説明

骨吸収抑制に関連する作用を有する組成物

【課題】 本発明の目的は、食習慣があり安全である食品成分を有効成分として、骨吸収の抑制に関与するOPG産生促進効果、RANKL発現抑制効果、破骨細胞分化抑制効果を促進する方法及びその組成物、剤を提供することである。
【解決手段】 Platycodon属、Origanum属、Thymus属、Zanthoxylum属、Arctium属、Camellia属、Persea属、Stevia属、Pimpinella属、Matricaria属、Malva属、Ilex属、Ptychopetalum属からなる群より選択される少なくとも1種の植物の有機溶媒抽出物を有効成分とする破骨細胞分化抑制因子産生促進剤、破骨細胞分化抑制剤、破骨細胞分化因子発現抑制剤、又はこれらを含有する組成物を提供した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨吸収抑制に関連する作用、特に、破骨細胞分化抑制因子(OPG)の産生促進作用、破骨細胞分化因子(RANKL)の発現抑制作用、破骨細胞の分化抑制作用を有する組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
哺乳動物の骨は骨吸収と骨形成を繰り返しており、骨形成に関与する細胞が骨芽細胞であり、骨吸収に関与する細胞が破骨細胞である。骨の成長、維持及び修復は、これらの細胞の形成と吸収の速度バランスに依存しており、そのバランスが崩れることにより、骨吸収が骨形成を上回り、骨粗鬆症等の骨量が減少する骨代謝関連疾患がもたらされる。よって骨形成が骨吸収を下回らないことが骨量の維持や増強に重要である(非特許文献1)。
【0003】
骨粗鬆症は、骨を形成するカルシウムやコラーゲンの減少による骨量低下と骨組織の退行を引き起こす全身性の骨疾患である。骨粗鬆症は、高齢者の、特に閉経後の女性に多く見られ、近年の高齢化に伴い増加し続けている。骨粗鬆症による骨の脆弱化は、疼痛や、骨折のリスク上昇を招くことから、寝たきりの原因となり、高齢者の生活の質に大きく影響を及ぼす問題となっている(非特許文献2)。
【0004】
破骨細胞は、未分化の血球系細胞から多核化して分化することにより成熟破骨細胞となり骨吸収を行う。破骨細胞の分化は、骨芽細胞に発現する破骨細胞分化因子(receptor activator of NF kappa B ligand、以下RANKLともいう)により促進されることが知られている。一方、破骨細胞分化抑制因子(Osteoprotegerin、以下OPGともいう)も、骨芽細胞から分泌され、RANKLに結合することによりRANKLの破骨細胞分化促進作用を抑制することが知られている(非特許文献3)。以上より、骨芽細胞でのRANKLの発現抑制とOPGの分泌促進は、破骨細胞の分化抑制作用を有し、それにより骨吸収を抑制することが期待できる。また、骨芽細胞でのRANKLの発現抑制やOPG産生促進を介さずに、破骨細胞の分化を直接抑制するような化合物も発見されており、このような化合物も骨吸収を抑制することが期待できる(非特許文献4)。
【0005】
特にOPGに関しては様々な投与試験が行われており、閉経、不動化、ステロイド剤の使用、及び免疫抑制剤の使用による骨粗鬆症の他、慢性関節リウマチ、歯根膜炎等に対しても効果が確認されている(非特許文献5)。上記のとおり、OPGは様々な疾患に効果がある可能性があるが、OPG自体はタンパク質であるため、経口投与してもそのまま体内に入る可能性が低いという問題がある。
【0006】
そこで、経口投与によりOPGの効果を得るために、生体内でOPG産生促進活性のある成分が探索されている。例えば、JudeらはOPG産生を促進する低分子化合物を骨粗鬆症やリウマチの病態モデルラットに投与し、これらの疾患の処置や予防に効果があることを報告している(非特許文献6)。また、食品成分にもOPG産生促進活性のあるものが見出されており、安全性や利便性から非常に有用である。このような食品成分として、ラクトフェリンやトレハロース等が挙げられる。なかでもラクトフェリンは骨芽細胞のみでなく、腸管由来細胞からもOPG産生を促進することからより優れた効果がある(特許文献1)。しかし、ラクトフェリンは乳を原料とするため高コストであるという問題があった。
【0007】
キキョウは、咳や痰の治療に効能があるとされ、古くから生薬として利用されている他、韓国ではキムチとして食用されている。キキョウの熱水抽出物は、主に肝臓から生成される成長因子であるIGF−1の産生を促進することから、骨成長を促進する用途として提案されている(特許文献2)。
【0008】
オレガノは、香辛料として広く食用とされている植物である。また、その葉の含水エタノール、エタノール、又はヘキサン等の有機溶媒で抽出された成分は抗菌作用があることから、日持向上を目的として食品添加物となっている(非特許文献7)。
【0009】
タイムは、香辛料として広く食用とされている植物であり、抗菌作用のほか、貧血、咳、喉の痛み等にも効用があるとされている。タイムには骨吸収抑制効果があることが報告されている(非特許文献8)。
【0010】
セルピルムは、タイムと同属のハーブであり、同様に食品として利用されている。
【0011】
サンショウは、日本で広く食用とされている香辛料であり、健胃強壮、駆虫等の効能が知られている。また、サンショウは、パフィア属に属する植物、キランソウ属に属する植物及び、Rhaponticum属に属する植物との混合剤として、コラーゲン産生促進を有することが見出されており、その用途が提案されている(特許文献3)。加えて、エストロジェン生合成に関与するアロマターゼの活性化剤(特許文献4)としての作用や骨吸収抑制に関する用途も提案されている。
【0012】
カショウは、中国で広く食用とされている香辛料である。
【0013】
アボカドの実は、広く食用とされており、アボガド等の植物に含まれるトコトニエノールや、プロアントシアニジンは骨吸収抑制作用を有する成分であることから、アボカドを原料とした骨吸収を抑制する組成物が提案されている。また、アボカドの不ケン化性の成分、特にフラン脂質は、関節炎への効果があり、骨粗鬆症への用途が提案されている(特許文献5〜7)。
【0014】
アニスは、種子をハーブティーや料理の香りつけとして古来より利用されている。
【0015】
ステビアは、甘味成分であるステビオシドというテルペノイドの配糖体を含んでいるため、甘味料として用いられ食品添加物となっている。
【0016】
マテはブラジル原産の植物であり、マテ茶として飲用されている。マテには少量のカフェインや、アルカロイドの一種とされるマテインが多く含まれている。
【0017】
チャは、古来より我が国で飲料として利用されており、生又は乾燥物もしくは加熱、揉捻操作を経た加工物、あるいは生の葉を半発酵したもの、及び完全に発酵したものを煎じて飲用される。その種類は、緑茶、烏龍茶、紅茶等が挙げられる。チャには骨吸収抑制作用があり、その用途が提案されている(特許文献8)。
【0018】
ブルーマローは、煎じてハーブティーとした場合、色が時間の経過により変化することから、ハーブティーとして好まれて飲用されている。
【0019】
ゴボウは広く食用とされている。
【0020】
ムイラプアマはブラジルで薬草として食用されている。
【0021】
カモマイルは、主にハーブティーとして食用されており、不眠症等に効能があるとされている。
【特許文献1】特開2004−115509号公報
【特許文献2】特表2004−518647号公報
【特許文献3】特開2005−255527号公報
【特許文献4】特開2005−343872号公報
【特許文献5】特表2002−520280号公報
【特許文献6】特開2004−262818号公報
【特許文献7】特表2003−509506号公報
【特許文献8】特開平6−183985号公報
【非特許文献1】日本臨床,2002年,60巻増刊号3,34〜37項
【非特許文献2】医学の歩み,2001年,198巻,9号,574〜579項
【非特許文献3】Endocrine Reviews,1999年,20号,3巻,345〜357項
【非特許文献4】Biological & Pharmaceutical Bulletin,2004年,24巻,4号,504〜509項
【非特許文献5】日本臨床,2002年,60巻増刊号3,679〜687項
【非特許文献6】The journal of pharmacology and experimental therapeutics,309巻,1号,369〜379項
【非特許文献7】既存添加物名簿収載品目リスト注解書,126項,1999年,日本食品添加物協会
【非特許文献8】Bone,2000年,32巻,372〜380項
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
上述したような食経験のある植物の中には、骨吸収抑制や骨疾患への関与が示唆・提案されているものもあるが、そのメカニズムはほとんど明らかになっておらず、そのほとんどは実際の有効性も証明されていない。またその他、全く骨吸収抑制や骨疾患への作用が示唆すらされていない植物種も多い。本発明は、食習慣があり安全である食品成分を有効成分として、骨吸収の抑制に関与する、OPG産生促進効果、RANKL発現抑制効果、破骨細胞分化抑制効果を促進する方法及びその組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、Platycodon属、Origanum属、Thymus属、Zanthoxylum属、Arctium属、Camellia属、Persea属、Stevia属、Pimpinella属、Matricaria属、Malva属、Ilex属、Ptychopetalum属の植物の有機溶媒抽出物に、OPG産生促進効果、RANKL発現抑制効果、破骨細胞分化抑制効果等の骨吸収抑制に有用な効果があることを見出し、それを基に本発明を完成するに至った。
【0024】
なお、上記に挙げた植物の有機溶媒抽出物が、上記効果を有することは、全く知られていなかった。
【0025】
即ち本発明が提供するのは以下の通りである。
【0026】
[1] Platycodon属、Origanum属、Thymus属、Zanthoxylum属、Arctium属、Camellia属、Persea属、Stevia属、Pimpinella属、Matricaria属、Malva属、Ilex属、Ptychopetalum属からなる群より選択される少なくとも1種の植物の有機溶媒抽出物を有効成分とする破骨細胞分化抑制因子産生促進剤。
【0027】
[2] Platycodon属、Persea属、Stevia属、Pimpinella属、Matricaria属、Malva属からなる群より選択される少なくとも1種の植物の有機溶媒抽出物を有効成分とする破骨細胞分化抑制剤。
【0028】
[3] Platycodon属、Origanum属、Thymus属、Persea属、Pimpinella属、Ilex属からなる群より選択される少なくとも1種の植物の有機溶媒抽出物を有効成分とする破骨細胞分化因子発現抑制剤。
【0029】
[4] 請求項1記載の破骨細胞分化抑制因子産生促進剤、請求項2記載の破骨細胞分化抑制剤または請求項3記載の破骨細胞分化因子発現抑制剤を含有する飲食用組成物。
【0030】
[5] 請求項1記載の破骨細胞分化抑制因子産生促進剤、請求項2記載の破骨細胞分化抑制剤または請求項3記載の破骨細胞分化因子発現抑制剤を含有する医薬用組成物。
【0031】
[6] 破骨細胞分化抑制因子、破骨細胞分化因子、または破骨細胞分化抑制のいずれかの作用が関連する疾患の改善または予防を目的とした請求項4または5記載の組成物。
【0032】
[7] 骨粗鬆症の改善または予防を目的とした請求項4または5記載の組成物。
【発明の効果】
【0033】
本発明の組成物及び方法は、骨芽細胞でのOPG産生促進、RANKL発現抑制、破骨細胞分化抑制等の効果を有し、間接的又は直接的に破骨細胞分化を抑制することができ、骨吸収が抑制される。従って、骨粗鬆症をはじめとする骨吸収を伴う疾患の改善及び予防に有用である。さらに、食経験のある材料から本発明の組成物を製造することが可能であるので、当該組成物は摂取しても安全である。
【0034】
さらに、食経験のある材料から本発明の組成物を製造することが可能であるので、当該組成物は摂取しても安全である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
本発明の骨吸収抑制に関連する作用を有する組成物は、特定の植物の有機溶媒抽出物を有効成分として含有してなる組成物である。具体的には、Platycodon属、Origanum属、Thymus属、Zanthoxylum属、Arctium属、Camellia属、Persea属、Stevia属、Pimpinella属、Matricaria属、Malva属、Ilex属、Ptychopetalum属からなる群より選択される少なくとも1種の植物の有機溶媒抽出物を有効成分として含有してなる破骨細胞分化抑制因子(OPG)産生促進剤;Platycodon属、Persea属、Stevia属、Pimpinella属、Matricaria属、Malva属からなる群より選択される少なくとも1種の植物の有機溶媒抽出物を有効成分として含有してなる破骨細胞分化抑制剤;Platycodon属、Origanum属、Thymus属、Persea属、Pimpinella属、Ilex属からなる群より選択される少なくとも1種の植物の有機溶媒抽出物を有効成分として含有してなる破骨細胞分化因子(RANKL)発現抑制剤;及びそれらを含有する組成物である。
【0036】
本発明において使用しうるPlatycodon属の植物としては、好ましくはキキョウ、より好ましくはPlatycodon grandiflorum等が挙げられる。用いる部位は、全草でもよいが、可食部である根が好ましい。Platycodon属には、サポニン類やポリフェノール類が多く含まれる。
【0037】
本発明において使用しうるOriganum属の植物としては、好ましくはオレガノ、より好ましくはOriganum vulgare等が挙げられる。用いる部位は、全草でも良いが、食品添加物の原料となる葉が好ましい。Origanum属には、チモールやカルバクロール等の成分が多く存在する。
【0038】
本発明において使用しうるThymus属の植物としては、好ましくはタイム、セルピルム、より好ましくはThymus Species、Thymus Serpyllum等が挙げられる。用いる部位は、全草でもよいが、地上部が好ましい。Thymus属には、チモール、ボルネオール、リナロール、カルバクロール、ポリフェノール類、サポニン類等の成分が含まれる。
【0039】
本発明において使用しうるZanthoxylum属の植物としては、好ましくはカショウ、サンショウ、より好ましくはZanthoxylum bungeanum、Zanthoxylum piperitum等が挙げられる。用いる部位は、全草でも良いが、広く食用とされている実が好ましい。Zanthoxylum属には、サンショオール、サンショアミド等の辛味成分、ゲラニオール等の芳香精油、ジペンテン、シトラール等が含まれる。
【0040】
本発明において使用しうるArctium属の植物としては、好ましくはゴボウ、より好ましくはArctium lappa等が挙げられる。用いる部位は、広く食用とされている根が好ましい。
【0041】
本発明において使用しうるCamellia属の植物としては、好ましくはチャ、より好ましくはCamellia sinensis等が挙げられる。用いる部位は、全草でもよいが、広く利用されている葉が好ましい。また、葉の加工形態は限定されず、生又は乾燥物もしくは加熱、揉捻操作を経た加工物、あるいは生の葉を半発酵したもの、及び完全に発酵したものでもよい。
【0042】
本発明において使用しうるPersea属の植物としては、好ましくはアボカド、より好ましくはPersea americana等が挙げられる。用いる部位は、全草でもよいが、実が好ましく、可食部である果肉がより好ましい。
【0043】
本発明において使用しうるStevia属の植物としては、好ましくはステビア、より好ましくはStevia rebaudiana等が挙げられる。用いる部位は、全草でもよいが、食品添加物の原料となっている葉が好ましい。Stevia属には、ステビオシドという甘味成分や、フラボノイド類が含まれる。
【0044】
本発明において使用しうるPimpinella属の植物としては、好ましくはアニス、より好ましくはPimpinella anisum等が挙げられる。用いる部位は、全草でもよいが、可食部である実が好ましい。Pimpinella属には、アネトール、カビコール、アニス酸アルデヒド、アニス酸、テルペン、クマリン等の成分が含まれる。
【0045】
本発明において使用しうるMatricaria属の植物としては、好ましくはカモマイル、より好ましくはMatricaria recutita等が挙げられる。用いる部位は、全草でもよいが、花部が好ましい。Matricaria属には、アズレン、ビサボロール、ファルネセン、フラボノイド類、クマリン等が主に含まれる。
【0046】
本発明において使用しうるMalva属の植物としては、好ましくはブルーマロー、より好ましくはMalva sylvestris等が挙げられる。用いる部位は、全草でもよいが、花部が好ましい。
【0047】
本発明において使用しうるIlex属の植物としては、好ましくはマテ、より好ましくはIlex paraguariensis等が挙げられる。用いる部位は、全草でもよいが、煎じて飲用されている葉が好ましい。Ilex属には、カフェイン、テオブロミン、テオフィリン、サポニン、クロロゲン酸等が主に含まれる。
【0048】
本発明において使用しうるPtychopetalum属の植物としては、好ましくはムイラプアマ、より好ましくはPtychopetalum olacoides等が挙げられる。用いる部位は、全草でもよいが、通常、食品として利用される部位(根以外)が好ましく、樹皮がより好ましい。
【0049】
本発明において、上記植物の抽出物は、有機溶媒抽出物であれば特に限定されず、骨吸収抑制に関連する作用を発揮できる抽出物であれば良い。また、本発明において、有機溶媒抽出物とは、有機溶媒を主体とする溶媒によって抽出された抽出物をいう。
【0050】
抽出に用いる有機溶媒としては、効率よく抽出する観点から、両親媒性有機溶媒が好ましい。両親媒性有機溶媒とは、親水性溶媒及び疎水性溶媒の両者と混和可能である有機溶媒をいう。有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、プロピレングリコール、グリセリン等のアルコール;酢酸エチル等のエステル;アセトン等のケトン;ヘプタン、ヘキサン等の脂肪族炭化水素が挙げられ、また、食用油等の油脂類を用いることもできる。このうち両親媒性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、プロピレングリコール、グリセリン等のアルコール等が挙げられる。前記有機溶媒は、1種で用いても、2種以上混合したものを用いてもよい。また、上記有機溶媒は、有機溶媒が主体であれば、つまり抽出溶媒中の有機溶媒の割合が50重量%以上であれば、水との混合溶媒として使用しても良い。好ましくは、食品用途の使用が可能であり、かつ溶媒除去が容易な、エタノール、含水エタノール等が挙げられる。
【0051】
本発明における抽出物としては、抽出により得た抽出液そのもの、もしくはそれから溶媒を除去したもの、のいずれをも含む。
【0052】
本発明の組成物の有効成分である各種植物の有機溶媒抽出物を得る方法としては、特に限定されないが、例えば以下の溶媒抽出法等を用いることができる。上記植物材料を、約1〜20倍量、好ましくは約1〜10倍量の上記溶媒に浸す等して溶媒に接触させ、攪拌又は放置し、濾過又は遠心分離等を行うことにより、抽出物を得ることができる。次いで、必要に応じて、得られた抽出物を、減圧下での濃縮、凍結乾燥、スプレードライ等の方法により乾燥させても良い。
【0053】
溶媒に接触させる際の材料は、生のまま又は乾燥させたものでもよいが、保存の点から乾燥させたものが好ましい。また、上記材料の形態は、原型、粉砕したもの、切断したもの又は粉末のいずれを用いてもよい。溶媒に接触させる温度は、一般に約0〜130℃、好ましくは約1〜80℃であるが、室温からやや加熱した温度、つまり約20〜60℃で、より好適に本発明における抽出物を得ることができる。溶媒に接触させる時間は、普通約0.1時間〜1ヶ月間、好ましくは約0.5時間〜7日間である。
【0054】
本発明における抽出物は、飲食品や医薬品として不適当な物質を含有しない限り、抽出物のまま、又は、精製抽出物あるいは半精製抽出物として使用できる。精製は、各種クロマトグラフィー法(例えばアフィニティークロマトグラフィー精製法等)、濾過法、沈殿法、遠心分離法等を使用することができる。
【0055】
また、該抽出物中の成分は、所望により飲食用又は医薬用に許容される物質の塩、エステル又は配糖体の形態であってもよい。
【0056】
ここで、本明細書でいう骨吸収抑制に関連する作用とは、OPG産生促進、RANKL発現抑制、破骨細胞分化抑制のことをいう。これらの作用は、骨を吸収する細胞である破骨細胞の分化抑制に関与することから、生体内の骨吸収の抑制、ひいては骨粗鬆症をはじめとする骨量の減少を伴う疾患の改善又は予防に有用である。本発明の組成物は、骨芽細胞もしくは破骨細胞の前駆細胞に作用し、骨芽細胞からのOPG産生促進、骨芽細胞でのRANKL発現抑制を介した破骨細胞分化抑制により、また、それらの作用を介さない破骨細胞分化抑制により、生体内の骨吸収を抑制することができる。
【0057】
OPG産生促進活性は、評価物質を直接動物に投与して評価することもできるが、骨芽細胞を用いて評価することもできる。細胞を用いた評価では、細胞もしくは培養上清を用いて、OPG量を定量する方法や、OPGのメッセンジャーRNAを定量する方法等が挙げられる。具体的にはOPG量は、酵素免疫測定法(ELISA)や、ウエスタンブロッティング法等で測定することができる。メッセンジャーRNAの定量法としては、ノザンブロッティング法、RT−PCR法、及びDNAアレイ法等が挙げられる。これらのうち少なくとも1種の測定において、サンプルの活性が一般に溶媒対照と比較し、高い値を示す場合、そのサンプルを「OPG産生促進活性あり」と評価する。
【0058】
RANKL発現抑制活性は、評価物質を直接動物に投与して評価することもできるが、骨芽細胞を用いて評価することもできる。細胞を用いた評価では、細胞に発現したRANKL量を定量する方法や、RANKLのメッセンジャーRNAを定量する方法等が挙げられる。具体的にはRANKL量は、酵素免疫測定法(ELISA)や、ウエスタンブロッティング法等で測定することができる。メッセンジャーRNAの定量法としては、ノザンブロッティング法、RT−PCR法、及びDNAアレイ法等が挙げられる。これらのうち少なくとも1種の測定において、サンプルの活性が一般に溶媒対照と比較し、低い値を示す場合、そのサンプルを「RANKL発現抑制活性あり」と評価する。
【0059】
破骨細胞分化抑制活性は、評価物質を直接動物に投与して評価することもできるが、骨髄細胞、脾臓細胞、マクロファージ等の細胞を用いて評価することもできる。これら細胞を用いた評価では、破骨細胞を分化させる作用を有するRANKLやM−CSFを添加した培地を用いて破骨細胞の分化抑制を評価する方法や、骨芽細胞と共培養してプロスタグランジンE2、副腎皮質ホルモン、インターロイキン−1β、活性型ビタミンD3や、リポポリサッカライド等の破骨細胞分化刺激試薬を添加した培地を用いて、破骨細胞の分化抑制を評価する方法等が挙げられる。これらの培養法において、破骨細胞分化の評価は、破骨細胞に特異的に発現する酒石酸耐性酸フォスファターゼ(TRAP)の発現により評価することができる。具体的には、TRAPにより発色する基質を用いた染色法による破骨細胞数のカウント法や、TRAPにより発色する基質を用いた比色法等が挙げられる。これらのうち少なくとも1種の測定において、サンプルの活性が一般に溶媒対照と比較し、低い値を示す場合、そのサンプルを「破骨細胞分化抑制活性あり」と評価する。
【0060】
本発明の組成物における上記植物の有機溶媒抽出物の含有量は、特に限定されず、骨吸収抑制に関連する作用を発揮できる範囲で当該抽出物が含まれていれば良い。当該抽出物の含有量は、組成物100重量%中、例えば0.01〜100重量%が好ましく、0.1〜100重量%がより好ましい。つまり、本発明の組成物には、必要に応じて、上記抽出物以外に、例えば、後述の各種添加剤等を含有させることができる。
【0061】
本発明の飲食用組成物は、上記のOPG産生促進剤、RANKL発現抑制剤又は破骨細胞分化抑制剤を含有する組成物であり、これらを一般的な食品に混合したものである。また、公知の食品として適当な担体や助剤等を使用して、カプセル剤、錠剤、顆粒剤等の服用しやすい形態にしたものでもよい。ここに言う飲食用とは、例えば、一般食品、保健機能食品(特定保健用食品、栄養機能食品)、健康食品、栄養補助食品等である。ここにいう一般食品とは、飲料、乳製品、加工乳、発酵乳、乳酸菌飲料、コーヒー飲料、ジュース、アイスクリーム、飴、ビスケット、ウェハース、ゼリー、スープ、麺類等であるが、これらに限定されるものではない。好ましくは、飲料、乳製品、加工乳、発酵乳、乳酸菌飲料、ウェハース、ゼリーである。
【0062】
本発明の医薬用組成物は、上記のOPG産生促進剤、RANKL発現抑制剤又は破骨細胞分化抑制剤を含有する組成物であり、上記剤そのものであってもよいし、所望により医薬的に許容される担体を含有する組成物であってもよい。その用途は限定されず、例えば一般用医薬品(OTC)等の容易に入手可能な医薬品又は医薬部外品等が挙げられる。医薬用組成物の形態は限定されず、例えば、丸薬剤、液剤、粉末剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、トローチ剤、シロップ剤、ドライシロップ剤、エリクシル、カシェ、坐薬等である。好ましくは、カプセル剤、錠剤、液剤、エリクシル、カシェ、坐薬等である。また、医薬的に許容される担体とは、経口、経腸、経皮及び皮下投与のために好適である任意の材料であり、例えば、水、ゼラチン、アラビアガム、ラクトース、微結晶性セルロース、スターチ、ナトリウムスターチグリコレート、燐酸水素カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、コロイド性二酸化ケイ素等が挙げられる。
【0063】
本発明の上記組成物は、骨粗鬆症やリウマチ等の、OPG産生促進、RANKL発現抑制、又は破骨細胞分化抑制に関連する疾患に対して効果があるとされる食品や食品添加物、例えば、大豆、ザクロ等の抽出物、カルシウム、マグネシウム、ビタミンD、ビタミンK、グルコサミン、コンドロイチン及びコラーゲン等を含む組成物とすることもできる。また、当該組成物の形態は特に限定されず、飲食物、医薬品等が挙げられる。
【0064】
本発明の組成物を用いることにより、破骨細胞分化抑制因子(OPG)、破骨細胞分化因子(RANKL)、破骨細胞分化抑制作用のいずれかが関連する疾患を改善又は予防することができる。
【0065】
破骨細胞分化抑制因子、破骨細胞分化因子、破骨細胞分化抑制作用のいずれかが関連する疾患とは、生体内でのOPG産生促進、RANKL発現抑制、破骨細胞分化抑制により症状が改善又は予防される任意の疾患を意味する。具体的には、閉経、不動化、ステロイド剤の使用及び免疫抑制剤の使用による骨粗鬆症の他、慢性関節リウマチ、歯槽膿漏、歯根膜炎等が挙げられる。
【0066】
また、本発明は、上記植物の有機溶媒抽出物を有効成分として含有してなる組成物を対象に投与することを特徴とする、破骨細胞分化抑制因子の産生を促進する方法、破骨細胞の分化を抑制する方法、破骨細胞分化因子の発現を抑制する方法、さらに、本発明の破骨細胞分化抑制因子、破骨細胞分化因子、破骨細胞分化抑制作用のいずれかが関連する疾患を改善又は予防する方法と捉えることもできる。
【0067】
投与対象としては、特に限定されず、魚類、爬虫類、両生類、鳥類、哺乳類等のあらゆる動物が挙げられ、好ましくは哺乳動物である。哺乳動物としては、特に限定されず、例えば、ヒト、サル、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、マウス、ラット、モルモット等が挙げられ、好ましくはヒトである。
【0068】
また、投与方法としては、特に限定されず、経口、経腸、経皮及び皮下投与等が挙げられるが、経口投与が好ましい。
【0069】
なお、上記組成物を飲食物として投与する場合、その投与量は特に限定されないが、各抽出物換算で成人一人一日当たり、例えば0.01〜1000mg/kg体重、好ましくは0.1〜100mg/kg体重、より好ましくは1〜100mg/kg体重である。他の動物に投与する場合も同様である。
【0070】
また、上記組成物を医薬品として投与する場合、その投与量は特に限定されないが、各抽出物換算で成人一人一日当たり、例えば0.01〜1000mg/kg体重、好ましくは0.1〜100mg/kg体重、より好ましくは1〜100mg/kg体重を、1回ないし数回に分けて投与する。他の動物に投与する場合も同様である。
【実施例】
【0071】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0072】
(実施例1)各材料の抽出物の調製
各植物材料1重量部をエタノール5重量部に浸し、常温(23℃)で7日間抽出した後、濾過により抽出液を得た。その抽出液の溶媒をエバポレーターにより除去し、粉末抽出物を得た。表1に各材料の使用部位及び抽出率(重量%)を示す。なお、抽出率(重量%)とは、使用材料を100重量%とした場合の粉末抽出物の重量%を意味する。
【0073】
【表1】

【0074】
(実施例2)骨芽細胞によるOPG産生促進活性の測定
実施例1で得られた各種エタノール抽出物について骨芽細胞でのOPG産生促進活性を評価した。ヒト骨芽細胞(MG63細胞)を96wellプレートに2×10cells/well播種し、1%の非必須アミノ酸(Gibco社製)、10%FBS(ウシ胎仔血清)を含むイーグル−MEM培地(日水製薬)で、37℃、5%CO−95%空気で3日間培養した。
【0075】
3日後、1%の非必須アミノ酸、0.125%牛血清アルブミンを含むイーグル−MEM培地に培地を交換して、37℃、5%CO−95%空気で1日間培養した後、実施例1の抽出物を30μg/ml及び100μg/mlで溶解した培地に交換した。なお、各サンプルを溶解した培地は、1%の非必須アミノ酸、0.125%牛血清アルブミンを含むイーグル−MEM培地とした。
【0076】
培地交換3日後、培養上清のOPG量をOPG測定キット(Human Osteoprotegerin ELISA:Bio Vendor社)を用いてELISA法により測定した。測定はメーカー推奨の方法に従った。
【0077】
OPG産生促進活性は、平行してOPG量を測定した溶媒対照の平均値を1とした時における、抽出物添加処理のOPG量の割合(OPG産生促進率)により評価した。測定は3回繰り返して行った。OPG産生促進率が統計的に有意に1を超えたサンプルを「OPG産生促進活性あり」と評価した。表2にOPG産生促進活性が認められた抽出物を示す。値は平均値±標準偏差とした。
【0078】
【表2】

【0079】
表2の結果から、Platycodon属、Origanum属、Thymus属、Zanthoxylum属、Arctium属、Camellia属、Persea属、Stevia属、Pimpinella属、Matricaria属、Malva属、Ilex属、Ptychopetalum属の植物の抽出物に、骨芽細胞に対するOPG産生促進活性があることを確認した。
【0080】
(参考例1)抽出溶媒の違いによるPlatycodon grandiflorum抽出物の骨芽細胞に対するOPG産生促進活性の比較
特許文献2に従い、実施例1で用いたPlatycodon grandiflorum根部の粉末1重量部を蒸留水30重量部に浸し、85℃で2時間抽出した後、濾過により抽出液を得た。その抽出液の1部を限外濾過処理し、分子量5000以下の画分を得た。該画分を凍結乾燥処理して、Platycodon grandiflorum水抽出物の分子量5000以下の画分の乾燥粉末を得た。
【0081】
次に、実施例2と同様の方法で、実施例1で得たPlatycodon grandiflorumエタノール抽出物と、上記で得たPlatycodon grandiflorum水抽出物のOPG産生促進活性を評価した。表3にその結果を示す。
【0082】
【表3】

【0083】
表3のデータに「*」が記載されたサンプルは、Dunnet法による統計解析により有意な(P<0.01)OPG産生促進活性が認められたサンプルであることを示す。表3の結果から、本発明におけるPlatycodon属抽出物のOPG産生促進活性に関わる成分は、水ではなく、有機溶媒であるエタノールで好適に抽出できる成分であることが示された。
【0084】
(実施例3)骨芽細胞によるRANKL発現抑制活性の測定
実施例1で得られた各種エタノール抽出物について、骨芽細胞でのRANKL発現抑制活性を評価した。ヒト骨芽細胞(MG63細胞)を12wellプレートに2×10cells/well播種し、1%の非必須アミノ酸(Gibco社製)、10%FBSを含むイーグル−MEM培地(日水製薬)で、37℃、5%CO−95%空気で2日間培養した。
【0085】
2日後、1%の非必須アミノ酸、0.125%牛血清アルブミンを含むイーグル−MEM培地に培地を交換して、37℃、5%CO−95%空気で1日間培養した後、実施例1の抽出物を100μg/mlで溶解した培地に交換した。なお、各サンプルを溶解した培地は、1%の非必須アミノ酸、0.125%牛血清アルブミンを含むイーグル−MEM培地とした。
【0086】
培地交換1日後、細胞内のtotalRNAをRNA抽出キット(Rneasy miniキット:キアゲン社)で抽出した。次に、得られたtotalRNAの1μgを用いて、cDNAをcDNA合成キット(High Capacity cDNA Archive キット:アプライドバイオシステムズ社)で合成した。得られたcDNAの50分の1量をリアルタイムPCRに供し、RANKL遺伝子及び内部標準遺伝子であるGAPDH(glyceraldehyde−3−phosphate dehydrogenase)の発現量を測定した。リアルタイムPCRに用いる酵素等の反応試薬及びプライマー、タックマンプローブは、アプライドバイオシステムズ社の製品を用いた(Taqman Universal PCR Master Mix、Taqman Gene Expression Assays)。全ての操作はメーカー推奨のプロトコールに従った。
【0087】
次に、得られたRANKLとGAPDHの測定値から、各抽出物処理におけるRANKL相対発現量(RANKL測定値/GAPDH測定値)を求めた。
【0088】
RANKL発現抑制活性は、平行してRANKL相対発現量を測定した溶媒対照の平均値を1とした時の抽出物添加処理でのRANKL相対発現量の割合(RANKL発現抑制率)により評価した。測定は3回繰り返して行った。RANKL発現抑制率が統計的に有意に1未満となったサンプルを「RANKL発現抑制活性あり」と評価した。表4にRANKL発現抑制活性が認められた抽出物を示す。値は平均値±標準偏差とした。
【0089】
【表4】

【0090】
表4の結果から、Platycodon属、Origanum属、Thymus属、Persea属、Pimpinella属、Ilex属の植物の抽出物に骨芽細胞に対するRANKL発現抑制活性があることを確認した。
【0091】
(実施例4)骨芽細胞、骨髄細胞の共培養による破骨細胞分化抑制効果の測定
1〜3日齢のDDYマウスの頭頂骨から採取した骨芽細胞(1×10cells/well)及び、5週齢のDDYマウスの大腿骨及び脛骨から採取した骨髄細胞(2×10cells/well)を48wellプレートに播種した。また細胞の播種と同時に各wellに、実施例1で得られた各種エタノール抽出物及びプロスタグランジンE2を、50μg/ml(抽出物)、1×10−6M(プロスタグランジンE2)の濃度になるように添加した。培地は10%FBSを含むα−MEM培地(sigma社)とした。培養開始3〜4日後に各wellの培地交換を経て、合計7日間、各抽出物とプロスタグランジンE2存在下で細胞培養を行った。培養終了後、細胞をホルマリン固定し、酒石酸耐性酸フォスファターゼ染色(TRAP染色)を定法に従って行った。次に、TRAP染色により染まった細胞(TRAP陽性細胞)を顕微鏡下でカウントすることにより、破骨細胞分化を評価した。
【0092】
破骨細胞分化抑制活性は、平行してTRAP陽性細胞数を測定した溶媒対照の平均値を1とした時の、抽出物添加処理でのTRAP陽性細胞数の割合(破骨細胞分化抑制率)により評価した。測定は4回繰り返して行った。破骨細胞分化抑制率が統計的に有意に1未満となったサンプルを「破骨細胞分化抑制活性あり」と評価した。表5に破骨細胞分化抑制活性が認められた抽出物を示す。値は平均値±標準偏差とした。
【0093】
【表5】

【0094】
表5の結果から、Platycodon属、Persea属、Stevia属、Pimpinella属、Matricaria属、Malva属の植物の抽出物に破骨細胞分化抑制効果があることを確認した。
【0095】
(実施例5)動物投与による骨粗鬆症改善効果の確認
8週令のSD系メスラットを1週間飼育後、卵巣摘出手術を行うことにより骨粗鬆症を発症させた。卵巣摘出手術からさらに6週間飼育を行った後にラットを安楽死させ、大腿骨を摘出して骨幹端部の海面骨密度をpQCT法(peripheral Quantitative Computed Topography)により測定した。飼料はAIN93Gに準拠した精製飼料を用いた。ただしカルシウム含量は0.3%に調整した。各抽出物サンプルは、飼料に1.25重量%混合することにより実験開始日から投与し、抽出物サンプルを混合しない飼料を与えた群を対照(コントロール)とすることにより骨粗鬆症改善効果を確認した。骨粗鬆症改善効果は、コントロール群の骨密度を100%とした時の、抽出物投与群の骨密度の値(平均値±標準誤差)として表した。尚、各群は8頭とした。骨粗鬆症改善効果を評価した抽出物は、実施例1のアニス抽出物、ステビア抽出物、キキョウ抽出物とした。
【0096】
【表6】

【0097】
各抽出物投与群は、コントロール群と比較して海面骨密度が高値であり、Pimpinella属、Stevia属、Platycodon属の植物の抽出物の骨粗鬆症改善効果が確認された。また、各抽出物群とコントロール群との間の有意性をStudent t検定により評価した結果、Pimpinella属抽出物はP値が0.009、Stevia属抽出物はP値が0.115、Platycodon属抽出物はP値が0.357であり、特にPimpinella属抽出物が高い骨粗鬆症改善効果を有することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明の組成物及び方法は、骨芽細胞でのOPG産生促進、RANKL発現抑制、破骨細胞分化抑制等の効果を有し、間接的又は直接的に破骨細胞分化を抑制することができ、骨吸収が抑制される。従って、骨粗鬆症をはじめとする骨吸収を伴う疾患の改善及び予防に有用である。さらに、食経験のある材料から本発明の組成物を製造することが可能であるので、当該組成物は摂取しても安全である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Platycodon属、Origanum属、Thymus属、Zanthoxylum属、Arctium属、Camellia属、Persea属、Stevia属、Pimpinella属、Matricaria属、Malva属、Ilex属、Ptychopetalum属からなる群より選択される少なくとも1種の植物の有機溶媒抽出物を有効成分とする破骨細胞分化抑制因子産生促進剤。
【請求項2】
Platycodon属、Persea属、Stevia属、Pimpinella属、Matricaria属、Malva属からなる群より選択される少なくとも1種の植物の有機溶媒抽出物を有効成分とする破骨細胞分化抑制剤。
【請求項3】
Platycodon属、Origanum属、Thymus属、Persea属、Pimpinella属、Ilex属からなる群より選択される少なくとも1種の植物の有機溶媒抽出物を有効成分とする破骨細胞分化因子発現抑制剤。
【請求項4】
請求項1記載の破骨細胞分化抑制因子産生促進剤、請求項2記載の破骨細胞分化抑制剤または請求項3記載の破骨細胞分化因子発現抑制剤を含有する飲食用組成物。
【請求項5】
請求項1記載の破骨細胞分化抑制因子産生促進剤、請求項2記載の破骨細胞分化抑制剤または請求項3記載の破骨細胞分化因子発現抑制剤を含有する医薬用組成物。
【請求項6】
破骨細胞分化抑制因子、破骨細胞分化因子、または破骨細胞分化抑制のいずれかの作用が関連する疾患の改善または予防を目的とした請求項4または5記載の組成物。
【請求項7】
骨粗鬆症の改善または予防を目的とした請求項4または5記載の組成物。

【公開番号】特開2007−291081(P2007−291081A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−82920(P2007−82920)
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】