説明

香りが長続きする繊維製品用処理剤組成物

【課題】香りが長続きする繊維製品用処理剤組成物を提供すること。
【解決手段】(A) 常圧における融点が30℃以上の油脂と香料組成物との混合物を水に乳化分散させることにより得られる乳化物粒子を含有する水性液体、及び
(B) カチオン性化合物
を含有する繊維製品用処理剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣類等の繊維製品に適用して柔軟性を付与することができる、香りが長続きする繊維製品用処理剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
香気の放出を長続きさせる技術を一般にロングラスティング技術という。この技術は、当該技術分野でも利用されており、香料を含む柔軟剤、仕上げ剤又は繊維製品用処理剤を繊維製品に適用して香料を繊維製品に付着させている。当該技術分野におけるロングラスティング技術として、マイクロカプセルの活用(例えば、特許文献1)、香料前駆体の使用(例えば、特許文献2)、特定の香料成分の組合せ(例えば、特許文献3)などが公開されている。
しかしながら、マイクロカプセルを活用する技術は、持続効果は高いが、繊維製品を擦ることでカプセルを破壊し、香りを発散させる技術であり、カプセルが破壊されなければ香りは持続しない。従って、マイクロカプセルを破壊し得る程度の力が繊維製品に加わらないような状況下でのロングラスティング効果は期待できない。また、擦ることによって繊維製品が傷むこともある。香料前駆体を使用した場合、前駆体から放出される香料成分の香りが持続するが、残香の香調が限定される。特定の香料の組合せの場合、ラストノートとよばれる成分の香りが持続するが、残香の香調が限定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-249326号公報
【特許文献2】特開2003-534449号公報
【特許文献3】特開2006-124884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明は、香料を適用した繊維製品を擦ることなく、トップノートを含むフレッシュな香りが長続きする繊維製品用処理剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らが鋭意検討した結果、香料組成物を乳化物粒子の芯物質、油脂を乳化物粒子の壁材とした香料の乳化物粒子と、カチオン性化合物とを併用することで、すすぎ処理をした場合でも効果的に香料乳化物粒子を繊維製品に吸着させ、香りが長続きすることを見出した。すなわち、本発明は、
(A) 常圧における融点が30℃以上の油脂と香料組成物との混合物を水に乳化分散させることにより得られる乳化物粒子を含有する水性液体、及び
(B) カチオン性化合物
を含有する繊維製品用処理剤組成物を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、残香性が向上するとともに、残香の香調が、トップノートを含むフレッシュな香りである繊維製品用処理剤組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施例で用いた油脂 a-3/a-5=1/12(wt/wt)混合物のDSCチャート
【図2】実施例で用いた油脂 a-3/a-5=1/5(wt/wt)混合物のDSCチャート
【発明を実施するための形態】
【0008】
〔A成分〕
<油脂>
本発明において、油脂は、乳化物粒子の壁材として作用する。本発明において用いることのできる油脂は、常圧における融点が30℃以上、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上であって、好ましくは100℃以下、より好ましくは90℃以下である。融点が30℃以上であることにより、トップノートを含むフレッシュな香りが長続きするので好ましい。なお、融点は、示差走査熱量測定法(DSC)などにより測定することができる。具体的には、示差走査熱量計(例えば、DSC120(セイコーインスツル(SII)社製))を用いて測定することができる。融点を測定したい化合物を測定用セルにいれ、20℃から90℃まで、2℃/分の昇温速度で加温し、DSCの吸熱ピークから融けはじめの温度を読み取り、融点とする。但し、混合物など、融けはじめの温度が明確でない場合にはピークトップの温度を融点とする。ピークが複数現れる場合、最も大きなピークのピークトップの温度を融点とする。対照はアルミナを用いる。
【0009】
本発明において使用できる油脂として、具体的には高級アルコール、高級脂肪酸、脂肪酸グリセリンエステルなどが挙げられる。
本発明で使用可能な高級アルコールは、具体的には、炭素数が14以上、好ましくは18以上であって、好ましくは24以下の鎖式アルコールである。具体的には、1−テトラデカノール、1−ヘキサデカノール、1−オクタデカノール、1−イコサノール、1−ドコサノールなどが挙げられる。中でも1−オクタデカノール、1−イコサノール、1−ドコサノールが好ましい。これらを単独で使用することもできるし、二種以上を混合して使用することもできる。
本発明で使用可能な高級脂肪酸は、具体的には、炭素数12以上、好ましくは14以上、より好ましくは16以上であって、好ましくは24以下、より好ましくは22以下の鎖状飽和モノカルボン酸である。具体的には、ドデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸、オクタデカン酸、イコサン酸、ドコサン酸などが挙げられる。中でもオクタデカン酸、イコサン酸、ドコサン酸が好ましい。これらを単独で使用することもできるし、二種以上を混合して使用することもできる。
脂肪酸グリセリンエステルとしては、炭素数16以上の飽和脂肪酸とグリセリンとのモノ-、ジ-又はトリエステル、具体的には、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノパルミテートなどが挙げられる。このうち、グリセリンモノステアレートが好ましい。
高級アルコール、高級脂肪酸及び脂肪酸グリセリンエステルから選ばれる2種又は3種の混合物を使用することもできる。高級アルコールと高級脂肪酸との混合物が好ましい。
【0010】
油脂としては、炭素数が14〜24の高級アルコール又は高級脂肪酸が好ましい。融点が50℃以上の高級脂肪酸又は高級アルコールがより好ましい。融点が50℃以上の高級アルコールが更に好ましく、1−オクタデカノール、1−ドコサノールが特に好ましい。1−オクタデカノール及び/または1−ドコサノールから選ばれる高級アルコールと、オクタデカン酸及び/またはドコサン酸から選ばれる高級脂肪酸との混合物も特に好ましい。この場合、高級アルコールと高級脂肪酸の混合比率は質量比で30:1〜1:1、好ましくは15:1〜2:1、もっとも好ましくは10:1〜3:1であるのが好ましい。高級アルコールと高級脂肪酸の混合比率がこの範囲にあると、残香強度を高めることができる。
油脂は、本発明の(A)成分である乳化物粒子を含有する水性液体中に5〜30質量%の量で含まれるのが好ましい。(A)成分のハンドリング性を向上させるためには、(A)成分の常温における粘度が10〜300mPa・sであるのが好ましい。このような観点からは、油脂は5〜20質量%の量で含まれるのが好ましい。
一方、本発明の繊維製品用処理剤組成物中に含まれる油脂の量としては、0.1〜5質量%の量で含まれるのが好ましい。本発明の繊維製品用処理剤組成物の香気強度を適度なものにする、または繊維製品用処理剤組成物中での安定性を確保する観点からは油脂の量として0.5〜5質量%の量で含まれるのが好ましい。
【0011】
<香料組成物>
本発明において用いることのできる香料組成物は、繊維製品用処理剤組成物、繊維製品用仕上げ剤組成物又は柔軟剤組成物に一般的に使用される香料成分を1種類以上含む香料組成物である。
前記香料成分の具体例としては、例えば、アルデヒド類、フェノール類、アルコール類、エーテル類、エステル類、ハイドロカーボン類、ケトン類、ラクトン類、ムスク類、テルペン骨格を有する香料、天然香料、動物性香料などが挙げられる。
前記アルデヒド類としては、ウンデシレンアルデヒド、ラウリルアルデヒド、アルデヒドC−12MNA、ミラックアルデヒド、α−アミルシンナミックアルデヒド、シクラメンアルデヒド、シトラール、シトロネラール、エチルバニリン、ヘリオトロピン、アニスアルデヒド、α−ヘキシルシンナミックアルデヒド、オクタナール、リグストラール、リリアール、リラール、トリプラール、バニリン、ヘリオナールなどが挙げられる。
前記フェノール類としては、オイゲノール、イソオイゲノールなどが挙げられる。
前記アルコール類としては、バクダノール、シトロネロール、ジハイドロミルセノール、ジハイドロリナロール、ゲラニオール、リナロール、ネロール、サンダロール、サンタレックス、ターピネオール、テトラハイドロリナロール、フェニルエチルアルコールなどが挙げられる。
【0012】
前記エーテル類としては、セドランバー、グリサルバ、メチルオイゲノール、メチルイソオイゲノールなどが挙げられる。
前記エステル類としては、シス−3−ヘキセニルアセテート、シス−3−ヘキセニルプロピオネート、シス−3−ヘキセニルサリシレート、p−クレジルアセテート、p−t−ブチルシクロヘキシルアセテート、アミルアセテート、メチルジヒドロジャスモネート、アミルサリシレート、ベンジルサリシレート、ベンジルベンゾエート、ベンジルアセテート、セドリルアセテート、シトロネリルアセテート、デカハイドロ−β−ナフチルアセテート、ジメチルベンジルカルビニルアセテート、エリカプロピオネート、エチルアセトアセテート、エリカアセテート、ゲラニルアセテート、ゲラニルフォーメート、ヘディオン、リナリルアセテート、β−フェニルエチルアセテート、ヘキシルサリシレート、スチラリルアセテート、ターピニルアセテート、ベチベリルアセテート、o−t−ブチルシクロヘキシルアセテート、マンザネート、アリルヘプタノエートなどが挙げられる。
【0013】
前記ケトン類としては、α−イオノン、β−イオノン、メチル−β−ナフチルケトン、α−ダマスコン、β−ダマスコン、δ−ダマスコン、シス−ジャスモン、メチルイオノン、アリルイオノン、カシュメラン、ジハイドロジャスモン、イソイースーパー、ベルトフィックス、イソロンジフォラノン、コアボン、ローズフェノン、ラズベリーケトン、ダイナスコンなどが挙げられる。
前記ラクトン類としては、γ−デカラクトン、γ−ウンデカラクトン、γ−ノナラクトン、γ−ドデカラクトン、クマリン、アンブロキサンなどが挙げられる。
前記ムスク類としては、シクロペンタデカノライド、エチレンブラシレート、ガラクソライド、ムスクケトン、トナリッド、ニトロムスク類などが挙げられる。
前記テルペン骨格を有する香料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ゲラニオール(ゼラニオール)、ネロール、リナロール、シトラール、シトロネロール、メントール、ミント、シトロネラール、ミルセン、ピネン、リモネン、テレピネロール、カルボン、ヨノン、カンファー(樟脳)、ボルネオールなどが挙げられる。
【0014】
前記天然香料としては、オレンジ油、レモン油、ライム油、プチグレン油、ユズ油、ネロリ油、ベルガモット油、ラベンダー油、ラバンジン油、アビエス油、アニス油、ベイ油、ボアドローズ油、イランイラン油、シトロネラ油、ゼラニウム油、ペパーミント油、ハッカ油、スペアミント油、ユーカリ油、レモングラス油、パチュリ油、ジャスミン油、ローズ油、シダー油、ベチバー油、ガルバナム油、オークモス油、パイン油、樟脳油、白檀油、芳樟油、テレピン油、クローブ油、クローブリーフ油、カシア油、ナツメッグ油、カナンガ油、タイム油などの精油が挙げられる。
前記動物性香料としては、じゃ香、霊猫香、海狸香、竜涎香などが挙げられる。
香料には通常用いる溶剤を配合してもよい。香料用溶剤としては、アセチン(トリアセチン)、MMBアセテート(3−メトキシ−3−メチルブチルアセテート)、スクロースジアセテートヘキサイソブチレート、エチレングリコールジブチレート、ヘキシレングリコール、ジブチルセバケート、デルチールエキストラ(イソプロピルミリステート)、メチルカルビトール(ジエチレングリコールモノメチルエーテル)、カルビトール(ジエチレングリコールモノエチルエーテル)、TEG(トリエチレングリコール)、安息香酸ベンジル(BB)、プロピレングリコール、フタル酸ジエチル、トリプロピレングリコール、アボリン(ジメチルフタレート)、デルチルプライム(イソプロピルパルミテート)、ジプロピレングリコール(DPG)、ファルネセン、ジオクチルアジペート、トリブチリン(グリセリルトリブタノエート)、ヒドロライト−5(1,2−ペンタンジオール)、プロピレングリコールジアセテート、セチルアセテート(ヘキサデシルアセテート)、エチルアビエテート、アバリン(メチルアビエテート)、シトロフレックスA−2(アセチルトリエチルシトレート)、シトロフレックスA−4(トリブチルアセチルシトレート)、シトロフレックスNo.2(トリエチルシトレート)、シトロフレックスNo.4(トリブチルシトレート)、ドゥラフィックス(メチルジヒドロアビエテート)、MITD(イソトリデシルミリステート)、ポリリモネン(リモネンポリマー)、1,3−ブチレングリコール等が挙げられる。
これら溶剤の使用量は、香料組成物中に例えば0.1〜30質量%配合されるが、好ましくは1〜20質量%配合される。
【0015】
[沸点]
香料成分の沸点は、例えば「Perfume and Flavor Chemicals 」Vol.Iand II,Steffen Arctander,Allured Pub.Co.(1994)及び「合成香料 化学と商品知識」、印藤元一著、化学工業日報社(1996)及び「Perfume and Flavor Materials of Natural Origin 」,Steffen Arctander,Allured Pub.Co.(1994)及び「香りの百科」、日本香料協会編、朝倉書店(1989)及び「香料と調香の基礎知識」、産業図書(1995)に記載されており、本明細書ではそれらの文献から引用する。
【0016】
[ClogP]
ClogP値とは、化学物質について、1−オクタノール中及び水中の平衡濃度の比を表す1−オクタノール/水分配係数Pを、底10に対する対数logPの形態で表した値である。前記ClogP値は、f値法(疎水性フラグメント定数法)により、化合物の化学構造をその構成要素に分解し、各フラグメントの有する疎水性フラグメント定数・f値を積算して求めることができる(例えば、Clog 3 Reference Manual DaylightSoftware 4.34,Albert Leo,David Weininger, Version 1,March 1994 参照)。
一般に、香料はClogP値が大きいほど疎水的であることから、ClogP値が小さい香料成分を多く含む香料組成物は、ClogP値が大きい香料成分を多く含む香料組成物よりも親水的な香料組成物であるといえる。前記ClogP値が、好ましい範囲内であると、親水性の香料成分と疎水性の香料成分とがバランス良く組み合わされているために、より香気バランスに優れ嗜好性が高い香料となる点で有利である。
【0017】
香りのフレッシュ感と嗜好性の点から、常圧での沸点が260℃未満であって、ClogP値が1.0以上8.0以下である香料成分を、香料成分として30質量%(以後単に%と表記)以上、より好ましくは45%以上、更に好ましくは50%以上、更に好ましくは80%以上、更に特に好ましくは90%以上含有することが望ましい。
【0018】
本発明で用いる香料組成物としては、アニスアルデヒド、アンブロキサン、イソイースーパー、γ−ウンデカラクトン、オイゲノール、オレンジテルペンオイル、ガラクソライド、クマリン、ゲラニオール、シトラール、シトロネラール、シトロネロール、ジハイドロミルセノール、1,8−シネオール、ジメチルベンジルカルビニルアセテート、ゼラニウムオイル、ターピネオール、ダマスコン、ダマセノン、1−デカナール、テトラハイドロリナロール、トナライド、バクダノール、バニリン、フェニルエチルアルコール、ヘキシルシンナミックアルデヒド、ヘディオン、ヘリオトロピン、ベルテネックス、ベルドックス、ベンジルアセテート、ベンジルサリシレート、メチルイオノン、2−メチルウンデカナール、l−メントール、ラズベリーケトン、リナリルアセテート、リナロール、リモネン、リラール、リリアール、ローズ、ベンジルベンゾエート及びジプロピレングリコールからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有するものが好ましい。
【0019】
より好ましくは、以下の(i)から(v)からなる群から選ばれる香料組成物である:
(i)アニスアルデヒド、アンブロキサン、イソイースーパー、γ−ウンデカラクトン、オイゲノール、オレンジテルペンオイル、ガラクソライド、クマリン、ゲラニオール、シトロネロール、ジハイドロミルセノール、ジメチルベンジルカルビニルアセテート、ゼラニウムオイル、ダマスコン、ダマセノン、1−デカナール、テトラハイドロリナロール、トナライド、バクダノール、バニリン、フェニルエチルアルコール、ヘキシルシンナミックアルデヒド、ヘディオン、ヘリオトロピン、ベルテネックス、ベルドックス、ベンジルサリシレート、2−メチルウンデカナール、l−メントール、ラズベリーケトン、リナリルアセテート、リナロール、リモネン、リリアール、ローズ、ベンジルベンゾエート及びジプロピレングリコールからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する香料組成物;
【0020】
(ii)アニスアルデヒド、アンブロキサン、イソイースーパー、γ−ウンデカラクトン、オイゲノール、ガラクソライド、ゲラニオール、シトロネロール、ジハイドロミルセノール、ジメチルベンジルカルビニルアセテート、ゼラニウムオイル、ターピネオール、ダマスコン、ダマセノン、1−デカナール、テトラハイドロリナロール、トナライド、バクダノール、バニリン、フェニルエチルアルコール、ヘキシルシンナミックアルデヒド、ヘディオン、ヘリオトロピン、ベルテネックス、ベルドックス、ベンジルアセテート、ベンジルサリシレート、2−メチルウンデカナール、l−メントール、ラズベリーケトン、リナリルアセテート、リナロール、リモネン、リラール、リリアール、ローズ、ベンジルベンゾエート及びジプロピレングリコールからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する香料組成物;
【0021】
(iii)アニスアルデヒド、アンブロキサン、イソイースーパー、γ−ウンデカラクトン、オイゲノール、オレンジテルペンオイル、ガラクソライド、クマリン、シトラール、シトロネロール、ジハイドロミルセノール、ジメチルベンジルカルビニルアセテート、ゼラニウムオイル、ダマスコン、ダマセノン、1−デカナール、テトラハイドロリナロール、トナライド、バクダノール、バニリン、フェニルエチルアルコール、ヘキシルシンナミックアルデヒド、ヘディオン、ヘリオトロピン、ベルテネックス、ベルドックス、ベンジルアセテート、ベンジルサリシレート、メチルイオノン、2−メチルウンデカナール、ラズベリーケトン、リナロール、リモネン、リリアール、ローズ、ベンジルベンゾエート及びジプロピレングリコールからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する香料組成物;
【0022】
(iv)アニスアルデヒド、イソイースーパー、γ−ウンデカラクトン、オイゲノール、オレンジテルペンオイル、ガラクソライド、クマリン、ゲラニオール、シトラール、シトロネラール、シトロネロール、ジハイドロミルセノール、1,8−シネオール、ターピネオール、ダマスコン、ダマセノン、1−デカナール 10%DPG、テトラハイドロリナロール、トナライド、バニリン、フェニルエチルアルコール、ヘキシルシンナミックアルデヒド、ヘディオン、ヘリオトロピン、ベルテネックス、ベルドックス、ベンジルサリシレート、メチルイオノン、2−メチルウンデカナール、l−メントール、リナリルアセテート、リナロール、リモネン、リラール、リリアール、ベンジルベンゾエート及びジプロピレングリコールからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する香料組成物;
【0023】
(v)アニスアルデヒド、γ−ウンデカラクトン、オイゲノール、ガラクソライド、クマリン、ゲラニオール、シトロネラール、シトロネロール、1,8−シネオール、ジメチルベンジルカルビニルアセテート、ゼラニウムオイル、ターピネオール、ダマスコン、ダマセノン、1−デカナール、テトラハイドロリナロール、トナライド、バニリン、フェニルエチルアルコール、ヘキシルシンナミックアルデヒド、ヘディオン、ベルテネックス、ベルドックス、ベンジルサリシレート、2−メチルウンデカナール、リナロール、リモネン、リラール、リリアール、ベンジルベンゾエート及びジプロピレングリコールからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する香料組成物。
【0024】
香料組成物は、本発明の(A)成分である乳化物粒子を含有する水性液体中に5〜30質量%の量で含まれるのが好ましい。香り強度を適度なものにし、香りを長続きさせる観点から、10〜20質量%がより好ましい。
一方、繊維製品用処理剤組成物中の香料組成物の配合量は、香料成分として、好ましくは0.1〜5質量%、より好ましくは0.5%〜3質量%である。香料組成物の種類にもよるが、配合量が0.1%未満であると香気が弱く、香りのフレッシュ感を感じにくく、残香の効果がわかりにくい。5%より多く配合しても、香りが強くなりすぎるために好ましくない。
【0025】
本発明の(A)成分である乳化物粒子を含有する水性液体中、油脂と香料組成物の配合量比率は、質量比で1:3〜3:1の範囲であることが好ましく、より好ましくは、1:2〜2:1であり、更に好ましくは1:1〜1:1.5である。配合比率がこの範囲にあると、本発明の(A)成分を含む繊維製品用処理剤組成物を仕上げ剤処理した処理布等の対象物の香り強度を適度なものにし、トップノートを含むフレッシュな香りを長続きさせることができる。なお、ここでの香料組成物の割合は、香料組成物中に含まれる香料成分としての量に基づく。
【0026】
本発明の(A)成分である乳化物粒子を含有する水性液体には、本発明の効果を妨げない限り、水溶性溶剤、乳化剤を配合することも可能である。水溶性溶剤と乳化剤を併用することにより、本発明の(A)成分である香料乳化物粒子の平均粒子径を後述する範囲に収め、残香強度をより高めることができる。
<水溶性溶剤>
本発明で使用できる水溶性溶剤としては、エタノール、イソプロパノールなどの炭素数2〜3の1級アルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールなどの炭素数2〜6のグリコール、グリセリン、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどの炭素数3〜8の多価アルコールが挙げられる。香気や価格の点からエタノール、グリセリンが好ましい。
水溶性溶剤は、本発明の(A)成分である乳化物粒子を含有する水性液体中に0〜30質量%、好ましくは5〜20質量%の量で含まれるのが好ましい。この範囲にあると、残香する香り強度が良好となる。
一方、繊維製品用処理剤組成物中の水溶性溶剤の配合量は、好ましくは0〜5質量%、より好ましくは0.1〜5質量%、更に好ましくは0.5%〜3質量%である。
【0027】
<乳化剤>
本発明の(A)成分である乳化物粒子を含有する水性液体に乳化剤を含ませることにより香り強度が強くなるので好ましい。
本発明において使用できる乳化剤としては、非イオン性、カチオン性、アニオン性、両性の界面活性剤が挙げられる。乳化性能に優れ、安価であることから非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤が好ましい。
本発明において使用できる非イオン性界面活性剤としては、炭素数10〜22のアルキル基又はアルケニル基を有し、オキシエチレン基の平均付加モル数が10〜100モルであるポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸アルキル(C1〜3)エステルや、オキシエチレン基の平均付加モル数が10〜100モルであるポリオキシエチレンアルキルアミン、炭素数8〜18のアルキル基又はアルケニル基を有するアルキルポリグルコシド、オキシエチレン基の平均付加モル数が10〜100モルである硬化ヒマシ油などが挙げられる。上記アルキル基又はアルケニル基は直鎖でも分岐鎖でもよい。中でも、炭素数10〜14の直鎖又は分岐アルキル基を有し、オキシエチレン基の平均付加モル数が30〜70モルのポリオキシエチレンアルキルエーテルが好ましい。
【0028】
カチオン性の界面活性剤としては、エステル基またはアミド基で分断されていてもよい炭素数8〜12のアルキル基またはアルケニル基を2つ有する2鎖型のカチオン性界面活性剤、エステル基またはアミド基で分断されていてもよい炭素数10〜20のアルキル基またはアルケニル基を1つ有する1鎖型のカチオン性界面活性剤、オキシエチレン基の平均付加モル数が5〜100モルであるポリオキシエチレンアルキルメチルアンモニウム塩、分子中にエステル基またはアミド基で分断されていてもよい炭素数14〜20のアルキル基またはアルケニル基を2つ有する2鎖型のカチオン性界面活性剤等が挙げられる。中でも、N,N−ジステアロイルオキシエチル−N−メチル,N−ヒドロキシエチルアンモニウムメチルサルフェート、N,N−ジオレオイルオキシエチル−N−メチル,N−ヒドロキシエチルアンモニウムメチルサルフェート、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド及びこれらの混合物が特に好ましい。
乳化剤は、本発明の(A)成分である乳化物粒子を含有する水性液体中に0〜30質量%の量で含まれるのが好ましく、1〜30質量%の量で含まれるのがより好ましい。このような量で含まれることにより、本発明の(A)成分である乳化物粒子の平均粒子径を容易に好ましいものにすることができる。
一方、繊維製品用処理剤組成物中の乳化剤の配合量は、好ましくは0〜0.5質量%、より好ましくは0.01〜0.5質量%、更に好ましくは0.05%〜0.3質量%である。
なお、乳化剤としてカチオン界面活性剤を使用した場合、後述する(B)成分と同じカチオン性化合物を用いてもよいし、異なる化合物を使用してもよい。
【0029】
本発明の(A)成分である乳化物粒子を含有する水性液体は、以下のようにして調製することができる。すなわち、油脂をその融点以上に加温して液状とする。そこに液状の香料組成物及び場合により水溶性溶剤、乳化剤を添加し、液状の混合物を調製する。この混合物を油脂の融点以上に予め加温したイオン交換水に、撹拌下で滴下し、常温まで冷却する事により乳化物粒子を調製することができる。もちろん、油脂、香料組成物、水溶性溶剤、乳化剤とを混合した後に、油分の融点以上に加温してもかまわない。
本発明の(A)成分である乳化物粒子を含有する水性液体には、本発明の効果を妨げない限り、必要に応じて酸化防止剤、防腐剤、消泡剤、pH調整剤等の添加剤を通常の使用量の範囲内で更に配合することも可能である。
【0030】
本発明のA成分である乳化物粒子を含有する水性液体の25℃における粘度は、10〜300mPa・sであるのが好ましく、10〜200mPa・sであるのがより好ましい。このような範囲にあると、ハンドリング性がより向上するので好ましい。尚、本発明の(A)成分の粘度は、B型粘度計(TOKIMEC社製)を用いて測定することができる。
本発明の(A)成分の水性液体中の乳化物粒子の平均粒子径は100μm〜0.1μmであることが好ましく、さらに好ましくは50μm〜0.1μm、最も好ましくは50μm〜5μmである。この範囲にあると、黒色など濃色な繊維製品に本発明の乳化物粒子が吸着・付着した場合にも、粒子が目立たなく、また、(A)成分を含む繊維製品用処理剤組成物を仕上げ剤処理した処理布等の対象物の香り強度を良好なものにすることができるために好ましい。粒子径は、一般的な粒度分布計(例えば大塚電子株式会社 粒径アナライザー FPAR−1000、株式会社堀場製作所 LASER SCATTERING
PARTICLE SIZE DISTRIBUTION ANALYZERなど)を用いて測定することができる。
【0031】
〔B成分〕
本発明のB成分は、繊維製品の表面に効率的に乳化物粒子を吸着させる作用を有する。
本発明において用いることのできるB成分としては、水溶性のカチオン性化合物及び水不溶性のカチオン性化合物があげられ、それぞれを単独で用いても、混合物として用いてもかまわない。なお、本明細書において「水溶性」とは、25℃の水100gに1g以上溶解する場合をいい、「水不溶性」とは、25℃の水100gへの溶解度が1g未満である場合をいう。
水溶性のカチオン性化合物としては、下記一般式(I)または(II)で示される3級アミン化合物の中和物又は4級化物、及び水溶性の高分子化合物が好ましい。
【0032】
【化1】

【0033】
式中、R1は、エステル基、エーテル基またはアミド基で分断されてもよい、炭素数12から20の炭化水素基を表す。炭化水素基としては、直鎖又は分岐のアルキル基又はアルケニル基が挙げられる。R1としては、炭素数14〜20の炭化水素基が好ましく、炭素数14〜20の直鎖又は分岐アルキル基又はアルケニル基が好ましく、炭素数14〜18の直鎖アルキル基がさらに好ましい。
R2は、同一でも異なっていてもよく、炭素数1〜4のアルキル基または炭素数2〜4のヒドロキシアルキル基を示す。R2としては、メチル基、エチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基が好ましく、メチル基、ヒドロキシエチル基がより好ましい。
R3は、同一でも異なっていてもよく、エステル基、エーテル基またはアミド基で分断されてもよい、炭素数8から12の炭化水素基を表す。炭化水素基は、R1について述べたのと同じである。R3としては、デシル基、ドデシル基、デシロイルオキシエチル基が好ましい。
【0034】
中和物を構成する酸としては、塩酸、硫酸、メチル硫酸等が挙げられる。中和物としては、上記式(I)又は(II)で表される3級アミンを予め中和したものを使用してもよいし、これらの酸を含有する水溶液中に、上記3級アミンを液状又は固体状で投入して得られたものを使用してもよい。上記3級アミンと酸とを同時に水に投入して得られたものでもよい。
上記3級アミンの4級化に用いる4級化剤としては塩化メチルやジメチル硫酸が挙げられる。
【0035】
一般式(I)または(II)で示される3級アミンの中和物又は4級化物としては、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、ジドデシルジメチルアンモニウムクロライド、ステアロイルオキシエチル−N,N−ジヒドロキシエチル−N−メチルアンモニウムメチルサルフェート、N,N―ジデシロイルオキシエチル−N−ヒドロキシエチル−N−メチルアンモニウムメチルサルフェートなどが好ましく、中でも、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、ジドデシルジメチルアンモニウムクロライド、ステアロイルオキシエチル−N,N−ジヒドロキシエチル−N−メチルアンモニウムメチルサルフェートが特に好ましい。
【0036】
上記式(I)又は(II)で表される3級アミンの中和物又は4級化物の配合量は、繊維製品用処理剤組成物の全質量をベースとして、1〜20質量%とするのがよく、さらに好ましくは1〜10質量%とするのがよい。配合量をこのような範囲のものとすることにより、乳化物粒子の繊維製品への吸着効果を高めて、繊維製品用処理剤組成物の粘度の上昇を抑えて使用性の面で良好なものとすることができる。
【0037】
水溶性のカチオン性高分子化合物としては、カチオン化度が0.1%以上のものが好ましく、例えば0.1〜35%であるのがよく、特に2.5%以上が好ましく、例えば2.5〜20%であるのがよい。カチオン化度がこのような条件を満たすことにより、乳化物粒子を効率的に繊維へ吸着させることができ、かつ、多量の配合が必要となって経済的でないケースを防止することができる。
【0038】
ここで、カチオン化度とは、高分子化合物がカチオン性モノマーの重合体、カチオン性モノマーとノニオン性モノマーの共重合体、及びノニオン性重合体の一部をカチオン性基で変性又は置換したもの(カチオン化セルロースなど)の場合には下記式(1)により、また、高分子化合物がカチオン性モノマーとアニオン性モノマーの共重合体、及びカチオン性モノマーとアニオン性モノマーとノニオン性モノマーの共重合体の場合には、下記式(2)により算出される値と定義する。
カチオン化度(%)=X×Y×100 …式(1)
[X:高分子化合物のカチオン性基中のカチオン化された原子(窒素等)の原子量
Y:高分子化合物1g中に含まれるカチオン性基のモル数]
【0039】
カチオン化度(%)=X×(Y−Z)×100 …式(2)
[X:高分子化合物のカチオン性基中のカチオン化された原子(窒素等)の原子量
Y:高分子化合物1g中に含まれるカチオン性基のモル数
Z:高分子化合物1g中に含まれるアニオン性基のモル数
(Zのアニオン性基とは、高分子鎖中のモノマー単位に含まれるカルボキシル基、スルホン酸基などが挙げられる。具体的には、アクリル酸中のカルボン酸などである。ただし、カチオン性基の対イオンは含まない。)]
【0040】
カチオン化度の算出例として、下記一般式(III)で表されるMERQUAT280(NALCO社製)の場合を示す。
X:14(窒素原子の原子量)
Y:4.95×10-3(カチオン性基の1g中の重量:0.8gとカチオン性基の分子量より算出)
Z:2.78×10-3(アニオン性基の1g中の重量:0.2gとアニオン性基の分子量より算出)
式(2)より、
カチオン化度(%)=14×(4.95×10-3−2.78×10-3)×100=3.0
である。
【0041】
【化2】

【0042】
上記記載のカチオン化度の算出法によれば、ノニオン性モノマーの重合体やアニオン性モノマーの重合体のカチオン化度は0%となる。
本発明で用いることのできる水溶性のカチオン性高分子は、ポリエチレングリコールを標準物質としてゲルパーメーションクロマトグラフィ法で測定される重量平均分子量が、1,000〜5,000,000であることが好ましく、より好ましくは3,000〜1,000,000であり、さらに好ましくは5,000〜500,000である。これにより、本発明の組成物の粘度の上昇を抑えて使用性を優秀なものとすることが可能となる。
【0043】
本発明で用いることのできる水溶性のカチオン性高分子の具体例としては、MERQUAT100(NALCO社製)、アデカカチオエースPD−50(旭電化工業(株))、ダイドールEC−004、ダイドールHEC、ダイドールEC(大同化成工業(株)製)等の塩化ジメチルジアリルアンモニウムの重合体、MERQUAT550 JL5(NALCO社製)等の塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体、MERQUAT280(NALCO社製)等の塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリル酸共重合体、レオガードKGP(ライオン(株)製)等のカチオン化セルロース、LUVIQUAT−FC905(B・A・S・F社製)等の塩化イミダゾリニウム・ビニルピロリドン共重体、LUGALVAN−G15000(B・A・S・F社製)等のポリエチレンイミン、ポバールCM318((株)クラレ製)等のカチオン化ポリビニルアルコール、キトサン等のアミノ基を有する天然系の高分子誘導体、ジエチルアミノメタクリレート・エチレンオキシド等が付加された親水基を有するビニルモノマーとの共重合体等が挙げられる。中でも、塩化ジメチルジアリルアンモニウムの重合体、カチオン化セルロースが特に好ましい。
【0044】
水溶性カチオン性化合物の配合量は、繊維製品用処理剤組成物の全質量をベースとして、1〜10質量%とするのがよい。配合量をこのような範囲のものとすることにより、乳化物粒子の繊維製品への吸着効果を高めて、本発明の組成物の粘度の上昇を抑えて使用性の面で良好なものとすることができる。
【0045】
水不溶性のカチオン性化合物としては、下記一般式(IV)で示されるアミンの中和物や4級化物が好ましい。
【0046】
【化3】

【0047】
式中、R4は、同一でも異なっていてもよく、エステル基、エーテル基またはアミド基で分断されてもよい、炭素数14〜20の炭化水素基を表す。炭化水素基は、R1について述べたのと同じである。R4としては、炭素数16〜20のエステル基またはアミド基で分断されてもよい炭化水素基が好ましく、炭素数18〜20のエステル基またはアミド基で分断されてもよい直鎖アルキル基またはアルケニル基がさらに好ましい。
R5は、R4、炭素数1〜4のアルキル基または炭素数2〜4のヒドロキアルキル基を示す。R5としては、R4、メチル基、エチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基 が好ましく、R4、メチル基、ヒドロキシエチル基がより好ましい。
上記式(IV)で表される3級アミンの中和物を構成する酸及び4級化に用いる4級化剤は、式(I)及び(II)の化合物について述べたのと同じである。
【0048】
一般式(IV)で表される水不溶性の3級アミンの中和物又は4級化物としては、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、ジパルミチルジメチルアンモニウムクロライド、N,N−ジステアロイルオキシエチル−N−メチル,N−ヒドロキシエチルアンモニウムメチルサルフェート、N,N−ジオレオイルオキシエチル−N−メチル,N−ヒドロキシエチルアンモニウムメチルサルフェートなどが挙げられ、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、N,N−ジステアロイルオキシエチル−N−メチル,N−ヒドロキシエチルアンモニウムメチルサルフェート、N,N−ジオレオイルオキシエチル−N−メチル,N−ヒドロキシエチルアンモニウムメチルサルフェートが特に好ましい。
上記式(IV)で表される水不溶性の3級アミンの中和物又は4級化物の配合量は、繊維製品用処理剤組成物の全質量をベースとして、1〜20質量%とするのがよく、さらに好ましくは5〜15質量%とするのがよい。配合量をこのような範囲のものとすることにより、乳化物粒子の繊維製品への吸着効果を高めるとともに、良好な柔軟性を繊維製品に付与でき、さらに繊維製品用処理剤組成物の粘度の上昇を抑えて使用性の面で良好なものとすることができる。
B成分としては、式(I)又は式(IV)で表される3級アミンの4級化物が好ましく、これらの混合物がより好ましい。
【0049】
本発明の組成物は、繊維製品用処理剤組成物に通常含まれる成分、例えば組成物の色調や臭いが劣化することを抑制する目的でジブチルヒドロキシトルエンなどの酸化防止剤やヒドロキシエタンジホスホン酸などのキレート剤を組成物中に0〜1質量%、組成物で処理した布や衣類に抗菌性を付与したり、汗臭などの発生を抑制する目的で塩化ベンザルコニウムなどの抗菌剤を組成物中に0〜3質量%、組成物に防腐性を高めるためにイソチアゾロン液や2-ニトロー1,3−プロパンジオールなどの防腐剤を組成物中に0〜0.1質量%、組成物に好ましい色調を付与する目的で酸性染料や直接染料などを組成物中に0〜0.1質量%、組成物の分散安定性を付与する目的で、アルコールエトキシレートや硬化ひまし油のアルキレンオキシド付加物などの非イオン界面活性剤を組成物中に0〜5質量%(この非イオン界面活性剤は本発明のA成分を調製する際に用いても良い非イオン界面活性剤と同じであっても異なっていても良い)、組成物自体の紫外線に対する安定性を向上させるために、或いは組成物で処理した衣類に紫外線吸収効果を付与する目的でベンゾフェノン3などの紫外線吸収剤を組成物中に0〜3質量%、組成物の安定性やハンドリング性を向上させる目的でエタノールやグリセリンなどの水溶性溶剤を組成物中に0〜10質量%(この水溶性溶剤は本発明のA成分を調製する際に用いても良い水溶性溶剤と同じであっても異なっていても良い)、衣類に平滑性を付与するとともに組成物で処理した衣類の吸水性を向上させ、さらに洗濯の脱水後の衣類の含水率を低下させるなどの目的でシリコーン類、特にジメチルシリコーンやポリエーテル変性シリコーン、アミノ変性シリコーンなどを組成物中に0〜5質量%含有していてもよい。
【0050】
本発明の組成物は、25℃におけるpHが2.0〜6.0であるのが好ましい。なお、pHの測定は、pHメーターを使用し本発明の組成物を希釈せずに行う。
本発明の繊維製品用処理剤組成物の25℃における粘度は、10〜300mPa・sであるのが好ましく、10〜200mPa・sであるのがより好ましい。このような範囲にあると、ハンドリング性がより向上するので好ましい。尚、本発明の組成物の粘度は、B型粘度計(TOKIMEC社製)を用いて測定することができる。
本発明の繊維製品用処理剤組成物は、B成分を水に溶解又は分散させ、そこに、既述のとおりにして予め調製した上記A成分を添加することにより製造することができる。
本発明の繊維製品用処理剤組成物は、例えば、洗濯の際のすすぎ時にすすぎ水に添加することにより使用することができる。
別の例として、トリガー容器やディスペンサー容器、エアゾール缶などに充填し、繊維製品に直接噴霧することにより使用することもできる。
本発明の組成物は、繊維製品の原料が天然繊維でも合成繊維でも区別なく使用することができる。
【実施例】
【0051】
実施例及び比較例の繊維製品用処理剤組成物を製造するのに用いた成分を以下に示す。
〔油脂〕
a−1:1−テトラデカノール(常圧における融点37.9℃)
a−2:グリセリンモノステアレート(常圧における融点59℃)
a−3:オクタデカン酸(常圧における融点69.6℃)
a−4:1−オクタデカノール(常圧における融点58℃)
a−5:1−ドコサノール(常圧における融点70.6℃)
a−6:1−ドデカノール(常圧における融点24℃)
なお、上記a−1〜a−6の融点は、油化学辞典-脂質・界面活性剤-(丸善)から引用した。
【0052】
【表1】

【0053】
〔カチオン性化合物〕
B−1:カチオン化セルロース(レオガードKGP:ライオン(株)社製、カチオン化度18%、重量平均分子量16万)
B−2:カチオン性高分子(マーコート100:NALCO社製、カチオン化度8.7%、重量平均分子量15万)
B−3:カチオン界面活性剤(アーカードT−800:ライオンアクゾ社製)
B−4:カチオン界面活性剤(アーカード210:ライオンアクゾ社製)
B−5:カチオン界面活性剤(特開2003−12471 実施例4に記載の化合物)
B−6:カチオン界面活性剤(特開2002−167366 実施例1に記載の化合物)
【0054】
【表2】

【0055】
B−7:カチオン界面活性剤(ステアリン酸に代えて硬化牛脂脂肪酸を使用し、4級化しなかったこと以外は特開平5−230001号公報の実施例1の記載に従って3級アミン300gを得た。得られた反応物の酸価、ケン化価、水酸基価、全アミン価、3級アミン価を測定し、反応物の組成を調べた結果、ジアルキル体が86重量%、モノアルキルアミド体が10重量%、未反応脂肪酸が4重量%であった。また、ガスクロマトグラフィーによる分析から、未反応のN−(2−ヒドロキシエチル)−N−メチル−1,3−プロピレンジアミンが反応物中に0.1重量%含有されていた。最後に53gの未変性エタノール(日本エタノール(株))を加え、固形分が85質量%のエタノール溶液を調製した。
【0056】
〔繊維製品用処理剤組成物の調製〕
<乳化物粒子を含有する水性液体の調製>(実施例1〜7、比較例1〜3)
上に示した油脂50g、香料組成物100g、エチルアルコール(95%合成エタノール(日本合成アルコール(株)))50g及びイソトリデシルエーテルEO60モル付加物((ルテンゾールTO3(BASF社製)にエチレンオキサイドを57モル付加したもの)25g(有効成分75%で、残りは水)を混合し、70℃に加温して混合溶液を調製した。これを60℃のイオン交換水425gに乳化分散させた。このとき、ジェットアジター((株)島崎製作所製、タイプSJ)を用いて、回転数1000rpmの条件で攪拌した。この乳化物をそのまま放置し、ゆっくりと常温まで冷却して、乳化物粒子を含有する水性液体(A成分)を調製した。使用した油脂及び香料組成物を表3に示す。なお、表3中のA−7は油脂の代わりに水を50g増やして調製した。単位%は、A成分の全質量を基準とした質量%を表す。
これらの乳化物粒子の平均粒子径は、株式会社堀場製作所 LASER SCATTERING PARTICLE SIZE DISTRIBUTION ANALYZER(型番:LA−920)を用いて、装置に120〜150mLのイオン交換水を注いだ後、攪拌後透過率が90±2%となるよう(A)成分を加えて測定した。
【0057】
【表3】

【0058】
<繊維製品用処理剤組成物の調製>
イオン交換水に、上に示したB成分を溶解または分散させた後、上で得られたA成分をスターラーで攪拌しながら添加し、A及びB成分の濃度が表4に記載の値となるよう繊維製品用処理剤組成物を調製した。なお、表中のA及びB成分の値は、繊維製品用処理剤組成物の全量を基準としたA及びB成分の質量%を表す。但し、A成分の配合量は、繊維製品用処理剤組成物中の香料組成物の量として記載した。
【0059】
〔ロングラスティングの評価〕
3Lのビーカーに2Lの水道水を入れたものを準備した。そこに、組成物として1000ppmとなるように、上で得られた実施例及び比較例の繊維製品用処理剤組成物を投入し、分散させた。その中に市販の綿タオルを入れ(浴比20倍)、3分間攪拌した。その後タオルを取り出し、二槽式洗濯機の脱水槽に入れて2分間脱水した。このタオルを20℃、40%RH下で1晩乾燥させた。一晩乾燥後及び1週間後、タオルに残っている香りの強度と質を、20〜30代の女性10人により下記の基準に従って評価した。なお、タオルの乾燥は湿度を調整していない25℃の室内で行った。実験中の湿度はおおよそ30〜50%RHであった。結果を表4に併記する。
<香りの強度>
3点:強い
2点:楽に感知できる程度
1点:弱い
<香りの質>
3点:トップノートを含むフレッシュな香りを感じる
2点:トップノートを含むフレッシュな香りをやや感じる
1点:トップノートを含むフレッシュな香りを感じない
【0060】
【表4】

【0061】
〔繊維製品用処理剤組成物の調製〕
<乳化物粒子を含有する水性液体の調製>(実施例8〜12、比較例4)
上記油脂50g、香料組成物100g、エチルアルコール(95%合成エタノール(日本合成アルコール(株)))50g及びステアリルトリメチルアンモニウムクロライド(T−800(有効成分50%で残りはエタノール):ライオン(株)社製)を30g(有り姿として)を混合し、70℃に加温して混合溶液を調製した。これを60℃のイオン交換水425gに乳化分散させた。このとき、パドル羽根とスリーワンモーター(TYPE HEIDON 1200G)を用いて、回転数500rpmの条件で攪拌した。この乳化物をそのまま放置し、ゆっくりと常温まで冷却して、乳化物粒子を含有する水性液体(A成分)を調製した。使用した油脂及び香料組成物を表5に示す。単位%は、A成分の全質量を基準とした質量%を表す。
但し、A−11は更にイソトリデシルエーテルEO60モル付加物((ルテンゾールTO3(BASF社製)にエチレンオキサイドを57モル付加したもの)25g(有効成分75%で、残りは水)を混合(バランスのため、イオン交換水は400gとした)し、ジェットアジター((株)島崎製作所製、タイプSJ)を用いて、回転数を1000rpmとして調製した。A−12は、油脂を70g使用し、その他の条件は上記のとおりに行いバランスで水の量を減らし、乳化物粒子を含有する水性液体を調製した(油脂:香料=1:1.4 質量比)。
A−9,A−10,A−11で使用した油脂の融点は、示差走査熱量計(DSC120(セイコーインスツル(SII)社製))を用いて測定した。油脂を測定用セルにいれ、20℃から90℃まで、2℃/分の昇温速度で加温し、ピークトップの温度を融点とした。対照はアルミナを用いた。DSCチャートを図1、2に示す。
乳化物の平均粒子径は上で述べたのと同様にして測定した。
【0062】
【表5】

【0063】
<繊維製品用処理剤組成物の調製>
上で得られたA成分を用い、実施例1〜7及び比較例1〜3について述べたのと同様にして繊維製品用処理剤組成物を調製し、該組成物のロングラスティング効果を評価した。結果を表6に示す。なお、表中のA及びB成分の値は、繊維製品用処理剤組成物の全量を基準としたA及びB成分の質量%を表す。但し、A成分の配合量は、繊維製品用処理剤組成物中の香料組成物の量として記載した。
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A) 常圧における融点が30℃以上の油脂と香料組成物との混合物を水に乳化分散させることにより得られる乳化物粒子を含有する水性液体、及び
(B) カチオン性化合物
を含有する繊維製品用処理剤組成物。
【請求項2】
前記油脂が、常圧における融点が40℃以上の高級脂肪酸及び/または高級アルコールであることを特徴とする請求項1に記載の繊維製品用処理剤組成物。
【請求項3】
前記油脂が、炭素数16〜24の高級アルコール及び/または高級脂肪酸である請求項1又は2記載の繊維製品用処理剤組成物。
【請求項4】
前記油脂が、1−オクタデカノール、1−イコサノール又は1−ドコサノールであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の繊維製品用処理剤組成物。
【請求項5】
前記油脂が、1−オクタデカノール及び/または1−ドコサノールと、オクタデカン酸及び/またはドコサン酸との混合物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の繊維製品用処理剤組成物。
【請求項6】
前記カチオン性化合物が、下記式(I)、(II)又は(IV)で表される化合物の中和物又は4級化物である請求項1〜4のいずれか1項記載の繊維製品用処理剤組成物。
【化1】

(式中、R1は、エステル基、エーテル基またはアミド基で分断されてもよい、炭素数12から20の炭化水素基を表す。
R2は、同一でも異なっていてもよく、炭素数1〜4のアルキル基または炭素数2〜4のヒドロキシアルキル基を示す。
R3は、同一でも異なっていてもよく、エステル基、エーテル基またはアミド基で分断されてもよい、炭素数8から12の炭化水素基を表す。
R4は、同一でも異なっていてもよく、エステル基、エーテル基またはアミド基で分断されてもよい、炭素数14から20の炭化水素基を表す。
R5は、前記R4、炭素数1〜4のアルキル基または炭素数2〜4のヒドロキシアルキル基を表す。)

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−285737(P2010−285737A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−110278(P2010−110278)
【出願日】平成22年5月12日(2010.5.12)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】