説明

駆動伝達装置、プロセスカートリッジ及び画像形成装置

【課題】画像形成装置本体から感光体および現像装置等の他の作像装置の回転体の回転精度と、回転体同士の位置精度を同時に確保することにある。それによって濃度むらの発生を抑え、高品質な画像を実現することが可能な駆動伝達装置、画像形成装置及びプロセスカートリッジを提供する。
【解決手段】駆動伝達装置は、被駆動回転体への駆動伝達にインボリュートスプラインジョイントを用いる回転伝達系を複数個備える。インボリュートスプラインジョイントと減速装置11とを一体化したジョイント駆動伝達部材100を有する。少なくとも1つのジョイント駆動伝達部材は、減速装置とインボリュートスプラインジョイントとが径方向に対応するように重ね合わせ状に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタ、複写機、ファクシミリ、又はそれらの複合機等の画像形成装置の駆動伝達装置、この駆動伝達装置を備えた画像形成装置、及びこの画像形成装置に使用されるプロセスカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像形成装置において、高画質化、高速化に伴い、感光体や現像装置や転写装置に含まれる回転体に回転変動が生じると画像の濃度むらが生じる傾向がある。そのため、それら回転体の回転精度が一層厳しく要求されるようになっている。特に現像装置では回転負荷が大きく、最も回転変動が画像品質に影響する感光体と駆動伝達系を切り離す構成にすることが有効である。他方で感光体と現像装置内の現像ローラの隙間(現像ギャップ)を精度良く構成することも高画質化には重要である。また、作像装置は寿命や交換容易性の観点から、装置本体と着脱可能な構成をとる必要がある。
【0003】
このような複数の回転体の回転精度と、回転体同士の位置精度の要求に同時に応え得る回転駆動方法として、画像形成装置本体の駆動系から作像装置内回転体への回転伝達に継手を用いる方法が従来では提案されている。
【0004】
高精度な回転を得るための回転駆動伝達手段として、インボリュートスプラインジョイントを使用する手段が公知である。図8はインボリュートスプラインジョイントを使用した回転駆動伝達装置の構成を示す概略構成を示す斜視図である。像担持体である感光体101が感光体軸102によって軸支され、感光体101の一端は回転伝達される感光体側継手103となっている。このような構成を回転駆動伝達装置では、例えばDCサーボモータやステッピングモータからなる感光体駆動モータ106からの入力が、感光体駆動軸105を介して駆動側継手104に伝達され、駆動側継手104と感光体側継手103が係合することによって感光体101が回転する。
【0005】
また、感光体と現像装置などに各々独立して駆動を伝達するための継手構成が特許文献1あるいは特許文献2に記載されている。特許文献1では、感光体の駆動伝達をねじれた三角柱形状の継手で構成し、他の作像装置への駆動伝達を2爪の継手で構成している。また特許文献2では、感光体の駆動伝達をインボリュートスプラインジョイントで構成し、他の作像装置への駆動伝達をオルダムカップリングで構成している。
【0006】
ところで、感光体あるいは他の作像装置への回転駆動にインボリュートスプラインジョイントを用いることで高精度な回転を実現するが、回転体同士の位置精度を確保することは考慮されていない。また、特許文献1および特許文献2に記載の発明では、感光体と他の作像装置への駆動伝達系を独立に構成し、感光体にはインボリュートスプラインジョイントや三角柱のジョイントを用いることで高精度な回転を実現するが、他の作像装置には2爪継手やオルダムジョイントを用いており回転変動が生じ得る。
【0007】
このため、濃度むらの発生を抑制し、画像の高品質化の目的で、インボリュートスプラインジョイントと減速装置とを一体化したものが提案された(特許文献3)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献3に記載のものでは、感光体および現像装置等の他の現像装置の回転体の回転精度と、回転体同士の位置精度を同時に確保することができる。
【0009】
しかし、減速装置であるプーリやギヤ部と感光体、現像装置に駆動力を与えるジョイント部の二段構成となっており、駆動伝達装置のスペースが大きくなる。また、感光体と現像ローラは構成上近傍にあり、両方のジョイント駆動伝達部材は重なり合う構成となるため、更に駆動伝達装置のスペースが大きくなる。そのため、画像形成装置を小型化できないという問題があった。
【0010】
本発明はこのような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、本発明が解決すべき課題は、画像形成装置本体から感光体および現像装置等の他の作像装置の回転体の回転精度と、回転体同士の位置精度を同時に確保することにある。それによって濃度むらの発生を抑え、高品質な画像を実現することが可能な駆動伝達装置、画像形成装置及びプロセスカートリッジを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の駆動伝達装置は、被駆動回転体への駆動伝達にインボリュートスプラインジョイントを用いる回転伝達系を複数個備え、減速装置とインボリュートスプラインジョイントの雌ジョイント又は雄ジョイントとを一体化したジョイント駆動伝達部材を有する駆動伝達装置であって、少なくとも1つのジョイント駆動伝達部材は、減速装置とインボリュートスプラインジョイントとが径方向に対応するように重ね合わせ状に形成されているものである。
【0012】
本発明の駆動伝達装置によれば、インボリュートスプラインジョイントを用いるため、高精度な回転駆動力を得ることができる。しかも、少なくとも1つのジョイント駆動伝達部材は、減速装置とインボリュートスプラインジョイントとが径方向に対応するように重ね合わせ状に形成されるものであるので、このインボリュートスプラインジョイントと減速装置とがいわゆる単一段となる。
【0013】
前記減速装置は、ギヤ、歯付プーリ、あるいは摩擦駆動手段の中から選択される。一のジョイント駆動伝達部材は、他のジョイント駆動伝達部材の減速装置と重なり合う部位に配置されているのが好ましい。
【0014】
本発明の画像形成装置は、前記駆動伝達装置を備えるものである。また、本発明のプロセスカートリッジは、前記画像形成装置に使用されるものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の駆動伝達装置によれば、高精度な回転駆動力を得ることができる。しかも、インボリュートスプラインジョイントと減速装置とがいわゆる単一段となっているので、省スペース化及び小型化を達成できる。
【0016】
減速装置としては、ギヤや歯付プーリ等の種々の公知公用の機構を用いることができ、構造の簡素化及び低コスト化を図ることができる。
【0017】
ジョイント駆動伝達部材は、他のジョイント駆動伝達部材の減速装置と重なり合う部位に配置されたものでは、省スペース化及び小型化をより一層図ることができる。
【0018】
本発明の画像形成装置では、高画質化、省スペース化及び小型化を実現できる。また、本発明のプロセスカートリッジでは、高画質化、省スペース化及び小型化を実現できる画像形成装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の駆動伝達装置を用いた画像形成装置の構成図である。
【図2】本発明の駆動伝達装置の斜視図である。
【図3】前記図2に示す駆動伝達装置の要部斜視図である。
【図4】前記図2に示す駆動伝達装置の一のジョイント駆動伝達部材を示す斜視図である。
【図5】図5に示すジョイント駆動伝達部材の断面図である。
【図6】駆動伝達装置の他のジョイント駆動伝達部材を示す斜視図である。
【図7】図7に示すジョイント駆動伝達部材の断面図である。
【図8】従来の駆動伝達装置の簡略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図に示す実施例による本発明を実施するための形態を説明する。
【実施例】
【0021】
図1は本発明に係わるタンデム型カラー画像形成装置の作像部主要構成図である。この画像形成装置では、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、黒(Bk)の4色に関して、各々感光体ドラム110Y、110C、110M、110Bkが設けられている。これらの各感光体ドラム110Y、110C、110M、110Bkの外周に沿ってそれぞれ帯電ユニット、現像ローラ111Y、111C、111M、111Bk、1次転写ローラ131Y、131C、131M、131Bk、クリーニングユニット、除電ユニットなどの作像要素が配置されている。また、帯電ユニットの感光体ドラム回転方向下流側には光書込部が設定され、レーザ露光ユニット120から光書き込み用のレーザ光により光書き込みが行われる。
【0022】
レーザ露光ユニット120は、例えば各色に設けられたレーザダイオード(LD)から出射されたレーザ光を波形整形し、ポリゴンミラーによって各感光体ドラム110Y、110C、110M、110Bkの軸方向(主走査方向)に画像情報に応じて変調されたレーザ光LBY、LBC、LBM、LBBkを照射する。なお、同図の例では、各色毎にプロセスカートリッジ160Y、160C、160M、160Bkが着脱可能に設けられている。各色のプロセスカートリッジ160Y、160C、160M、160Bkはそれぞれ感光体ドラム110Y、110C、110M、110Bkと、この感光体ドラム110Y、110C、110M、110Bkの外周に沿って配置された図示しない帯電ユニット、現像ローラ111Y、111C、111M、111Bk、クリーニングユニット、除電ユニットの少なくとも1つとを、これらの駆動機構とともに含んで1つのユニットとして構成されている。
【0023】
各感光体ドラム110Y、110C、110M、110Bkには駆動ローラ130aと従動ローラ130b間に張設された中間転写ベルト130がそれぞれ接している。中間転写ベルト130には、1次転写ローラ131Y、131C、131M、131Bkによって各感光体ドラム110Y、110C、110M、110Bk上のトナー画像が転写される。中間転写ベルト130の従動ローラ130bに対向する位置には2次転写ローラ140が設けられ、中間転写ベルト130と2次転写ローラ140間のニップを通って転写紙が搬送される。中間転写ベルト130上のトナー画像は2次転写ローラ140によって転写紙に転写される。また、前記中間転写ベルト130と2次転写ローラ140間のニップよりも転写紙搬送方向下流側には、転写紙上のトナー画像を転写紙に定着する定着装置150が設けられている。
【0024】
作像部を備えた画像形成装置では、まず、レーザ露光ユニット120から各感光体ドラム110Y、110C、110M、110Bkにレーザが照射され、各感光体ドラム110Y、110C、110M、110Bkの表層に静電潜像が形成される。続いて、感光体ドラム110Y、110C、110M、110Bkに近接する現像ローラ111Y、111C、111M、111Bkによりトナーが感光体ドラム110Y、110C、110M、110Bkへとそれぞれ搬送され、トナー顕像が形成される。感光体ドラム110Y、110C、110M、110Bk上にそれぞれ形成された各色の顕像は、感光体ドラム110Y、110C、110M、110Bkに接触する中間転写ベルト130にY、C、M、Bkの順で順次転写される。さらに、2次転写ローラ140によってタイミングを合わせて搬送されてきた転写紙に転写され、定着装置150にて溶融圧着され画像が転写紙上に形成される。なお、4色作像することでフルカラー画像が得られるが、単色のみあるいは2色による画像を形成することも可能である。(以下、各色の感光体ドラムを総括して説明する場合は、色を示すY、C、M、Bkの添え字は省略する。)
【0025】
図2は本実施形態に係る駆動伝達装置の一例を示す斜視図である。例えばDCサーボモータやステッピングモータからなる駆動モータ1、モータの駆動力を減速するギヤ2、雌ジョイント4、装置本体に固定される軸支部材3により第1の回転体駆動系が構成される。雌ジョイント4は、その内径面にインボリュートスプライン形状の雌ジョイント部4aが形成された筒状体45からなる。
【0026】
また、第2の回転体駆動系は5、6、7、8の減速列および雌ジョイント9により構成される。雌ジョイント9は雌ジョイント4と同様、その内径面にインボリュートスプライン形状の雌ジョイント部9a(図3参照)が形成された筒状体50からなる。また、ジョイント4,9は同一軸支部材3により軸支されている。
【0027】
ところで、図4と図5に示すように、雌ジョイント9を構成する筒状体50の外径面には、ギヤや歯付プーリ等からなる減速装置11が形成されている。この筒状体50は、周壁51と、この周壁51の一方の開口部を塞ぐ底壁52とを備えたものであり、この周壁51の中心部に、筒状の中心軸53が配設されている。この中心軸53が底壁52に連設されている。
【0028】
このように、雌ジョイント9と減速装置11とを有するジョント駆動力伝達部材100は、雌ジョイント9と同軸に構成される減速装置11を単一段に構成することになる。これによって、省スペース化を実現し、駆動伝達装置の小型化、ひいてはこの駆動伝達装置を用いた画像形成装置の小型化が可能となる。また、減速装置11はギヤや歯付きプーリである。それらを一体化することは部品点数を削減し、コストを抑制することに加えて、複数部品による寸法公差の積み上がりを抑制し組み付け誤差も排除することが可能であるので、非駆動回転体の回転変動を抑え、高画質化を実現する。
【0029】
また、雌ジョイント4に、感光体110に連結された従動側の雄ジョイント31が嵌合する。すなわち、雄ジョイント31は、その外径面にインボリュートスプライン形状の雄ジョイント部31aが形成された筒状体乃至中実体からなる。このように、駆動側の雌ジョイント4と従動側の雄ジョイント31が嵌合することによって、回転駆動が滑らかに伝達されるインボリュートスプラインジョイントが構成される。
【0030】
また、雌ジョイント9に、感光体110に連結された従動側の雄ジョイント32が嵌合する。すなわち、雄ジョイント32は、その外径面にインボリュートスプライン形状の雄ジョイント部32aが形成された筒状体乃至中実体からなる。このように、駆動側の雌ジョイント4と従動側の雄ジョイント31が嵌合することによって、回転駆動が滑らかに伝達されるインボリュートスプラインジョイントが構成される。
【0031】
ところで、雌ジョイント9と減速装置11を一体化する場合、図6と図7に示すように構成してもよい。この場合、雌ジョイント9と減速装置11とは軸方向に沿っていわゆる2段に配設される。
【0032】
それらを一体化することは部品点数を削減し、コストを抑制することに加えて、複数部品による寸法公差の積み上がりを抑制し組み付け誤差も排除することが可能であるので、非駆動回転体の回転変動を抑え、高画質化を実現することができる。しかしながら、図6と図7に示すものでは、雌ジョイント9と減速装置11とは軸方向に沿って2段に配設されるので、駆動伝達装置のスペースが大きくなる。また、感光体と現像ローラは構成上近傍にあり、両方のジョイント駆動伝達部材は重なり合う構成となるため、更に駆動伝達装置のスペースが大きくなる。そのため、画像形成装置を小型化できないという問題があった。
【0033】
前記実施例では、駆動側を雌ジョイント4、9とし、従動側を雄ジョイント31、32としたが、駆動側を雄ジョイントとするとともに、従動側を雌ジョイントとしてもよい。
【0034】
さらにインボリュートスプラインに関して、スラスト方向の着脱性をよくするために図6に示すようにインボリュートスプラインの歯15の端部15aを鋭角にしたり、1歯をスラスト方向に延長したりして互いに案内し易い形状にしてもよい。
【0035】
また、ジョイントが嵌合していない状態で、第1の回転伝達系としての感光体系に関する雌ジョイント4と雄ジョイント31の距離を、第2の回転伝達系としての現像ローラ系に関する雌ジョイント9と雄ジョイント32の距離よりも小さく構成することで、感光体系のインボリュートジョイントを先に嵌合させ、現像系を感光体系に倣わせて案内すると、装置本体に対して作像装置をさらに容易に装着することが可能となる。例えば感光体系に関する雌ジョイント4と雄ジョイント31が噛み合ったとき、現像ローラ系に関する雌ジョイント9と雄ジョイント32が噛み合うまでの距離を2mm〜5mm程度に設定するのが望ましい。
【0036】
モータ1から口径の大きなギヤを1段介すのみの構成でインボリュートスプラインジョイント3を駆動することで部品構成を単純にし、かつ伝達損失を最小限に留めることができる。他方で、画像形成装置に使用するモータ仕様の実情や、部品レイアウトの自由度の観点からは第2の回転体駆動系のようにモータと歯付ベルトプーリを用いた減速列を構成することも有用である。
【0037】
なお、本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。本発明に係る画像形成装置は、電子写真複写機、レーザービームプリンタ、ファクシミリ装置等がある。
【符号の説明】
【0038】
20 インボリュートスプラインジョイント
100 ジョイント駆動伝達部材
11 減速装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0039】
【特許文献1】特開2000−276030号公報
【特許文献2】特開2000−75765号公報
【特許文献3】特開2009−69556号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被駆動回転体への駆動伝達にインボリュートスプラインジョイントを用いる回転伝達系を複数個備え、減速装置とインボリュートスプラインジョイントの雌ジョイント又は雄ジョイントとを一体化したジョイント駆動伝達部材を有する駆動伝達装置であって、
少なくとも1つのジョイント駆動伝達部材は、減速装置とインボリュートスプラインジョイントとが径方向に対応するように重ね合わせ状に形成されていることを特徴とする駆動伝達装置。
【請求項2】
前記減速装置は、ギヤ、歯付プーリ、あるいは摩擦駆動手段の中から選択されることを特徴とする請求項1に記載の駆動伝達装置。
【請求項3】
一のジョイント駆動伝達部材は、他のジョイント駆動伝達部材の減速装置と重なり合う部位に配置されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の動伝達装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の駆動伝達装置を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
前記請求項4に記載の画像形成装置に使用されることを特徴とするプロセスカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−53150(P2012−53150A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−193872(P2010−193872)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】