説明

骨形成タンパク質に対する中和抗体を検出するための方法

本発明は、骨形成タンパク質(BMP)に対する中和抗体を検出する方法に関する。より特定的には、本発明は抗BMP中和抗体の存在を検出するための、特異性が高く、強力で、迅速かつ正確な、細胞に基づくアッセイに関する。一実施形態において、上記の方法は、(a)サンプルをBMPに接触させるステップと;(b)BMPへの露出によって発現が調節され得る少なくとも1つの内因性遺伝子を含むBMP応答性細胞とともに、ステップ(a)からのサンプルをインキュベートするステップと;(c)細胞からmRNAを単離するステップと;(d)逆転写反応によってmRNAに対応するcDNAを調製するステップと;(e)定量リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(QPCR)によって、ステップ(d)のcDNAから遺伝子を増幅するステップと;(f)細胞中のステップ(e)において増幅された遺伝子の量を決定するステップなどとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨形成タンパク質(bone morphogenetic protein:BMP)に対する中和抗体を検出する方法に関する。より特定的には、本発明は抗BMP中和抗体の存在を検出するための、特異性が高く、強力で、迅速かつ正確な、細胞に基づくアッセイに関する。
【背景技術】
【0002】
骨形成(osteogenic)および軟骨形成タンパク質は、前駆細胞の増殖ならびに機能性の骨、軟骨、腱および/または靭帯組織への分化を誘導できる。本明細書においてはこれらのタンパク質を「骨形成タンパク質(osteogenic proteins)」、「形態形成(morphogenic)タンパク質」、「形態形成(morphogenetic)タンパク質」、または「モルフォゲン」と呼び、これらのタンパク質は、軟骨内性骨形成を誘導する能力によって同定される骨形成タンパク質(“BMP”)ファミリーのメンバーを含む。当該技術分野において、骨形成(osteogenic)タンパク質は一般的に、成長因子のTGF−βスーパーファミリーのサブグループとして分類される。非特許文献1。骨形成(osteogenic)タンパク質は、哺乳動物の骨形成タンパク質1(osteogenic protein−1:OP−1、BMP−7としても公知)およびそのDrosophila相同体の60A、骨形成タンパク質2(OP−2、BMP−8としても公知)、骨形成タンパク質3(OP−3)、BMP−2(BMP−2AまたはCBMP−2Aとしても公知)およびそのDrosophila相同体のDPP、BMP−3、BMP−4(BMP−2BまたはCBMP−2Bとしても公知)、BMP−5、BMP−6およびそのネズミ相同体のVgr−1、BMP−9、BMP−10、BMP−11、BMP−12、GDF−3(Vgr2としても公知)、GDF−8、GDF−9、GDF−10、GDF−11、GDF−12、BMP−13、BMP−14、BMP−15、GDF−5(CDMP−1またはMP52としても公知),GDF−6(CDMP−2としても公知)、GDF−7(CDMP−3としても公知)、Xenopus相同体のVg1ならびにNODAL、UNIVIN、SCREW、ADMP、およびNEURALを含む。
【0003】
骨形成(osteogenic)タンパク質は典型的に、共通の構造的特徴を有する分泌ペプチドを含む。前駆体の「プロ形(pro−form)」からプロセシングされた成熟形の骨形成(osteogenic)タンパク質は、ジスルフィド結合されたホモまたはヘテロ二量体であり、その各々のサブユニットがカルボキシル末端活性ドメインを有する。このドメインは約97〜106アミノ酸残基を有し、システイン残基の保存されたパターンを含む。たとえば、非特許文献2;非特許文献3などを参照。
【0004】
骨形成(osteogenic)タンパク質は多数の生物的プロセスを制御でき、その中には発達中の骨格系および成熟した骨格系の両方における新たな骨および軟骨の形成の誘導が含まれる。たとえば、骨形成(osteogenic)タンパク質は、哺乳動物に投与されると前駆細胞の増殖および分化を刺激できる。その結果として、骨形成タンパク質は、真の置換骨が別様に発生しないような条件において、軟骨内性骨形成を含む骨形成を誘導することができる。骨形成(osteogenic)タンパク質は、大きな分節骨欠損、脊椎固定、および骨折における新たな骨の形成も誘導できる。
【0005】
特定の抗体の検出は、医学的診断の非常に一般的な形である。たとえば、疾患の診断のための生化学的アッセイにおいては、あらゆる特定の抗原に対して向けられた抗体のタイターを血液から推定できる。臨床免疫学においては、疾患の原因の決定において患者の抗体プロファイルを特徴付けるために、異なるクラスの免疫グロブリンのレベルが有用な場合がある。
【0006】
治療剤で処置された患者における潜在的免疫原性の発達をモニタするために、中和抗体などの抗体の検出を用いることもできる。たとえば現在、たとえば酵素免疫測定法(enzyme−linked immunosorbent assay:ELISA)、受容体結合アッセイ、放射性免疫沈降、バイオセンサーに基づくアッセイ、免疫蛍光、ウエスタンブロット、免疫拡散および免疫電気泳動などを含む、複合抗原−抗体の検出に基づくいくつかの免疫診断法を用いて、修正後外側脊椎固定および長骨癒合不全の処置のためにOP−1(BMP−7)で処置された患者において、中和抗体が検出されている。さまざまな細胞に基づく系を用いて中和抗体を検出することもできる。こうした細胞に基づくアッセイにおいて、中和抗体は、標的細胞中で治療剤が生物的プロセスを調節する能力を阻害する。これらのアッセイは、たとえばルシフェラーゼなどのレポーター遺伝子の活性化などを伴ってもよい。代替的には、たとえばアルカリホスファターゼ活性などの生物的機能の読取りを伴う、細胞に基づく系を用いて中和抗体を検出できる。しかし、これらの現行の検出法は、アッセイの感度のレベル、特異性のレベル、および所要時間が長いことを含むいくつかの欠点を有する。
【0007】
したがって、現在利用可能な方法に関連する問題点を克服するような、抗BMP中和抗体の存在を検出するための改善された方法がなおも必要とされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Hogan、Genes & Development(1996)10:1580−1594
【非特許文献2】Massague、Annu.Rev.Cell Biol.(1990)6:597
【非特許文献3】Sampathら、J.Biol.Chem.(1990)265:13198
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、抗BMP中和抗体の存在を検出するための、特異性が高く、強力で、迅速かつ正確なアッセイを提供することによって、上述の問題を解決する。したがっていくつかの実施形態において、本発明は、サンプル中の骨形成タンパク質(BMP)に対する中和抗体の検出のための方法を提供し、この方法は(a)前記サンプルをBMPに接触させるステップと;(b)前記BMPへの露出によって発現が調節され得る少なくとも1つの内因性遺伝子を含むBMP応答性細胞とともに、ステップ(a)からの前記サンプルをインキュベートするステップと;(c)前記細胞からmRNAを単離するステップと;(d)逆転写反応によって前記mRNAに対応するcDNAを調製するステップと;(e)定量リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(quantitative real−time polymerase chain reaction:QPCR)によって、ステップ(d)の前記cDNAから前記遺伝子を増幅するステップと;(f)前記細胞中のステップ(e)において増幅された前記遺伝子の量を決定するステップと;(g)BMPのみに接触させた対照細胞における、ステップ(e)に従って増幅された前記遺伝子の量を決定するステップと;(h)ステップ(f)で決定された量がステップ(g)で決定された量よりも少ないかまたは多いときに、前記サンプル中の中和抗体の存在を検出するステップとを含む。いくつかの実施形態において、ステップ(f)で決定された量はステップ(g)で決定された量よりも多い。他の実施形態において、ステップ(f)で決定された量はステップ(g)で決定された量よりも少ない。
【0010】
いくつかの実施形態において、本発明は、サンプル中の骨形成タンパク質(BMP)に対する中和抗体の検出のための方法を提供し、この方法は、(i)定量リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(QPCR)によって、ステップ(d)の前記cDNAからハウスキーピング遺伝子を増幅するステップと;(j)前記細胞中の、ステップ(i)で増幅された前記ハウスキーピング遺伝子の量を決定するステップと;(k)ステップ(j)で決定された前記ハウスキーピング遺伝子の量によって、ステップ(f)で決定された前記遺伝子の量を正規化するステップとをさらに含む。
【0011】
いくつかの実施形態において、骨形成タンパク質は、OP−1(BMP−7)、OP−2、OP−3、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−8、BMP−9、BMP−10、BMP−11、BMP−12、BMP−13、BMP−15、BMP−16、BMP−17、BMP−18、DPP、Vg1、Vgr、60Aタンパク質、GDF−1、GDF−2、GDF−3、GDF−5、GDF−6、GDF−7、GDF−8、GDF−9、GDF−10、GDF−11、GDF−12、CDMP−1、CDMP−2、CDMP−3、NODAL、UNIVIN、SCREW、ADMP、NEURAL、およびその断片を含むがこれらに限定されない。他の実施形態において、骨形成タンパク質はOP−1(BMP−7)である。
【0012】
いくつかの実施形態において、サンプルは血清である。他の実施形態において、サンプルはヒト血清である。
【0013】
いくつかの実施形態において、BMP応答性細胞は、A549、SAOS−2、ROSおよびCSC12を含むがこれらに限定されない。他の実施形態において、BMP応答性細胞はA549細胞である。いくつかの実施形態において、BMP応答性細胞は、骨髄、脂肪または筋肉のいずれかに由来する一次間質細胞を含むがこれに限定されない。
【0014】
いくつかの実施形態において、BMPへの露出によって発現が調節され得る内因性遺伝子は、表1(下記参照)に示される遺伝子から選択される遺伝子を含むがこれに限定されない。いくつかの実施形態において、BMPへの露出によって発現が調節され得る内因性遺伝子は、初期遺伝子である。いくつかの実施形態において、初期遺伝子は、BMPへの露出後1分から最高48時間以内にその発現が調節される遺伝子である。いくつかの実施形態において、初期遺伝子は、Id−1、Id−2、Id−3、Id−4、Msx2、Dlx2、Dlx3、Dlx5、Noggin、Smad6、Smad7およびRunx2を含むがこれらに限定されない。いくつかの実施形態において、初期遺伝子はId−1である。
【0015】
いくつかの実施形態において、BMPへの露出によって発現が調節され得る内因性遺伝子は、後期遺伝子である。いくつかの実施形態において、後期遺伝子は、BMPへの露出後48時間より後にその発現が調節される遺伝子である。いくつかの実施形態において、後期遺伝子は、HEY1、DIO2、ADAMTS9、HAS3、FGFR3、MFI2、CHI3L1、NOG、BAMBI、GREM1、GREM2およびSOSTを含むがこれらに限定されない。
【0016】
いくつかの実施形態において、遺伝子の発現は、BMPへの露出によってアップレギュレートされる。他の実施形態において、遺伝子の発現は、BMPへの露出によってダウンレギュレートされる。
【0017】
いくつかの実施形態において、サンプルはステップ(a)においてBMPと少なくとも30分間接触させられる。
【0018】
いくつかの実施形態において、ステップ(b)からのサンプルはBMP応答性細胞とともに約3時間インキュベートされる。
【0019】
いくつかの実施形態において、抗体はOP−1(BMP−7)に対して特異的である。
【0020】
いくつかの実施形態において、サンプルは、この方法のステップ(a)〜(h)を行なう前に少なくとも1つのプレスクリーニングアッセイ(prescreening assay)に供される。いくつかの実施形態において、プレスクリーニングアッセイとは、骨形成タンパク質(BMP)に対する中和抗体を検出できる任意のアッセイである。いくつかの実施形態において、プレスクリーニングアッセイは、イムノアッセイおよび細胞に基づくアッセイからなる群より選択される。
【0021】
いくつかの実施形態において、イムノアッセイは酵素免疫測定法(ELISA)である。
【0022】
いくつかの実施形態において、細胞に基づくアッセイは、レポーター遺伝子の活性化を伴う。いくつかの実施形態において、レポーター遺伝子はルシフェラーゼ遺伝子である。いくつかの実施形態において、ルシフェラーゼ遺伝子は、BMPへの露出によって調節され得る遺伝子のプロモーターにつながれる。いくつかの実施形態において、遺伝子は初期または後期遺伝子である。いくつかの実施形態において、遺伝子は、Id−1、Id−2、Id−3、Id−4、Msx2、Dlx2、Dlx3、Dlx5、Noggin、Smad6、Smad7、Runx2、フィブロモジュリン、Hey1およびSFRP−2を含むがこれらに限定されない。
【0023】
いくつかの実施形態において、細胞に基づくアッセイは、アルカリホスファターゼの活性のモニタリングを伴う。いくつかの実施形態において、アルカリホスファターゼ活性はラット骨肉腫(rat osteosarcoma:ROS)細胞においてモニタされる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】より高いアッセイ感度が得られたBMP−7の有効濃度は15ng/mLであることを示す図である。2つの異なる濃度(15ng/mLおよび25ng/mL)のBMP−7(各々3つ行なった)を、だんだん増加する濃度の抗BMP−7モノクローナル抗体(12G3)とともにインキュベートした。Id−1遺伝子に対する相対量(relative quantity:RQ)の値を決定し、15ng/mLの濃度のBMP−7は、より高いアッセイ感度が得られた有効濃度であることが決定された。
【図2】血清サンプルの最小必要希釈度(minimum required dilution:MRD)は1:40であることを示す図である。正常ヒト血清(Normal human serum:NHS)サンプルを1:10、1:20、1:40および1:80に希釈し、Id−1遺伝子に対する相対量(RQ)の値を決定した。MRDとは、血清を含有しない対照サンプル(No NHS)と類似のバックグラウンドRQ値を示すような血清サンプルの最小希釈度である。
【図3】インキュベーションの期間およびFBSの濃度のアッセイ最適化を示す図である。細胞をだんだん増加する濃度のBMP−7とともに19時間または3時間インキュベートして、標的/ハウスキーピング(Id−1/GAPDH)遺伝子発現の比率に対する影響を決定した。応答曲線に基づいて、最適化期間として3時間のインキュベーション期間を選択した。
【図4】OP−1(BMP−7)はハウスキーピングGAPDH発現率に影響しないことを示す図である。80個の異なるサンプルのGAPDH発現率(非スパイク/OP−1スパイク)を調べて、比較的均一であることが示された。
【図5】40ng/ml(BMP−7 40)および400ng/ml(BMP−7 400)のBMP−7で7日間処理した後の、FGFR3、DIO2、HEY1、ADAMTS9、HAS3、およびMFI2のmRNA発現の倍数変化を示す図である。ODMは対照細胞(すなわちBMP非処理)からのmRNAを示す。
【図6】40ng/ml(BMP−7 40)および400ng/ml(BMP−7 400)のBMP−7で7日間処理した後の、Noggin、BAMBI、GREM1、GREM2、およびSOSTのmRNA発現の倍数変化を示す図である。ODMは対照細胞(すなわちBMP非処理)からのmRNAを示す。
【図7】40ng/ml(BMP−7 40)および400ng/ml(BMP−7 400)のBMP−7で7日間処理した後の、CHI3L1のmRNA発現の倍数変化を示す図である。ODMは対照細胞(BMP非処理)からのmRNAを示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本明細書に記載される発明を完全に理解するために、以下に詳細な説明を示す。
【0026】
別様に定義されない限り、本明細書で用いられるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の通常の当業者が一般的に理解しているものと同じ意味を有する。本発明の実施またはテストにおいて、本明細書に記載されるものと類似または同等の方法および材料が用いられてもよいが、好適な方法および材料を以下に記載する。材料、方法および実施例は単なる例示的なものであり、限定的なものとは意図されない。本明細書で言及されるすべての出版物、特許およびその他の文書はその全体にわたって引用により援用される。
【0027】
この明細書全体を通じて、「含む(comprise)」という言葉または「含む(comprises)」もしくは「含んでいる(comprising)」などの変形は、述べられる完全体または完全体の群を含むことを意味するが、あらゆるその他の完全体または完全体の群を排除することは意味しないことが理解されるであろう。
【0028】
本発明をさらに定義するために、本明細書において以下の用語および定義を提供する。
【0029】
本明細書において、「骨形成タンパク質(bone morphogenetic protein:BMP)」、「骨形成タンパク質(bone morphogenic protein:BMP)」、「形態形成(morphogenic)タンパク質」、または「形態形成(morphogenetic)タンパク質」という用語は互いに交換可能に用いられ、DNAおよびアミノ酸配列の相同性に基づいてタンパク質のTGF−βスーパーファミリーのBMPファミリーに属するタンパク質(BMPファミリー)を示す。本発明に従うと、あるタンパク質が、BMPタンパク質ファミリーを特徴付ける保存されたC末端システインリッチドメイン内で少なくとも1つの公知のBMPファミリーメンバーと少なくとも50%のアミノ酸配列同一性を有するとき、そのタンパク質はBMPファミリーに属する。好ましくは、そのタンパク質は保存されたC末端システインリッチドメイン内で少なくとも1つの公知のBMPファミリーメンバーと少なくとも70%のアミノ酸配列同一性を有する。BMPファミリーのメンバーは、全体で50%未満のDNAまたはアミノ酸配列同一性を有していてもよい。BMPは、局所環境の指示に依存して、前駆細胞を誘導して増殖および/または分化経路を開始することによって、軟骨、骨、腱、靭帯、腎臓、肝臓、筋肉、神経または他のタイプの組織形成をもたらすことができてもよく、よってBMPは異なる環境において異なる振舞いをしてもよい。たとえば、BMPは1つの処置部位において骨組織を誘導し、異なる処置部位において神経組織を誘導してもよい。
【0030】
本発明の実行において有用な骨形成タンパク質は、活性形のOP−1、OP−2、OP−3、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−8、BMP−9、BMP−10、BMP−11、BMP−12、BMP−13、BMP−15、BMP−16、BMP−17、BMP−18、DPP、Vg1、Vgr−1、60Aタンパク質、GDF−1、GDF−2、GDF−3、GDF−5、GDF−6、GDF−7、GDF−8、GDF−9、GDF−10、GDF−11、GDF−12、CDMP−1、CDMP−2、CDMP−3、UNIVIN、NODAL、SCREW、ADMPまたはNEURAL、およびそれらのアミノ酸配列変異体を含む。
【0031】
「アミノ酸配列相同性」という用語は、アミノ酸配列の同一性および類似性の両方を含むことが理解される。相同配列は同一および/または類似のアミノ酸残基を共有し、ここで類似の残基とは、整列した参照配列中の対応するアミノ酸残基の保存的置換または「許容される点突然変異」である。よって、参照配列と70%のアミノ酸相同性を有する候補ポリペプチド配列においては、整列した残基のうちいずれか70%が参照配列中の対応残基と同一であるか、またはその保存的置換である。特定の特に好ましい形態形成ポリペプチドは、ヒトOP−1および関連タンパク質の保存された7システインドメインを定義するC末端102〜106アミノ酸と少なくとも60%、好ましくは70%のアミノ酸配列同一性を有する。
【0032】
アミノ酸配列相同性は、当該技術分野において周知の方法によって決定することができる。たとえば、7システインドメインの配列に対する候補アミノ酸配列のパーセント相同性を決定するためには、まず2つの配列を整列させる。整列は、たとえばNeedlemanら、J.Mol.Biol.,48,pp.443(1970)に記載される動的プログラミングアルゴリズム、およびDNAstar,Inc.によって生産される商業的ソフトウェアパッケージであるAlign Programなどによって行なうことができる。両方の出典による教示は本明細書において引用により援用される。関連タンパク質のファミリーの多配列アラインメントとの比較によって、初期アラインメントを精密化できる。アラインメントを行なって精密化してから、パーセント相同性スコアを算出する。2つの配列の整列したアミノ酸残基同士の類似性を順に比較する。類似性の要素は、類似のサイズ、形および電荷を含む。アミノ酸類似性を決定する特に好ましい方法の1つは、本明細書において引用により援用されるDayhoffら、Atlas of Protein Sequence and Structure,5,pp.345−352(1978&Supp.)に記載されるPAM250マトリックスである。類似性スコアは最初に、整列対に関するアミノ酸類似性スコアの合計として算出される。パーセント相同性および同一性の目的のために、挿入および欠失は無視される。したがって、この計算にはギャップペナルティは用いられない。この生スコアを、次いで候補配列および7システインドメインのスコアの相乗平均で割ることによって正規化する。相乗平均とはこれらのスコアの積の平方根である。この正規化された生スコアがパーセント相同性である。
【0033】
「保存的置換」という用語は、対応する参照残基と物理的または機能的に類似の残基を示す。すなわち、保存的置換とその参照残基とは、類似のサイズ、形、電荷、共有結合もしくは水素結合の形成能力を含む化学的性質、またはその類似物を有する。好ましい保存的置換は、上記のDayhoff et al.において許容される点突然変異に対して定義された基準を満たすものである。保存的置換の例は、次のグループ内での置換である:(a)バリン、グリシン;(b)グリシン、アラニン;(c)バリン、イソロイシン、ロイシン;(d)アスパラギン酸、グルタミン酸;(e)アスパラギン、グルタミン;(f)セリン、スレオニン;(g)リジン、アルギニン、メチオニン;および(h)フェニルアラニン、チロシン。「保存的変異体」または「保存的変形」という用語は、所与の親アミノ酸配列中のアミノ酸残基の代わりに置換アミノ酸残基を使用することも含み、ここで親配列に対して特異的な抗体は、結果的に得られる置換ポリペプチド配列に対しても特異的であり、すなわち「交差反応」または「免疫反応」する。
【0034】
「骨形成タンパク質(osteogenic protein:OP)」という用語は、前駆細胞を誘導して軟骨および/または骨を形成できる形態形成(morphogenic)タンパク質を示す。骨は膜内骨または軟骨内性骨であってもよい。ほとんどの骨形成(osteogenic)タンパク質はBMPタンパク質ファミリーのメンバーであり、したがってBMPでもある。本明細書の別の場所に記載されるとおり、このクラスのタンパク質はヒト骨形成タンパク質(hOP−1)を代表とする。本発明とともに用いるために好適な骨形成(osteogenic)タンパク質は、ReddiおよびSampath(Sampathら、Proc.Natl.Acad.Sci.,84,pp.7109−13,本明細書において引用により援用される)によって記載される当該技術分野に認識されるバイオアッセイを用いたルーチン実験によって同定できる。
【0035】
「形態形成(morphogenic)活性」、「形態形成(morphogenetic)活性」、「誘導(inducing)活性」および「組織誘導(tissue inductive)活性」という用語は、骨形成タンパク質が標的細胞を刺激して、任意に細胞分化をもたらし得る1つまたはそれ以上の細胞分裂(増殖)を起こす能力を代替的に示す。こうした標的細胞は、本明細書において一般的に前駆細胞と呼ばれる。細胞増殖は典型的に細胞周期制御の変化を特徴とし、DNA合成速度または細胞生育速度の測定を含むいくつかの手段によって検出されてもよい。細胞分化の初期段階は典型的に、前駆細胞のものに対する遺伝子発現パターンの変化を特徴とし、これは特定の細胞運命または細胞型への関与を示していてもよい。細胞分化の後期段階は、遺伝子発現パターン、細胞生理および形態の変化を特徴としてもよい。遺伝子発現、細胞生理または形態のあらゆる再現性のある変化を用いて、BMPによって誘導される細胞分化の開始および程度を評価してもよい。
【0036】
「抗体」という用語は、完全な抗体、たとえば2本の重鎖および2本の軽鎖を含む抗体など、または完全な抗体の抗原結合断片を示し、供給源、起源の種、生産方法および特徴に関わらず、抗原結合部位を含むあらゆるポリペプチドを包含する。限定的でない例として、「抗体」という用語は、ヒト、オランウータン、マウス、ラット、ヤギ、ヒツジおよびニワトリ抗体を含む。この用語は、ポリクローナル、モノクローナル、単一特異性、多特異性、非特異性、ヒト化、1本鎖、キメラ、合成、組換え型、混成、変異型、およびCDR移植抗体を含むがこれらに限定されない。「抗体」という用語は、さまざまなプロテアーゼによる分解によって生成される抗体断片、化学的切断および/または化学的解離によって生成される抗体断片、および組換えによって生成される抗体断片も含むがこれらに限定されない。これらの断片の中には、Fab、Fab’、F(ab’)、Fv、scFv、Fd、dAb、および抗原結合機能を保持するその他の抗体断片がある。抗体またはその断片は、公知の抗体アイソタイプおよびその高次構造のいずれかであってもよく、たとえばIgA、IgG、IgD、IgE、IgM単量体、IgA二量体、IgA三量体、またはIgM五量体などであってもよい。
【0037】
「中和抗体」という用語は、その抗体が特異的である分子に結合してその少なくとも1つの生物活性を妨げることができるようなあらゆる抗体またはその断片を示す。中和抗体は、その抗体が特異的である分子の1つまたはそれ以上の活性を、その分子のその他の活性を阻害することなく阻害(すなわち除去または低減)してもよい。
【0038】
「調節する(modulate)」または「調節している(modulating)」という用語は、別の化合物または分子の少なくとも1つの活性、たとえば遺伝子転写のレベルまたは遺伝子発現のレベルなどをアップレギュレートまたはダウンレギュレートする能力を示す。
【0039】
「BMP応答性細胞」という用語は、BMP受容体を発現してBMPに誘導されるタンパク質シグナリングの形質導入を可能にすることによって、BMPと細胞受容体との相互作用に応答して遺伝子発現制御要素の調節をもたらすようなあらゆる細胞を示す。
【0040】
「対象(subject)」という用語は動物を示す。いくつかの実施形態において、動物は、ヒト、ウシおよびげっ歯動物を含むがこれらに限定されない哺乳動物である。他の実施形態において、哺乳動物はヒトである。
【0041】
骨形成タンパク質ファミリー
BMPファミリーは、その代表的な骨形成(bone morphogenetic/osteogenic)タンパク質ファミリーのメンバーの名を取って名付けられており、TGF−βタンパク質スーパーファミリーに属する。主に配列相同性に基づいて単離された、報告される「BMP」(BMP−1からBMP−18)のうち、BMP−1を除くすべてがなおも形態形成タンパク質のBMPファミリーのメンバーとして分類されている(Ozkaynakら、EMBO J.,9,pp.2085−93(1990))。
【0042】
BMPファミリーは、形態形成タンパク質であるその他の構造的に関連するメンバーを含んでおり、その中にはショウジョウバエデカペンタプレジック遺伝子複合物(drosophila decapentaplegic gene complex:DPP)産物、Xenopus laevisのVg1産物およびそのネズミ相同体Vgr−1(例、本明細書において引用により援用されるMassague,Annu.Rev.Cell Biol.,6,pp.597−641(1990)を参照)が含まれる。
【0043】
BMP−3、BMP−5、BMP−6、およびOP−1(BMP−7)のC末端ドメインはBMP−2と約60%同一であり、BMP−6およびOP−1のC末端ドメインは87%同一である。BMP−6はおそらくネズミVgr−1のヒト相同体である(Lyonsら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,86,pp.4554−59(1989));この2つのタンパク質はアミノ酸配列レベルで全体的に92%同一である(本明細書において引用により援用される米国特許第5,459,047号)。BMP−6はXenopus Vg−1産物と58%同一である。
【0044】
天然に存在する骨形成タンパク質は、C末端領域(ドメイン)にかなりのアミノ酸配列相同性を有する。典型的に、天然に存在する骨形成(osteogenic)タンパク質は前駆体として翻訳され、それは典型的に約30残基未満のN末端シグナルペプチド配列を有し、その後に続く「プロ」ドメインが切断されて、約97〜106アミノ酸の成熟C末端ドメインが得られる。シグナルペプチドは、Von Heijne Nucleic Acids Research,14,pp.4683−4691(1986)の方法を用いて所与の配列において予測可能な切断部位において、翻訳の際に迅速に切断される。プロドメインは典型的に、完全にプロセシングされた成熟C末端ドメインの約3倍の大きさである。
【0045】
BMPタンパク質ファミリーメンバーの別の特徴は、二量化するという明らかな能力である。いくつかの骨由来骨形成タンパク質(OP)およびBMPは、活性形においてホモおよびヘテロ二量体であることが見出されている。OPおよびBMPがヘテロ二量体を形成する能力は、骨形成タンパク質に付加的な、または変更された形態形成誘導能力を与えてもよい。ヘテロ二量体は、OPおよびBMP受容体分子に対してホモ二量体とは質的または量的に異なる結合親和性を示すかもしれない。結合親和性が変わることで、異なるシグナリング経路に介在する受容体の異なる活性化がもたらされてもよく、その結果最終的には異なる生物活性または結果がもたらされてもよい。結合親和性の変更が組織または細胞型に特異的な態様で現れることによって、特定の前駆細胞型のみを誘導して増殖および/または分化を起こしてもよい。
【0046】
好ましい実施形態において、一対の骨形成(osteogenic)または形態形成(morphogenic)ポリペプチドのアミノ酸配列は、その各々が参照骨形成タンパク質のアミノ酸配列との決定された関係を有する配列を含む。本明細書において、好ましい骨形成または形態形成ポリペプチドは、活性ヒトOP−1、SEQ ID NO:1中に存在する配列との決定された関係を有する。しかし、本明細書に開示される天然に存在する配列または生合成配列のあらゆる1つまたはそれ以上が同様に参照配列として用いられてもよい。好ましい骨形成または形態形成ポリペプチドは、ヒトOP−1の少なくともC末端6システインドメイン、すなわちSEQ ID NO:1の残基335〜431との決定された関係を有する。好ましくは、骨形成または形態形成ポリペプチドは、ヒトOP−1の少なくともC末端7システインドメイン、すなわちSEQ ID NO:1の残基330〜431との決定された関係を有する。すなわち、骨形成活性を有する二量体タンパク質中の好ましいポリペプチドの各々は、参照配列に対応する配列またはそれと機能的に同等の配列を含む。
【0047】
機能的に同等の配列は、参照配列内に配置されたシステイン残基の機能的に同等の配置を含み、それはこれらのシステインの線形的配置は変えても二量体骨形成タンパク質の折畳まれた構造におけるそれらの関係を物質的に損なわないようなアミノ酸挿入または欠失を含み、そこにはこれらのシステインが形態形成活性のために必要であり得るこうした鎖内または鎖間ジスルフィド結合を形成する能力が含まれる。機能的に同等の配列は、1つまたはそれ以上のアミノ酸残基が、たとえばヒトOP−1のC末端7システインドメイン(本明細書においては保存された7システイン骨格とも呼ばれる)などの参照配列の対応する残基と異なっているような配列をさらに含むが、ただしこの相違はその配列の生物活性に影響しないものとする。したがって、参照配列中の対応するアミノ酸の保存的置換が好ましい。参照配列中の対応する残基に対する保存的置換であるアミノ酸残基とは、対応する参照残基と物理的または機能的に類似の残基、たとえば類似のサイズ、形、電荷、共有結合もしくは水素結合の形成能力を含む化学的性質、またはその類似物を有する残基などである。特に好ましい保存的置換は、その教示が本明細書において引用により援用される上記のDayhoff et al.において許容される点突然変異に対して定義された基準を満たすものである。
【0048】
骨形成タンパク質OP−1は説明されている(たとえば、本明細書において引用により援用されるOppermannら、米国特許第5,354,557号などを参照)。成熟した未変性形の天然由来骨形成(osteogenic)タンパク質はグリコシル化された二量体であって、典型的にはSDS−PAGEによって決定される約30〜36kDaの見かけの分子量を有する。還元されると、30kDaのタンパク質は約16kDaおよび18kDaの見かけの分子量を有する2つのグリコシル化ペプチドサブユニットを生じる。還元された状態では、このタンパク質は検出可能な骨形成活性を有さない。非グリコシル化タンパク質も骨形成活性を有し、これは約27kDaの見かけの分子量を有する。還元されると、この27kDaのタンパク質は約14kDaから16kDaの分子量を有する2つの非グリコシル化ポリペプチドを生じ、これは哺乳動物における軟骨内性骨形成を誘導できる。骨形成(osteogenic)タンパク質は、異なるグリコシル化パターン、異なるN末端を有する形、および未変性タンパク質の活性切断型または変異型を含んでもよい。上述のとおり、特に有用な配列は、DPP(Drosophila由来)、Vg1(Xenopus由来)、Vgr−1(マウス由来)、OP−1およびOP−2タンパク質(本明細書において引用により援用される米国特許第5,011,691号およびOppermann et al.を参照))、ならびにBMP−2、BMP−3、BMP−4(本明細書において引用により援用される国際公開88/00205号、米国特許第5,013,649号および国際公開91/18098号を参照)、BMP−5およびBMP−6(本明細書において引用により援用される国際公開90/11366号、国際出願PCT/US90/01630号を参照)、BMP−8およびBMP−9と呼ばれるタンパク質のC末端の96または102アミノ酸配列を含む配列を含む。
【0049】
本発明の好ましい骨形成(osteogenic)タンパク質または形態形成(morphogenic)タンパク質は、OP−1(BMP−7)、OP−2、OP−3、COP−1、COP−3、COP−4、COP−5、COP−7、COP−16、BMP−2、BMP−3、BMP−3b、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−9、BMP−10、BMP−11、BMP−12、BMP−13、BMP−14、BMP−15、BMP−16、BMP−17、BMP−18、GDF−1、GDF−2、GDF−3、GDF−5、GDF−6、GDF−7、GDF−8、GDF−9、GDF−10、GDF−11、GDF−12、MP121、CDMP−1、CDMP−2、CDMP−3、ドルサリン1、DPP、Vg−1、Vgr−1、60Aタンパク質、NODAL、UNIVIN、SCREW、ADMP、NEURAL、その種相同体を含むアミノ酸配列変異体および相同体ならびにその断片を含むがこれらに限定されない少なくとも1つのポリペプチドを含む。いくつかの実施形態において、このタンパク質は、OP−1(BMP−7)、OP−2、OP−3、BMP−2、BMP−3、BMP−3b、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−9、BMP−10、BMP−11、BMP−14、BMP−15、BMP−16、BMP−17、BMP−18、その種相同体を含むアミノ酸配列変異体および相同体ならびにその断片を含むがこれらに限定されない少なくとも1つのポリペプチドを含む。他の実施形態において、このタンパク質は、GDF−1、GDF−2、GDF−3、GDF−5、GDF−6、GDF−7、CDMP−1、CDMP−2、CDMP−3、その種相同体を含むアミノ酸配列変異体および相同体ならびにその断片を含むがこれらに限定されない少なくとも1つのポリペプチドを含む。このタンパク質は、以下から選択される少なくとも1つのポリペプチドを含む:好ましくは、OP−1(BMP−7)、BMP−2、BMP−4、BMP−5、BMP−6、GDF−5、GDF−6、GDF−7、CDMP−1、CDMP−2またはCDMP−3;より好ましくは、OP−1(BMP−7)、BMP−5、BMP−6、GDF−5、GDF−6、GDF−7、CDMP−1、CDMP−2またはCDMP−3;さらにより好ましくは、OP−1(BMP−7)、BMP−5またはBMP−6;最も好ましくはOP−1(BMP−7)。
【0050】
これらの配列ならびにその化学的および物理的性質を開示する出版物は、以下を含む:
【0051】
【化1】

上記の出版物は本明細書において引用により援用される。
【0052】
別の実施形態において、有用なタンパク質は生物的に活性な生合成構成物を含み、そこには新規の生合成骨形成タンパク質および2つまたはそれ以上の公知の骨形成タンパク質からの配列を用いて設計されたキメラタンパク質が含まれる。
【0053】
本発明の好ましい実施形態の1つにおいて、骨形成タンパク質はジスルフィド結合されて二量体種を生じる一対のサブユニットを含み、そのサブユニットの少なくとも1つはBMPタンパク質ファミリーに属する組換えペプチドを含む。本発明の別の好ましい実施形態において、骨形成タンパク質は非共有的相互作用によって形成された二量体種を生じる一対のサブユニットを含み、そのサブユニットの少なくとも1つはBMPタンパク質ファミリーに属する組換えペプチドを含む。非共有的相互作用は、ファンデルワールス、水素結合、疎水性相互作用および静電相互作用を含む。二量体種はホモ二量体またはヘテロ二量体であってもよく、細胞増殖および/または組織形成を誘導できる。他の好ましい実施形態において、骨形成タンパク質は単量体である。
【0054】
特定の好ましい実施形態において、本明細書において有用な骨形成タンパク質は、前述の天然に存在するタンパク質から選択された参照骨形成タンパク質と少なくとも70%のアミノ酸配列相同性または「類似性」を有し、好ましくは75%、80%、85%、90%、95%、または98%の相同性または類似性を有する配列を含むアミノ酸配列を有するものを含む。好ましくは参照タンパク質はヒトOP−1であり、その参照配列は骨形成活性を有する形のヒトOP−1に存在するC末端7システインドメイン、すなわちSEQ ID NO:1の残基330〜431である。特定の実施形態において、参照骨形成ポリペプチドと機能的に同等であることが推測されるポリペプチドは、Alignプログラム(DNAstar、Inc.)などのコンピュータプログラムによって便利に実施される上記のNeedlemanらの方法を用いて、参照骨形成ポリペプチドと整列される。上記に示したとおり、候補と参照配列とのアミノ酸配列相同性または同一性のレベルとして従来から表わされる定義済みの関係を算出する目的のために、候補配列中の内部ギャップおよびアミノ酸挿入は無視される。
【0055】
本明細書において、「アミノ酸配列相同性」とはアミノ酸配列の同一性および類似性の両方を含むと理解される。相同配列は同一および/または類似のアミノ酸残基を有し、ここで類似の残基とは整列した参照配列中の対応するアミノ酸残基の保存的置換または「許容される点突然変異」である。よって、参照配列と70%のアミノ酸相同性を有する候補ポリペプチド配列においては、整列した残基のうちいずれか70%が参照配列中の対応残基と同一であるか、またはその保存的置換である。現在好ましい実施形態において、参照配列はOP−1である。したがって、本明細書において有用な骨形成タンパク質は、好ましい参照配列の対立遺伝子および系統的対応物ならびにその他の変異体を含み、それは天然に存在するかまたは生合成により生成されたものであり(例、「ムテイン」または「突然変異タンパク質」を含む)、さらにタンパク質の一般的な形態形成ファミリーの新規のメンバーを含み、そこには上記に示して識別したものが含まれる。特定の特に好ましい骨形成ポリペプチドは、ヒトOP−1の好ましい参照配列と少なくとも60%のアミノ酸同一性を有し、さらにより好ましくは参照配列と少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または98%のアミノ酸同一性を有する。
【0056】
別の実施形態において、有用なタンパク質は、本明細書において定義したとおり、保存された7システインドメインを有し、かつC末端活性ドメインにおいて少なくとも70%のアミノ酸配列相同性(類似性)を有するタンパク質を含む。
【0057】
さらに別の好ましい実施形態において、有用な活性タンパク質は、低い、中程度または高い厳密性のハイブリダイゼーション条件下で、参照骨形成配列をコードするDNAまたはRNAにハイブリダイズする核酸にコードされる配列を含むアミノ酸配列を有するポリペプチド鎖を有し、その参照骨形成配列は、たとえばOP−1、OP−2、BMP−2、BMP−4、BMP−5、BMP−6、60A、GDF−3、GDF−5、GDF−6、GDF−7、およびその類似物の保存された7システインドメインを決定するC末端配列などである。本明細書において用いられる高い厳密性のハイブリダイゼーション条件とは、40%のホルムアミド、5X SSPE、5Xデンハート液、および0.1%のSDS中で37℃にて一晩おき、0.1X SSPE、0.1%のSDS中で50℃にて洗浄するという公知の技術に従ったハイブリダイゼーションとして定義される。標準的な厳密な条件は、商業的に入手可能な標準的な分子クローニングのテキストにおいてよく特徴付けられている。たとえば、その開示を本明細書において引用により援用するMolecular Cloning A Laboratory Manual,第2版、Sambrook編,FritschおよびManiatis(Cold Spring Harbor Laboratory Press:1989);DNA Cloning,Volumes I and II(D.N.Glover編,1985);Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait編,1984):Nucleic Acid Hybridization(B.D.Hames & S.J.Higgins編.1984);およびB.Perbal,A Practical Guide To Molecular Cloning(1984)などを参照されたい。
【0058】
上記に示したとおり、本発明において有用なタンパク質は一般的に、上記のポリペプチドの折畳まれた対を含む二量体タンパク質である。こうした骨形成タンパク質は還元されたときには不活性であるが、酸化ホモ二量体のとき、および本発明の他のタンパク質と組合せて酸化されてヘテロ二量体を生成するときは活性である。よって、形態形成活性を有するタンパク質中の骨形成ポリペプチドの折畳まれた対のメンバーは、上記において言及した特定のポリペプチドのいずれかから独立して選択されてもよい。いくつかの実施形態において、骨形成タンパク質は単量体である。
【0059】
本発明の材料および方法において有用な骨形成タンパク質は、上に記載したポリペプチド鎖のいずれかを含むタンパク質を含み、それは天然に存在する供給源から単離されても、組換えDNAまたはその他の合成技術によって生成されてもよく、そこにはこれらのタンパク質の対立遺伝子および系統的対応物変異体、ならびにそのムテイン、その断片およびさまざまな切断型および融合構成物が含まれる。欠失または付加変異体も活性であると考えられ、そこには保存されたC末端の6または7システインドメインを変更し得る変異体が含まれるが、ただしその変更は折畳まれた構造におけるこれらのシステインの関係を機能的に阻害しないものとする。したがって、こうした活性形は本明細書に開示される特定的に記載された構成物と同等のものと考えられる。このタンパク質は、さまざまなグリコシル化パターン、さまざまなN末端、アミノ酸配列相同性の領域を有する関連タンパク質のファミリー、および天然または生合成タンパク質の活性切断型または変異型を有する形を含んでもよく、それは宿主細胞における組換えDNAの発現によって生成されてもよい。
【0060】
本明細書において予期される骨形成タンパク質は、原核または真核宿主細胞中で完全型もしくは切断型のcDNAまたは合成DNAから発現されて、精製、切断、再折畳みおよび二量化されることによって形態形成活性を有する組成物を形成してもよい。現在好ましい宿主細胞は、E.coliを含む原核生物または酵母を含む真核生物、または哺乳動物細胞、たとえばCHO、COSもしくはBSC細胞などを限定的でなく含む。当該技術分野の通常の当業者は、その他の宿主細胞が有効に用いられ得ることを認めるであろう。本発明の実施において有用な骨形成タンパク質の詳細な説明は、その作成、使用および骨形成活性のテストの方法を含めて、多数の出版物に開示されており、そこにはその開示が本明細書において引用により援用される米国特許第5,266,683号および第5,011,691号、ならびにその開示が本明細書において引用により援用される本明細書中で引用される出版物のいずれかが含まれる。
【0061】
よって、熟練した遺伝子工学研究者は、本開示および当該技術分野において入手可能な知識に鑑みて、cDNAまたはさまざまな異なる生物種のゲノムライブラリーから適切なアミノ酸配列をコードする遺伝子を単離するか、またはオリゴヌクレオチドからDNAを構築でき、次いで原核生物および真核生物の両方を含むさまざまなタイプの宿主細胞中でその遺伝子を発現させて、哺乳動物中の骨および軟骨形成を刺激できる大量の活性タンパク質を生成できる。加えて、熟練作業者はインビボで本発明のタンパク質を発現する核酸分子も調製できる。
【0062】
いくつかの実施形態において、骨形成タンパク質は、OP−1、OP−2、OP−3、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−8、BMP−9、BMP−10、BMP−11、BMP−12、BMP−13、BMP−15、BMP−16、BMP−17、BMP−18、DPP、Vg1、Vgr、60Aタンパク質、GDF−1、GDF−2、GDF−3、GDF−5、GDF−6、GDF−7、GDF−8、GDF−9、GDF−10、GDF−11、GDF−12、CDMP−1、CDMP−2、CDMP−3、NODAL、UNIVIN、SCREW、ADMP、NEURAL、およびそのアミノ酸配列変異体を含むがこれらに限定されない。いくつかの実施形態において、骨形成タンパク質は、ヒトOP−1の保存された7システインドメインを含むC末端102〜106アミノ酸と少なくとも70%の相同性を有するアミノ酸配列を含み、前記骨形成タンパク質は骨および/または軟骨の欠損の修復を誘導できる。
【0063】
好ましい実施形態において、骨形成タンパク質はOP−1、BMP−5、BMP−6、GDF−5、GDF−6およびGDF−7、CDMP−1、CDMP−2またはCDMP−3である。より好ましい実施形態において、骨形成タンパク質はOP−1、BMP−5またはBMP−6である。最も好ましい実施形態において、骨形成タンパク質はOP−1である。
【0064】
BMPに対する中和抗体を検出するためのアッセイ
本発明は、サンプル中の骨形成タンパク質(BMP)に対する中和抗体を検出する方法を提供する。中和抗体の可能性のあるものを含有するサンプルを、前記BMPへの露出によって発現が調節され得る少なくとも1つの内因性遺伝子を含むBMP応答性細胞とともにインキュベートする前に、まずBMPと接触させる。BMP応答性細胞からmRNAを単離した後に、逆転写反応を用いて前記mRNAに対応するcDNAを調製することによって、前記内因性遺伝子の発現を決定する。次いで、このcDNAを定量リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(QPCR)によって増幅する。増幅された内因性遺伝子の量を決定して、BMPのみに接触させた対照細胞から増幅された同じ内因性初期遺伝子の量と比較する。増幅された内因性遺伝子の量が、BMPのみに接触させた対照細胞から増幅された同じ内因性遺伝子の量よりも少ないかまたは多いときに、サンプル中の中和抗体の存在が検出される。いくつかの実施形態において、増幅された遺伝子の量は対照細胞から増幅された同じ内因性遺伝子の量よりも多い。他の実施形態において、増幅された遺伝子の量は対照細胞から増幅された同じ内因性遺伝子の量よりも少ない。
【0065】
いくつかの実施形態において、本発明の方法は、定量リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(QPCR)によって、サンプル処理した細胞のcDNAからハウスキーピング遺伝子を増幅するステップと、増幅された前記ハウスキーピング遺伝子の量を決定するステップとをさらに含む。次いで、ハウスキーピング遺伝子の決定された量を用いて、内因性初期遺伝子の決定された量を正規化する。遺伝子発現を内因性遺伝子のものに対して正規化することによって、アッセイ内およびアッセイ間のばらつきを制御できる。
【0066】
いくつかの実施形態においては、アッセイが適切に機能していることを確認するために、正および負の対照サンプルによって誘導される応答を決定する。典型的に、負の対照はBMPに露出されていない対象からの血清サンプルである。いくつかの場合には、負の対照サンプルは未処置の対象からのプール血清サンプルであってもよい。負の対照サンプルは、BMPのみによって誘導される生物応答を測定する。いくつかの実施形態においては、一体化した負の対照として働く、サンプル添加前のBMPおよび細胞から生物活性を読取る。
【0067】
いくつかの実施形態において、対照は、BMPで処理された対象からの血清サンプルを含む。他の実施形態において、対照は、BMPで処理された対象からの血清サンプルを含み、さらに陽性中和抗体を含む。いくつかの実施形態において、血清サンプルはプールされる。他の実施形態において、血清はヒト血清である。
【0068】
付加的な対照は、ある範囲のBMP濃度を含有する標準溶液を含んでもよい。これらの標準をテストサンプルの不在下で細胞とともに個々にインキュベートすることによって、変化するBMP濃度において誘導される生物応答のプロファイルを生成する。
【0069】
テストサンプルによって誘導される応答を標準によって誘導される応答と比較することによって、テストサンプル中に含まれる中和活性の定量化が可能になる。たとえば、テストサンプルに用いられたBMP濃度の50%を含有する標準に等しい応答を誘導したテストサンプルは、BMP活性の50%を中和したことになる。これらの比較を用いて、各テストサンプルに対して中和活性の単位を決定してもよい。
【0070】
いくつかの実施形態において、中和抗体の可能性のあるものを含有するサンプルをまずBMPと接触させる。アッセイに用いられるBMPの量は、細胞中の生物応答を誘導するために十分な量である。しかし、細胞中の最大の生物応答を誘導するために十分な量を超えない量のBMPが用いられるときに、中和抗体の検出は最も感度が高い。この量を超えるBMPは、アッセイ読出しを検出可能なほど変えることなくサンプル内の中和抗体に結合する可能性がある。
【0071】
BMPの量は、アッセイのパラメータ、たとえば使用される細胞の量、アッセイ容器のサイズ、およびBMPに対する細胞の感受性などによって変動する。BMPの量を滴定することによって、過剰なBMPによってアッセイを飽和させることなく細胞中の生物応答を誘導するために十分な最適量(または「有効濃度」)を決定できる。
【0072】
いくつかの実施形態において、アッセイに用いられるBMPの濃度は以下のとおりであってもよい:少なくとも1pg/mL、少なくとも100pg/mL、少なくとも500pg/mL、少なくとも1ng/mL、少なくとも10ng/mL、少なくとも15ng/mL、少なくとも20ng/mL、少なくとも25ng/mL、少なくとも30ng/mL、少なくとも40ng/mL、少なくとも50ng/mL、少なくとも60ng/mL、少なくとも70ng/mL、少なくとも80ng/mL、少なくとも90ng/mL、少なくとも100ng/mL、少なくとも200ng/mL、少なくとも500ng/mL、少なくとも1μg/mL、少なくとも100μg/mL、少なくとも500μg/mL、または少なくとも1mg/mL。
【0073】
いくつかの実施形態において、本発明のサンプルは、中和抗体またはタンパク質を含有し得るあらゆる体液であってもよい。例として、血液、血清、リンパ、血漿、滑液、脳脊髄液、涙、生検または組織サンプル、細胞懸濁液、唾液、口腔液、粘液、羊水、初乳、乳腺分泌物、尿、汗、および組織培養培地を含むがこれらに限定されない。
【0074】
いくつかの実施形態において、本発明のサンプルを複数の希釈度でアッセイすることによって、サンプル中に存在する中和活性の正確な定量化を得てもよい。各サンプルが希釈された量に基づいて、各サンプル中の中和活性の単位を算出してもよい。
【0075】
いくつかの実施形態において、本発明のサンプルを希釈することによって、サンプルの非特異的なバックグラウンド構成要素による干渉を避けてもよい。たとえば、血清中に高濃度見出されるタンパク質は、いくつかの条件においてアッセイの構成要素と非特異的に相互作用してアッセイの感度を低減させることがある。サンプル希釈によって非特異的結合を低減または除去することによって、アッセイのシグナル対ノイズ比を増加させてもよい。
【0076】
いくつかの実施形態において、本発明のサンプルは希釈せずにアッセイされてもよい。他の実施形態において、本発明のサンプルは、たとえば1:1、1:2、1:5、1:10、1:15、1:20、1:30、1:40、1:50、1:60、1:80、1:100、1:500、1:1000、または1:5000などの希釈係数にてアッセイされてもよい。他の実施形態において、本発明のサンプルはさらに大きい希釈係数にてアッセイされてもよい。
【0077】
いくつかの実施形態において、本発明のBMP応答性細胞は、BMP受容体を発現してBMPに誘導されるタンパク質シグナリングの形質導入を可能にすることによって、BMPと細胞受容体との相互作用に応答して遺伝子発現制御要素の活性化をもたらすような、細胞のあらゆる集団であってもよい。いくつかの実施形態において、本発明のアッセイは1個の細胞または細胞の集団を用いてもよい。いくつかの実施形態において、BMP応答性細胞は、A549、SAOS−2、ROSおよびCSC12を含むがこれらに限定されない。他の実施形態において、BMP応答性細胞はA549細胞である。いくつかの実施形態において、BMP応答性細胞は、骨髄、脂肪または筋肉のいずれかに由来する一次間質細胞を含むがこれに限定されない。
【0078】
細胞は、本発明のアッセイに用いられるときには、通常の細胞生育のために適切なあらゆる密度で生育される。適切な密度を得るために用いられる細胞の数は、部分的にはアッセイに用いられる組織培養皿またはプレートのサイズおよび表面積によって決められる。
【0079】
アッセイにおいて細胞はあらゆる密度で用いられてもよい。いくつかの実施形態において、細胞はアッセイにおいて以下の細胞密度にて用いられてもよい:少なくとも10%コンフルエント、少なくとも25%コンフルエント、少なくとも50%コンフルエント、少なくとも80%コンフルエント、少なくとも90%コンフルエント、または少なくとも99%コンフルエント。
【0080】
いくつかの実施形態において、細胞は本発明のアッセイにおいて以下の濃度にて用いられる:少なくとも1×10/mL、少なくとも5×10/mL、少なくとも1×10/mL、少なくとも5×10/mL、少なくとも1×10/mL、少なくとも5×10/mL、少なくとも1×10/mL、少なくとも5×10/mL、または少なくとも1×10/mL。いくつかの実施形態においては、1細胞/サンプルから10細胞/サンプルが本発明のアッセイにおいて用いられてもよい。
【0081】
いくつかの実施形態において、細胞は細胞系である。いくつかの実施形態において、細胞は対象から単離されてエクスビボで培養された細胞である。
【0082】
いくつかの実施形態において、本発明の細胞は哺乳動物または非哺乳動物のものであってもよい。細胞は、ヒト、サル、マウス、ラット、ハムスターおよびその他の脊椎動物種を含むがこれらに限定されないあらゆる種のものであってもよい。細胞は、たとえば昆虫細胞などの非脊椎動物種からのものであってもよい。細胞は、たとえばバクテリア細胞などの原核細胞であってもよい。
【0083】
細胞は、当該技術分野において公知の技術のいずれかに従って培養されてもよい。細胞は、細胞培養に好適なあらゆる培養フラスコ、プレートまたは皿において生育されてもよい。細胞培養に適した培地、補助剤および培養条件は当業者に周知である。
【0084】
いくつかの実施形態において、本発明の方法は、BMPへの露出によって発現が調節され得る内因性初期遺伝子を測定する。内因性遺伝子の転写をモニタすることは、レポーター遺伝子を駆動する短いプロモーター領域を含有する組換え構成物からの発現を測定することよりも、インビボ活性をよりよく反映する。さらに、BMP処置の後に初期に遺伝子発現を測定することによって、より高いアッセイ特異性が得られ、かつ血清サンプル中に見出される非BMP構成要素の干渉を受けにくくなる。たとえば、いくつかのヒト血清サンプルによって誘導される細胞毒性と、BMP応答要素に駆動されるルシフェラーゼレポーターアッセイにおける低いシグナル測定値とは明らかな相関関係がある。これに対して、QPCRアッセイの読取は細胞の生存性(毒性)に影響されなかった。
【0085】
いくつかの実施形態において、BMPへの露出によって発現が調節され得る内因性遺伝子は、表1に示される遺伝子から選択される遺伝子を含むがこれらに限定されない:
【0086】
【表1−1】

【0087】
【表1−2】

【0088】
【表1−3】

【0089】
【表1−4】

【0090】
【表1−5】

【0091】
【表1−6】

【0092】
【表1−7】

【0093】
【表1−8】

【0094】
【表1−9】

【0095】
【表1−10】

いくつかの実施形態において、BMPへの露出によって発現が調節され得る内因性遺伝子は、初期遺伝子である。いくつかの実施形態において、本発明の内因性初期遺伝子は、BMPへの露出の際にシグナルプロセス経路の初期段階において発現する遺伝子を含んでもよい。
【0096】
いくつかの実施形態において、初期遺伝子は、BMPへの露出後48時間以内にその発現が調節される遺伝子である。いくつかの実施形態において、初期遺伝子は、BMPへの露出後24時間以内にその発現が調節される遺伝子である。いくつかの実施形態において、初期遺伝子は、BMPへの露出後18時間以内にその発現が調節される遺伝子である。いくつかの実施形態において、初期遺伝子は、BMPへの露出後12時間以内にその発現が調節される遺伝子である。さらに他の実施形態において、初期遺伝子は、BMPへの露出後6時間以内にその発現が調節される遺伝子である。他の実施形態において、初期遺伝子は、BMPへの露出後4時間以内にその発現が調節される遺伝子である。他の実施形態において、初期遺伝子は、BMPへの露出後2時間以内にその発現が調節される遺伝子である。他の実施形態において、初期遺伝子は、BMPへの露出後1時間以内にその発現が調節される遺伝子である。他の実施形態において、初期遺伝子は、BMPへの露出後30分以内にその発現が調節される遺伝子である。
【0097】
いくつかの実施形態において、内因性初期遺伝子は、Id−1、Id−2、Id−3、Id−4、Msx2、Dlx2、Dlx3、Dlx5、Noggin、Smad6、Smad7およびRunx2を含むがこれらに限定されない。いくつかの実施形態において、内因性初期遺伝子はId−1遺伝子である。転写因子ID−1は塩基性へリックス−ループ−へリックスタンパク質のドミナントネガティブ阻害物質であり、BMPの直接的標的である。BMPはID−1プロモーターを強力に活性化し、IDタンパク質の異所的発現はBMPに誘導される応答を模倣できる。したがって、Id−1遺伝子の活性化はBMPシグナル伝達に対する初期マーカーとして有用であり得る。
【0098】
いくつかの実施形態において、BMPへの露出によって発現が調節され得る内因性遺伝子は、後期遺伝子である。いくつかの実施形態において、後期遺伝子は、BMPへの露出後48時間より後にその発現が調節される遺伝子である。いくつかの実施形態において、後期遺伝子は、BMPへの露出後48時間より後だが72時間以内にその発現が調節される遺伝子である。いくつかの実施形態において、後期遺伝子は、BMPへの露出後48時間より後だが96時間以内にその発現が調節される遺伝子である。いくつかの実施形態において、後期遺伝子は、BMPへの露出後48時間より後だが120時間以内にその発現が調節される遺伝子である。いくつかの実施形態において、後期遺伝子は、BMPへの露出後48時間より後だが144時間以内にその発現が調節される遺伝子である。いくつかの実施形態において、後期遺伝子は、BMPへの露出後48時間より後だが168時間以内にその発現が調節される遺伝子である。
【0099】
いくつかの実施形態において、後期遺伝子は、HEY1、DIO2、ADAMTS9、HAS3、FGFR3、MFI2、CHI3L1、NOG、BAMBI、GREM1、GREM2およびSOSTを含むがこれらに限定されない。いくつかの実施形態において、後期遺伝子は、FGFR3、DIO2、HEY1、HAS3、ADAMTS9、およびMFI2を含むがこれらに限定されない。他の実施形態において、後期遺伝子は、NOG、BAMBI、GREM1、およびGREM2を含むがこれらに限定されない。
【0100】
いくつかの実施形態において、遺伝子の発現は、BMPへの露出によってアップレギュレートされる。他の実施形態において、遺伝子の発現は、BMPへの露出によってダウンレギュレートされる。
【0101】
いくつかの実施形態においては、定量リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(QPCR)を用いて、サンプル処理された細胞または未処理の細胞中の内因性遺伝子のcDNAを増幅する。QPCRは非常に感度が良い方法のため、目的の遺伝子の転写の非常に小さな変化の検出が可能である。したがって、QPCRに基づくアッセイは感度が高く、生物サンプル中に存在する少量の中和抗体の検出に有用であり得る。TaqManプローブを用いた定量リアルタイムPCRの方法は当該技術分野において周知である。リアルタイム定量PCRのための詳細なプロトコルは、たとえばGibsonら、“A novel method for real time quantitative RT−PCR”,Genome Res.,10:995−1001(1996)およびHeidら、“Real time quantitative PCR”,Genome Res.,10:986−994(1996)などに記載されている。
【0102】
いくつかの実施形態においては、本発明のサンプルをプレスクリーニングして、目的のBMPに特異的な抗体が存在するかどうかを決定してから、その抗体が中和抗体かどうかを決定してもよい。本発明のサンプルは、一次中和抗体アッセイで陽性反応を示したものであって、今回中和抗体の存在を確認するアッセイとして本発明のアッセイを受けるものであってもよい。いくつかの実施形態において、サンプルはELISAアッセイなどのイムノアッセイによってプレスクリーニングされる。他の実施形態において、サンプルは細胞に基づくアッセイ、たとえばレポーター遺伝子の活性化などによってプレスクリーニングされる。レポーター遺伝子はルシフェラーゼ遺伝子であってもよい。ルシフェラーゼ遺伝子は、BMPへの露出によって調節され得る遺伝子のプロモーターにつながれてもよい。こうした遺伝子は初期または後期遺伝子であってもよく、Id−1、Id−2、Id−3、Id−4、Msx2、Dlx2、Dlx3、Dlx5、Noggin、Smad6、Smad7、Runx2、フィブロモジュリン、Hey1およびSFRP−2を含むがこれらに限定されない。いくつかの実施形態において、サンプルは細胞に基づくアッセイ、たとえばラット骨肉腫(ROS)細胞などにおけるアルカリホスファターゼ活性のモニタリングを伴うアッセイなどによってプレスクリーニングされる。
【0103】
本発明のいくつかの実施形態において、アッセイは、同じアッセイプレート上にテストサンプルと対照サンプルとを含有する96ウェルプレート上で行なわれる。他の実施形態において、アッセイはハイスループットスクリーニングによって行なわれる。
【0104】
本明細書において例示のためにのみ提供され、決して本発明を限定するものと解釈されるべきではない以下の実施例によって、本発明の実施がさらにより完全に理解されるであろう。
【実施例】
【0105】
(実施例1)
定量PCR(QPCR)によるヒト血清サンプル中のOP−1に対する中和抗体の検出
1%のFBSを含有する培地(1%のFBSを含有するF−12K培地(ATCC Cat.#30−2004)中のA549細胞(ATCC Cat.#CCL−185)を、最適な播種密度で96ウェル組織培養マイクロタイタープレート上に播き、細胞が単層中でプレートに安定に付着するまで37℃にてインキュベートした。このステップは細胞型によって数時間から最高24時間までかかってもよい。A549細胞の場合には、細胞は24時間でプレートに付着する。
【0106】
予め決定された有効BMP濃度を正常ヒト血清(NHS)プールにスパイクしたものからなる正の対照は、97.5μLのNHSプールを2.5μLの24μg/mLのOP−1スパイクと混合することによって調製した。
【0107】
NHS中の40μg/mL(「12G3/1000」の抗BMP抗体(12G3モノクローナル抗体)からなる正の対照は、以下のとおり調製した。12G3モノクローナル抗体を、プールされたNHS中で200μg/mLに希釈した。次いでこの抗体をNHSでさらに希釈して40μg/mLにし、合計体積を97.5μLにした。次いで2.5μL体積の24μg/mLのOP−1スパイクを混合物に加えた。
【0108】
NHS中の20μg/mL「12G3/500」の抗BMP抗体(12G3モノクローナル抗体)からなる正の対照は、以下のとおり調製した。12G3モノクローナル抗体を、プールされたNHS中で200μg/mLに希釈した。次いでこの抗体をNHSでさらに希釈して20μg/mLにし、合計体積を97.5μLにした。次いで2.5μL体積の24μg/mLのOP−1スパイクを混合物に加えた。
【0109】
サンプルに「有効BMP濃度」をスパイクして、細胞刺激の前に最低30分間プレインキュベートさせた。
【0110】
「有効BMP濃度」は、15ng/mLまたは25ng/mLのいずれかのBMP−7(各々3つずつ行なった)をだんだん増加する濃度の抗BMP−7モノクローナル抗体(12G3)とともにインキュベートすることによって決定した。2つの濃度に対する相対量(RQ)値(以下により詳細に考察する)を比較して、15ng/mLの濃度のBMP−7を有効濃度と決定した。
【0111】
対照およびサンプルをすべて最小必要希釈度(MRD)に希釈して、予めプレート培養された細胞を含有するプレートに最低2つ分を加えた。MRDは、異なる希釈度(1:10、1:20、1:40、1:80)の非スパイクNHSプールをテストして、血清を含有しない対照サンプル(No NHS)と類似のバックグラウンドRQ値を示すような血清サンプルの最小希釈度を決定することによって決定した。図2に示すとおり、MRDは1:40であることが決定された。
【0112】
サンプル添加の後、プレートを37℃にて3時間インキュベートした。3時間というインキュベーション期間は、異なるインキュベーション期間における標的/ハウスキーピング(Id−1/GAPDH)遺伝子発現の比率を比較する研究に基づいて選択された、最適化期間であった。簡単に述べると、細胞をだんだん増加する濃度のBMP−7とともに19時間または3時間インキュベートして、標的/ハウスキーピング(Id−1/GAPDH)遺伝子発現の比率に対する影響を決定した。図3に示すとおり、応答曲線に基づいて、最適化期間として3時間のインキュベーション期間を選択した。標的/ハウスキーピング(Id−1/GAPDH)遺伝子発現の比率に対する異なる濃度のFBSを比較する研究に基づいて、アッセイで用いるFBSの濃度も最適化した。簡単に述べると、細胞を1%または5%のFBS中のだんだん増加する濃度のBMP−7とともに3時間インキュベートして、標的/ハウスキーピング(Id−1/GAPDH)遺伝子発現の比率に対する影響を決定した。図3に示すとおり、応答曲線に基づいて、最適化条件として1%のFBSを選択した。
【0113】
細胞を溶解し、96ウェルTurbo Captureプレート(Qiagen,Valencia,CA)を用いてポリA+ mRNAを単離した。
【0114】
次いで、単離したmRNAを鋳型として用いて、逆転写反応におけるcDNA合成を行なった。まずサンプルを5分間25℃に調整し、次いで42℃にて30分間逆転写反応を行なった。次いでサンプルを85℃にて5分間インキュベートしてRT酵素を変性させてから4℃に冷却した。
【0115】
予め確認した遺伝子特異的なTaqMan試薬(Applied Biosystems,Foster City,CA)を用いて、QPCRによって標的(Id−1)およびハウスキーピング(GAPDH)遺伝子発現を測定した。2つの遺伝子の各々に対して各cDNAサンプルを3つのウェルで分析し、cDNAサンプル当り合計6つのQPCR反応および血清サンプル当り12の反応を行なった。PCR反応は、たとえばTaqMan Universal PCR Master Mixを用いてABI 7900HT Fast Real−Time PCRシステムなどで行なわれてもよい。デルタデルタCt法(LivakおよびSchmittgen、2001)を用いて、標的(Id−1)およびハウスキーピング(GAPDH)遺伝子発現を定量した。簡単に述べると、標的(Id−1)およびハウスキーピング(GAPDH)遺伝子の両方に対して、遺伝子の増幅が閾値を超えるPCRサイクル(Ct)を記録した。3つの標的遺伝子反復実験(replicates)の平均Ctから3つのハウスキーピング遺伝子反復実験の平均Ctを引くことによって、各細胞培養ウェルの平均デルタCtを算出した。次いで、各未知試料のデルタCtから、NHSプールにスパイクされたBMPからなる較正物質サンプルのデルタCtを引いて、デルタデルタCtを得た。各未知試料のデルタデルタCtは、較正物質サンプルのデルタデルタCtに対して表わされ、これを相対量またはRQ値と呼んだ。次いで、処置反復実験からのRQ値の平均、標準偏差およびパーセントCVを算出して報告した。
【0116】
表2に示されるとおり、標的Id−1遺伝子およびハウスキーピングGAPDH遺伝子は類似の効率で増幅された。遺伝子発現の正規化のためには標的およびハウスキーピング遺伝子の類似の効率が必要であるため、このことは重要な特徴である。
【0117】
【表2】

OP−1(BMP−7)もハウスキーピングGAPDH遺伝子の発現に影響しなかった。図4に示されるとおり、テストされた80個の異なるサンプルにおいて、GAPDH発現率(非スパイク/OP−1スパイク)は比較的均一であった。
【0118】
(実施例2)
切点の決定
アッセイ確認の際に行なわれた実験からのデータを用いて、アッセイ切点を決定した。この研究からのデータを以下の表3にまとめている。
【0119】
【表3】

15ng/mlのOP−1をスパイクした50個の異なるNHSサンプルをテストすることによって、アッセイ切点を決定した。各サンプルを1回ずつテストすることによって、50サンプルすべてを同じ組織培養プレート上で評価できるようにした。3枚のこうしたプレート(プレート1、プレート2およびプレート3)を同じ日にセットアップすることによって、アッセイ切点を決定するときにプレート間のばらつきを考慮できるようにした。プールNHS中の15ng/mLのOP−1からなる対照溶液を参照として用いて、デルタデルタCt法を用いて各サンプルに対するRQ値を算出した。各プレートにおけるこの対照溶液の4つの反復実験すべてからの平均RQ値を参照として設定した。
【0120】
以下の表4に示されるとおり、各プレートに対するRQ分布の正規性を評価するために、3つの統計的テスト(KS,D’Agostino & Pearson,およびShapiro & Wilk)を行なった。プレート1およびプレート2の場合は、3回のテストすべてがRQ分布が正規であることを示した。プレート3については、3回のテストのうち1回のみがRQ分布が正規であることを示した。しかし、まとめるとこれらの結果は正規性の傾向を示す。その結果、パラメトリック法を用いてこのアッセイに対する切点を決定した。
【0121】
【表4】

各プレートからのRQに対する下側95%信頼限界(lower 95% confidence limit:95%LCL)を決定した。次いで、この研究における3枚のプレートに対する平均95%LCLを算出した。この値は0.997であることが見出され、このアッセイに対する切点として指定された。0.997以下のRQを有するサンプルは、抗OP−1中和抗体の存在に対して陽性であるとみなした。0.997より高いRQ値を有するサンプルは陰性であるとみなした。
【0122】
(実施例3)
中間精度の確認
個別に調製した6つの15ng/mlのOP−1スパイクを、最低1枚のプレート上で3日間テストすることによって中間精度を調べた。6サンプルの各々を、組織培養プレートの2つのウェルにてテストした。デルタデルタCt法を用いてRQ値を算出した。プールNHS中の15ng/mLのOP−1からなる対照溶液の4つの反復実験からの平均RQ値を参照として設定した。2つのウェルごとの平均から、平均RQおよびパーセント差異も算出した。
【0123】
中間精度の研究からのデータを以下の表5にまとめている。
【0124】
【表5】

2つの処置ウェルの平均からのパーセント差異≦30%という基準に基づき、中間精度研究で分析した15ng/mlのOP−1スパイクはすべて有効であった。
【0125】
3日間にわたる有効スパイクすべての平均RQは、1.132に等しい。有効スパイクの標準偏差および%CVは、それぞれ0.119および10.484に等しい。スパイクに対するRQが30以下の%CVを生じるとき、このアッセイに対する中間精度は許容可能とみなされた。この予め定義された許容基準に基づいて、このアッセイの中間精度は許容可能とみなされた。
【0126】
(実施例4)
再現性の確認
個別に調製した6つの15ng/mlのOP−1スパイクを、1日に3枚のプレート上でテストし、テストを1人の分析者が行なうことによって、アッセイ内の精度を調べた。6サンプルの各々を、組織培養プレートの2つのウェルにてテストした。デルタデルタCt法を用いてRQ値を算出した。プールNHS中の15ng/mLのOP−1からなる対照溶液の4つの反復実験からの平均RQ値を参照として設定した。2つのウェルごとの平均から、平均RQおよびパーセント差異も算出した。
【0127】
中間精度の研究からのデータを以下の表6にまとめている。
【0128】
【表6】

2つの処置ウェルの平均からのパーセント差異≦30%という基準に基づき、アッセイ内精度研究で分析した15ng/mlのOP−1スパイクはすべて有効であった。
【0129】
3枚のプレートの有効スパイクすべての平均RQは1.017に等しい。有効スパイクの標準偏差および%CVは、それぞれ0.110および10.767に等しい。各有効スパイクの平均RQが、各別個のプレート上のすべての有効スパイクに対する平均RQの±30%以内であるとき、このアッセイに対するアッセイ内精度は許容可能とされた。この予め定義された許容基準に基づいて、アッセイ内精度は許容可能とみなされた。
【0130】
(実施例5)
感度の確認
検出限界パラメータによって、このアッセイにおいて測定可能な中和影響をもたらす最低の抗OP−1抗体濃度を確認した。4つの異なる12G3抗体濃度(75、150、250および500ng/ml)とともにOP−1スパイク(15ng/ml)をプレインキュベートすることによって、検出限界(感度)を調べた。各12G3濃度について、1日で3枚のプレートにわたるプレート当り6つのNHSサンプルにおいて評価した。上記に考察した他のパラメータについては、これらのサンプルを2つのウェルにてテストした。デルタデルタCt法を用いてRQ値を算出した。プールNHS中の15ng/mLのOP−1からなる対照溶液の4つの反復実験からの平均RQ値を参照として設定した。2つのウェルごとの平均から、平均RQおよびパーセント差異も算出した。
【0131】
検出限界(感度)の研究からのデータを以下の表7にまとめている。
【0132】
【表7】

検出限界(感度)に対する結果は、プレート有効性に対する許容基準を満たす。
【0133】
この研究においては4つの濃度の12G3を評価した。それらは75ng/ml、150ng/ml、250ng/mlおよび500ng/mlであった。2つの処置ウェルの平均からのパーセント差異≦30%という基準に基づき、検出限界(感度)研究で分析した12G3スパイクはすべて有効であった。有効スパイクすべてがプレート特異的切点より下の平均RQ値を有するとき、検出限界(感度)は許容可能である。このアッセイに対する切点は0.997のRQ値と決定された。表7に示されるとおり、1日における3枚のプレートの500ng/mlの12G3スパイクすべての平均RQは<0.997である。他の3つの12G3濃度(75、150および250ng/ml)は、このパラメータに対する許容基準を満たさなかった(表7において、切点(すなわち0.997)よりも高い平均RQを有する特定の反復実験を下線で示す)。
【0134】
この予め定義された許容基準に基づいて、このアッセイの許容可能な検出限界(感度)は500ng/mlである。
【0135】
(実施例6)
定量RT−PCRによる遺伝子発現分析
初代のヒト骨髄由来間充織幹細胞(human mesenchymal stem cells:hMSC)、ならびに間充織幹細胞増殖培地(Mesenchymal Stem Cell Growth Medium:MSCGM)および骨形成分化培地(Osteogenic Differentiation Medium:ODM)を含むhMSC培養培地は、Lonza(Walkersville,MD)から購入した。細胞をインビトロで展開し、最初の解凍から5継代以内に実験に用いた。ODM中でBMP−7処置を適用した。ODMは、提供されたアスコルビン酸およびベータグリセロリン酸の補助剤を用いて、ただしデキサメタゾンは除いて、製造者の指示に従って調製した。MSCGMおよびODM中のFBSの濃度は約10%だった。BMP−7をODM中で示される濃度に希釈した。
【0136】
初代hMSCをT−75組織培養フラスコ中で1cm当り1.5×10細胞で播種した。24時間後に細胞をODM単独で、または40ng/mlもしくは400ng/mlのBMP−7を含有するODMで処置した。BMP−7処置後のさまざまな時点(1、2、3、4、5、6および7日)の後に細胞を採取し、RT−QPCR分析のために処理した。
【0137】
対照(すなわちODM単独)およびBMP−7処置したヒト間充織幹細胞(hMSC)からのRNAを、TurboCapture 96 mRNAキット(Qiagen,Valencia,CA)を用いて製造者のプロトコルに従って単離した。20mMのTris−HCl、50mMのKCl、5mMの MgCl、500μMの各dNTP(Invitrogen,Carlsbad,CA)および5ng/μlのRandom Primers(Promega,Madison,WI)を含有する緩衝液において、40ユニットのM−MLV Reverse Transcriptase(Promega,Madison,WI)を用いて逆転写反応を行なった。逆転写反応は23℃にて10分間、42℃にて50分間行なわれ、その後に85℃にて5分間の不活性化ステップが行なわれた。遺伝子発現分析のためのすべての試薬および計測手段は、Applied Biosystems(ABI,Foster City,CA)から得られた。定量PCRは、7900HT Fast Real−Time PCR Systemおよび予め設計されたTaqMan Gene Expression Assaysを用いて、製造者の仕様書に従って行なった。Applied Biosystemsの推奨手順に従って、相対定量の標準曲線法を用いて、GAPDH、HEY1、DIO2、ADAMTS9、HAS3、FGFR3、MFI2、CHI3L1、NOG(Noggin)、BAMBI、GREM1、GREM2およびSOST遺伝子の発現を測定した。
【0138】
BMP−7(OP−1)は、hMSCにおいてFGFR3、DIO2、HEY1、HAS3、ADAMTS9およびMFI2遺伝子を強力にアップレギュレートした。QPCRによって、BMP−7処理後のこれらの遺伝子の発現の調節を確認した。6つの遺伝子はすべて、7日間にわたってBMP−7処理されたhMSCにおいて用量応答性の発現増加を示し、その最大アップレギュレーションは約580倍(FGFR3)、490倍(DIO2)、250倍(HEY1)、160倍(ADAMTS9)、110倍(HAS3)および40倍(MFI2)であった。これらの遺伝子に対して極端な大きさのアップレギュレーションが観察されたことから、これらの遺伝子がBMP7の媒介する造骨細胞の分化において重要な役割を果たしている可能性が示唆される。図5を参照。
【0139】
BMP−7は、ヒト間充織幹細胞においてBMP阻害物質であるNoggin、BAMBI、GREM1およびGREM2遺伝子の発現も顕著にアップレギュレートした。図6を参照。
【0140】
BMP−7は、ヒト間充織幹細胞においてCHI3L1(軟骨糖タンパク質39/YKL−40/キチナーゼ3様1)遺伝子の発現をダウンレギュレートした。QPCRによって、BMP−7処理によるこの遺伝子の発現の調節を確認した。CHI3L1は、7日間にわたってBMP−7処理されたhMSCにおいて用量依存性の態様で連続的にダウンレギュレートされ、より高用量のBMP−7において未処理細胞に比べて最大24倍のダウンレギュレーションが観察された。図7を参照。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル中の骨形成タンパク質(BMP)に対する中和抗体の検出のための方法であって、
(a)前記サンプルをBMPに接触させるステップと;
(b)前記BMPへの露出によって発現が調節され得る少なくとも1つの内因性遺伝子を含むBMP応答性細胞とともに、ステップ(a)からの前記サンプルをインキュベートするステップと;
(c)前記細胞からmRNAを単離するステップと;
(d)逆転写反応によって前記mRNAに対応するcDNAを調製するステップと;
(e)定量リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(QPCR)によって、ステップ(d)の前記cDNAから前記遺伝子を増幅するステップと;
(f)前記細胞中のステップ(e)において増幅された前記遺伝子の量を決定するステップと;
(g)BMPのみに接触させた対照細胞における、ステップ(e)に従って増幅された前記遺伝子の量を決定するステップと;
(h)ステップ(f)で決定された前記量がステップ(g)で決定された前記量よりも少ないかまたは多いときに、前記サンプル中の中和抗体の存在を検出するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
(i)定量リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(QPCR)によって、ステップ(d)の前記cDNAからハウスキーピング遺伝子を増幅するステップと;
(j)前記細胞中のステップ(i)において増幅された前記ハウスキーピング遺伝子の量を決定するステップと;
(k)ステップ(j)で決定された前記ハウスキーピング遺伝子の前記量によって、ステップ(f)で決定された前記遺伝子の前記量を正規化するステップと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記BMPは、OP−1(BMP−7)、OP−2、OP−3、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−8、BMP−9、BMP−10、BMP−11、BMP−12、BMP−13、BMP−15、BMP−16、BMP−17、BMP−18、DPP、Vg1、Vgr、60Aタンパク質、GDF−1、GDF−2、GDF−3、GDF−5、GDF−6、GDF−7、GDF−8、GDF−9、GDF−10、GDF−11、GDF−12、CDMP−1、CDMP−2、CDMP−3、NODAL、UNIVIN、SCREW、ADMP、NEURAL、およびその断片からなる群より選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記BMPはOP−1(BMP−7)である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記サンプルは血清である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
前記血清はヒト血清である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記BMP応答性細胞は、A549、SAOS−2、ROSおよびCSC12からなる群より選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項8】
前記BMP応答性細胞はA549細胞である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記遺伝子は初期遺伝子である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項10】
前記初期遺伝子は、Id−1、Id−2、Id−3、Id−4、Msx2、Dlx2、Dlx3、Dlx5、Noggin、Smad6、Smad7およびRunx2からなる群より選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記初期遺伝子はId−1である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記遺伝子は後期遺伝子である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項13】
前記後期遺伝子は、HEY1、DIO2、ADAMTS9、HAS3、FGFR3、MFI2、CHI3L1、NOG、BAMBI、GREM1、GREM2およびSOSTからなる群より選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項14】
前記サンプルは、ステップ(a)において少なくとも30分間BMPと接触させられる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項15】
ステップ(b)からの前記サンプルはBMP応答性細胞とともに約3時間インキュベートされる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項16】
前記抗体はOP1(BMP−7)に対して特異的である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項17】
前記サンプルは、ステップ(a)〜(h)を行なう前に少なくとも1つのプレスクリーニングアッセイに供される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項18】
前記プレスクリーニングアッセイは、骨形成タンパク質(BMP)に対する中和抗体を検出できる任意のアッセイである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記プレスクリーニングアッセイは、イムノアッセイおよび細胞に基づくアッセイからなる群より選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記イムノアッセイは酵素免疫測定法(ELISA)である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記細胞に基づくアッセイは、レポーター遺伝子の活性化を伴う、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記レポーター遺伝子はルシフェラーゼ遺伝子である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記ルシフェラーゼ遺伝子は、BMPへの露出によって調節され得る遺伝子のプロモーターにつながれる、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記遺伝子は初期または後期遺伝子である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記遺伝子は、Id−1、Id−2、Id−3、Id−4、Msx2、Dlx2、Dlx3、Dlx5、Noggin、Smad6、Smad7、Runx2、フィブロモジュリン、Hey1およびSFRP−2からなる群より選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記細胞に基づくアッセイは、アルカリホスファターゼの活性のモニタリングを伴う、請求項19に記載の方法。
【請求項27】
前記アルカリホスファターゼ活性はラット骨肉腫(ROS)細胞においてモニタされる、請求項26に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−539932(P2010−539932A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−526956(P2010−526956)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【国際出願番号】PCT/US2008/011154
【国際公開番号】WO2009/045321
【国際公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(595148888)ストライカー コーポレイション (52)
【氏名又は名称原語表記】STRYKER CORPORATION
【Fターム(参考)】