説明

駆動制御回路

【課題】部品点数を増加することなく簡単な構成で配線インダクタンスに起因した誤動作を防止することができる駆動制御回路を提供する。
【解決手段】電圧変換部16のグランドラインREがドライブ回路14のグランドラインDEに接続されると共にドライブ回路14のグランドラインDEがパワー素子3のグランド端子PEに接続され、内部電源発生部15のグランドラインGND1から電気的に切り離されている。このため、パワー素子3のスイッチング動作に伴ってパワー素子3のグランド端子PEと内部電源発生部15のグランドラインGND1との間に配線インダクタンスLcに起因して電位差ΔVが発生しても、ドライブ回路14のグランドラインDEとパワー素子3のグランド端子PEとの間に電位差が発生することが抑制され、ドライブ回路14から出力された駆動信号Sdに対し、パワー素子3が誤動作を生じることなく、正常に駆動制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、駆動制御回路に係り、特に外部電源にパワー素子が接続された主回路に対してパワー素子をオン/オフ制御することにより主回路を駆動する駆動制御回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パワー素子をオン/オフ制御してモータ等の誘導性負荷を駆動する従来の駆動制御回路を図2に示す。バッテリ等からなる外部電源装置1に誘導性負荷2とパワー素子3が直列に接続されると共に誘導性負荷2に並列にダイオード4が接続され、これらにより主回路Cが構成されている。この主回路Cのパワー素子3のゲート端子PGに駆動制御回路5が接続されている。駆動制御回路5の電源回路6は外部電源装置1からの電源供給により内部電源Viとドライブ回路用電源Vdとを発生し、内部電源Viを受けた信号回路7がパワー素子3のオン/オフ動作を指令するための指令信号Scをドライブ回路8に出力する。ドライブ回路8は、ドライブ回路用電源Vdを受けて作動し、指令信号Scに基づいてパワー素子3のゲート端子PGに駆動信号Sdを出力する。ドライブ回路8からの駆動信号Sdによりパワー素子3がオンすると、外部電源装置1から主回路Cの誘導性負荷2に電力が供給されて誘導性負荷2が駆動される。
【0003】
このような外部電源装置1、誘導性負荷2、パワー素子3及び駆動制御回路5を車両等に搭載したり、所定の設置場所に設置する際には、図3に示されるように、配線ケーブルHを引き回してこれらの部品を互いに接続する必要があり、配線インダクタンスの存在を余儀なくされている。特に、主回路Cには外部電源装置1から大電流が流れるため、配線インダクタンスの影響を無視することはできない。すなわち、主回路Cに配線インダクタンスLcが寄生しているため、パワー素子3のスイッチング動作に伴って主回路Cを流れる電流Iの時間変化率dI/dtにより各配線部に電位差が発生することとなる。ここで、図2に示した従来の駆動制御回路では、電源回路6と信号回路7とドライブ回路8のグランドラインが互いに接続されて駆動制御回路5のグランドラインGND1として引き出され、配線を介して主回路CのグランドラインGND2と接続している。従って、配線インダクタンスLcに起因した電位差が発生すると、パワー素子3のグランド端子PEと駆動制御回路5のグランドラインGND1との間、すなわちパワー素子3のグランド端子PEとドライブ回路8のグランドラインDEとの間に電位差が生じ、ドライブ回路8からパワー素子3のゲート端子PGに出力された駆動信号Sdに対してパワー素子3が誤動作を生じるおそれがある。
【0004】
このような主回路Cの配線インダクタンスLcに起因した誤動作を防止するため、例えば特許文献1には、パワー素子に駆動信号を出力するドライブ回路のグランドラインをドライブ回路に指令信号を出力する入力信号処理回路のグランドラインから電気的に絶縁させた駆動制御回路が記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開2003−189632号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ドライブ回路のグランドラインと入力信号処理回路のグランドラインとを電気的に絶縁させるためにフォトカプラやレベルシフト回路を使用する必要があると共に、ドライブ回路と入力信号処理回路とにそれぞれ専用の電源を設けなくてはならず、部品点数が増加して製造コストが高価になるという問題点を生じてしまう。
【0007】
この発明は、このような従来の問題点を解消するためになされたもので、部品点数を増加することなく簡単な構成で配線インダクタンスに起因した誤動作を防止することができる駆動制御回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る駆動制御回路は、内部電源を発生する内部電源発生部とドライブ回路用電源を発生する電圧変換部とを有する電源回路と、内部電源により作動し且つパワー素子のオン/オフ動作を指令する指令信号を形成する信号回路と、ドライブ回路用電源により作動し且つ信号回路から出力された指令信号に基づいてパワー素子に駆動信号を出力するドライブ回路とを備え、電圧変換部のグランドラインを内部電源発生部のグランドラインから切り離してドライブ回路のグランドラインに接続すると共にドライブ回路のグランドラインをパワー素子のグランド端子に接続し、内部電源発生部のグランドラインを主回路のグランドラインに接続するものである。
【0009】
なお、電圧変換部とドライブ回路との間にドライブ回路への電源供給を行うコンデンサを接続することが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、部品点数を増加することなく簡単な構成で配線インダクタンスに起因した誤動作を防止することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1に実施の形態に係る駆動制御回路の構成を示す。外部電源装置1に誘導性負荷2とパワー素子3が直列に接続されると共に誘導性負荷2に並列にダイオード4が接続され、これらにより主回路Cが構成されている。この主回路Cのパワー素子3のゲート端子PGに駆動制御回路11が接続されている。
【0012】
駆動制御回路11は、外部電源装置1に接続された電源回路12と、電源回路12に接続された信号回路13及びドライブ回路14を備えている。電源回路12は、外部電源装置1の正極端子と負極端子との間に接続されて内部電源Viを発生する内部電源発生部15と、内部電源発生部15で発生された内部電源Viを電圧変換してドライブ回路用電源Vdを発生する電圧変換部16とを有している。信号回路13は、内部電源Viを受けて作動し、パワー素子3のオン/オフ動作を指令するための指令信号Scを出力するものである。ドライブ回路14は、ドライブ回路用電源Vdを受けて作動し、信号回路13から出力された指令信号Scに基づいてパワー素子3のゲート端子PGに駆動信号Sdを出力することによりパワー素子3をオン/オフ制御する。
【0013】
ここで、電源回路12の電圧変換部16のグランドラインREがドライブ回路14のグランドラインDEに接続されると共にドライブ回路14のグランドラインDEがパワー素子3のグランド端子PEに接続されている。さらに、電源回路12の内部電源発生部15のグランドラインGND1が主回路CのグランドラインGND2に接続されている。このように、この実施の形態に係る駆動制御回路11においては、電源回路12の内部電源発生部15のグランドラインGND1と電圧変換部16のグランドラインREとが互いに電気的に切り離され、電圧変換部16のグランドラインREがドライブ回路14のグランドラインDEを介してパワー素子3のグランド端子PEに接続されている。
【0014】
次に、この実施の形態に係る駆動制御回路の動作について説明する。まず、外部電源装置1からの電源供給を受けた電源回路12の内部電源発生部15により内部電源Viが形成されて信号回路13に供給されると共に、電圧変換部16により内部電源Viからドライブ回路用電源Vdが形成されてドライブ回路14に供給される。信号回路13がパワー素子3のオン/オフ動作を指令するための指令信号Scをドライブ回路14に出力すると、ドライブ回路14は、信号回路13からの指令信号Scに基づいてパワー素子3のゲート端子PGに駆動信号Sdを出力する。この駆動信号Sdによりパワー素子3がオンすると、外部電源装置1から主回路Cに電流Iが流れ、誘導性負荷2が駆動される。
【0015】
このとき、主回路Cに配線インダクタンスLcが寄生しているため、パワー素子3のスイッチング動作に伴って主回路Cを流れる電流Iの時間変化率dI/dtによりパワー素子3のグランド端子PEと電源回路12の内部電源発生部15のグランドラインGND1との間に電位差ΔVが発生する。ところが、電圧変換部16のグランドラインREとドライブ回路14のグランドラインDEは、内部電源発生部15のグランドラインGND1から電気的に切り離されているので、パワー素子3のグランド端子PEと電源回路12の内部電源発生部15のグランドラインGND1との間に発生した電位差ΔVの影響を直接受けることはなく、ドライブ回路14のグランドラインDEとパワー素子3のグランド端子PEとの間に電位差が発生することが抑制される。このため、ドライブ回路14から出力された駆動信号Sdに対し、パワー素子3は誤動作を生じることなく、正常に駆動制御される。
【0016】
このように、この実施の形態では、部品点数を増加することなく簡単な構成でありながら配線インダクタンスLcに起因したパワー素子3の誤動作を防止することが可能となる。
【0017】
ここで、上述したように、パワー素子3のグランド端子PEと電源回路12の内部電源発生部15のグランドラインGND1との間に電位差ΔVが発生しているため、この電位差ΔVを電源回路12の内部電源発生部15と電圧変換部16との間で負担することとなる。すなわち、内部電源発生部15から電圧変換部16へ入力される電圧は、内部電源発生部15内で形成された電圧(内部電源Vi)に上記の電位差ΔVを加えたものとなる。従って、この電位差ΔVの加算分を考慮した上で電圧変換部16の耐圧設計を行う必要がある。
【0018】
なお、図1に示されるように、電源回路12の電圧変換部16とドライブ回路14との間にコンデンサ17を接続すれば、パワー素子3のグランド端子PEと電源回路12の内部電源発生部15のグランドラインGND1との間に電位差ΔVが発生して内部電源発生部15と電圧変換部16との間で負担するときに、コンデンサ17からドライブ回路14へ電源供給を行うことができる。従って、ドライブ回路14への電源供給が安定し、さらに信頼性に優れたパワー素子3の駆動制御が可能となる。ただし、電位差ΔVが発生する間のドライブ回路14への電源供給を行うために、コンデンサ17の容量を十分に確保する必要がある。
【0019】
なお、パワー素子3としては、MOSFETやIGBT等を用いることができる。特に、電圧駆動型のパワー素子は、グランド電位の変動によって誤動作を引き起こしやすいため、この発明の適用が有効となる。
電源回路12の電圧変換部16としては、レギュレータ、ステップダウン回路等を使用することができる。
この発明は、DC制御、AC制御に関わらずに適用することができる。また、誘導性負荷2が単相であっても、三相であってもこの発明を適用することができ、誘導性の負荷でなくても駆動制御回路と主回路のグランドライン間に電位差が発生するような場合に広く適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明の実施の形態に係る駆動制御回路の構成を示すブロック図である。
【図2】従来の駆動制御回路の構成を示すブロック図である。
【図3】駆動制御回路を設置する際の配線ケーブルの取り回しの状態を模式的に示す斜視図である。
【符号の説明】
【0021】
1 外部電源装置、2 誘導性負荷、3 パワー素子、4 ダイオード、11 駆動制御回路、12 電源回路、13 信号回路、14 ドライブ回路、15 内部電源発生部、16 電圧変換部、17 コンデンサ、C 主回路、Vi 内部電源、Vd ドライブ回路用電源、PE パワー素子のグランド端子、DE ドライブ回路のグランドライン、RE 電圧変換部のグランドライン、GND1 内部電源発生部のグランドライン、GND2 主回路のグランドライン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部電源にパワー素子が接続された主回路に対してパワー素子をオン/オフ制御することにより主回路を駆動する駆動制御回路において、
内部電源を発生する内部電源発生部とドライブ回路用電源を発生する電圧変換部とを有する電源回路と、
内部電源により作動し且つパワー素子のオン/オフ動作を指令する指令信号を形成する信号回路と、
ドライブ回路用電源により作動し且つ前記信号回路から出力された指令信号に基づいてパワー素子に駆動信号を出力するドライブ回路と
を備え、前記電圧変換部のグランドラインを前記内部電源発生部のグランドラインから切り離して前記ドライブ回路のグランドラインに接続すると共に前記ドライブ回路のグランドラインをパワー素子のグランド端子に接続し、
前記内部電源発生部のグランドラインを主回路のグランドラインに接続することを特徴とする駆動制御回路。
【請求項2】
前記電圧変換部と前記ドライブ回路との間に前記ドライブ回路への電源供給を行うコンデンサが接続されている請求項1に記載の駆動制御回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−151370(P2007−151370A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−346238(P2005−346238)
【出願日】平成17年11月30日(2005.11.30)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】