説明

駆動装置、レンズユニット、カメラモジュール

【課題】より小型化に適した駆動装置を提供する。
【解決手段】駆動装置は、固定された支持軸44と、支持軸44に対して摺動可能に設けられたスライダ42と、駆動電圧に応じて伸縮変形する圧電素子43と、を備える。圧電素子43はスライダ42に取り付けられている。圧電素子43の伸縮方向はスライダ42の移動方向と平行であり、圧電素子43は、スライダ42の面のうち移動方向に対して垂直な端面423に取り付けられている。また、圧電素子と支持軸との距離は近いことが好ましく、例えば、圧電素子と支持軸との距離は支軸軸の軸径の2倍以下とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動装置に関する。具体的には、圧電素子を駆動源とする駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カメラ等の撮像装置は多種多様な製品に組み込まれている。携帯電話、ノートパソコンといった小型の電子機器にカメラを実装する場合、カメラ自体の小型化が強く要請されている。
カメラ内にはオートフォーカスレンズが組み込まれることがある。この場合、レンズを変位させるアクチュエータの小型化が強く望まれる。
【0003】
ここで、レンズを変位させる駆動装置を小型化するための構成として、圧電素子に生じる振動によって移動対象物を移動させる構成が知られている(例えば特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4)。
【0004】
図11は、特許文献1に開示されたアクチュエータを示す図である。
図11において、圧電アクチュエータ126は、圧電素子127と、駆動軸140と、それらを保持するフレーム部材141と、を備える。フレーム部材141は、第1支持部142と、第2支持部143と、嵌合部144と、ベース部145と、を有する。圧電素子127の一端127aは、ベース部145の端部に設けられた第1支持部142に固着されている。駆動軸140は、ベース部145の中央部に設けられた嵌合部144の孔144aに摺動自在に挿通している。駆動軸140の一端140aは、ベース部145の端部に設けられた第2支持部143の凹部143aに嵌合した状態で固着されている。駆動軸140の他端140bは、圧電素子127の他端127bに当接している。レンズ鏡筒109には、その外周から突出し、駆動軸140が摺動自在に嵌合する摺動嵌合部146が設けられている。
【0005】
このような構成において、被駆動部材であるレンズ鏡筒109を矢印Bの方向へ移動させる場合には、図12に示す波形の駆動電圧を圧電素子127に印加する。
この駆動電圧に応じて圧電素子127は厚さ方向に伸縮運動を行う。
圧電素子127は、緩やかな立ち上がり期間P1では矢印Bの方向へ低速に伸び変位を行い、続く急速な立ち下がり期間P2では矢印Bと反対方向へ高速に縮み変位を行う。立ち上がり期間P1では、駆動軸140は、圧電素子127の伸び変位とともに、矢印Bの方向に低速に変位する。
このとき、レンズ鏡筒109は、摺動嵌合部146において駆動軸140と摩擦結合した状態を保持したまま、駆動軸140とともに矢印Bの方向に変位する。
続く立ち下がり期間P2では、駆動軸140は矢印Bと反対方向に高速に変位するが、レンズ鏡筒109の慣性力によって摺動嵌合部146の摩擦結合部において滑りが生じる。
その結果、レンズ鏡筒109は、ほぼその場(期間P1直後の位置)にとどまる。
この結果、駆動軸140に対するレンズ鏡筒109の相対位置が変化し、レンズ鏡筒109は元の位置から矢印Bの方向に移動することとなる。
【0006】
しかしながら、圧電素子127に所定周波数の駆動電圧を印加して振動させる場合、圧電素子127とベース部145とが一体的に固着されているので、圧電素子127とともにベース部145も当然に振動する。
圧電素子127とベース部145とが一体的に共振してしまうと、レンズ鏡筒109の移動量を制御することができなくなってしまう。したがって、圧電素子127とベース部145とが共振する共振周波数帯域を避ける必要がある。そこで、従来は、共振周波数から外れた周波数帯域を動作保障できる使用周波数帯域として設定していた。しかし、共振周波数は、ベース部145の形状、重量、圧電素子127とベース部145との接着状態、などに依存し、製品ごとに異なってくるものである。
また、共振周波数は複数存在する。したがって、動作保障できる使用周波数帯域は狭い範囲に限られていた。
【0007】
このような課題を解決するため、本出願人は、関連出願として特願2008-192443を出願している。
【0008】
特願2008-19244に係るレンズユニットについて簡単に説明する。
図13は、レンズユニットの斜視図である。
図14は、レンズユニットの概略断面図である。
レンズユニット200は、レンズホルダ231の内部にレンズ(不図示)Lを保持し、ピエゾ素子242の動力でレンズLを変位させる。
【0009】
レンズユニット200は、レンズホルダ(保持体)231と、ピエゾ素子(圧電素子)242と、伝達軸(駆動軸)244と、軸保持部245と、を有する。
伝達軸244は、ピエゾ素子242に固定されている。そして、伝達軸244は、レンズホルダ231に対して固定されている。一方、伝達軸244は、摺動可能な状態で軸保持部245に保持されている。
伝達軸244は、ピエゾ素子242で生じた振動を軸保持部245に伝達する。
ここで、レンズホルダ231、ピエゾ素子242および伝達軸244は、相対的な位置関係が固定されており、固定側部材としての軸保持部245に対して相対的に移動可能となっている。
【0010】
この構成において、ピエゾ素子242に所定の駆動電圧を印加する。すると、ピエゾ素子242に伸縮変形が生じる。ピエゾ素子242に印加する駆動電圧を調整し、ピエゾ素子242が急激に変形する期間とピエゾ素子242が緩慢に変形する期間とを組み合わせる。すると、ピエゾ素子242が急激に変形するときには伝達軸244に力が加わり、伝達軸244とともにレンズホルダ231が変位する。
また、ピエゾ素子242が緩慢に変形するときには、レンズホルダ231の慣性力および伝達軸244とリンク部材245との摩擦力によって、レンズホルダ231はその場にとどまる。
これにより、ピエゾ素子242、伝達軸244およびレンズホルダ231が、固定側部材である軸保持部245に対して変位する。
【0011】
このとき、ピエゾ素子242は伝達軸244にのみ取り付けられている。そして、ピエゾ素子242および伝達軸244は、固定側部材である軸保持部245に対して直接的に固定されていない。
このような構成を採用したので、固定側部材との共振を考慮することなく、ピエゾ素子242および伝達軸244から導かれる固有の共振を考慮するだけで、ピエゾ素子242に対する駆動周波数を適切に設定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2006-91210号公報
【特許文献2】特許2625567号
【特許文献3】特開2002-95274号公報
【特許文献4】特開2007-200490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
確かに、図13および図14に示す構成のレンズユニットによれば、圧電素子に印加する駆動波形の周波数を広い範囲で自由に設定できるという利点がある。
しかしながら、図15に示すように、棒状の伝達軸自体がスライド移動する都合上、伝達軸244のおよそ2倍の長さのスペースを逃げシロとして確保しておく必要がある。
これは、レンズユニット200の小型化にとっては欠点である。
また、伝達軸244の長さによって可動距離が規定されてしまうので、単純に伝達軸244を短くすることもできない。
【0014】
本発明の目的は、より小型化に適した駆動装置、レンズユニット、カメラモジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の駆動装置は、
固定された支持軸と、
前記支持軸に対して摺動可能に設けられたスライダと、
駆動電圧に応じて伸縮変形する圧電素子と、を備え、
前記圧電素子は前記スライダに取り付けられている
ことを特徴とする。
【0016】
本発明では、
前記圧電素子の伸縮方向が前記スライダの移動方向と平行である
ことが好ましい。
【0017】
本発明では、
前記圧電素子は、前記スライダの面のうち移動方向に対して垂直な端面に取り付けられている
ことが好ましい。
【0018】
本発明では、
前記圧電素子と支持軸との距離は、支軸軸の軸径の2倍以下である
ことが好ましい。
【0019】
本発明では、
圧電素子は二つ設けられており、
前記スライダの面のうち移動方向に対して垂直な一端面に一の圧電素子が取り付けられ、
前記スライダの面のうち移動方向に対して垂直な他端面に他の圧電素子が取り付けられている
ことが好ましい。
【0020】
本発明では、
前記スライダには凹部が設けられ、
前記圧電素子は、前記凹部の内側端面に取り付けられている
ことが好ましい。
【0021】
本発明のレンズユニットは、
前記駆動装置と、
前記スライダに固定的に取り付けられたレンズホルダと、
前記レンズホルダに保持されたレンズと、を備える。
【0022】
本発明のカメラモジュールは、前記レンズユニットと、
前記レンズを介して像を撮像する撮像手段と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】第1実施形態に係るカメラモジュールを示す図。
【図2】カメラモジュールの分解斜視図。
【図3】レンズホルダおよび駆動ユニットの斜視図。
【図4】スライダを側方から見た簡略図。
【図5】レンズユニットを駆動させるためのシステム構成を示す図。
【図6】駆動電圧の一例を示す図。
【図7】駆動電圧の一例を示す図。
【図8】第2実施形態を示す図。
【図9】本発明の変形例を示す図。
【図10】本発明の変形例を示す図。
【図11】特許文献1に開示されたアクチュエータを示す図。
【図12】背景技術において、駆動電圧の例を示す図。
【図13】背景技術において、レンズユニットの斜視図。
【図14】背景技術において、レンズユニットの概略断面図。
【図15】背景技術の課題を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。
なお、各実施の形態は、説明の便宜上、簡略化されている。
図面は簡略的なものであるから、図面の記載を根拠として本発明の技術的範囲を狭く解釈してはならない。
図面は、もっぱら技術的事項の説明のためのものであり、図面に示された要素の正確な大きさ等は反映していない。
同一の要素には、同一の符号を付し、重複する説明は省略するものとする。
上下左右といった方向を示す言葉は、図面を正面視した場合を前提として用いるものとする。
【0025】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係るカメラモジュールを示す図である。
図2は、カメラモジュールの分解斜視図である。
カメラモジュール(画像取得装置)100は、レンズ1と、プリズム(導光部材)2と、レンズ3〜8と、IR(InfraRed)カットフィルタ9と、フロントハウジング(収容部、筐体)10と、駆動ユニット30、40と、ガイドレール50、51と、レンズホルダ(被駆動部材、レンズ保持体)60、70、リアハウジング(収容部、筐体)80と、イメージセンサホルダ88と、イメージセンサ(撮像手段、撮像素子)89と、センサー(位置検出器)90、91と、を備える。
【0026】
カメラモジュール100内に内蔵される光学系は、4群のレンズを含む。
第1群は、レンズ1、プリズム2、及びレンズ3からなる。第2群は、レンズ4からなる。第3群は、レンズ5〜レンズ7からなる。第4群は、レンズ8からなる。第2群のレンズ(レンズ4)および第3群のレンズ(レンズ5〜レンズ7)が変位する。光軸に沿って2つのレンズ群を変位させることによって、カメラモジュール100に対して好適にズーム機能を付加することができる。
【0027】
カメラモジュール100内に内蔵される光学系の具体的な構成は任意である。
ここでは、次に説明する光学系を採用する。
レンズ1は、球面、非球面等のレンズである。プリズム2は、光入射面、光反射面、及び光出射面を有する三角柱状の部材である。レンズ3〜レンズ8は、球面、非球面等のレンズであり、個々に異なる光学的特性を有する。IRカットフィルタ9は、赤外線成分を遮断し、可視光成分を透過する透過特性を有する。各レンズは、ガラスレンズであっても、プラスチックレンズであっても良い。プリズム2の採用によって、カメラモジュール100が組み込まれるコンパクトカメラの薄型化を図ることができる。なお、イメージセンサ89は、CCD(Charge Coupled Device)、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の一般的な半導体撮像素子である。
【0028】
カメラモジュール100は、フロントハウジング10とリアハウジング80とが連結して構成される。フロントハウジング10とリアハウジング80とは、ネジを介して強固に連結される。フロントハウジング10とリアハウジング80とが連結して形成される空間には、レンズ3、レンズ4、レンズホルダ60、レンズ5、レンズホルダ70、レンズ6、レンズ7、レンズ8、ガイドレール50、及びガイドレール51が収納される。なお、レンズ1、プリズム2は、フロントハウジング10内に収納される。IRカットフィルタ9は、リアハウジング80内に収納される。フロントハウジング10、リアハウジング80は、樹脂の成型により製造される。樹脂の材料としては黒色のポリカーボネート(PC)樹脂等の遮光性を有する合成樹脂により形成される。
【0029】
フロントハウジング10に対してサポート板35がネジで固定される。同様に、フロントハウジング10に対してサポート板45がネジによって固定される。サポート板35、45の固定先を共通にすることによって、2群レンズ(レンズ4)の移動軌跡と3群レンズ(レンズ5〜7)の移動軌跡との間のアライメント精度を高めることができる。移動レンズの移動軌跡のアライメントを高めることによって、より良質な画像を取得することが可能になる。
【0030】
イメージセンサホルダ88は、リアハウジング80に対して実装される。イメージセンサ89は、イメージセンサホルダ88に対して実装される。イメージセンサホルダ88は、ハウジング同様の樹脂で形成される。イメージセンサ89の背面には、複数のバンプが予め設けられている。イメージセンサ89は、不図示のフレキシブル配線基板に対して電気的に接続される。
【0031】
カメラモジュール100の組立て方法は任意である。
例えば、フロントハウジング10に対してプリズム2、レンズ1を順次固定する。次に、レンズ3をフロントハウジング10に対して固定する。次に、フロントハウジング10に対してガイドレール50、51を固定する。次に、ガイドレール50、51に対して、レンズ4を保持したレンズホルダ60を係合させる。同様に、ガイドレール50、51に対して、レンズ5〜7を保持したレンズホルダ70を係合させる。次に、レンズ8をリアハウジング80に対して固定する。次に、フロントハウジング10に対してリアハウジング80を固定する。次に、フロントハウジング10に対してサポート板35を固定する。同様に、フロントハウジング10に対してサポート板45を固定する。次に、センサー90、91をフロントハウジング10、リアハウジング80夫々に対して固定する。次に、イメージセンサ89が実装されたイメージセンサホルダ88をリアハウジング80に対して固定する。
【0032】
駆動ユニット40について説明する。
駆動ユニット40は、サポート板(保持部材、保持板)45と、支持軸44と、スライダ42と、駆動源としてのピエゾ素子43と、を備える。
【0033】
なお、駆動ユニット30と駆動ユニット40とは、基本的に同じ構成であり、駆動ユニット30は、サポート板(保持部材、保持板)35と、支持軸34と、スライダ32と、駆動源としてのピエゾ素子33と、を備える。
駆動ユニット30は、カメラモジュールの左側に取り付けられ、レンズホルダ60を移動させるものであるのに対し、駆動ユニット40はカメラモジュールの右側に取り付けられ、レンズホルダ60を移動させる。
以下では駆動ユニット40を例に説明するが、適切な変更を加えたうえで駆動ユニット30にも同様の説明が適用できる。
【0034】
図3は、レンズホルダ70および駆動ユニット40の斜視図である。
レンズホルダ70と駆動ユニット40とにより、レンズを変位させるレンズユニットが構成されている。
図3を参照して、レンズホルダ70を移動させる駆動ユニット40について説明する。
なお、図3においては、駆動ユニット40がよくみえるように、ガイドレール51およびレンズホルダ70の一部を省略している。
【0035】
レンズホルダ70は、ガイドレール50、51に摺動可能に係合している。
これによってレンズホルダ70の移動方向がガイドレール50、51によってガイドされる。
【0036】
サポート板45はフロントハウジング10に固定的にねじ止めされ、固定側部材となる。
サポート板45がフロントハウジング10に取り付けられることにより、フロントハウジング10の強度が補強されるようになっている。
サポート板45は、平板部46の両側端から起立した起立部47、48を有する。
平板部46は矩形の扁平平板状であり、図3において、平板部46の左側側端に起立部47が立設され、右側側端に起立部48が立設されている。
起立部47および起立部48は、ともに扁平矩形状であり、平板部46に対して一体的に形成されている。
起立部47と起立部48とにより、支持軸44が固定的に保持されている。
具体的には、起立部47と起立部48に孔が穿設されており、この孔に支持軸44が圧入されている。
支持軸44は、ガイドレール50、51と平行である。
【0037】
支持軸44にはスライダ42が摺動可能に係合している。具体的には、スライダ42に貫通孔421が設けられており、この貫通孔421に支持軸44が挿通されている。貫通孔421と支持軸44との径は実質的に同じとし、スライダ42が支持軸44に沿って移動可能とする。
【0038】
スライダ42にはダボ422が突設されており、レンズホルダ70に設けられた穴部(不図示)にダボ422が嵌合している。
これにより、レンズホルダ70がスライダ42に取り付けられ、一体化する。
なお、レンズホルダ70はガイドレール50、51によって案内されるものであるので、レンズホルダ70の円滑な移動のため、レンズホルダの穴部とダボ422とには若干の遊びがあってもよい。
【0039】
ピエゾ素子43は、スライダ42に貼設されている。ピエゾ素子43は、セラミックス層(圧電層)が積層された一般的な圧電素子である。
ピエゾ素子43の側面は、一対の電極端子として機能する。例えば、一方の電極端子を接地させた状態で、他方の電極端子に駆動電圧を印加することによってピエゾ素子43は積層方向に伸縮する。
【0040】
ピエゾ素子43は、スライダ42の面のうち移動方向に対して垂直な端面423に取り付けられている。
さらに、ピエゾ素子43の伸縮方向とスライダ42の移動方向とが平行になるようにピエゾ素子43がスライダ42に取り付けられている。
【0041】
ここで、図4は、スライダを側方から見た簡略図である。
ピエゾ素子43の貼設位置は、支持軸44に近いことが好ましい。
例えば、ピエゾ素子43と支持軸44との距離dは、支軸軸44の軸径の2倍以下であることが好ましい。例えば、支持軸の軸径が0.8mmであるとすると、ピエゾ素子43と支持軸44との距離dは1.6mm以下、好ましくは1.0mm以下にすることが好ましい。
【0042】
次に制御システムについて説明する。
図5は、レンズユニットを駆動させるためのシステム構成を示す図である。
コントローラ501からの制御信号は、駆動電圧生成回路502に入力される。コントローラ501はCPU(中央処理装置)およびメモリを有し、メモリに格納された所定の制御プログラムがCPUで実行される。コントローラ501は、焦点距離を変えるようにレンズホルダ70の位置を調整するための制御を実行する。
【0043】
駆動電圧生成回路502は、コントローラ501からの制御信号に応じて、ピエゾ素子43に印加する駆動電圧を生成する。
駆動電圧生成回路502からの駆動電圧は、ピエゾ素子43に印加される。
【0044】
次に、スライダ42を移動させる動作について説明する。
はじめに、図6に示す駆動電圧をピエゾ素子43に印加する場合について説明する。
ここで、図6に示す駆動電圧波形において、立ち上がり期間TR1が立ち下がり期間TR2に比べて短くなっている。
【0045】
図6に示す駆動電圧をピエゾ素子43に印加する。
すると、駆動電圧の立ち上がり期間TR1においてスライダ42は変位し、駆動電圧の立ち下がり期間TR2においてはスライダ42はその場に留まる。
したがって、立ち上がり期間TR1が立ち下がり期間TR2よりも短い駆動電圧をピエゾ素子43に印加することによってスライダ42を一方に変位させることができる。
【0046】
上述の動作のメカニズムを補足的に説明する。
【0047】
立ち上がり期間TR1では、ピエゾ素子43は、圧電層の積層方向に急速に伸張する。すると、ピエゾ素子43の急激な伸張変形によってスライダ42に力が加わり、スライダ42が支持軸44に対して相対移動する。このとき、スライダ42とともにレンズホルダ70が変位する。
一方、立ち下がり期間TR2では、ピエゾ素子43は、圧電層の積層方向にゆっくり収縮する。
このとき、ピエゾ素子43の収縮速度が低速であるので、スライダ42およびレンズホルダ70の慣性力および支持軸44とスライダ42との摩擦力によって、スライダ42はその場にとどまる。
【0048】
このようなメカニズムによって、スライダ42およびレンズホルダ70が一方向に変位する。
そして、駆動電圧を連続的にピエゾ素子43に対して印加することにより、レンズホルダ70の位置を高精度に制御することができる。これにより、焦点距離を変えることができる。
【0049】
なお、上述のメカニズムの説明に誤りがあったとしても、本発明の技術的範囲が狭く解釈されるべきものではない。
【0050】
次に、図7に示す駆動電圧をピエゾ素子43に印加した場合について説明する。
図7に示す電圧波形においては、立ち上がり期間TR3が立ち下がり期間TR4に比べて長くなっている。
【0051】
図7に示す駆動電圧をピエゾ素子に印加すると、駆動電圧の立ち上がり期間TR3では、スライダはその場に留まる。
駆動電圧の立ち下がり期間TR4においては、スライダ42は変位する。
立ち上がり期間TR3が立ち下がり期間TR4よりも長い駆動電圧をピエゾ素子43に印加することによって、スライダ42を他方に変位させることができる。
なお、このメカニズムについては、上述のメカニズムと同様に説明がつく。
【0052】
このような構成を備える本実施形態によれば、次の効果を奏することができる。
(1)本実施形態では、ピエゾ素子43はスライダ42にのみ取り付けられている。そして、ピエゾ素子43は、固定側部材である支持軸44およびサポート板45に対して直接的に固定されていない。
このような構成を採用したので、固定側部材(支持軸44、サポート板45)との共振を考慮することなく、ピエゾ素子43およびスライダ42から導かれる固有の共振を考慮するだけで、ピエゾ素子43に対する駆動周波数を適切に設定することができる。すなわち、個々のカメラモジュール内における駆動ユニット40の組み込み状態に関係なく、駆動周波数を設定することが可能になる。
そして、例えば、固定側部材(支持軸44、サポート板45)との共振が問題にならなくなるので、駆動周波数帯域を広く設定することができるようになる。
【0053】
(2)本実施形態では、駆動源であるピエゾ素子43は移動体であるスライダ42に固定されており、支持軸44は固定された状態で動かない。
背景技術で説明したように棒状の伝達軸自体がピエゾ素子と一体的に変位する構成であると、伝達軸の逃げシロを広く確保する必要があった。また、可動距離を長くしようとすると伝達軸が長くなるのでその分の逃げシロも大きくしなければならない。そのため、可動距離の増大と小型化とを両立させることが難しかった。
この点、本実施形態では、支持軸自体は変位せず、支持軸44に沿ってスライダ42が変位するだけである。
したがって、逃げシロのような余計なスペースを駆動ユニット40の周りに確保する必要がない。
また、可動距離を大きくする場合でも支持軸44を長くする分だけのスペースを確保すればよいだけであり、その他の余計なスペースを取らなくてもよい。
その結果、本実施形態によれば、小型化と移動距離の増大とを両立することができる。
【0054】
(3)本実施形態では、駆動源であるピエゾ素子43は移動体であるスライダ42に固定されている。
このように移動対象物に駆動源を取り付けているので、ピエゾ素子43から得られる動力をスライダ42の変位に効果的に変換することができる。
したがって、消費エネルギーを低減できるとともに、制御精度を高めることができる。
【0055】
(第2実施形態)
次に本発明の第2実施形態について説明する。
第2実施形態の基本的構成は上記第1実施形態と同様であるが、第2実施形態ではピエゾ素子を2つ使用する点に特徴を有する。
図8に第2実施形態を示す。
図8に示されるように、スライダ42には一端面423と他端面424とにそれぞれピエゾ素子43A、43Bが貼設されている。
一端面423と他端面424とは、スライダ42の面のうち移動方向に対して垂直な端面である。
この構成において、ピエゾ素子43に駆動電圧を印加することによってスライダ42を変位させる点は第1実施形態と同様である。
【0056】
ここで、駆動電圧生成回路502で生成する駆動電圧のパターンは、図6のパターンと図7のパターンとのいずれか一つとしてもよい。
例えば、駆動電圧生成回路502で図6のパターンの駆動電圧を生成するとする。
そして、ピエゾ素子43Aに図6の駆動電圧を印加すると、スライダ42は一方に変位する。
また、電圧の印加先を切り替えて、ピエゾ素子43Bに図6の駆動電圧を印加すると、スライダ42は他方に変位する。
このように二つのピエゾ素子43A、43Bをスライダ42の両端面に設けることにより、一つの電圧パターンによってスライダ42を両方向に変位させることができる。
【0057】
また、駆動電圧をピエゾ素子43Aとピエゾ素子43Bとの両方に同時に印加してもよい。
このとき、ピエゾ素子Aに印加する電圧とピエゾ素子Bに印加する電圧との比を調整することにより、スライダの移動量および移動速度を微調整することができる。
【0058】
または、駆動電圧生成回路502で生成する駆動電圧のパターンを図6のパターンと図7のパターンとの両方とし、さらに、ピエゾ素子43A、43Bに異なるパターンの駆動電圧をそれぞれ印加するようにしてもよい。
例えば、ピエゾ素子43Aに図6の駆動電圧を印加し、さらに、ピエゾ素子43Bに図7の駆動電圧を印加する。すると、ピエゾ素子43Aおよびピエゾ素子43Bの両方からの駆動力により、スライダ42は大きく、高速に変位する。この場合も、ピエゾ素子43Aに印加する電圧とピエゾ素子43Bに印加する電圧との比を調整することにより、スライダ42の移動量および移動速度を微調整することができる。
【0059】
(変形例1)
次に、本発明の変形例を図9、図10に示す。
上記実施形態においては、スライダの外側端面にピエゾ素子を貼設する場合を例示した。
これに対し、例えば、図9のように、スライダ42に凹部425を設け、この凹部425の内側端面426にピエゾ素子43を設けてもよい。
この構成によれば、ピエゾ素子43が凹部425の内側に隠れるので、ピエゾ素子43を保護することができる。
【0060】
また、図10に示すように、凹部425の両端面に二つのピエゾ素子43A、43Bを設けてもよいことはもちろんである。
【0061】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
駆動電圧は上記実施形態で例示したものに限られず、例えば、デューティー比を調整した矩形波パルスであってもよい。
【符号の説明】
【0062】
30…駆動ユニット、33…ピエゾ素子、34…支持軸、40…駆動ユニット、42…スライダ、43、43A、43B…ピエゾ素子、44…支持軸、45…サポート板、46…平板部、47…起立部、48…起立部、50…ガイドレール、51…ガイドレール、70…レンズホルダ、421…貫通孔、422…ダボ、423…一端面、424…他端面、425…凹部、426…内側端面、501…コントローラ、502…駆動電圧生成回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定された支持軸と、
前記支持軸に対して摺動可能に設けられたスライダと、
駆動電圧に応じて伸縮変形する圧電素子と、を備え、
前記圧電素子は前記スライダに取り付けられている
ことを特徴とする駆動装置。
【請求項2】
請求項1に記載の駆動装置において、
前記圧電素子の伸縮方向が前記スライダの移動方向と平行である
ことを特徴とする駆動装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の駆動装置において、
前記圧電素子は、前記スライダの面のうち移動方向に対して垂直な端面に取り付けられている
ことを特徴とする駆動装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の駆動装置において、
前記圧電素子と支持軸との距離は、支軸軸の軸径の2倍以下である
ことを特徴とする駆動装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の駆動装置において、
圧電素子は二つ設けられており、
前記スライダの面のうち移動方向に対して垂直な一端面に一の圧電素子が取り付けられ、
前記スライダの面のうち移動方向に対して垂直な他端面に他の圧電素子が取り付けられている
ことを特徴とする駆動装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の駆動装置において、
前記スライダには凹部が設けられ、
前記圧電素子は、前記凹部の内側端面に取り付けられている
ことを特徴とする駆動装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の駆動装置と、
前記スライダに固定的に取り付けられたレンズホルダと、
前記レンズホルダに保持されたレンズと、を備えるレンズユニット。
【請求項8】
請求項7に記載のレンズユニットと、
前記レンズを介して像を撮像する撮像手段と、を備えるカメラモジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−114888(P2011−114888A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−266728(P2009−266728)
【出願日】平成21年11月24日(2009.11.24)
【出願人】(391002775)マクセルファインテック株式会社 (40)
【Fターム(参考)】