説明

飽和イミダゾリニウム塩および関連化合物の調製

ホルムアミジンと、ジハロエタンのような化合物および場合によっては塩基との反応を含む、飽和イミダゾリニウム塩および関連化合物の調製方法が開示される。または、イミダゾリニウム塩および関連化合物は、ホルムアミジン反応体の精製なしに一段階プロセスで調製することもできる。これらの方法は、数多くのイミダゾリニウム塩および関連化合物を、無溶媒反応条件下、優れた収率で得ることを可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
政府資金援助に関する声明
国立衛生研究所(National Institutes of Health)によって授与された助成金第GM031332号にしたがって、米国政府は本発明における特定の権利を有する。
【0002】
関連出願の相互参照
本発明は、35USC§119の下、2007年11月9日に出願された米国特許仮出願第61/002,754号の優先権を主張する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
過去10年間、有機金属錯体における配位子としてのN-複素環式カルベン(NHC)の使用が一般的になった。NHCは、バックボンド特性をほとんど有しない中性の2電子供与体として、多様な用途においてホスフィンに取って代わるようになった。たとえば、Diez-Gonzalez, S.; Nolan, S, P, Coord. Chem. Rev. 2007, 251, 874(非特許文献1)、Herrmann, W. A., Angew. Chem., Int. Ed. 2002, 41, 1290(非特許文献2)を参照すること。特に、ルテニウム系オレフィンメタセシスにおける配位子としてのそれらの使用は、活性および安定性の両方において多大な利得を可能にした。Scholl, M.; Ding, S.; Lee, C. W.; Grubbs, R. H. Org. Lett. 1999, 1, 953(非特許文献3)。また、求核性試薬および有機分子触媒としてのNHCへの関心が高まり、縮合反応、とりわけベンゾイン縮合に広く使用されている。Marion, N.; Diez-Gonzalez, S.; Nolan, S. P. Angew. Chem., Int. Ed. 2007, 46, 2988(非特許文献4)。
【0004】
飽和遊離カルベンは、酸素および湿分に対して敏感であるため、大部分の用途においては、対応するイミダゾリ(ニ)ウム塩の脱プロトン化を経てインサイチューで調製される(式1[式中、R基は、NHC配位子に関して当技術分野で公知のアルキルおよびアリール基を指す])。したがって、イミダゾリ(ニ)ウム塩の合成のための容易で高収率の方法は多大な関心の的である。
式1

【0005】
不飽和イミダゾリウム塩の合成は最適化されており、今や、グリオキサール、置換アニリン、ホルムアルデヒドおよび酸から出発する一段階手法によって容易に調製される。Arduengo, A. J., III, Preparation of 1,3-Disubstituted Imidazolium Salts, 1991、米国特許第5,077,414号(特許文献1)。残念ながら、飽和イミダゾリウム塩の調製は、今なお、パラジウム接触C-Nカップリングまたは還元をはじめとする、いくつかの合成的転換を要する(式2[式中、R基は、米国特許第5,077,414号(特許文献1)におけるヒドロカルビルまたは置換ヒドロカルビル基を指す])。
式2

【0006】
二つの脱離基を特徴とする化合物をリチウム化ホルムアミジンに付加することから出発する、不飽和イミダゾリニウム塩を調製するための新たな経路が開発された。Jazzar, R; Liang, H; Donnadieu, B; Bertrand, G. Journal of Organometallic Chemistry 2006, 691 3201(非特許文献5)。しかし、最終的なイミダゾリニウムへのホルムアミジンの環化反応は、THF中のさらなる環流を要する(式3)。
式3

【0007】
当技術分野には、市販の置換アニリン、ナフチルアミンまたはアントラセニルアミンから飽和イミダゾリニウム塩および類似化合物を調製する改良された方法を提供する必要性が今なお存在する。本発明はその必要性に応える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】Arduengo, A. J., III, Preparation of 1,3-Disubstituted Imidazolium Salts, 1991、米国特許第5,077,414号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Diez-Gonzalez, S.; Nolan, S, P, Coord. Chem. Rev. 2007, 251, 874
【非特許文献2】Herrmann, W. A., Angew. Chem., Int. Ed. 2002, 41, 1290
【非特許文献3】Scholl, M.; Ding, S.; Lee, C. W.; Grubbs, R. H. Org. Lett. 1999, 1, 953
【非特許文献4】Marion, N.; Diez-Gonzalez, S.; Nolan, S. P. Angew. Chem., Int. Ed. 2007, 46, 2988
【非特許文献5】Jazzar, R; Liang, H; Donnadieu, B; Bertrand, G. Journal of Organometallic Chemistry 2006, 691 3201
【発明の概要】
【0010】
本発明は、式(III)の化合物を調製する方法に関する。この方法では、反応スキーム1にしたがって、式(I)のホルムアミジンを、式(III)の化合物を形成するのに十分な条件下、式(II)の化合物と反応させる。
スキーム1

【0011】
方法はまた、スキーム2の反応によって式(I)のホルムアミジンを調製する段階を含むことができる。
スキーム2

【0012】
スキーム1および2中の各Arは同じであっても異なってもよい。異なるAr基を有する式(IV)の化合物をスキーム2の反応で使用する場合、式(IV)の化合物を、順次、式(V)のオルトギ酸トリアルキルと反応させて、異なるAr基を有する式(I)のホルムアミジンを生じさせる。
【0013】
本発明はまた、反応スキーム3にしたがって式(III)の化合物を調製する方法に関する。この方法では、式(IV)の化合物を、式(II)の化合物の存在下において、式(III)の化合物を形成するのに十分な条件下、式(V)のオルトギ酸トリアルキルと反応させる。Ar基が同じである場合、式(III)の化合物の一段階合成を使用することができる。
スキーム3

【0014】
スキーム1、2および3中の変数R1、R5、Ar、n、pおよびXは以下に定義される。
【0015】
特定の態様において、本発明方法は、ホルムアミジンとジクロロエタン(DCE)および非求核性塩基Bとの反応による、均斉および不斉飽和塩化イミダゾリニウムの調製に関する(式4-a)。または、均斉塩化イミダゾリニウムは、ホルムアミジンの精製なしに、置換アニリンから調製することもできる(式4-b)。他の態様では、DCEに代えてジブロモエタンを使用してもよい。
式4

【0016】
本発明の方法は、塩化イミダゾリニウムをはじめとする多様な式(III)の化合物を、無溶媒反応条件下、優れた収率で得ることを可能にする。以下に記載するように、多様なN-アリール置換基を有する数多くの式(III)の均斉および不斉化合物が調製され、単離された。
【発明を実施するための形態】
【0017】
発明の詳細な説明
一つの態様において、本発明は、式(III)の化合物を調製する方法に関する。この方法では、反応スキーム1にしたがって、式(I)のホルムアミジンを、式(III)の化合物を形成するのに十分な条件下、式(II)の化合物と反応させる。
スキーム1

【0018】
スキーム1中、各Arはアリール基であり、各Arは、フェニル、ナフチルおよびアントラセニルからなる群より独立して選択される。Ar基は、それぞれの場合で、同じであっても異なってもよい。特定の態様において、Ar基はフェニルである。
【0019】
R1は、Ar上の置換基を指し、それぞれの場合で、同じアリール基上の置換基と同じであっても異なってもよい。R1は、それぞれの場合で、C1〜C6アルキル、C1〜C6アルコキシ、ハロゲン、アリール、-Si(R2)3(式中、R2は各々独立してC1〜C6アルキルである)および-NR3R4(式中、R3およびR4は独立してC1〜C6アルキルであるか、またはR3とR4は、それらを担持する窒素と一緒に五もしくは六員の複素環を形成する)からなる群より独立して選択される。R1としてのアルキル、アルキレンまたはアルコキシ鎖および任意のアルキル、アルキレンまたはアルコキシ基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。R1中のアリール基は、置換されていても非置換であってもよい。一般的な置換基は、当技術分野で公知の置換基、たとえば非限定的に、C1〜C6アルキル、C1〜C6アルコキシ、ハロゲン、ニトロ、スルファート、-Si(R2)3(式中、R2は各々、独立して、C1〜C6アルキルである)および-NR3R4(式中、R3およびR4は、独立して、水素またはC1〜C6アルキルである)から選択することができる。
【0020】
本発明の特定の局面において、R1は、それぞれの場合で、C1〜C4アルキル、C1〜C4アルコキシ、フッ素、塩素、フェニル、ナフチル、-Si(R2)3(式中、R2は各々、独立して、C1〜C4アルキルである)および-NR3R4(式中、R3およびR4は、独立して、C1〜C4アルキルである)からなる群より独立して選択することができる。もう一つの態様において、R1は、メチル、エチル、イソプロピル、tert-ブチルまたはフッ素であることができる。R2、R3およびR4は、メチル、エチル、イソプロピルまたはtert-ブチルであることができる。
【0021】
変数「n」は、Ar基上のR1置換基の数を指定する。nの値は、アリール基のタイプとともに変化する。たとえば、nは、Arがフェニルである場合には0〜5の範囲であり、Arがナフチルである場合には0〜7の範囲であり、Arがアントラセニルである場合には0〜9の範囲である。nが0である場合、アリール基は非置換である。アリール環上の置換度は通常、1〜3の範囲である。Arがフェニル基である場合、nが1であるならば、フェニル環上にオルト、メタ、またはパラ置換があり、nが2であるならば、フェニル環上にジオルト、ジメタ、オルトおよびメタ、またはオルトおよびパラ置換があり、あるいはnが3であるならば、フェニル環上にジオルトおよびパラ、またはジメタおよびパラ置換がある。
【0022】
式(II)の化合物は式X-(CH2)p-Xで示される。変数「p」は、メチレン基の数を指定し、2〜5の範囲である。特定の態様において、pは2または3であり、式(III)の化合物は五または六員環を有することになる。五員環を有する式(III)の化合物は、飽和イミダゾリニウム化合物と呼ばれる。そのような化合物は、二つの環窒素を連結する飽和メチレン基を有し、メチレンを有する式(II)の化合物から調製することができる。
【0023】
式(II)の化合物の場合、Xは脱離基である。反応において、Xは、式(III)の化合物の形成中に置換される。当技術分野で公知の脱離基をXとして使用することができる。例示的な脱離基としては、ハロゲン、メシラート、トシラート、ペルクロラート、スルファートまたはトリフラートがあるが、これらに限定されない。塩素および臭素が例示的なハロゲンである。必要とはされないが、式(I)のホルムアミジンに対して過剰量の式(II)の化合物を使用してもよい。
【0024】
スキーム1に記載された反応において、式(I)のホルムアミジンは、反応体および犠牲的(sacrificial)塩基の両方として働くことができる。反応体として使用される場合、ホルムアミジンは一般に、式(II)の化合物のモル量の1/5未満で存在し、ホルムアミジンと式(II)とのモル比は通常、1:20〜1:5の範囲である。犠牲的塩基として使用される場合、ホルムアミジンは一般に、式(II)の化合物のモル量の1/5未満で存在し、ホルムアミジンと式(II)とのモル比は通常、1:10〜1:5の範囲である。または、反応は、非求核性塩基の存在下で起こり得る。非求核性塩基は一般に、ホルムアミジンに比較してわずかに過剰モルで、通常は約1:1〜2:1のモル比で存在する。当技術分野で公知の非求核性塩基をスキーム1の反応に使用することができる。例示的な非求核性塩基としては、ジイソプロピルエチルアミン(DIPA)、2,6-ジメチルピペリジン、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、ジイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミドのLi塩およびビス(トリメチルシリル)アミンがあるが、これらに限定されない。
【0025】
スキーム1の反応は、溶媒の存在または非存在下で実施することができる。例示的な溶媒としては、非極性非プロトン性溶媒、たとえばジエトキシエタンまたは芳香族溶媒、たとえばトルエン、キシレンまたはメシチレンがある。無溶媒合成の場合、式(II)の化合物X-(CH2p-X、たとえばジクロロエタン(DCE)が溶媒として働くことができる。無溶媒条件は一般に、費用の削減をはじめとする特定の利点を提供する。
【0026】
限定はされないが、スキーム1の反応は一般に、約40℃〜約150℃の範囲の温度で約16時間〜約168時間の範囲の期間、実施される。式(II)の化合物がジクロロエタン(DCE)である場合、通常、100℃を超える反応温度が使用される。ジブロモエタン(DBE)である式(II)化合物の使用は通常、DCEの場合よりも低い反応温度を要する。ジヨードエタン(DIE)は、DBEの場合よりもさらに低い反応温度を要する。式(I)のホルムアミジンのアリール基上の置換基の立体的嵩高さの増大が、より長い反応時間を生じさせるおそれがあるが、より高い温度またはより長い反応時間が式(III)の化合物の収率を高めることができる。
【0027】
本発明の一つの局面において、スキーム1の反応は、乾燥した不活性雰囲気下で実施することができる。不活性雰囲気は、当技術分野で公知であるように、通常、窒素およびアルゴンのようなガスをはじめとする不活性ガスを使用する。本発明の反応はまた、酸素含有および/または水含有雰囲気中で実施することもできる。
【0028】
スキーム1の反応のもう一つの局面において、本発明は、ホルムアミジンとジクロロエタン(DCE)および塩基との反応を含む、均斉および不斉飽和塩化イミダゾリニウムの調製方法に関する。ジイソプロピルエチルアミン(DIPA)が有効な塩基であることがわかった(表1、方法A)。上記のように、ホルムアミジンは、反応において基質および犠牲的塩基の両方として働くことができる(表1、方法B)。塩化イミダゾリニウムおよびいずれかの塩基の塩酸塩の両方は、当技術分野で公知の手段によって、たとえば、トルエンまたはアセトンのような溶媒中での連続沈殿によって単離することができる。イミダゾリニウム塩を単離し、精製する一般的手法は以下の実施例に記載される。また、反応において製造されたホルムアミジン塩を再生してホルムアミジンを形成することもできる。たとえば、塩酸ホルムアミジンは、ピリジン中での溶媒和ののち、水中での沈殿によってホルムアミジンに戻すことができる。
【0029】
(表1) ホルムアミジンからの塩化1,3-ジアリールイミダゾリニウムの調製


a 括弧内の収率は、基質の半分を犠牲的塩基とみなした場合の50%理論収率に基づく。b いずれの反応も100%転換率に達しなかったが、7日後に反応を停止した。
【0030】
本発明の方法はまた、スキーム2の反応によって式(I)のホルムアミジンを調製する段階を含むことができる。
スキーム2

【0031】
式(I)のホルムアミジンを調製するためのこの手順は、Roberts, R. M., J. Org. Chem. 1949, 14(2), 277およびKuhn, K, M.; Grubbs, R. H. Org. Lett. 2008, 10, 2075に記載されている。
【0032】
上記のように、スキーム2中の各Arは、同じであっても異なってもよい。異なるAr基を有する式(IV)の化合物をスキーム2の反応に使用する場合、式(IV)の化合物を、順次、式(V)のオルトギ酸トリアルキルと反応させて、異なるAr基を有する式(I)のホルムアミジンを得る。
【0033】
スキーム2中、各Arは、フェニル、ナフチルおよびアントラセニルからなる群より独立して選択される。スキーム1と同様に、Arはフェニルであることができるが、式(IV)の化合物2モルが使用されるため、各Arは異なってもよい。式(IV)の一つより多い化合物を使用する場合、各Arは異なり、式(IV)の化合物を、順次、式(V)のオルトギ酸トリアルキルと反応させたのち、化合物(II)と反応させる。
【0034】
置換基ならびに変数R1、n、Xおよびpは、スキーム1を参照して先に記載したものと同じである。
【0035】
式(V)のオルトギ酸トリアルキルの場合、R5は、C1〜C6アルキルであり、C1〜C4アルキル、たとえば非限定的に、メチル、エチル、プロピル、イソプロピルまたはtert-ブチルであることができる。たとえば、R5がエチルであるオルトギ酸トリエチルを使用することができる。
【0036】
反応条件、たとえば溶媒、反応温度、反応期間、反応雰囲気は、スキーム1を参照して先に記載したものと同じである。
【0037】
本発明のもう一つの態様は、反応スキーム3にしたがって式(III)の化合物を調製する一段階法に関する。この方法では、式(IV)の化合物を、式(II)の化合物の存在下において、式(III)の化合物を形成するのに十分な条件下、式(V)のオルトギ酸トリアルキルと反応させる。Ar基はそれぞれの場合で同一である。
スキーム3

【0038】
限定はされないが、スキーム3では一般に、式(V)の化合物1モルを使用して、式(II)の化合物の過剰量の存在下において、式(IV)の化合物2モルと反応させる。式(IV)の化合物と式(V)の化合物と式(II)の化合物とのモル比は通常、2:5:1である。反応条件は一般に、スキーム1および2に関して先に記載したものと同じである。
【0039】
本発明の一段階法における均斉塩化イミダゾリニウムの調製が表2に記載されている。塩基および中間体としてのホルムアミジンをインサイチューで形成したのち、環化してイミダゾリウム塩を得る。
【0040】
(表2) 置換アニリンからの塩化1,3-ジアリールイミダゾリニウムの一段階調製

a 目的の塩化イミダゾリニウムの単離収率。b 括弧内の収率は、基質の半分を犠牲的塩基とみなした場合の50%理論収率に基づく。
【0041】
実施例
以下の実施例は本発明の様々な態様を示すが、本発明の範囲を限定するものと解釈されてはならない。本発明の範囲内の他の局面、利点および変形が、本発明が関連する分野の当業者には明かであろう。
【0042】
方法Aは、スキーム1にしたがって非求核性塩基を用いる式(III)の化合物の調製を記載する。方法Bは、スキーム1にしたがって式(I)のホルムアミジンを犠牲的塩基として使用する式(III)の化合物の調製を記載する。方法Cは、スキーム3を経る式(III)の化合物の調製の一段階法を記載する。
【0043】
方法A1
ジイソプロピルエチルアミン(1.1当量)を、シュレンク管中、ホルムアミジン(1当量)およびジクロロエタン(10当量)とのかく拌溶液に加えた。溶媒が泡立ち始めるまで管を真空排気したのち、シールし、120℃に24〜168時間加熱した。次いで、反応混合物を室温に冷まし、溶媒(アセトンまたは高温トルエン)で希釈し、沈殿した塩化イミダゾリニウムを真空ろ過によって捕集し、過剰な溶媒で洗浄し、真空中で乾燥させた。夜通し放置すると、ろ液から塩酸ジイソプロピルエチルアミンが沈殿した。
【0044】
実施例1
方法A1にしたがって、ジイソプロピルエチルアミン(0.34mL、1.96mmol)を、シュレンク管中、N,N'-ジメシチルホルムアミジン(0.5g、1.78mmol)およびジクロロエタン(1.36mL、17.8mmol)とのかく拌溶液に加えた。溶媒が泡立ち始めるまで管を真空排気したのち、シールし、120℃に24時間加熱した。次いで、反応混合物を冷まし、トルエン(40mL)に加えたのち、環流状態にした。熱いうちに、沈殿物を真空ろ過によって捕集し、トルエン(5mL)で洗浄し、真空中で乾燥させて、塩化1,3-ジメシチルイミダゾリニウム(0.56g、92%)を淡い桃色の粉末として得た。
【0045】
実施例2
N,N'-ジメシチルホルムアミジン(DMFA、1当量)、1,2-ジクロロエタン(DCE)および電磁かく拌子を、環流冷却器およびサーモウェルを装着した三つ口丸底フラスコに入れた。フラスコを油浴中で所望の温度に加熱したのち、ジイソプロピルエチルアミン(DIPA)を加えた。フラスコをその温度で一定期間維持した。蒸留によってDCEを除去した。トルエンを混合物に加え、フラスコを冷めるにまかせた。アセトンを加え、ろ過によって固体を捕集した。固体を、真空オーブン中、室温で16時間、40℃で8時間乾燥させた。実験条件および結果を表3にまとめる。
【0046】
(表3) 塩化1,3-ジメシチルイミダゾリニウムの合成

【0047】
実施例3
N,N'-ジメシチルホルムアミジン(DMFA、1当量)、1,2-ジブロモエタン(DBE、5当量)および電磁かく拌子を、環流冷却器およびサーモウェルを装着した三つ口丸底フラスコに充填した。フラスコを油浴中で所望の温度に加熱したのち、ジイソプロピルエチルアミン(DIPA、1.1当量)を加えた。フラスコをその温度で一定期間維持した。真空下、過剰なDBEを除去し、フラスコを室温に冷ました。得られた固形塊を破壊するために注意してかく拌しながらアセトンを加えた。スラリーをろ過し、回収した固体をアセトンで洗浄した。固体を、真空オーブン中、室温で16時間、40℃で8時間乾燥させた。実験条件および結果を表4にまとめる。
【0048】
(表4) 臭化1,3-ジメシチルイミダゾリニウムの合成

【0049】
実施例4
N,N'-ジメシチルホルムアミジン(2.8g、10mmol)、1,3-ジブロモプロパン(10.0g、50mmol)および電磁かく拌子を、環流冷却器を装着し、窒素バブラに接続された50mL丸底フラスコに充填した。フラスコを油浴に入れ、油温が110℃に達したところでジイソプロピルエチルアミン(1.42g、11mmol)を加えた。次いで、油浴の温度を3.5時間130℃に上げた。混合物を冷まし、揮発性物質(主に1,3-ジブロモプロパン)を真空下に除去した。得られた固体は、1H NMR分析により、目的の臭化1,3-ジメシチルテトラヒドロピリミジニウムと同定された。
1H NMR(CDCl3):δ 7.55 (s, NCHN, 1H), 6.92 (s, Me3C6H2, 4H), 4.19 (t, NCH2CH2CH2N, 4H), 2.57 (m, NCH2CH2CH2N, 2H), 2.32 (s, o-CH3, 12H), 2.25 (s, p-CH3, 6H)
【0050】
実施例5
N,N'-ジメシチルホルムアミジン(DMFA、0.10モル、1当量)、1,2-ジブロモエタン(DBE)、溶媒および電磁かく拌子を、環流冷却器およびサーモウェルを装着した三つ口丸底フラスコに充填した。フラスコを油浴中で110℃(トルエンの場合、100℃)に加熱したのち、ジイソプロピルエチルアミン(DIPA、0.11モル、1.1当量)を加えた。フラスコを110℃で16時間維持した。項目aおよびbの場合、過剰なDBE(項目aおよびb)を真空下で除去した。項目c〜eの場合、ストリッピング段階を省略した。フラスコを室温に冷ました。アセトンを加え、固体をろ過し、アセトンで洗浄した。固体を、真空オーブン中、室温で16時間、40℃で8時間乾燥させた。実験条件および結果を表5にまとめる。
【0051】
(表5) 臭化1,3-ジメシチルイミダゾリニウムの合成

【0052】
方法B1
ジクロロエタン(10当量)を、ホルムアミジン(2当量)を充填したシュレンクフラスコに加えた。溶媒が泡立ち始めるまで管を真空排気したのち、シールし、かく拌しながら120℃に24時間加熱した。次いで、反応混合物を室温に冷まし、溶媒(アセトンまたは高温トルエン)で希釈し、沈殿した塩化イミダゾリニウムを真空ろ過によって捕集し、過剰な溶媒で洗浄し、真空中で乾燥させた。夜通し放置すると、ろ液から塩酸ホルムアミジンが沈殿した。
【0053】
実施例6
方法B1にしたがって、ジクロロエタン(1.36mL)を、N,N'-ジメシチルホルムアミジン(0.5g、1.78mmol)を充填したシュレンクフラスコに加えた。溶媒が泡立ち始めるまで管を真空排気したのち、シールし、かく拌しながら120℃に24時間加熱した。次いで、反応混合物を冷まし、トルエン(40mL)に加え、環流状態にした。熱いうちに、沈殿物を真空ろ過によって捕集し、トルエン(5mL)で洗浄し、真空中で乾燥させて、塩化1,3-ジメシチルイミダゾリニウム(0.3g、49%)を淡い桃色の粉末として得た。
【0054】
ろ液を夜通し放置して、塩酸N,N'-ジメシチルホルムアミジンを沈殿させた。沈殿物を真空ろ過によって捕集し、ヘキサン(5mL)で洗浄し、真空中で乾燥させて、塩酸N,N'-ジメシチルホルムアミジン(0.27g、48%)を無色の結晶として得た。
【0055】
実施例7
以下に記載する方法にしたがって均斉ホルムアミジンを調製することができる。酢酸(0.05当量)を、置換アニリン(2当量)およびオルトギ酸トリエチル(1当量)を充填した丸底フラスコに加えた。溶液をかく拌しながら120〜160℃に4〜12時間加熱し、室温まで冷ますと、粗ホルムアミジンが沈殿した。冷温ヘキサンで粉砕し、真空ろ過すると、純粋なホルムアミジンが無色の粉末(85〜95%)として得られた。
【0056】
実施例8
酢酸(0.15mL、2.67mmol)を、2,4,6-トリメチルアニリン(15mL、106.7mmol)およびオルトギ酸トリエチル(8.88mL、53.36mmol)を充填した丸底フラスコに加えた。ビグリューカラムを取り付け、溶液をかく拌しながら120℃に4時間加熱し、室温に冷ますと、粗生成物が沈殿した。冷温ヘキサンで粉砕し、真空ろ過すると、純粋なN,N'-ジメシチルホルムアミジン(13.77g、92%)が無色の粉末として得られた。
【0057】
実施例9
以下に記載する方法にしたがって不斉ホルムアミジンを調製することができる。酢酸(0.05当量)を、置換アニリン(1当量)およびオルトギ酸トリエチル(1当量)を充填した丸底フラスコに加えた。溶液をかく拌しながら環流状態で2時間加熱したのち、第二の置換アニリン(1当量)を反応混合物に加えた。溶液を環流状態でさらに2時間加熱し、室温まで冷ますと、粗ホルムアミジンが沈殿した。冷温ヘキサンで粉砕し、真空ろ過すると、純粋なホルムアミジンが無色の粉末(55〜85%)として得られた。
【0058】
実施例10
酢酸(0.086mL、1.5mmol)を、2,6-ジフルオロアニリン(3mL、30mmol)およびオルトギ酸トリエチル(5mL、30mmol)を充填した丸底フラスコに加えた。ビグリューカラムを取り付け、溶液をかく拌しながら120℃で2時間加熱した。次いで、2,4,6-トリメチルアニリン(4.22mL、30mmol)を反応混合物に加えた。溶液を環流状態でさらに2時間加熱し、室温まで冷ますと、粗生成物が沈殿した。冷温ヘキサンで粉砕し、真空ろ過すると、純粋なN-(2,6-ジフルオロフェニル)-N'(メシチル)-ホルムアミジン(5.35g、65%)が無色の粉末として得られた。
【0059】
実施例11
以下に記載する方法にしたがって塩酸ホルムアミジンからホルムアミジンを再生した。ピリジン(溶媒和に必要な量)を、塩酸ホルムアミジンを充填した丸底フラスコに加えた。溶液を約5分間かく拌したのち、大過剰の水で希釈した。沈殿したホルムアミジンを真空ろ過によって捕集し、ヘキサンで洗浄し、真空中で乾燥させた。
【0060】
実施例12
ピリジン(2mL)を、塩酸N,N'-ジメシチルホルムアミジン(0.27g、0.85mmol)を充填した丸底フラスコに加えた。溶液を5分間かく拌したのち、水(10mL)で希釈すると、粗生成物が沈殿した。沈殿物を真空ろ過によって捕集し、冷温ヘキサン(5mL)で洗浄し、真空中で乾燥させて、N,N'-ジメシチルホルムアミジン(0.24g、84%)を無色の粉末として得た。
【0061】
方法C1
ジクロロエタン(5当量)を、置換アニリン(2当量)およびオルトギ酸トリエチル(1当量)を充填したシュレンクフラスコに加えた。溶媒が泡立ち始めるまで管を真空排気したのち、シールし、かく拌しながら120℃に24時間加熱した。次いで、反応混合物を室温に冷まし、溶媒(アセトンまたは高温トルエン)で希釈し、沈殿した塩化イミダゾリニウムを真空ろ過によって捕集し、過剰な溶媒で洗浄し、真空中で乾燥させた。夜通し放置すると、ろ液から塩酸ホルムアミジンが沈殿した。
【0062】
実施例13
方法C1にしたがって、ジクロロエタン(2.23mL)を、2,4,6-トリメチルアニリン(1.64mL、11.66mmol)およびオルトギ酸トリエチル(0.97mL、5.83mmol)を充填したシュレンクフラスコに加えた。溶媒が泡立ち始めるまで管を真空排気したのち、シールし、かく拌しながら120℃に24時間加熱した。次いで、反応混合物を冷まし、トルエン(50mL)に加え、環流状態にした。熱いうちに、沈殿物を真空ろ過によって捕集し、トルエン(5mL)で洗浄し、真空中で乾燥させて、塩化1,3-ジメシチルイミダゾリニウム(0.89g、45%)を淡い桃色の粉末として得た。
【0063】
ろ液を夜通し放置して、塩酸N,N'-ジメシチルホルムアミジンを沈殿させた。沈殿物を真空ろ過によって捕集し、ヘキサン(5mL)で洗浄し、真空中で乾燥させて、塩酸N,N'-ジメシチルホルムアミジン(0.65g、35%)を無色の結晶として得た。
【0064】
実施例14
2,4,6-トリメチルアニリン(TMA、2当量)、オルトギ酸トリエチル(TEOF、1.1当量)、酢酸(AcOH、0.05当量)および電磁かく拌子を三つ口丸底フラスコに充填した。フラスコに、サーモウェル、蒸留ヘッドおよびガラスストッパを装着した。蒸留ヘッドをリービッヒ冷却器に接続し、そのリービッヒ冷却器を、反応中に発生するエタノールを捕集するための容器に接続した。フラスコを油浴中110℃で6時間加熱すると、その間に混合物が固形塊になった。反応の進行をGC分析によって確認した。反応が完了すると、1,2-ジブロモエタン(DBE)およびトルエン(DMFAの理論量に対して1.4重量当量)を加えて、得られたN,N'-ジメシチルホルムアミジン(DMFA)を溶解させた。次いで、ヒューニッヒ塩基、ジイソプロピルエチルアミン(DIPA、DMFAの理論量に対して1.1当量)をフラスコに加えた。この混合物を110℃で24時間加熱した。加熱を停止し、内容物を100℃に冷ました。冷温トルエン(0〜10℃、トルエンの量の半分をその前に使用した)をフラスコに加えた。スラリーをさらに50℃まで冷ました。固体をろ過によって捕集した。フラスコをアセトンですすぎ、さらに多くの固体をろ過によって捕集した。固体を合わせ、ヘキサン/水(10/1)の不混和混合物で洗浄したのち、アセトンで洗浄した。固体を、真空オーブン中、室温で16時間、40℃で8時間乾燥させた。実験条件および結果を表6にまとめる。
【0065】
(表6) 臭化1,3-ジメシチルイミダゾリニウムの一段階合成

【0066】
実施例15
2,4,6-トリメチルアニリン(TMA、2当量)、オルトギ酸トリエチル(TEOF、1.1当量)、酢酸(AcOH、0.05当量)および電磁かく拌子を三つ口丸底フラスコに充填した。フラスコに、サーモウェル、蒸留ヘッドおよびガラスストッパを装着した。蒸留ヘッドをリービッヒ冷却器に接続し、そのリービッヒ冷却器を、反応中に発生するエタノールを捕集するための容器に接続した。フラスコを、油浴中、所望の温度に6時間加熱すると、その間に混合物が固形塊になった。反応の進行をGC分析によって確認した。反応が完了すると、1,2-ジクロロエタン(DCE、DMFAの理論量に対して18〜19当量)を加えて、得られたN,N'-ジメシチルホルムアミジン(DMFA)を溶解させた。次いで、ヒューニッヒ塩基、ジイソプロピルエチルアミン(DIPA、DMFAの理論量に対して1.1当量)をフラスコに加えた。この混合物を100〜120℃の温度で50時間加熱した。DCEを蒸留によって除去した。トルエンを混合物に加え、フラスコを冷ました。アセトンを加え、固体をろ過によって捕集した。固体を、真空オーブン中、室温で16時間、40℃で8時間乾燥させた。実験条件および結果を表7にまとめる。
【0067】
(表7) 塩化1,3-ジメシチルイミダゾリニウムの一段階合成

【0068】
方法A2
ジイソプロピルエチルアミン(0.96mL、5.5mmol、1.1当量)を、シュレンク管中、ホルムアミジン(5mmol、1当量)およびジクロロエタン(3.8mL、50mmol、10当量)のかく拌溶液に加えた。溶媒が泡立ち始めるまで管を真空排気したのち、静的真空下でシールし、120℃に24〜168時間加熱した。次いで、反応混合物を室温に冷まし、過剰なジクロロエタンを真空中で除去した。残渣をアセトンまたは高温トルエンで粉砕し、生成物を真空ろ過によって捕集し、過剰な溶媒で洗浄し、真空中で乾燥させて、純粋な生成物を無色の粉末(85〜95%)として得た。夜通し放置すると、ろ液から塩酸ジイソプロピルエチルアミンが沈殿した。
【0069】
実施例B2
ジクロロエタン(7.6mL、100mmol、10当量)を、ホルムアミジン(10mmol、1当量)を充填したシュレンクフラスコに加えた。溶媒が泡立ち始めるまで管を真空排気したのち、静的真空下でシールし、120℃に24〜168時間加熱した。次いで、反応混合物を室温に冷まし、過剰なジクロロエタンを真空中で除去した。残渣をアセトンまたは高温トルエンで粉砕し、生成物を真空ろ過によって捕集し、過剰な溶媒で洗浄し、真空中で乾燥させて、純粋な生成物を無色の粉末(85〜95%)として得た。夜通し放置すると、ろ液から塩酸ホルムアミジンが沈殿した。
【0070】
方法C2
ジクロロエタン(1.9mL、25mmol、5当量)を、アニリン(10mmol、2当量)およびオルトギ酸トリエチル(0.83mL、5mmol、1当量)を充填したシュレンクフラスコに加えた。溶媒が泡立ち始めるまで管を真空排気したのち、静的真空下でシールし、120℃に24〜36時間加熱した。次いで、反応混合物を室温に冷ました。次いで、未反応基質を真空中で除去した。残渣をアセトンまたは高温トルエンで粉砕し、生成物を真空ろ過によって捕集し、過剰な溶媒で洗浄し、真空中で乾燥させて、純粋な生成物を無色の粉末(85〜95%)として得た。夜通し放置すると、ろ液から塩酸ホルムアミジンが沈殿した。
【0071】
実施例16
方法A2(92%)、B2(49%)およびC2(45%)にしたがって、塩化1,3-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)-イミダゾリニウム(1b)を24時間かけて調製した。沸騰トルエンで粉砕したのち、生成物を白色固体として捕集した。NMRデータは、報告されているデータと一致する(A. J. Arduengo III et al. Tetrahedron 1999, 55, 14523-14534)。
【0072】
実施例17
方法A2(43%)、B2(48%)およびC2(26%)にしたがって、塩化1,3-ビス(2-メチルフェニル)-イミダゾリニウム(2b)を24時間かけて調製した。アセトンで粉砕したのち、生成物を白色固体として捕集した。NMRデータは、報告されているデータと一致する(Stewart, I, C.; Ung, T.; Pletnev, A, A.; Berlin, J. M.; Grubbs, R. H.; Schrodi, Y. Org. Lett. 2007, 9, 1589-1592)。
【0073】
実施例18
方法A2(91%)、B2(46%)およびC2(42%)にしたがって、塩化1,3-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)-イミダゾリニウム(3b)を36時間かけて調製した。最小限のアセトンで粉砕したのち、生成物を白色固体として捕集した。NMRデータは、報告されているデータと一致する(A. J. Arduengo III et al. Tetrahedron 1999, 55, 14523-14534)。
【0074】
実施例19
方法A2(91%)およびB2(46%)にしたがって、塩化1,3-ビス(2-tert-ブチルフェニル)-イミダゾリニウム(4b)を168時間(7日)かけて調製した。アセトン中で粉砕したのち、生成物を白色固体として捕集した。

【0075】
実施例20
方法A2(75%)およびB2(41%)にしたがって、塩化1-(2,6-ジフルオロフェニル)-3-(2,4,6-トリメチルフェニル)-イミダゾリニウム(5b)を36時間かけて調製した。アセトンで粉砕したのち、生成物を白色固体として捕集した。NMRデータは、報告されているデータと一致する(Vougioukalakis, G, C; Grubbs, R. H.; Organometallics 2007, 26, 2469-2472)。
【0076】
実施例21
方法A2(80%)およびB2(43%)にしたがって、塩化1-(2,6-ジイソプロピルフェニル)-3-(2-メチルフェニル)-イミダゾリニウム(6b)を24時間かけて調製した。アセトンで粉砕したのち、生成物を白色固体として捕集した。

【0077】
塩化1,3-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)イミダゾリニウム(sIMes-HCl)およびsIMes-HBrを単離し、精製する一般的手順
sIMes-HClとDIPA-HClとの反応混合物からの場合:
大過剰のDCE(10〜20当量)を使用したため、80〜100℃の溶液からDCEを除去することが必要であった。混合物がスラリーになったところで、少量のトルエンを加え、混合物を100℃でかく拌した。110℃でDCEを完全に除去するために、混合物を再び真空に付した。DCEを除去したのち、トルエンを加え、スラリーを100℃でかく拌した。ひとたび60℃に冷ますと、スラリーをろ過し、固体をアセトンで洗浄した。固体を捕集し、真空オーブン中で乾燥させた。この手順は、小規模または大規模のいずれにも(0.025mol〜50mol)適用可能であった。
【0078】
sIMes-HBrとDIPA-HBrとの反応混合物からの場合:
A. 大規模(4.35mol):
反応の完了後、反応混合物を50〜60℃で冷却した。スラリーをNutchフィルタでろ過した。ヘキサン/水(容量比10/1)を加え、スラリーを手動でかく拌した。液体をろ別し、固体をアセトンでさらに洗浄した。固体を真空オーブン中で乾燥させた。
【0079】
B. 小規模(0.1mol〜1.0mol):
ヘキサン/水洗浄を省いたこと以外、大規模単離と同じであった。
【0080】
論考:
基本的に、反応の終了時の反応混合物は、二つの塩、すなわちsIMes-HXおよびDIPA-HX(X=ClまたはBr)からなる。二つの塩を分離する原理は、異なる温度の異なる溶媒中の溶解度である。以下の表が分離のための基礎を提供する。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の反応にしたがって式(I)のホルムアミジンを式(II)の化合物と反応させて式(III)の化合物を形成する段階を含む、式(III)の化合物を調製する方法:

式中、
Arは、それぞれの場合で、フェニル、ナフチルおよびアントラセニルからなる群より独立して選択され;
R1は、それぞれの場合で、C1〜C6アルキル;C1〜C6アルコキシ;ハロゲン;アリール;-Si(R2)3、式中、R2は各々独立してC1〜C6アルキルである;および-NR3R4、式中、R3およびR4は独立してC1〜C6アルキルであるか、またはR3およびR4は、それらを担持する窒素と一緒に五もしくは六員の複素環を形成する;からなる群より独立して選択され;
Xは脱離基であり;
nは各々、Arがフェニルである場合には0〜5の範囲であり、Arがナフチルである場合には0〜7の範囲であり、Arがアントラセニルである場合には0〜9の範囲であり;
pは2〜5の範囲である。
【請求項2】
Arがフェニルであり;
R1が、それぞれの場合で、C1〜C4アルキル;C1〜C4アルコキシ;フッ素;塩素;フェニル;ナフチル;-Si(R2)3、式中、R2は各々独立してC1〜C4アルキルである;および-NR3R4、式中、R3およびR4は独立してC1〜C4アルキルである;からなる群より独立して選択され;
Xが、ハロゲン、メシラート、トシラート、ペルクロラート、スルファートまたはトリフラートであり;
nが各々1〜3の範囲であり;
pが2または3である、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
R1が、それぞれの場合で、メチル、エチル、イソプロピル、tert-ブチルまたはフッ素からなる群より独立して選択され、
Xが塩素または臭素であり、
nが1であるならば、フェニル環上にオルト、メタ、もしくはパラ置換があり、nが2であるならば、フェニル環上にジオルト、ジメタ、オルトおよびメタ、もしくはオルトおよびパラ置換があり、またはnが3であるならば、フェニル環上にジオルトおよびパラ、もしくはジメタおよびパラ置換があり、
pが2である、
請求項2記載の方法。
【請求項4】
反応が非求核性塩基の存在下で起こる、請求項1記載の方法。
【請求項5】
非求核性塩基が、ジイソプロピルエチルアミン、2,6-ジメチルピペリジン、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、ジイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミドのLi塩およびビス(トリメチルシリル)アミンからなる群より選択される、請求項4記載の方法。
【請求項6】
反応が無溶媒反応である、請求項1記載の方法。
【請求項7】
以下の反応にしたがって式(IV)の一つまたは複数の化合物と式(V)のオルトギ酸トリアルキルとを反応させて式(I)のホルムアミジンを形成する段階をさらに含む、請求項1記載の式(III)の化合物を調製する方法:

式中、
Arは、フェニル、ナフチルおよびアントラセニルからなる群より選択され;
R1は、それぞれの場合で、C1〜C6アルキル;C1〜C6アルコキシ;ハロゲン;アリール;-Si(R2)3、式中、R2は各々独立してC1〜C6アルキルである;および-NR3R4、式中、R3およびR4は独立してC1〜C6アルキルあるか、またはR3とR4は、それらを担持する窒素と一緒に五もしくは六員の複素環を形成する;からなる群より独立して選択され;
nは各々、Arがフェニルである場合には0〜5の範囲であり、Arがナフチルである場合には0〜7の範囲であり、Arがアントラセニルである場合には0〜9の範囲であり;
R5はC1〜C6アルキルであり;
2つ以上の式(IV)の化合物を使用する場合、Arは各々異なり、式(IV)の化合物を順次、式(V)のオルトギ酸トリアルキルと反応させる。
【請求項8】
Arがフェニルであり;
R1が、それぞれの場合で、C1〜C4アルキル;C1〜C4アルコキシ;フッ素;塩素;フェニル;ナフチル;-Si(R23、式中、R2は各々独立してC1〜C4アルキルである;および-NR3R4、式中、R3およびR4は独立してC1〜C4アルキルである;からなる群より独立して選択され、
Xが、ハロゲン、メシラート、トシラート、ペルクロラート、スルファートまたはトリフラートであり;
nが各々1〜3の範囲であり;
R5が、C1〜C4アルキルであり;
pが、2または3である、
請求項7記載の方法。
【請求項9】
R1が、それぞれの場合で、メチル、エチル、イソプロピル、tert-ブチルまたはフッ素からなる群より独立して選択され、
Xが塩素または臭素であり、
nが1であるならば、フェニル環上にオルト、メタ、もしくはパラ置換があり、nが2であるならば、フェニル環上にジオルト、ジメタ、オルトおよびメタ、もしくはオルトおよびパラ置換があり、またはnが3であるならば、フェニル環上にジオルトおよびパラ、もしくはジメタおよびパラ置換があり、
R5がエチルであり、
pが2である、
請求項8記載の方法。
【請求項10】
Arがそれぞれ同一である、請求項7記載の方法。
【請求項11】
Arがフェニルであり、
R1が、それぞれの場合で、C1〜C4アルキル;C1〜C4アルコキシ;フッ素;塩素;フェニル;ナフチル;-Si(R2)3、式中、R2は各々独立してC1〜C4アルキルである、および-NR3R4、式中、R3およびR4は独立してC1〜C4アルキルである;からなる群より独立して選択され;
Xが、ハロゲン、メシラート、トシラート、ペルクロラート、スルファートまたはトリフラートであり;
nが各々1〜3の範囲であり;
R5がC1〜C4アルキルであり;
pが2または3である、
請求項10記載の方法。
【請求項12】
R1が、それぞれの場合で、メチル、エチル、イソプロピル、tert-ブチルまたはフッ素からなる群より独立して選択され、
Xが塩素または臭素であり、
nが1であるならば、フェニル環上にオルト、メタ、もしくはパラ置換があり、nが2であるならば、フェニル環上にジオルト、ジメタ、オルトおよびメタ、もしくはオルトおよびパラ置換があり、またはnが3であるならば、フェニル環上にジオルトおよびパラ、もしくはジメタおよびパラ置換があり、
R5がエチルであり、
pが2である、
請求項11記載の方法。
【請求項13】
2つ以上の式(IV)の化合物が使用され、Arがそれぞれの場合で異なる、請求項7記載の方法。
【請求項14】
R1が、それぞれの場合で、C1〜C4アルキル;C1〜C4アルコキシ;フッ素;塩素;フェニル;ナフチル;-Si(R2)3、式中、R2は各々独立してC1〜C4アルキルである;および-NR3R4、式中、R3およびR4は独立してC1〜C4アルキルである;からなる群より独立して選択され;
Xが、ハロゲン、メシラート、トシラート、ペルクロラート、スルファートまたはトリフラートであり;
nが各々1〜3の範囲であり;
R5がC1〜C4アルキルであり;
pが2または3である、
請求項13記載の方法。
【請求項15】
R1が、それぞれの場合で、メチル、エチル、イソプロピル、tert-ブチルまたはフッ素からなる群より独立して選択され、
Xが塩素または臭素であり、
nが1であるならば、フェニル環上にオルト、メタ、もしくはパラ置換があり、nが2であるならば、フェニル環上にジオルト、ジメタ、オルトおよびメタ、もしくはオルトおよびパラ置換があり、またはnが3であるならば、フェニル環上にジオルトおよびパラ、もしくはジメタおよびパラ置換があり、
R5がエチルであり、
pが2である、
請求項14記載の方法。
【請求項16】
以下の反応にしたがって、式(IV)の化合物と式(V)のオルトギ酸トリアルキルとを式(II)の化合物の存在下で反応させて式(III)の化合物を形成する段階を含む、式(III)の化合物を調製する一段階方法:

式中、
Arは、フェニル、ナフチルおよびアントラセニルからなる群より独立して選択され;
R1は、それぞれの場合で、C1〜C6アルキル;C1〜C6アルコキシ;ハロゲン;アリール;-Si(R23、式中、R2は各々独立してC1〜C6アルキルである;および-NR3R4、式中、R3およびR4は独立してC1〜C6アルキルであるか、またはR3とR4は、それらを担持する窒素と一緒に五もしくは六員の複素環を形成する;からなる群より独立して選択され;
Xは脱離基であり;
nは各々、Arがフェニルである場合には0〜5の範囲であり、Arがナフチルである場合には0〜7の範囲であり、Arがアントラセニルである場合には0〜9の範囲であり;
R5はC1〜C6アルキルであり;
pは2〜5の範囲である。
【請求項17】
Arがフェニルであり;
R1が、それぞれの場合で、C1〜C4アルキル;C1〜C4アルコキシ;フッ素;塩素;フェニル;ナフチル;-Si(R2)3、式中、R2は各々独立してC1〜C4アルキルである;および-NR3R4、式中、R3およびR4は独立してC1〜C4アルキルである;からなる群より独立して選択され;
Xが、ハロゲン、メシラート、トシラート、ペルクロラート、スルファートまたはトリフラートであり;
nが各々1〜3の範囲であり;
R5がC1〜C4アルキルであり;
pが2または3である、
請求項16記載の方法。
【請求項18】
R1が、それぞれの場合で、メチル、エチル、イソプロピル、tert-ブチルまたはフッ素からなる群より独立して選択され、
Xが塩素または臭素であり、
nが1であるならば、フェニル環上にオルト、メタ、もしくはパラ置換があり、nが2であるならば、フェニル環上にジオルト、ジメタ、オルトおよびメタ、もしくはオルトおよびパラ置換があり、またはnが3であるならば、フェニル環上にジオルトおよびパラ、もしくはジメタおよびパラ置換があり、
R5がエチルであり、
pが2である、
請求項16記載の方法。

【公表番号】特表2011−503107(P2011−503107A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−533321(P2010−533321)
【出願日】平成20年11月10日(2008.11.10)
【国際出願番号】PCT/US2008/083023
【国際公開番号】WO2009/062171
【国際公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(507021366)マテリア, インコーポレイテッド (7)
【出願人】(510126070)カリフォルニア インスティチュート オブ テクノロジー (1)
【Fターム(参考)】