説明

香味及び旨味を増強した容器詰め茶飲料及びその製造方法

【課題】容器詰め茶飲料の製造時の加熱殺菌処理において低下する茶飲料の香味及び旨味を補完し、香味及び旨味を増強した容器詰め茶飲料、及び、該容器詰め茶飲料を製造する方法を提供する。
【解決手段】加熱殺菌工程を含む容器詰め茶飲料の製造方法において、茶葉から抽出した茶抽出液などに、メチルメチオニンスルホニウムクロライドを、容器詰め茶飲料中の茶由来の総ポリフェノール1重量部に対して0.001〜0.15重量部となるように含有させ、加熱殺菌処理を行うことにより香味及び旨味を増強した容器詰め茶飲料を製造することからなる。本発明の容器詰め茶飲料は、茶飲料が自然な茶の風味を保持した状態で、香味及び旨味を増強した容器詰茶飲料等として提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器詰め茶飲料の製造時の加熱殺菌処理において低下する茶飲料の香味及び旨味を補完し、香味及び旨味を増強した容器詰め茶飲料を製造する方法、及び該方法によって製造された香味及び旨味に富んだ容器詰め茶飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、消費者の嗜好の多様化により多種多様な茶飲料が市場に提供されている。茶系飲料の中でも緑茶飲料は、旨味や苦味、渋味といった呈味と香気のバランスが重視される飲料として愛飲されているが、嗜好の変化に伴い、様々なフレーバーが付与されたものや濃縮タイプのものなどが提案されている。最近の傾向では、より旨味が強く、苦味や渋味が少ないものが好まれており、従来よりも旨味が増強された茶飲料の開発が望まれている。
【0003】
茶飲料の中でも手軽に飲用できる容器詰め茶飲料は近年の主流となっており、多くの商品が市場に流通、販売されている。該茶飲料の流通、販売に際しては、その流通、販売のための保存に対して、長期間品質を保持することが必要である。その容器詰め茶飲料の製造においては、加熱殺菌処理が必須となっている。この加熱殺菌処理では、茶本来の風味や呈味が低下するが、これを完全に防ぐことはできないため、加熱殺菌工程を経た容器詰め茶飲料において、より自然な茶本来の風味を長期にわたって有する香味設計技術が望まれている。
【0004】
容器詰め茶飲料の製造に際して、茶飲料の香味や呈味を増強する試みは従来より行われている。茶原料の中には高級玉露のように、もともと旨味の強い茶もあるが、これらの茶葉を用いても、加熱殺菌による風味低下は抑えられないばかりか、生産量や価格の面で容器詰め茶飲料用原料として工業的に使用することは難しい。
【0005】
従来より、茶系飲料の旨味や香味を増強する手段として、茶葉抽出に際して酵素剤を添加して抽出する方法や、グルタミン酸、核酸等の香味成分を添加する方法等が知られている。酵素剤を添加して抽出する方法としては、例えば、特公昭46−17958号公報には、プロトペクチナーゼとセルラーゼを併用して茶葉を抽出する方法が、特公昭52−42877号公報には、紅茶葉をタンナーゼで処理する方法が、特公平1−47979号公報には、α−アミラーゼ、β−アミラーゼ、セルラーゼ、及びプロテアーゼから選択した酵素の混合物により処理して抽出する方法が開示されている。
【0006】
特開2003−144049号公報には、茶葉原料を、プロテアーゼ及びタンナーゼの存在下で処理する方法が、特開2008−67631号公報には、緑茶葉をプロテアーゼ存在下で抽出処理し、得られた抽出液に更にプロテアーゼを作用させて茶エキスを得る方法が、特開2009−95333号公報には、茶葉からカテキン類の少なくとも一部を除去し、この茶葉をプロテアーゼ、セルラーゼ、ペクチナーゼから選択される1種以上の酵素を用いて酵素抽出する方法が開示されている。
【0007】
また、香味成分を添加する方法としては、例えば、特開2007−110988号公報には、テアニンや3−ガロイルキナ酸、コハク酸を添加することによる茶の風味増強方法が開示されている。しかし、これらの方法でも加熱殺菌処理後の風味低下は抑えられず、加熱殺菌処理後の香味品質としては十分満足いくものではなかった。他には、加熱殺菌処理後の風味低下を考慮して、上記物質を大量に配合することが考えられるが、風味そのものが人工的になり、自然な茶の風味とはかけ離れるといった点が課題であった。
【0008】
容器詰め茶飲料において、加熱殺菌処理工程などの加熱工程で、茶飲料が有している香味が消失又は変質してしまうという問題を解決するための方法も各種提案されている。例えば、特開2005−160416号公報には、茶の生の葉或いは酵素を失活した葉を摘採後凍結処理し、該凍結した茶葉を水蒸気蒸留して得られる留出液を配合してフレッシュで耐熱性のある香気・香味が付与された密閉容器入り緑茶飲料が、特開平05−317013号公報には、フィチン酸を添加することによって、加熱殺菌条件を軽減し、原料の新鮮な風味をより多く保持した茶飲料等の製造方法が、特開2009−89641号公報には、茶葉を熱水で抽出して、花香成分であるホトリエノール(3,7−ジメチルオクタ−1,5,7−トリエン−3−オール)を含む抽出液を得、該抽出液にアスコルビン酸類を添加して調合液を得て、該調合液を加熱殺菌したものを、容器に充填する茶飲料の製造方法が開示されている。
【0009】
しかしながら、これらの方法も、その工程が複雑であったり、また、加熱殺菌処理後の茶飲料が、茶飲料の自然な茶の風味及び呈味を保持するという点では十分なものではなく、したがって、容器詰め茶飲料の製造方法において、製造時の加熱殺菌処理において低下する茶飲料の香味及び旨味を補完し、茶飲料が自然な茶の風味を保持し、香味及び旨味が増強された容器詰め茶飲料を提供する観点からは満足のいくものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特公昭46―17958号公報。
【特許文献2】特公昭52―42877号公報。
【特許文献3】特公平1―47979号公報。
【特許文献4】特開2003−144049号公報。
【特許文献5】特開2005−160416号公報。
【特許文献6】特開平05−317013号公報。
【特許文献7】特開2007−110988号公報。
【特許文献8】特開2008−67631号公報。
【特許文献9】特開2009−89641号公報。
【特許文献10】特開2009−95333号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、容器詰め茶飲料の製造時の加熱殺菌処理において低下する茶飲料の香味及び旨味を補完し、香味及び旨味を増強した容器詰め茶飲料、及び、該容器詰め茶飲料を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、容器詰め茶飲料のような茶飲料の製造時の加熱殺菌処理において低下する茶飲料の香味及び旨味を補完し、香味及び旨味を増強した茶飲料を製造する方法について鋭意検討する中で、メチルメチオニンスルホニウムクロライド(MMS)を一定量以上含有する茶抽出液を加熱殺菌処理することで、加熱殺菌処理において低下する茶飲料の香味及び旨味を補完し、香味及び旨味が増強され、香味品質の優れた容器詰め茶飲料を製造することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち本発明は、容器詰め茶飲料の製造方法において、容器詰め茶飲料中に、メチルメチオニンスルホニウムクロライドを、容器詰め茶飲料中の茶由来の総ポリフェノール1重量部に対して0.001〜0.15重量部となるように含有させ、加熱殺菌処理を行うことにより香味及び旨味を増強した容器詰め茶飲料の製造方法からなる。
【0014】
本発明においては、容器詰め茶飲料中に、メチルメチオニンスルホニウムクロライドを、茶由来の総ポリフェノール1重量部に対して0.001〜0.15重量部となるように含有させ、加熱殺菌処理を行うが、容器詰め茶飲料中のメチルメチオニンスルホニウムクロライドの含有量は、更に好ましくは、茶由来の総ポリフェノール1重量部に対して0.007〜0.06重量部であり、最も好ましくは、0.01〜0.06である。
【0015】
本発明における、メチルメチオニンスルホニウムクロライドは、ケール、キャベツ、又はブロッコリーに含まれ、該植物から抽出によって調製することができるが、市販のものを用いることもできる(例えば、米沢浜理薬品製、アルプス薬品工業製)。
【0016】
本発明の加熱殺菌処理における加熱処理条件は、加熱温度110℃〜145℃、F値1〜40の範囲で、加熱温度及び加熱時間を設定することができる。本発明は、本発明の容器詰め茶飲料の製造方法で製造された香味及び旨味を増強した容器詰め茶飲料の発明を包含する。該容器詰め茶飲料としては、緑茶飲料を挙げることができ、茶飲料は、容器詰め茶飲料として、提供することができる。
【0017】
すなわち具体的には本発明は、[1]容器詰め茶飲料の製造方法において、茶由来の総ポリフェノール1重量部に対して0.001〜0.15重量部のメチルメチオニンスルホニウムクロライドを含有させ、加熱殺菌処理を行うことを特徴とする容器詰め茶飲料の製造方法や、[2]メチルメチオニンスルホニウムクロライドが、ケール、キャベツ、又はブロッコリー由来のものであることを特徴とする上記[1]記載の容器詰め茶飲料の製造方法や、[3]容器詰め茶飲料の製造方法において、加熱殺菌処理条件を、加熱温度110℃〜145℃、F値1〜40の範囲で設定することを特徴とする上記[1]又は[2]記載の容器詰め茶飲料の製造方法や、[4]上記[1]〜[3]のいずれか記載の製造方法で製造された香味及び旨味が増強された容器詰め茶飲料や、[5]容器詰め茶飲料が、緑茶飲料であることを特徴とする上記[4]記載の容器詰め茶飲料や、[6]容器詰め茶飲料において、茶由来の総ポリフェノール1重量部に対して0.001〜0.15重量部のメチルメチオニンスルホニウムクロライドを含有させることによる、容器詰め茶飲料の香味及び旨味増強方法からなる。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、容器詰め茶飲料のような茶飲料の製造時の加熱殺菌処理において低下する茶飲料の香味及び旨味を補完し、茶飲料が自然な茶の風味を保持した状態で、香味及び旨味を増強した容器詰め茶飲料、及び、該容器詰め茶飲料を製造する方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施例における容器詰め緑茶飲料の調合液中のMMSの検出におけるHPLC分析チャートを示す図である。図中、a)は、MMSの標準ピークを、b)は、試験(1)で製造した比較例1(MMS非添加)の場合の検出ピークを、c)は、実施例2(MMSを0.2mg/100mLとなるよう添加した場合)の場合の検出ピークを示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明は、容器詰め茶飲料の製造方法において、容器詰め茶飲料中に、メチルメチオニンスルホニウムクロライドを、茶由来の総ポリフェノール1重量部に対して0.001〜0.15重量部となるように含有させ、加熱殺菌処理を行うことにより香味及び旨味を増強した容器詰め茶飲料を製造することからなる。
【0021】
本発明において対象とする容器詰め茶飲料とは、PETボトルや瓶などの透明容器や、缶、紙製容器等の密閉容器に詰められた茶飲料を指し、そのような容器詰め茶飲料の原料となる容器詰め茶エキスや飲用時に適宜希釈して用いる濃縮液タイプのものも包含される。茶飲料の製造原料としては、茶葉から抽出した茶抽出液を用いることができる。茶抽出液の調製には、通常、茶抽出液の製造に用いられている方法を用いることができる。茶抽出液の代わりに市販の茶エキスやパウダーを用いてもよく、茶抽出液とエキスやパウダーを混合して用いてもよい。また、茶以外にも配合される原料は特に限定されない。
【0022】
本発明において用いられる茶葉は特に限定されないが、Camellia sinensisに属する茶葉等を用いることができ、緑茶葉のような不発酵茶に限らず烏龍茶のような半発酵茶や紅茶のような発酵茶、プーアル茶のような後発酵茶なども用いることができる。好ましくは緑茶葉である。
【0023】
本発明の容器詰め茶飲料の製造方法において、茶抽出液に添加される、メチルメチオニンスルホニウムクロライド(MMS)は、ケールやキャベツ、及びブロッコリー等に含まれるアミノ酸の一種で、メチオニン誘導体の構造を持ち、ビタミンUとも呼ばれるビタミン様物質である。該物質は、従来の飲料用緑茶葉からの飲用抽出液或いは容器詰め茶飲料からはほとんど検出されない。
【0024】
容器詰め茶飲料へのメチルメチオニンスルホニウムクロライドの好ましい添加量は、茶飲料中の総ポリフェノール含量あたりで示すことができる。好ましい範囲は、茶抽出液中の茶由来の総ポリフェノール1重量部に対して0.001〜0.15重量部であり、更に好ましくは0.007〜0.06、最も好ましくは0.01〜0.06である。
【0025】
添加するメチルメチオニンスルホニウムクロライドは、ケールやキャベツ、ブロッコリーなどのメチルメチオニンスルホニウムクロライド含有植物から、水系溶媒及び/又は有機溶媒による抽出エキスとして調製することができる。また、市販のものを用いることもできる(例えば、米沢浜理薬品製、アルプス薬品工業製)。
【0026】
本発明の容器詰め茶飲料に含有される茶由来の総ポリフェノール量は任意に決めることができるが、好ましくは20〜150mg/100mL、より好ましくは40〜100mg/100mLのとき、加熱殺菌処理後の容器詰め茶飲料において、より旨味が強く、緑茶らしい自然な風味を得ることができる。
【0027】
本発明の容器詰め茶飲料の製造方法で採用される加熱殺菌処理の条件としては、加熱温度110℃〜145℃でF値1〜40の範囲で、加熱温度及び加熱時間は適宜設定できる。F値とは、基準温度で一定数の微生物を死滅させるのに要する加熱時間(分)であって、通常121.1℃における加熱時間をいう。たとえば、F=1と同等の殺菌条件とは、111.1℃では10分、121.1℃では1分、F=20と同等の殺菌条件とは、121.1℃では20分、137.2℃では30秒、F=40と同等の殺菌条件とは、121.1℃では40分、140.2℃では30秒のように設定できる。加熱殺菌手段は、加熱を伴うものであればいずれの方法を用いてもよく、従来法としては、レトルト殺菌やUHT殺菌などを用いることができる。
【0028】
本発明においては、メチルメチオニンスルホニウムクロライド(MMS)の添加量は、茶飲料中の茶由来の総ポリフェノール含量あたりで規定することができる。茶由来の総ポリフェノールとは、茶由来成分のうち、以下に示す酒石酸鉄法で定量されたものを指す。茶由来ポリフェノールには、カテキン、エピカテキン、ガロカテキン、エピガロカテキン、カテキンガレート、エピカテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピガロカテキンガレート等やカテキン類の酸化2量体であるテアフラビン類、さらにはカテキン類やテアフラビン類を構成単位とする多量体のタンニン類などが含まれる。
【0029】
(総ポリフェノール量の測定方法)
茶由来の総ポリフェノール量は、日本食品分析センター編、「五訂 日本食品標準成分分析マニュアルの解説」、中央法規、2001年7月、p.252に記載の公定法(酒石酸鉄試薬法)に従って求める。
【0030】
(MMSの測定方法)
試料溶液に内部標準(2−アミノ−n−酪酸)を添加後、内部標準濃度が0.02mg/100mLとなるように超純水で適宜希釈する。これを、孔径0.2μmのメンブレンフィルター(ミリポア社製マイレクスLG Φ4mm)でろ過した後、以下の条件にて高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で定量する。
【0031】
<HPLC分析条件>
HPLCの分析条件を表1に例示する。
【0032】
【表1】

【0033】
<OPA試薬>
オルトフタルアルデヒド70mgを10mLの0.1Mホウ酸緩衝液(pH10)に溶解し、完全に溶解したら0.25mLのメルカプトエタノールを加えて混和し、0.45μmのメンブレンフィルター(アドバンテック社製DISMIC 0.45μm Φ25mm)でろ過する。
【0034】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【実施例】
【0035】
[試験(1)]:(MMS添加濃度による香味品質改良効果の違いについて)
緑茶葉100gに対して70℃の熱水4000gを添加し、6分間抽出した。固液分離し、20℃まで冷却した後に遠心分離処理を行った後、イオン交換水で4000gに調整して緑茶抽出液を得た。得られた緑茶抽出液400gを用い、表2に示す濃度となるようMMS(メチルメチオニンスルホニウムクロライド)を添加し、L−アスコルビン酸を40mg/100mL添加し、炭酸水素ナトリウムでpHを6.5に調整後、イオン交換水で1000gとし調合液とした。このとき、調合液の総ポリフェノール量は70mg/100mLであった。調合液はレトルト缶に熱時充填後、121℃5分間の加熱殺菌処理を施して、比較例1〜3、実施例1〜7を得た。
【0036】
得られた容器詰め緑茶飲料について、訓練されたパネリスト5名による官能評価を行った。評価は比較例1の加熱殺菌処理前を対照に、旨味の強さと緑茶らしい自然な風味(総合評価)を相対評価した。評価点は1点(旨味弱い/風味悪い)〜5点(旨味強い/風味良い)の5段階として、対照と同等の場合を2点とした。評価結果を表2に示した。加熱殺菌処理前はMMSを添加しても対照との差は認められなかったが、加熱殺菌処理後はMMS添加による違いが確認できた。すなわち、MMS無添加の場合は加熱による風味の低下が見られたのに対し、MMSを添加したものは対照と同等またはそれ以上に旨みが強くなった。「MMS量/総ポリフェノール量」が0.0014以上0.1429以下の場合に香味品質の改良効果が認められた。
【0037】
【表2】

【0038】
[試験(2)]:(ポリフェノール量の低い緑茶におけるMMS添加濃度による香味品質改良効果の違いについて)
試験(1)と同様の方法で緑茶抽出液を調製し、得られた緑茶抽出液を用い、総ポリフェノール量が40mg/100mL、MMS量が表3に示す濃度となるよう、緑茶抽出液及びMMSを添加し、L−アスコルビン酸を40mg/100mL添加し、炭酸水素ナトリウムでpHを6.5に調整後、イオン交換水で1000gとし調合液とした。調合液はレトルト缶に熱時充填後、121℃5分間の加熱殺菌処理を施して、比較例4〜5、実施例8〜12を得た。
【0039】
得られた容器詰め緑茶飲料について、訓練されたパネリスト5名による官能評価を行った。評価は比較例4を対照に、旨味の強さと緑茶らしい自然な風味(総合評価)を相対評価した。評価点は1点(旨味弱い/風味悪い)〜5点(旨味強い/風味良い)の5段階として、対照と同等の場合を1点とした。評価結果を表3に示した。「MMS量/総ポリフェノール量」が0.0013以上、0.1250以下で、香味品質の改良効果が認められた。
【0040】
【表3】

【0041】
[試験(3)]:(ポリフェノール量の高い緑茶におけるMMS添加濃度による香味品質改良効果の違いについて)
試験(1)と同様の方法で緑茶抽出液を調製し、得られた緑茶抽出液を用い、総ポリフェノール量が100mg/100mL、MMS量が表4に示す濃度となるよう、緑茶抽出液及びMMSを添加し、L−アスコルビン酸を40mg/100mL添加し、炭酸水素ナトリウムでpHを6.5に調整後、イオン交換水で1000gとし調合液とした。調合液はレトルト缶に熱時充填後、121℃5分間の加熱処理を施して、比較例6〜8、実施例13〜17を得た。
【0042】
得られた容器詰め緑茶飲料について、訓練されたパネリスト5名による官能評価を行った。評価は比較例6を対照に、旨味の強さと緑茶らしい自然な風味(総合評価)を相対評価した。評価点は1点(旨味弱い/風味悪い)〜5点(旨味強い/風味良い)の5段階として、対照と同等の場合を1点とした。評価結果を表4に示した。「MMS量/総ポリフェノール量」が0.001以上、0.10以下で、香味品質の改良効果が認められた。
【0043】
【表4】

【0044】
[試験(4):(加熱殺菌処理条件による香味品質改良効果の違いについて)
試験(1)と同様の方法で、総ポリフェノール量が70mg/100mL、MMS量が2mg/100mL、MMS量/総ポリフェノール量が0.0286となるように調整した緑茶飲料をレトルト缶に熱時充填後、表5の条件で加熱殺菌処理を施して、比較例9〜11、実施例18〜27を得た。
【0045】
得られた容器詰め緑茶飲料について、訓練されたパネリスト5名による官能評価を行った。評価は比較例9を対照として、試験(1)と同様の5段階相対評価とした。評価結果を表5に示した。111℃10〜30分、又は121℃1〜40分の加熱殺菌処理で、香味品質の改良効果が認められた。
【0046】
【表5】

【0047】
[試験(5)]:(ケール抽出液による香味品質改良効果の確認)
市販のケール100gを1cm角程度にカットし、60℃の熱水1000gを添加し、3時間抽出した。固液分離後、20℃まで冷却した後に遠心分離処理を行い、ケール抽出液を得た。得られたケール抽出液に対し、活性炭5gを添加、攪拌後、室温で1時間静置した。活性炭を除去後、イオン交換水で1000gに調整したケール抽出液のMMS含量は2mg/100mLであった。試験(1)と同様の方法で得た緑茶抽出液と上記記載のケール抽出液を用い、表6の配合で緑茶飲料を調製した。調製液をレトルト缶に熱時充填後、121℃15分間の加熱殺菌処理を施して、比較例12及び実施例28〜30を得た。
【0048】
得られた容器詰め緑茶飲料について、訓練されたパネリスト5名による官能評価を行った。評価は比較例12を対照として、試験(2)と同様の5段階相対評価とした。評価結果を表6に示した。ケール抽出液を用いても旨味増強効果が確認できた。
【0049】
【表6】

【0050】
[試験(6)]:(UHT殺菌による香味品質改良効果の確認)
試験(1)と同様の方法で得た緑茶抽出液を用い、総ポリフェノール量が70mg/100mL、MMS量が表7に示す濃度となるよう緑茶抽出液及びMMSを添加し、L−アスコルビン酸を40mg/100mL添加し、炭酸水素ナトリウムでpHを6.5に調整後、イオン交換水で1000gに調合した。調合液は、133℃30秒のUHT殺菌処理後、PETボトルに充填し、比較例13、実施例31〜33を得た。
【0051】
得られた容器詰め緑茶飲料について、訓練されたパネリスト5名による官能評価を行った。評価は比較例13を対照として、試験(2)と同様の5段階相対評価とした。評価結果を表7に示した。加熱殺菌処理方法がUHT殺菌処理であっても、試験(1)と同様に香味品質の改良効果が確認できた。
【0052】
【表7】

【0053】
[試験(7)]:(容器詰め緑茶飲料の調合液中のMMSの検出)
試験(1)で製造した比較例1(MMS非添加、図1の(b))、実施例2(MMSを0.2mg/100mLとなるよう添加、図1の(c))について、先述の方法にて調合液中のMMSを測定した。MMSを添加しない調合液からMMSは検出されなかった。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、容器詰め茶飲料のような茶飲料の製造時の加熱殺菌処理において低下する茶飲料の香味及び旨味を補完し、茶飲料が自然な茶の風味を保持した状態で、香味及び旨味を増強した容器詰め茶飲料を提供する。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器詰め茶飲料の製造方法において、茶由来の総ポリフェノール1重量部に対して0.001〜0.15重量部のメチルメチオニンスルホニウムクロライドを含有させ、加熱殺菌処理を行うことを特徴とする容器詰め茶飲料の製造方法。
【請求項2】
メチルメチオニンスルホニウムクロライドが、ケール、キャベツ、又はブロッコリー由来のものであることを特徴とする請求項1記載の容器詰め茶飲料の製造方法。
【請求項3】
容器詰め茶飲料の製造方法において、加熱殺菌処理条件を、加熱温度110℃〜145℃、F値1〜40の範囲で設定することを特徴とする請求項1又は2記載の容器詰め茶飲料の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか記載の製造方法で製造された香味及び旨味が増強された容器詰め茶飲料。
【請求項5】
容器詰め茶飲料が、緑茶飲料であることを特徴とする請求項4記載の容器詰め茶飲料。
【請求項6】
容器詰め茶飲料において、茶由来の総ポリフェノール1重量部に対して0.001〜0.15重量部のメチルメチオニンスルホニウムクロライドを含有させることによる、容器詰め茶飲料の香味及び旨味増強方法。



【図1】
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