説明

駆動装置

【課題】自動車のハッチ位置を正確に算出することができ、低コスト且つ単純な構造の駆動装置を提供する。
【解決手段】駆動装置は、定置ベース部および可動構造部の一方と結合するケースパイプ1と、可動構造部および定置ベース部の他方と結合するジャケットパイプ28と、ねじ付きスピンドル16とねじ付きスピンドルに嵌着されたスピンドルナット19と、ケースパイプとジャケットパイプとを接離するスピンドルドライブ17と、クラッチ装置15を介してスピンドルドライブを駆動するロータリドライブ9とを備え、所定のトルクを超えるとクラッチ装置で結合を解除する。多数のN極とS極を有する磁石リングがセンサエレメント付近に回転自在に配置され、センサエレメントと協働する磁石リングが、クラッチ装置に回り止めされてねじ付きスピンドルとの結合部分に配置され、センサエレメントがケースパイプに対して不動の位置に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に車両ボディである定置ベース部および特に車両ハッチまたは車両ドアである可動構造部の一方と結合できるケースパイプと、可動構造部および定置ベース部の他方と結合できるジャケットパイプと、ねじ付きスピンドルとこのねじ付きスピンドルに嵌着されたスピンドルナットを有すると共にケースパイプとジャケットパイプを互いに軸方向に相対運動できるようにするスピンドルドライブと、クラッチ装置により形成された過負荷防止装置を介してスピンドルドライブを回転自在に駆動するロータリドライブと、を備え、所定のトルクを超えるとその相互の回転不動の結合が解除できるようになっている駆動装置、特に車両ハッチ用の駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の駆動装置は、多数のバリエーションがあることが知られている。しかしながら、これらの駆動装置は、マニュアル運転時、接続された制御装置が非アクティブ状態にある間、又は、スピンドルドライブの中に取り付けられたクラッチの解除時に、ハッチ位置が間違って算出される可能性がある点で不利である。そうなった場合、リヤハッチが端位置、つまり全開位置または全閉位置に確実にたどり着くことは、もはや不可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
よって、本発明の課題は、ハッチ位置を正確に算出することが可能であり、低コスト且つ単純な構造を有する、冒頭に挙げた種類の駆動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題は、多数のN極とS極を有する磁石リングが回転運動自在にセンサエレメントの付近に配置され、このセンサエレメントと協働する磁石リングがクラッチ装置において回り止めされた形でねじ付きスピンドルと結合した部分に配置され、かつ、センサエレメントがケースパイプに対して不動な位置に配置されていることによって、本発明により解決される。
【発明の効果】
【0005】
この配置により、駆動装置の過負荷応力に対してクラッチ装置が応答したとしても、車両ハッチの位置を突き止めることが可能である。
【0006】
ホールセンサがクラッチ装置のケースパイプの内壁に配置されている場合には、構造部品の組み立ては実に単純化される。
【0007】
以下、本発明の一実施例を図面に則して詳細に説明する。図面の示すところは次の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】駆動装置の横断面図である。
【図2】図1に示した駆動装置の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1に描かれた駆動装置は、第1の端2を有する第1のケースパイプ1を備え、第1の端部2は底ピース3で閉じられている。底ピース3にはねじ付きピボット4が形成され、ねじ付きピボット4に、ボールカップの形の第1の固定具5が螺着されている。第1の端部2の反対側に位置する第2の端部6にはスリーブ7が配置されており、その中にはガイドブシュ8がプレス嵌めで配置されている。あるいは、その代わりに、スリーブ7とガイドブシュ8とが一体に形成されてもよい。
【0010】
第1のケースパイプ1の第1の端部2の付近には、モータ10とギヤユニット11を含むロータリドライブ9が配置されている。モータ10の正面においては、両側から駆動シャフト12が突き出ており、これが一方でセンサ装置13を、他方でギヤユニット11を駆動する。ギヤユニット11においてモータ10と向き合う側では、ギヤ出力シャフト14が第2の端部6の方向に延びている。クラッチ装置15が、一方でギヤ出力シャフト14と、他方でスピンドルドライブ17においてガイドブシュ8を貫通するねじ付きスピンドル16と連結されている。更に、ねじ付きスピンドル16を同軸で包囲するガイドパイプ18も、ガイドブシュ8を貫通する。
【0011】
ねじ付きスピンドル16には、回り止めされた形でガイドパイプ18の中を通され且つ軸方向に摺動可能なスピンドルナット19が配置されている。スピンドルナット19は、ねじ付きスピンドル16を同軸で包囲するスピンドルパイプ20の一端と連結されている。スピンドルパイプの中には、ねじ付きスピンドル16のラジアル運動を阻止するため、スピンドルガイド21を介して、ねじ付きスピンドル16の、クラッチ装置15と反対側に位置する端部が通されている。スピンドルナット19とは反対側の端部では、ねじ付きピン22がガイドパイプ18に配置されている。ねじ付きピン22には支持円板23も嵌着されている。支持円板23は、ボールカップの形のさらなる第2の固定具24を介してねじ付きピン22に固定されている。
【0012】
ガイドパイプ18において、ガイドブシュ8の中にある端部とは反対側の端部には、スピンドルパイプ20を軸方向に摺動自在に案内するガイドブシュ25が配置されている。ガイドパイプ18は、第2のケースパイプ26により同軸で包囲されている。ここで、第2のケースパイプ26は、内フランジ27をもって第1のケースパイプ1の第2の端部6、もしくはガイドブシュ8又はスリーブ7でそれぞれ支持されている。
【0013】
第2のケースパイプ26はまた、少なくとも部分的にジャケットパイプ28により包囲されている。ジャケットパイプ28は、支持円板23に隣接する内フランジ29を有する。
【0014】
駆動装置の前駆運動を支援するため、ガイドパイプ18と第2のケースパイプ26の間、また、ガイドパイプ18とジャケットパイプ28の間にそれぞれコイル圧縮ばね30が配置されている。コイル圧縮ばね30は、第2のケースパイプ26の内フランジ27とジャケットパイプ28の内フランジ29で支持されている。
【0015】
図2は、図1に示された駆動装置の一部、特にクラッチ装置15を構成する個々の部分を示す。
【0016】
クラッチ装置15は、ギヤユニット11とスピンドル軸受31との間に配置されている。クラッチ装置15は、内部分32、緩衝エレメント33、中間部分34、ばねリング35及び外部分36を含む。但し、クラッチ装置が駆動系の中で別の位置を取ることも、またはクラッチが別の構造、例えば摩擦円板を備えた構造を有することも可能である。
【0017】
ギヤ出力シャフト14は、噛み合い結合又は摩擦結合、例えばスプライン結合を使って、トルク伝達のために内部分32と着脱自在に連結されている。内部分32は、緩衝エレメント33及び中間部分34と共に一種の弾性ドグクラッチを形成する。
【0018】
中間部分34は、ばねリング35を介して外部分36と連結されている。ばねリング35は、外部分36の中で軸方向と径方向において固定されている。
【0019】
中間部分34へのばねリング35の連結は、径方向に配置された複数のばねアーム(不図示)を介して行われる。そのばねアームは、中間部分34の外被面に沿って半径方向に一周する波状の凹部、又は、三角形の凹部(不図示)に食い込む。
【0020】
トルクの伝達は、ギヤ出力シャフト14、内部分32、緩衝エレメント33、中間部分34及びばねリング35を介して、クラッチ装置15の外部分36まで行われる。
【0021】
その時、ばねリング35と中間部分34との間でのトルク伝達は、ばねアームの端部を介して行われる。所定のトルク値に達すると、中間部分34が、ばねリング35に対して相対的に回転し始める。そこで、中間部分が回転し続けると、ばねアームは端部を越えて、まず径方向外向きに押し出され、続いて再び曲げ戻される。そこで、その端部が次の凹部に食い込んでいく。
【0022】
クラッチ装置15は、径方向と軸方向においてスピンドル軸受31で支承されている。加えて、図2に見られる通り、外部分には、これより小さい外径を持つ接続具37が設けられており、この中にねじ付きスピンドル16が通されている。ねじ付きスピンドル16へのトルク伝達は、スプラインを介して行われる。ねじ付きスピンドル16は、軸方向において、リベット継手38を介し、外部分36で確保される。クラッチ装置15が軸方向において固定されるよう、スピンドル軸受31とガイドパイプ18の間にリング円板39が配置されている。このリング円板39とクラッチ装置15の周囲に配置された部材とを介し、クラッチ装置を中心として、軸方向に働く力が導き入れられる。
【0023】
外部分36の、ギヤユニット11の方を向いた端部は、フランジ40を形成するように縁が内向きに曲げされており、円板41を、一方の内部分32、緩衝エレメント33、中間部分34及びばねリング35と他方のフランジ40の間の位置に保持する。円板41からは更に、ギヤユニット11の方向に、円板41と一体で連結されたスリーブ42が延びる。スリーブ42には、複数のN極とS極を有する磁石リング43が嵌着されている。磁石リング43は、ボード45の上に配置されたセンサエレメント44と協働する。ボード45の方も、クラッチ装置15のケース46の内壁に配置されている。
【0024】
センサエレメント44は、少なくとも1つのホールセンサ、但し、好ましくは限定された位相分だけずれた2つのホールセンサを含む。ここでは1つの構造部品として描かれているが、2つの別個のホールセンサを使用することも可能である。
【0025】
制御装置47が非アクティブ状態である時、又は“眠っている”時に、自動車の可動部、例えばハッチを手で作動させると、単独のホールセンサ又は両方のホールセンサの信号により、輪郭が描かれているだけの線路を介して制御装置47がスイッチオンされる。これにより、ねじ付きスピンドル16の回転運動は、回り止めされた形でねじ付きスピンドル16と結合したクラッチ装置15の外部分36を介して、また、同じく回り止めされた形で外部分36と結合した磁石リング43を介して感知される。
【符号の説明】
【0026】
1 第1のケースパイプ
2 第1の端部
3 底ピース
4 ねじ付きピボット
5 第1の固定具
6 第2の端部
7 スリーブ
8 ガイドブシュ
9 ロータリドライブ
10 モータ
11 ギヤユニット
12 駆動シャフト
13 センサ装置
14 ギヤ出力シャフト
15 クラッチ装置
16 ねじ付きスピンドル
17 スピンドルドライブ
18 ガイドパイプ
19 スピンドルナット
20 スピンドルパイプ
21 スピンドルガイド
22 ねじ付きピン
23 支持円板
24 第2の固定具
25 ガイドブシュ
26 第2のケースパイプ
27 内フランジ
28 ジャケットパイプ
29 内フランジ
30 コイル圧縮ばね
31 スピンドル軸受
32 内部分
33 緩衝エレメント
34 中間部分
35 ばねリング
36 外部分
37 接続具
38 リベット継手
39 リング円板
40 フランジ
41 円板
42 スリーブ
43 磁石リング
44 センサエレメント
45 ボード
46 ケース
47 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に車両ボディである定置ベース部および特に車両ハッチまたは車両ドアである可動構造部の一方と結合できるケースパイプと、
前記可動構造部および前記定置ベース部の他方と結合できるジャケットパイプと、
ねじ付きスピンドルおよび前記ねじ付きスピンドルに嵌着されたスピンドルナットを有し、前記ケースパイプと前記ジャケットパイプとを互いに軸方向に相対運動できるようにするスピンドルドライブと、
前記スピンドルドライブを、クラッチ装置により作られた過負荷防止装置を介して回転自在に駆動するロータリドライブと、を備え、所定のトルクを超えると、その相互の回転不動の結合が解除できるよう構成された駆動装置であって、
多数のN極およびS極を有する磁石リング(43)が回転運動自在にセンサエレメント(44)の付近に配置されており、前記センサエレメント(44)と協働する前記磁石リング(43)が、前記クラッチ装置(15)において回り止めされた形態で前記ねじ付きスピンドル(16)と結合した部分(36)に配置され、
前記センサエレメント(44)が前記ケースパイプ(1)に対して不動の位置に配置されていることを特徴とする駆動装置。
【請求項2】
前記センサエレメント(44)が、前記クラッチ装置(15)のケース(46)の内壁に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−117673(P2012−117673A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−264855(P2011−264855)
【出願日】平成23年12月2日(2011.12.2)
【出願人】(593136649)スタビルス・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (27)
【氏名又は名称原語表記】Stabilus GmbH
【住所又は居所原語表記】Wallersheimer Weg 100, D−56070 Koblenz Germany
【Fターム(参考)】