説明

骨損失を治療するための方法及び組成物

本発明は、ヒトTNFα抗体又はその抗原結合部分などのTNFα阻害剤を投与することを含む、骨損失、例えば皮質骨損失及び特に手骨損失を、治療する、例えば軽減するための方法及び組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2008年3月24日提出の米国仮出願第61/039028号及び2009年1月29日提出の米国仮出願第61/148313号に対する優先権を主張する。全ての上述の優先出願の内容は、それらの全体において参照により本明細書によって組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
骨損失は、骨組織の構造的劣化を特徴とし、これにより骨が脆弱になり、骨折しやすくなり得る。骨損失は、骨粗鬆症、変形性関節症及び関節リウマチを含む多くの疾患と関連する。
【0003】
関節リウマチ(RA)において、例えば、X線写真における骨損傷は、びらんとしてだけでなく、関節周囲の骨粗鬆症としても現れる[1]。RAにおける骨損傷を回避するために炎症を軽減することの重要性に対するデータがある。いくつかの無作為化比較臨床試験の結果を通じて、強力な抗炎症治療により、関節びらんの進行が抑制されることが示されている[4−6]。破骨細胞の炎症性活性化は、両特性に関与し[2、3]、ビスホスホネートゾレドロン酸を用いて、破骨細胞活性を抑制することにより、びらんの進行が抑えられることが示されている[3]。
【0004】
数例の試験から、抗TNF療法は、全身的な骨損失を予防する能力を有し得ることが示唆されている。例えば、抗腫瘍壊死因子(抗TNF)療法の抗炎症効果によって、RA患者において、X線写真上の関節損傷の進行が顕著に抑えられることが示されている[4−6]。抗炎症治療により全身性骨粗鬆症が軽減されるという証拠もある[7−9]。
【0005】
初期RAで炎症性骨病変を評価することにおけるそれらの感度を求めるために、定量的手骨測定が推奨されてきた[10]。しかし、RAでの手骨損失における抗炎症治療(抗TNF療法を含む。)の効果を調べた研究はごく僅かである[9、11、12]。定量的超音波(QUS)を用いたある研究において、抗TNF療法の使用は、関節周囲の骨において好ましい効果があった。[11]しかし、無作為化比較臨床試験が行われたのは1回のみであり、その試験では、プラセボと比較して、プレドニゾロン(1日7.5mg)の抗炎症効果により、X線写真上の関節損傷の割合だけでなく、手骨損失の割合も顕著に抑えられることが示された[12]。しかし、その抗炎症効果に加えて、プレドニゾロンはまた骨粗鬆症を引き起こすことも知られている[12]。このようにして、骨損失、特に手骨損失を治療するための治療薬が依然として必要とされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Arnett FC、Edworthy SM、Bloch DA、McShane DJ、Fries JF、Cooper NS他、Arthritis Rheum 31、1988年、p.315−24
【非特許文献2】Pettit AR、Ji H、von Stechow D、Muller R、Goldring SR、Choi、Y.他、Am J Pathol 159、2001年、p.1689−99
【非特許文献3】Jarrett SJ、Conaghan PG、Sloan VS、Papanastasiou P、Ortmann CE、O’Connor PJ他、Arthritis Rheum、54、2006年、p.1410−14
【非特許文献4】St Clair EW、van der Heijde DM、Smolen JS、Maini RN、Bathon JM、Emery P.他、Arthritis Rheum、50、2004年、p.3432−43
【非特許文献5】van der Heijde DM、Klareskog L、Rodriguez−Valverde V、Codreanu C、Bolosiu H、Melo−Gomes J他、Arthritis Rheum、54、2006年、p.1063−74
【非特許文献6】Breedveld FC、Weisman MH、Kavanaugh AF、Cohen SB、Pavelka K、van Vollenhoven R他、Arthritis Rheum、54、2006年、p.26−37
【非特許文献7】Marotte H、Pallot−Prades B、Grange L、Gaudin P、Alexandre C、Miossec P.Arthritis Res Ther、9、2007年、p.R61
【非特許文献8】Lange U、Teichmann J、Muller−Ladner U、Strunk J.Rheumatology、44、2005年、p.1546−8
【非特許文献9】Vis M、Havaardsholm EA、Haugeberg G、Uhlig T、Voskuyl AE、van der Stadt RJ他、Ann Rheum Dis、65、2006年、p.1495−9
【非特許文献10】Haugeberg G、Green MJ、Conaghan PG、Quinn M、Wakefield R、Proudman SM他、Ann Rheum Dis、66、2007年、p.1513−17
【非特許文献11】Seriolo B、Paolino S、Sulli A、Ferretti V、Cutolo M.Ann NY Acad Sci、1069、2006年、p.420−7
【非特許文献12】Haugeberg G、Strand A、Kvien TK、Kirwan JR.Arch Intern Med、165、2005年、p.1293−7
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、TNFα阻害剤、例えば抗体又はその抗原結合部分を対象に投与することを含む、対象において、骨損失を治療する、例えば、骨損失を軽減するか及び/又は予防する方法を提供する。ある実施形態において、対象の手の骨損失が治療される。ある実施形態において、皮質手骨損失が治療される。
【0008】
ある実施形態において、対象は、骨損失に関連する疾患に罹患している。ある実施形態において、対象は骨粗鬆症に罹患している。ある実施形態において、対象は変形性関節症に罹患している。さらに別の実施形態において、対象は関節リウマチ(RA)に罹患している。ある実施形態において、対象は骨粗鬆症及びRAに罹患している。
【0009】
本発明のある実施形態において、TNFα阻害剤は、さらなる薬剤と組み合わせて投与される。ある実施形態において、TNFα阻害剤は、メトトレキセートと組み合わせて投与される。別の実施形態において、TNFα阻害剤は、再吸収阻害薬、例えば、アレンドロネート、アレンドロネート+ビタミンD3、イバンドロネート、リセドロネート、(カルシウムとともに)リセドロネート、ゾレドロン酸、カルシトニン、エストロゲン及びラロキシフェンと組み合わせて投与される。さらに別の実施形態において、TNFα阻害剤は、副甲状腺ホルモン、例えばテリパラチドなど、骨形成剤と組み合わせて投与される。
【0010】
ある実施形態において、骨損失の治療のためにTNFα阻害剤を投与される対象は、骨損失を有する及び/又は有するリスクがあるものとして選択され得る。ある実施形態において、本発明は、手骨損失を有するか又は手骨損失を有するリスクのある対象を選択し、手骨損失が治療されるようにTNFα阻害剤を対象に投与することを含む、対象において手骨損失を治療するための方法を提供する。別の実施形態において、本発明の方法は、骨損失を有するか又は有するリスクがあるものとして既に選択された対象において行われる。
【0011】
本発明はまた、以下に限定されないが手骨損失を含む、骨損失を予測するための方法も提供する。本発明は、対象において、骨損失、例えば手骨損失を予測するために使用され得る指標を提供する。例えば、対象において手骨損失を予測するために、対象の年齢及び/又はCRPレベルが使用され得る。
【0012】
本発明のある実施形態において、TNFα阻害剤は、TNFα抗体又はその抗原結合部分である。ある実施形態において、TNFα抗体又はその抗原結合部分は、ヒトTNFα抗体又はその抗原結合部分である。別の実施形態において、TNFα抗体又はその抗原結合部分は、インリキシマブ(inliximab)又はゴリムマブである。ある実施形態において、ヒトTNFα抗体又はその抗原結合部分は、1x10−8M以下のKd及び1x10−3−1以下のKoff速度定数で(両者とも表面プラズモン共鳴により測定)ヒトTNFαから解離し、標準的なインビトロL929アッセイにおいて、1x10−7M以下のIC50でヒトTNFα細胞毒性を中和する。別の実施形態において、ヒトTNFα抗体又はその抗原結合部分は、次の特徴:1x10−3−1以下のKoff速度定数でヒトTNFαから解離し(表面プラズモン共鳴により測定される場合);配列番号3の、又は、位置1、4、5、7もしくは8での1個のアラニン置換によるか又は位置1、3、4、6、8及び/又は9での1から5個の保存的アミノ酸置換により配列番号3から修飾された、アミノ酸配列を含む、軽鎖CDR3ドメインを有し;配列番号4の、又は、位置2、3、4、5、6、8、9、10もしくは11での1個のアラニン置換によるか又は位置2、3、4、5、6、8、9、10、11及び/又は12での1から5個の保存的アミノ酸置換により配列番号4から修飾された、アミノ酸配列を含む、重鎖CDR3ドメインを有する、という特徴を有する。ある実施形態において、ヒトTNFα抗体又はその抗原結合部分は、配列番号3の、又は位置1、4、5、7もしくは8での1個のアラニン置換により配列番号3から修飾された、アミノ酸配列を含む、CDR3ドメインを有する軽鎖可変領域(LCVR)を含み、配列番号4の、又は位置2、3、4、5、6、8、9、10もしくは11での1個のアラニン置換により配列番号4から修飾された、アミノ酸配列を含む、CDR3ドメインを有する重鎖可変領域(HCVR)を含む。ある実施形態において、ヒトTNFα抗体又はその抗原結合部分は、配列番号1のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)及び配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)を含む。ある実施形態において、ヒトTNFα抗体又はその抗原結合部分は、アダリムマブである。別の実施形態において、ヒトTNFα抗体又はその抗原結合部分は、ゴリムマブである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本分析において初期関節リウマチに罹患した試験した患者のフローチャートである。括弧内は元のStudy Jと比較した欠落したX線の数(missing X ray)である。MTX=メトトレキセート;DXR=デジタルX線画像測定法(Digital X−ray radiogrammetry);MCI=中手骨皮質指数;BMD=骨量密度。
【図2】図2は、Study Jの3つの治療群における、経時的なDXR−MCI(%)及び改訂シャープスコア(単位)の変化を示す(A=中央値、B=平均値)。Mod.シャープスコア=改良総シャープスコア;MTX=メトトレキセート;DXR=デジタルX線画像測定法(Digital X−ray radiogrammetry);MCI=中手骨皮質指数。
【図3】図3は、Study Jにおける104週での、累積確率プロット−DXR−MCI及びX線写真スコアの変化である。Mod.シャープスコア=改良総シャープスコア;MTX=メトトレキセート;DXR=デジタルX線画像測定法(Digital X−ray radiogrammetry);MCI=中手骨皮質指数。
【発明を実施するための形態】
【0014】
I.定義
「ヒトTNFα」という用語(本明細書中でhTNFα又は単純にhTNFと略記)は、本明細書中で使用される場合、17kD分泌型及び26kD膜結合型(この生物学的活性型は、非共有結合17kD分子の三量体から構成される。)として存在するヒトサイトカインを指すものとする。hTNFαの構造は、さらに、例えば、Pennica、D.ら(1984)Nature 312:724−729;Davis、J.M.ら(1987)Biochemistry 26:1322−1326;及びJones、E.Y.ら(1989)Nature 338:225−228に記載されている。ヒトTNFβという用語は、組み換えヒトTNFα(rhTNFα)を含むものとし、これは、標準的組み換え発現法により調製され得るか又は市販品を購入できる(R&D Systems、カタログ番号210−TA、Minneapolis、Minn.)。TNFαはまた本明細書中でTNFとも呼ばれる。
【0015】
「TNFα阻害剤」という用語は、TNFα活性を妨害する薬剤を含む。この用語はまた、本明細書中に記載の抗TNFαヒト抗体及び抗体部分ならびに米国特許第6,090,382号;同第6,258,562号;同第6,509,015号及び米国特許出願第09/801,185号及び同第10/302,356号に記載のもののそれぞれも含む(これらのそれぞれは、本明細書中で参照により組み込まれる。)。ある実施形態において、本発明で使用されるTNFα阻害剤は、米国特許第5,656,272号(本明細書中に参照により組み込まれる。)に記載のインフリキシマブ(Remicade(R)、Johnson and Johnson)、CDP571(ヒト化モノクローナル抗TNF−αIgG4抗体)、CDP870(CIMZIA(R)、ヒト化モノクローナル抗TNF−α抗体断片)、抗TNFdAb(Peptech)、CNTO148(ゴリムマブ;Medarex及びCentocor、WO02/12502参照)及びアダリムマブ(HUMIRA(R)Abbott Laboratories、ヒト抗TNF mAb、D2E7として米国特許第6,090,382号に記載)を含む、抗TNFα抗体又はその断片である。本発明において使用され得るさらなるTNF抗体は、米国特許第6,593,458号;同第6,498,237号;同第6,451,983号;及び同第6,448,380号(これらのそれぞれは本明細書中で参照により組み込まれる。)に記載されている。別の実施形態において、TNFα阻害剤は、TNF融合タンパク質、例えば、エタネルセプト(Enbrel(R)、Amgen;WO91/03553及びWO09/406,476(本明細書中で参照により組み込まれる。)に記載される。)である。別の実施形態において、TNFα阻害剤は、組み換えTNF結合タンパク質(r−TBP−I)(Serono)である。
【0016】
「抗体」という用語は、本明細書中で使用される場合、2本の重鎖(H)及び2本の軽鎖(L)がジスルフィド結合により相互に連結している4本のポリペプチド鎖から構成される免疫グロブリン分子を指すものとする。各重鎖は重鎖可変領域(本明細書中、HCVR又はVHと略記)及び重鎖定常領域からなる。重鎖定常領域は3つのドメイン、CH1、CH2及びCH3からなる。各軽鎖は軽鎖可変領域(本明細書中、LCVR又はVLと略記)及び軽鎖定常領域からなる。軽鎖定常領域は、1つのドメイン、CLからなる。VH及びVL領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存性の高い領域が散在する、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変領域にさらに分けられ得る。各VH及びVLは、3つのCDR及び4つのFRから構成され、これらはアミノ末端からカルボキ末端に向かって、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順で配置される。本発明の抗体は、米国特許第6,090,382号;同第6,258,562号;及び同第6,509,015号(それぞれ、その全体において参照により本明細書中に組み込まれる。)にさらに詳細に記載されている。
【0017】
抗体の「抗原結合部分」又は「抗原結合断片」(又は、単に抗体部分)は、本明細書中で使用される場合、抗原(例えばhTNFα)に特異的に結合する能力を保持する抗体の1以上の断片を指す。抗体の抗原結合機能は、完全長抗体の断片により発揮され得ることが分かっている。抗原断片には、Fab、Fab’、F(ab’)、Fabc、Fv、1本鎖(single chains)及び1本鎖抗体が含まれる。抗体の「抗原結合部分」という用語内に包含される結合断片の例には、(i)VL、VH、CL及びCH1ドメインからなる1価断片であるFab断片、(ii)ヒンジ領域でジスルフィド架橋により連結される2つのFab断片を含む2価断片であるF(ab’)断片、(iii)VH及びCH1ドメインからなるFd断片、(iv)抗体の単アームのVL及びVHドメインからなるFv断片、(v)VH又はVLドメインからなるdAb断片(Wardら(1989)Nature、341:544−546)及び(vi)単離相補性決定領域(CDR)が含まれる。さらに、Fv断片の2つのドメイン、VL及びVHは、個別の遺伝子によりコードされるが、これらは、組み換え法を用いて、それらをVL及びVH領域が対となり1価分子を形成する単一タンパク質鎖にし得る合成リンカーにより、連結され得る(1本鎖Fv(scFv)として知られる;例えばBirdら(1988)Science、242:423−426及びHustonら(1988)Proc.Natl.Acd.Sci.USA、85:5879−5883参照)。このような1本鎖抗体も抗体の「抗原結合部分」という用語の範囲内に包含されるものとする。ダイアボディなどの1本鎖抗体のその他の形態も包含される。ダイアボディは、VH及びVLドメインが1本のポリペプチド鎖上で発現されるが、同じ鎖上の2つのドメイン間で対形成させるには短すぎるリンカーを用いて、それにより、このドメインを別の鎖の相補性ドメインと対形成させて2つの抗原結合部位を生成させる2価の二特異性抗体である(例えば、Holligerら(1993)Proc.Natl.Acd.Sci.USA、90:6444−6448;Poljakら(1994)Structure 2:1121−1123参照)。本発明の抗体部分は、米国特許第6,090,382号、同第6,258,562号、同第6,509,015号(それぞれ、その全体において参照により本明細書中に組み込まれる。)にさらに詳細に記載されている。
【0018】
またさらに、抗体又はその抗原結合部分は、この抗体又は抗体部分と1以上のその他のタンパク質又はペプチドとの共有又は非共有結合により形成されるより大きな免疫接着分子の一部であり得る。このような免疫接着分子の例には、四量体scFv分子を生成させるためのストレプトアビジンコア領域の使用(Kipriyanov、S.M.ら(1995)Human Antibodies and Hybridomas、6:93−101)及び2価のビオチン化scFv分子を作製するためのシステイン残基、マーカーペプチド及びC末端ポリヒスチジンタグの使用(Kipriyanov、S.M.ら(1994)Mol.Immunol.31:1047−1058)が含まれる。Fab及びF(ab’)断片などの抗体部分は、従来技術、例えば全抗体のそれぞれパパイン又はペプシン消化を用いて全抗体から調製され得る。さらに、抗体、抗体部分及び免疫接着分子は、本明細書に記載のような標準的組み換えDNA技術を用いて得ることができる。
【0019】
「保存的アミノ酸置換」とは、本明細書中で使用される場合、あるアミノ酸残基が、類似の側鎖を有する別のアミノ酸残基で置換されるものである。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは当技術分野で定義されており、これには、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非電荷極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β分枝側鎖(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)及び芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が含まれる。
【0020】
「キメラ抗体」は、重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列のそれぞれのある部分が、特定の種由来であるか又は特定のクラスに属する抗体における対応配列と相同であり、一方で鎖の残りのセグメントが別の種由来の対応配列と相同である、抗体を指す。ある実施形態において、本発明は、軽鎖及び重鎖両方の可変領域が哺乳動物のある種由来の抗体の可変領域を模倣し、一方で定常部分が、別の種由来の抗体の配列と相同である、キメラ抗体又は抗原結合断片を特徴とする。本発明の好ましい実施形態において、キメラ抗体は、マウス抗体からCDRをヒト抗体のフレームワーク領域上に移植することにより作製される。
【0021】
「ヒト化抗体」は、実質的に(アクセプター免疫グロブリン又は抗体と呼ばれる)ヒト抗体鎖由来の可変領域フレームワーク残基及び少なくとも1つの実質的に非ヒト抗体(例えばマウス)由来の相補性決定領域(CDR)を含む少なくとも1つの鎖を含む抗体を指す。CDRの移植に加えて、ヒト化抗体は通常、親和性及び/又は免疫原性を向上させるためにさらなる改変が行われる。
【0022】
「多価抗体」という用語は、複数の抗原認識部位を含む抗体を指す。例えば、「二価」抗体は2つの抗原認識部位を有し、一方、「四価」抗体は4つの抗原認識部位を有する。「単一特異性」、「二特異性」、「三特異性」、「四特異性」などの用語は、多価抗体に存在する(抗原認識部位の数ではなく)異なる抗原認識部位特異性の数を指す。例えば、「単一特異性」抗体の抗原認識部位は全て、同じエピトープに結合する。「二特異性」又は「二重特異性」抗体は、第一のエピトープに結合する少なくとも1つの抗原認識部位及び、第一のエピトープとは異なる第二のエピトープに結合する少なくとも1つの抗原認識部位を有する。「多価単一特異的」抗体は、全て同じエピトープに結合する複数の抗原認識部位を有する。「多価二特異的」抗体は、複数の抗原認識部位を有し、そのいくつかは第一のエピトープに結合し、そのいくつかは、第一のエピトープとは異なる第二のエピトープに結合する。
【0023】
本明細書中で使用される場合、「ヒト抗体」という用語には、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列由来の可変及び定常領域を有する抗体が含まれるものとする。本発明のヒト抗体は、例えばCDR中、特にCDR3中のヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列によりコードされないアミノ酸残基(例えば、インビトロでの無作為又は部位特異的突然変異誘発によるか又はインビボでの体細胞突然変異により導入される突然変異)を含み得る。しかし、「ヒト抗体」という用語は、本明細書中で使用される場合、マウスなどの別の哺乳動物種の生殖細胞系列由来のCDR配列がヒトフレームワーク配列に移植されている抗体を含まないものとする。
【0024】
「組み換えヒト抗体」という用語には、本明細書中で使用される場合、組み換え手段により調製、発現、作製又は単離される全てのヒト抗体、例えば(下記でさらに述べる)宿主細胞に遺伝子移入された組み換え発現ベクターを用いて発現させた抗体、組み換え体から単離された抗体、(下記でさらに述べる)コンビナトリアルヒト抗体ライブラリ、ヒト免疫グロブリン遺伝子に対してトランスジェニックである動物(例えばマウス)から単離された抗体(例えばTaylorら(1992)Nucl.Acids Res.20:6287−6295参照);又はヒト免疫グロブリン遺伝子配列のその他のDNAへのスプライシングを含む何らかのその他の手段により、調製、発現、作製又は単離される抗体が含まれるものとする。このような組み換えヒト抗体は、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列由来の可変及び定常領域を有する。しかし、ある実施形態において、このような組み換えヒト抗体は、インビトロ突然変異誘発(又はヒトIg配列に対してトランスジェニックである動物を使用する場合、インビボ体細胞突然変異誘発)に供され、従って、組み換え抗体のVH及びVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖細胞系列VH及びVL配列に由来し、それらに関連する一方で、インビボでのヒト抗体生殖細胞系列レパートリー内に天然に存在し得ない配列である。
【0025】
このようなキメラ、ヒト化、ヒト及び二重特異性抗体は、当技術分野で公知の組み換えDNA技術により、例えば、PCT国際出願PCT/US86/02269;欧州特許出願第184,187号;欧州特許出願第171,496号;欧州特許出願第173,494号;PCT国際公開WO86/01533;米国特許第4,816,567号;欧州特許出願第125,023号;Betterら(1988)Science 240:1041−1043;Liuら(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:3439−3443;Liuら(1987)J.Immunol.139:3521−3526;Sunら(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:214−218;Nishimuraら(1987)Cancer Res.47:999−1005;Woodら(1985)Nature 314:446−449;Shawら(1988)J.Natl.Cancer Inst.80:1553−1559);Morrison(1985)Science 229:1202−1207;Oiら(1986)Bio Techniques 4:214;米国特許第5,225,539号;Jonesら(1986)Nature 321:552−525;Verhoeyanら(1988)Science 239:1534;及びBeidlerら(1988)J.Immunol.141:4053−4060、Queenら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:10029−10033(1989)、米国特許第5,530,101号、同第5,585,089号、同第5,693,761号、同第5,693,762号、Selickら、WO90/07861及びWinter、米国特許第5,225,539号に記載の方法を用いて、作製され得る。
【0026】
本明細書中で使用される場合、「単離抗体」は、異なる抗原特異性を有するその他の抗体を実質的に含まない抗体を指すものとする(例えば、hTNFαに特異的に結合する単離抗体は、hTNFα以外の抗原に特異的に結合する抗体を実質的に含まない。)。しかし、hTNFαに特異的に結合する単離抗体は、その他の種由来のTNFα分子などのその他の抗原に対する交差反応性を有し得る。さらに、単離抗体は、その他の細胞性物質及び/又は化学物質を実質的に含まないものであり得る。
【0027】
「中和抗体」(又はhTNFα活性を中和した抗体)は、本明細書中で使用される場合、hTNFαに結合するとhTNFαの生物学的活性が阻害される抗体を指すものとする。hTNFαの生物学的活性のこの阻害は、hTNFα生物学的活性の1以上の指標、例えば(インビトロ又はインビボの何れかでの)hTNFα誘導性細胞毒性、hTNFα誘導性細胞活性化及びhTNFα受容体へのhTNFαの結合を測定することにより評価され得る。hTNFα生物学的活性のこれらの指標は、当技術分野で公知のいくつかの標準的なインビトロ又はインビボアッセイ(米国特許第6,090,382号参照)の1以上により評価され得る。好ましくは、抗体のhTNFα活性中和能は、L929細胞のhTNFα誘導性細胞毒性の阻害により評価される。hTNFα活性の追加又は代替パラメーターとして、hTNFα誘導性細胞活性化の尺度としてのHUVECでのELAM−1のhTNFα誘導性発現を阻害する抗体の能力が評価され得る。
【0028】
「表面プラズモン共鳴」という用語は、本明細書中で使用される場合、例えばBIAcoreシステム(Pharmacia Biosensor AB、Uppsala、Sweden及びPiscataway、NJ)を用いて、バイオセンサーマトリックス内のタンパク質濃度における変化を検出することにより、リアルタイム生物特異的相互作用の分析を可能にする光学現象を指す。さらなる説明については、米国特許第6,258,562号の実施例1及びJonssonら(1993)Ann.Biol.Clin.51:19;Jonssonら(1991)Biotechniques 11:620−627;Johnssonら(1995)J.Mol.Recognit.8:125;及びJohnnsonら(1991)Anal.Biochem.198:268)を参照のこと。
【0029】
「Koff」という用語は、本明細書中で使用される場合、抗体/抗原複合体からの抗体の解離に対する解離速度定数を指すものとする。
【0030】
「K」という用語は、本明細書中で使用される場合、特定の抗体−抗原相互作用の解離定数を指すものとする。
【0031】
「IC50」という用語は、本明細書中で使用される場合、例えば細胞毒性活性の中和など、関心のある生物学的エンドポイントを阻害するために必要とされる阻害剤の濃度を指すものとする。
【0032】
「用量」という用語は、本明細書中で使用される場合、対象に投与されるTNFα阻害剤の量を指す。
【0033】
「投薬」という用語は、本明細書中で使用される場合、治療目的(例えば骨損失の治療)を達成するための物質(例えば抗TNFα抗体)の投与を指す。
【0034】
「投薬計画」とは、TNFα阻害剤に対する治療スケジュール、例えば、長期間にわたる及び/又は一連の治療を通じた治療スケジュール、例えば、第0週にTNFα阻害剤の第一の用量を投与し、その後、隔週投薬計画でTNFα阻害剤の第二の用量を投与すること、を示す。ある実施形態において、投薬計画には、TNFα阻害剤、例えばヒトTNFα抗体又はその抗原結合部分を1ヵ月に1回又は4週間に1回投与することが含まれる。
【0035】
「隔週投薬計画」、「隔週投薬」及び「隔週で投与」という用語は、本明細書中で使用される場合、例えば一連の治療を通じて、治療目的を達成するために対象に物質(例えば抗TNFα抗体)を投与するタイムコースを指す。隔週投薬計画には毎週投薬計画は含まれないものとする。物質は、例えば9から19日ごと、より好ましくは11から17日ごと、さらに好ましくは13から15日ごと及び最も好ましくは14日ごとに投与され得る。ある実施形態において、隔週投薬計画は、治療の第0週に対象において開始される。別の実施形態において、隔週投薬計画で維持投与量が投与される。ある実施形態において、負荷投与量及び維持投与量の両者が隔週投薬計画に従い投与される。ある実施形態において、隔週投薬には、第0週から開始され隔週で対象にTNFα阻害剤の用量が投与される投薬計画が含まれる。ある実施形態において、隔週投薬には、TNFα阻害剤の用量が、ある一定期間、例えば、4週間、8週間、16週間、24週間、26週間、32週間、36週間、42週間、48週間、52週間、56週間など、連続して隔週で対象に投与される投薬計画が含まれる。隔週投薬法は、US20030235585(本明細書中に参照により組み込まれる。)にも記載されている。
【0036】
「第二の薬剤と併用する第一の薬剤」という句における場合の「併用(combination)」という用語は、例えば、同じ医薬的に許容可能な担体中で溶解もしくは混合され得る、第一の薬剤及び第二の薬剤の同時投与又は第一の薬剤を投与してその後に第二の薬剤を投与するか又は第二の薬剤を投与してその後に第一の薬剤を投与することを含む。従って、本発明は、併用療法の方法及び併用医薬組成物を含む。
【0037】
「併用療法(concomitant therapeutic treatment)」という句における「併用(concomitant)」という用語は、第二の薬剤の存在下で薬剤を投与することを含む。併用療法にはまた、第一、第二、第三又はさらなる薬剤が同時投与される方法も含まれる。併用療法にはまた、第一又はさらなる薬剤が第二又はさらなる薬剤の存在下で投与され、この場合、第二又はさらな薬剤が、例えば、先に投与されている場合もあり得る。方法も含まれる。併用療法は、様々な動作主により段階的に実行され得る。例えば、ある動作主が第一の薬剤を対象に投与し得、第二の動作主が対象に第二の薬剤を投与し得、第一の薬剤(及びさらなる薬剤)が第二の薬剤(及びさらなる薬剤)の存在下での投与後である限り、投与段階は、同時に又はほぼ同時に又は時間をあけて実行し得る。動作主及び対象は同じ者(例えばヒト)であり得る。
【0038】
「併用療法(combination therapy)」という用語は、本明細書中で使用される場合、2以上の治療物質、例えば抗TNFα抗体及び別の薬物の投与を指す。その他の薬物は抗TNFα抗体の投与と同時に、投与前に又は投与後に投与され得る。
【0039】
「治療」という用語は、本発明の状況の中で使用される場合、骨損失、例えば手骨損失、例えば皮質手骨損失の治療のための、治療的処置ならびに予防的又は抑制手段を含むものとする。例えば、治療という用語には、疾病又は疾患の徴候を予防するか又は排除する、骨損失、例えば手骨損失の発症前又は発症後のTNFα阻害剤の投与が含まれ得る。別の例として、骨損失が付随する症候及び/又は合併症及び障害に対処するための、骨損失の臨床症状後のTNFα阻害剤の投与には、疾患の「治療」が含まれる。さらに、発症後及び臨床症状及び/又は合併症が発生した後の薬剤の投与(投与が疾病又は疾患の臨床パラメーター及びおそらく疾病の改善に影響を与える。)には、骨損失の「治療」が含まれる。ある実施形態において、対象における骨損失の治療は、兆候及び症候を軽減することを含む。
【0040】
「治療の必要がある」者には、疾病又は疾患が予防されるべき者を含む、骨損失を既に有するヒトなどの哺乳動物が含まれる。
【0041】
本発明は、全般的に、TNFα阻害剤、例えば、ヒトTNFα抗体又はその抗原結合部分による、骨損失、例えば手骨損失、例えば皮質手骨損失を治療するための、改善された使用及び組成物を提供する。骨損失を治療するための方法及び使用に関する、組成物及びキットを含む製品もまた、本発明の一部とされる。本発明の様々な態様を本明細書中でさらに詳細に記載する。
【0042】
II.骨損失を治療するための使用及び組成物
本発明は、手骨損失を含む骨損失を治療することを必要とする対象に、TNFα阻害剤、例えばTNFα抗体又はその抗原結合部分を投与することによる、手骨損失を含む骨損失を治療する手段を提供する。ある実施形態において、本発明の方法は、例えば、関節リウマチ、変形性関節症及び/又は骨粗鬆症を含む別の疾患に付随する骨損失を有する対象を治療するために使用され得る。本発明の方法から利益を得うる対象には、骨損失(又は骨損失が付随する疾患)があると診断された対象ならびに骨損失に対するリスクがあるとして識別された対象(骨損失が付随する疾患であると診断された対象を含む。)が含まれる。ある実施形態において、本発明の方法は、手の骨損失の治療に有用である。
【0043】
ある実施形態において、TNFα阻害剤、例えばTNFα抗体又はその抗原結合部分は、骨損失の進行が阻止されるか又は治療しない骨損失と比較して抑制されるように、骨損失(又は骨損失が付随する疾患)を有する対象に投与される。このようにして、本発明の方法は、対象において骨損失を軽減するために、ならびにさらなる骨損失を予防するために使用され得る。
【0044】
本発明のある態様は、TNFα阻害剤、例えばヒトTNFα抗体又はその抗原結合部分が手骨損失を治療するために使用され得るという予想外の発見に関する。この発見前に、キメラTNFα抗体インフリキシマブを用いた研究から、治療を受ける対象の腰部及び脊柱の骨損失が阻止されても手骨損失が停止しなかったことが示された[9]。従って、ある実施形態において、RA、変形性関節症及び骨粗鬆症に付随する手骨損失を含む手骨損失を治療するために本発明の方法及び組成物が使用され得る。手骨損を有するか又は発症し得る対象において、手骨損失を治療するために、本発明の方法及び組成物が使用され得る。
【0045】
ある実施形態において、本発明の方法は、皮質骨損失の治療に有用である。皮質骨又は緻密骨は、海綿骨(trabecular又はcancellous bone)と比較して、緻密であり、ヒト骨格の重量の80%におよび、骨の表面を形成する。これは非常に硬く、数個のギャップがある複数の積層から形成される。その主要な機能は、身体を支持し、器官を保護し、運動のための手段を提供し、(海綿骨と一緒に)無機物を貯蔵することである。本明細書中に記載のように、下記で提供される例のある発見は、皮質骨損失を治療するためにTNFα阻害剤が使用され得るということである。ある実施形態において、本発明の方法は、手の皮質骨損失を治療するために使用され得る。
【0046】
骨損失、例えば皮質骨損失又は手骨損失、例えば皮質手骨損失の治療は、以下に限定されないが、デジタルX線画像測定法(Digital X−ray radiogrammetry、DXR)(Sectra、Linkoping、Sweden)を含む、当技術分野で公知の手段を用いて評価され得る。DXRは、X線写真での関節損傷の評価のために、デジタル化した同じ手で手骨塩密度(BMD)及び中手骨皮質指数(MCI)を測定する。DXRは、旧来のX線画像測定法のコンピュータ版である。手のX線写真において、コンピュータは、第二、第三及び第四中手骨の最狭小部の周囲の関心領域(ROI)を自動的に認識し、1cmあたり118回、皮質厚、骨幅及び多孔性を測定する。DXR−BMDは、cX VPAcomb X(1−p)と定義され、式中、cは、(DXR−BMDが平均で、Hologic QDR−2000装置の中間−遠位前腕領域に相当するという結果により決定される)定数であり、VPAは面積あたりの体積であり、pは多孔性である。DXR−MCIは、組み合わせた皮質厚を皮質外径で割ったものとして定義され、骨サイズ、骨の長さ及び画像入力設定とは独立した、相対的な骨尺度である。骨損失が調べられ得る手段のその他の例は、Haugeberg(2008)Best Pract Res Clin Rheumatol 22(6):1127−39に記載されている。
【0047】
ある実施形態において、本発明は、DXR−MCI及び/又はDXR−BMDスコアを改善することを必要とする対象に、TNFα抗体又はその抗原結合部分などのTNFα阻害剤を投与することを含む、骨損失を有する対象のDXR−MCI及び/又はDXR−BMDスコアを改善する方法を提供する。ある実施形態において、対象のDXR−MCI及び/又はDXR−BMDスコアの改善は、TNFα阻害剤での治療前の対象のDXR−MCI及び/又はDXR−BMDスコアの維持である。このようなDXR−MCI及び/又はDXR−BMDスコアの維持は、骨損失が進行していないことを示す。あるいは、ある実施形態において、骨損失に対して治療されている対象のDXR−MCI及び/又はDXR−BMDスコアの改善は、DXR−MCI及び/又はDXR−BMDスコア減少率の低下により評価され得る。対象のDXR−MCI及び/又はDXR−BMDスコアの改善は、治療前に測定された初期ベースラインスコアに対して評価され得る。例えば、対象において、TNFα阻害剤の治療約26週間後又は約13回の治療後、DXR−MCIスコアが1.4以下に低下し得る(例えば、ベースラインスコアに対して、−1.4、−1.3、−1.2、−1.1、−1.0、−0.9、−0.8、−0.7、−0.6、−0.5、−0.4、−0.3、−0.2、−0.1又は0.0)。別の例において、ベースラインスコアに対する、対象のDXR−MCIスコアの0.44未満(例えば、−0.43、−0.42、−0.41、−0.40、−0.39、−0.38、−0.37、−0.36、−0.35、−0.34、−0.33、−0.32、−0.31、−0.30、−0.29、−0.28、−0.27、−0.26、−0.25、−0.24、−0.23、−0.22、−0.21、−0.20、−0.19、−0.18、−0.17、−0.16、−0.15、−0.14、−0.13、−0.12、−0.11、−0.10、−0.09、−0.08、−0.07、−0.06、−0.05、−0.04、−0.03、−0.02、−0.01)の低下は、対象における骨損失の治療を示唆するものである。
【0048】
ある実施形態において、本発明は、隔週投薬計画で、第0週にヒトTNFα抗体又はその抗原結合部分、例えばヒトTNFα抗体又はその抗原結合部分を対象に投与することを含む、対象において骨損失を治療する方法を提供する。ある実施形態において、ヒトTNFα抗体又はその抗原結合部分は、隔週投薬計画に従い、骨損失を有する(又は骨損失を有するリスクがある)対象に皮下投与される。あるいは、ヒトTNFα抗体又はその抗原結合部分は、1ヵ月に1回の投薬計画又は抗体もしくはその抗原結合部分が4週間に1回投与される投薬計画に従い、骨損失を有する(又は骨損失を有するリスクがある)対象に投与される。
【0049】
ある実施形態において、少なくとも約2週間、少なくとも約6週間、少なくとも約12週間、少なくとも約16週間、少なくとも約18週間、少なくとも約20週間、少なくとも約22週間、少なくとも約24週間、少なくとも約30週間、少なくとも約36週間、少なくとも約52週間、少なくとも約72週間、少なくとも約96週間、少なくとも約104週間などにわたり、隔週投薬計画で、ヒトTNFα抗体又はその抗原結合部分を投与することにより、骨損失が治療される。上記で引用した値の何れの間の値の範囲もまた本発明の範囲に含まれるものとする(例えば23週間、60週間、64週間など)。
【0050】
ある実施形態において、TNFα阻害剤、例えば抗体又はその抗原結合部分はまた、例えば、3ヵ月間、6ヵ月間、12ヵ月間、18ヵ月間、24ヵ月間、30ヵ月間、36ヵ月間、42ヵ月間、48ヵ月間、54ヵ月間、60ヵ月間など、月単位で定められた期間にわたり、骨損失の治療のために対象に投与され得る。上記で引用した値の何れの間の値の範囲もまた本発明の範囲に含まれるものとする(例えば38ヵ月間、50ヵ月間、52ヵ月間)。
【0051】
ある実施形態において、TNFα阻害剤、例えば抗体又はその抗原結合部分はまた、例えば、1年、2年、3年、4年、5年、6年、7年、8年など、年単位で定められた期間にわたり骨損失の治療のために対象に投与され得る。上記で引用した値の何れの間の値の範囲もまた本発明の範囲に含まれるものとする(例えば1.5年、2.2年、3.5年)。
【0052】
本発明の方法で使用されるTNFα阻害剤はまた、当技術分野で公知の投薬判定に従い投与され得る。例えば、ある実施形態において、TNFα阻害剤は、TNFα阻害剤の量が対象の体重により決定される、体重に基づく投薬スキーム(即ちmg/kg)に従い、骨損失の治療のために対象に投与される。あるいは、TNFα阻害剤は、TNFα阻害剤の一定固定量が各投与で送達される固定用量又は全身投与量に従い投与され得る。ある実施形態において、ヒトTNFα抗体又はその抗原結合部分は、10−100mgの範囲の固定用量で対象に投与される。ある実施形態において、ヒトTNFα抗体又はその抗原結合部分は、40mg、50mg、60mg、70mg、80mg、90mg、100mgなどの固定用量で対象に投与される。上記で引用した値の何れの間の値の範囲もまた本発明の範囲に含まれるものとする(例えば、85mg、95mg、上述の用量に基づく範囲であるように、例えば、20−80mg)。
【0053】
ある実施形態において、TNFα阻害剤の投与は、非経口(例えば、静脈内、皮下、腹腔内、筋肉内)である。ある実施形態において、TNFα阻害剤は、静脈内点滴又は注射により投与される。別の実施形態において、TNFα阻害剤は、筋肉内注射によるか又は皮下注射(例えば、隔週で皮下注射)により投与される。ある実施形態において、ヒトTNFα抗体又はその抗原結合部分は、肺投与技術に従い対象に投与される。
【0054】
本明細書中に記載の投薬計画は、本明細書中の教示を考慮して、最適な所望の反応、例えば骨損失の治療、をもたらすために調整され得る。投薬量の値は、骨損失の種類及び重症度により変動し得ることに注意されたい。さらに、何らかの特定の対象に対して、明細書の教示及び個々のニーズ及び投与するか又は本組成物の投与を監督する者の専門家としての判断に従い、経時的に具体的な投薬計画が調整され得ること及び本明細書中で示される投薬量及び範囲が単なる例示であり、主張される本発明の範囲又は実施を制限するものではないことを理解されたい。
【0055】
ある実施形態において、本発明の方法は、骨損失(又は骨損失が付随する疾患)を有するか又は有するリスクがある対象を選択することを含む。別の実施形態において、本発明の方法は、骨損失(又は骨損失が付随する疾患)を有するとして既に選択されたか又はこれを有するリスクがあるとして選択された対象にTNFα阻害剤を投与することを含む。
【0056】
ある実施形態において、手骨損失の予測因子は、本明細書中に記載の実施例に記載され、これには年齢及び/又はCRPレベルが含まれる。
【0057】
別の疾患に付随する骨損失を治療するために、本発明の方法及び組成物を使用し得る。ある実施形態において、骨損失が付随する疾患に罹患している対象において、骨損失、例えば手骨損失を軽減するために、TNFα阻害剤が使用される。骨損失が付随する疾患に罹患しているか又は罹患するリスクがある対象において骨損失を予防するために本明細書中に記載の方法が使用され得ることも、本発明の範囲内である。骨損失が付随する疾患に関するさらなる詳細は以下に記載する。
【0058】
関節リウマチ
腫瘍壊死因子(TNF)は、関節リウマチ(RA)の病因における枢要なサイトカインである。TNFαは、関節リウマチにおいて、組織炎症を活性化し、関節破壊を引き起こすことに関与している(例えば、Moeller、A.ら(1990)Cytokine 2:162−169;Moellerらに対する米国特許第5,231,024号;Moeller、A.による欧州特許公開第260 610 B1号;Tracey及びCerami、前出;Arend、W.P.及びDayer、J−M.(1995)Arth.Rheum.38:151−160;Fava、R.A.ら(1993)Clin.Exp.Immunol.94:261−266参照)。関節破壊に加えて、RAに罹患した対象は、局所的及び全身的な骨損失がある。
【0059】
近年、TNF活性を阻害する生体反応調節物質がRAに対する確立した治療法となってきた。アダリムマブ、エタネルセプト及びインフリキシマブは、RA患者間で、X線写真上での損傷の両疾患の調節及び遅延及び予防において顕著な改善を明らかにしてきた(Breedveldら、Arthritis Rheum 2006;54:26−37;Genoveseら、J Rheumatol 2005;32:1232−42;Keystoneら、Arthritis Rheum 2004;50:1400−11;Navarro−Sarabiaら、Cochrane Database Syst Rev 2005年7月20日;(3):CD005113;Smolenら、Arthritis Rheum 2006;54:702−10;St.Clairら、Arthritis Rheum 2004;50:3432−43;van der Heijdeら、Arthritis Rheum 2006;54:1063−74)。
【0060】
関節リウマチ(RA)に罹患している対象の手骨損失における抗TNF療法の効果に関して、試験は数回しか行われていない。あるオープンコホート試験により、インフリキシマブを投与されたRA患者間で手のBMD変化が調べられた。このコホートにおいて、キーとなる発見は、腰部及び脊柱の骨損失が阻止されても、手骨損失が停止しなかったということであった[9]。このようにして、TNFα阻害剤インフリキシマブでの治療により、RAに罹患している対象において全身性の骨損失が阻止されたにもかかわらず、インフリキシマブによって手の骨損失を停止させることができなかった。本発明は、ヒトTNFα抗体などのTNFα阻害剤が、RAに罹患している対象において、手骨損失を含む骨損失を治療するために使用され得るという驚くべき発見を提供する。
【0061】
TNFα阻害剤が例えばRAと診断された対象を含む、骨損失を有するリスクがある対象において骨損失を治療するために使用され得るということもまた、本発明の範囲内である。ある実施形態において、骨損失を発症するリスクがある対象は、初期RAに罹患しているか又はRAと診断されて3年未満の対象である。
【0062】
ある実施形態において、骨損失の治療は、関節リウマチに罹患している対象にヒトTNFα抗体又はその抗原結合部分を投与することによって、達成され、この場合、ヒトTNFα抗体又はその抗原結合部分は、隔週投薬計画で投与される。ある実施形態において、ヒトTNFα抗体又はその抗原結合部分は、以下に限定されないが、約40mg、50mg、60mg、70mg、80mg、90mg又は100mgの用量を含む約10−100mgの用量で投与される。ある実施形態において、ヒトTNFα抗体又はその抗原結合部分はアダリムマブ又はゴリムマブである。
【0063】
驚くべきことに、本明細書中で示されるように、関節リウマチ(RA)に罹患している対象において、ヒトTNFα抗体又は抗原結合部分は、臨床的に評価される疾患活動性におけるその影響とは関係なく、骨損失、例えば皮質骨損失、例えば手の皮質骨損失を軽減することが発見された。そのようなものとして、骨損失が臨床パラメータとは独立に治療され得るので、臨床的改善を示さないRA罹患対象で、TNFα阻害剤療法の利益が得られ得る。
【0064】
骨粗鬆症
本発明の方法は、骨粗鬆症に罹患しているか又はそのリスクがある対象において、骨損失、例えば手骨損失を治療するために使用され得る。骨粗鬆症は、低骨量及び骨組織の構造劣化を特徴とする疾患である。骨粗鬆症は、骨の脆弱性を導き得、特に腰部、脊柱及び手首の骨折が起こり易くなるが、あらゆる骨に影響が及ぼされ得る。骨粗鬆症の例には、以下に限定されないが、腰部の、特発性骨粗鬆症、二次性骨粗鬆症及び一過性骨粗鬆症が含まれる。
【0065】
骨減少は骨塩密度が正常より低い状態であり、これもまた本発明の方法に従い治療され得る。骨減少は、骨粗鬆症の前駆状態と考えられることが多い。そのようなものとして、TNFα阻害剤は、骨減少がある患者において手骨損失を含む骨損失を軽減するか又は予防するために使用され得る。
【0066】
骨粗鬆症及び骨減少は、加齢及び生殖状態により起こり得るだけでなく、多くの疾病及び疾患に続発するもの、ならびに多くの薬物療法、例えば、抗けいれん剤(例えばてんかんに対するもの)、コルチコステロイド(例えば関節リウマチ及び喘息に対するもの)及び/又は免疫抑制剤(例えば癌に対するもの)の長期使用による場合もあり得る。例えば、グルココルチコイド誘発性骨粗鬆症は、プレドニゾン(デルタゾン(Deltason)、オラソン(Orason)など)、プレドニゾロン(プレロン(Prelone))、デキサメタゾン(デカドロン(Decadron)、ヘキサドロール(Hexadrol))及びコルチゾン(コルトンアセテート(Cortone Acetate))などのグルココルチコイドの投薬を受けることにより引き起こされる骨粗鬆症の一形態である。これらの薬物療法は、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、炎症性腸疾患及びリウマチ性多発筋痛症を含む多くのリウマチ性疾患の制御を促進するために頻繁に使用される。骨粗鬆症が続発症であり得るその他の疾患には、以下に限定されないが、若年性関節リウマチ、糖尿病、骨形成不全症、甲状腺機能亢進症、副甲状腺機能亢進症、クッシング症候群、吸収不良症候群、神経性無食欲及び/又は腎疾患が含まれる。さらに、長期的な不活発又は不動状態、栄養不良(特にカルシウム、ビタミンD)、無月経(生理の欠如)を導く過度な運動、喫煙及び/又はアルコール中毒など、多くの性状が骨粗鬆症に関与している。
【0067】
とりわけ、関節リウマチ、強直性脊椎炎、全身性エリテマトーデス及び多関節の若年性特発性関節炎などのリウマチ性疾患の患者は、それらの疾患の一部として又はその他のリスク因子によるかの何れかで(とりわけコルチコステロイド療法)、骨粗鬆症のリスクが上昇している。そのようなものとして、ある実施形態において、本発明の方法は、関節リウマチに罹患している患者において骨粗鬆症を治療するために使用され得る。
【0068】
変形性関節症
本発明の方法は、変形性関節症に罹患しているか又はそのリスクがある対象において、骨損失、例えば手骨損失を治療するために使用され得る。腫瘍壊死因子は、変形性関節症の病理に関与している(Vennら(1993)Arthritis Rheum.36:819;Westacottら(1994)J Rheumatol.21:1710)。変形性関節症(OA)は、肥厚性変形性関節症、骨関節症及び変形性関節症とも呼ばれる。OAは、骨格関節の慢性変性疾患であり、全年齢の成人における、特定の関節、一般に膝、腰部、手関節及び脊柱が冒される。OAは、多くの次の徴候、「潰瘍」又はクレーター、骨棘形成、端部における骨肥大の発生及び滑膜における変化及び冒された関節の肥大を伴う関節軟骨の変性及び菲薄化を含むもの、を特徴とする。さらに、変形性関節症では、特に長時間の活動後、疼痛及び硬直が起こる。変形性関節症を治療するために、本発明の、抗体又はその抗原結合断片を使用することができる。変形性関節症の特徴的なX線写真上の特性には、関節腔狭小化、軟骨下硬化、骨増殖症、軟骨下嚢胞形成、関節遊離体(loose osseous body)(又は「関節ネズミ」)が含まれる。
【0069】
変形性関節症を治療するために使用される薬物には、様々な非ステロイド、抗炎症薬(NSAID)が含まれる。さらに、セレブレックス(Celebrex)、バイオックス(Vioxx)及びベクストラ(Bextra)及びエトリコキシブ(Etoricoxib)を含むCOX2阻害剤もまた、OAを治療するために使用される。関節に直接注射され得るステロイドは、炎症及び疼痛を軽減するためにも使用され得る。本発明のある実施形態において、NSAID、COX2阻害剤及び/又はステロイドと組み合わせて、本発明のTNFα抗体が投与される。
【0070】
骨損失を付随するその他の疾患
別の実施形態において、骨損失が付随する疾患、即ち、骨密度が進行性に低下し、骨組織が菲薄化する疾患に罹患しているか又は罹患するリスクがある対象において、骨損失を治療し得る。このような状態には、以下に限定されないが、びらん性関節炎、骨悪性腫瘍、骨軟化症、副甲状腺機能亢進症の骨格変化、慢性腎不全(腎性骨ジストロフィー)、変形性骨炎(骨のパジェット病)及び溶骨性転移が含まれる。ある実施形態において、TNFα関連疾患に罹患している対象を治療するために、本発明の方法が使用される(例えば、米国出願第20040126372号及び米国特許第6,090,382号(このそれぞれの内容は参照により本明細書中に明確に組み込まれる。)に記載の疾患参照)。
【0071】
ある実施形態において、骨損失の治療のためにTNFα阻害剤が投与される対象は、骨損失を有し及び/又はそのリスクがあることに対して選択され得る。例えば、閉経後の対象は、骨損失を発症するリスクがあり得る。別の例において、変形性関節症に罹患していると診断された対象は手骨損失を含む骨損失を有し得、従って、本発明の方法から利益を得ることができる。このようにして、ある実施形態において、本発明は、本発明の方法から、即ち骨損失、例えば手骨損失の治療から利益を得ることができる対象を同定し、治療のために対象にTNFα阻害剤を続いて投与することを含む。ある実施形態において、本発明はまた、手骨損を有するか又は手骨損失を有するリスクがある対象を選択すること及び手骨損失が治療されるように、対象にTNFα阻害剤を投与することを含む、対象において手骨損失を治療するための方法も提供する。あるいは、本発明の方法は、手骨損失を含む骨損失を有するか又はそのリスクがあるとして既に選択された対象において行われ得る。
【0072】
III.TNF阻害剤
本発明の方法及び組成物で使用されるTNFα阻害剤には、TNFα活性を妨害するあらゆる薬剤が含まれる。好ましい実施形態において、TNFα阻害剤は、TNFα活性、特に有害なTNFα活性を中和し得る。
【0073】
ある実施形態において、本発明において使用されるTNFα阻害剤は、キメラ、ヒト化及びヒト抗体を含む、TNFα抗体(本明細書中でTNFα抗体とも呼ばれる。)又はその抗原結合断片である。本発明で使用され得るTNFα抗体の例には、以下に限定されないが、インフリキシマブ(Remicade(R)、Johnson and Johnson;本明細書中で参照により組み込まれる米国特許第5,656,272号に記載)、CDP571(ヒト化モノクローナル抗TNF−αIgG4抗体)、CDP870(ヒト化モノクローナル抗TNF−α抗体断片)、抗TNF dAb(Peptech)、CNTO148(ゴリムマブ;Medarex及びCentocor、本明細書中で参照により組み込まれるWO02/12502及び米国特許第7,250,165号参照)及びアダリムマブ(HUMIRA(R)Abbott Laboratories、ヒト抗TNF mAb、D2E7として米国特許第6,090,382号に記載)が含まれる。本発明で使用され得るさらなるTNF抗体(及びその配列)は、米国特許第6,593,458号;同第6,498,237号;同第6,451,983号;同第7,250,165号;及び同第6,448,380号(このそれぞれは明確に本明細書中で参照により組み込まれる。)に記載されている。
【0074】
本発明の方法及び組成物で使用され得るTNFα阻害剤のその他の例には、エタネルセプト(エンブレル(Enbrel)、WO91/03553及びWO09/406,476に記載)、可溶性TNF受容体タイプI、ペグ付加可溶性TNF受容体タイプI(PEGs TNF−RI)、p55TNF RIgG(レネルセプト(Lenercept))及び組み換えTNF結合タンパク質(r−TBP−I)(Serono)が含まれる。
【0075】
ある実施形態において、「TNFα阻害剤」という用語において、インフリキシマブは除外される。ある実施形態において、「TNFα阻害剤」という用語において、アダリムマブは除外される。別の実施形態において、「TNFα阻害剤」という用語において、アダリムマブ及びインフリキシマブは除外される。
【0076】
ある実施形態において、「TNFα阻害剤」という用語において、エタネルセプトは除外され、場合によっては、アダリムマブ、インフリキシマブ及びアダリムマブ及びインフリキシマブが除外される。
【0077】
ある実施形態において、「TNFα抗体」という用語において、インフリキシマブは除外される。ある実施形態において、「TNFβ抗体」という用語において、アダリムマブは除外される。別の実施形態において、「TNFα抗体」という用語において、アダリムマブ及びインフリキシマブは除外される。
【0078】
ある実施形態において、本発明は、治療するか又は、骨損失の治療のためのTNFα阻害剤の有効性を決定するための使用及び組成物を特徴とし、この場合、TNFα抗体は、高い親和性及び低い解離速度でヒトTNFαに結合し、高い中和能も有する、単離ヒト抗体又はその抗原結合部分である。好ましくは、本発明で使用されるヒト抗体は、組み換え、中和ヒト抗hTNFα抗体である。本発明の最も好ましい組み換え中和抗体は、本明細書中でD2E7と呼ばれ、またHUMIRA(R)又はアダリムマブとも呼ばれる(D2E7 VL領域のアミノ酸配列は配列番号1で示され;D2E7 VH領域のアミノ酸配列は配列番号2で示される。)。D2E7(アダリムマブ/HUMIRA(R))の特性は、Salfeldら、米国特許第6,090,382号、同第6,258,562号及び同第6,509,015号(それぞれ本明細書中に参照により組み込まれる。)に記載されている。本発明の方法はまた、関節リウマチの治療に対する臨床試験が行われたキメラ及びヒト化マウス抗hTNFα抗体を用いて行うこともできる(例えば、Elliott、M.J.ら(1994)Lancet 344:1125−1127;Elliott、M.J.ら(1994)Lancet 344:1105−1110;Rankin、E.C.ら(1995)Br.J.Rheumatol.34:334−342参照)。
【0079】
ある実施形態において、本発明の方法は、骨損失の治療のための、D2E7抗体及び抗体部分、D2E7関連抗体及び抗体部分又はD2E7と同等の特性(低解離速度でのhTNFαに対する高親和性結合及び高中和能など)を有するその他のヒト抗体及び抗体部分の有効性を決定することを含む。ある実施形態において、本発明は、1x10−8M以下のK及び1x10−3−1以下のKoff速度定数(両者とも表面プラズモン共鳴により測定される場合)でヒトTNFαから解離し、1x10−7M以下のIC50で標準的インビトロL929アッセイにおいてヒトTNFα細胞毒性を中和する、単離ヒト抗体又はその抗原結合部分での治療を提供する。より好ましくは、単離ヒト抗体又はその抗原結合部分は、5x10−4−1以下のKoff又はさらにより好ましくは、1x10−4−1以下のKoffでヒトTNFαから解離する。より好ましくは、単離ヒト抗体又はその抗原結合部分は、標準的インビトロL929アッセイにおいて、1x10−8M以下のIC50、さらにより好ましくは1x10−9M以下のIC50及びさらにより好ましくは1x10−10M以下のIC50でヒトTNFα細胞毒性を中和する。好ましい実施形態において、抗体は単離ヒト組み換え抗体又はその抗原結合部分である。
【0080】
抗体重鎖及び軽鎖CDR3ドメインが、抗原に対する抗体の結合特異性/親和性において重要な役割を果たすことは当技術分野で周知である。従って、別の態様において、本発明は、hTNFαとの会合に対して解離速度が低く、D2E7と構造的に同一であるか又は関連する軽鎖及び重鎖CDR3ドメインを有するヒト抗体を投与することにより、骨損失を治療することに関する。D2E7 VL CDR3の位置9には、実質的にKoffに影響を与えずに、Ala又はThrにより占有され得る。従って、D2E7 VL CDR3に対するコンセンサスモチーフは、アミノ酸配列:Q−R−Y−N−R−A−P−Y−(T/A)(配列番号3)を含む。さらに、D2E7 VH CDR3の位置12は、実質的にKoffに影響を与えずに、Tyr又はAsnにより占有され得る。従って、D2E7 VH CDR3に対するコンセンサスモチーフは、アミノ酸配列:V−S−Y−L−S−T−A−S−S−L−D−(Y/N)(配列番号4)を含む。さらに、米国特許第6,090,382号の実施例2で明らかにされるように、D2E7重鎖及び軽鎖のCDR3ドメインは、実質的なKoffへの影響なく、1個のアラニン残基(VL CDR3内の位置1、4、5、7もしくは8又はVH CDR3内の位置2、3、4、5、6、8、9、10もしくは11)での置換が可能である。またさらに、当業者にとって当然のことながら、D2E7 VL及びVH CDR3ドメインがアラニンによる置換を受け入れ易いことを考慮すると、抗体の低解離速度定数を保持しながらの、CDR3ドメイン内のその他のアミノ酸の置換、特に保存アミノ酸での置換も可能であり得る。好ましくは、D2E7 VL及び/又はVH CDR3ドメイン内でなされる保存的アミノ酸置換は、わずか1から5個である。より好ましくは、D2E7 VL及び/又はVH CDR3ドメイン内でなされる保存的アミノ酸置換は、わずか1から3個である。さらに、保存的アミノ酸置換は、hTNFαへの結合に重要なアミノ酸位置でなされてはならない。D2E7 VL CDR3の位置2及び5ならびにD2E7 VH CDR3の位置1及び7は、hTNFαとの相互作用に重要であると思われ、従って、保存的アミノ酸置換は、好ましくは、これらの位置でなされない(しかし、上述のように、D2E7 VL CDR3の位置5でのアラニン置換は許容可能である。)(米国特許第6,090,382号参照)。
【0081】
従って、別の実施形態において、本抗体又はその抗原結合部分は、好ましくは次の特徴を含有する:
a)1x10−3−1以下のKoff速度定数(表面プラズモン共鳴により計算された場合)でヒトTNFαから解離し;
b)配列番号3の、又は、位置1、4、5、7もしくは8での1個のアラニン置換によるか又は位置1、3、4、6、7、8及び/又は9での1から5個の保存アミノ酸置換により配列番号3から修飾された、アミノ酸配列を含む軽鎖CDR3ドメインを有し;
c)配列番号4の、又は、位置2、3、4、5、6、8、9、10もしくは11での1個のアラニン置換によるか又は位置2、3、4、5、6、8、9、10、11及び/又は12での1から5個の保存的アミノ酸置換により配列番号4から修飾された、アミノ酸配列を含む重鎖CDR3ドメインを有する。
【0082】
より好ましくは、本抗体又はその抗原結合部分は、5x10−4−1以下のKoffでヒトTNFαから解離する。さらにより好ましくは、本抗体又はその抗原結合部分は、1x10−4−1以下のKoffでヒトTNFαから解離する。
【0083】
さらに別の実施形態において、本抗体又はその抗原結合部分は、好ましくは、配列番号3の、又は位置1、4、5、7もしくは8での1個のアラニン置換により配列番号3から修飾された、アミノ酸配列を含むCDR3ドメインを有する軽鎖可変領域(LCVR)及び、配列番号4の、又は位置2、3、4、5、6、8、9、10もしくは11での1個のアラニン置換により配列番号4から修飾された、アミノ酸配列を含むCDR3ドメインを有する重鎖可変領域(HCVR)を含有する。好ましくは、LCVRは、配列番号5のアミノ酸配列(即ちD2E7 VL CDR2)を含むCDR2ドメインをさらに有し、HCVRは、配列番号6のアミノ酸配列(即ちD2E7 VH CDR2)を含むCDR2ドメインをさらに有する。さらにより好ましくは、LCVRは、配列番号7のアミノ酸配列(即ちD2E7 VL CDR1)を含むCDR1ドメインをさらに有し、HCVRは、配列番号8のアミノ酸配列(即ちD2E7 VH CDR1)を含むCDR1ドメインを有する。VLに対するフレームワーク領域は、好ましくは、VIヒト生殖細胞系列ファミリー由来、より好ましくはA20ヒト生殖細胞系列Vk遺伝子由来及び最も好ましくは米国特許第6,090,382号の図1A及び1Bで示されるD2E7 VL フレームワーク配列由来である。VHに対するフレームワーク領域は、好ましくは、VH3ヒト生殖細胞系列ファミリー由来、より好ましくはDP−31ヒト生殖細胞系列VH遺伝子由来及び最も好ましくは米国特許第6,090,382号の図2A及び2Bで示されるD2E7 VH フレームワーク配列由来である。
【0084】
従って、別の実施形態において、本抗体又はその抗原結合部分は、好ましくは、配列番号1のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)(即ちD2E7 VL)及び配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)(即ちD2E7 VH)を含有する。ある実施形態において、本抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgE、IgM又はIgD定常領域などの重鎖定常領域を含む。好ましくは、重鎖定常領域は、IgG1重鎖定常領域又はIgG4重鎖定常領域である。さらに、本抗体は、κ軽鎖定常領域又はλ軽鎖定常領域の何れかの軽鎖定常領域を含み得る。好ましくは、本抗体はκ軽鎖定常領域を含む。あるいは、本抗体部分は例えば、Fab断片又は1本鎖Fv断片であり得る。
【0085】
さらにその他の実施形態において、本発明は、D2E7関連VL及びVH CDR3ドメインを含有する単離ヒト抗体又はその抗原結合部分の使用を含む。例えば、配列番号3、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25及び配列番号26からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むCDR3ドメインを有する軽鎖可変領域(LCVR)又は配列番号4、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34及び配列番号35からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むCDR3ドメインを有する重鎖可変領域(HCVR)を有する、抗体又はその抗原結合部分である。
【0086】
本発明の方法及び組成物で使用されるTNFα抗体は、骨損失の改善治療のために修飾され得る。ある実施形態において、TNFα抗体又はその抗原結合断片は、所望の効果をもたらすために化学的に修飾される。例えば、例えば次の参考文献で記載されるような、当技術分野で公知のペグ付加反応の何れかにより、本発明の抗体及び抗体断片のペグ付加が行われ得る:Focus on Growth Factors 3:4−10(1992);EP0 154 316;及びEP0 401 384(これらのそれぞれはその全体において本明細書中に参照により組み込まれる。)。好ましくは、ペグ付加は、反応性ポリエチレングリコール分子(又は類似の反応性水溶性ポリマー)とのアシル化反応又はアルキル化反応を介して行われる。本発明の抗体及び抗体断片のペグ付加のための好ましい水溶性ポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)である。本明細書中で使用される場合、「ポリエチレングリコール」は、モノ(C1−C10)アルコキシ−又はアリールオキシ−ポリエチレングリコールなどのその他のタンパク質を誘導体化するために使用されてきたPEGの形態の何れをも包含するものとする。
【0087】
本発明のPEG付加抗体及び抗体断片を調製するための方法は、一般に、(a)抗体又は抗体断片が1以上のPEG基に連結されるような条件下で、PEGの反応性エステル又はアルデヒド誘導体などのポリエチレングリコールと抗体又は抗体断片を反応させ、(b)反応生成物を得る、段階を含む。公知のパラメーター及び所望の結果に基づき、最適の反応条件又はアシル化反応を選択することは、当業者にとって明白である。
【0088】
PEG付加抗体及び抗体断片は、通常、本明細書中に記載のTNFα抗体及び抗体断片の投与により骨損失を軽減するか又は予防するために使用され得る。一般に、PEG付加抗体及び抗体断片の半減期は、非PEG付加抗体及び抗体断片と比較して長い。PEG付加抗体及び抗体断片は、単独で、その他の医薬組成物と一緒に又は組み合わせて使用され得る。
【0089】
本発明のさらに別の実施形態において、少なくとも1つの定常領域が介在する生物学的エフェクター機能を非修飾抗体と比較して低下させるために抗体の定常領域が修飾されるように、TNFα抗体又はその断片が改変され得る。Fc受容体への結合が抑制されるように本発明の抗体を修飾するために、抗体の免疫グロブリン定常領域セグメントのFc受容体(FcR)相互作用に必要な特定の領域で突然変異させることができる(例えば、Canfield、S.M.及びS.L.Morrison(1991)J.Exp.Med.173:1483−1491;及びLund、J.ら(1991)J.of Immunol.147:2657−2662参照)。抗体のFcR結合能の低下によって、また、オプソニン作用及び食作用及び抗原依存性細胞性細胞毒性などの、FcR相互作用に依存するその他のエフェクター機能も低下し得る。
【0090】
本発明の方法で使用される抗体又は抗体部分は、誘導体化され得るか又は別の機能的分子(例えば別のペプチド又はタンパク質)に連結され得る。従って、本発明の抗体及び抗体部分は、免疫接着分子を含め、本明細書中に記載のヒト抗hTNFα抗体の誘導体化又は修飾形態を含むものとする。例えば、本発明の抗体又は抗体部分は、別の抗体(例えば、二特異性抗体又はダイアボディ)、検出可能な作用物質、細胞毒性物質、医薬品及び/又は別の分子(ストレプトアビジンコア領域又はポリヒスチジンタグなど)との抗体又は抗体部分の結合に介在し得るタンパク質又はペプチドなどの1以上のその他の分子部分に(化学カップリング、遺伝子融合、非共有結合などにより)機能的に連結され得る。
【0091】
誘導体化抗体のあるタイプは、(例えば二特異性抗体を作製するために、同じタイプ又は異なるタイプの)2以上の抗体を架橋することにより作製される。適切な架橋剤には、適切なスペーサーにより分離される2種類の別個に反応基を有するヘテロ二官能性(例えば、m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル)又はホモ二官能性(例えばスベリン酸ジスクシンイミジル)であるものが含まれる。このようなリンカーは、Pierce Chemical Company、Rockford、Illから入手可能である。
【0092】
本発明の抗体又は抗体部分が誘導体化され得る有用な検出可能物質には蛍光化合物が含まれる。代表的な蛍光検出可能物質には、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、5−ジメチルアミン−1−ナフタレンスルホニルクロリド、フィコエリスリンなどが含まれる。抗体はまた、アルカリホスファターゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼなどの検出可能な酵素でも誘導体化され得る。抗体が検出可能な酵素で誘導体化される場合、これは、検出可能な反応生成物を生成させるために酵素が使用するさらなる試薬を添加することにより検出される。例えば、検出可能な作用物質ホースラディッシュペルオキシダーゼが存在する場合、過酸化水素及びジアミノベンジジンの添加により、検出可能である呈色反応生成物が得られる。抗体はまた、ビオチンで誘導体化され得、アビジン又はストレプトアビジン結合の間接的測定を通じて検出され得る。
【0093】
本発明の方法及び組成物で使用される抗体又は抗体部分は、宿主細胞での免疫グロブリン軽鎖及び重鎖遺伝子の組み換え発現により調製され得る。抗体を組み換え発現させるために、軽鎖及び重鎖が宿主細胞において発現され、好ましくは、宿主細胞が培養される培地中に分泌され、その培地から抗体が回収され得るように、抗体の免疫グロブリン軽鎖及び重鎖をコードするDNA断片を担う1以上の組み換え発現ベクターを宿主細胞に遺伝子移入する。抗体重鎖及び軽鎖遺伝子を得て、これらの遺伝子を組み換え発現ベクターに組み込み、ベクターを宿主細胞に導入するために、Sambrook、Fritsch及びManiatis(編)、Molecular Cloning;A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor、N.Y.(1989)、Ausbel、F.M.ら(編)Current Protocols in Molecular Biology、Greene Publishing Associates(1989)及びBossらによる米国特許第4,816,397号に記載のものなど、標準的組み換えDNA法が使用される。
【0094】
アダリムマブ(D2E7)又はアダリムマブ(D2E7)関連抗体を発現させるために、最初に軽鎖及び重鎖可変領域をコードするDNA断片を得る。これらのDNAは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いた生殖細胞系列軽鎖及び重鎖可変配列の増幅及び修飾により得ることができる。ヒト重鎖及び軽鎖可変領域遺伝子に対する生殖細胞系列DNA配列は当技術分野で公知であり(例えば、「Vbase」ヒト生殖細胞系列配列データベース参照;またKabat、E.A.ら(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、U.S.Department of Health and Human Services、NIH Publicaiton No.91−3242;Tomlinson、I.M.ら(1992)「The Repertoire of Human Germline VH−Sequences Reveals about Fifty Groups of VH Segments with Different Hypervariable Loops」J.Mol.Biol.227:776−798;及びCox、J.P.L.ら(1994)「A Directory of Human Germline V78 Segments Reveals a Strong Bias in their Usage」Eur.J.Immunol.24:827−836も参照;これらのそれぞれの内容は、参照により本明細書中に明確に組み込まれる。)。D2E7又はD2E7関連抗体の重鎖可変領域をコードするDNA断片を得るために、ヒト生殖細胞系列VH遺伝子のVH3ファミリーのメンバーを標準的PCRにより増幅する。最も好ましくは、DP−31VH生殖細胞系列配列を増幅する。D2E7又はD2E7関連抗体の軽鎖可変領域をコードするDNA断片を得るために、ヒト生殖細胞系列VL遺伝子のVκIファミリーのメンバーを標準的PCRにより増幅する。最も好ましくは、A20VL生殖細胞系列配列を増幅する。DP−31生殖細胞系列VH及びA20生殖細胞系列VL配列の増幅での使用に適切なPCRプライマーは、標準的方法を用いて、前出の引用参考文献で開示されるヌクレオチド配列に基づき設計され得る。
【0095】
生殖細胞系列VH及びVL断片が得られたら、本明細書中で開示されるD2E7又はD2E7関連アミノ酸配列をコードするようにこれらの配列を突然変異させ得る。生殖細胞系列とは異なるD2E7又はD2E7関連配列のアミノ酸残基を同定するために、生殖細胞系列VH及びVL DNA配列によりコードされるアミノ酸配列を最初にD2E7又はD2E7関連VH及びVLアミノ酸配列と比較する。次いで、どのヌクレオチド変化がなされるべきかを決定するために、遺伝子コードを用いて、突然変異が起こった生殖細胞系列配列がD2E7又はD2E7関連アミノ酸配列をコードするように、生殖細胞系列DNA配列の適切なヌクレオチドを突然変異させる。生殖細胞系列配列の突然変異誘発は、(PCR産物が突然変異を含有するように突然変異が起こったヌクレオチドがPCRプライマーに組みこまれる。)PCR介在突然変異誘発又は部位特異的突然変異誘発などの標準的方法により行われる。
【0096】
さらに、PCR増幅により得られる「生殖細胞系列」配列が真の生殖細胞系列構造とのフレームワーク領域のアミノ酸の違いをコードする場合(即ち、例えば体細胞突然変異の結果としての、真の生殖細胞系列配列と比較した場合の増幅配列の違いなど)、真の生殖細胞系列配列に戻すようにこれらのアミノ酸の違いを変更すること(即ちフレームワーク残基の生殖細胞系列構造への「復帰突然変異」)が望ましい場合があり得ることに注意されたい。
【0097】
(上記のように、生殖細胞系列VH及びVL遺伝子の増幅及び突然変異誘発により)D2E7又はD2E7関連VH及びVLセグメントをコードするDNA断片が得られたら、これらのDNA断片は、例えば、全長抗体鎖遺伝子へ、Fab断片遺伝子へ又はscFv遺伝子へ可変領域遺伝子を変換するために、標準的組み換えDNA技術により、さらに操作され得る。これらの操作において、VL−又はVH−コードDNA断片は、抗体定常領域又はフレキシブルリンカーなどの別のタンパク質をコードする別のDNA断片に操作可能に連結される。「操作可能に連結される」という用語は、この状況で使用される場合、2つのDNA断片によりコードされるアミノ酸配列がインフレームのままであるように2つのDNA断片が連結されることを意味するものとする。
【0098】
VH領域をコードする単離DNAは、重鎖定常領域(CH1、CH2及びCH3)をコードする別のDNA分子にVHコードDNAを操作可能に連結することにより全長重鎖遺伝子に変換され得る。ヒト重鎖定常領域遺伝子の配列は当技術分野で公知であり(例えば、Kabat、E.A.ら(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、U.S.Department of Health and Human Services、NIH Publication No.91−3242参照)、標準的PCR増幅によりこれらの領域を包含するDNA断片を得ることができる。重鎖定常領域は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgE、IgM又はIgD定常領域であり得るが、最も好ましくはIgG1又はIgG4定常領域である。Fab断片重鎖遺伝子に対して、VHコードDNAが重鎖CH1定常領域のみをコードする別のDNA分子に操作可能に連結され得る。
【0099】
VL領域をコードする単離DNAは、軽鎖定常領域CLをコードする別のDNA分子にVLコードDNAを操作可能に連結することにより、全長軽鎖遺伝子(ならびにFab軽鎖遺伝子)に変換され得る。ヒト軽鎖定常領域遺伝子の配列は当技術分野で公知であり(例えば、Kabat、E.A.ら(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、U.S.Department of Health and Human Services、NIH Publication No.91−3242参照)、標準的PCR増幅によって、これらの領域を包含するDNA断片を得ることができる。軽鎖定常領域はκ又はλ定常領域であり得るが、最も好ましくはκ定常領域である。
【0100】
scFv遺伝子を作製するために、フレキシブルリンカーにより連結されるVL及びVH領域とともに、連続的な1本鎖タンパク質としてVH及びVL配列が発現され得るように、フレキシブルリンカーをコードする、例えばアミノ酸配列(Gly4−Ser)3をコードする別の断片に、VH−及びVL−コードDNA断片を操作可能に連結する(例えば、Birdら(1988)Science 242;423−426、Hustonら(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879−5883;McCaffertyら、Nature(1990)348:552−554参照)。
【0101】
本発明で使用される抗体又は抗体部分を発現させるために、転写及び翻訳調節配列に遺伝子が操作可能に連結されるように、上述のように得られる部分的又は全長軽鎖及び重鎖をコードするDNAを発現ベクターに挿入する。この状況において、「操作可能に連結される」という用語は、ベクター内の転写及び翻訳調節配列が抗体遺伝子の転写及び翻訳を制御するそれらの意図する機能を果たすように、抗体遺伝子がベクターに連結されることを意味するものとする。発現ベクター及び発現調節配列は、使用される発現宿主細胞と適合するように選択される。抗体軽鎖遺伝子及び抗体重鎖遺伝子は、個別のベクターに挿入され得るか、又はより一般的には両方の遺伝子が同じ発現ベクターに挿入される。抗体遺伝子は、標準的方法(例えば、抗体遺伝子断片及びベクターにおける相補的制限部位の連結(ライゲーション)又は制限部位がない場合は平滑末端連結(ライゲーション))により発現ベクターに挿入される。D2E7又はD2E7関連軽鎖又は重鎖配列の挿入前に、発現ベクターは既に抗体定常領域配列を有し得る。例えば、D2E7又はD2E7関連VH及びVL配列を全長抗体遺伝子に変換するためのあるアプローチは、ベクター内でCHセグメントにVHセグメントが操作可能に連結され、ベクター内でVLセグメントが操作可能にCLセグメントに操作可能に連結されるように、それぞれ重鎖定常及び軽鎖定常領域を既にコードする発現ベクターにそれらを挿入することである。さらに又はあるいは、組み換え発現ベクターは、宿主細胞からの抗体鎖の分泌を促進するシグナルペプチドをコードし得る。抗体鎖遺伝子のアミノ末端にシグナルペプチドがインフレームで連結されるように、抗体鎖遺伝子をベクターにクローニングすることができる。シグナルペプチドは、免疫グロブリンシグナルペプチド又は異種シグナルペプチドであり得る(即ち非免疫グロブリンタンパク質からのシグナルペプチド)。
【0102】
抗体鎖遺伝子に加え、本発明の組み換え発現ベクターは、宿主細胞での抗体鎖遺伝子の発現を調節する制御配列を有する。「制御配列」という用語は、抗体鎖遺伝子の転写又は翻訳を調節する、プロモーター、エンハンサー及びその他の発現調節エレメント(例えばポリアデニル化シグナル)を含むものとする。このような制御配列は、例えば、Goeddel;Gene Expression Technology:Methods in Enzymology 185、Academic Press、San Diego、Calif.(1990)に記載されている。当業者にとって当然のことながら、制御配列の選択を含む発現ベクターの設計は、形質転換しようとする宿主細胞の選択、所望のタンパク質の発現レベルなどの因子に依存し得る。哺乳動物宿主細胞発現のための好ましい制御配列には、哺乳動物細胞における高レベルタンパク質発現を支配するウイルスエレメント、例えばサイトメガロウイルス(CMV)由来のプロモーター及び/又はエンハンサー(CMVプロモーター/エンハンサーなど)、シミアンウイルス40(SV40)(SV40プロモーター/エンハンサーなど)、アデノウイルス(例えばアデノウイルス主要後期プロモーター(AdMLP))及びポリオーマが含まれる。ウイルス制御エレメント及びその配列のさらなる説明については、例えば、Stinskiによる米国特許第5,168,062号、Bellらによる同第4,510,245号及びSchaffnerらによる同第4,968,615号を参照。
【0103】
抗体鎖遺伝子及び制御配列に加えて、本発明で使用される組み換え発現ベクターは、宿主細胞中のベクターの複製を制御する配列(例えば複製起点)及び選択可能マーカー遺伝子など、さらなる配列を有し得る。選択可能マーカー遺伝子により、ベクターが導入されている宿主細胞の選択が容易になる(例えば、全てAxelらによる、米国特許第4,399,216号、同第4,634,665号及び同第5,179,017号参照)。例えば、一般に、選択可能マーカー遺伝子は、ベクターが導入されている宿主細胞において、G418、ハイグロマイシン又はメトトレキセートなどの薬物に対する耐性を与える。好ましい選択可能マーカー遺伝子には、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)遺伝子(メトトレキセート選択/増幅でのdhfr宿主細胞での使用のため)及びneo遺伝子(G418選択のため)が含まれる。
【0104】
軽鎖及び重鎖の発現に対しては、重鎖及び軽鎖をコードする発現ベクターを標準的技術により、宿主細胞へと遺伝子移入する。「転写」という用語の様々な形態は、原核又は真核宿主細胞への外来DNAの導入のために一般に使用される幅広い技術、例えばエレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、DEAE−デキストラン遺伝子移入など、を包含するものとする。原核又は真核宿主細胞の何れかにおいて本発明の抗体を発現させることが理論的に可能ではあるが、真核細胞及び最も好ましくは哺乳動物宿主細胞での抗体の発現が最も好ましく、これは、このような真核細胞が、及び特に哺乳動物細胞において、正しく折り畳まれた免疫活性のある抗体を組み立て、分泌する可能性が、原核細胞よりも高いからである。抗体遺伝子の原核発現は、活性抗体の高収率産生には有効ではないことが報告されている(Boss、M.A.及びWood、C.R.(1985)Immunology Today 6:12−13)。
【0105】
本発明の組み換え抗体を発現させるための好ましい哺乳動物宿主細胞には、チャイニーズハムスター卵巣(CHO細胞)(Urlaub及びChasin(1980)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216−4220に記載されており、例えば、R.J.Kaufman及びP.A.Sharp(1982)Mol.Biol.159:601−621に記載のような、DHFR選択可能マーカーとともに用いられる、dhfrCHO細胞を含む。)、NS0骨髄腫細胞、COS細胞及びSP2細胞が含まれる。抗体遺伝子をコードする組み換え発現ベクターが哺乳動物宿主細胞に導入される場合、宿主細胞での抗体の発現又は、より好ましくは、宿主細胞を増殖させる培地中への抗体の分泌が可能となるのに十分な時間、宿主細胞を培養することにより、抗体が産生される。標準的タンパク質精製法を用いて、抗体が培地から回収され得る。
【0106】
Fab断片又はscFv分子などのインタクトな抗体の一部分を生成させるために宿主細胞が使用され得る。上記手順における変更が本発明の範囲内であることを理解されたい。例えば、本発明の抗体の軽鎖又は重鎖の何れか(両方ではない。)をコードするDNAを宿主細胞に遺伝子移入することが望ましいものであり得る。hTNFαへの結合に必要ではない軽鎖及び重鎖の何れか又は両方をコードするDNAのいくつか又は全てを除去するために、組み換えDNA技術を使用することもできる。このような短縮DNA分子から発現される分子もまた本発明の抗体により包含される。さらに、標準的化学架橋法により本発明の抗体を第二の抗体に架橋することによって、一方の重鎖及び一方の軽鎖が本発明の抗体であり、他方の重鎖及び軽鎖がhTNFα以外の抗原に特異的である、2機能性抗体を作製し得る。
【0107】
本発明の抗体又はその抗原結合部分の組み換え発現のための好ましい系において、リン酸カルシウムが介在する遺伝子移入によって、抗体重鎖及び抗体軽鎖の両方をコードする組み換え発現ベクターをdhfr−CHO細胞に導入する。組み換え発現ベクター内で、抗体重鎖及び軽鎖遺伝子は、遺伝子の高レベル転写を促進するために、それぞれCMVエンハンサー/AdMLPプロモーター制御エレメントに操作可能に連結される。組み換え発現ベクターはまた、DHFR遺伝子も有し、これにより、メトトレキセート選択/増幅を用いて、ベクターが遺伝子移入されているCHO細胞の選択が可能になる。抗体重鎖及び軽鎖の発現を可能にするために、選択された形質転換宿主細胞を培養し、インタクトな抗体を培地から回収する。組み換え発現ベクターを調製し、宿主細胞に遺伝子移入し、形質転換体について選択し、宿主細胞を培養し、培地から抗体を回収するために、標準的分子生物学技術を使用する。
【0108】
先行する核酸、ベクター及び宿主細胞の観点において、本発明で使用される抗体及び抗体部分の組み換え発現のために使用され得る組成物には、ヒトTNFα抗体アダリムマブ(D2E7)を含む、核酸及びこの核酸を含むベクターが含まれる。D2E7軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列は配列番号36で示される。LCVRのCDR1ドメインはヌクレオチド70−102を包含し、CDR2ドメインはヌクレオチド148−168を包含し、CDR3ドメインはヌクレオチド265−291を包含する。D2E7重鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列は配列番号37で示される。HCVRのCDR1ドメインはヌクレオチド91−105を包含し、CDR2ドメインはヌクレオチド148−198を包含し、CDR3ドメインはヌクレオチド295−330を包含する。当業者にとって当然のことながら、D2E7関連抗体又はその一部(例えばCDR3ドメインなどのCDRドメイン)をコードするヌクレオチド配列は、遺伝子コード及び標準的分子生物学技術を使用した、D2E7 LCVR及びHCVRをコードするヌクレオチド配列由来であり得る。
【0109】
D2E7又はその抗原結合部分又は本明細書中で開示されるD2E7関連抗体に加え、本発明の組み換えヒト抗体は、組み換えコンビナトリアル抗体ライブラリ、好ましくは、ヒトリンパ球由来のmRNAから調製されるヒトVL及びVH cDNAを用いて調製される、scFvファージディスプレイライブラリのスクリーニングにより単離され得る。このようなライブラリを調製しスクリーニングするための方法は当技術分野で公知である。ファージディスプレイライブラリを作製するための市販のキットに加えて(例えば、Pharmacia Recombinant Phage Antibody System、カタログ番号27−9400−01;及びStratagene SurfZAPTMファージディスプレイキット、カタログ番号240612)、抗体ディスプレイライブラリの作製及びスクリーニングでの使用に特に適している方法及び試薬の例は、例えば、Ladnerら、米国特許第5,223,409号;Kangら、PCT公開WO92/18619;Dowerら、PCT公開WO91/17271;Winterら、PCT公開WO92/20791;Marklandら、PCT公開WO92/15679;Breitlingら、PCT公開WO93/01288;McCaffertyら、PCT公開WO92/01047;Garrardら、PCT公開WO92/09690;Fuchsら(1991)、Bio/Technology 9:1370−1372;Hayら(1992)Hum Antibod Hybridomas 3:81−65;Huseら(1989)Science 246:1275−1281;McCaffertyら、Nature(1990)348:552−554;Griffithsら(1993)EMBO J 12:725−734;Hawkinsら(1992)J Mol Biol 226:889−896;Clacksonら(1991)Nature 352:624−628;Gramら(1992)PNAS 89:3576−3580;Garradら(1991)Bio/Technology 9:1373−1377;Hoogenboomら(1991)、Nuc Acid Res 19:4133−4137;及びBarbasら(1991)、PNAS 88:7978−7982で見出すことができる。
【0110】
好ましい実施形態において、hTNFαに対して高親和性及び低解離速度定数を有するヒト抗体を単離するために、hTNFαに対する高親和性及び低解離速度定数を有するマウス抗hTNFα抗体(例えばMAK195、受託番号ECACC87 050801を有するハイブリドーマ)を最初に使用して、Hoogenboomら、PCT公開WO93/06213に記載のエピトープインプリンティング法を用いて、hTNFαに対する同様の結合活性を有するヒト重鎖及び軽鎖配列を選択する。この方法で使用される抗体ライブラリは、好ましくは、McCaffertyら、PCT公開WO92/01047、McCaffertyら、Nature(1990)348:552−554;及びGriffithsら(1993)EMBO J 12:725−734に記載のように調製されスクリーニングされるscFvライブラリである。scFv抗体ライブラリは、好ましくは、抗原として組み換えヒトTNFαを用いてスクリーニングされる。
【0111】
最初のヒトVL及びVHセグメントが選択されたら、好ましいVL/VHペアの組み合わせを選択するために、最初に選択されたVL及びVHセグメントの様々なペアがhTNFα結合についてスクリーニングされる「ミックスアンドマッチ(mix and match)」実験を行う。さらに、hTNFα結合に対してさらに親和性を向上させ及び/又は解離速度定数を低下させるために、天然の免疫反応中の抗体の親和性成熟に関与するインビボ体細胞突然変異プロセスと同様のプロセスにおいて、好ましくはVH及び/又はVLのCDR3領域内で、好ましいVL/VHペアのVL及びVHセグメントを無作為に突然変異させ得る。それぞれVH CDR3又はVLCDR3に相補的なPCRプライマーを用いて、VH及びVL領域を増幅させることによって(得られたPCR産物が、VH及び/又はVL CDR3領域に無作為突然変異が導入されているVH及びVLセグメントをコードするように、ある一定の位置の4種類のヌクレオチド塩基の無作為混合物がプライマーに「加え」られている。)、このインビトロ親和性成熟を行い得る。hTNFαへの結合について、これらの無作為に突然変異させられたVH及びVLセグメントを再スクリーニングすることができ、hTNFα結合に対して高親和性及び低解離速度を示す配列を選択することができる。
【0112】
組み換え免疫グロブリンディスプレイライブラリからの本発明の抗hTNFα抗体のスクリーニング及び単離後、選択された抗体をコードする核酸をディスプレイパッケージから(例えばファージゲノムから)回収することができ、標準的組み換えDNA技術によってその他の発現ベクターにサブクローニングすることができる。必要に応じて、本発明のその他の抗体形態を作製するために、核酸をさらに操作することができる(例えば、さらなる定常領域などのさらなる免疫グロブリンドメインをコードする核酸に連結)。コンビナトリアルライブラリのスクリーニングにより単離される組み換えヒト抗体を発現させるために、上記でさらに詳細に記載されるように、抗体をコードするDNAを組み換え発現ベクターにクローニングし、哺乳動物宿主細胞に導入する。
【0113】
hTNFαに対する高親和性及び低解離速度定数を有するヒト中和抗体を単離する方法は、米国特許第6,090,382号、同第6,258,562号及び同第6,509,015号(これらのそれぞれが本明細書中に参照により組み込まれる。)に記載されている。
【0114】
本発明の方法での使用のための、抗体、抗体部分及びその他のTNFα阻害剤は、対象への投与に適切な医薬組成物に組み込まれ得る。通常、医薬組成物は、抗体、抗体部分又はその他のTNFα阻害剤及び医薬的に許容可能な担体を含む。本明細書中で使用される場合、「医薬的に許容可能な担体」には、生理学的に適合性である、何らかの及び全ての、溶媒、分散媒体、コーティング剤、抗菌及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤などが含まれる。医薬的に許容可能な担体の例には、水、塩水、リン酸緩衝食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなど、ならびにこれらの組合せの1以上が含まれる。多くの場合、等張剤、例えば、糖、ポリアルコール、例えばマンニトール、ソルビトールなど、又は塩化ナトリウムを組成物中に含むことが好ましい。医薬的に許容可能な担体には、抗体、抗体部分又はその他のTNFα阻害剤の貯蔵期間又は有効性を高める、湿潤剤又は乳化剤、保存料又は緩衝剤などの補助物質の少量がさらに含まれ得る。
【0115】
本発明の方法及び組成物での使用のための組成物は、様々な形態であり得る。これらには、例えば、液体、半固体及び固体投与形態、例えば溶液(例えば、注射用及び点滴用溶液)、分散液又は懸濁液、錠剤、丸剤、粉末、リポソーム及び坐薬などが含まれる。好ましい形態は、意図する投与方法及び治療用途に依存する。通常の好ましい組成物は、注射用又は点滴用溶液の形態、例えばその他の抗体又はその他のTNFα阻害剤を用いたヒトの受動免疫法のために使用されるものと類似の組成物など、である。好ましい投与方法は、非経口(例えば、静脈内、皮下、腹腔内、筋肉内)である。好ましい実施形態において、本抗体又はその他のTNFα阻害剤は静脈内点滴又は注射によって投与される。別の好ましい実施形態において、本抗体又はその他のTNFα阻害剤は、筋肉内又は皮下注射によって投与される。
【0116】
治療用組成物は、通常、滅菌され、製造及び保管の条件下で安定でなければならない。本組成物は、高薬物濃度に適切な、溶液、マイクロエマルジョン、分散液、リポソーム又はその他の秩序構造として処方され得る。無菌の注射用溶液は、上述の成分の1又は組み合わせが入った適切な溶媒中で必要量の活性化合物(即ち、抗体、抗体部分又はその他のTNFα阻害剤)を配合することにより調製され得、必要に応じて、その後、ろ過滅菌される。一般に、分散液は、塩基性の分散媒及び上述のものからの必要とされるその他の成分を含有する無菌ビヒクルに活性化合物を配合することにより調製される。無菌の注射用溶液の調製のための無菌粉末の場合、好ましい調製法は、活性成分プラス何らかのさらなる所望の成分の予めろ過滅菌された溶液からそれらの粉末が得られる、真空乾燥及び凍結乾燥である。溶液の正確な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用により、分散の場合、必要な粒子サイズの維持により、及び界面活性剤の使用により、維持され得る。吸収を遅延させる薬剤、例えばモノステアリン酸塩及びゼラチンを組成物中に含むことによって、注射用組成物の持続性吸収がもたらされ得る。
【0117】
ある実施形態において、本発明は、有効なTNFα阻害剤及び医薬的に許容可能な担体を含む医薬組成物を含み、関節リウマチを治療するために有効なTNFα阻害剤が使用され得る。
【0118】
ある実施形態において、本発明の方法での使用のための抗体又は抗体部分は、PCT/IB03/04502及び米国出願第20040033228号(本明細書中に参照により組み込まれる。)に記載のような医薬製剤に配合される。この製剤には、抗体D2E7(アダリムマブ)の濃度50mg/mLが含まれ、1本のプレフィルドシリンジは皮下注射のための抗体40mgを含有する。
【0119】
本発明の、抗体、抗体の一部及びその他のTNFα阻害剤は、当技術分野で公知の様々な方法により投与することができるが、多くの治療用途に対して、好ましい投与経路/方式は、非経口、例えば皮下注射である。別の実施形態において、投与は静脈内注射又は点滴を介する。
【0120】
当業者にとって当然のことながら、投与の経路及び/又は方式は、所望の結果に依存して変化する。ある種の実施形態において、インプラント、経皮パッチ及びマイクロカプセル型送達系を含む制御放出製剤など、化合物が急速に放出されないようにする担体とともに活性化合物を調製し得る。エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル及びポリ乳酸などの生体分解性、生体適合性ポリマーを使用することができる。このような製剤の調製のための多くの方法が特許取得されているか、又は当業者にとって一般に公知である。例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems、Robinson編、Marcel Dekker、Inc.、New York、1978参照。
【0121】
ある実施形態において、本発明において使用されるTNFα抗体及び阻害剤は、皮下投与により対象に送達される。ある実施形態において、対象は、以下に限定されないが、TNFα抗体又はその抗原結合部分を含むTNFα阻害剤を自分自身に投与する。本発明で使用されるTNFα抗体及び阻害剤はまた、被覆粒子を形成させるためにポリマー性担体内に封入されたタンパク質結晶の組み合わせを含むタンパク質結晶製剤の形態でも投与され得る。タンパク質結晶製剤の被覆粒子は、球状の形態を有し得、最大で直径500μmのミクロスフェアであり得るか、又はそれらは、あるその他の形態を有し得、微粒子であり得る。タンパク質結晶の濃度を上昇させることにより、本発明の抗体を皮下送達させることが可能となる。ある実施形態において、本発明のTNFα抗体は、タンパク質送達系を介して送達され、タンパク質結晶製剤又は組成物の1以上がTNFα関連疾患の対象に投与される。組成物及び、全抗体結晶又は抗体断片結晶の安定化製剤を調製する方法はまた、本明細書中で参照により組み込まれる、WO02/072636にも記載されている。
【0122】
ある実施形態において、PCT/IB03/04502及び米国出願第20040033228号(本明細書中で参照により組み込まれる。)に記載の結晶化抗体断片を含む製剤は、本発明の治療法を用いて、関節リウマチを治療するために使用される。
【0123】
ある種の実施形態において、例えば不活性希釈剤又は同化可能な可食担体とともに、本発明の抗体、抗体部分又はその他のTNFα阻害剤を経口投与し得る。この化合物(及び必要に応じてその他の成分)を、硬殻又は軟殻のゼラチンカプセルに封入するか、錠剤になるように圧縮するか又は対象の食餌に直接混合することもできる。治療剤の経口投与に対して、賦形剤とともにこの化合物を配合し、経口摂取錠剤、口腔錠、トローチ、カプセル、エリキシル、懸濁液、シロップ、オブラートなどの形態で使用し得る。本発明の化合物を非経口投与以外によって投与するために、この化合物をその不活性化を阻止する物質で被覆するか、又はこの化合物をこれらとともに同時投与することが必要であり得る。
【0124】
補助的な活性物質を本組成物中に配合することもできる。ある種の実施形態において、関節リウマチ阻害剤又はアンタゴニストを含む1以上のさらなる治療薬とともに、本発明の方法における使用のための抗体又は抗体部分を同時処方(coformulated)及び/又は同時投与する。例えば、本発明の抗hTGFα抗体又はその抗体部分を、TNFα関連疾患に関与するその他の標的に結合する1以上のさらなる抗体(例えばその他のサイトカインに結合するか又は細胞表面分子に結合する抗体)、1以上のサイトカイン、可溶性TNFα受容体(例えば、PCT公開WO94/06476号参照)及び/又はhTNFα産生もしくは活性を阻害する1以上の化学物質(PCT公開WO93/19751に記載のようなシクロヘキサン−イリデン誘導体など)又はこれらの何らかの組み合わせとともに同時処方(coformulated)及び/又は同時投与し得る。さらに、本発明の1以上の抗体は、先行する治療薬の2以上と組み合わせて使用され得る。このような併用療法は、有利に、投与される治療薬のより低い投与量を使用し得、従って、様々な単剤療法に付随する副作用、合併症又は患者による低レベルの反応の可能性を回避する。
【0125】
本発明の医薬組成物は、本発明の抗体又は抗体部分の「治療的有効量」又は「予防的有効量」を含み得る。「治療的有効量」とは、必要な投薬で、必要な期間、所望の治療結果を達成するための、有効な量を指す。抗体、抗体部分又はその他のTNFα阻害剤の治療的有効量は、個体の、疾病状態、年齢、性別及び体重及び、その個体において所望の反応を誘発するための抗体、抗体部分、その他のTNFα阻害剤の能力などの因子に従い変動し得る。治療的有効量はまた、治療上の有益な効果が抗体、抗体部分又はその他のTNFα阻害剤の何らかの毒性又は有害な影響を上回るものでもある。「予防的有効量」とは、必要な投薬で、必要な期間、所望の予防結果を達成するための、有効な量を指す。通常、予防的用量は、対象において、疾患の前又は初期の段階で使用されるので、予防的有効量は治療的有効量より少量となろう。
【0126】
TNFα阻害剤の投与を含む本発明の方法及び使用に関するさらなる説明は、本明細書のパートIIにも記載する。
【0127】
本発明はまた、関節リウマチの治療のために本発明の抗TNF抗体を投与するための包装医薬組成物又はキットにも関する。本発明のある実施形態において、本キットは、抗体などのTNFα阻害剤及び骨損失を治療するためのTNFα阻害剤の投与に対する説明書を含む。この説明書は、どのようにして(例えば皮下)及びいつ(例えば第0週、第2週、第4週に)、治療のために、TNFα阻害剤の様々な用量が対象に投与されるかを記載し得る。
【0128】
本発明の別の態様は、抗体などのTNFα阻害剤及び医薬的に許容可能な担体を含む医薬組成物及び、骨損失を治療するのに有用なさらなる治療薬及び医薬的に許容可能な担体をそれぞれが含む1以上の医薬組成物を含有するキットに関する。あるいは、本キットは、抗TNFα抗体、骨損失を治療するのに有用な1以上の薬物及び医薬的に許容可能な担体を含む1つの医薬組成物を含む。この説明書は、どのようにして(例えば皮下)及びいつ(例えば第0週、第2週、第4週に)、治療のために、TNFα阻害剤及び/又はさらなる治療薬の様々な用量が対象に投与されるかを記載し得る。
【0129】
本キットは、骨損失の治療のための医薬組成物の投与のための説明書を含有し得る。本発明の製品に関するさらなる説明はサブセクションIIに記載する。
【0130】
あるいは、このパッケージ又はキットは、TNFα阻害剤を含有し得、これは、本明細書中に記載の疾患の使用又は治療についてのパッケージ内又は添付の情報を通じての何れかで、使用が推進され得る。包装医薬品又はキットは、さらに、第一の薬剤とともに第二の薬剤を使用するための説明書とともに包装されるか又は同時に推進される(本明細書中に記載のような)第二の薬剤を含み得る。
【0131】
IV.製品
本発明はまた、TNFα阻害剤、例えばTNFα抗体がキット内又は製品内に納められている、包装医薬組成物も提供する。本発明のキット又は製品は、骨損失の、誘発及び/又は軽減、予防及び/又は診断を含む、治療に有用な材料を含有する。本キット又は製品は、容器及び、骨損失の治療のための、TNFα阻害剤、例えばTNFα抗体の使用に関する情報を提供する、容器上もしくは容器に付随するラベル又はパッケージ挿入物又は印刷物を含む。
【0132】
キット又は製品は、骨損失の治療のためにTNFα阻害剤と一緒に投与すべき成分を含む包装製品を指す。本キットは、好ましくは、本キットの成分を保管する箱又は容器を含む。この箱又は容器には、TNFα阻害剤を投与するためのプロトコールを含む、ラベル又はFood and Drug Administration承認ラベルが添付されている。この箱又は容器は、好ましくはプラスチック、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン又はプロピレンの器内に含有される本発明の成分を保管する。この器は、蓋付きチューブ又はボトルであり得る。本キットはまた、本発明のTNFα抗体を投与するための説明書も含み得る。ある実施形態において、本発明のキットは、PCT/IB03/04502及び米国出願第10/222,140号(本明細書中で参照により組み込まれる。)に記載のような、ヒト抗体アダリムマブ(又はD2E7)を含む製剤を含む。
【0133】
「パッケージ挿入物」という用語は、このような治療薬の使用に関する、適応症、取り扱い方法、投与量、投与、禁忌及び/又は警告に関する情報を含有する、治療薬の市販パッケージに習慣的に含まれる説明書を指すために使用される。
【0134】
ある実施形態において、本発明の製品は、(a)そこに含有される組成物が入った第一の容器と(この組成物はTNFα抗体を含む。)と、(b)骨損失を治療するためにTNFα抗体が使用され得ることを示すパッケージ挿入物と、を含む。
【0135】
TNFα阻害剤、例えばTNFα抗体に対する適切な容器には、例えば、ボトル、バイアル、シリンジ、ペンなどが含まれる。この容器は、ガラス又はプラスチックなどの様々な材料から形成され得る。この容器は、単独である組成物を保管するか又は、状態を治療、予防及び/又は診断するために有効な別の組成物と組み合わせられる場合、無菌のアクセスポートを有し得る。
【0136】
ある実施形態において、本製品は、TNFα阻害剤、例えばTNFα抗体及び、TNFα阻害剤を投与しているであろう対象に骨損失の治療のためにTNFα阻害剤を使用することについて指示するラベルを含む。このラベルは、本製品内又は本製品上の何れかの場所にあり得る。ある実施形態において、本製品は、TNFα阻害剤及び、骨損失の治療のためのTNFα阻害剤の使用に関する情報を提供するパッケージ挿入物又はラベルを含む、箱などの容器を含む。別の実施形態において、この情報は、予想される購入者が見ることができる位置にある、製品の外側にあるラベル上に印刷される。
【0137】
ある実施形態において、本発明のパッケージ挿入物は、対象を含む読む者(例えば、治療のためにTNFα阻害剤を投与しているであろう購入者)に、TNFα阻害剤、例えばアダリムマブなどのTNFα抗体が骨損失の治療に必要であることを告げる。
【0138】
本発明のパッケージ挿入物はまた、アダリムマブを投与されているであろう対象に、安全及び有効性のための併用に関する情報も提供し得る。
【0139】
本発明のパッケージ挿入物は、TNFα阻害剤、例えばアダリムマブなどのTNFα抗体の使用に関する警告及び注意を含有し得る。ある実施形態において、本発明は、包装材料;TNFα抗体又はその抗原結合部分;及び、本実施例に記載のものの何れかを含む、TNFα抗体又はその抗原結合部分の研究においてある一定の有害事象が観察されたことを示す、包装材料内に含有されるラベル又はパッケージ挿入物を含む製品を提供する。
【0140】
本発明のラベルは、骨損失に対する臨床試験での、TNFα阻害剤、例えばアダリムマブなどのTNFα抗体の使用に関する情報を含有し得る。ある実施形態において、本発明のラベルは、全て又は一部の何れかとして、実施例として本明細書中に記載の試験を記載する。
【0141】
本発明のある実施形態において、本キットは、抗体などのTNFα阻害剤、さらなる治療薬を含む第二の医薬組成物及び骨損失の治療のための両薬剤の投与に対する説明書を含む。この説明書は、どのようにして(例えば皮下)及びいつ(例えば第0週、第2週及びその後隔週)、治療のために、TNFα抗体及び/又はさらなる治療薬の用量が対象に投与されるかを記載し得る。
【0142】
本発明の別の態様は、TNFα抗体及び医薬的に許容可能な担体を含む医薬組成物と、TNFα関連疾患を治療するために有用な薬物及び医薬的に許容可能な担体をそれぞれが含む1以上のさらなる医薬組成物と、を含有するキットに関する。あるいは、本キットは、抗TNFα抗体と、TNFα関連疾患を治療するために有用な1以上の薬物と、医薬的に許容可能な担体と、を含む1つの医薬組成物を含む。本キットは、TNFα関連疾患の治療のための医薬組成物の投与に対する説明書をさらに含有する。
【0143】
あるいは、本パッケージ又はキットは、TNFα阻害剤を含有し得、これは、パッケージ内で又は添付の情報を通じるかの何れかで、使用又は本明細書中に記載の疾患の治療のために、使用が奨励され得る。包装医薬品又はキットは、(本明細書中に記載のような)第一の薬剤とともに第二の薬剤を使用するための説明書とともに包装されるか又はこの説明書を用いて同時に奨励される(本明細書中に記載のような)第二の薬剤をさらに含み得る。
【0144】
V.さらなる治療薬
本発明の、方法、使用及び組成物はまた、抗体及び、以下に限定されないが手骨損失を含む骨損失の治療のためのその他の治療薬を含む、TNFα阻害剤の組み合わせも含む。本発明の抗体又はその抗原結合部分が、単独で又は、さらなる薬剤、例えば治療薬(この薬剤は、その意図する目的に対して当業者により選択される。)と併用され得ることを理解されたい。例えば、さらなる薬剤は、本発明の抗体により治療される疾病又は状態を治療するのに有用であるものとして当技術分野で認識される治療薬であり得る。さらなる薬剤はまた、治療組成物に対して有益な性質を与える薬剤、例えば組成物の粘度に影響を与える薬剤でもあり得る。
【0145】
本発明内に含まれるべきである組み合わせが、それらの意図する目的に有用な組み合わせであることをさらに理解されたい。下記の薬剤は、例示目的であり、限定されるものではない。本発明の一部である組み合わせは、本発明の抗体及び下記のリストから選択される少なくとも1つのさらなる薬剤であり得る。複数のさらなる薬剤(例えば2又は3のさらなる薬剤)も、その組み合わせが、形成される組成物がその意図する機能を果たし得るようなものであるならば、この組み合わせにまた含まれ得る。
【0146】
ある実施形態において、TNFα阻害剤は、以下に限定されないが、アレンドロネート、アレンドロネート+ビタミンD3、イバンドロネート、リセドロネート、(カルシウムとともに)リセドロネート、ゾレドロン酸、カルシトニン、エストロゲン及びラロキシフェンを含む再吸収阻害薬と組み合わせて投与される。さらに別の実施形態において、TNFα阻害剤は、副甲状腺ホルモン、例えばテリパラチドなどの骨形成剤と組み合わせて投与される。
【0147】
本明細書中に記載のTNFα阻害剤は、疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)又は非ステロイド抗炎症薬(NSAID)又はステロイド又はこれらの何らかの組み合わせなどのさらなる治療薬と組み合わせて使用され得る。DMARDの好ましい例は、ヒドロキシクロロキン、レフルノミド、メトトレキセート、非経口金剤、経口金剤及びスルファサラジンである。NSAIDSとも呼ばれる非ステロイド抗炎症薬の好ましい例にはイブプロフェンなどの薬物が含まれる。その他の好ましい組み合わせは、プレドニゾロンを含むコルチコステロイドであり;ステロイド使用の周知の副作用は、本発明の抗TNFα抗体と組み合わせて患者を治療する場合に必要とされるステロイド用量を漸減させることによって軽減するか又はさらになくすことができる。本発明の抗体又は抗体部分が組み合わせられ得る関節リウマチに対する治療薬の非限定例には、次のもの:サイトカイン抑制性抗炎症薬(CSAID);その他のヒトサイトカイン又は成長因子、例えばTNF、LT、IL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−15、IL−16、IL−18、IL−21、IL−23、インターフェロン、EMAP−II、GM−CSF、FGF及びPDGFに対する抗体又はアンタゴニストが含まれる。本発明の抗体又はその抗原結合部分は、CD2、CD3、CD4、CD8、CD25、CD28、CD30、CD40、CD45、CD69、CD80(B7.1)、CD86(B7.2)、CD90、CTLA又はCD154(gp39又はCD40L)を含むそれらのリガンドなどの細胞表面分子に対する抗体と組み合わせられ得る。
【0148】
治療薬の好ましい組み合わせは、様々な点で、自己免疫及び続く炎症カスケードを妨害し得;好ましい例には、可溶性p55又はp75TNF受容体、その誘導体(p75TNFRIgG(EnbrelTM)又はp55TNFRIgG(レネルセプト(Lenercept))、インフリキシマブ(Remicade(R)、Johnson and Johnson;米国特許第5,656,272号(本明細書中に参照により組み込まれる。)に記載)、CDP571(ヒト化モノクローナル抗TNF−αIgG4抗体)、CDP870(ヒト化モノクローナル抗TNF−α抗体断片)、抗TNF dAb(Peptech)、CNTO148(ゴリムマブ;Medarex及びCentocor、WO02/12502参照)及びアダリムマブ(Humira(R)、Abbott Laboratories、ヒト抗TNFmAb、D2E7として米国特許第6,090,382号に記載)を含む、キメラ、ヒト化もしくはヒトTNF抗体又はその断片などの、TNFα阻害剤が含まれる。本発明で使用され得るさらなるTNF抗体は、米国特許第6,593,458号;同第6,498,237号;同第6,451,983号;及び同第6,448,380号(これらのそれぞれは本明細書中に参照により組み込まれる。)に記載されている。TNFα変換酵素(TACE)阻害剤;IL−1阻害剤(インターロイキン−1−変換酵素阻害剤、IL−IRAなど)を含むその他の組み合わせは、同じ理由で有効であり得る。その他の組み合わせには、IL−6抗体トシリズマブ(Actemra)が含まれる。その他の好ましい組み合わせには、インターロイキン11が含まれる。さらに別の好ましい組み合わせは、TNFα機能と平行して、これに依存して又はこれと協調して作用し得る自己免疫反応のその他の中心的存在であり、特に好ましいものは、IL−18抗体もしくは可溶性IL−18受容体を含むIL−18アンタゴニスト又はIL−18結合タンパク質である。TNFα及びIL−18は、重複しているが個別の機能を有し、両者に対するアンタゴニストの組み合わせが最も有効であり得ることが示されている。さらに別の好ましい組み合わせは、非枯渇抗CD4阻害剤である。さらにその他の好ましい組み合わせには、抗体、可溶性受容体又はアンタゴニスト性リガンドをはじめとする、同時刺激経路CD80(B7.1)又はCD86(B7.2)のアンタゴニストが含まれる。
【0149】
ある実施形態において、本発明の方法及び組成物は、TNFα抗体、例えばアダリムマブ及びDMARD、例えばメトトレキセートの併用を提供する。
【0150】
本発明の方法及び組成物で使用されるTNFα阻害剤はまた、メトトレキセート、6−MP、アザチオプリン スルファサラジン、メサラジン、オルサラジンクロロキニン/ヒドロキシクロロキン、ペンシラミン、金チオリンゴ酸(筋肉内及び経口)、アザチオプリン、コルヒチン(cochicine)、コルチコステロイド(経口、吸入及び局所注射)、β−2アドレナリン受容体アゴニスト(サルブタモール、テルブタリン、サルメテラル(salmeteral))、キサンチン(テオフィリン、アミノフィリン)、クロモグリケート、ネドクロミル、ケトチフェン、イプラトロピウム及びオキシトロピウム、シクロスポリン、FK506、ラパマイシン、ミコフェノール酸モフェチル、レフルノミド、NSAID、例えばイブプロフェン、コルチコステロイド、例えばプレドニゾロン、ホスホジエステラーゼ阻害剤、アデンソシン(adensosine)アゴニスト、抗血栓薬、補体阻害剤、アドレナリン作動薬、TNFα又はIL−1などの炎症性サイトカインによるシグナル伝達を妨害する薬剤(例えばIRAK、NIK、IKK、p38又はMAPキナーゼ阻害剤)、IL−1β変換酵素阻害剤、TNFα変換酵素(TACE)阻害剤、キナーゼ阻害剤などのT細胞シグナル伝達阻害剤、メタロプロテイナーゼ阻害剤、スルファサラジン、アザチオプリン、6−メルカプトプリン、アンジオテンシン変換酵素阻害剤、可溶性サイトカイン受容体及びそれらの誘導体(例えば可溶性p55又はp75TNF受容体及び誘導体p75TNFRIgG(エンブレル及びp55TNFRIgG(レネルセプト))、sIL−1RI、sIL−1RII、sIL−6R)、抗炎症性サイトカイン(例えばIL−4、IL−10、IL−11、IL−13及びTGFβ)、トシリズマブ(Actemra)、セレコキシブ、葉酸、硫酸ヒドロキシクロロキン、ロフェコキシブ、エタネルセプト、インフリキシマブ、ナプロキセン、バルデコキシブ、スルファサラジン、メチルプレドニゾロン、メロキシカム、酢酸メチルプレドニゾロン、金チオリンゴ酸ナトリウム、アスピリン、トリアムシノロンアセトニド、プロポキシフェンナプシラート/apap、葉酸、ナブメトン、ジクロフェナク、ピロキシカム、エトドラク、ジクロフェナクナトリウム、オキサプロジン、オキシコドンhcl、酒石酸水素ヒドロコドン/apap、ジクロフェナクナトリウム/ミソプロストール、フェンタニル、アナキンラ、ヒト組み換え、トラマドールhcl、サルサラート、スリンダク、シアノコバラミン/fa/ピリドキシン、アセトアミノフェン、アレンドロン酸ナトリウム、プレドニゾロン、モルヒネ硫酸塩、塩酸リドカイン、インドメタシン、硫酸グルコサミン/コンドロイチン、アミトリプチリンhcl、スルファジアジン、オキシコドンhcl/アセトアミノフェン、オロパタジンhcl、ミソプロストール、ナプロキセンナトリウム、オメプラゾール、シクロホスファミド、リツキシマブ、IL−1TRAP、MRA、CTLA4−IG、IL−18BP、抗IL−18、抗IL−15、BIRB−796、SCIO−469、VX−702、AMG−548、VX−740、ロフルミラスト、IC−485、CDC−801及びメソプラムなどの薬剤とも組み合わせられ得る。好ましい組み合わせには、メトトレキセート又はレフルノミド及び、中度又は重度の関節リウマチの場合は、シクロスポリンが含まれる。
【0151】
有害なTNFα活性が付随する疾患及び骨損失を治療するために、TNFα阻害剤と組み合わせて、非限定のさらなる薬剤も使用され得る。例えば、TNFα抗体又はその抗原結合部分及び、以下に限定されないが、次のもの:非ステロイド性抗炎症薬(NSAID);サイトカイン抑制性抗炎症薬(CSAID);CDP−571/BAY−10−3356(ヒト化抗TNFα抗体;Celltech/Bayer);cA2/インフリキシマブ(キメラ抗TNFα抗体;Centocor);75kdTNFR−IgG/エタネルセプト(75kD TNF受容体−IgG融合タンパク質;Immunex;例えば、Arthritis & Rheumatism(1994)Vol.37、S295;J.Invest.Med.(1996)Vol.44、235Aを参照);55kd TNF−IgG(55kD TNF受容体−IgG融合タンパク質;Hoffmann−LaRoche);IDEC−CE9.1/SB210396(非枯渇の霊長類化(primatized)抗CD4抗体;IDEC/SmithKline;例えば、Arthritis & Rheumatism(1995)Vol.38、S185参照);DAB486−IL−2及び/又はDAB389−IL−2(IL−2融合タンパク質;Seragen;例えば、Arthritis & Rheumatism(1993)Vol.36、1223参照);抗Tac(ヒト化抗IL−2Rα;Protein Design Labs/Roche);IL−4(抗炎症性サイトカイン;DNAX/Schering);IL−10(SCH52000;組み換えIL−10、抗炎症性サイトカイン;DNAX/Schering);IL−4;IL−10及び/又はIL−4アゴニスト(例えばアゴニスト抗体);IL−1RA(IL−1受容体アンタゴニスト;Synergen/Amgen);アナキンラ(Kineret(R)/Amgen);TNF−bp/s−TNF(可溶性TNF結合タンパク質;例えば、Arthritis & Rheumatism(1996)Vol.39、No.9(補遺)、S284;Amer.J.Physiol.−Heart and Circulatory Physiology(1995)Vol.268、pp.37−42参照);R973401(ホスホジエステラーゼIV型阻害剤;例えば、Arthritis & Rheumatism(1996)Vol.39、No.9(補遺)、S282参照);MK−966(COX−2阻害剤;例えば、Arthritis & Rheumatism(1996)Vol.39、No.9(補遺)、S81参照);イロプロスト(例えば、Arthritis & Rheumatism(1996)Vol.39、No.9(補遺)、S82参照);メトトレキセート;サリドマイド(例えば、Arthritis & Rheumatism(1996)Vol.39、No.9(補遺)、S282参照)及びサリドマイド関連薬(例えばセルジェン(Celgen));レフルノミド(抗炎症及びサイトカイン阻害剤;例えば、Arthritis & Rheumatism(1996)Vol.39、No.9(補遺)、S131;Inflammation Research(1996)Vol.45、pp.103−107参照);トラネキサム酸(プラスミノーゲン活性化の阻害剤;例えば、Arthritis & Rheumatism(1996)Vol.39、No.9(補遺)、S284参照);T−614(サイトカイン阻害剤;例えば、Arthritis & Rheumatism(1996)Vol.39、No.9(補遺)、S282参照);プロスタグランジンE1(例えば、Arthritis & Rheumatism(1996)Vol.39、No.9(補遺)、S282参照);テニダップ(非ステロイド抗炎症薬;例えば、Arthritis & Rheumatism(1996)Vol.39、No.9(補遺)、S280参照);ナプロキセン(非ステロイド抗炎症薬;例えば、Neuro Report(1996)Vol.7、pp.1209−1213参照);メロキシカム(非ステロイド抗炎症薬);イブプロフェン(非ステロイド抗炎症薬);ピロキシカム(非ステロイド抗炎症薬);ジクロフェナク(非ステロイド抗炎症薬);インドメタシン(非ステロイド抗炎症薬);スルファサラジン(例えば、Arthritis & Rheumatism(1996)Vol.39、No.9(補遺)、S281参照);アザチオプリン(例えば、Arthritis & Rheumatism(1996)Vol.39、No.9(補遺)、S281参照);ICE阻害剤(酵素インターロイキン1β変換酵素の阻害剤);zap−70及び/又はlck阻害剤(チロシンキナーゼzap−70又はlckの阻害剤);VEGF阻害剤及び/又はVEGF−R阻害剤(血管内皮細胞増殖因子又は血管内皮細胞増殖因子受容体の阻害剤;血管新生の阻害剤);コルチコステロイド抗炎症薬(例えばSB203580);TNF−コンベルターゼ阻害剤;抗IL−12抗体;抗IL−18抗体;インターロイキン−11(例えば、Arthritis & Rheumatism(1996)Vol.39、No.9(補遺)、S296参照);インターロイキン−13(例えば、Arthritis & Rheumatism(1996)Vol.39、No.9(補遺)、S308参照);インターロイキン−17阻害剤(例えば、Arthritis & Rheumatism(1996)Vol.39、No.9(補遺)、S120参照);金;ペニシラミン;クロロキン;クロラムブシル;ヒドロキシクロロキン;シクロスポリン;シクロホスファミド;全身リンパ節照射;抗胸腺細胞グロブリン;抗CD4抗体;CD5−毒素;経口投与ペプチド及びコラーゲン;ロベンザリト二ナトリウム;サイトカイン制御剤(CRA)HP228及びHP466(Houghten Pharmaceuticals、Inc.);ICAM−1アンチセンスホスホロチオアートオリゴデオキシヌクレオチド(ISIS 2302;Isis Pharmaceuticals、Inc.);可溶性補体受容体1(TP10;T Cell Sciences、Inc.);プレドニゾン;オルゴテイン;グリコサミノグリカンポリサルフェート;ミノサイクリン;抗IL2R抗体;海洋生物及び植物脂質(魚及び植物種子脂肪酸;例えば、DeLucaら(1995)Rheum.Dis.Clin.North Am.、21:759−777参照);オーラノフィン;フェニルブタゾン;メクロフェナミン酸;フルフェナミン酸;静脈内免疫グロブリン;ジロートン;アザリビン;ミコフェノール酸(RS−61443);タクロリムス(FK−506);シロリムス(ラパマイシン);アミプリロース(テラフェクチン);クラドリビン(2−クロロデオキシアデノシン);メトトレキセート;抗ウイルス剤;及び免疫調節剤を含む、関節リウマチを治療するための薬剤の併用は、本発明の範囲内に含まれる。
【0152】
ある実施形態において、TNFα抗体又はその抗原結合部分は、関節リウマチの治療のための以下の薬剤:KDR(ABT−123)の小分子阻害剤;Tie−2の小分子阻害剤;メトトレキセート;プレドニゾン;セレコキシブ;葉酸;硫酸ヒドロキシクロロキン;ロフェコキシブ;エタネルセプト;インフリキシマブ;レフルノミド;ナプロキセン;バレデコキシブ;スルファサラジン;メチルプレドニゾロン;イブプロフェン;メロキシカム;酢酸メチルプレドニゾロン;金チオリンゴ酸ナトリウム;アスピリン;アザチオプリン;トリアムシノロンアセトニド;プロポキシフェンナプシラート/apap;葉酸;ナブメトン;ジクロフェナク;ピロキシカム;エトドラク;ジクロフェナクナトリウム;オキサプロジン;オキシコドンhcl;酒石酸水素ヒドロコドン/apap;ジクロフェナクナトリウム/ミソプロストール;フェンタニル;アナキンラ、ヒト組み換え体;トラマドールhcl;サルサラート;スリンダク;シアノコバラミン/fa/ピリドキシン;アセトアミノフェン;アレンドロネートナトリウム;プレドニゾロン;モルヒネ硫酸塩;塩酸リドカイン;インドメタシン;硫酸グルコサミン/コンドロイチン;シクロスポリン;アミトリプチリンhcl;スルファジアジン;オキシコドンhcl/アセトアミノフェン;オロパタジンhcl;ミソプロストール;ナプロキセンナトリウム;オメプラゾール;ミコフェノール酸モフェチル;シクロホスファミド;リツキシマブ;IL−1 TRAP;MRA;CTLA4−IG;IL−18BP;ABT−874;ABT−325(抗IL18);抗IL15;BIRB−796;SCIO−469;VX−702;AMG−548;VX−740;ロフルミラスト;IC−485;CDC−801;及びメソプラムのうちの1つと組み合わせて投与される。別の実施形態において、TNF抗体又はその抗原結合部分は、関節リウマチの治療のための上記薬剤の1つと組み合わせて、TNF関連疾患の治療のために投与される。
【0153】
本発明の抗体又はその抗原結合部分はまた、アレムツズマブ、ドロナビノール、ユニメド、ダクリズマブ、ミトキサントロン、キサリプロデン塩酸塩、ファムプリジン、グラチラマー酢酸塩、ナタリズマブ、シンナビドール、a−イムノカインNNSO3、ABR−215062、AnergiX.MS、ケモカイン受容体アンタゴニスト、BBR−2778、カラグアリン、CPI−1189、LEM(リポソーム封入ミトキサントロン)、THC.CBD(カンナビノイドアゴニスト)MBP−8298、メソプラム(PDE4阻害剤)、MNA−715、抗IL−6受容体抗体、ニューロバックス、パーフェニドン・アロトラップ1258(RDP−1258)、sTNF−R1、タランパネル、テリフルノミド、TGF−β2、チプリモチド、VLA−4アンタゴニスト(例えば、TR−14035、VLA4 Ultrahaler、Antegran−ELAN/Biogen)、インターフェロンγアンタゴニスト、IL−4アゴニストなどの薬剤とも組み合わせられ得る。
【0154】
本発明は、次の実施例によりさらに例示されるが、これは何ら限定するものとして解釈すべきではない。
【実施例】
【0155】
抗TNFα療法により骨損失が軽減される。
【0156】
A.アダリムマブ療法により、初期関節リウマチ患者において手骨損失が軽減される。
【0157】
全体的な要約
本研究(Study J)のある目的は、3種類の治療選択肢:アダリムマブ+メトトレキセート(MTX);アダリムマブ単剤療法;及びMTX単剤療法において、初期関節リウマチ(RA)患者での皮質手骨損失を比較することであった。第二の目的は、手骨損失の予測因子を探索することであった。
【0158】
一般に、本研究には、MTX未投与の、3年未満の活動性RAである768名の患者が含まれた。べースラインにおいて及び治療の26、52及び104週後、臨床データ回収及びX線写真による手の検査を行った。デジタルX線画像測定法(Digital X−ray radiogrammetry、DXR)により、主に中手骨皮質指数(MCI)として、関節損傷評価に対して使用されるものと同じX線写真において、手骨損失を評価した。
【0159】
この結果から、DXR−MCIの中央値%損失が、52週(−2.87対−2.16、p=0.009)及び104週(−4.62対−3.03、p<0.001)で、MTX群対併用群で有意に大きかったことが分かった。MTX群の中央値損失は、52週(−2.87対−2.45、p=0.19)及び104週(−4.62対−4.03、p=0.10)でアダリムマブ群における損失よりも数値的に大きかった。さらに、老齢者においては、高ベースラインCRP及びアダリムマブ未使用は、直線回帰モデルにおいて、手骨損失の独立した予測因子であった。
【0160】
結論として、アダリムマブは初期RAの手骨損失を防いだ。3種類の治療選択肢における骨損失の序列は、X線写真で見られる進行の序列と同様であった。
【0161】
このデータの分析により、RA患者での炎症性骨損傷の検出のための、手骨の定量的測定が裏付けられる。手骨損失及びX線写真で見られる骨損傷が同様の病理学的機構を通じて起こることも明らかとなる。
【0162】
目的
この分析の主要な目的は、Study Jの3種類の治療選択肢:アダリムマブ+メトトレキセート(MTX)対アダリムマブ単剤療法対MTX単剤療法における、皮質手骨損失を比較することであった(全て初期の活動性RAの患者に対する。)。第二に、Study J RA患者での手骨損失の、潜在的な予測因子を評価した。
【0163】
方法
試験試料及び計画
この2年間の多施設、二重盲検、無作為化比較試験(Study J)からの、X線写真によるデータ及び臨床データは既に詳述された(Breedveldら(2006)Arthritis Rheum 54:26−37参照)。MTX、シクロホスファミド、サイクロスポリン、アザチオプリンでの治療を以前に受けたことがないか又は3以上のその他のDMARDでの治療を受けたことがない、初期(<3年)の急速進行性の(aggressive)RAである799名の成人患者(平均びらんスコアおよそ12Sharp単位、推定年間TSS進行およそ27Sharp単位)に対して、アダリムマブ+MTXの有効性及び安全性をアダリムマブ単剤療法及びMTX単剤療法と比較した(Breedveldら(2006)前出)。併用群には、隔週でアダリムマブ40mgを皮下(sc)投与し、MTXを毎週経口投与し(20mg/週に迅速に増加)、単剤療法群には、アダリムマブ40mgをscで隔週投与し、プラセボを投与するか、又は毎週経口でMTX+プラセボを投与した。手足からのX線写真を改訂シャープスコア(範囲0−398)に従いスコア化した(Breedveldら(2006)、前出)。
【0164】
次の試験は、フォローアップの26、52及び104週間にわたる手骨損失データを与える。盲検無作為化比較試験の最初の試験計画を維持するために、全ての分析が完了するまで、データを分析する研究者に対して治療コードは秘匿した。
【0165】
DXR−手骨測定
X線写真での関節損傷の評価に対して使用したものと同じデジタル化した手のX線で手骨ミネラル密度(BMD)及び中手骨皮質指数(MCI)を測定するために、デジタルX線画像測定法(Digital X−ray radiogrammetry、DXR)(Sectra、Linkoping、Sweden)を使用した。DXRは、旧来のX線画像測定技術のコンピュータ版であり[13]、方法及びその正確性が実質的に改良されている。DXRは詳細に記載されている[14、15、16]。手のX線写真において、コンピュータは、第二、第三及び第四中手骨の最狭小部の周囲の関心領域(ROI)を自動的に認識し、1cmあたり118回、皮質厚、骨幅及び多孔性を測定する。DXR−BMDは、cX VPAcomb X(1−p)と定義され、式中、cは、(DXR−BMDが平均で、Hologic QDR−2000装置の中間−遠位前腕領域に相当するという結果により決定される)定数であり、VPAは面積あたりの体積であり、pは多孔性である。DXR−MCIは、組み合わせた皮質厚を皮質外径で割ったものとして定義され、骨サイズ、骨の長さ及び画像入力設定とは独立した、相対的な骨尺度である[16.17]。DXR−BMD及びDXR−MCIは両者とも、かなりの程度の精度をもたらす[17]。
【0166】
DXR−BMDは、この試験において主要転帰尺度であるものとする。しかし、多くのX線写真は、画像解像度が分からないので、BMDについて分析され得ない。一般に、DXR−BMDに対する等式は、面積あたりの体積に基づき、解像度が未知である場合はデジタル化X線写真での距離が測定され得ないので、規定の又は公知の解像度を必要とする。従って、画像解像度と独立した相対的尺度であるDXR−MCIを主要転帰尺度として使用した。DXR−BMDとDXR−MCIとの間の相関関係は、横断面[18]及び長手方向の両方で、実質的であることが示された(r>0.90)[19]。
【0167】
比較のために、DXR−BMDに対する結果も提供する。254dpi(スコア前のX線写真に対するスキャン解像度)を仮定することにより、未知の解像度の全画像を分析した。しかし、X線写真のうちいくつかは、明らかに254dpi以外の解像度であり、これはおそらく、スキャン前にそれらが実際のサイズとは異なるサイズで印刷されたからであろう。DXR−BMDにより、ベースラインからの全ての利用可能な画像を分析し、平均中手骨幅を計算し、26、52及び104週においてもこれを行った。解像度が制御されたその他の試験からの分析に基づき[19]、2%より大きいベースライン幅からの偏差は、不適当な値を示すと考えた。カットオフとしてこの2%値を使用して、X線写真の23%をさらなるDXR−BMD分析から除外した。図1のフローチャートは、DXR−MCI及びDXR−BMD分析に含まれた患者を示す。
【0168】
利き手対非利き手に関するバイアスを回避するために及びより正確を期すために、両手からの平均値尺度を使用した[10]。片手からのX線写真が分析できないか又は欠損している場合、様々な時点での全分析に対して利用可能な手からのX線写真を使用した。
【0169】
統計分析
データが正規分布ではなかったので、ノンパラメトリック分析を行った。インピュテーションは行わなかった。連続型変数に対してクラスカル−ウォリス法により、及びカテゴリー変数に対してカイ二乗法により、治療群間でベースライン値を比較した。最初のStudy Jで使用されるものに沿い、同様である方法に従い、手のBMDの変化の比較を行った[6]。マン・ホイットニーU検定を用いて、階層的順序で2つの群を比較した(即ち、併用群対MTXの両側比較を行い、続いて単剤療法選択肢間で両側比較を行い、最後に、アダリムマブ単剤療法と併用群との間の両側比較を行った。)。各ペアワイズ比較は、前の比較が統計学的に有意であった場合のみ行った。時間に伴う骨損失は、負の値として表した。
【0170】
104週で、手のBMD損失の予測因子を探索するために、線形回帰モデルを作成した。104週でのDXR−MCIの変化を次のベースライン変数:罹病期間;DAS28により測定される疾患活動性;[20]CRP;Health Assesment Questionnaire(HAQ DI)スコアの障害指数;[21]DMARD及びコルチゾンの投与の既往;X線写真上での関節損傷;無作為化治療選択肢;及び絶対的DXR−MCI値、と相互に関連付ける目的で、スピアマンの相関分析を行った。0.15未満のp値である変数を多変数モデルに含め、これはまた、年齢及び性別に対して調整を行った。ダミー変数として治療選択肢を符号化した(MTXは0、アダリムマブは1及び併用群は2)。
【0171】
試験の監視及び倫理
報告されるように、Study Jは、中央治験審査委員会及び各参加施設での独立した倫理委員会により承認された[6]。
【0172】
結果
ベースラインDXR−MCI値は、Study Jに登録された799名の患者のうち768名に対して利用可能であり、本治験を完了した539名の患者のうち2名について、DXR−MCI値が欠損していた(図1)。利用可能なDXR−BMDデータに対する対応数(「方法」に記載の画像解像度に対するカットオフ値に基づく。)はそれぞれ765及び369であった(図1)。被験者の分布(demographics)及びベースラインの臨床的特徴は、3つの治療群間で同等であった(表1)
【0173】
【表1】

【0174】
アダリムマブ単剤療法群に対する僅かに大きい平均HAQスコアが、唯一の治療選択肢間の統計学的有意差であった。登録前に、患者の35%でコルチコステロイドが使用され(プレドニゾロンの平均1日投与量は6.6mgであった。)、32%がMTX以外の旧来のDMARDによる治療の既往があった。ベースラインX線写真上の損傷スコアは、治療群全体で同等であり、中央値(平均)シャープスコアは14.0(19.3)であった(表1)。
【0175】
全患者に対する中央値%DXR−MCI変化は、26、52及び104週後で、それぞれ−1.29、−2.45及び−3.72であった。DXR−BMDに対する換算値は、−1.07%、−1.72%及び−2.63%であった。DXR−MCI及びDXR−BMDにおけるベースラインからのこれらの変化は、フォローアップ中の全時点で全サブグループに対して有意であった(全てに対してp<0.001)。コルチコステロイド又はDMARDの使用は手骨損失に影響がなかった。(データは示さず。)。
【0176】
DXR−MCIの変化とDXR−BMDの変化との間の相関係数(r)は、26、52及び104週で、それぞれ0.88、0.93及び0.94であった(全てに対してp<0.001)。
【0177】
治療選択肢間のDXR−MCIの変化
26、52及び104週で、中央値%DXR−MCIの変化は、アダリムマブ+MTX併用群の場合は−1.15、−2.16及び−3.03であり;アダリムマブ単剤療法群の場合は−1.33、−2.45及び−4.03であり;MTX単剤療法群の場合は−1.42、−2.87及び−4.62であった(図2)。
【0178】
DXR−MCI減少率は、52週(p=0.009)及び104週(p<0.001)で、併用群と比較して、MTX群の場合は有意に大きく、26週(p=0.19)でも同様の傾向が観察された。アダリムマブ群における骨損失もまた、104週(p=0.10)でMTX群より数値的に低かった。
【0179】
治療選択肢間のDXR−BMDの変化
併用群における中央値DXR−BMD%の変化は、26週で−1.06、52週で−1.63及び104週間で−2.49であった。アダリムマブ群において、26、52及び104週でのそれぞれの変化は、−0.96、−1.97及び−2.40であり、MTX群について、その変化は、−1.20、−1.86及び−3.58であった。104週(p=0.049)で、MTX群及び併用群におけるDXR−BMDの変化の間で有意差が観察され、52週(p=0.10)で有意差がある傾向が観察された。さらに、MTX群とアダリムマブ群との間に差が出る傾向が104週の値に対して観察された(p=0.16)。
【0180】
DXR−MCI及びX線写真上の損傷
26、52及び104週での改訂シャープスコアの中央値(平均)のX線写真上の変化は、それぞれ、併用群の場合は0(0.5)、0(0.9)及び0(1.0)であり;アダリムマブ単剤療法群の場合は0.5(2.1)、0.5(3.3)及び1.0(4.8)であった。MTX単剤療法群の場合、個々の変化は、1.0(3.4)、2.0(5.1)及び2.0(6.4)であった(図2)。元のStudy Jの知見に対するこの分析の結果における矛盾は、治験参加者数が僅かに異なり、ここでインピュテーションが行われなかった結果であると思われる(図1)。26、52及び104週でのDXR−MCIの変化とシャープスコアの変化との間の相関(r)は、r=−0.12(p=0.001);r=−0.23(p<0.001);及びr=−0.32(p<0.001)であった。DXR−BMDの変化とシャープスコアの変化との間の相関関係に対する比較r−値は、それぞれ−0.15、−0.23及び−0.33であった(全てに対してp<0.001)。
【0181】
多変数モデル
最終的な多変数モデルに含まれる変数は、年齢及び性別とともに、罹病期間、DAS28スコア、CRP、DXR−MCI、HAQ、X線写真上の損傷及び治療群(ダミー変数)のベースライン値であった。
【0182】
加齢、CRPがより大きいこと及びアダリムマブ未使用であることは、皮質手骨損失に対する独立した予測因子であることがわかり、一方で、DAS28スコアがより大きいこと(即ち、より進行した疾患重症度)(p=0.07)及び罹病期間がより短いこと(p=0.11)は、モデル内で統計学的有意性がある傾向があった(表2)。
【0183】
【表2】

【0184】
この分析のキーとなる発見は、MTXと併用したアダリムマブでの抗TNF療法によって、RAのある一定のタイプの患者、即ち初期の急速進行性の(aggressive)RA患者で、アダリムマブ又はMTXの何れかの単剤療法よりも良好に骨が保護されたということであった。3種類の治療選択肢にわたる手骨損失の順序は、Study Jにおいて全体的なX線写真での損傷に対して観察されたものと同じであった(図2)。さらに、多変数モデルからの結果により、活動性RAにおける骨損傷の促進要因としての炎症の重要性(CRPにより評価)及びこのプロセスにおけるTNFの関与の重要性が強調された。
【0185】
メカニズムに関して、本分析は、びらん及び骨粗鬆症の両方が同じ病態生理学的メカニズム(これは、破骨細胞の活性化を含む。)の結果である、という仮説を立証する。この仮説は、動物[2、22]及びヒト試験[3]の両方からの知見に基づく。骨分解に対する主要な細胞である破骨細胞は、滑膜炎により駆動され、TNF、マクロファージ−コロニー刺激因子(M−CSF)及び核因子−κリガンド(RANKL)の受容体活性化物質により刺激される。これらのサイトカインは、骨粗鬆症(局所的及び全身的)及びびらんを引き起こす破骨細胞を活性化する[23]。
【0186】
この試験からの知見は、抗TNF療法を通じた炎症の抑制により手骨損失が軽減するという事実を立証する。さらに、行われた多変数モデルから、CRPは、DXR−MCIの損失に対する強力な予測因子であることが証明された。
【0187】
何らかの理論に縛られることを望むものではないが、併用群(アダリムマブ及びMTX)における骨損失は、少なくとも部分的には、Study Jに参加している初期RA患者における実質的な疾患活動性及び骨損傷に関するそれらの予後不良(リウマチ因子−陽性及びびらん性疾患)に起因し得る[24]。
【0188】
活動性RAにおけるTNF−アンタゴニスト療法の好ましい効果が、手骨量に対するものよりもX線写真上での関節損傷に対して顕著であると考えられる一方で(図2)、TNF−アンタゴニスト療法は、それでも、びらんを発生させるリスク及び炎症に関連する手骨損失率を低下させることが分かった。理論に縛られることを望むものではないが、この矛盾に対する1つの説明は、従来のX線写真が、骨損傷を検出できるほど十分に高感度ではないことであり得る。超音波(US)及び磁気共鳴映像法(MRI)の両者とも、びらんの検出において、X線写真よりも感度が高いことが明らかになっている[25]。さらに、MRIは、X線写真においてそれらが見えるようになる何年も前にびらんを検出することができる[26]。さらに、MRI滑膜炎は、臨床上の緩和及びX線写真上の緩和(「真の緩和」)の両方の状態のRA患者でさえ検出されてきた。[27]DXAにより評価される手骨損失は、従来のX線写真よりも骨損傷に対して感度が高いマーカーであることも示されている[10]。従って、疾患活動性がより大きい患者において炎症が絶えず存在することならびに、骨量の小さな変化を検出する能力をDXRが有することを組み合わせると、併用療法群においてでさえ持続的な手骨損失があることが説明され得る。健常な成人、特に閉経後の女性でも起こる、正常な骨損失の影響に注意することも重要である。DXR−MCIに対する正常な骨損失が調べられたのは、横断面の試験のみであり、この試験は、0.7−0.9%の間の年間骨損失率を報告している[16、28、29]。
【0189】
この分析が計画された際、当初は、主にDXR−BMDに対するX線写真が分析された。しかし、「方法」に記載の理由のために、DXR−BMDに対するX線写真の重要な%の分析には困難な点があった。この試験は、Study Jの事後分析に基づいた。BMDの絶対的測定の代わりに、相対的DXR−MCI測定を使用することによって、多孔性を補正する機会がなくなった。さらに、DXR−MCIとは対照的に、DXR−BMDは、異なるX線写真測定装置のぼやけ及び特定の質が較正される。しかし、DXRは、MCIの精度を向上させ[17]、DXR−BMDとDXR−MCIとの間には強力な相関関係がある(r>0.9)[18、19]。DXR−MCI及びDXR−BMDはまた、DXA−BMDと大きく相関することも分かった[19]。これらの事実から、DXR−MCIが手骨量変化を測定するための有効な代替物になることも示唆される。
【0190】
Study Jに参加する患者におけるビスホスホネートの使用において利用可能な情報はあまりないが、しかし、二重盲検の無作為化比較試験の試験計画により、潜在的なバイアスの影響が最小化された。さらに、ゾレドロン酸は、Study Jが行われた時、骨粗鬆症治療に対して市場に出ていなかった。さらに、別の試験において、骨における炎症の抑制におけるインフリキシマブの好ましい影響は、ビスホスホネートと独立であることが分かった[7]。
【0191】
結論として、この試験は、強力な抗TNF療法が、びらん発症のリスクを低下させるだけでなく、RAでの炎症関連手骨損失率を低下させるという証拠を提供する。この試験はまた、X線写真上で観察される関節損傷が抑制されているように見えても、骨損傷疾患プロセスが、TNFアンタゴニストで治療されたRA患者において依然として存在し得ることも示唆する。
【0192】
B.アダリムマブは、臨床反応と独立に、関節リウマチ(RA)において手骨損失を軽減する:Study Jの予備解析
アダリムマブは、初期RA患者のX線写真上の関節損傷及び手骨損失の両方の率を低下させる。X線写真上の関節の進行速度は、アダリムマブに対する患者の臨床反応と独立して、低下することが示された。これは、炎症性RAの骨病変の二次的特徴である、手骨損失に対して以前には試験されていない。
【0193】
本明細書中に記載の試験の目的は、Study Jで、メトトレキセート(MTX)単剤療法を受けている患者及びアダリムマブ+MTXを受けている患者において、手骨損失と臨床的反応との間の関係を調べることである。
【0194】
方法
上述のように、Study Jでは、初期(<3年)の活動性の、MTX未投与のRA患者において、MTX単独及びアダリムマブ単独に対する、アダリムマブ+MTXの有効性を比較した。本明細書中に記載の予備解析には、MTX単剤療法及び併用療法群が含まれた。デジタルX線画像測定法(Digital X−ray radiogrammetry)中手骨皮質指数(DXR−MCI)により手骨損失を評価し、デジタル化X線写真(DXR、Sectra、Sweden)から計算した。組み合わせた中手骨皮質厚を骨の外径で割ったものとして定義されるMCIは、骨塩密度とよく相関することが示された。様々な臨床反応がある患者に対して、ベースラインから52週間までのMCIの%変化を評価した。4つのサブグループにおいて52週でのDAS28スコアにより、疾患活動性を評価した:寛解=DAS28<2.60;低疾患活動性=DAS28 2.61−3.20;中度疾患活動性=DAS28 3.21−5.20;及び高度疾患活動性=DAS28>5.20。ノンパラメトリック群比較を行った。
【0195】
結果
併用療法群(MTX及びアダリムマブ)の場合、寛解、低、中度及び高度疾患活動性のRA患者間の骨損失に差はなかった(p=0.97)。MTX群の場合、4つの臨床的疾患活動性サブグループ間で数値的な差があった(p=0.10)(表3)。4つのサブグループのいくつかにおいて患者数が少ないので(表3参照)、発明者らは、2つのその他のサブグループ:寛解及び低疾患活動性患者対中度及び高度疾患活動性患者にさらに分けた。MTX群において、DAS28が中程度及び高い患者は、DAS28が低い患者よりも有意に大きくDXR−MCIが低下し(−4.65対−2.99、p=0.01)、一方で、併用療法群で統計学的な有意差は見られなかった(−3.10対−2.70、p=0.99)。疾患活動性と手骨損失(%DXR−MCI)との間の相関関係は、MTX群において−0.14(p=0.06)であり、併用療法群の場合は−0.07(p=0.33)であった。
【0196】
【表3】

【0197】
結論として、これらのデータから、X線写真上の関節損傷に対して既に示されるように、臨床的に評価された疾患活動性とは独立に、アダリムマブが手骨損失を軽減することが示唆される。これらの結果から、炎症によるRABKLを刺激することによるだけでなく、破骨細胞を直接活性化することによっても、TNFが骨損失に影響を与えるという仮説が立証される。
【0198】
【表4】



【0199】
同等性
当業者は、本明細書中に記載の本発明の具体的実施形態に対する多くの同等物を認識するか又は、通常の実験以外のものを使用することなく確認することができる。かかる同等物は、次の特許請求の範囲により包含されるものとする。全ての参考文献、特許及び公開特許出願及び本願を通じて引用される特許出願の内容は参照により本明細書中に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨損失が治療されるように、ヒトTNFα抗体又はその抗原結合部分を対象に投与することを含む、対象において骨損失を治療するための方法。
【請求項2】
対象が関節リウマチに罹患している、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
治療が、メトトレキセートの投与をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
手骨損失が治療される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ヒトTNFα抗体又はその抗原結合部分が、
a)1x10−8M以下のKd及び1x10−3−1以下のKoff速度定数で(両者とも表面プラズモン共鳴により測定)ヒトTNFαから解離し、標準的なインビトロL929アッセイにおいて、1x10−7M以下のIC50でヒトTNFα細胞毒性を中和する、ヒト抗体又はその抗原結合部分;
b)次の特徴を有する、ヒト抗体又はその抗原結合部分:
i)1x10−3−1以下のKoff速度定数でヒトTNFαから解離し(表面プラズモン共鳴により決定される測定);
ii)配列番号3の、又は、位置1、4、5、7もしくは8での1個のアラニン置換によるか又は位置1、3、4、6、8及び/又は9での1から5個の保存的アミノ酸置換により配列番号3から修飾された、アミノ酸配列を含む、軽鎖CDR3ドメインを有し;
iii)配列番号4の、又は、位置2、3、4、5、6、8、9、10もしくは11での1個のアラニン置換によるか又は位置2、3、4、5、6、8、9、10、11及び/又は12での1から5個の保存的アミノ酸置換により配列番号4から修飾された、アミノ酸配列を含む、重鎖CDR3ドメインを有する、という特徴;
c)配列番号3の、又は位置1、4、5、7もしくは8での1個のアラニン置換により配列番号3から修飾された、アミノ酸配列を含む、CDR3ドメインを有する軽鎖可変領域(LCVR)を含み、配列番号4の、又は位置2、3、4、5、6、8、9、10もしくは11での1個のアラニン置換により配列番号4から修飾された、アミノ酸配列を含む、CDR3ドメインを有する重鎖可変領域(HCVR)を含む、ヒトTNFα抗体又はその抗原結合部分;
d)配列番号1のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)及び配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)を含む、ヒトTNFα抗体又はその抗原結合部分;
e)アダリムマブ;及び
f)ゴリムマブ
からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
対象が、骨損失を有するか又は有するリスクがあるものとして既に選択された、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
手骨損失が治療されるように、TNFα阻害剤を対象に投与することを含む、対象において手骨損失を治療するための方法。
【請求項8】
対象が関節リウマチである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
治療が、メトトレキセートの投与をさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
対象が骨粗鬆症に罹患している、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
対象が変形性関節症に罹患している、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
皮質手骨損失が治療される、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
TNFα阻害剤がTNFα抗体又はその抗原結合部分である、請求項7に記載の方法。
【請求項14】
TNFα抗体又はその抗原結合部分が、ヒトTNFα抗体又はその抗原結合部分である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
ヒトTNFα抗体又はその抗原結合部分が、
a)1x10−8M以下のKd及び1x10−3−1以下のKoff速度定数で(両者とも表面プラズモン共鳴により測定)ヒトTNFαから解離し、標準的なインビトロL929アッセイにおいて、1x10−7M以下のIC50でヒトTNFα細胞毒性を中和する、ヒト抗体又はその抗原結合部分;
b)次の特徴を有する、ヒト抗体又はその抗原結合部分:
i)1x10−3−1以下のKoff速度定数でヒトTNFαから解離し(表面プラズモン共鳴により測定される場合);
ii)配列番号3の、又は、位置1、4、5、7もしくは8での1個のアラニン置換によるか又は位置1、3、4、6、8及び/又は9での1から5個の保存的アミノ酸置換により配列番号3から修飾された、アミノ酸配列を含む、軽鎖CDR3ドメインを有し;
iii)配列番号4の、又は、位置2、3、4、5、6、8、9、10もしくは11での1個のアラニン置換によるか又は位置2、3、4、5、6、8、9、10、11及び/又は12での1から5個の保存的アミノ酸置換により配列番号4から修飾された、アミノ酸配列を含む、重鎖CDR3ドメインを有する、という特徴;
c)配列番号3の、又は位置1、4、5、7もしくは8での1個のアラニン置換により配列番号3から修飾された、アミノ酸配列を含む、CDR3ドメインを有する軽鎖可変領域(LCVR)を含み、配列番号4の、又は位置2、3、4、5、6、8、9、10もしくは11での1個のアラニン置換により配列番号4から修飾された、アミノ酸配列を含む、CDR3ドメインを有する重鎖可変領域(HCVR)を含む、ヒトTNFα抗体又はその抗原結合部分;
d)配列番号1のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)及び配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)を含む、ヒトTNFα抗体又はその抗原結合部分;
e)アダリムマブ;及び
f)ゴリムマブ
からなる群から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
対象が、骨損失を有するか又は有するリスクがあるものとして既に選択された、請求項7に記載の方法。
【請求項17】
手骨損を有するか又は手骨損失を有するリスクがある対象を選択し、手骨損失が治療されるように対象にTNFα阻害剤を投与することを含む、対象において手骨損失を治療するための方法。
【請求項18】
対象が関節リウマチに罹患している、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
治療が、メトトレキセートの投与をさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
対象が骨粗鬆症に罹患している、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
対象が変形性関節症に罹患している、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
皮質手骨損失が治療される、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
TNFα阻害剤がTNFα抗体又はその抗原結合部分である、請求項17に記載の方法。
【請求項24】
TNFα抗体又はその抗原結合部分が、ヒトTNFα抗体又はその抗原結合部分である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
ヒトTNFα抗体又はその抗原結合部分が、
a)1x10−8M以下のKd及び1x10−3−1以下のKoff速度定数で(両者とも表面プラズモン共鳴により測定)ヒトTNFαから解離し、標準的なインビトロL929アッセイにおいて、1x10−7M以下のIC50でヒトTNFα細胞毒性を中和する、ヒト抗体又はその抗原結合部分;
b)次の特徴を有する、ヒト抗体又はその抗原結合部分:
i)1x10−3−1以下のKoff速度定数でヒトTNFαから解離し(表面プラズモン共鳴により測定される場合);
ii)配列番号3の、又は、位置1、4、5、7もしくは8での1個のアラニン置換によるか又は位置1、3、4、6、8及び/又は9での1から5個の保存的アミノ酸置換により配列番号3から修飾された、アミノ酸配列を含む、軽鎖CDR3ドメインを有し;
iii)配列番号4の、又は、位置2、3、4、5、6、8、9、10もしくは11での1個のアラニン置換によるか又は位置2、3、4、5、6、8、9、10、11及び/又は12での1から5個の保存的アミノ酸置換により配列番号4から修飾された、アミノ酸配列を含む、重鎖CDR3ドメインを有する、という特徴;
c)配列番号3の、又は位置1、4、5、7もしくは8での1個のアラニン置換により配列番号3から修飾された、アミノ酸配列を含む、CDR3ドメインを有する軽鎖可変領域(LCVR)を含み、配列番号4の、又は位置2、3、4、5、6、8、9、10もしくは11での1個のアラニン置換により配列番号4から修飾された、アミノ酸配列を含む、CDR3ドメインを有する重鎖可変領域(HCVR)を含む、ヒトTNFα抗体又はその抗原結合部分;
d)配列番号1のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)及び配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)を含む、ヒトTNFα抗体又はその抗原結合部分;
e)アダリムマブ;及び
f)ゴリムマブ
からなる群から選択される、請求項24に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2011−517672(P2011−517672A)
【公表日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−501324(P2011−501324)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【国際出願番号】PCT/IB2009/005677
【国際公開番号】WO2009/118662
【国際公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(503448572)アボツト・バイオテクノロジー・リミテツド (30)
【Fターム(参考)】