説明

香粧品用基剤組成物

【課題】水に溶解又は分散しやすいため香粧品の調製が容易であり、適度な粘度を有するため取り扱いやすい香粧品用基剤組成物の提供。
【解決手段】一般式(1)で表されるカチオン性界面活性剤(A)を20〜60重量%、多価アルコール(B)を20〜70重量%及び水を5〜60重量%含有する香粧品用基剤組成物。


式中、Rは、炭素数12〜26のアルキル基など。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は香粧品用基剤組成物に関する。更に詳しくは、毛髪処理剤用である香粧品用基
剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、毛髪処理剤(ヘアーリンス、ヘアーコンディショナー及びヘアートリートメント
等)等に使用される香粧品用基剤組成物としては、4級アンモニウム塩と1価又は多価ア
ルコールを含有してなる組成物を、粉末状又はフレーク状にしたものが知られている(特
許文献−1、2)。
しかしながら、前記組成物を水に溶解又は分散して毛髪処理剤等を調製する場合、溶解
又は分散に時間がかかるため、高温下、高速撹拌で溶解又は分散をする必要があり、毛髪
処理剤等の調製に手間がかかるという問題があった。
また、粉末状又はフレーク状の前記組成物は、長期間保管していると吸湿によりブロッ
キングするという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献−1】特開昭63−2917号公報
【特許文献−2】特開2003−89623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、水に溶解又は分散しやすいため香粧品の調製が容易であり、適度な粘度を有
することから取り扱いやすい香粧品用基剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に至った。すなわち本
発明は、一般式(1)で表されるカチオン性界面活性剤(A)を20〜60重量%、多価アルコール(B)を20〜70重量%及び水を5〜60重量%含有してなる香粧品用基剤組成物である。
【化1】

式中、Rは、炭素数12〜26のアルキル基、アルケニル基又はヒドロキシアルキル基;R、R及びRは、それぞれ独立に炭素数1〜8のアルキル基;Xはハロゲン原子又は炭素数1〜8のモノアルキル硫酸エステル基である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の香粧品用基剤組成物は、水に溶解又は分散しやすいため香粧品の調製が容易で
あり、適度な粘度を有することから取り扱いやすい、といった効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の香粧品用基剤組成物は、一般式(1)で表されるカチオン性界面活性剤(A)を含有してなる。
一般式(1)において、Rは、炭素数12〜26のアルキル基、アルケニル基又はヒドロキシアルキル基である。これらのうち、毛髪処理剤としての柔軟性及び風合い性の観点から好ましいのは、炭素数12〜26のアルキル基又はアルケニル基である。
【0008】
炭素数12〜26のアルキル基としては、直鎖若しくは分岐のアルキル基又はシクロアルキル基が挙げられ、例えばn−ドデシル基、イソドデシル基、n−トリデシル基、イソトリデシル基、n−テトラデシル基、イソテトラデシル基、n−ヘキサデシル基、イソヘキサデシル基、n−ステアリル基、イソステアリル基、n−ノナデシル基、n−エイコシル基、n−テトラコシル基及びn−ヘキサコシル基等が挙げられる。これらのうち、毛髪処理剤としての柔軟性及び風合い性の観点から好ましいのは、炭素数16〜26のアルキル基であり、更に好ましいのは炭素数18〜22のアルキル基である。
【0009】
炭素数12〜26のアルケニル基としては、例えばドデセニル基、テトラデセニル基、ヘキサデセニル基、オクタデセニル基、オレイル基及びガドレイル基等が挙げられる。これらのうち、毛髪処理剤としての柔軟性及び風合い性の観点から好ましいのは、炭素数16〜26のアルケニル基であり、更に好ましいのは炭素数18〜22のアルケニル基である。
【0010】
炭素数12〜26のヒドロキシアルキル基としては、直鎖若しくは分岐のアルキル基又はシクロアルキル基が挙げられ、例えばヒドロキシn−ドデシル基、ヒドロキシイソドデシル基、ヒドロキシn−トリデシル基、ヒドロキシイソトリデシル基、ヒドロキシn−テトラデシル基、ヒドロキシイソテトラデシル基、ヒドロキシn−ヘキサデシル基、ヒドロキシイソヘキサデシル基、ヒドロキシn−ステアリル基、ヒドロキシイソステアリル基、ヒドロキシn−ノナデシル基、ヒドロキシn−エイコシル基、ヒドロキシn−テトラコシル基及びヒドロキシn−ヘキサコシル基等が挙げられる。これらのうち、毛髪処理剤としての柔軟性及び風合い性の観点から好ましいのは、炭素数16〜26のヒドロキシアルキル基であり、更に好ましいのは炭素数18〜22のヒドロキシアルキル基である。
【0011】
一般式(1)において、R、R及びRは、それぞれ独立に炭素数1〜8のアルキル基である。
炭素数1〜8のアルキル基としては、直鎖若しくは分岐のアルキル基又はシクロアルキル基が挙げられ、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基及び2−エチルヘキシル基等が挙げられる。これらのうち、毛髪処理剤としての柔軟性及び風合い性の観点から好ましいのは、炭素数1〜3のアルキル基であり、更に好ましいのは炭素数1又は2のアルキル基である。
【0012】
一般式(1)において、Xはハロゲン原子又は炭素数1〜8のモノアルキル硫酸エステル基である。これらのうち、毛髪処理剤としての柔軟性及び風合い性の観点から好ましいのはハロゲン原子である。
ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素が挙げられる。これらのうち、毛髪処理剤としての柔軟性及び風合い性の観点から好ましいのは塩素及び臭素であり、更に好ましいのは塩素である。
炭素数1〜8のモノアルキル硫酸エステル基としては、例えばモノメチル硫酸エステル基、モノエチル硫酸エステル基、モノプロピル硫酸エステル基、モノブチル硫酸エステル基、モノペンチル硫酸エステル基、モノヘキシル硫酸エステル基、モノヘプチル硫酸エステル基及びモノオクチル硫酸エステル基が挙げられる。これらのうち、毛髪処理剤としての柔軟性及び風合い性の観点から好ましいのは、モノメチル硫酸エステル基及びモノエチル硫酸エステル基である。
【0013】
本発明におけるカチオン性界面活性剤(A)は、公知の方法で製造することができるが、例えば一般式(2)で表されるアミンを加圧反応容器に投入し、アミンに対して0.9〜1.2モル当量のアルキル化剤[例えば炭素数1〜8のアルキルハライド又は硫酸ジアルキル(炭素数1〜8)]を投入して4級化反応を行う。反応温度は通常50〜120℃であり、反応時間は通常2〜30時間である。4級化反応は低級アルコール溶媒(例えばメタノール、エタノール及びイソプロピルアルコール等)の存在下行ってもよい。4級化反応終了後、未反応のアルキル化剤及び必要により低級アルコール溶媒を50〜120℃で減圧留去してカチオン性界面活性剤(A)を得ることができる。
【化2】

式中、R、R及びRは、一般式(1)におけるR、R及びRと同様の基である。
【0014】
一般式(1)で表されるカチオン性界面活性剤(A)の具体例としては、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド、オクタデシルトリメチルアンモニウムクロライド、エイコシルトリメチルアンモニウムクロライド、テトラコシルトリメチルアンモニウムクロライド、ヘキサコシルトリメチルアンモニウムクロライド、オクタデシルトリメチルアンモニウムブロミド、イコシルトリメチルアンモニウムブロミド、ドコシルトリメチルアンモニウムブロミド及びドコシルトリメチルアンモニウムモノメチル硫酸エステル等が挙げられる。
なお、カチオン性界面活性剤(A)は、単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0015】
本発明の香粧品用基剤組成物は、多価アルコール(B)を含有してなる。
多価アルコール(B)としては、2〜6価アルコールが挙げられる。2価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール(数平均分子量:152〜600)、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール(数平均分子量:192〜600)、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ピナコール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、3,3−ジメチル−1,2−ブタンジオール、2−エチル−2−メチル−1,2−プロパンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,4−ジメチル−2,4−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール、1,8−オクタンジオール及び2,2,4−トリメチル−1,2−ペンタンジオール等が挙げられる。
3価アルコールとしては、グリセリン、1,2,4−トリヒドロキシブタン、2,3,4−トリヒドロキシペンタン、1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)エタン、1,2,6−トリヒドロキシヘキサン及び1,2,3−トリヒドロキシヘプタン等が挙げられる。
4価アルコールとしてはペンタエリスリトール等が挙げられる。
5価アルコールとしては、キシリトール及びアラビトール等が挙げられる。
6価アルコール:ソルビトール及びマンニトール等が挙げられる。
これらのうち、本発明の香粧品用基剤組成物の水への溶解又は分散のしやすさ、及び適度な粘度の観点から好ましいのは、2価アルコール及び3価アルコールであり、更に好ましいのは、炭素数3〜6の多価アルコール、数平均分子量200〜600のポリエチレングリコール及び数平均分子量200〜600のポリプロピレンク゛リコールであり、特に好ましいのは、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール及びグリセリンである。
なお、多価アルコール(B)は、単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0016】
本発明の香粧品用基剤組成物には、必要によりその他の成分を含有してもよい。
その他の成分としては、保湿剤(グリセリン及びピロリドンカルボン酸ナトリウム等)、コンディショニング剤(重量平均分子量500〜500万のカチオン化セルロース、カチオン化グアーガム、シリコーン類、ポリアクリル酸ナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース及びタンパク質誘導体等)、キレート剤(エチレンジアミン四酢酸ナトリウム及び1−ヒドロキシエタン−1、1−ジホスホン酸ナトリウム等)、ビルダー(ヒドロキシカルボン酸、ポリカルボン酸塩及びケイ酸塩等)、炭素数1〜6の1価アルコール(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール及びn−ブチルアルコール等)、増粘剤(セルロース誘導体等)、パール化剤、香料(d−リモネン、β−カリオフィレン、シス−3−ヘキセノール、リナロール、ファルネソール、β−フェニルエチルアルコール、2,6−ノナジエナール、シトラール、α−ヘキシルシンナミックアルデヒド、β−イオノン、l−カルボン、シクロペンタデカノン、リナリルアセテート、ベンジルベンゾエート、γ−ウンデカラクトン、オイゲノール、ローズオキサイド、インドール、フェニルアセトアルデヒドジメチルアセタール、オーランチオール、シンナミックアルデヒド及びメチルヨノン等)、着色剤(青色1号、青色2号、緑色3号及び赤色1号等)、防腐剤(安息香酸、安息香酸塩類、サリチル酸、サリチル酸塩類、フェノール、ソルビン酸、ソルビン酸塩類、パラオキシ安息香酸エステル、クロルクレゾール、デヒドロ酢酸、デヒドロ酢酸塩、レゾルシン、ヘキサクロロフェン、イソプロピルメチルフェノール、オルトフェニルフェノール、塩化ベンザルコニウム、塩酸クロルヘキシジン、ビサボロール、ハロカルバン、トリクロロカルバニド、グルコン酸クロルヘキシジン、臭化アルキルイソキノリニウム、フェノキシエタノール及び塩酸アルキルジアミノエチルグリシン等)、紫外線吸収剤、タンパク質、タンパク質加水分解物、セラミド類、擬似セラミド類、直鎖状又は分枝状の炭素数16〜40の脂肪酸、ヒドロキシ酸、ビタミン類、パンテノール、植物性油、鉱物性油、合成油及び抗フケ剤等が挙げられる。
【0017】
本発明の香粧品用基剤組成物におけるカチオン性界面活性剤(A)、多価アルコール(B)、水及びその他の成分の含有率は以下の通りである。
カチオン性界面活性剤(A)の含有率は、本発明の香粧品用基剤組成物の水への溶解又は分散のしやすさ、及び適度な粘度の観点から、香粧品用基剤組成物の全重量に基づいて、通常20〜60重量%であり、好ましくは25〜55重量%であり、更に好ましくは30〜50重量%である。
多価アルコール(B)の含有率は、本発明の香粧品用基剤組成物の水への溶解又は分散のしやすさ、及び適度な粘度の観点から、香粧品用基剤組成物の全重量に基づいて、通常20〜70重量%であり、好ましくは25〜65重量%であり、更に好ましくは30〜60重量%である。
水の含有率は、本発明の香粧品用基剤組成物の水への溶解又は分散のしやすさ、及び適度な粘度の観点から、香粧品用基剤組成物の全重量に基づいて、通常5〜60重量%であり、更に好ましくは5〜50重量%であり、特に好ましくは7〜40重量%である。
その他の成分のうち、保湿剤、コンディショニング剤、キレート剤、ビルダー、低級アルコール類、他の増粘剤、パール化剤、タンパク質、タンパク質加水分解物、セラミド類、擬似セラミド類、直鎖状又は分枝状の炭素数16〜40の脂肪酸、ヒドロキシ酸、ビタミン類、パンテノール、植物性油、鉱物性油、合成油及び抗フケ剤のそれぞれの含有率は、カチオン性界面活性剤(A)及び多価アルコール(B)の全重量に基づいて、好ましくは0〜20重量%であり、更に好ましくは0.1〜15%である。
その他の成分のうち、香料、着色剤、防腐剤及び紫外線吸収剤のそれぞれの含有率は、カチオン性界面活性剤(A)及び多価アルコール(B)の全重量に基づいて、好ましくは0〜3重量%であり、更に好ましくは0.01〜2重量%である。
【0018】
本発明の香粧品用基剤組成物は、取り扱い性の観点から、流動点が50℃未満であり、かつ45℃における粘度が2,000mPa・s未満であることが好ましい。更に好ましくは流動点が40℃未満であり、かつ45℃における粘度が1,500mPa・s未満である。特に好ましくは流動点が30℃未満であり、かつ45℃における粘度が1,000mPa・s未満である。
【0019】
本発明における流動点とは、香粧品用基剤組成物が流動しなくなった時の最低温度をいう。
測定は、JIS K2269の原油及び石油製品の流動点並びに石油製品曇り点試験方法に準ずる方法で行うことができる。
【0020】
本発明の香粧品用基剤組成物の45℃における粘度は、B型回転粘度計により測定することができる。
【0021】
本発明の香粧品用基剤組成物の製造方法は特に限定されないが、例えば以下の方法が挙げられる。
(1)撹拌機及び加熱冷却装置を備えた混合槽に、カチオン性界面活性剤(A)、多価アルコール(B)、水、更に必要によりその他の成分を、投入順序に特に制限なく投入し、10〜80℃で均一になるまで撹拌して製造する方法。
(2)前記一般式(2)で表されるアミン、多価アルコール(B)及び水を加圧反応容器に投入し、アミンに対して0.9〜1.2モル当量のアルキル化剤[例えば炭素数1〜8のアルキルハライド又は硫酸ジアルキル(炭素数1〜8)]を投入して4級化反応を行い、カチオン性界面活性剤(A)を合成した後、更に必要によりその他の成分を投入し、10〜80℃で均一になるまで撹拌して製造する方法。
【実施例】
【0022】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。以下、部は重量部を、%は重量%を意味する。
【0023】
<実施例1>
撹拌機、温度計、加熱冷却装置及び滴下ボンベを備えた耐圧反応容器に、ベヘニルジメチルアミン353部(1モル部)、グリセリン634部及び水115部を投入し、40℃に昇温後、減圧下(−0.08MPa)、窒素置換を3回行った。70℃に昇温後、減圧下(−0.08MPa)メチルクロライド50.5部(1モル部)を8時間かけて圧入した。更に70℃で2時間撹拌し、メチルクロライドを完全に反応させ、香粧品用基剤組成物(X−1)を得た[(X−1)は、カチオン性界面活性剤(A−1)35%、グリセリン(B−1)55%及び水10%からなる組成物である。]。
【0024】
<比較例1>
撹拌機、温度計、加熱冷却装置及び滴下ボンベを備えた耐圧反応容器に、ベヘニルジメチルアミン353部(1モル部)及びグリセリン749部を投入し、40℃に昇温後、減圧下(−0.08MPa)、窒素置換を3回行った。70℃に昇温後、減圧下(−0.08MPa)メチルクロライド50.5部(1モル部)を8時間かけて圧入した。更に70℃で2時間撹拌し、メチルクロライドを完全に反応させ、香粧品用基剤組成物(X’−1)を得た[(X’−1)は、カチオン性界面活性剤(A−1)35%、グリセリン(B−1)65%からなる組成物である。]。
【0025】
<比較例2>
撹拌機、温度計、加熱冷却装置及び滴下ボンベを備えた耐圧反応容器に、ベヘニルジメチルアミン353部(1モル部)及びヘキサデシルアルコール749部を投入し、40℃に昇温後、減圧下(−0.08MPa)、窒素置換を3回行った。100℃に昇温後、減圧下(−0.08MPa)メチルクロライド50.5部(1モル部)を8時間かけて圧入した。更に70℃で2時間撹拌し、メチルクロライドを完全に反応させ、香粧品用基剤組成物(X’−2)を得た[(X’−2)は、カチオン性界面活性剤(A−1)35%、ヘキサデシルアルコール65%からなる組成物である。]。なお、(X’−2)は45℃で固体であるため、粉砕機で粉砕し、フレーク状の(X’−2)を得た。
【0026】
<比較例3>
撹拌機、温度計、加熱冷却装置及び滴下ボンベを備えた耐圧反応容器に、ベヘニルジメチルアミン353部(1モル部)及び水749部を投入し、40℃に昇温後、減圧下(−0.08MPa)、窒素置換を3回行った。70℃に昇温後、減圧下(−0.08MPa)、メチルクロライド50.5部(1モル部)を6時間反応させた時点[メチルクロライド35部(0.7モル部)を消費]で反応系内がゲル化した。以後の反応は不可能であり香粧品用基剤組成物を得ることができなかった。
【0027】
実施例1、比較例1、2で得られた香粧品用基剤組成物の45℃における粘度、流動点、香粧品用基剤組成物から毛髪処理剤(ヘアーリンス)を調製する際の香粧品用基剤組成物の分散性を以下の方法で評価した。結果を表1に示す。
【0028】
<香粧品用基剤組成物の45℃における粘度の測定方法>
香粧品用基剤組成物を45℃で1時間温調し、デジタルB型粘度計「DVL−B型」[東京計器(株)製]で測定開始から1分後の粘度を測定する。
【0029】
<流動点の測定方法>
香粧品用基剤組成物を70℃に調整後、5ml試験管に注ぎ、温度計を試験管の中心に立てる。次いで−15〜−17.5℃の冷却浴に試験管を入れ、0℃を基点とする2.5℃の整数倍の温度から2.5℃下がる度に試験管を冷却浴から取り出し、静かに傾けて香粧品用基剤組成物が流動するか確認する。試験管を水平に傾けても香粧品用基剤組成物が流動しなくなる温度を記録し、この温度に2.5℃加えた温度を、香粧品用基剤組成物の流動点とする。
【0030】
<分散性の評価方法>
200mlガラス製ビーカーに水137.1gを投入し、40℃に温調しながら、カイ型撹拌羽根で200rpmの撹拌速度で撹拌下、香粧品用基剤組成物12.9gを投入[カチオン性界面活性剤(A−1)の濃度:3%]し、均一に分散するまでの時間を測定した。均一に分散するまでの時間が短いほど分散性に優れることを表す。
【0031】
【表1】

【0032】
表1の結果から明らかなように、本発明の香粧品用基剤組成物は、比較例の香粧品用基剤組成物と比較して45℃における粘度及び流度点が低いため取り扱い性に優れる。また、毛髪処理剤等を調製する際の分散性に優れる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の香粧品用基剤組成物は、ヘアーリンス、ヘアーコンディショナー及びヘアートリートメント等の毛髪処理剤として好適である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で表されるカチオン性界面活性剤(A)を20〜60重量%、多価アルコール(B)を20〜70重量%及び水を5〜60重量%含有してなる香粧品用基剤組成物。
【化1】

[式中、Rは、炭素数12〜26のアルキル基、アルケニル基又はヒドロキシアルキル基;R、R及びRは、それぞれ独立に炭素数1〜8のアルキル基;Xはハロゲン原子又は炭素数1〜8のモノアルキル硫酸エステル基である。]
【請求項2】
前記多価アルコールが、炭素数3〜6の多価アルコール、数平均分子量200〜600のポリエチレングリコール及び数平均分子量200〜600のポリプロピレングリコールからなる群から選ばれる1種以上である請求項1記載の香粧品用基剤組成物。
【請求項3】
前記炭素数3〜6の多価アルコールが、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール及びグリセリンからなる群から選ばれる1種以上である請求項2記載の香粧品用基剤組成物。
【請求項4】
前記一般式(1)におけるRが、炭素数16〜26のアルキル基、アルケニル基又はヒドロキシアルキル基である請求項1〜3のいずれかに記載の香粧品用基剤組成物。
【請求項5】
流動点が50℃未満であり、かつ45℃における粘度が2,000mPa・s未満である請求項1〜4のいずれかに記載の香粧品用基剤組成物。
【請求項6】
毛髪処理剤用である請求項1〜5のいずれかに記載の香粧品用基剤組成物。


【公開番号】特開2012−12362(P2012−12362A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−152661(P2010−152661)
【出願日】平成22年7月5日(2010.7.5)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】