説明

餃子の皮、餃子及び餃子の調理方法

【課題】 調理後にモチモチ感、ジューシー感と同時にパリッとした皮の食感が維持される餃子の皮及び該皮を用いた餃子、さらにその調理方法を提供する。
【解決手段】 小麦粉、米粉、品質改良粉、油脂及び食塩を含み、前記粉体100重量%に対し44〜50重量%の水分が含有させられた餃子の皮、該皮で具を包んで成形、蒸し、冷却及び冷凍され、電子レンジ耐用容器で包装されてなる餃子、前記餃子の冷凍あるいは冷蔵保存後に、そのまま電子レンジで加熱し、その後、電子レンジ耐用容器の包装を解いて食用油がひかれた加熱フライパンによって焼き目をつける調理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍あるいは冷蔵保存後の調理に水を必要とせず、調理後にモチモチ感、ジューシー感と同時にパリッとした皮の食感が維持される餃子の皮及び該皮を用いた餃子、さらにその調理方法に関し、一般家庭はもとより業務用として有効であることを特徴とする。
【背景技術】
【0002】
従来、餃子の皮の硬化による食感の低下を防止する手段として、原料粉に対する質量比で3〜20%のトレハロースを含有し、且つ1〜20%の油脂を含むこと、さらに原料粉として加工澱粉を原料粉全体に対する質量比で5〜40%配合すること、さらに添加する加工澱粉に対する質量比で1〜10%の小麦蛋白を含有させること、さらに原料粉に対する質量比で0.1〜1%の大豆蛋白を含有させることが提案されている(特開2004―141026号公報)。
【0003】
その他、少なくともひだの部分に餃子の全重量に対し、水分2%〜80%(質量)となるように水を付着させた餃子、餃子の外側へ、全重量に対し、水分2%
〜80%(質量)となるように水を付着させた冷凍餃子が提案されている(特開2000―258518号公報)。
【特許文献1】特開2004―141026号公報
【特許文献2】特開2000―258518号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記引用文献1は、原料粉に対して各種の添加物を加えることによって、餃子の皮の硬化を防止する発明であり、また、前記引用文献2は、完成した餃子に対して、その冷凍保存直前に水を付着させる発明である。
【0005】
発明者は、蒸し餃子であって、冷凍あるいは冷蔵保存後の食感維持に何が重要であるかについて研究を行い、試行錯誤の結果、皮生地練り段階における水分量と原料粉に対する水分の結合状態が重要な要素であることを確認し、本発明を完成するに至ったものであり、調理後にモチモチ感、ジューシー感と同時にパリッとした皮の食感が維持される餃子の皮及び該皮を用いた餃子、さらにはその調理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の餃子の皮は、小麦粉、米粉、品質改良粉、油脂及び食塩を含み、前記粉体100重量%に対し44〜50重量%の水分が含有させられてなることを特徴とする(請求項1)。
【0007】
前記水分量が44重量%未満の場合には、経時的に硬化し易く、パサついて食感を損ね、また、前記水分量が50重量%を超えると、生地が柔らかすぎ、食感も思わしくなく、機械の作業性もよくないものであった。
【0008】
前記本発明の餃子の皮によれば、機械を含む作業性に優れ、具を包んで成形し、蒸し、冷却及び冷凍した餃子とした場合にも、適度の水分量が保持され、その後の調理において皮がかたくなったり、パサついたりすることがない。また、前記冷凍した餃子を電子レンジ耐用容器で包装することにより、含有水分の低下を招くことがない。
【0009】
本発明の餃子は、前記請求項1に記載の餃子の皮で具を包んで成形、蒸し、冷却及び冷凍され、電子レンジ耐用容器で包装されてなることを特徴とする(請求項2)。
【0010】
前記本発明の餃子は、電子レンジ耐用容器で包装されることにより、流通、冷凍あるいは冷蔵保存において、含有水分の低下等の経時変化を起こすことがなく食感を維持し、後に述べる調理方法を有効に実施することができる。
【0011】
本発明の調理方法は、請求項2に記載の餃子を冷凍あるいは冷蔵保存後に、そのまま電子レンジで加熱し、その後、電子レンジ耐用容器の包装を解いて食用油をひいた加熱フライパンによって焼き目をつけることを特徴とする(請求項3)。
【0012】
前記本発明の調理方法は、電子レンジ耐用容器で包装したままの餃子が電子レンジによって加熱させられる。この電子レンジによる加熱では餃子を形成する内部の具が加熱され、同時に水分の散逸が防止される。したがって、モチモチ感、ジューシー感と同時に焼き上げ後のパリッとした皮の食感が維持される。
【0013】
その後、前記電子レンジ耐用容器の包装を解いて食用油をひいた加熱フライパンによって焼き目をつければよいものであり、調理時間が短縮され、調理に水を使用することがないため水加減、火加減及び加熱時間を失敗することがない。
【発明の効果】
【0014】
本発明の餃子の皮によれば、機械を含む作業性に優れ、餃子とした場合にも適度の水分が保持され、調理後の餃子にはモチモチ感、ジューシー感と同時にパリッとした皮の食感が維持され、本発明の調理方法によれば、調理時間が短縮されるとともに、水を使用しないため従来の水加減、火加減及び過熱時間の失敗による餃子の食感低下を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明における餃子の皮及び餃子の製造過程の一例を述べる。まず、水を含む原材料の計量が行われ、続いて縦型ミキサーを使用して生地練り(12分)、生地の成形(厚さ6mm)及び型抜きが行われる。
【0016】
その後の具の充填は、具12g、皮8gの重量にセットして自動成形機を使用して行い、でき上がった餃子を、蒸し(97℃、8分)、冷却し(芯温38℃以下)、冷凍し(−18℃以下)、金属検出器を通した後、前記餃子12個を電子レンジ耐用トレー及びフィルムからなるレンジ耐用容器に包装して終了である。その後は、適時、流通過程、家庭、店舗等において冷凍あるいは冷蔵保存される。
【0017】
下記に皮の製造時の水及び原材料の各種実施例を示す。
【表1】

【0018】
実施例Aは、主原料の準強力小麦粉100重量%に対し水33重量%、食塩0.6重量%及び油脂2.0重量%とした一般的な場合である。なお、以下の各実施例においては、準強力あるいは強力小麦粉、米粉、澱粉、セルロースパウダー及び品質改良粉の合計を粉体100重量%とし、水の添加量を前記粉体100重量%に対する重量%として表している。また、食塩及び油脂の添加量はいずれの実施例も同一である。
【0019】
実施例B〜Lは、小麦粉として準強力粉を使用し、粉体の構成比を変化させるとともに、水の添加量をそれぞれ変化させた場合である。すなわち、実施例Bは、準強力小麦粉85重量%、米粉10重量%及び澱粉5重量%の粉体合計100重量%に対し水36重量%を添加した場合、実施例Cは、粉体の構成比を変えて水の添加量を38重量%にした場合、以下同様に粉体の構成比を変えるとともに水の添加量を、実施例Dで40重量%にした場合、実施例Eは42重量%、実施例Fは44重量%、実施例Gは46重量%、実施例Hは48重量%、実施例Iは46重量%、実施例Jは48%、実施例Kは50重量%、実施例Lは46重量%とした場合である。
【0020】
また、実施例M〜Oは、小麦粉として強力粉を使用し、粉体の構成比を変化させるとともに、水の添加量をそれぞれ変化させた場合である。すなわち、実施例Mは、強力小麦粉67重量%、米粉30重量%、セルロースパウダー1.5重量%及び品質改良粉1.5重量%の粉体合計100重量%に対し水48重量%、実施例Nは、粉体の構成比をかえるとともに水の添加量を50重量%、実施例Oは47重量%にした場合である。
【0021】
前記粉体を構成する米粉は、生地の加水率の向上及び原料粉と水との結合の向上を図り、調理後のモチモチ感、ジューシー感を得るためであり、澱粉は、生地の加水率及び伸展性を得るためであり、セルロースパウダー(登録商標「KCフロック」日本製紙ケミカル株式会社製)は、生地の伸展性を得るとともにべたつきを防止するためであり、品質改良粉は、酵素活性型大豆粉を主成分に一部糖化されたトウモロコシ粉、食塩、砂糖を含み、生地のミキシング耐性と伸展性及び機械耐性の向上を図り、さらに生地の漂白、老化防止効果を得るために用いられる。
【0022】
つぎに前記本発明の調理方法の一実施例を述べる。前記レンジ耐用容器によって包装された餃子(20g×12個)が冷凍保存されていた場合、フライパンに薄く食用油をひき水を加えないで中火で温める。併行して、包装されたままの前記餃子を電子レンジで加熱する。加熱時間は500W電子レンジで約2分40秒、700W電子レンジで約2分である。つぎに電子レンジで温められた餃子の前記包装を解いて加熱された前記フライパンに移し、蓋をして約30〜40秒強火にて焼き目をつけて終了である。
【0023】
また、前記餃子が冷蔵保存されていた場合には、前記各電子レンジによる加熱時間が前記冷凍保存の場合に比べて短縮され、500W電子レンジで約1分20秒、700W電子レンジで約1分程度とされる。なお、フライパンによる焼き目をつけることは前記と同様である。前記本発明の調理時間は、従来一般の調理時間の約2分の1である。さらに前記いずれの調理においても水を使用しないため水加減、火加減、加熱時間の失敗による餃子の食感低下が防止される。
【0024】
つぎに前記各実施例A〜Oにおける機械の作業性、調理後のモチモチ感、ジューシー感と同時にパリッとした皮の食感が得られているか、電子レンジで加熱後包装を解いてフライパンに移す際に皮が破れ易いか、餃子同士あるいはフライパンにくっ付いて取れにくいか、等の調理性、焼き上がった餃子の色調を下記表2に示す。
【表2】

【0025】
対象餃子は前記冷凍保存された餃子(20g×12個)で、従来一般のには、電子レンジを使用することなく、フライパンに水80ccを加え、中火で1分、弱火で5分、計6分の加熱を行っている。一方、実施例A〜Oは700Wの電子レンジで2分間加熱し、その後、強火のフライパンで40秒、計2分40秒の加熱を行ったものである。食感、調理性、色調はパネラー20名に、実際に調理をお願して点数採点を依頼したもので、一番良いを10点、1点がいちばん悪いとして点数表示して貰いその平均点である。
【0026】
機械の作業性を含めて良い結果が得られたのは、いずれも、小麦粉、米粉、品質改良粉を含むことを共通にし、さらに油脂及び食塩を含む実施例I、J、L、M、Oであった。また、食感、調理性、色調の良い結果が得られたのも同様に、小麦粉、米粉、品質改良粉を含むことを共通にし、さらに油脂及び食塩を含む実施例I、K、N、Oであった。
【0027】
そこで、粉体合計100重量%に対する水の添加量をみると、粉体合計100重量%に対し44重量%未満の実施例E、D、C、B、Aの場合の食感、調理性及び色調に関する点数が低く、44〜50重量%の場合の点数が高いことが確認された。
【0028】
また、いずれの実施例の場合も、粉体合計のうち、米粉が10重量%以下の実施例E、D、C、B、Aの場合の食感、調理性及び色調に関する点数が低く、米粉を20〜35重量%として小麦粉量を調整した場合の点数が高いことが確認された。もっとも、米粉を40重量%と多くした実施例Kの場合には機械の作業性に難点が見られた。
【0029】
また、本発明の調理方法によれば、蒸し餃子の調理時間を従来の約2分の1に短縮できる。したがって、一般家庭はもとより、特に、顧客に対し商品を迅速に提供することが望まれる業務用の調理方法として最適である。
【0030】
さらに本発明の餃子は、焼き上げに水を必要としないため、鉄板上においてお上部を覆うことにより、好み焼き等と一緒に調理することができる。
【0031】
なお、本発明の餃子の皮で具を包んで成形及び蒸した後、予め焼成して冷却、冷凍及び電子レンジ耐用容器で包装し、後にそのまま電子レンジで加熱して食しても従来にないモチモチ感、ジューシー感と同時にパリッとした皮の食感が得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
小麦粉、米粉、品質改良粉、油脂及び食塩を含み、前記粉体100重量%に対し44〜50重量%の水分が含有させられていることを特徴とする餃子の皮。
【請求項2】
請求項1に記載の餃子の皮で具を包んで成形、蒸し、冷却及び冷凍され、電子レンジ耐用容器で包装されてなることを特徴とする餃子。
【請求項3】
請求項2に記載の餃子を冷凍あるいは冷蔵保存後に、そのまま電子レンジで加熱し、その後、電子レンジ耐用容器の包装を解いて食用油がひかれた加熱フライパンによって焼き目をつけることを特徴とする餃子の調理方法。

【公開番号】特開2006−67839(P2006−67839A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−252623(P2004−252623)
【出願日】平成16年8月31日(2004.8.31)
【出願人】(504331417)
【Fターム(参考)】