説明

駆動回路および液晶表示装置

【課題】液晶表示装置のバックライトの調光を行うことにより、動画特性の向上、あるいは、視線追従時のボヤケ領域の平滑性を実現する。
【解決手段】バックライトの点灯、消灯を制御する駆動回路であって、Nを2以上の整数とするとき、連続するN個のフレーム期間で巡回するバックライト点灯期間の周期パタンを生成する周期パタン生成手段と、前記バックライト点灯期間内の点灯パルスの個数を設定するパルス個数設定手段と、前記設定されたバックライト点灯期間と点灯パルス個数に基づいて点灯パルス群を生成出力する点灯パルス群生成手段とを備える。巡回のフレーム周期が2のとき、前記バックライト点灯期間の周期パタンは、第一のフレーム期間の点灯期間および消灯期間と、第二のフレーム期間の点灯期間および消灯期間が反転の関係にある。前記バックライト点灯期間の周期パタンは、N個のフレーム期間の累積として点灯期間が連続する関係にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動回路および液晶表示装置に係り、特に、動画特性を向上させる際に有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置の画質特性の一つに動画の再現特性がある。動画の再現特性とは、動きの早い映像信号を表示したときの表示画面における動きの見え方を意味する。液晶表示装置の動画特性は、液晶材料の応答特性の影響を受けることは言うまでもないが、それ以外に、フラットパネル特有の要因があるとされている。
下記非特許文献1(shimodaira)は、液晶表示装置の動画特性を劣化させる要因を整理すると共に、従来から提案されている改善方式を示している。このなかで、動画表示における画質劣化要因として、ホールド型表示と視線追従について解説している。例えば、映画のようにフレームあたり2回点灯した場合には、視線追従により観察される画像には段差が見えて、画質劣化となることが示されている。
下記特許文献1(栗田)は、液晶表示装置の動画特性が劣っている理由として、前述のホールド型表示を挙げている。そしてバックライトをフレーム周期と同期させながらデューティー比50%で点滅することで、常時点灯の場合に比べて表示の周波数特性を高域まで伸して、動画特性が改善できるとしている。
一方、下記特許文献2は、バックライト調光するときのフリッカの改善方法を示している。パネルの表示駆動周波数( フレーム周波数)Fに対して、PWM調光の調光周波数fがf=m*F/n(nは2より大の整数、m>n、且つm≠2n) の関係を持つようにすることが示されている。そして、蛍光灯を光源とする場合の実施の回路構成と動作タイミングを開示している。
【0003】
なお、本願発明に関連する先行技術文献としては以下のものがある。
【非特許文献1】Yoshifumi Shimodaira 、「Invited Paper: Fundamental Phenomena Underlying Artifacts Induced by Image Motion and the Solutions for Decreasing the Artifacts on FPDs」、SID2003、pp.1034−1037
【特許文献1】特開平9−325715号公報
【特許文献2】特許3027298号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
動画表示の主な画質要因として、下記の2つがある。
(1)液晶応答の時間的な周波数成分が高域まで伸びること
(2)視線追従時の濃淡ボヤケの幅が狭く、濃淡の変化が滑らかであること
ここで、(1)は、前記ホールド型表示による画質劣化の原理を周波数成分で表すことである。
視線追従時の(2)の動画ボヤケは、前記(1)の液晶の時間応答が、視線追従により、画面の2次元方向に座標変換されることで説明される現象である。また、(2)の視線追従時の濃淡変化の滑らかさは、非特許文献1で説明されている画質劣化であり、バックライト点滅時に発生する劣化要因である。
前記の(1)、(2)の観点から、従来技術の課題を示す。
前述の特許文献1は、周波数特性の改善に着目して、バックライトの点滅を行う方法である。フレーム周期Tfの中に、バックライトの点灯期間と消灯期間を設けて、出力信号の周波数特性を改善するとしている。しかし、従来から知られているDA変換器のアパーチャ効果として知られている技術を、ディスプレイ動作に適用しているに過ぎない。
液晶表示装置は、映像信号に基づく表示信号を画面内の画素に順次に書き込み、各画素は書き込まれた表示信号に基づいて液晶素子を駆動する。画素の表示タイミングとバックライト点滅タイミングが均一になるように、バックライトを駆動することが望ましい。しかし、画素書き込みには時間が掛かるので、画面内の画素の位置により表示タイミングにずれが生じる。
バックライトを点滅点灯させる場合には、画素の表示タイミングとバックライト点滅タイミングの時間的な関係が画面内で不均一になる。この結果、例えば、画面内で明るさが不均一になったり、動画の動きが正しく表示できないことがある。アパーチャ効果を期待してバックライト点滅を行うだけでは、上記のタイミングずれの問題が生じることになり、画面全体の画質向上は期待できないことになる。また、視線追従時の画質については言及が無い。
【0005】
前述の特許文献2は、目的は異なるが、前述の特許文献1と同じくバックライトの点滅を行う手法を提案している。
光源に蛍光灯を使うことを前提として、PWM(パルス幅変調)による明るさの調整を行いながらフリッカを無くすことを目的にして、表示駆動周波数(フレーム周波数)Fに対して、点滅の最小単位とするパルスの駆動周波数fがf=m×F/n (nは2より大の整数、m>n、且つ、m≠2n)としている。
そして駆動周波数を管理するために、表示パネルの垂直あるいは水平同期信号を取り込んで同期制御することを特徴としている。
ここで実際に蛍光灯を点滅させるのは、インバータの発振信号である。しかし、前記したパルスの駆動周波数fは、インバータのON、OFFを制御する信号であって、実際に蛍光灯を点滅させるインバータの発振信号については管理していない。
インバータとは、低電圧の直流電力を高電圧で高周波(10K〜100KHz)の交流電力に変換して、蛍光灯の印加電圧とする変換装置である。蛍光灯は、このインバータの発振信号を放電エネルギーとして発光する。
しかし同文献が自ら指摘しているように、インバータ発振による蛍光灯の点灯の立上がり及び消灯の立下りの時間応答は遅く、また発光出力の波形は歪が大きい。このように、光源発光の最小単位である単一の発光パルスを制御する手段を備えていないことから、設定する点滅期間と、実際の蛍光灯の発光期間には大きな相違が生じる。
【0006】
前述の特許文献2によれば、例えば、2画面表示期間に3回または5回の点滅を行うように点滅周期を設定した場合、隣接するフレーム間で点滅期間を重ねて見れば、隙間なく点灯することになり、表示画面内の輝度の変化幅が小さくなり、フリッカを効果的に防止できる、としている。
しかし実際には、前記したように、蛍光灯の点灯の立上がり及び消灯の立下りの時間を精度良く制御できる方法ではないため、隣接するフレーム間で光源の点灯期間を重ねると隙間が生じることになる。
さらに、前述の特許文献2は、PWM方式を用いたバックライト調光を行うので、発光を暗くするほど点灯期間を短縮することから、結局は、隣接するフレーム間で光源の点灯期間を重ねると隙間が生じることになる。
本発明は、前記従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、液晶表示装置のバックライトの調光を行うことにより、動画特性の向上、あるいは、視線追従時のボヤケ領域の平滑性を実現することが可能となる技術を提供することにある。
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面によって明らかにする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、下記の通りである。
前述の課題解決のため、本発明では、隣接するフレーム間でバックライトの点灯期間を重ねたときに隙間が生じないように、バックライト点灯期間を設定する手段を備える。そして、バックライト点灯期間内に、複数個の点灯パルスを散在させるように配置する手段を備えることで、点灯期間内の明るさに偏りのないようにする。
また、ある点灯期間に設定した点灯パルスの誤差をその次の点灯期間に伝播する手段を備えることで、精度の高い点灯パルスの生成を行う。さらに、上記の精度の高い制御を実現するため、バックライトは、LED、あるいはLEDと蛍光体の組み合わせ、あるいはOLEDで構成される。
【発明の効果】
【0008】
本願において開示される発明のうち代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば、下記の通りである。
本発明によれば、液晶表示装置のバックライトの調光を行うことにより、動画特性の向上、あるいは、視線追従時のボヤケ領域の平滑性を実現することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施例を詳細に説明する。
なお、実施例を説明するための全図において、同一機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。
図17は、液晶表示装置の基本的な構成を示す図である。液晶表示装置は、基本的に液晶表示パネル101とバックライト100の組み合わせで構成される。ここで、液晶表示パネル101は、透過率を制御する微小面積の画素を平面内に多数配置して、個々の画素の透過率を制御することで画面を形成する。画素は、R(赤)、G(緑)、B(青)のカラーフィルタを備えることで、カラー画像の表示を行うことができる。
本実施例のバックライト100は、発光ダイオード(LED)、あるいはLEDと蛍光体の組み合わせ(例えば、青色励起白色発光ダイオード等)、あるいは有機発光ダイオード(OLED,Organic Light Emitting Diode)などの発光手段を用いて、液晶表示パネル101の全体を照明するように発光する。
バックライト100の発光の均一性を高めるために必要に応じて拡散板(KB)などを、バックライト100と液晶表示パネル101の中間に配置する。
こうして、バックライト100から発光する光は、前述した液晶表示パネル101に配置された画素を経由して前面に出力して、それを観察することで画面が形成される。例えば、テレビの映像信号を入力して画面表示するには、映像信号を液晶表示パネル101に書き込んで画素ごとの透過率を制御する動作を、画面毎に高速に繰り返すことで、動きのある表示を実現する。
このときバックライト100は、常時点灯するように駆動することができるほか、何らかのタイミングに基づいて点滅するように駆動することができる。表示される画面の性質を、ある画素の輝度の時間的な変化で計るならば、液晶表示パネル101の透過率の時間的な変化と、バックライト100の輝度の時間的な変化の組み合わせによって輝度変化の周波数特性が決まることになる。
このようにバックライト100の駆動方式が、表示画面の画質に影響を与えることになる。
【0010】
一般に、液晶表示装置では、フレーム周期毎に新たな映像信号を入力して、その信号内容に基づいて液晶表示パネル101への書き込みを行い、パネル表示を行う。映像信号および液晶表示パネル101の走査方法には、順次、飛び越し、等の種類があるが、本発明はそれらに依存しないので以下では区別しない。また画面構成を現す用語として、フィールド、フレーム、画面、等があるが、本発明はそれらに依存しないので以下では区別しない。
このような液晶表示パネル101の動作は、フレーム周期をサンプリングレートとして、デジタル入力信号をアナログ出力信号に変換するDA変換器に見たてることができる。液晶の応答速度が充分に速い場合は、入力信号の変化に即座に追従するためステップ型の出力となる。このようなステップ応答は、入力信号をフレーム周期でサンプリングして、0次補間(フレーム周期間隔を定数で結ぶ)した信号とみることができる。
しかし、現実の液晶は遅れを持ち、この応答特性は、フレーム周期ごとの指数関数を用いた近似関数(1−EXP(−t))で近似される。
ところで、補間精度を高める方法として、補間の周期を短縮する、あるいはサンプリングレートを高くする、あるいはフレーム周波数を高くすることが知られている。
フレーム周波数を高くすることは、液晶の駆動の周期が短くなり、整定を待たずに次の駆動がされるようになる。離散的な駆動でありながら、出力は連続的な動作(連続モデル)に近づくことになる。
このようにフレーム周波数を高くすることは、補間の精度を高める効果がある。本発明では触れないが、具体的にはフレーム補間技術、倍速駆動技術などとして知られている技術を利用して入力する映像信号を高いフレーム周波数に変換することで、液晶表示パネル101の駆動周波数を高めることができる。
この結果として、液晶表示パネル101の応答特性は、よりアナログ的な応答に近づくことになる。
【0011】
従来技術で説明されている液晶表示パネル101の「ホールド特性」とは、前述の0次補間された出力を指している。つまり液晶応答が十分に速いことを前提にしている。
ところで、DA変換器の周波数特性の解析において、出力信号経路にON、OFFを切り替えるシャッタを入れることにより高周波成分の再現特性が高まるアパーチャ効果が知られている。液晶表示パネル101をDA変換器と見れば、液晶表示パネル101のバックライト100を点滅させることは、DA変換器のアパーチャ効果と類似している。これより、液晶表示パネル101の応答速度を高めるには、バックライト100を常時点灯ではなく点滅させることが効果があると言える。
ところで、液晶表示装置は、映像信号に基づく表示信号を画面内の画素に順次に書き込み、各画素は書き込まれた表示信号に基づいて液晶素子を駆動する。画素の表示タイミングとバックライト点滅タイミングが均一になるように、バックライト100を駆動することが望ましい。
しかし、画素書き込みには時間が掛かるので、画面内の画素の位置により表示タイミングにずれが生じる。バックライト100を点滅、点灯させる場合には、画素の表示タイミングとバックライト点滅タイミングの時間的な関係が画面内で不均一になる。
この結果、例えば、画面内で明るさが不均一になったり、動画の動きが正しく表示できないことがある。
アパーチャ効果を期待してバックライト点滅を行うだけでは、上記のタイミングずれの問題が生じることになり、画質向上は期待できないことになる。
【0012】
図1に、本発明の実施例の画面表示とバックライト点灯の動作の関連を示す。図中の左側に示す画面は、時間軸に沿って、#1、#2・・・の順番に切り替わるものとする。バックライト100は液晶画面の全体を一括して照射する構造とする。このときバックライト点灯の動作タイミングは、時間軸に沿った1次元信号で表わされる。
図1中の右側に、バックライト点灯の信号波形を、フレーム内の時間軸とフレーム切り替えの時間軸の2次元座標に変換して示している。この座標変換により、フレーム期間内のバックライト点灯の波形と共に、複数回のフレーム期間の累積によるバックライト点灯の波形を見ることができる。
視線追従するときは、画素の時間応答が、画面平面内の濃淡として座標変換されて観察される。さらに視線追従するとき、移動物体に同期して視線を滑らかに移動しながら観察を続けるので、複数フレーム期間の画素の時間応答が重なって観察される。
ここで、画素表示の時間応答は、フレーム期間内のバックライト点灯と、液晶表示パネルの時間応答を掛けて得られる。視線追従して複数フレームを重ねて観察したときに、バックライト100点滅に時間的な偏りがあれば、平面方向の濃淡のムラとして見えることになる。
本実施例では、複数フレームの累積において点灯期間が隙間なく重なるようにバックライト100を点滅することで、常時点灯と同じような滑らかな時間応答(つまり画面平面内の応答)として観察される。こうしてバックライト点滅により段差が観察されるという画質劣化を回避する。
本実施例において、明るさの調整に関わらず点灯期間の波形を維持する目的は、このように複数フレームの累積において点灯期間を隙間なく重ねることで、結果として視線追従時の画質劣化を防ぐ狙いがある。
一方で、単独の画素の時間応答としては、バックライトの点滅による高周波成分の再現特性を高める効果(アパーチャ効果)があるのは言うまでもない。こうして本発明は、動画表示の再現特性を高めるとともに、視線追従時の画質劣化を抑える効果を両立させることが出来る。
【0013】
ところで蛍光灯を用いても、インバータ発振によるパルス的な点灯と、インバータのON、OFFによるバックライト点滅は可能である。しかし、現実にはインバータの発振周波数の制御は困難であるので、点灯パルスの個数とパルス幅を設定することは出来ない。
またインバータ出力は方形波ではなく、また蛍光灯の発光には時間遅れがあるので、発光出力の波形は歪んだ形となる。またインバータのON、OFFの応答速度は遅いので、点灯期間の立ち上がりと立下りを精度良く管理することは出来ない。明るさを可変にするには、上記ON、OFFによる点灯期間を制御することになるが、前述の理由で精度の高い明るさを設定するのは困難である。さらに結局は、明るさ調整のため点灯期間を変えるので、複数フレーム間の累積としては点灯期間に不均一な隙間が生じることになり、本実施例の狙いとする視線追従時の画質劣化の防止を実現することはできない。
これに対して、本実施例では、高速な時間応答特性を持つLED、あるいはLEDと蛍光体の組み合わせ、あるいはOLEDと高速な駆動回路を組み合わせることで、発光出力の精度の高い制御を行う。そして、動画表示の再現特性を高めるとともに、視線追従時の画質劣化を抑える効果を両立させることが出来る。
【0014】
図2を用いて、液晶表示装置の画質劣化の一つである、視線追従時の動画ボヤケを説明する。原理については、前述の非特許文献1に記載があるので、ここでは数値例を用いて説明する。
ここでは、黒背景(数値0)の画面に、白領域(数値10)が移動しているときの、黒白エッジ領域のボヤケの見え方を説明する。水平方向が画素の並びであり、垂直方向が1フレーム期間の時間経過であり、各画素位置の数字は表示出力を示している。
そして白領域が水平方向に1フレーム周期あたり10画素の距離を移動する。左10画素は既に白領域であり、信号変化済みである。中央10画素は、白領域に入ったばかりで、1フレーム期間内に白(10)まで変化する(ここでは0から10まで直線的な変化としている)。右10画素は、まだ黒のままである。
これより画面正面からは、中央領域の10画素が、フレーム期間において黒(0)から白(10)に変化するのを見ることになる。これは図中の垂直方向の矢印に沿う画素の変化である。
次に視線追従の条件を加える。視線は、白領域(黒白エッジ)の移動に同期して水平方向に移動する。画面上は10画素単位に離散的に移動して表示されるが、追従する視線の移動は滑らかで連続的になるとする。そして視線を滑らかに移動しながら、視線中心の周辺の画素領域を見ながら、白黒の変化を感じることになる。こうして視線追従することで、画素の時間軸方向の応答が、画面の平面方向の濃淡として観察されることになる。これは図中の斜め方向の矢印に沿う画素の変化である。
次にバックライト点滅の条件を加える。前記した矢印に沿う画素をすべて観察できるのは、常時点灯の場合である。バックライト100を1フレーム期間内に点灯と消灯を行うならば、点灯期間に該当する画素のみが視覚に感じられることになる。こうして、画素とバックライト100を掛け合わせた時間応答が、視線追従することで、画素応答が画面の平面方向の濃淡として感じることになる。
【0015】
図3は、前述の条件を数値シミュレーションして得られる、視線追従時の黒白エッジ周辺に観察される濃淡変化を示すグラフである。横軸は画素の並び、縦軸は観察される明るさであり、それぞれは前期数値例と対応している。
観察される明るさは、前記数値例の斜め方向の矢印に沿って、画素の表示出力の累積を算出している。ここで、バックライトの点灯条件は、下記の通りとする。
(1)フレーム期間内において常時点灯(図中●印)
(2)フレーム期間内において後半点灯(図中■印)
(3)フレーム期間内において点滅点灯(図中▲印)
図3のグラフから明らかなように、バックライト100が常時点灯であるときには連続的な滑らかな濃淡変化であるのに対して、バックライト100が時間的に偏って点灯(フレーム期間の後半点灯)するときには不連続な段差が生じる。
これは、バックライト点灯と消灯期間が、画素の時間応答(前述の例では黒(0)から白(10)までの変化)をON、OFFすることによる。バックライト点灯期間がフレーム周期の前半、中央、後半、のいずれの場合にも、不連続な段差は避けられない。
一方、バックライト100を点滅させる場合には、若干の段差が残るものの、ほぼ常時点灯と同じ濃淡変化となる。このようにバックライト100を点滅させて時間的な偏りを無くすことは、視線追従時のボヤケ領域の画質劣化を防ぐ効果があることが分かる。
本実施例では、前述したバックライト点灯を制御することで以下の特徴を実現する。
(1)動画特性の向上(表示画面の周波数成分を高域に伸ばす)
(2)バックライト調光(光源のパルス駆動)を行う
(3)視線追従時のボヤケ領域の平滑性を実現する
【0016】
図4に、本実施例のバックライト点灯期間の構成例を示す。
本実施例では、複数フレームの累積において、バックライト点灯期間が連続することを特徴とする。図4には条件を満たす例として、(1)、(2)、(3)の3種類の方形波を示している。
(1)は1フレーム周期を2分割した点灯期間と消灯期間を備え、隣接するフレームで両者を反転して配置する。
(2)は1フレーム周期を3分割した点灯期間と消灯期間を備え、隣接するフレームで両者を反転して配置する。
(3)は1フレーム周期を5分割した点灯期間と消灯期間を備え、隣接するフレームで両者を反転して配置する。
前述の条件をまとめれば、あるフレーム期間に設定した点灯期間を、その次のフレーム期間で反転していることになる。言い換えれば、N個のフレーム期間を組み合わせたときの累積として隙間が無く連続するように点灯と消灯の周期パタンを形成して、フレーム数の進行に伴い周期パタンを巡回して利用することになる。
ここでは、二つの(N=2)フレーム期間の例を示したが、三つ以上(N≧3)の複数のフレーム期間でも成り立つ。本実施例は、上記と同様の条件を満たすならば図示した以外の波形を利用できる。
なお、図4にある点灯期間(4)は比較のために示す従来方式(特許文献1)の構成であるが、複数フレームを累積してもバックライト点灯期間は不連続となることから、本実施例と同じ効果は得られないことは明らかである。また、図示していないが、バックライト点灯期間を可変設定するような構成であれば、累積結果に隙間が生じることになり、本実施例と同じ効果は得られないことは明らかである。
【0017】
本実施例では、点灯期間の波形を維持しながら、点灯期間の内部に、明るさ設定に基づいて生成する点灯パルスを分散して配置する。もちろん何らかの制御信号で、点灯期間の周期パタンを、例えば(1)から(2)、(2)から(3)へ変更する等を随時に行うことができるが、点灯期間の波形自体をPWM変調等による制御対象とするものではない。
図中では、分かりやすさのため、バックライト点灯期間とフレーム周期のスタート位置を同期させて図示している。
しかし、本実施例は、バックライト点灯期間とフレーム周期のスタート位置を同期させることを必須とするものではない。そもそも液晶表示パネル101の画素への表示信号の書き込みタイミンングは画面位置によってずれることから、特定位置にある画素において位相を合わせ込んでも、ほかの位置にある画素では位相がずれる。
したがって図中に示した従来技術による波形(4)のようにバックライト点灯期間とフレーム周期の位相を固定すると、画面位置に依存して画素表示の条件が固定されて、明るい画面領域、暗い画面領域が現れて画質劣化となる。
本実施例では、このような画面位置に依存する位相ずれによる画質劣化を解消するために、隣接するフレーム周期において、バックライト点灯期間と消灯期間を反転することで、画素表示の条件を平均化することを特徴とする。また前述したように、このようなバックライト100の点滅は視線追従時の画質改善にも効果がある。
一般にフレーム期間は、30フレーム/秒から240フレーム/秒程度に設定して利用されている。例えば、点灯期間を1フレームの半分とすれば、約2msから16ms程度の時間になる。この点灯期間の内部に配置する点灯パルスの個数、幅などを調整することで、明るさを可変とする。したがって点灯パルスは比較的に高周波成分となり、点灯パルス自体が視覚的なちらつきの要因になるものではない。したがって、点灯パルスの配置には比較的に自由度があって、点灯パルスの生成方法を特定の方式に限定しなくて良い。次に、点灯期間内の点灯パルスの構成例を示す。
【0018】
図5に、本実施例の点灯期間内に配置する点灯パルスの構成例を示す。横軸は時間軸で、縦軸は信号振幅を示す。時間軸上に点灯パルスと点灯期間を示している。
点灯パルスは、バックライト点灯の最小単位であり、パルス幅とパルス間隔を制御対象として可変設定できる。パルスの信号振幅を可変とすることもできるが、ここでは簡単のため信号振幅は0と1の2値レベルとする。
点灯期間の内部には、複数個の点灯パルスを配置する。点灯期間内の点灯パルスの組み合わせを、点灯パルス群と呼ぶことにする。点灯期間でない時間は、必然的に(図示していない)消灯期間となる。こうしてバックライト点灯は、点灯期間の周波数成分と、点灯パルスの周波数成分の二つの性質を備えることになる。
最大の明るさ設定のときに、点灯期間に隙間なく点灯パルスを配置するならば、周波数成分は点灯期間の周期のみに依存する。最低の明るさ設定のときに、点灯期間に1個のみ点灯パルスを配置すれば、周波数成分は点灯期間の周期のみに依存する。
上記の中間的な条件のときに、 点灯パルスの周波数成分が現れるようになるが、点灯期間に比べて高い周波数成分であるので、視覚的には感知されない。つまり点灯パルスは、明るさ調整の手段として利用するものであり、画質への影響は少ない。
一方、点灯期間は、フレーム周期と周波数成分が近いので画質への影響があり、例えば、前記したアパーチャ効果による動画再生特性を向上させる効果がある。本発明は、点灯期間と点灯パルスが備える、それぞれ異なる役割と性質を制御することを特徴とする。
【0019】
本実施例は、点灯期間の波形を維持したまま、点灯期間内の点灯パルスの条件を可変制御することで、明るさ調整を実現する。
図5では、点灯期間内の点灯パルスの制御方法として、パルス幅変調(PWM)とパルス周波数変調(PFM)を示している。パルス幅変調は、点灯期間内部に複数の点灯パルスを配置して、それぞれのパルスの時間幅を制御する。明るさが最小設定であればパルス幅は狭く、最大設定であれば全てのパルスが隙間なく連続するように、パルス幅を制御する。ここで配置するパルス個数は固定でも可変でも良い。
パルス周波数変調は、点灯期間内部に配置する点灯パルスの個数を可変制御する。明るさが最小設定であればパルス個数は少なく、最大設定であれば全てのパルスが隙間なく連続するように、パルス個数を制御する。それぞれのパルス幅は固定で可変でも良い。
点灯パルスの生成方式において、PWM方式ではパルス個数を可変設定することでPFMの特徴を併せ持つことができる。PFM方式ではパルス幅を可変設定することでPWMの特徴を併せ持つことができる。両者の方式の特徴をあわせ持つ制御方式とすることで、制御の自由度が増す効果がある。また何らかの方法で、点灯期間に点灯パルスをランダムに配置しても良い。さらに自由度を高める方法として、パルスの信号振幅を制御対象とすることもできるのは言うまでも無い。
【0020】
図6に、本実施例の特徴とする点灯パルス生成回路の基本構成例を示す。
バックライト100の明るさを指示するバックライト光量設定値112を入力として、点灯パルス条件設定手段124は、バックライト点灯期間内部に配置する点灯パルスの生成条件を示す点灯パルス条件信号114を算出する。その結果を受けて、点灯パルス群生成出力手段125は、複数個の点灯パルスから構成される点灯パルス群信号115を生成して出力する。
バックライト点灯期間は、バックライト消灯期間を挟んで繰り返すように配置する。明るさの設定値は点灯パルス生成条件に反映して、点灯期間を可変とすることは無い。もしバックライト点灯期間内部の点灯パルスを1個として、明るさの設定値によりパルス幅を可変設定するならば、これは従来のPWM方式と同じ動作になる。
本実施例では、明るさの設定値によりパルス個数を可変設定する。あるいは複数の点灯パルスを配置して、明るさの設定値によりパルス幅を可変設定する。こうしてバックライト点灯期間内部に出来るだけパルスを均等に配置させる。
従来のPWM方式は点灯期間と消灯期間の比率を変えるのに対して、本発明はバックライト点灯期間と消灯期間の比率を一定に保つことを特徴とする。そしてバックライト点灯期間内部の点灯パルスの個数と幅を変えることで、明るさを調整する。明るさを最低に設定する場合でも、実用的には最低の明るさの設定は無灯(ゼロ)ではないので、バックライト点灯期間に幅を持つ点灯パルスを配置することができる。
【0021】
液晶表示パネル101の書き込み時間を考慮するならば、画面内の画素の位置により表示タイミングは異なっている。バックライト100と液晶表示パネル101の動作タイミングの位相関係は、画面全体においては一定では無い。
したがって、本実施例では、映像信号に含まれる同期信号と、バックライト点灯を同期させることを重視しない。具体的には、同期信号分離回路で抽出した同期信号を使うことなく、独立した発振回路を利用しても成り立つ。ただし当然ながら、同期信号分離回路で抽出した同期信号を使うこともできる。
このように、本実施例の動作は、フレーム周期とバックライト点灯周期の両者の精度が高ければ、両者の位相関係を管理しなくても成り立つ。極端には、液晶表示パネル101の時間応答がアナログ(離散ではなくて連続)的であると仮定するならば、フレーム周期を考慮しなくても良いことになる。
上記理由から、本実施例のバックライト点灯動作は、映像信号の同期信号(言い換えればフレーム周期、フレーム周波数など)との定量的な関係を厳密に規定しなくても実現できる。本実施例は、このようにタイミング制御の自由度が高い特徴がある。
【0022】
図7に、本実施例において、映像信号の入力から表示を行うまでの基本構成例を示す。
映像信号110は何らかの規格に基づいて同期信号を含む信号とする。ここでは同期信号の抽出と分配の回路は図示していないが適宜に利用する。
バックライト光量設定手段123は、映像信号110および必要に応じて(図示していない)外部環境の明るさをセンサ入力して、該信号に基づいてバックライト100の発光量を設定する。例えば、映像信号110を参照して、画面内の映像信号の最大値を検出して、該最大値をバックライト光量とすることができる。
映像信号の振幅範囲が0から255であり、検出した最大値が100であるならば、バックライト光量を(100/255)とする。このとき、液晶表示パネル101に表示する最大値が、映像信号の最大値100と一致するようにするには、映像信号を(255/100)倍にして液晶表示パネル101の表示信号111を求めれば良い。
このように表示信号111は、表示信号処理手段121を用いて、バックライト光量設定値113に基づいて修正を行い算出する。上記の算出方法は一例であり、別の条件を加えることも出来る。例えば、図示していないが周囲環境の明るさをセンサ入力する手段を用意して、周囲環境が明るければ画面を明るく、逆に暗ければ画面を暗くなるように、バックライト光量を設定することもできる。
点灯パルス条件設定手段124は、バックライト光量設定値112を入力して、点灯パルスの生成条件を示す点灯パルス条件信号114を算出する。
点灯パルス群生成出力手段125は、点灯パルス生成信号114に基づいて、複数個の点灯パルスから構成される点灯パルス群信号115を生成して出力する。バックライト100は、点灯パルス群信号115を入力して発光を行う。こうして、バックライト100と液晶表示パネル101の組み合わせで表示画面を形成する。
【0023】
図8は、本実施例において、バックライト100を複数分割して、時間差を設けて駆動する場合の回路構成例である。
バックライト100は、例えば、横ストライプの領域に分割して、該当領域の液晶表示パネル101の書き込みタイミングに基づいて、バックライト100を点灯させることで、画素応答とバックライト点灯のタイミングを合わせ込むことができる。
このためには、バックライト100の光学的・機構的な構成として領域分割すると共に、バックライト点灯回路において、液晶表示パネル101の分割領域ごとの表示タイミングを検出する手段122を用意する。検出した表示タイミング信号116を用いて、該当する領域のバックライト100を点灯させる。バックライト100の分割方法は任意であり限定するものではない。
【0024】
図9は、本実施例において、映像信号に同期してバックライト100を点灯させる場合の信号の構成例を示す図である。
映像信号は、フレーム周期(あるいはフレーム期間)で繰り返して1画面のデータを伝送する。図9では、1画面が白と黒を繰り返す例を示している。
液晶表示パネル101は、映像信号に基づいて白と黒の繰り返し表示を行うが、画素ごとの液晶素子の応答速度は有限であって、即座に立ち上がりあるいは立下りするものではない。図9中では液晶応答を近似的にEXP関数を用いて示しているが、十分に応答が速ければステップ関数に近づくことになる。バックライト点灯期間は、フレーム周期に同期あるいは非同期に設定する。ここでは、わかりやすさのため同期させて図示しているが、厳密に同期させなくても目的とする効果が得られる。
最初のフレームでは、バックライト点灯期間を3個を配置して、次のフレームでは点灯と消灯を反転している。点灯と消灯の時間関係は、点灯周期と言い換えることもできる。
点灯期間は、図9の下段に示すように点灯パルスを配置して構成する。点灯パルスは、バックライト点灯期間内でバックライト100を点灯する最小単位のパルス信号を指す。点灯パルス群は、バックライト点灯期間内でバックライト100を点灯する点灯パルスの集合を指す。
本実施例は、点灯パルス期間の波形を維持して、点灯パルス期間内に配置するパルスの個数と形状を可変とすることを特徴とする。この点灯パルスの可変設定により明るさを制御する。
このようにして、本実施例では、(1)動画特性の向上(表示画面の周波数成分を高域に伸ばす)、(2)バックライト100調光(光源のパルス駆動)を行う、(3)視線追従時のボヤケ領域の平滑性を実現する、という効果を得ることができる。
【0025】
図10は、点灯パルス群生成出力手段の構成例を示す。本実施例では、点灯期間を維持しながら、設定された明るさの条件を満たすように、点灯期間内に点灯パルスを配置する。設定された明るさの条件として、点灯パルス個数と点灯パルス幅を入力する。両者を掛け算(点灯パルス個数×点灯パルス幅)した値で、点灯期間内の明るさを制御することになる。
まず点灯パルス個数設定手段303は、入力した点灯パルス個数に基づいて、点灯期間内を所定個数で分割する。この分割処理は、点灯パルス個数に基づいてパルス周波数変調(PFM)を行い、出力周波数で点灯期間を分割することで実現できる。
次に、点灯パルス生成手段304を用いて、分割した時間間隔のそれぞれに点灯パルス幅に基づくパルスを作る。このパルス生成は、入力した点灯パルス個数に基づいてパルス幅変調(PWM)を行い、出力パルスを配置することで実現できる。両者を組み合わせることで、点灯期間内の点灯パルスの集合である点灯パルス群を生成する。
点灯期間は消灯期間を挟んで繰り返して出力するが、これらのタイミングをタイミング制御手段302は点灯パルス群の出力と消灯期間の挟み込みを管理する手段であり、スイッチ手段306を用いて出力のON、OFFを切り替える。
明るさの設定が最大である場合は、点灯期間が点灯パルスで隙間なく埋まることになる。明るさの設定が低い場合は、点灯期間内に点灯パルスが散在することになる。たとえ明るさの設定が低い場合でも、点灯期間内にパルスを散在させれば点灯期間の波形を維持することができる。上記構成例が、点灯パルスの個数と幅の両者を管理するのは、点灯期間の波形を維持するためである。そして、生成した点灯パルス群を出力する。
上記は点灯パルス個数と点灯パルス幅を同時に制御する構成であるが、あるいは一方のみを利用して点灯パルス群を生成出力することができる。
【0026】
バックライト点灯期間内の点灯パルスの生成回路の別の構成例を示す。ここでは、視覚特性はローパスフィルタの特性であることを利用して、簡易かつ高精度なパルス生成を実現する。
まず、点灯パルスは高周波成分として利用するから、必ずしも周期的にパルスを配置しなくても視覚的にちらつきにならないとする。また、バックライト点灯期間は高速に周期的に繰り返すことから、単一の点灯期間において若干の誤差があっても、累積として誤差をキャンセルすれば、画質劣化にならないとする。上記に基づき、誤差伝播型の手順を示す。
図11は、PWM信号の算出手順を図式的に示している。横軸は点灯期間の繰り返しを示す軸である。この点灯期間は適宜な消灯期間と組み合わせることで周期的な点滅を行う。この周期の逆数は点灯周波数になる。縦軸はLED発光量であり、各点灯期間ごとの発光の目標値と累積値を示す。
PWM信号Pwは、PWM周波数Pfに同期して変化する2値信号であり、その最短をPWMパルスと呼ぶ。LED発光量の最小単位はPWM信号の1点灯パルス期間の発光量であり、これをLEDの特性値Wとする。図11中では、点灯期間内の複数回数のPWMパルスを(1)(2)(3)・・と番号付けをしている。
そして、PWMパルス番号とともに縦軸方向に特性値W(LED発光量)を積み上げている。ここで発光量の目標値をWtとすれば、これを実現するPWMパルス数Pwは、目標値Wtを特性値Wで割って得られる整数値である。
Pw=INT(Wt/W)
ここでINTは整数化演算であり、切り上げとする。
実際の発光量はPwとWを掛け算した値になり、目標値Wtと誤差が生じて、その大きさは、Ew=(Pw・W−Wt)になる。
本実施例では、ある点灯期間で発生する誤差Ewを、その次の点灯期間に伝播することを特徴とする。図中では、誤差伝播手順を矢印で示してある。誤差成分は伝播元で既に発光済みであり、伝播先で発光するわけではないが、その大きさを伝播先で積み上げる。伝播先の点灯期間において、伝播した誤差値を初期値として、実際のPWMパルスによる発光量を積み上げる。そして、累積値が目標値を上回れば、再び誤差伝播の手順を行う。この手順を繰り返すことで、平均的に目標値を達成することができる。上記は、目標値Wt、および特性値Wを一定として説明したが、適宜なタイミングに変更させることができることは言うまでも無い。
【0027】
図12に、点灯パルス生成の別の手順を示す。期間1を4分割して、各分割期間毎に発光の目標値を設定して、分割した目標値毎に誤差伝播による発光パルスを出力する。この例では、期間1全体の目標値は、分割時の目標値の4倍の関係になる。縦軸は、分割後の目標値と、発光量の累積値を示している。横軸は、分割した期間(ここでは一つのバックライト点灯期間を4分割)ごとの点灯パルスの生成と誤差伝播手順を示している。
点灯パルス1は、初期値0であり、4回の発光で目標値を上回るので、その上回った誤差値を次の点灯パルス2へ伝播する。点灯パルス2は、受け取った誤差値を初期値として、4回の発光で目標値を上回るので、その誤差値を次の点灯パルス3へ伝播する。点灯パルス3は、受け取った誤差値を初期値として、3回の発光で目標値と一致するので、誤差値0を次の点灯パルス4へ伝播する。点灯パルス4は、受け取った誤差値(大きさは0)を初期値として、4回の発光で目標値を上回るので、その誤差値を次の期間2の点灯パルス1へ伝播する。
点灯期間1を4分割して、上記の手順で得られる点灯パルスを配置することで、点灯期間1の目標値を実現する。各点灯パルスは、目標値が最大設定されたときの時間間隔をおいて、時間軸に並べて出力する。このとき目標値が最大であれば、各点灯パルスは隙間なく、該当するバックライト点灯期間を埋めることになる。目標値が最大値より小さければ、各点灯パルスは隙間を持って、該当するバックライト点灯期間内に分散して配置することになる。
目標値を分割設定することの目的は、このように点灯パルスを分散配置することである。そして、バックライト点灯期間の波形を維持しながら、明るさ調整を実現することができる。
【0028】
前述の説明では、バックライト点灯期間を均等に4分割する例を示したが、分割数は任意であり、また重み付けをした不均等な分割であっても良い。図12の例では、点灯パルス4の最後の発光が目標値を上回るので、期間1において目標値と一致しないことになるが、その誤差は期間2でキャンセルできる。期間1と期間2の間には(図示していない)適宜な消灯時間を入れることで、周期的な点滅とすることができる。
図13は、前記で算出した点灯パルスを、時間軸に並べて示している。点灯パルス1、2、3、4は、それぞれ4、4、3、4の比率の幅としている。それぞれの点灯パルスは、目標値が最大に設定されたときの幅を納められるような間隔で配置しておく。
こうして、点灯期間1の波形を維持しながら、明るさ調整を行うことができる。そして、点灯期間と消灯期間と組み合わせた周期1を維持することができる。
本実施例の誤差伝播型のパルス生成手順は、パルスの生成と出力を同時進行させることができる。このため生成手順の進行中に、発光源の特性が変化したならば随時に生成手順に反映させることができる。具体的には、LEDの温度測定センサを備えて、温度検出結果に基づいて発光量の変化を算出(あるいは表を検索)して、即座に手順に反映させることができる。
【0029】
前記した誤差伝播型のパルス生成手順は、R(赤)、G(緑)、B(青)、あるいは、R(赤)、G(緑)、B(青)、W(白)などの多色光源を組み合わせたバックライト100の点灯制御にも利用できる。ここで、R、G、Bの3色の光源(即ち、LED)を用いて、白色発光の明るさを制御するバックライト100駆動の点灯パルスの生成手順を示す。
図14は、赤、緑、青の3色を組み合わせて発光させる場合の、本実施例の構成例である。
発光波長分布は、人間の視覚感度を考慮すれば、三刺激値X、Y、Zに置き換えることが出来ることが知られている。赤、緑、青の3色の発光手段の発光波長分布をX、Y、Zに変換した数値を、生成手順における演算対象とする。
X、Y、Zそれぞれについての、累積値と目標値の比較、そして比較結果に基づいて駆動信号(PWM信号)を出力する動作手順は、前記した白色LEDの構成と同等である。相違は、赤、緑、青の3色間でX、Y、Z特性値のやり取りを行うことである。
ここで、目標値をXt、Yt、Ztとする。赤色LEDの特性値をXr、Yr、Zr、緑色LEDの特性値をXg、Yg、Zg、青色LEDの特性値をXb、Yb、Zb、とする。
つまり、
赤色LED=(Xr、Yr、Zr)
緑色LED=(Xg、Yg、Zg)
青色LED=(Xb、Yb、Zb)
赤色LEDのPWM出力信号をPr、緑色LEDのPWM出力信号をPg、青色LEDのPWM出力信号をPb、とすれば、赤、緑、青の3色のLEDの出力は、下記(1)式に示す、赤、緑、青の発光手段の駆動信号とXYZ特性マトリクスの積で表現できる。
【0030】
【数1】

・・・・・・・・・・・・・ (1)
そして、出力の目標値を実現するための発光手段の駆動信号は、下記(2)式に示すように、目標値に特性マトリクスのインバースを掛けることで算出できる。
【0031】
【数2】

・・・・・・・・・・・・・ (2)
【0032】
しかし、マトリクスのインバースの計算は複雑であり、簡易な装置構成には適さない。本実施例は、特性マトリクスの成分を直接利用して駆動信号を得ることを特徴とする。
Xの累積値をXa、Yの累積値をYa、Yの累積値をYaとする。PWM信号Pr、Pg、Pbは、目標値Xt,Yt、Ztと、累積値Xa,Ya、Zaの大きさを比較して、目標値に累積値が達してなければパルス出力するように決める。
書き換えれば、
IF(Xt>Xa) Pr=1
ELSE Pr=0
IF(Yt>Ya) Pg=1
ELSE Pg=0
IF(Zt>Za) Pb=1
ELSE Pb=0
そして、
PWM信号Pr=1なら、累積値XaにXr、累積値YaにYr、累積値ZaにZr、を加算して、
PWM信号Pg=1なら、累積値XaにXg、累積値YaにYg、累積値ZaにZg、を加算して、
PWM信号Pb=1なら、累積値XaにXb、累積値YaにYb、累積値ZaにZb、を加算する。
書き換えれば、
IF(Pr==1) {Xa+=Xr、Ya+=Yr、Za+=Zr}
IF(Pg==1) {Xa+=Xg、Ya+=Yg、Za+=Zg}
IF(Pb==1) {Xa+=Xb、Ya+=Yb、Za+=Zb}
【0033】
上記の繰り返しにより、周期1のPWM生成手順は完了する。その結果の累積値と目標値を比較して、誤差分を次の周期に伝播する。誤差算出は3色について行う。
Xe=Xa−Xt
Ye=Ya−Yt
Ze=Za−Zt
これらの値を、次の周期の累積値Xa、Ya、Zaの初期値として利用する。
こうして3色光源の波長分布を考慮にいれたPWM信号の生成と出力を実現できる。目標値をXYZ形式で設定できるので、任意の発光色を設定できる特徴がある。また、光源の特性が何らかの要因で変化する場合には、特性値を任意のタイミングで変更するだけでよい。もし式2のインバース演算を利用しているならば、特性値の変化を反映するには膨大な演算負荷が掛かるのに比べて、極めて簡単に実現できる特徴がある。
【0034】
上記のバリエーションとして、赤緑青(RGB)3色に白色(W)を加えた4色の発光に適用できる。Wは、X、Y、Zそれぞれの特性値Xw、Yw、Zwを持つ。X、Y、Zの目標値と累積値の比較を行い、X、Y、Zの全てについて累積値が目標値に達してなければ、Wをパルス出力する。
書き換えれば、
IF((Xt>Xa)&(Yt>Ya)&(Zt>Za)) Pw=1
ELSE Pw=0
そして、白色LEDの1パルスで、X、Y、Zそれぞれの累積値Xa、Ya、ZaにXw、Yw、Zwを加算する。
書き換えれば、
IF(Pw==1) {Xa+=Xw、Ya+=Yw、Za+=Zw}
このように、RGBW4色を用いて、目標値を実現するために発光手段を駆動するPWM信号を算出する。
本実施例は、特性マトリクスのインバース算出手段を用いることなく、簡易な装置構成とする効果がある。また目標値を分割設定することで、点灯パルスを分散配置することも同様に実現できる。
図15は、前記構成例で生成するRGBパルス群の一例を示す。
R(赤)、G(緑)、B(青)の3色光源(LED)を独立に点灯するバックライト100に適用する場合には、明るさと共に色再現を考慮した点灯期間の設定が必要になる。
ここでPWM方式を用いて点灯期間の幅を可変設定するならば、R、G、Bの3色の点灯期間が不揃いになる場合がある。瞬間的には、R、G、Bのいずれか1色が単独で点灯する期間が生じることになり、観察条件によっては色付きの画質劣化となる。
本実施例によれば、点灯期間は固定設定して、内部に配置する点灯パルスを制御することから、R、G、Bの3色の点灯期間を一致させることができる。これにより色付きの画質劣化を防止することができる。
【0035】
図16は、本実施例の液晶表示装置の概略構成を示すブロック図である。
図16を用いて、本実施例において、外部から映像信号を入力して、液晶表示パネル101に表示するまでの信号経路を説明する。
タイミング生成回路501は、映像信号に含まれる同期信号を用いて、各種の動作タイミングに関わる信号を生成して分配する。
バックライト制御回路502は、映像信号の信号振幅を参照することで画面単位のバックライト光量を設定する。
バックライト光量は、バックライト100に伝えて、光源手段を駆動すると共に、表示信号処理回路503に伝える。ここで、バックライト光量を画面単位に急激に変化させると、液晶表示パネル101の動作とのタイミングずれなどにより画質劣化を招く可能性があるので、適宜に緩やかな光量変化となるようにする。図示していないが、利用環境の明るさをセンサを用いて入力することで、環境の明るさに基づいてバックライト光量を可変することもできる。
表示信号処理回路503は、バックライト制御回路502が設定したバックライト光量に基づいて映像信号を修正してから、ソースドライバ505に表示のための信号を伝送する。そして、ソースドライバ505と、ゲートドライバ504を用いて、液晶表示パネル101の配線に信号を伝えることで、画素単位の表示信号の書き込みを行う。
ここで、バックライト制御回路502は、バックライト光量設定手段123、点灯パルス条件設定手段124、点灯パルス群生成出力手段125を組み合わせて構成できる。
以上、本発明者によってなされた発明を、前記実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施例の液晶表示装置における、画面表示とバックライト点灯の動作の関連を示す図である。
【図2】視液晶表示装置の画質劣化の一つである、視線追従時の動画ボヤケを説明する図である。
【図3】ある条件下での数値シミュレーションにより得られる、視線追従時の黒白エッジ周辺に観察される濃淡変化を示すグラフである。
【図4】本発明の実施例の液晶表示装置における、バックライト点灯期間の構成例を示す図である。
【図5】本発明の実施例の液晶表示装置における、点灯パルスの構成例を示す図である。
【図6】本発明の実施例の液晶表示装置における、点灯パルス生成回路の基本構成例を示す図である。
【図7】本発明の実施例の液晶表示装置において、映像信号の入力から表示を行うまでの基本構成例を示す図である。
【図8】本発明の実施例の液晶表示装置において、バックライトを複数分割する場合の、映像信号の入力から表示を行うまでの基本構成例を示す図である。
【図9】本発明の実施例の液晶表示装置において、映像信号に同期してバックライトを点灯させる構成例を示す図である。
【図10】図7に示す点灯パルス群生成出力手段の構成例を示す図である。
【図11】本発明の実施例の液晶表示装置の変形例における、誤差伝播型のPWM信号の算出手順を示す図である。
【図12】本発明の実施例の液晶表示装置の変形例における、誤差伝播型のPWM信号の算出手順を示す図である。
【図13】図12に示す液晶表示装置において、点灯パルスを時間軸に並べて示した図である。
【図14】本発明の実施例の液晶表示装置の変形例における、赤、緑、青の3色を組み合わせて誤差伝播型のPWM信号の算出手順を示す図である。
【図15】図14に示す液晶表示装置における、RGBパルス群を示す図である。
【図16】本発明の実施例の液晶表示装置の概略構成を示すブロック図である。
【図17】液晶表示装置の基本的な構成を示す図である。
【符号の説明】
【0037】
100 バックライト
101 液晶表示パネル
110 映像信号
111 表示信号
112,113 バックライト光量設定値
114 点灯パルス条件信号
115 点灯パルス群信号
116 表示タイミング信号
121 表示信号処理手段
122 表示タイミング検出手段
123 バックライト光量設定手段
124 点灯パルス条件設定手段
125 点灯パルス群生成出力手段
301 画素クロック生成手段
302 タイミング制御手段
303 点灯パルス個数設定手段
304 点灯パルス生成手段
305 点灯パルス出力手段
306 スイッチ手段
501 タイミング生成回路
502 バックライト制御回路
503 表示信号処理回路
504 ゲートドライバ
505 ソースドライバ
KB 拡散板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バックライトの点灯、消灯を制御する駆動回路であって、
Nを2以上の整数とするとき、連続するN個のフレーム期間で巡回するバックライト点灯期間の周期パタンを生成する周期パタン生成手段と、
前記バックライト点灯期間内の点灯パルスの個数を設定するパルス個数設定手段と、
前記設定されたバックライト点灯期間と点灯パルス個数に基づいて点灯パルス群を生成出力する点灯パルス群生成手段とを備えることを特徴とする駆動回路。
【請求項2】
巡回のフレーム周期が2のとき、前記周期パタン生成手段で生成される前記バックライト点灯期間の周期パタンは、第一のフレーム期間の点灯期間および消灯期間と、第二のフレーム期間の点灯期間および消灯期間が反転の関係にあることを特徴とする請求項1に記載の駆動回路。
【請求項3】
前記周期パタン生成手段で生成されるバックライト点灯期間の周期パタンは、N個のフレーム期間の累積として点灯期間が連続する関係にあることを特徴とする請求項1に記載の駆動回路。
【請求項4】
バックライトの明るさを設定する明るさ設定手段を備え、
前記パルス個数設定手段は、前記明るさ設定手段により設定された前記バックライトの明るさに基づき、前記点灯期間内の点灯パルスの個数を設定することを特徴とする請求項1に記載の駆動回路。
【請求項5】
バックライトの明るさを設定する明るさ設定手段を備え、
前記パルス個数設定手段は、前記明るさ設定手段により設定された前記バックライトの明るさに基づき、前記点灯期間内の点灯パルスのパルス幅を設定することを特徴とする請求項1に記載の駆動回路。
【請求項6】
前記点灯パルス群生成手段は、ある点灯期間に設定した点灯パルスの誤差をその次の点灯期間に伝播する手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の駆動回路。
【請求項7】
前記点灯パルス群生成手段は、ある点灯期間に設定した点灯パルスの誤差をその次の点灯期間に伝播する手段と、
一つ前の点灯期間に発生した誤差を受け取り初期値として利用する手段とを備えることを特徴とする請求項1に記載の駆動回路。
【請求項8】
前記バックライトは、赤、緑、青に3色の光源から構成され、
全色の光源の点灯期間を一致させ、また、それぞれの点灯期間の内部に配置する点灯パルスの個数あるいは幅で明るさを設定する手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の駆動回路。
【請求項9】
前記バックライトは、LED、あるいはLEDと蛍光体の組み合わせ、あるいはOLEDであることを特徴とする請求項1に記載の駆動回路。
【請求項10】
液晶表示パネルと、
バックライトと、
前記バックライトの点灯、消灯を制御する駆動回路とを備える液晶表示装置であって、
前記駆動回路は、前記請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の駆動回路であることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項11】
前記バックライトは、LED、あるいはLEDと蛍光体の組み合わせ、あるいはOLEDであることを特徴とする請求項10に記載の液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−113072(P2010−113072A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−284273(P2008−284273)
【出願日】平成20年11月5日(2008.11.5)
【出願人】(502356528)株式会社 日立ディスプレイズ (2,552)
【Fターム(参考)】