説明

駐車枠検出装置

【課題】駐車枠検出装置において、コンクリートの灰色の路面に黄色やオレンジ色で描かれた駐車枠線を抽出し、さらに、白色で描かれた駐車枠線に対する処理と区別することなく、従来のエッジ検出により駐車枠を検出することにある。
【解決手段】制御手段14は、撮像手段12により撮像した画像のRGB信号に基づいて前記画像上の黄色系部分を抽出する黄色系抽出手段14Bと、この黄色系抽出手段14Bにより抽出された黄色系部分の画素の輝度に予め設定された値を加算する輝度加算手段14Cとを備え、この輝度加算手段14Cにより予め設定された値を加算された画像から駐車枠を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、駐車枠検出装置に係り、特に車両に取り付けた撮像手段(カメラ)により撮像された画像から駐車枠(駐車スペース)を検出する駐車枠検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、駐車時の運転を支援するために、駐車枠検出装置を搭載しているものがある。この駐車枠検出装置は、駐車後退動作時に、車両後部に取り付けた撮像手段(カメラ)により撮像された画像から駐車枠(駐車スペース)を検出し、運転者の運転操作を支援するものである。
このような駐車枠検出装置においては、画像中の駐車枠線を検出するために、画像中の駐車枠線のエッジを検出する際に、通常は、Sobelフィルタ、ラプラシアン等の2次元オペレータを用いた後、閾値を用いた2値化を行っているが、一意にこの閾値を決定することが困難である場合が多かった。
そして、駐車枠に自車を止めるために、駐車枠線を検出する場合は、画像中縦方向に現れる駐車枠線のエッジを検出する必要がある。この駐車枠線のエッジの検出にあたっては、路面の模様、影、照明等の影響を極力排除する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−306224号公報
【特許文献2】特開2006−290051号公報
【0004】
特許文献1に係る駐車支援装置及び駐車支援方法は、駐車可能と判定した運転操作パターンのうち、現在位置から最初に行うべき運転操作を、駐車枠に駐車させるために必要な運転操作として求めて、駐車枠に駐車可能か否かの情報と、駐車枠に駐車させるために必要な運転操作のうち、最初に行うべき運転操作を識別する情報とを、駐車枠と共に、表示させるものである。
特許文献2に係る駐車支援装置及び駐車支援方法は、自車両が障害物に接近したときの心理的な負荷を考慮して、後退移動させて駐車させる時の後退開始位置を設定するものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来、駐車枠検出装置においては、図27の入力画像に示すように、駐車場101のコンクリートの灰色の路面102に黄色やオレンジ色等で描かれた駐車枠線103にあっては、横方向に直線の計測ラインL上でラインプロファイル(輝度変化)を測定した場合に、図28のラインプロファイル(輝度変化)に示すように、路面102と左側駐車枠線・右側駐車枠線に明確な輝度(予め設定された閾値を超える程度の輝度)の差が無いため(この例として、黄色やオレンジ色の駐車枠線103は、灰色の路面102よりも輝度が低い)、駐車枠線103の抽出ができない問題があった。
また、図29には、駐車枠線のエッジを検出した従来例を示すが、エッジが十分に検出されていないことがわかる。
更に、上記の特許文献1では、駐車枠線が白線で描かれていると定義し、また、上記の特許文献2では、駐車枠線のエッジの検出において、「画像処理部は、カメラ画像データのエッジ強度やエッジ形状と、予め求めておいた駐車枠線を示すエッジ強度やエッジ形状とを比較して、エッジを検出する」としているため、予め求めていない未知の駐車枠線の抽出には対応することができないという不都合があった。
更にまた、図30に示す通常のSobelフィルタだけでは、駐車枠線のエッジを十分に検出することができなかった。
【0006】
そこで、この発明の目的は、駐車枠線のエッジの検出の際の閾値の決定手段(適応制御的なもの)を不要とし、処理を簡素化して、駐車枠線の両端に生じるエッジを路面の模様、影、照明等の影響を極力排除して信頼性を高くし、路面と駐車枠線との輝度差が少ない場合にも、安定した駐車枠の検出を行うことができる駐車枠検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、車両周囲を撮像する撮像手段と、この撮像手段により撮像した画像から駐車枠を検出する制御手段とを設けた駐車枠検出装置において、前記制御手段は、前記撮像手段により撮像した画像のRGB信号に基づいて前記画像上の黄色系部分を抽出する黄色系抽出手段と、この黄色系抽出手段により抽出された黄色系部分の画素の輝度に予め設定された値を加算する輝度加算手段とを備え、この輝度加算手段により予め設定された値を加算された画像から駐車枠を検出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明の駐車枠検出装置は、駐車枠線のエッジの検出の際の閾値の決定手段(適応制御的なもの)を不要とし、処理を簡素化して、駐車枠線の両端に生じるエッジを路面の模様、影、照明等の影響を極力排除して信頼性を高くし、路面と駐車枠線との輝度差が少ない場合にも、安定した駐車枠の検出を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は駐車枠検出のフローチャートである。(実施例1)
【図2】図2は駐車枠検出装置の制御ブロック図である。(実施例1)
【図3】図3は駐車場の駐車枠及び車両を示す平面図である。(実施例1)
【図4】図4は通常のラインプロファイル(RGB)(輝度変化)を示す図である。(実施例1)
【図5】図5はR成分、G成分、B成分毎に分離した画像のうちR成分の画像を示す図である。(実施例1)
【図6】図6はR成分、G成分、B成分毎に分離した画像のうちB成分の画像を示す図である。(実施例1)
【図7】図7はR値とB値との差分の画像を示す図である。(実施例1)
【図8】図8は図7のラインプロファイル(輝度変化)を示す図である。(実施例1)
【図9】図9は駐車枠線(黄色系)の検出結果の画像を示す図である。(実施例1)
【図10】図10(A)は白色の駐車枠線に適用した場合の入力画像を示す図である。10(B)は白色の駐車枠線に適用した場合の判定処理結果の画像を示す図である。(実施例1)
【図11】図11は駐車枠線(黄色系)に輝度値を加算した場合の画像を示す図である。(実施例1)
【図12】図12は駐車枠線のエッジの検出結果の画像を示す図である。(実施例1)
【図13】図13は白色の駐車枠線に適用した場合の画像を示す図である。(実施例1)
【図14】図14(A)は、差分オペレータを示す図である。図14(B)は、白線両端微分値強調フィルタのオペレータを示す図である。(実施例1)
【図15】図15は白線の検出処理の流れを示す図である。(実施例1)
【図16】図16はエッジ検出の処理前の画像を示す図である。(実施例1)
【図17】図17はエッジ検出で閾値を「1」とした場合の画像を示す図である。(実施例1)
【図18】図18はエッジ検出で閾値を「10」とした場合の画像を示す図である。(実施例1)
【図19】図19はエッジ検出で閾値を「20」とした場合の画像を示す図である。(実施例1)
【図20】図20(A)は「設定1」として「壁(320.240)の明るさ 180」とした場合のエッジ検出前の画像を示す図である。図20(B)は「設定1」として「壁(320.240)の明るさ 180」とした場合のエッジ検出後の画像を示す図である。(実施例1)
【図21】図21(A)は「設定2」として「壁(320.240)の明るさ 62」とした場合のエッジ検出前の画像を示す図である。図21(B)は「設定2」として「壁(320.240)の明るさ 62」とした場合のエッジ検出後の画像を示す図である。(実施例1)
【図22】図22(A)は「設定3」として「壁(320.240)の明るさ 32」とした場合のエッジ検出前の画像を示す図である。図22(B)は「設定3」として「壁(320.240)の明るさ 32」とした場合のエッジ検出後の画像を示す図である。(実施例1)
【図23】図23は図22の「設定3」にて閾値を「5」とした場合の画像を示す図である。(実施例1)
【図24】図24は駐車枠検出のフローチャートである。(実施例2)
【図25】図25は駐車枠検出装置の制御ブロック図である。(実施例2)
【図26】図26はこの実施例の検出方法をSobelフィルタに適用した場合のエッジ検出の画像を示す図である。(変形例)
【図27】図27は従来における入力画像を示す図である。(従来例)
【図28】図28は図27のラインプロファイル(輝度変化)を示す図である。(従来例)
【図29】図29は従来におけるエッジ検出の画像を示す図である。(従来例)
【図30】図30は通常のSobelフィルタによるエッジの画像を示す図である。(従来例)
【発明を実施するための形態】
【0010】
この発明は、駐車枠線のエッジの検出の際の閾値の決定手段(適応制御的なもの)を不要とし、処理を簡素化して、駐車枠線の両端に生じるエッジを路面の模様、影、照明等の影響を極力排除して信頼性を高くし、路面と駐車枠線との輝度差が少ない場合にも、安定した駐車枠の検出を行う目的を、撮像した画像の輝度信号と色差信号とからRGB信号へ変換し、このRGB信号に基づいて画像上の黄色系部分を抽出し、この黄色系部分の画素の輝度に予め設定された値を加算し、この加算された画像から駐車枠を検出して実現するものである。
【実施例1】
【0011】
図1〜図23は、この発明の実施例1を示すものである。
図3において、1は車両、2は駐車場である。
この駐車場2は、コンクリートであり、灰色の路面3を有する。
この駐車場2の路面3には、駐車枠(駐車スペース)4が区画されている。
この駐車枠4は、車両1の駐車範囲を区画する駐車枠線5として、長手方向の平行な左側駐車枠線(黄色線又はオレンジ色線)6・右側駐車枠線(黄色線又はオレンジ色線)7と、この左側駐車枠線6・右側駐車枠線7の左前側端部・右前側端部とを繋いで左側駐車枠線6・右側駐車枠線7に対して直交する短手方向の前側駐車枠線(黄色線又はオレンジ色線)8とで、形成される。
また、駐車枠4には、後方部で、輪止めとして、左右の輪止め9・10が直列で短手方向に配設されている。
【0012】
車両1には、駐車枠検出装置11が搭載される。
この駐車枠検出装置11は、図2に示すように、車両周囲を撮像する超広角の撮像手段(カメラ)12と、この撮像手段12に連絡した画像記録手段13と、この画像記録手段13に連絡した制御手段14とを備えている。
撮像手段12は、車両1の後部に取り付けた超広角のバックカメラ等の撮像機器からなり、車両周囲を撮像する。
画像記録手段13は、ビデオデコーダ等の記録機器からなり、撮像手段12により撮像した画像を記録するとともに制御手段14に出力する。
【0013】
制御手段14は、撮像手段12により撮像した画像から駐車枠線5を抽出して駐車枠4を検出するものであって、撮像手段12により撮像した画像の輝度信号と色差信号とからRGB(レッド グリーン ブルー)信号へ変換するRGB変換手段14Aと、撮像手段12により撮像した画像のRGB信号に基づいて前記画像上の黄色系部分を抽出する黄色系抽出手段14Bと、この黄色系抽出手段14Bにより抽出された黄色系部分の画素の輝度に予め設定された値を加算する輝度加算手段14Cとを備え、この輝度加算手段14Cにより予め設定された値を加算された画像から駐車枠4を検出する。
また、前記黄色系抽出手段14Bは、RGB変換手段14Aにより変換されたRGB信号のR値がB値よりも大きく、かつ、G値がB値よりも大きく、かつ、R値からB値を減算した値が予め設定された値よりも大きい画素を黄色系部分として抽出する。
【0014】
次に、この実施例に係る黄色やオレンジ色の駐車枠線5の抽出のために色情報を併せて用いる方法を説明する。
一般に、従来の図27のような灰色の路面102と黄色の駐車枠線103との輝度情報に顕著な差が無く、色情報のみ異なる場合に、隣接画素との色情報の違いを検出し、同一色の領域の抽出を行う手法が知られている。
しかし、実際の屋外の環境では、日光や照明等の条件により、例えば、暗所では、黄色でも、茶色に近い色に見え、また、明るい時は、白色に近い色となる。このため、撮像手段にて撮影された画像よりRの成分、Gの成分、Bの成分に分離して映像信号を確認しても、駐車枠線をきれいに抽出することが困難である。
例えば、夜間、周囲が暗い中で駐車枠線の一部に照明が当たっている場合、撮像手段のオートゲインコントロール等の影響により、R成分が飽和することがあるため、Rの成分、Gの成分、Bの成分の比率等は一定しない。
また、黄色は、理想的には、(R、G、B)=(255、212、0)であるが、実際の映像では、B値が、R値、G値に比べ極端に小さくなることは少ない。このため、単に事前に設定した色情報のみを用いて黄色の駐車枠線のエッジを抽出しようとすると、難しいものである。
例として、図27のラインプロファイル(輝度変化)をR値、G値、B値について計測したものを、図4に示す。
この図4において、左側駐車枠線・右側駐車枠線以外では、R値、G値、B値が略一致しているが、左側駐車枠線・右側駐車枠線では、R値とG値とB値の大小関係(R値が最も大きく、次いで、G値、B値が最も小さい)は同じであるが、その比や値は一定しておらず、また、R値、G値、B値、それぞれに範囲を設けることで、黄色系の色を抽出することは困難であることが確認できる。そのため、一定範囲のR値、G値、B値等の条件を用いて黄色の駐車枠線を抽出することは、困難である。
そこで、黄色やオレンジ色の駐車枠線であるので、R値とG値とはB値よりも大きいという条件と、R値とB値との差が第一の閾値以上であることを条件とした駐車枠線の抽出のための補正手法を提案する。
【0015】
ここで、図4に示すように、オレンジ色の駐車枠線にて、R>B、R>G、G>Bであることがわかる。
この条件により、先ず、R>B、G>Bを条件として、駐車枠線を抽出することを考える。
R>Gを使用しないのは、理想的には、黄色は、(R、G、B)=(255、212、0)であり、R>Gであるが、R=Gや、R<Gの領域でも黄色く見える場合が存在するため、ここでは、除外する。
例えば、図4における左右の駐車枠線上のR値、G値、B値を確認すると、B値は零(0)に近い値となっておらず、「170」程度の高い値になっていることがわかる。これは、図25では、画面全体が明るく白っぽいことから、R値、G値、B値のそれぞれの値に白色側でバイアスがかかった状態となっているためである。
また、R>B、G>Bの条件のみでは、白色、灰色、黒色等で、略R値、G値、B値が等しい色の領域にて、誤った領域が抽出されるため、問題がある。
そこで、図27におけるR値、G値、B値毎に分離した画像のうち、R値とB値に関するものと、その差分画像を、図5〜図7に示す。
図7では、駐車枠線の部分が周囲に比べ白っぽくなっていることがわかる。
そこで、図7中の直線(横方向)の計測ラインL上のラインプロファイル(輝度変化)を計測すると、図8のようになっていることがわかる。
【0016】
この図8では、左右の駐車枠線の部分に、輝度値50程度のピークP・Pが現れていることがわかる。
そこで、差分結果としての|R−B|(絶対値)が第一の閾値よりも大きいという条件を追加し、駐車枠線の抽出を行う。
先に、R>Bという条件があるため、|R−B|>(第一の閾値)、又は、|R−B|≧(第一の閾値)とすることも可能である。
ここで、第一の閾値を「15」とした場合に、図25に、R>B、G>B、|R−B|>(第一の閾値)での判定処理を適用した。この抽出結果を、図9に示す。
この図9では、一部異なった箇所も抽出されているが、直線状ではないため、後のハフ変換等の直線認識処理や孤立点除去にて排除される。
ここで、上記の条件、R>B、G>B、|R−B|>(第一の閥値)を、一般的なコンクリートの路面に白線が描かれている場合について適用すると、図10(A)、図10(B)のようになる。
【0017】
この図10(B)より、このような手法では、白線が抽出できない(白線の検出には影響しない)ことがわかる。
しかし、白線の場合は、従来手法等で、隣接画素との輝度値の比較等の処理にてエッジの抽出が可能である。黄色系の駐車枠線についても、白線と同様の処理でエッジ抽出が可能なように工夫を行う。
黄色系の駐車枠線が従来の白線に適用したエッジの抽出手法にてエッジの抽出が行えない理由は、図28に示したように、駐車枠線と背景(路面)の間の輝度差が少ないことに起因している。
つまり、黄色系の駐車枠線が周囲に比べ十分に明るく(輝度値が高い)なれば、従来と同様の輝度値を用いたエッジ検出が適用できる。
そこで、この実施例では、図11のように、抽出された黄色系の駐車枠線の輝度値(YCbCrにおけるY値)に一定の値を加算する。ここでは、エッジ検出処理を、隣接画素値との差分により行う。
例として、その閾値を「10」としたときの3倍程度の「30」を、輝度値に加算する。これは、図8に示したように、この実施例によって抽出される黄色系の駐車枠線は、その輝度値が一定ではなくピークP・Pを持つため、第一の閾値以上となった領域全てを周囲(路面)に対して十分に明るくするためである。
輝度値を加算した結果を、図11に示す。この図11を用いて隣接画素値との差分を用いたエッジ抽出結果を、図12に示す。
この図12より、図29と比較して駐車枠線のエッジが検出できていることが確認できる。なお、この場合、具体的な各閾値は、使用する撮像手段(カメラ)、画像記録機器(ビデオデコーダ)の特性等により変化するため、それらに合わせて調整が必要である。
【0018】
この実施例に係る検出処理において、図10(A)、図10(B)に示した白色の駐車枠線に適用した場合のエッジ検出結果を、図13に示す。この図13では、エッジ検出に悪影響が無いことが確認できる。
ここで、R>B、G>B、|R−B|>(第一の閥値)という条件は、黄色から赤色にかけての色を含む領域が抽出することとなる。通常、駐車枠線として路面に赤い線が描かれていることは稀なため、上記の条件で目的を達成できるが、赤色が抽出されることで不具合が生じる場合は、|R−G|<(第2の閾値)の条件を設けても良い。これは、黄色ではR値とG値が略等しく、赤色に近づくにつれて、R値がG値に対し大きくなることを利用したものである。
【0019】
次に、この実施例に係る駐車枠の検出についてを、以下にさらに具体的に説明する。
撮像手段12より出力されるNTSC信号を画像記録機器13にて、ITU−R BT.601(国際電気通信連合 無線通信部門)等の規格にあったデジタル信号に変換する。画像記録機器13のデコーダからの出力信号は、一般に、YCbCrとなっている。このYCbCr信号は、輝度信号Yと、色差信号Cb、Crとからなる。
ここで、先に挙げた条件、R>B、G>B、|R−B|>(第一の閾値)を適用するために、YCbCr信号よりRGB信号への変換を行う。
このRGB信号への変換式は、
ITU−R BT.601より、
R=Y+1.40200*Cr
G=Y−0.34414*Cb−0.71414*Cr
B=Y+1.77200*Cb
である。
また、ITU−R BT.601より、YCbCr信号の値は、デジタル8bitで表されるが、0〜255ではなく、Yは16〜235、CbCrは16〜240、一方、RGB信号は0〜255で表されるため、フルスケールに対する変換が必要である。
この実施例では、必ずしも正確なRGB値が必要ではなく、RGB値の大小関係やR値とB値との差が検出できれば良いため、厳密に、YCbCr信号からRGB信号への変換の必要がなく、より簡略化した変換でかまわない。
例えば、
R=Y+1.5Cr
G=Y−0.25Cb−0.75Cr
B=Y+1.5Cb
とし、第一の閾値を「15」程度としても、同様の結果が得られる。
上記のように、式を簡略化することにより、係数を「0.5」や「0.25」、「0.75」、「1.5」等にすることができるため、また、ビットシフトと加算のみで演算ができるため、処理に時間のかかる除算を使用しなくても良いメリットがある。
また、RGB信号と異なり、YCbCr信号では、各画素の輝度値Yに対し、色差Cb、Crは隣接画素と共通として扱うため、Cb0、Y0、Cr0、Y1、Cb1、Y2のように出力されるため、Cb0、Y0、Cr0、Y1の単位で取り扱う必要がある。Y1はY0と共通のCr0を用いるが、Cbは、Y0と共通ではなく、Y1の次に出力されるCb1を使用する。このため、RGB信号への変換及び黄色系の駐車枠線の抽出処理は、Cb0、Y0、Cr0について行い、その結果を受けて、輝度値の加算処理をY0、Y1に対して共通に行う。
Y0、Y1が共に、輝度値の加算を行わないと、後のエッジ検出処理にてY0とY1との間に本来無いエッジが抽出されてしまう問題が生じる。
しかし、Y0、Y1が共に、輝度値の加算を行うことにより、黄色系の領域全ての輝度値が高くなるため、図12に示すように、その輪郭にエッジが検出されることとなる。
なお、上記の処理は、Cb0、Y0、Cr0とCr0、Y1、Cb1のように、厳密に行ってもよい。
【0020】
また、隣接画素との差分によりエッジを抽出する理由について、以下のように、考案過程を併せて説明する。
従来手法の処理例として、白線両端微分値強調フィルタを用いた方法を以下に示す。これは、画像の微分を求め、白線両端微分値強調フィルタを用いて道路の白線幅と同じ幅を持つ白線の抽出を行っている。
ここで、微分は差分で置き換え可能であるので、図14(A)の差分オペレータを用いて差分画像を得る。
白線両端微分値強調フィルタは、道路白線幅(画素数)と同じ幅を持つオペレータであり、図14(B)に示すように、オペレータの幅の中央で符号が反転する。
以上の処理により、図15のような結果が得られる。よって、適切な閾値を選択することにより、道路上の白線と同じ幅を持つ特徴のみを抽出することができる。この閾値の選択には、判別分析法等を用いる。
従来技術で用いられている微分(差分)処理については、同様に走査線方向(画面横方向)での差分処理とする。
しかし、白線両端微分値強調フィルタを用いるためには、画像(走査線)を一度記憶手段(メモリ)に記録する必要があるため、その分のリソースが必要となる。また、白線両端微分値強調フィルタを用いると、図15のように、閾値のレベルが変動するため、画像の各位置に応じて閾値を適応制御する必要がある。そのためには、判別分析法等の処理が必要となるが、これらの処理は、非常に重く、また、並列処理する場合も膨大なリソースが必要となる。
そこで、「差分画像は、すぐ隣の画素との差分であり、隣接画素と当該画素の明るさ(照明条件)が大きく異なることは稀である」(例外:影によるエッジ)こと、また、一般に、駐車枠に引かれた白線等の駐車枠線は、運転者が識別しやすいよう、路面とコントラストがはっきりしていると考えられるため、閾値は一定値とすることとした。
図16〜図19には、処理前の画像及び閾値を「1」、「10」、「20」としたときのエッジ検出結果を示す。この場合、エッジの極性による区別なく(白→黒、黒→白)全て表示している。
図17の閾値「1」では、細かなテクスチャ(凹凸にライトが反射)によるエッジによる影響が見られるが、図18の閾値「10」、図19の閾値「20」では、良好な結果が得られている。
ここで、輝度変化による影響を確認するため、図18の閾値「10」にて、レンズの絞りを変化させたときの結果を、図20〜図22に示す。この図20〜図22では、ダイナミックレンジの1/4程度の暗さまでは対応可能であることがわかる。
ここで、図22の「設定3」の場合、画像奥の壁に近づくにつれ、エッジの検出ができなくなっているが、仮に閾値を「5」まで下げた場合、エッジの検出はできるが、ノイズによる影響が大きくなってしまう(図23参照)。このことより、この手法の閾値の決定に判別分析法を用いても効果が少ないことが、確認できる。
【0021】
次に、この実施例に係る駐車枠検出の制御を、図1のフローチャートに基づいて説明する。
図1に示すように、制御手段14でプログラムが開始すると(ステップA01)、撮像手段12が車両後方の画像を撮像し、この撮像手段12により撮像された画像を記録し、そして、その画像の信号としての映像信号(YCbCr)を入力し(ステップA02)、RGB信号に変換する(ステップA03)。
そして、RGB信号のR値がB値よりも大きく、かつ、G値がB値よりも大きいか否かを判断する(ステップA04)。
このステップA04がYESの場合には、|R−B|>第一の閾値か否かを判断する(ステップA05)。
このステップA05がYESの場合には、輝度値へ予め設定された一定の値を加算する(ステップA06)。
このステップA06の処理後、前記ステップA04がNOの場合、又は、前記ステップA05がNOの場合には、プログラムをエンドとする(ステップA07)。
【実施例2】
【0022】
図24、図25は、この発明の実施例2を示すものである。
この実施例2においては、上述の実施例1と同一機能を果たす箇所には、同一符号を付して説明する。
上述の実施例1の駐車枠検出装置1においては、画像記録手段13のビデオデコーダからの出力信号は、YCbCrとなっている。しかし、ビデオデコーダによっては、RGB出力となっているものもある。
図25に示すように、この実施例2の駐車枠検出装置1においては、画像記録手段13のビデオデコーダからの出力信号は、RGBとなっている。
従って、制御手段14では、撮像手段12により撮像した画像のRGB信号に基づいて前記画像上の黄色系部分を抽出する黄色系抽出手段14Bと、撮像手段12により撮像した画像のRGB信号からYCbCr信号へ変換するYCbCr変換手段14Dと、このYCbCr変換手段14Dにより変換された画像に対して黄色系抽出手段14Bにより抽出された黄色系部分の画素の輝度に予め設定された値を加算する輝度加算手段14Cとを備え、この輝度加算手段14Cにより予め設定された値を加算された画像から駐車枠4を検出する。
【0023】
次に、この実施例2に係る駐車枠検出の制御を、図24のフローチャートに基づいて説明する。
図24に示すように、制御手段14においてプログラムがスタートすると(ステップB01)、撮像手段12が車両後方の画像を撮像し、この撮像手段12により撮像された画像を記録し、そして、その画像の信号としての映像信号(RGB)を入力する(ステップB02)。
そして、このRGB信号のR値がB値よりも大きく、かつ、G値がB値よりも大きいか否かを判断する(ステップB03)。
このステップB03がYESの場合には、|R−B|>第一の閾値か否かを判断する(ステップB04)。
このステップB04がYESの場合には、YCbCr信号に変換し(ステップB05)、輝度値へ予め設定された一定の値を加算する(ステップB06)。
このステップB06の処理後、前記ステップB03がNOの場合、又は、前記ステップB04がNOの場合には、プログラムをエンドとする(ステップB07)。
【0024】
以上、この発明の実施例について説明してきたが、上述の実施例の構成を請求項毎に当てはめて説明する。
先ず、請求項1に記載の発明において、制御手段14は、撮像手段12により撮像した画像のRGB信号に基づいて前記画像上の黄色系部分を抽出する黄色系抽出手段14Bと、この黄色系抽出手段14Bにより抽出された黄色系部分の画素の輝度に予め設定された値を加算する輝度加算手段14Cとを備え、この輝度加算手段14Cにより予め設定された値を加算された画像から駐車枠を検出する。
これにより、コンクリートの路面3に黄色やオレンジ色で描かれた駐車枠線5を抽出することができる。さらに、白色で描かれた駐車枠線に対する処理と区別することなく、従来のエッジ検出により駐車枠4を検出することができる。
請求項2に記載の発明において、黄色系抽出手段14Bは、RGB信号のR値がB値よりも大きく、かつ、G値がB値よりも大きく、かつ、R値からB値を減算した値が予め設定された値よりも大きい画素を黄色系部分として抽出する。
これにより、コンクリートの路面3上に描かれた黄色やオレンジ色の駐車枠線5を精度よく抽出することができる。
【0025】
図26は、この発明の変形例を示すものである。
この変形例では、差分によるエッジの検出ではなく、通常のSobelファイル等にも適用できる。つまり、図30の通常のSobelファイルだけでは、エッジを確認できないが、図26では、Sobelファイルにこの実施例に係る検出方法を用いることにより、駐車枠線のエッジを検出できていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
この発明の駐車枠検出装置は、運転者に適切な画像を提供させるものであり、各種車両に適用できる。
【符号の説明】
【0027】
1 車両
2 駐車場
3 駐車場の路面
4 駐車枠(駐車スペース)
5 駐車枠線
6 左側駐車枠線
7 右側駐車枠線
8 前側駐車枠線
11 駐車枠検出装置
12 撮像手段
13 映像記録機器
14 制御手段
14A RGB変換手段
14B 黄色系抽出手段
14C 輝度加算手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両周囲を撮像する撮像手段と、
この撮像手段により撮像した画像から駐車枠を検出する制御手段とを設けた駐車枠検出装置において、前記制御手段は、前記撮像手段により撮像した画像のRGB信号に基づいて前記画像上の黄色系部分を抽出する黄色系抽出手段と、この黄色系抽出手段により抽出された黄色系部分の画素の輝度に予め設定された値を加算する輝度加算手段とを備え、この輝度加算手段により予め設定された値を加算された画像から駐車枠を検出することを特徴とする駐車枠検出装置。
【請求項2】
前記黄色系抽出手段は、前記RGB信号のR値がB値よりも大きく、かつ、G値がB値よりも大きく、かつ、R値からB値を減算した値が予め設定された値よりも大きい画素を黄色系部分として抽出することを特徴とする請求項1に記載の駐車枠検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公開番号】特開2012−176641(P2012−176641A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−39363(P2011−39363)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】