説明

餅つき機

【課題】餅つき機などの落下衝撃を対象物に与えて変性させる機械装置において、対象物に充分な落下衝撃を与えつつ、毎分の落下回数を増大させる。
【解決手段】対象物に落下衝撃を与えるもの(杵など)の落下工程に於いて、単に自由落下させるのではなく、その落下の途中に強制的に落下スピードを増大させる機構を組み込み、それにより毎分の落下回数を増大させるだけでなく、落下するもの(杵など)が対象物に当たるときのスピードも単なる自由落下の場合よりも増大させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は餅つき機等の落下衝撃により対象物を変性させる機械の落下物の駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
それらの駆動装置には種々の構造があるが、主なものは杵をカム又はローラーにより跳ね上げて自由落下させるものとクランク運動により上下させるものとがある。跳ね上げ落下させる方式は対象物に対し、落下衝撃を与えることができるが、自由落下による時間の制約があるため、落下ストロークによりその毎分の落下回数は大きく制約されている。クランク運動はその制約がないため毎分の落下回数はほぼ、自由に設定できるが、杵が対象物に接触する時は落下スピードが最低になり、なおかつ杵が最下点に達した瞬間には上昇に転ずるという宿命があり、対象物によっては充分な効果が得られないことがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は餅つき機などの落下衝撃を対象物に与える機械について、充分な落下衝撃を与えながら毎分の打撃回数を飛躍的に増やすことを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この問題を解決するために、落下の途中で落下スピードを付加させることを考えた。図1、図2はこの課題を解決するための具体的な構造の例である。
【発明の効果】
【0005】
図において、上バー2と下バー3、杵軸4と杵頭5は一体になって上下運動をする。これらを総称して杵と呼ぶ。
【0006】
ローラー1は駆動モーター7により等速円運動をしている。これが最下の位置Aから上昇する過程のBの位置で上バー2に接触し、杵を押し上げる。ローラー1が最上の位置Cに来る直前に上バー2から外れるので杵は重力により落下を始める。ここで下バー3が無く、且つ上バー2が最下の位置まで落下するより遅くローラー1が最下の位置に来る場合は再びローラー1が停止している上バー2の押上を開始し、杵の上下運動が継続する。これを従来方式と呼ぶこととする。
【0007】
具体的にはローラー1の回転半径が170mmの場合、毎分100回転位までは上バー2の落下が完了し、停止している状態で押上げが再開されるが、それ以上の回転になると上バー2の落下の途中で上昇するローラー1と衝突するため、上バー1に固着されている杵が最下まで落ちることができず、対象物に打撃を与えることができないだけでなく、機械に大きなダメージを与えることになる。実際には上下運動に対する摩擦抵抗などもあるので60回程度が限界と考えられる。
【0008】
これに対し下バー3が設置された場合にはローラー1は最高部からの降下の過程で下バー3を押し下げることになる。具体的には毎分150回転、ローラーの直径60mm、上バーの下面と下バーの上面の距離80mmとした場合にはローラー1は最高の位置から約27度の位置で下バー3と接触し、押し下げを開始する。
【0009】
ローラー1は最高の位置から90度の位置を過ぎると落下スピードが落ちるが、杵は重力による加速度が加味されるので下バー3がローラー1から離れ、自由落下をする。これにより杵が落下を完了して休止している後でローラー1が追いついてきて再び上バー2の押上を開始することになるので杵の上下運動は継続する。
【0010】
この場合の杵の運動は重力による影響を受けるため、回転数に制約がある。回転数が小さすぎるとローラー1が下バー3を押し下げることができない。又、回転数が大きすぎると上下のバーの間隔をローラー直径に近づけなければならない。その理由はローラー1が下バーと接触する際の相互のスピードの差が大きくなり、機械に負担となる。上下バーの間隔をローラー1の直径と近づけると安定した動作に不安が生ずる。
【0011】
この発明の副次的な効果として杵のストロークの割りに落下スピードが大きいことがある。具体的には前記の条件の場合、落差が340mmしか無いにも関わらず、最高落下スピードは3.3m/secもあり、これは落差560mmから落下した時のスピードに相当する。これにより、寸法も動力もより小さくすることができる。
【0012】
この動作をチャートにより詳述する。
図3、図4、図5、図6はさまざまな条件下でのローラーとバーの動作チャートである。いずれもローラーの回転半径が170mmの場合であり、チャートの初めから終わりまでの時間は1秒間で統一してある。
【0013】
図3は下バーが無い状態でローラーを60rpmで回転させた場合のローラーの上端の高さの変化と上バーの下端の高さの変化を示す。基準点(上バーの下端の最下の位置)の高さを0とすると、ローラーの下死点は−5mmになっており、そこから上昇を始め、A点でローラーの上端が上バーの下端と接触し、押上を開始する。ローラーが上死点を過ぎる直前にローラーは上バーから外れるので上バーはその時の上昇スピードで若干上昇し、その後、自由落下を始める。回転数が60rpmの場合、ローラーが下死点に達する前のBの角度の時に上バーが基準点(最下位)まで落下するのでローラーは再度上バーを押し上げることができ、バーの上下運動は継続する。
【0014】
図4は同じ構造でローラーを100rpmで回転させた場合である。この場合もローラーが下死点に達するよりも早く、上バーは基準点(最下位)まで落下するのでローラーは再度上バーを押し上げることができ、バーの上下運動は継続する。但し、杵の落下の際の抵抗などが考えられるので実際には実現しない可能性もある。
【0015】
図5は同じ構造でローラーを150rpmで回転させた場合である。この場合はローラーが下死点に達したあとの上昇過程でようやく上バーが落下してくるのでローラーと上バーはC点で激しく衝突することになり、上バーは最下位まで落下できないので対象物に落下衝撃を与えることができない。
【0016】
図6は下バーをつけた状態でローラーを150rpmで回転させた場合のローラーの上端の高さの変化と上バーの下端の高さの変化を示す。 この場合はローラーが上死点を過ぎたあとのDの位置に来るとローラーの下端が下バーの上端に接触し、バーを押し下げる作用をする。バーはローラーにより押し下げられながらも重力による加速度も受けるので落下の過程でローラーから離れ自由落下をする。そしてローラーが下死点に達する前に最下位に落ちることができるので、戻ってきたローラーは再び上バーの押上を再開できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の具体例を示した正面図である。
【図2】本発明の具体例を示した側面図である。
【図3】本発明の説明のために従来型のローラーとバーの動きを60回転の場合で示した動作チャートである。
【図4】本発明の説明のために従来型のローラーとバーの動きを100回転の場合で示した動作チャートである。
【図5】本発明の説明のために従来型のローラーとバーの動きを150回転の場合で示した動作チャートである。
【図6】本発明の具体例としての図1及び図2の構造で150回転の場合の動作チャートである。
【産業上の利用可能性】
【0018】
餅つき機などでウスの中の餅を手作業で反転させるなどの処置を要する場合は杵の毎分の落下回数は安全上の観点から制約を受ける。
その必要が無い自動餅つき機の場合には杵の毎分の落下回数が大きいほど餅つき機の能力が増大する。今までは跳ね上げ落下の駆動方法の場合では毎分50〜60回くらいが通常であり、100回以上を期待する場合にはクランク方式に頼るしかなかった。
【0019】
「背景技術」に記載したようにクランク方式では充分な杵つき効果が得られないと考えている人たちにとって本発明は対象物に充分な落下衝撃を与えながらその毎分の回数を飛躍的に増大させることができるものであり、産業上の利用可能性は大きい。
【0020】
この発明は餅つき機だけでなく、鍛造などに使われるハンマーマシンにも適用できる。
【符号の説明】
【0021】
1 ローラー
2 上バー
3 下バー
4 杵軸
5 杵頭
6 ガイド軸
7 駆動モーター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
餅つき機等の落下衝撃を対象物に与えて変性させる機械装置において杵を上昇させた後の落下工程で強制的に落下させる機構を有することを特徴とする杵の駆動装置

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−253133(P2010−253133A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−108628(P2009−108628)
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【出願人】(709002233)
【Fターム(参考)】