい実施形態は、
b)95〜100重量%の間のトリグリセリド組成、
c)0〜5重量%の間の充填剤、
d)8重量%未満の水および5重量%未満の1以上の添加物、
を含む。本発明の食用製品の他の好ましい実施形態は、20〜95重量%の間、好ましくは25〜60重量%の間、より好ましくは30〜50重量%の間のトリグリセリド組成、および5〜80重量%の間、好ましくは75〜40重量%の間、より好ましくは70〜50重量%の間の充填剤を含む。
【0032】
本発明の第一の好ましい実施形態による食用製品は油脂のみまたは大部分が油脂のみからなる。これらの製品は主に、最終製品の工程での使用に好適な、および構造化させて硬いテクスチャーを得ることができる中間製品である。それらの高含量の不飽和脂肪酸のために、それらの酸化安定性を高めるため、多くの場合それらの製品に添加物が加えられるであろう。
【0033】
本発明の範囲内であり、食用製品はショートニングであってもよいけれども、好ましい本発明の食用製品はショートニングではない。本発明の食用製品は、可塑性ショートニングと比較してより硬いテクスチャーを有する構造化された油脂製品である。可塑性ショートニングは周知の構造化された油脂製品であり、またそのほとんどが油脂から成るものと言えるが、それらはよりやわらかいテクスチャーおよび、特に他の多孔性物質と接触の際に非常に弱い油保持能を有す。「Bailey’s Industrial Oil&Fat Products」(第5版、1996 第3巻、頁115および頁120)によると、「ショートニングは典型的な100%油脂製品である。」「・・・ショートニング、マーガリンおよびスプレッドは特有の物理的特性を有するよう調製されている。粘ちょうな液体のレオロジー的な流量特性のすべてを前提とした、恒久的な変形をもたらすのに十分な、強力なせん断力を加えた場合でも、これらの製品はまだ固体であるように見える。このような固体は可塑性固体と称される。これらの可塑体の本質として、これらを容易に塗り広げることができ、他の固体または液体と、ひび割れ、砕けまたは結晶状態の油脂からの液体油の分離無しに、十分に混合することができる。」。ショートニングは、グルテン繊維の結合を防ぐために油脂を使用するところのベーカリー商品において多数利用されていることがわかる。
【0034】
本発明の食用製品の第二の好ましい実施形態は、
b)20〜95重量%の間、好ましくは25〜60重量%の間、より好ましくは30〜50重量%の間のトリグリセリド組成物;
c)5〜80重量%の間、好ましくは75〜40重量%の間、より好ましくは70〜50重量%の間の充填剤、
を含む。この第二の実施形態による製品はある程度の量の油脂および充填剤を含む。この第二の実施形態による製品の典型例は、30〜50重量%の油脂、30〜50重量%の砂糖ならびに任意に全粉乳および/または脱脂粉乳、ココアパウダー等のような他の乾燥原料を含む製菓用クリームである。この第二の実施形態の製品はむしろ、構成された製品、例えば製菓用フィリングとして、またはその一部として使用できる最終製品である。これらの最終製品は大部分が最終消費者によって望まれる構造を有する。
【0035】
本発明の関心のある食用製品は好ましくは、食用製品全重量に対して8重量%未満、好ましくは5重量%未満、より好ましくは2重量%未満の制限された水分含量を有する。マーガリンのような多量の水の導入は、例えば、エマルジョンの安定化のために通常添加物または選択された原料および特別の加工技術を適用される、水中油型エマルジョンのような、異なる食品系をもたらす。本発明の食用製品はそれゆえ、好ましくはエマルジョンでなく、具体的にはW/Oエマルジョンでない。マーガリンのようなW/Oエマルジョンは特別な乳化および固化技術ならびに乳化剤および増粘剤の使用によってそれらの構造を得て、このようにして本発明の食用製品の構造とは異なる構造を有する。本発明の製品はその構造を得るためにこのような技術に供することを必要としない。
【0036】
好ましくは、本発明の構造化された、油脂が連続した食用製品に存在するトリグリセリドの少なくとも一部分が結晶化状態である。結晶化した油脂は、油脂が連続した製品の構造の基盤を形成すること、および高い油保持能を提供することが見出されている。結晶化したトリグリセリドは油脂を吸収し、蓄える、またはより一般的には所定の温度において液体である油脂を吸収することのできる構造を提供することが見出されている。既知の製品において、構造の基盤は通常、乳化剤または非グリセリド構造化剤の混和によって、または製品を、例えば焼成や押出成形のような加工に供することによって提供される。食した際のザラザラした、滑らかでない口当たりの発生するリスクを低減するために、結晶化した油脂の90%より多い量における結晶の大きさは、100μmより小さい、好ましくは75μmより小さい、より好ましくは50μmより小さい、最も好ましくは25μmより小さい。より大きな油脂の結晶は、大抵貯蔵の際の再結晶化を通じて形成される。この減少はマーガリンの場合によく知られており、ベータプライムからベータ形の結晶に変わることで、「ザラザラした」製品をもたらす。より大きな結晶はまた、食用製品のより弱い構造を伴う。
【0037】
安定した構造をもつ強固な製品は、結晶化した油脂の少なくとも50、好ましくは少なくとも70、より好ましくは少なくとも85重量%がベータ形で結晶化している場合に特に得られ得る。ベータ形はWilleおよびLutonによってVまたはVI型と定義される結晶状態である。
【0038】
本発明の製品は、製造後速やかに、具体的には固体脂部分の結晶化後速やかに、その後の硬化またはその後の軟化の傾向がほとんど無しで、強固な構造を形成することを特徴とする。このように、強固な構造を形成するために、本発明の食用製品を製造後に低温で貯蔵することまたは長期に貯蔵することは必要ない。発明者らは本発明の食用製品が貯蔵の間にその硬度がほとんど変わらないことを特徴とすることを見出している。具体的には、製造後1日間室温で安定化させた後の食用製品および製造後1週間貯蔵した後の食用製品の硬度が、25%未満、好ましくは20%未満、最も好ましくは10%未満の差である。このことは強固な構造を得るために特別な手段を適用しなければならない従来技術からの有利な点である。
【0039】
本発明はそれゆえ、製品全体に基づいて表すと、
a)35重量%未満の飽和脂肪酸、
b)20〜100重量%の間のトリグリセリド組成、
c)0〜80重量%の間の充填剤、
d)15重量%未満の水
を含み、このようなDSC融解プロファイルを示す構造化された、油脂が連続した食用製品にも関する。
【0040】
硬度、口当たりおよびワキシー感の発生する最小リスクに関する最良の結果は、グリセリド組成重量に対して好ましくは少なくとも90重量%、より好ましくは少なくとも95重量%、最も好ましくは少なくとも97重量%の、14〜18の間の炭素原子鎖長をもつ脂肪酸を主に含むグリセリド組成によって得られる。ラウリン酸油脂のようなC12の脂肪酸が豊富なグリセリドも硬い構造の形成に利用できるけれども、それらは高含量の飽和脂肪酸を有する。加えて、ラウリン酸と非ラウリン酸油脂を混合した場合、油脂混合物が、硬度を失うことを意味する共融の影響、が現れる傾向がある。それゆえ、本発明の範囲内ではそれらの使用は最小限とすることが好ましい。
【0041】
先行技術文献によると、1以上のC22の脂肪酸を含むトリグリセリドの混合が、油脂組成または食用製品で構造を生じる他の方法である。現在ではC22の脂肪酸の使用は、本発明の食用製品の硬度に不利に作用することにより、最小限とされるべきことが本発明により見出されている。それゆえ、本発明の食用製品中のC22の脂肪酸濃度は、トリグリセリド組成の全重量に対して2.5重量%未満、好ましくは1.5重量%未満、より好ましくは1.0重量%未満、最も好ましくは0.7重量%未満に限定されることが好ましい。本発明の構造化された食用製品に存在するトリグリセリドの性質を慎重に選択することにより、長鎖脂肪酸と呼ばれる、すなわち20個より多い炭素原子を有する脂肪酸を含むトリグリセリドの存在を必要とせずに、その硬度を有利に増加できるであろう。
【0042】
本発明の構造化された食用製品およびトリグリセリド組成の室温での固体脂含有量(SFC)は好ましくは制限されている。それは、好ましい食用製品はN20が40%以下、好ましくは35%以下、より好ましくは30以下であることを特徴とするトリグリセリド組成を含むことである。発明者らはこの少量の固体脂にも関わらず、室温で良好な構造をもつ製品が得られることを驚きを持って見出している。35℃での固体脂含有量もまた、この温度での高い値は悪い口どけ特性およびワキシー感の形成を示すため、制限されることが好ましい。それゆえ、N20およびN35はトリグリセリド部分の固体脂含有量であり、SFCはIUPAC2.150aの方法によって測定したものであるところの、N35が15%以下、好ましくは10以下、より好ましくは5以下、最も好ましくは2以下であることが好ましい。
【0043】
本発明の食用製品およびトリグリセリド組成は少なくとも1の固形または半固形油脂成分ならびに少なくとも1の液体成分、その液体成分は少なくとも1の液体油または2以上の液体油の混合品である、を含むことがさらに好ましい。少なくとも1の固形または半固形油脂は、室温で固体または半固体脂であり、好ましくは融点が少なくとも25℃である油脂である。半固体脂は、室温で可視的な固体脂部分と可視的な液体油部分を含む油脂を意味する。少なくとも1の液体油は、室温で液体である油である。
【0044】
好ましくは、本発明のトリグリセリド組成および食用製品は、少なくとも1の固形または半固形油脂の量が、トリグリセリド組成重量に対して、10〜90重量%、好ましくは25〜70重量%、より好ましくは35〜65重量%の範囲であり、少なくとも1の液体油の量が、トリグリセリド組成重量に対して、10〜90重量%、好ましくは30〜75重量%、より好ましくは35〜65重量%であることを特徴とする。少なくとも1の固形または半固形油脂および液体油の量は、主に選択された固形または半固形油脂の硬度によって、また想定される最終食用製品の硬度によっても変化してもよい。
【0045】
もし液体油が液体成分または液体成分の一部から選択されるならば、好ましくは当該液体油は菜種油、コーン油、大豆油、ひまわり油、綿実油、メイズ油、オリーブ油、ヘーゼルナッツ油、落花生油、パーム油もしくはシアバターの液体画分、2以上の上記油の混合品およびそれらの画分から選択される植物油であろう。ここにはまた、例えば高オレイン酸ひまわり油のような、上記油の派生品も含む。液体油または液体油の大部分は、むしろ油成分として配合に加えられるほうが、例えば粉砕した木の実または種に含まれる油のような充填剤の一部である油より好ましい。後者の油は、固形油脂成分のネットワークへの取り込みが限定された拡張の可能性しかない。この度合いは、木の実または種を粉砕する工程によってもまた変化する。
【0046】
Sが16〜18個の炭素原子を有する飽和脂肪酸、Uが18個以上の炭素原子を有する不飽和脂肪酸であり、SUS−濃度が固形または半固形油脂の全重量に対して表されるものであるところの、固形または半固形油脂の重量に対して少なくとも50重量%、60重量%、より好ましくは、少なくとも70重量%のSUS−トリグリセリドを含む油脂が、固形または半固形油脂として、好ましくは使用されるであろう。強い油保持能をもつ良好な構造は、最少量のSUS−トリグリセリドが存在するときに得られる。それゆえ、固形油脂は好ましくは、固形または半固形油脂に対して上記の最小量のSUS−トリグリセリドを含む。発明者らは、低含量の飽和脂肪酸を有する製品においてさえも、高いSUS−含量によってより強固な構造を得られること見出している。
【0047】
好ましい固形または半固形油脂は好ましくはヨウ素価が45未満、好ましくは40未満、最も好ましくは37未満のパーム画分を含む。パーム生原料からの最も固形の強い油脂は生原料の二重分別;これは乾式分別または溶媒分別でも可能である;により得られる。
固形または半固形油脂はまた、パーム画分と、例えばココアバター、シアバター、イリッペバターからの油脂、コクム油脂、サル油脂、アランブラッキア油脂、モーラバター、マンゴー核油脂、酵素的に調製された油脂もしくはこれらの画分、または上記の2以上の油脂の混合品もしくはそれらの画分のような、SUS−トリグリセリドに富む他の固形油との組み合わせでもよい。
【0048】
本発明の食用製品に使用される充填剤は、通常非グリセリドの食用の固体物質であろう。一般的な充填剤は、砂糖、小麦粉、澱粉、脱脂粉乳、全粉乳、ホエイパウダー、ココアパウダー、コーヒーパウダー、食品グレードの有機および無機固形粉末またはこれらの2以上の混合品からなる群より選択される少なくとも1の成分を含む。主に、充填剤は500μmより小さく、好ましくは250μmより小さく、最も好ましくは100μmより小さい平均粒径をもつ粉末製品である。ここで平均粒径は粒子の数を基づき、それらの重さに基づかない。この小さな粒径は油脂と混合して均質な製品とすることを容易にし、摂食時にざらざら感を感じさせる恐れが最小限で、最終製品の構造を改善する。しかしながら、当業者が好適とみなす他の充填剤を同様に使用してもよい。
【0049】
本発明はまた、許容できるテクスチャー、良好な口当たりおよび良好な栄養的なプロファイルをもつ構造化された、油脂が連続した食用製品、およびそこに存在するトリグリセリド組成に基づいて、具体的には飽和およびトランス脂肪酸含量に基づいて予期できるよりもより硬い構造にも関する。このような食用製品は、少なくとも200、好ましくは少なくとも400、より好ましくは少なくとも550、最も好ましくは少なくとも700のR−値を特徴とする硬度を特徴とする。
【0050】
本発明の、食用の構造化された油脂が連続した製品の好ましい実施形態は、少なくとも200、好ましくは少なくとも400、より好ましくは少なくとも550、最も好ましくは少なくとも700のR値を特徴とする硬度を特徴とするものであって、R値はグリセリド含量およびグリセリド組成のSTFA含量に関する硬度であって、
R=T/(S×STFA×F)×10000
式中:
− Tはグラムで表される食品の硬度であり、テクスチャーメーターで20℃、直径2.5mmから4.5mmの間の金属円筒プローブを用いて貫入深さ10mmで測定したものである。このような深さで測定できないときは、到達できる最大貫入深さでの測定中に得られた最大値を採用する。
− Sはmmで表される円筒プローブの底面であり、STFAはグリセリド組成の全重量に対する重量%で表される、グリセリド組成中の飽和およびトランス脂肪酸の合計である。
− Fは重量%で表される、食品の全重量に対するグリセリド組成の量である、
式で定義されるものである。
【0051】
文中、「テクスチャーメーターで測定した硬度」の語は、製品に特定の直径の円筒プローブを特定の深さに貫入する際に、機器が加える最大力(グラムで表される)を意味する。この方法は食品産業において広く使用されている。この方法に用いる機器は、テクスチャーメーターとしての使用に好適なもので、例えばStable Micro Systems(SMS)社製TA−TX2テクスチャーアナライザーまたはStevens−LFRAテクスチャーアナライザーである。好ましい使用は直径3mmのステンレス円筒プローブを備えたSMS製テクスチャーアナライザーで、プローブ速度0.5mm/秒、貫入深さ10mmでの操作である。他のプローブおよび測定条件も検討している。しかしながら、最終のR−値測定への影響はわずかであった。テクスチャーははっきりと食用製品の油脂含量およびそのSTFA−量、すなわちその飽和およびトランス脂肪酸の含量に左右される。R−値に基づいた、異なる油脂含量およびSTFA−量を有する異なる製品間の相対比較を実施できる。
【0052】
本発明の食用製品のR−値は、通常10000未満、大抵は6000未満となるであろう。
【0053】
これらの食用製品はさらに上記に記載された技術的な特徴を示すであろう。これらの食用製品において、
(1)好ましくはトリグリセリド組成は、35重量%未満、好ましくは30重量%未満、最も好ましくは25重量%未満のSTFA−含量、STFA−含量は飽和およびトランス脂肪酸の合計量を意味する、を有する。
(2)8個以上18個以下の炭素原子を含む、全ての飽和および不飽和脂肪酸の総量は、グリセリド組成の重量に対して少なくとも90重量%、好ましくは少なくとも95重量%、最も好ましくは少なくとも97重量%である。
【0054】
本発明の油脂が連続した、構造化された食用製品は、当業者が好適とみなすいずれの形態をとってもよく、例えば菓子類、具体的にはクリーム、コーティング用生地、タブレット、フィリング、充填したチョコレート製品、非エマルジョンのスプレッド、調理製品、食品用固形油脂原料、ソフトチーズ、または他の当業者に周知な食用製品であってもよい。これはまた、室温より低い温度で保存され、このような温度、例えば0〜10℃の間で消費される製品、例えば冷蔵庫で保存され、冷蔵庫の温度で消費される製品も含む。
【0055】
本発明の食用製品は、さらに食品、例えば、充填されたチョコレート製品、クリーム層がそれ自体が更にコーティング用生地でコーティングされていてもいなくてもよいクリーム層でコーティングされたビスケット、2以上のビスケットの間に挟まれたクリーム層を有するビスケット、内部に構造化されたフィリングをもつ押出成形された製品、構造化されたフィリングを持つベーカリー製品、充填されたもしくはトッピングされた菓子製品、充填されたもしくはトッピングされた調理製品または当業者に周知なその他の食品から成る群、の製造に用いてもよい。
【0056】
本発明はまた、トリグリセリド組成を上記の構造化された、油脂が連続した食用製品の製造に使用することにも関する。好ましい、このようなトリグリセリド組成は、50重量%未満、好ましくは45重量%未満、より好ましくは40重量%未満、より好ましくは35重量%未満、最も好ましくは30重量%未満の飽和脂肪酸を含む。さらに、好ましいトリグリセリド組成は、10未満、好ましくは5重量%未満、より好ましくは2重量%未満のトランス不飽和脂肪酸を含む。さらに、好ましいトリグリセリド組成のC8〜18の脂肪酸含量は、少なくとも90重量%である。Pがパルミチン酸、Oがオレイン酸であるところの、トリグリセリド組成のPOP含量は、トリグリセリド組成の重量に対して好ましくは少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも15、より好ましくは少なくとも20、最も好ましくは少なくとも25重量%である。Sが16〜18個の炭素原子を有する飽和脂肪酸、Uが18個以上の炭素原子を有する不飽和脂肪酸であるところの、SUS/SUU比は好ましくは少なくとも1.3、好ましくは少なくとも2、より好ましくは少なくとも2.5、最も好ましくは少なくとも3である。Sが16〜18個の炭素原子を有する飽和脂肪酸、Uが18個以上の炭素原子を有する不飽和脂肪酸であるところの、本発明のトリグリセリド組成のSUS/S3比は少なくとも15、好ましくは少なくとも20、より好ましくは少なくとも25である。本発明のトリグリセリド組成C16/C18飽和脂肪酸比は少なくとも1、好ましくは少なくとも1.5、より好ましくは少なくとも2、最も好ましくは少なくとも4である。好ましくは、本発明のトリグリセリド組成は20℃において、3%より大きく、55%未満のSFCを有する。本発明はそれゆえ、上記のトリグリセリド組成および、上記の構造化された、油脂が連続した食用製品の製造のためのこれらの使用にも関する。
【0057】
本発明はさらに、このようなトリグリセリド組成を、菓子類、具体的にはクリーム、コーティング用生地、タブレット、フィリング、充填したチョコレート製品、クリーム層がそれ自体がコーティング用生地で更にコーティングされていてもいなくてもよいクリーム層でコーティングされたビスケット、2以上のビスケットの間に挟まれたクリーム層を有するビスケット、非エマルジョンのスプレッド、調理製品、食品用固形油脂原料、ソフトチーズ、内部に構造化されたフィリングをもつ押出成形された製品、構造化されたフィリングを持つベーカリー製品、室温より低い温度で保存され、このような温度、例えば0〜10℃の間で消費される製品、例えば冷蔵庫で保存され、冷蔵庫の温度で消費される製品、からなる群からの食品の製造のための使用に関する。
【0058】
事実として、上記の食用組成およびトリグリセリド組成を含む食品が存在する。
【0059】
本発明の食用製品の製造のために、いくつかの工程が適切に使用されてもよい。しかしながら、上記の構造化された油脂が連続した製品の製造工程において、好ましくは
− 20〜100重量%のトリグリセリド組成
− 0〜80重量%の充填剤
− 15重量%未満の水
を混合する工程、およびトリグリセリド組成を安定した結晶化状態にする結晶化への導入、および固体構造の構築の工程を含む。トリグリセリド組成は部分的に融解した状態で多の原料と混合されてもよいが、他の原料に加えるときはトリグリセリド組成が完全に液体の状態であることが推奨される。それゆえ、固形油脂が充填剤と混合される前に溶解できるように、固形油脂は好ましくはまず溶解され、液体油の全量、または少なくとも主要な量の液体油と混合される。後の段階での充填剤の添加は、塊の形成を誘発するため、好ましくは、全ての充填剤が1回で加えられる。トリグリセリド組成の、安定な結晶状態への結晶化を誘導する工程は、例えば固体油脂の安定した結晶状態への結晶化に有利であるところの温度−時間プロファイルまたは冷却方法が可能である。それによって、食用製品およびトリグリセリド組成は上記で記述した技術的特徴を示す。
【0060】
本発明の食用製品の製造のための方法についての第一の好ましい実施形態によると、その方法は、
(1)食品全重量に対して20〜100重量%の間の、少なくとも一部、好ましくは全てが融解状態のトリグリセリド組成と、
(2)食品全重量に対して0〜80重量%の間の充填剤、
(3)食品全重量に対して0〜10重量%の間の水、
を混合する工程、続いて混合および均質化を停止した後に混合物を17〜35℃の間、好ましくは20〜30℃の間、最も好ましくは22〜28℃の間に冷却することを含む第二の工程、続いて製品が更なる冷却と安定化によって構造を形成する間の硬化工程を含む。
【0061】
第二工程の冷却は混合および均質化と同時に実施することが、より早く最終構造を形成することを助けるので、好ましい。混合後の硬化工程での最終冷却は強制的なまたはそうではない冷却で、好ましくは穏やかな冷却条件下で実施することが好ましい。下記に記載する第三の好ましい方法と比較して、製品はその最終硬度を得るまでより時間が必要となるかもしれないが、硬度および良好な口どけ特性に関して類似の製品を得ることができる。
【0062】
少なくとも一部のトリグリセリド組成の結晶化により固体構造が得られた後で、食用製品の硬度を増加する目的で、結晶化した油脂の安定化のために、油脂が連続した食用製品を放置することがさらに好ましい。
【0063】
本発明の方法の第二の好ましい実施形態によると、
上記で記述された融解状態のトリグリセリド組成との混合物を最初に冷却し、その食用製品を不安定な結晶を融解するために再加熱した後、続いて第二の冷却工程が行われるものであるテンパリング工程を使用する。この場合、テンパリングマシンで製造されたものの使用が好ましい。
【0064】
本発明の方法の第三の好ましい実施形態によると、ある程度の量のテンパリング添加物を食用製品に添加する。テンパリング添加物は最小作用量のベータ形に結晶化した油脂を含む。このようなテンパリング添加物の例は、EP 294974およびEP 276548に記載される。使用されるテンパリング添加物の量は、食用製品全体について表すと、通常10重量%未満、好ましくは5重量%未満、より好ましくは2重量%未満、最も好ましくは1重量%未満であろう。当該方法によると、主要なグリセリド部分が融解状態である食用製品は、最初に均質化し、すべての原料と混合する。その後、混合品はテンパリング添加物の存在する中で、ベータ形に結晶化した油脂の融点よりも低い温度まで冷却される。テンパリング添加物は塊の中に混合される。発明者らは、添加後速やかに製品が固化し始めることを見出している。添加の後、製品はさらに強制冷却工程により冷却してもよいし、さらに放置して室温まで冷却することもできる。
【0065】
3種類の既出の工程のうちの1つを適用する場合、食用製品を所望の硬度に形成するために必要な時間は、硬化工程を開始してから大抵は12時間未満、通常は6時間未満、好ましくは2時間未満であろう。
【0066】
本発明の構造化された、油脂が連続した食用製品の製造方法の第四の好ましい実施形態は、食用製品の重量に対して、高い含量、好ましくは70〜100重量%の油脂を含む食用製品の製造に特に好適であることが見出されている。当該方法によると、完全に、またはほぼ完全に融解したグリセリド混合物は、同時に冷却および撹拌しながら、食用製品の重量に対して最大で30重量%の少なくとも1の充填剤と混合される。冷却時、高い融点のグリセリドが結晶化を開始し、粘性の増加をもたらす。発明者らは、撹拌を停止した時に、原料はすぐに、その液体、自由に流動する状態を失うことを意味する固体または半固体のテクスチャーを形成することを観察している。撹拌速度は、ざらざらしたテクスチャーおよび口当たりの原因となり得る大きなグリセリド結晶または結晶塊の形成の恐れを最低限にするために十分に高くするべきである。この方法では、この方法では、製品は好ましくは撹拌と同時に12〜28℃の間、好ましくは15〜25℃の間、最も好ましくは17〜23℃の間まで冷却される。この方法の第四の実施形態により、撹拌を停止した後、60分未満、好ましくは30未満、最も好ましくは15分未満の後に固体のテクスチャーを形成する製品を得ることが可能である。
【0067】
本発明の食用製品の製造方法の好ましい実施形態により得られた食用製品は、既に混合物中のトリグリセリド組成が部分的に結晶化している構造を得ている。そして、少なくとも一部の充填剤、好ましくは全ての充填剤が、混合の時に存在している。
【0068】
硬い、構造化された食用製品の調製において、調理、焼成、焙煎、押出成形のような加熱工程を含む、食用製品が硬い構造を得る多くの方法が知られている。本発明による食用製品は、しかしながら固体の構造を少なくとも一部のグリセリド組成の結晶化によって得る。このことは、融解状態からの冷却または/およびテンパリング添加物の使用によって起こる。結晶化は、食用製品の硬度の更なる増加を導く、結晶化した油脂の安定化をもたらす可能性がある。
【0069】
本発明を以下に示す実施例および比較例によってさらに説明する。
【実施例1】
【0070】
実施例
実施例1
製菓用クリームを下記の配合に従って作成した。
【0071】


【表1】

【0072】
これらのクリームに使用する油脂は高オレイン酸ひまわり油およびIV34のパーム中融点画分の異なる比率での混合品であった。表2は、使用された混合品の特性の概略を示す。標準パーム油と高オレイン酸ひまわり油の混合により作成された、40重量%のSAFAをもつ比較混合品番号5もまた評価した。
【0073】
【表2】

【0074】
クリームを、原料の混合、混合物の3段ロールリファイナーによるリファイニング、55℃でのコンチングにより作成した。クリームをその後、26℃に冷却し、組成の重量に対して0.2重量%のチョコシードAを添加した。チョコシードAは、ベータ形で結晶化した、最小作用量のSUS−トリグリセリドを含む不二製油の製品である。フィリングとチョコシードをよく混合した。クリームを試料容器に移し、その後室温で放置し、その温度(20℃±1℃)で貯蔵した。フィリングのテクスチャーを当該温度で、直径3mmのプローブを用い、速度0.5mm/秒、深さ10mmでSMS−テクスチャーメーターにて測定した。
【0075】
【表3】

【0076】
この表より、クリームは全て低SAFA−含量に基づいて予想できるよりも高い硬度を示したと結論づけられる。クリームを試験し、パーム油との混合品を除き、それらの全てが良好な口どけ感およびざらつきのないものをもたらした。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造化された、油脂が連続した食用製品であって、食用製品が、製品全体を基として表すと、
a)35重量%未満の飽和脂肪酸、
b)20〜100重量%の間のトリグリセリド組成、
c)0〜80重量%の間の充填剤、
d)15重量%未満の水、
このうちトリグリセリド組成がトリグリセリド組成の重量に対して、
e)50重量%未満の飽和脂肪酸、
f)10重量%未満のトランス不飽和脂肪酸、
g)Pはパルミチン酸、Oはオレイン酸であるところの、少なくとも10重量%のPOPトリグリセリド、
h)Sは16〜18個の炭素原子を有する飽和脂肪酸、Uは18個以上の炭素原子を有する不飽和脂肪酸であるところの、少なくとも1.3のSUS/SUU比、
i)Sは16〜18個の炭素原子を有する飽和脂肪酸、Uは18個以上の炭素原子を有する不飽和脂肪酸であるところの、少なくとも15のSUS/S3比、
j)少なくとも90重量%のC8〜18の脂肪酸、
b)少なくとも1のC16/C18飽和脂肪酸比を含み、
k)20℃において3〜55%の間のSFCを有する、
食用製品。
【請求項2】
請求項1記載の構造化された、油脂が連続した食用製品であって、製品が、製品全重量に対して表すと、30重量%未満、好ましくは25重量%未満の飽和脂肪酸を含むものであり、トリグリセリド組成重量に対して、
e)45重量%未満、好ましくは40重量%未満、より好ましくは35重量%未満、最も好ましくは30重量%未満の飽和脂肪酸、
f)5重量%未満、好ましくは2重量%未満のトランス不飽和脂肪酸、
g)Pはパルミチン酸、Oはオレイン酸であるところの、少なくとも15重量%、好ましくは少なくとも20、最も好ましくは少なくとも25重量%のPOPトリグリセリド、
h)Sは16〜18個の炭素原子を有する飽和脂肪酸、Uは18個以上の炭素原子を有する不飽和脂肪酸であるところの、少なくとも2、より好ましくは少なくとも2.5、最も好ましくは少なくとも3のSUS/SUU比、
i)Sは16〜18個の炭素原子を有する飽和脂肪酸、Uは18個以上の炭素原子を有する不飽和脂肪酸であるところの、少なくとも20、好ましくは少なくとも25のSUS/S3比、
j)少なくとも1.5、好ましくは少なくとも2、最も好ましくは少なくとも4のC16/C18飽和脂肪酸比
のトリグリセリド組成を含むことを特徴とする、食用製品。
【請求項3】
請求項1または2記載の構造化された、油脂が連続した食用製品であって、当該食用製品が、
− 95〜100重量%の間のトリグリセリド組成、
− 0〜5重量%の間の充填剤、
− 8重量%未満の水、
− 5重量%未満の1以上の添加物、
を含むことを特徴とする食用製品。
【請求項4】
製品がショートニングでないことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項記載の構造化された、油脂が連続した食用製品。
【請求項5】
請求項1または2記載の構造化された、油脂が連続した食用製品であって、食用製品が、
− 20〜95重量%の間、好ましくは25〜60重量%の間、より好ましくは30〜50重量%の間のトリグリセリド組成物、
− 5〜80重量%の間、好ましくは75〜40重量%の間、より好ましくは70〜50重量%の間の充填剤、
を含むことを特徴とする食用製品。
【請求項6】
食品が、食品の全重量に対して5重量%未満、好ましくは2重量%未満の水を含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項記載の構造化された、油脂が連続した食用製品。
【請求項7】
製品がエマルジョンでない、特にW/Oエマルジョンでないことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項記載の構造化された、油脂が連続した食用製品。
【請求項8】
少なくとも一部のトリグリセリドが油の保持のために結晶化状態にあることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項記載の構造化された、油脂が連続した食用製品。
【請求項9】
結晶化した油脂のうち少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも70重量%、より好ましくは少なくとも85重量%が、ベータ形で結晶化していることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項記載の構造化された、油脂が連続した食用製品。
【請求項10】
製造後室温で1日かけて安定化した後の製品の硬度と、室温で1週間貯蔵した後の硬度の違いが25%未満、好ましくは20%未満、最も好ましくは10%未満であることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項記載の構造化された、油脂が連続した食用製品。
【請求項11】
トリグリセリド組成が、トリグリセリド組成重量に対して少なくとも90重量%、好ましくは少なくとも95重量%、最も好ましくは少なくとも97重量%の、少なくとも14個、最大で18個の炭素原子を有する飽和および不飽和脂肪酸を含むことを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項記載の構造化された、油脂が連続した食用製品。
【請求項12】
トリグリセリド組成が、トリグリセリド組成全重量に対して2.5重量%未満、好ましくは1.5重量%未満、より好ましくは1.0重量%未満、最も好ましくは0.7重量%未満のC22の脂肪酸を含むことを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項記載の構造化された、油脂が連続した食用製品。
【請求項13】
N20およびN35がIUPAC2.150aの方法に従って測定されたトリグリセリド部分の固体脂含有量であるところの、トリグリセリド組成が40%以下、好ましくは35%以下、より好ましくは30%以下のN20、および15%以下、好ましくは10以下、より好ましくは5以下、最も好ましくは2以下のN35を有することを特徴とする、請求項1〜12のいずれか1項記載の構造化された、油脂が連続した食用製品。
【請求項14】
トリグリセリド組成が、少なくとも1の固形または半固形油脂成分および少なくとも1の液体油または2以上の液体油の混合品、少なくとも1の室温で固体または半固体を示す油脂である固形または半固形油脂、ならびに少なくとも1の室温で液体になる液体油を含むことを特徴とする、請求項1〜13のいずれか1項記載の構造化された、油脂が連続した食用製品。
【請求項15】
トリグリセリド組成重量に対する、少なくとも1の固形または半固形油脂の量が10〜90重量%、好ましくは25〜70重量%、より好ましくは35〜65重量%の範囲であり、トリグリセリド組成重量に対する、少なくとも1の液体油の量が10〜90重量%、好ましくは30〜75重量%、より好ましくは35〜65重量%の範囲であることを特徴とする、請求項14記載の構造化された、油脂が連続した食用製品。
【請求項16】
少なくとも1の液体油が菜種油、コーン油、大豆油、ひまわり油、綿実油、メイズ油、オリーブ油、ヘーゼルナッツ油、落花生油、パーム油もしくはシアバターの液体画分、これらのうちの1の液体油の画分または2以上の上記油脂および/もしくはこれらの画分の混合品から選択される少なくとも1の植物油を含むことを特徴とする、請求項14または15記載の構造化された、油脂が連続した食用製品。
【請求項17】
請求項14〜16のいずれか1項記載の構造化された、油脂が連続した食用製品であって、Sが16〜18個の炭素原子を有する飽和脂肪酸、Uが18個以上の炭素原子を有する不飽和脂肪酸であるところの、固形または半固形油脂が、固形または半固形油脂の重量に対して少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも60重量%、より好ましくは、少なくとも70重量%のSUS−トリグリセリドを含むことを特徴とする、食用製品。
【請求項18】
請求項14〜17のいずれか1項記載の構造化された、油脂が連続した食用製品であって、固形または半固形油脂が好ましくは45未満、より好ましくは40未満、最も好ましくは37未満のヨウ素価(IV)のパーム画分を含むことを特徴とする、食用製品。
【請求項19】
トリグリセリド組成が実質的に水素添加された油脂成分の無いものであることを特徴とする、請求項1〜18のいずれか1項記載の食品。
【請求項20】
充填剤が砂糖、小麦粉、澱粉、脱脂粉乳、全粉乳、ホエイパウダー、ココアパウダー、コーヒーパウダー、食品グレードの有機固形粉末、食品グレードの無機固形粉末またはこれらの2以上の混合品からなる群より選択される少なくとも1の成分を含むことを特徴とする、請求項1〜19のいずれか1項記載の構造化された、油脂が連続した食用製品。
【請求項21】
充填剤が500μmより小さく、好ましくは250μmより小さく、最も好ましくは100μmより小さい平均粒径を有することを特徴とする、請求項1〜20のいずれか1項記載の構造化された、油脂が連続した食用製品。
【請求項22】
請求項1〜21のいずれか1項記載の構造化された、油脂が連続した食用製品であって、食用製品の硬度が少なくとも200、好ましくは少なくとも400、より好ましくは少なくとも550、最も好ましくは少なくとも700のR値を特徴とするものであって、R値はグリセリド含量およびグリセリド組成のSTFA含量に関する硬度であって、
R=T/(S×STFA×F)×10000
式中:
− Tはグラムで表される食品の硬度であり、テクスチャーメーターで20℃、直径2.5mmから4.5mmの間の金属円筒プローブを用いて貫入深さ10mmで測定したものであり、
− Sはmmで表される円筒プローブの底面であり、STFAはグリセリド組成の全重量に対する重量%で表される、グリセリド組成中の飽和およびトランス脂肪酸の合計であり、
− Fは重量%で表される、食品の全重量に対するグリセリド組成の量である、
で定義されるものであることを特徴とする、食用製品。
【請求項23】
食用製品が菓子類の群、具体的にはクリーム、コーティング用生地、タブレット、フィリング、充填したチョコレート製品、非エマルジョンのスプレッド、調理製品、食品用固形油脂原料、ソフトチーズ、通常の保存温度が室温より低い、好ましくは0〜10℃の製品から選択される食用製品であることを特徴とする、請求項1〜22のいずれか1項記載の構造化された、油脂が連続した食用製品。
【請求項24】
請求項1〜23のいずれか1項記載の構造化された、油脂が連続した食用製品を含む食品であって、食品が、充填されたチョコレート製品、クリーム層がそれ自体が更にコーティング用生地でコーティングされていてもいなくてもよいクリーム層でコーティングされたビスケット、2以上のビスケットの間に挟まれたクリーム層を有するビスケット、内部に構造化されたフィリングをもつ押出成形された製品、構造化されたフィリングを持つベーカリー製品、充填されたもしくはトッピングされた菓子製品、充填されたもしくはトッピングされた調理製品から成る群から選択されることを特徴とする、食品。
【請求項25】
請求項1〜24のいずれか1項記載の構造化された、油脂が連続した食用製品を製造するためのトリグリセリド組成の使用であって、トリグリセリド組成が、
− 50重量%未満、好ましくは45重量%未満、より好ましくは40重量%未満、より好ましくは35重量%未満、最も好ましくは30重量%未満の飽和脂肪酸
− 10未満、好ましくは5重量%未満、より好ましくは2重量%未満のトランス不飽和脂肪酸、
− 少なくとも90重量%のC8〜18の脂肪酸、
− Pはパルミチン酸、Oはオレイン酸であるところの、少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも15重量%、より好ましくは少なくとも20重量%、最も好ましくは少なくとも25重量%の、トリグリセリド組成の重量に対するPOP、
− Sは16〜18個の炭素原子を有する飽和脂肪酸、Uは18個以上の炭素原子を有する不飽和脂肪酸であって、少なくとも1.3、好ましくは少なくとも2、より好ましくは少なくとも2.5、最も好ましくは少なくとも3のSUS/SUU比、
− Sは16〜18個の炭素原子を有する飽和脂肪酸、Uは18個以上の炭素原子を有する不飽和脂肪酸であって、少なくとも15、好ましくは少なくとも20、最も好ましくは少なくとも25のSUS/S3比、
− 少なくとも1、好ましくは少なくとも1.5、より好ましくは少なくとも2、最も好ましくは少なくとも4のC16/C18飽和脂肪酸比、
を含み、トリグリセリド組成が20℃において3%より多く、55%未満のSFCを有することを特徴とする、使用。
【請求項26】
請求項1〜25のいずれか1項記載の構造化された、油脂が連続した食用製品を製造する方法であって、製造工程が、
− 20〜100重量%の、少なくとも一部が融解状態のトリグリセリド組成、
− 0〜80重量%の充填剤、
− 15重量%未満の水、
を混合する工程、およびトリグリセリド組成を安定した結晶化状態にする結晶化への導入および固体構造の構築の工程を含むことを特徴とする、方法。
【請求項27】
請求項26記載の方法であって、製造工程が、食品全重量に対して20〜100重量%の間の、少なくとも一部、好ましくは全てが融解状態のトリグリセリド組成と、食品全重量に対して0〜80重量%の間の充填剤、食品全重量に対して0〜10重量%の間の水を混合し、続いてこのようにして得られた混合物を17〜35℃の間、好ましくは20〜30℃の間、より好ましくは22〜28℃の間に冷却し、続いて食品を硬化して、固体構造を構築させる工程を含むことを特徴とする、方法。
【請求項28】
工程が、融解グリセリド組成を含む混合物を、混合物が冷却される第一の冷却工程、続いて不安定な結晶を融解する組成の再加熱および混合物を冷却する第二の冷却工程に供するものであるテンパリング工程を含むことを特徴とする、請求項26記載の方法。
【請求項29】
食品全重量に対して10重量%未満、好ましくは5重量%未満、より好ましくは2重量%未満、最も好ましくは1重量%未満の、テンパリングのための添加物として最小作用量のベータ形に結晶化した油脂を含む添加物、を添加することを特徴とする、請求項26記載の方法。
【請求項30】
食品全重量に対して70〜100重量%のトリグリセリドを少なくとも一部が融解するまで加熱し、最大で30重量%の充填剤と混合し、その間、冷却および大きなグリセリド結晶または結晶塊の形成を抑制する程度の撹拌速度での撹拌を同時に行うことを特徴とする、請求項26記載の方法。
【請求項31】
組成を12〜28℃の間、好ましくは15〜25℃の間、最も好ましくは17〜23℃の間の温度に、撹拌と同時に冷却することを特徴とする、請求項30記載の方法。
【請求項32】
少なくとも一部のグリセリド組成の結晶化により固体構造が得られた後で、硬度が改良された食品を得るため、結晶化した油脂の安定化のために製品を放置することを特徴とする、請求項26〜31いずれか1項記載の方法。
【請求項33】
製品を、硬化工程開始から12時間未満、好ましくは6時間未満、最も好ましくは2時間未満放置し、混合後の固体のテクスチャーの形成が完了することを特徴とする、請求項32記載の工程。
【請求項34】
菓子類の群、具体的にはクリーム、コーティング用生地、タブレット、フィリング、充填したチョコレート製品、クリーム層がそれ自体がコーティング用生地で更にコーティングされていてもいなくてもよいクリーム層でコーティングされたビスケット、2以上のビスケットの間に挟まれたクリーム層を有するビスケット、非エマルジョンのスプレッド、調理製品、食品用固形油脂原料、ソフトチーズ、内部に構造化されたフィリングをもつ押出成形された製品、構造化されたフィリングを持つベーカリー製品、室温より低い温度で保存され、その温度で消費される食品、から選択される食品の製造のための、請求項25記載のトリグリセリド組成の使用。
【請求項35】
トリグリセリド組成が、
− 50重量%未満、好ましくは45重量%未満、より好ましくは40重量%未満、より好ましくは35重量%未満、最も好ましくは30重量%未満の飽和脂肪酸
− 10未満、好ましくは5重量%未満、より好ましくは2重量%未満のトランス不飽和脂肪酸、
− 少なくとも90重量%のC8〜18の脂肪酸、
− Pはパルミチン酸、Oはオレイン酸であるところの、少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも15重量%、より好ましくは少なくとも20重量%、最も好ましくは少なくとも25重量%の、トリグリセリド組成の重量に対するPOP、
− Sは16〜18個の炭素原子を有する飽和脂肪酸、Uは18個以上の炭素原子を有する不飽和脂肪酸であるところの、少なくとも1.3、好ましくは少なくとも2、より好ましくは少なくとも2.5、最も好ましくは少なくとも3のSUS/SUU比、
− Sは16〜18個の炭素原子を有する飽和脂肪酸、Uは18個以上の炭素原子を有する不飽和脂肪酸であるところの、少なくとも15、好ましくは少なくとも20、最も好ましくは少なくとも25のSUS/S3比、
− 少なくとも1、好ましくは少なくとも1.5、より好ましくは少なくとも2、最も好ましくは少なくとも4のC16/C18飽和脂肪酸比、
を含み、20℃において3%より多く、55%未満のSFCを有するものである、トリグリセリド組成。

【公表番号】特表2009−525739(P2009−525739A)
【公表日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−553764(P2008−553764)
【出願日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際出願番号】PCT/EP2007/051223
【国際公開番号】WO2007/090869
【国際公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【出願人】(504355468)
【氏名又は名称原語表記】FUJI OIL EUROPE
【Fターム(参考)】