説明

駆虫組成物

単独のまたは少なくとも1種のアベルメクチンまたはミルベマイシンタイプ他の抗寄生虫化合物を伴うサリチルアニリド、特にクロサンテルに感受性であることが知られている寄生虫に罹患している動物を処置するための局所「ポアオン剤」製品として提示された抗駆虫(anti-parasiticidal)組成物は、少なくとも20%(v/v)の1種または2種以上のアルコール類を含み、および随意にポリビニルピロリドン(PVP)、ポリオキシプロピレン/ポリオキシエチレンブロックコポリマー(ポロクサマー)、およびポリエチレングリコール類(PEG)からなる群から選択されるポリマー成分を含む送達システムの提供によりサリチルアニリドの生体利用性の増大を与え、それにより例えば(クロサンテルの血漿レベルに関して評価したように)クロサンテルの生体利用性を改善する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明分野
本発明は、駆虫組成物に関し、特に、随意に他の駆虫剤、例えば、アベルメクチン(avermectin)またはミルベマイシン(milbemycin)とともにサリチルアニリドに基づく、獣医用配合剤(combination products)に関する。かかる配合剤は、単体の駆虫剤の単独での使用によって確認されるよりも広いスペクトラムの寄生虫に亘る有効性を示す。
【0002】
発明の背景
温血動物は寄生虫の攻撃にさらされており、人は、家庭内のペット、飼育された家畜および外来動物を苦しめるこのような寄生虫の対策、苦痛の緩和および商売上の利益のために、長く模索してきた。寄生虫による攻撃方法および寄生虫の生活環における感受性ステージの同定は、防除剤の選択に大きく影響を与え得る。したがって、ローション剤、ペイント剤、クリーム剤、ゲル剤、粉剤、「ポアオン剤(pour-on)」およびディップ剤などの局所的に塗布する製剤を用いた経皮的処置は外部寄生虫に対して共通して好適であるが、しかし、内部寄生虫を防除するためには、投与方法および送達システムの注意深い選択が要求される。
【0003】
飼料混合物に組み入れるための経口の水薬、ペースト剤、ボーラス、錠剤および顆粒剤は、畜産業者(animal husbandrymen)により用いられることを可能にする既知の方法であるが、消化管経路の使用を避けることを意図する他の方法は、典型的には、資格のある施術者によって投与される。かかる他の方法には、エアゾールおよび意図する送達投与スキームに従う皮下、皮内および筋肉内注射を意図して選択的に調製される溶液もしくは懸濁液もしくは微粉末の処方である経皮薬組成物の使用が含まれる。これらの最後の方法は、注射部位での過敏症を避けるための処方または可能性のあるアレルギーまたは発熱の副作用に特別な注意を要する。
【0004】
製剤(処方)は、水性または非水性(「溶媒」)ビヒクルを用いて、典型的に調製される。後者の分類には、生理学的に耐性のアルコール類、グリコール類、エステル類、限定された範囲の芳香族有機溶剤および植物油ならびにそれらの抽出物または修飾体を含み得る。ビヒクルの選択において、熟練した作業者は、意図した活性成分の溶解性、あるビヒクルに対する薬剤の親和性、必須の助剤に影響を与えるか、pH、長期間の安定性、粘度、および当然ながら処置すべき動物への毒性効果の危険を含む多くの問題について考慮しなければならない。したがって、駆虫剤の処方は複雑な仕事である。
伝統的な駆虫剤には、ベンズイミダゾールなどの化学剤およびカーバメートならびにマダニ(ticks)およびハダニ(mites)などの外部寄生虫に対抗するために用いられる傾向にあるピレスロイドなどの植物抽出物が含まれる。
【0005】
サリチルアニリドは、糸状菌の攻撃に対して効果的である傾向にあるが、化学的に修飾した誘導体のクロサンテルは、効果的な寄生虫除去(worming)剤である。クロサンテルは、米国特許第4005218号および例えば、J.Guerrero et al, J.Parasitol.68,616, (1983); H.Van den Bossche et al, Arch.Int.Physiol.Biochim, 87, 851(1979); H.J.Kane et al, Mol.Biochem.Parasitol.1, 347(1980)などの文献において記載されている。
【0006】
クロサンテルは、典型的に経口経路で、例えばボーラス、または経口の水薬として、あるいは注射液として非経口で、投与される。WO 95/05812において、アバメクチンおよびクロサンテル含有の注射可能な寄生虫駆除(anthelmintic)組成物を、グリセロールフォーマル(glycerol formal)により、随意にポリエチレングリコール400、またはプロピレングリコールなどのグリコールベースの溶媒を使用して、作り出すことができることが提案されている。しかしながら、投与の局所経路は一般的に、他のどの経路(注射または経口経路)よりもゆっくりであるから、皮膚を通してのクロサンテルの吸収は、非常にゆっくりであると予想されるので、したがってクロサンテルの血漿レベルは、他のどの経路による送達により得られるものよりも低いことが予想される。
【0007】
クロサンテルはまた、極めて疎水性であり、極めて迅速かつ十分に血漿タンパク質に結合するが、これもまた、局所手段による投与が、達成可能な血漿濃度を低減させるであろうことを、当業者に示している。
したがって、現在、ポアオン剤としてクロサンテルの投与に適合した既知の市販の処方はない。
【0008】
アベルメクチンは、哺乳動物における広範囲の内部寄生虫および外部寄生虫に対して有用であり、作物および土壌の内外における種々の寄生虫に対する農業上の用途を有する極めて強力な抗寄生虫剤である。塩基性であるアベルメクチン化合物は、土壌微生物Streptomyces avermitilisの醗酵ブロスから単離され、これらの化合物は、米国特許第4310519号明細書に記載されている。さらに、これらの塩基性のアベルメクチン化合物の誘導体は、種々の化学的手段によって製造されている。
【0009】
アベルメクチン群の化合物の中には、22,23−二重結合を含むものがあり、また他のものは、α−L−オレアンドロシル−α−L−オレアンドロシル基からなる13位の二糖を含む。1つまたは両方の糖単位は除去可能であり、米国特許第4206205号明細書に記載のとおり、単糖またはアグリコン(両方の糖が除去されたもの)を形成する。アグリコン誘導体は、米国特許第4171314号および第4173571号明細書に記載のとおり、13位に、13−デオキシ化合物を形成するため除去してもよいヒドロキシ基を有している。アベルメクチン化合物および誘導体でのヒドロキシ基のアシル化は、米国特許第4201861号明細書に記載のとおり行うことが可能である。
【0010】
米国特許第3950360号明細書に開示されている化合物のミルベマイシンの一群は、構造的にアベルメクチンファミリーに似ており、16員の大環状の環を含む。しかしながら、二糖のサブユニットを含まず、置換基が異なる。
【0011】
イベルメクチン(ivermectin)は、米国特許第4199569号明細書に開示されているが、アベルメクチン化合物の22,23二重結合の選択的還元によって製造される。イベルメクチンは、22,23−ジヒドロアベルメクチンB1aおよびB1bの少なくとも80:20の比での混合物である。
イベルメクチンは、殺虫組成物における特に好ましい活性成分であり、その活性についての豊富な文献があり、その内部および外部の寄生虫に対する有効性およびある寄生虫の生活環に干渉する能力が示されている。The Merck Index (1996) には、わずかであるが、J.C.Chabala et al, J.Med.Chem.23, 1134 (1980); J.R.Egerton et al, Brit.Vet.J.136, 88 (1980); W.C.Campbell et al, Science 221, 823-828 (1983)を含むいくつかの参考文献が挙げられている。
【0012】
種々のプレゼンテーション、例えば、経口水薬、ポアオン剤、経皮処方、飼料添加用顆粒および注入可能なペーストなどにおける送達目的でのイベルメクチンの処方は、熱心に取り組まれてきており、その使用について多数の特許が発行されている。イベルメクチンは親油性の特徴を示すが、水系に溶解することができ、そして種々の特許は、その処方における使用のための特別な溶媒系について記述する。したがって参照文献としては、例えば、少なくともEP 0 045 655およびEP 0 146 414が挙げられてもよい。
【0013】
イベルメクチンは、驚くほど効果的で、長期間商業的に成功を収めてきたが、まだ、より広範囲の寄生虫に対するイベルメクチンを開発すること、および、より多量の送達すべきイベルメクチンを必要とするいくつかの寄生虫による耐性を克服することにおいて、強い関心が残っている。食用を目的とした動物の保護および処置におけるかなりの量のイベルメクチンの使用があるという事実を考慮すると、かかる動物の死骸におけるイベルメクチンなどの活性成分の残余量に対する制約がある。したがって、技術的に実現可能であっても、送達システムにおけるイベルメクチンの高負荷は、必ずしも最適な解決ではない。
【0014】
配合処方はまた、より伝統的な駆虫剤の長期使用に対する害虫の獲得した耐性または抵抗性を考慮すると望ましい。この現象は、例えば、寄生虫除去組成物に関して、よく記録されている。配合駆虫剤の相乗効果または補完的効果は、前述の耐性問題に対抗する手段として観察されてきた。相乗的な寄生虫駆除組成物は、WO 94/28887において議論されており、そこでは、置換されたモノ−およびビスフェノール、サリチルアニリド、ベンゼンスルホンアミド、ハロゲン化ベンズイミダゾール、ベンズイミダゾールおよびベンズイミダゾールカーバメートに焦点が当てられている。
【0015】
アベルメクチンと他の駆虫剤との使用の組み合せの機会は、既に調査されている。そして、トリクラベンダゾールを含有し、随意にアベルメクチン、テトラミゾール(tetramisole)またはレバミゾール(levamisole)を含有する皮膚吸収性ポアオン処方がWO 00/61068において提案されていることが見出される。アベルメクチンまたはミルベマイシンを伴なうクロサンテルを含有する注射可能な処方が、WO 95/05812において提案されている。ポアオン剤および注入可能なタイプの処方は、WO 01/60380に示唆してあり、随意にプロピレングリコールカプリル酸およびエステルまたはピーナツオイルなどの溶解剤を含む、ピロリドン溶媒およびキシレンなどの架橋溶媒(bridging solvent)の使用を含む。この特別な溶媒系は、クロサンテルおよびイベルメクチンなどの異なる駆虫剤を一緒に処方化する困難性に取り組むのに必要である。これらの処方の有効性についての開示はなされていない。
【0016】
他の非水性ポアオン処方は、WO97/13508に開示されており、一連の溶媒、特にポリアルコール類、それらのエーテル類およびそれらの混合物を、随意に種々の共溶媒と組み合わせて使用する。参考文献には、そこに開示された処方の試験結果を表す一方、以下に比較例において議論するように、処置動物の血流中への活性成分の輸送の達成において限られた成功を示している。
【0017】
クロサンテルなどのサリチルアニリド誘導体は、一連の寄生虫に対する有用なコントロールを提供し、肝吸虫に対して特に有用である。イベルメクチンが最も知られた例であるアベルメクチン群の抗寄生虫化合物は、回虫などの多くの他の寄生虫に対する補完的保護を提供する。したがって、これらの薬剤の配合物を、家畜に簡便に投与することができ、寄生虫の感染の効果的な制御を提供する形で提供することができるならば、獲得すべき利点が存在する。
【0018】
特に、クロサンテルおよびイベルメクチン含有の効果的なポアオン処方の提供は、したがって非常に望ましい目標である。各薬剤の溶解計画が異なるので、満足する処方の提供には問題がある。アルカリ系は、クロサンテル用の最適pHを提供する一方、イベルメクチンは、十分な溶解のためには酸性の基質が必要である。
【0019】
発明の課題
したがって、本発明の課題は、改善された獣医用医薬製剤を提供することである。特に本発明の課題は、吸虫類を含む広い範囲の内部および外部寄生虫に対して活性を有する組成物を提供することである。本発明のさらなる課題は、好ましくはポアオン処方としてクロサンテルが存在する、局所投与に好適な製剤を提供することである。本発明のまたさらなる課題は、先行技術において既知のものを超えてクロサンテルの生体利用性を増大させることが可能な効果的な処方の、イベルメクチンおよびクロサンテルを配合した獣医薬製品を提供することである。
【0020】
発明の概要
驚くべきことに、サリチルアニリドは、随意に他の寄生虫駆除剤と共に、1種または2種以上のアルコール類に溶解することができ、およびこの処方は、予め決定された期間にわたり動物の皮膚に局所適用するとき、動物の血中で有効なレベルのサリチルアニリドならびに他の寄生虫駆除剤を提供する「ポアオン剤」処方として有用であることが見出された。
【0021】
したがって、本発明は、特にクロサンテルまたは同類のサリチルアニリド含有の配合剤、特に、例えば、アベルメクチンまたはミルベマイシン型の駆虫剤とともに、駆虫剤の効果的な生体有用性を有するサリチルアニリドをベースとした2成分処方の、効果的なポアオン駆虫組成物を提供することができる。
【0022】
ポリマー成分(polymeric moiety)の含有によって、本発明のポアオン駆虫組成物の有効性を増大させることができる。1種の好適なポリマー成分は、ポリエチレングリコール(PEG)またはポリビニルピロリドン(PVP)であるが、他のポリマー成分、例えばポリオキシプロピレン/ポリオキシエチレンブロックコポリマー(ポロクサマー)を使用してもよい。これらのポリマー成分の組み合わせはまた、本明細書中に記載の本発明の実施を考慮する。それらの量は、変動するが、少なくとも0.1%(w/v)から35%(w/v)まで、またはそれ以上のポリマー成分を検討すべきであり、約20%(w/v)の量が、好ましい。
PEGなどのポリマー成分の存在により、本発明のポアオン処方に溶解可能なクロサンテルのレベルが増加すると考えられる。
【0023】
本発明の一面によれば、サリチルアニリド、特にクロサンテルは、ポアオン処方中に存在し、少なくとも20%v/vの1種または2種以上のアルコール類を含む送達システムの存在により特徴付けられる。好ましいアルコール類は、一価脂肪族または芳香族アルコール類、より好ましくは低級アルカノール類(C〜C)である。最も好ましい送達システムは、少なくとも20%v/vエタノールを含み、使用の際処方を100%v/vにするためにイソプロパノールをさらに使用する。
【0024】
典型的に、本発明の送達システムはさらに、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルピロリドン(PVP)およびポリオキシプロピレン/ポリオキシエチレンブロックコポリマー(ポロクサマー)から選択されたポリマー成分を含む。送達システムが、PEG、PVP、またはポロクサマーを含むとき、皮膚を通しての活性成分のさらなる透過を与え、したがって処置対象の血漿中の活性薬剤の利用可能量を増加させるポアオン処方を提供することが見出された。
【0025】
送達システムを、界面活性剤、苦味(embittering)変性剤(舐め防止剤(anti-licking))、保存剤、拡散助剤(spreading aid)、浸透または閉塞促進剤、および抗酸化剤、例えばブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、またはホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、などの典型的な処方助剤と共に使用するために作成してもよい。
【0026】
本発明の別の面によれば、駆虫組成物は、サリチルアニリド類の中から選択された第一の駆虫剤を、アベルメクチンおよびミルベマイシンから選択された別の駆虫剤とともに含み、送達システム中に、少なくとも20%v/vの1種または2種以上のアルコール類を含む。送達システムは、第一級、第二級、第三級および芳香族アルコール類を含有してもよい。好ましいアルコール類は、一価脂肪族または芳香族アルコール類、より好ましくは低級アルカノール類(C〜C)である。最も好ましい送達システムは、少なくとも20%v/vのエタノーを含み、使用の際処方を100%v/vにするためにイソプロパノールをさらに使用する。典型的に、本発明の溶液はさらに、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルピロリドン(PVP)およびポリオキシプロピレン/ポリオキシエチレンブロックコポリマー(ポロクサマー)から選択されたポリマー成分を含む。
【0027】
したがって、アルコールの、例えばエタノールのみのあるいはイソプロパノールおよび/またはPEG、PVPまたはポロクサマーなどのポリマー成分と組み合わせての使用は、必要に応じ法的に規定された使用中止期限に注意し、処置した動物の人の消費のための食肉処理を可能にすると同時に、使用するポリマー成分の量で、効果的な処置の制御可能な期間を提供するための処方に設計される所望の効果期間を実現するなど、長期作用効果を有するクロサンテルを含むポアオン駆虫組成物の製造に効果的であることが見出された。ポリマー成分は、送達システムにおいて、特に水の存在下でクロサンテルの溶解度を維持する。さらに、PEGまたはPVPなどのポリマー成分の使用により、本発明の処方中に存在するイベルメクチンなどのアベルメクチンの生体利用性が阻害されず、ポリマー成分、例えばPVP、ポロクサマー、PEG、またはそれらの組み合わせを含むポアオン処方を、多様性のある性質の活性成分の効果的な送達に使用することができることを示し、したがって動物の健康分野において広範の実用性を見出す可能性がある。
【0028】
好適な送達システムは、脂肪族および芳香族アルコール類、すなわち第一級、第二級、第三級および芳香族アルコール類からなる群から選択される溶媒および共溶媒を含む。好ましいアルコール類は、一価脂肪族または芳香族アルコール類、より好ましくは低級アルカノール類(C〜C)である。最も好ましい送達システムは、少なくとも20%v/vのエタノールを含み、使用の際処方を100%v/vにするためにイソプロパノールをさらに使用する。好ましくは、前記アルコール類の1種は、少なくとも20%v/vの量で存在するエタノールであり、別のアルコールは、使用の際処方を100%v/vにするために使用することができるイソプロパノールである。
【0029】
あるいは、送達システムは、エタノールなどの低級脂肪族アルコールをPEG溶媒などのグリコール溶媒と共に含み、そこに使用の際処方を100%v/vにするためにイソプロパノールを添加する。
【0030】
分子量に応じて、一連のPEG溶媒が、市販されており、それらのいずれも、または利用可能になり得るものであれば他のものでも、処方中に液体としてPEGが提示されるか、利用可能になれば、便宜上選択され得る。典型的には、PEG200から6000が容易に商業的供給源から入手され、したがって本明細書中の目的で使用可能であるが、PEG200〜PEG600が本発明において有益に用いられる。好ましい送達システムは、溶媒PEG200をエタノールおよびイソプロパノールと共に含み、ポリマー成分(例えばPVP)との併用により、透過性を増大させる。
【0031】
ある割合のPVPを、より高分子量の、20000までの分子量のポリエチレングリコール類により置換してもよい。
したがって、本発明によれば、サリチルアニリド、好ましくはクロサンテルと、アベルメクチン、好ましくはイベルメクチンとの単一の注射可能な処方を得ることが可能であり、動物に投与した場合、クロサンテルおよびイベルメクチンの効果的な血漿濃度が容易に達成できるように効果的にクロサンテルを送達する。もちろん、臨床的理由により、所望の場合、これらの活性成分の1種のみを含有する処方を利用することができる。
【0032】
かかる処方に有用な好ましい駆虫剤の能力範囲は、
クロサンテル − 1〜30%w/v、好ましくは1〜15%w/v;
イベルメクチン − 0.1〜10%w/v、好ましくは0.1〜5%w/v;
である。
効果的であることが要求されるポリマー成分、特にPEGの量は、混合物の所望のサリチルアニリド活性に依存するが、好ましくは少なくとも3%(w/v)のPEG、より好ましくは20%(w/v)が、例えば、達成が望まれるクロサンテルのより高い効果的な量を可能にするために使用される。使用されるポリマー材料の量は、送達システムにおいて使用されるアルコールの量のみに限定され、したがって80%v/vまでであり得る。
【0033】
図面の説明
以下の一枚の添付図面は、本発明の処方と市販品との薬物動態プロファイルの比較をグラフにより説明する。
【0034】
発明の実施形態
本発明を、現在知られている最良の形態に従って具体例により、さらに説明する。
【0035】
処方例
ポアオンプレゼンテーションにおける送達のための2成分配合剤の調製において、活性成分クロサンテルおよびイベルメクチンについて、10%(w/v)のクロサンテルおよび0.5%(w/v)のイベルメクチンを送達するための量を提供した。使用した送達システムは、活性物の効果的な溶媒化のために容易に提供される溶媒PEG200、エタノールおよびイソプロピルアルコールを、透過促進剤とともに含み、いくつかの具体的な処方の組成物は、以下のとおりである:
【0036】
【表1】

【0037】
製剤の一般的方法:
これらの処方は、通常の工業的手法に続いて仕上げた。
【0038】
投与例
上記のように作成した処方(1、2および3)を、認められた工業的手順に従い、投与のために提示し、それらの試験を以下に示す。
上記組成物(処方1、2および3)に従った、クロサンテルおよびイベルメクチン含有の処方を、500μg/kg体重に等しいイベルメクチン用量率、および10mg/kg体重のクロサンテル用量率でウシに適用した。
クロサンテルについての血漿結果を、表1、4および5に、およびイベルメクチンについてを、表2、3および6に示す。
【0039】
表1
ある時の10mg/kg体重の用量率での処方1のポアオン投与後の、クロサンテルの血漿レベル(μg/ml)
【表2】

【0040】
表2
ある時の500μg/kg体重の用量率での処方1のポアオン投与後の、ウシにおけるイベルメクチンの血漿レベル(ng/ml)
【表3】

【0041】
表3
ある時の500μg/kg体重の用量率での処方2のポアオン投与後の、ウシにおけるイベルメクチンの血漿レベル(ng/ml)
【表4】

【0042】
表4
ある時の10mg/kg体重の用量率での処方2のポアオン投与後の、クロサンテルの血漿レベル(μg/ml)
【表5】

【0043】
表5
ある時の10mg/kg体重の用量率での処方3のポアオン投与後の、クロサンテルの血漿レベル(μg/ml)
【表6】

【0044】
表6
ある時の500μg/kg体重の用量率での処方3のポアオン投与後の、ウシにおけるイベルメクチンの血漿レベル(ng/ml)
【表7】

【0045】
表2、3および6から、市販の(イベルメクチンのみの)製品を使用して得られたものと類似のイベルメクチンのレベルを達成するから、イベルメクチンについて達成された血漿レベルは、ウシの処置に好適であることが分かる。
【0046】
表1、4および5から、血漿濃度が製品の臨床上の殺吸虫(flukicidal)有効性のために重要であることから、達成されたクロサンテルレベルは、臨床的に効果的な製品に望ましいものであることが分かる。血漿濃度の増加により、駆除され得る吸虫の齢が低下し、したがって完治の可能性を増加させることから、殺吸虫活性の成功は、殺吸虫剤(flukicide)の血漿濃度に基づくことが知られている。表1、4および5に示したクロサンテル血漿濃度により、本発明の処方は、成虫のおよび未成熟の吸虫に対して効果的であることが推測される。
【0047】
クロサンテルについて得られた結果はまた、10mg/kgのクロサンテルの局所用量率が、たった8.37μg/mlの最大血漿レベル(10日で)しか生み出さなかったという、WO 97/13508で得られたものよりも著しく優れている。その出願の処方は、52.97mg/kgの血漿レベルを達成するために、40mg/kgの用量を必要とした。10mg/kg用量についてのその文献からの結果を、図面内の表2のものと図解的に比較する。本発明の処方が、最大濃度および活性の持続期間に関して非常に優れた薬物動態プロファイルを提供することが明らかに分かり、本発明が、全ステージの吸虫類に対して優れた臨床上の有効性を有する製品を提供することを示している。かかるプロファイルを達成するためには、所望の血漿レベルを達成するために、WO 97/13508の処方を、40mg/kgというクロサンテルの極めて高い用量率で投与しなければならず、これは動物に毒性の高い危険性をもたらし、したがって薬物動態プロファイルを打ち消す。したがって、本発明の組成物は、従来技術よりも驚くほど優れていることが分かる。
【0048】
産業利用性
本明細書に記載の構成の先に述べた利点および特性の観点から、本発明は、特に、典型的に、ウシ、ウマ、ヒツジおよびヤギなどの家畜を苦しめる内部寄生虫および外部寄生虫に対抗するため、獣医薬の分野において有用に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の処方と市販品との薬物動態プロファイルの比較をグラフにより説明した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗寄生虫ポアオン組成物であり、少なくとも20%(v/v)の1種または2種以上のアルコール類を含む送達システム、および有効量のサリチルアニリド抗寄生虫化合物の存在により特徴付けられる、前記組成物。
【請求項2】
さらに有効量の少なくとも1種の他の抗寄生虫化合物を含む、請求項1に記載の抗寄生虫組成物。
【請求項3】
サリチルアニリドがクロサンテルまたはその薬学的に許容しうる塩である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
他の抗寄生虫化合物が、ミルベマイシンからなる群から選択される、請求項2または3に記載の組成物。
【請求項5】
他の抗寄生虫化合物は、アベルメクチンからなる群から選択される、請求項2に記載の組成物。
【請求項6】
抗寄生虫化合物はイベルメクチンである、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
イベルメクチンが、0.1〜10%(w/v)の範囲の量で存在する、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
クロサンテルが、1〜30%(w/v)の量で存在する、請求項2または3に記載の組成物。
【請求項9】
送達システムが、第一級、第二級、および第三級脂肪族アルコール類からなる群から選択されるアルコール類を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
送達システムが、芳香族アルコール類からなる群から選択されるアルコール類を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
送達システムが、低級アルカノール類(C〜C)からなる群から選択されるアルコール類を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
送達システムが、ポリエチレングリコール、イソプロピルアルコールおよび少なくとも20%のエタノールを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
送達システムが、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドンおよびポロクサマー類からなる群から選択される1種または2種以上のポリマー成分を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
ポリマー成分が、0.1%(w/v)〜80%(w/v)の範囲の量で存在する、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
ポリマー成分が、3%(w/v)〜20%(w/v)の範囲の量で存在する、請求項13に記載の組成物。
【請求項16】
ポリマー成分がポリビニルピロリドンである、請求項13に記載の組成物。
【請求項17】
送達システムがまた、以下の助剤:界面活性剤、苦味変性剤(舐め防止剤)、保存剤、拡散助剤、浸透または閉塞促進剤、および抗酸化剤、の少なくとも1種を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
成虫の吸虫類および未成熟の吸虫類を根絶することにおける使用のための、請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
本明細書中の処方例に記載の組成物。

【図1】
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【公表番号】特表2007−528866(P2007−528866A)
【公表日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−519991(P2006−519991)
【出願日】平成16年7月12日(2004.7.12)
【国際出願番号】PCT/GB2004/003006
【国際公開番号】WO2005/007241
【国際公開日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【出願人】(504326424)ノルブルック ラボラトリーズ リミテッド (2)
【Fターム(参考)】