説明

骨材の表乾状態判定法

【課題】 精度良く骨材の表乾状態を判定することが可能な骨材の表乾状態判定法を提供することを課題とする。
【解決手段】 判定法1は、測定対象の骨材を絶乾状態に乾燥させる乾燥工程S1と、水を混合し、所定の含水率になるように基準試料を調製する基準試料調製工程S2と、水及び食塩を混合し、イオン化試料を調製するイオン化試料調製工程S3と、調製された基準試料及びイオン化試料を測定用容器に充填する充填平滑工程S4と、充填された基準試料及びイオン化試料に対し、水分計を用いて高周波容量を測定する高周波容量測定工程S5と、測定結果から添加試料グラフの傾きが基準試料グラフに対して著しく変化する表乾点を特定し、表乾状態を判定する表乾判定工程S6とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨材の表乾状態判定法に関するものであり、特に、高周波容量式水分計を利用し、建築資材等に利用される骨材の表乾状態を簡易に判定することが可能な骨材の表乾状態判定法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、コンクリートの配合等を行う場合、骨材(砂または砂利等)が所謂「表乾状態(表面乾燥飽水状態)」にあることを前提として、骨材の密度を求め、種々の配合設計に利用している。ここで、表乾状態とは、押し固められた骨材の内部の空隙は、水分で満たされた状態にあり、一方、骨材の表面には水分を含まない状態にあるものとして定義されている。
【0003】
なお、骨材の湿潤及び乾燥状態をそれぞれ示すものは、大別すると四つの態様が知られており、1)水分を全く含んでいない「絶乾状態(絶対乾燥状態)」、2)内部の一部にのみ水分を含む「気乾状態(空気中乾燥状態)」、3)前述した「表乾状態」、4)内部及び表面の双方に水分を含む「湿潤状態」とがある。
【0004】
一般に、骨材の表乾状態を判定する手法として、JIS A1109に規格化されたフローコーン法が主に採用されている。これによると、截頭円錐状を呈するフローコーンに骨材(砂、砂利等)を充填し、突き棒を利用して突くことによって、骨材を所定固さに突き固める。その後、ゆっくりと、フローコーンを上方に向かって引上げる。このとき、突き固められた骨材が崩れる(スランプする)か、崩れかないかの境界付近の状態を表乾状態として判定している。
【0005】
ところが、これらの表乾状態の判定は、どの時点で骨材が崩れたのかを判定することが困難であり、正確な判定にはある程度の熟練を要することがあった。そのため、係る判定に不慣れな測定者(判定者・作業者)は、精度良く判定することができない場合もあった。特に、上述したフローコーン法は、主に「天然骨材」と呼ばれる砂や砂利等に対して実施されるものである。近年はこの「天然骨材」の供給量が減少し、多くの代替物が骨材として用いられている。例えば、砕砂、高炉スラグ、ゴミ溶融スラグ、再生骨材等の所謂「低品位」の骨材が多く利用されている。これらの低品位な骨材は、表面がガラス質性状や多孔質性状を呈することがあり、天然骨材とは異なる表乾特性を有することがある。そのため、フローコーン法では砕砂等の骨材に対して正確な表乾状態を判定することが特に困難となっている。
【0006】
そこで、上述のJIS規格化されたフローコーン法と異なる表乾状態の判定法が種々提案されている。例えば、JIS規格化されたフローコーンの形状と異なる自立角或いは広径等のサイズによって形成された新しい基準の表乾判定用コーンを用いる方法、赤外線の反射率を利用して水分量を計測するもの(例えば、非特許文献1参照)、乾湿状態における電気抵抗の変化を利用するもの(例えば、非特許文献2参照)、遠心脱水法を利用するもの(例えば、非特許文献3参照)などが知られている。
【0007】
【非特許文献1】竹内 一真、外3名,「細骨材の表乾判定試験方法に関する基礎的研究」,コンクリート工学年次論文集,Vol.25,No.1,2003,p77−p82
【非特許文献2】山本 大介、外4名,「海砂代替骨材としての砕砂の表乾判定方法に関する検討」,土木学会第59回年次学術講演会,平成16年9月,p491−p492
【非特許文献3】鈴木 一雄、外1名,「細骨材の簡易表乾決定法に関する一検討」,第48回セメント技術大会講演集,1994,p156−p159
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、既存のフローコーン法に替わる新規の表乾状態の判定法には、下記に示すような問題を生じることがあった。すなわち、異なる自立角及びサイズによって形成されたフローコーンを利用するものは、表乾状態の判定に従来と同様にある程度の熟練性を要し、簡易に、かつ精度よく判定することが困難なことがあった。また、骨材の種類や性状に応じ、最適なフローコーンを適宜選択する必要があり、複数種類のフローコーンを予め準備しておく必要があり、また判定時にどのフローコーンを使用するか等の選択を行う必要があった。一方、赤外線の反射率を利用するものは、一般に水に吸収やすい赤外線波長(1.46μm)と、水に吸収されにくい赤外線波長(1.6μm)の二種類の波長を利用し、主に骨材として「シラス」を対象として測定したデータが測定されていた。そのため、その他の低品位骨材に対する作用及び効果について、十分に開示されているものではなかった。
【0009】
加えて、非特許文献2では、砕砂を測定対象の試料として各種の判定法を実施し、比較したものについて示されている。具体的に示すと、測定対象の砕砂に対し、1)目視判定、2)フローコーン法、3)電気抵抗判定法(土木学会基準 JSCE−C506−2003)、4)仮表面テスト(ASTM C128)の各表乾判定の四種類の表乾状態の判定法が実施されている。これによると、種々の結果を総合することにより、フローコーン法が最も妥当性を有する結果が得られ、その他の方法は非特許文献2の測定結果では特に優れた特性を示すものではなかった。
【0010】
一方、遠心脱水法を利用するものは、高精度に表乾状態を判定することは可能になるものの、対象となる試料(骨材)を遠心分離装置にセットし、試料に応じて数G〜数千Gの遠心力を与える必要があり、表乾状態の判定のための装置が大がかりとなり、簡易な表乾状態の判定に適さないことがあった。
【0011】
そこで、本発明は上記実情に鑑み、比較的簡易な構成及び器具等を利用し、精度良く骨材の表乾状態を判定することが可能な骨材の表乾状態判定法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するため、本発明に係る骨材の表乾状態判定法は、「絶乾状態の骨材に水を混合して攪拌し、それぞれ所定の含水率に調製する基準試料調製工程と、絶乾状態の骨材に水を混合して攪拌し、それぞれ所定の含水率に調製するとともに、導電性を有するイオン化物質を添加し、さらに攪拌するイオン化試料調製工程と、前記基準試料調製工程によって調製された含水率の異なる複数の基準試料及び前記イオン化試料調製工程によって調製された含水率の異なる複数のイオン化試料を、所定形状の測定用容器の中にそれぞれ充填し、試料表面を平滑化する充填平滑工程と、前記測定用容器にそれぞれ充填された前記基準試料及び前記イオン化試料の前記試料表面に高周波容量式水分計の測定部を当接し、高周波容量を測定する高周波容量測定工程と、前記高周波容量式水分計によって示される表示値及び前記基準試料または前記イオン化試料の含水率の関係を示す基準試料グラフ及び添加試料グラフを作成し、略比例関係を示す前記基準試料グラフに対し、前記添加試料グラフの傾きが変化する表乾点を特定し、表乾状態を判定する表乾判定工程と」を主に具備して構成されている。
【0013】
ここで、高周波容量式水分計(以下、単に「水分計」と称す)とは、硬化したコンクリート材や石膏ボード、或いは硬化前のコンクリートの水分量を測定するために用いられるものであり、建築現場等で使用されることが多い。係る水分計は、誘電率が約80程度を示す水の性質を利用し、骨材に水分が含まれる場合、見掛け上の誘電率が増加する性質を利用している。そして、この増加分を予め素材毎に算出された換算式で換算することにより、水分量を表示することが可能なものである。なお、実際には誘電率を直接測定することは困難であるため、該誘電率と直線的な比例関係を示す高周波容量を測定している。また、水分計の具体的な構成についてさらに説明すると、測定対象となる試料に当接される二本の電極を有する測定部を備え、所定の間隔で平行に配された電極の間に高周波(例えば、20MHz相当)を与えることにより、当該試料の高周波容量を測定することが可能なものが知られている。
【0014】
したがって、本発明の骨材の表乾状態判定法によれば、始めに、完全に乾燥した絶乾状態の骨材(例えば、砕砂等の低品位骨材)に水を混合し、それぞれ異なる含水率になるように基準試料を調製する。なお、基準試料の含水率は、例えば、0%〜5.0%の間で、0.5%刻みで調製することが可能である。この含水率の変化量は、測定対象となる骨材の性状等に併せて任意に設定することが可能である。さらに、同様に絶乾状態の骨材に水を混合し、それぞれ異なる含水率(上述の基準試料の含水率に対応させて)に設定するとともに、導電性を有するイオン化物質を所定量混合したイオン化試料を調製する。なお、イオン化試料調製工程を簡略化するために、上記基準試料調製工程で調製された異なる含水率の基準試料をそれぞれ一部ずつ抜取り、抜取った基準試料に対して所定量のイオン化物質を混合し、イオン化試料を調製するものであっても構わない。これにより、イオン化試料調製工程の一部を基準試料調整工程と並存させることにより、調製処理の簡略化が図られる。
【0015】
そして、測定用容器に含水率及びイオン化物質の添加の有無によって区別される複数の試料(基準試料またはイオン化試料)を充填し、水分計を利用して、高周波容量の測定を行う。このとき、試料に水分が含まれ、かつ、試料内部に存在する水分と、試料表面に存在する水分とを別々のものとして捉え、モデル化すると、水分計と試料の間で、図4(a)に示すような電気回路モデル100を構築することが理論上可能である。ここで、表乾状態は、前述したように、試料内部に水分が存在し、かつ、試料表面には水分が存在していない状態である。
【0016】
このとき、試料は高周波113による電流を流れにくくする抵抗101a,101bとしての機能と、電流を蓄えるコンデンサ102a,102bとしての機能の双方を有し、電気回路モデル100に示すように、抵抗101a等及びコンデンサ102a等が並列接続された二つの抵抗コンデンサ−抵抗ユニット103が直列に接続された平面層状構造系として捉えることができる。そのため、この電気回路モデル100において、抵抗の値を変化させることにより、水分計105に表示される表示値106は、抵抗の値が低下することに伴って見掛け上大きくなる傾向がある。
【0017】
そこで、導電性を有するイオン化物質を骨材に所定量混合することにより、抵抗値を低下させる処理が行われる。そのために、イオン化物質の添加されたイオン化試料107の含水率108を、基準試料110の含水率108に合わせる調製を行う。そして、調製された各試料107,110を水分計105を利用して、それぞれ測定し、測定された表示値106と含水率108との関係をプロットしてグラフ化する。その結果、双方の試料107,110の含水率108の値が低い場合(試料の内部の水104aのみが存在する場合)、水分計105による表示値106はイオン化物質による影響を受けることがなく、抵抗値の低下は生じない。さらに、具体的に説明すると、試料表面の水104bが存在しないため、水分計105の表示値106には、イオン化物質の影響を受けることがない。その結果、イオン化試料107の表示値−含水率の関係を示す添加試料グラフ112は、基準試料110の関係を示す基準試料グラフ111と略同一の傾き(比例関係)を有するグラフとして示される。一方、含水率108の値が高い場合(試料表面の水104bが存在する場合)、試料表面に水分計105の測定部を当接することにより、導電性のイオン化物質の影響を受け、上述した電気回路モデル100における試料表面の水104に相当する抵抗−コンデンサユニット103の抵抗値が低下する現象が発生する。その結果、水分計105に表示される表示値106は、抵抗値の低下によって見掛け上大きく表示される。すなわち、基準試料グラフ111の傾きに対し、添加試料グラフ112は、抵抗値の減少にともなって表示値106が見掛け上大きく表示され、比例の傾きが変化する点を有することとなる(図4(b)参照)。そこで、この傾きが変化する点を表乾状態の境界である表乾点109として特定することにより、その表乾点109が示す含水率108によって骨材の表乾状態を判定することが可能となる。その結果、表乾状態の判定に特に熟練を要する必要がなく、測定に不慣れな作業者であっても精度の良い判定が極めて容易に可能となる。
【0018】
さらに、本発明にかかる骨材の表乾状態判定法は、上記構成に加え、「前記基準試料調製工程及び前記イオン化試料調製工程の少なくともいずれか一方は、前記骨材に水を混合して攪拌した後、所定時間、静置する静置工程を」具備するものであっても構わない。
【0019】
したがって、本発明の骨材の表乾状態判定法によれば、調製される基準試料及びイオン化試料を、測定前に所定時間静置することが行われる。ここで、所定時間は、例えば、攪拌終了後24hr〜48hrに設定することが可能である。すなわち、攪拌終了直後は、骨材及び水の混合状態が完全に均一な状態でないケースも想定される。そこで、攪拌終了後、一定の期間、静置することにより、骨材及び水の混合状態を各試料で均一にすることができ、測定の精度を高めることが可能となる。
【0020】
さらに、本発明に係る骨材の表乾状態判定法は、上記構成に加え、「前記イオン化物質は、塩化ナトリウムを利用する」ものであっても構わない。
【0021】
したがって、本発明の骨材の表乾状態判定法によれば、イオン化物質として塩化ナトリウムが利用される。ここで、塩化ナトリウムは、水に易溶解し、ナトリウムイオンと塩化物イオンとに容易に分離するものであり、水溶液の状態で優れた導電性を有している。そのため、骨材に対して添加することにより、上記電気回路モデルにおける抵抗値を低下させ、水分計105に表示される表示値106を、見掛け上大きくすることが可能となる。その結果、表乾状態の判定が容易となる。特に、塩化ナトリウムは、食塩として一般小売店等でも入手しやすいく、またコストも安価であるといった利点を有している。そのため、イオン化物質として塩化ナトリウムを使用することは、特に好適である。
【発明の効果】
【0022】
本発明の効果として、水分計を利用し、基準試料及び食塩等が混入されたイオン化試料についてそれぞれ高周波容量を測定し、基準試料の基準試料グラフから変化する点を決定することにより、容易に表乾状態を判定することが可能となる。特に、従来のフローコーン法では精度の良い判定が困難であった砕砂等の低品位骨材に対しても適用可能となり、天然骨材及び低品位骨材の双方に対し、測定手法を変更することなく表乾状態の判定ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態である骨材の表乾状態判定法1(以下、単に「判定法1」と称す)について、図1乃至図3に基づいて説明する。ここで、図1は本実施形態の判定法1の一例を示す説明図であり、図2は判定法1の各工程の流れを示すフローチャートであり、図3は表示値−含水率の関係を示すグラフである。ここで、本実施形態の判定法1は、イオン化物質として食塩2(塩化ナトリウム)を用いるものについて例示している。
【0024】
本実施形態の判定法1は、図1乃至図3に主として示すように、測定対象の骨材を絶乾状態(含水率≒0%)になるように乾燥炉(図示しない)で乾燥させる乾燥工程S1と、絶乾状態の骨材に水を混合して攪拌した後、静置し、それぞれ所定の含水率になるように基準試料3を調製する基準試料調製工程S2と、絶乾状態の骨材に水を混合し、攪拌した後、静置し、それぞれの所定の含水率になるように調製するとともに、前記骨材に対し、所定量の食塩2を添加して攪拌することによりイオン化試料4を形成するイオン化試料調製工程S3と、調製された基準試料3及びイオン化試料4をそれぞれ測定用容器5に充填し、試料表面3a,4aを突き棒(図示しない)を利用して突いて試料3,4を突き固めるとともに、試料表面3a,4aを平滑化する充填平滑工程S4と、測定用容器5に充填されたそれぞれの試料3,4に対し、水分計6の測定部(図示しない)を当接し、高周波容量を測定する高周波容量測定工程S5と、各試料3,4に対して測定された高周波容量の表示値及び当該試料3,4の含水率の関係をプロットした基準試料グラフ7及び添加試料グラフ8をグラフ化して求め、基準試料グラフ7に対して添加試料グラフ8の傾きが著しく変化する表乾点9の位置を求め、係る位置を表乾状態として判定する表乾判定工程S6とを具備して主に構成されている。ここで、基準試料調製工程S2及びイオン化試料調製工程S3は、本発明の静置工程を併せて処理している。
【0025】
さらに、具体的に説明すると、乾燥工程S1は、測定対象となる骨材から水分を予め完全に除去し、所定の含水率に基準試料及びイオン化試料を調製するためのものである。例えば、120℃〜200℃程度に炉内温度を調整した乾燥炉中に対象となる骨材を投入し、所定時間(例えば、1時間)保持することにより、骨材に含まれる水分を完全に除去することが可能となる。なお、内部の水分を完全に除去するため、120℃ぐらいの乾燥温度で、24hr以上乾燥炉内に保持するものであっても構わない。
【0026】
一方、基準試料調製工程S2及びイオン化試料調製工程S3は、乾燥工程S1によって絶乾状態となった骨材に対し、所定の含水率になるように投入量を調整し、また攪拌によって含水状態を均一にするものである。なお、さらに含水状態を均一にするために、本実施形態では、水を混合し、十分に攪拌した後、大気中の水分によって調製した含水率が変化することのないように、密閉した容器内で24hr静置する処理を行っている。さらに、イオン化試料調製工程S3は、前述した基準試料調製工程S2に加え、さらに所定量の食塩2を再び攪拌し、導電性を有する食塩2がイオン化試料4に均一に混合するように調製したものである。なお、本実施形態では、絶乾状態の骨材300gに対し、5gの食塩2を添加している。係る混合比率は、上述した電気抵抗法によって採用される食塩2の添加量に準拠したものである。ここで、試料3,4の攪拌は、2リットルのペットボトル容器(図示しない)内に骨材及び水(必要に応じて食塩2)を投入し、卓上用ボールミルを利用し、10分間回転させることによって行っている(回転数:100回/min)。
【0027】
さらに、充填平滑工程S4は、調製された各試料3,4を測定用容器5に充填し、飼料表面3a,4aを平滑した状態にするものであり、本実施形態では、横57mm×縦133mm×深さ40mmの樹脂製容器に試料3,4を三層に分けて充填した。なお、各層毎にモルタル試験用突き棒(図示しない)を利用し、15回ずつ突き固める処理を合わせて行った。その後、突き固めた試料3,4の試料表面3a,4aを測定用容器5の高さに一致するようにならし、平滑化した。なお、充填の直前にはそれぞれの試料3,4は、上述と同様の方法で卓上用ボールミルを利用し、10分間回転する処理を行っている。
【0028】
また、高周波容量測定工程S5は、硬化したコンクリート、モルタル、ALCなどの含水率の測定に用いられる高周波容量式水分計を用い、高周波容量を測定するものである。なお、本実施形態では測定部の電極を保護するために、上記充填平滑工程S4によって平滑化された試料表面3a,4aの上に料理等に使用される通気・通水性を有するラップを被せ、その上から測定を行っている。
【0029】
一方、表乾判定工程S6は、各試料3,4に対する測定結果を水分計6によって表示される表示値10及び含水率11の関係をグラフ化するとともに、食塩2の添加されていない基準試料3にかかる基準試料グラフ7と、食塩2を添加した添加試料グラフ8との傾きの変化から表乾点9を判定し、当該表乾点9における含水率11がその骨材に対する表乾状態と判定するものである。
【0030】
次に本実施形態の判定法1による骨材の表乾状態の判定の具体例について、主に図3に基づいて説明する。ここで、各試料3,4は、0%〜4.0%の間で含水率11を0.5%毎に変化させて調製され、図3にそれぞれの試料3,4に対する高周波容量を測定した水分計6の表示値10及びそれに対する含水率11の関係を示すグラフ(基準試料グラフ7及び添加試料グラフ8)が示されている。これによると、基準試料3の基準試料グラフ7は、含水率が0%〜1.5%の間では、表示値の若干の増加は認められるものの、それ以降の含水率(1.5%以上)では、表示値の増減はほとんど観察されることがなく、ほぼ直線上のグラフであった。一方、食塩2を骨材に添加したイオン化試料4に対する測定結果では、含水率に対する表示値が直線的な比例関係を示し、具体的には含水率が0%〜1.5%の間で約300、直線的に増加することが観察され、さらに1.5%〜3.0%の間で表示値が約1000、直線的に増加することが観察された(添加試料グラフ8参照)。その結果、基準試料グラフ7に対し、添加試料グラフ8の傾きが著しく変化する点(この場合、含水率=1.5%)が存在し、添加試料グラフ8が曲折したものとなる。そして、上述した原理により、係る点が表乾状態を示す表乾点9であると特定される。その結果、水分計6を利用し、基準試料3及びイオン化試料4の含水率11に応じた表示値10を測定することにより、容易に骨材の表乾状態を判定することが可能となった。なお、添加試料グラフ8による表乾点9の特定は、正確を期すために、最小自乗法で算出した回帰直線の傾きが大きく変化する点を求めるものであってもよい。
【0031】
以下に、本実施形態の判定法1による精度をさらに確認するために、従来のフローコーンによる判定法(JIS A1109)、及び電気抵抗法による各試料A〜Iの含水率とを比較した結果を示す。なお、フローコーン法は、食塩2を混入しない基準試料3のみを用い、含水率の高い試料から含水率の低い試料に対して順次実施し、スランプした試料を表乾状態として判定し、その時の含水率を特定した。なお、詳細については、既に述べたため、ここでは説明を省略する。一方、電気抵抗法は、本実施形態の判定法1と同じ試料3,4を使用し、40mm×40mmの銅板を電極として用い、デジタルテスターにより電気抵抗を測定した。さらに、本実施形態の判定法1は、上述した最小自乗法を利用して表乾点9を特定している。
【0032】
ここで、測定対象の試料として選択された骨材は、試料A:長良川中流、試料B:長良川下流、試料C:岐阜県内で生コンクリート用に一般的に使用されている砕砂(以下、「岐阜県産砕砂」と称す)、試料D:園芸用花崗岩砕砂、試料E:石灰岩砕砂、試料F:試料Eを篩で分別し、1.2mm以上の粒度を有するもの(石灰岩大)、試料G:試料Eを篩で分別し、1.2mm以下の粒度を有するもの(石灰岩小)、試料H:粉砕したコンクリートから付着モルタルを除去し、0.6mmの篩で水洗いし、微粒分を除去したもの(再生細骨材A)、試料I:コンクリート塊をジョークラッシャーで粉砕したもの(再生細骨材B)、試料J:ゴミ溶融スラグの10種類が用いられている。ここで、試料A及び試料Bは、所謂「天然骨材」であり、試料C〜試料Jが所謂「低品位骨材」に相当するものである。その結果を表1に示す。
【0033】
【表1】

【0034】
上記表1に示されるように、本実施形態の判定法1と電気抵抗法とによって算出された表乾状態を示す含水率は、ほぼ同じ値を示すことが確認された。これにより、本実施形態の判定法1は、従来と同程度の表乾状態の判定の精度を有することが示された。一方、フローコーン法は、例えば、試料Iのような再生細骨材Bのような比較的粒径の粗い骨材は、含水率が高い条件であってもスランプすることがなく、表乾状態を判定することができなかった。一方、判定法1及び電気抵抗法では、このような判定不能となるようなケースはなかった。また、石灰岩からなる骨材を試料とした場合(試料E〜試料G)、フローコーン法では粒度の違いによって含水率が異なる結果が示され、細径の石灰岩が低い含水率を示し、粗径の石灰岩は高い含水率を示した。ところが、本実施形態の判定法1は、いずれも近似する値(0.6〜0.7)を示し、粒径の違い大きく依存しないことが確認された。なお、試料Jでは、当初の測定では表乾点9に相当する明確な曲折が添加試料グラフ8において確認することができなかったため、水分計6の測定部の電極間隔を狭くする改良を行い、水分計6の感度を挙げて測定を行った結果を示している。
【0035】
これにより、本実施形態の判定法1によれば、記述した電気回路モデルにおいて、考察したように、抵抗値の変化による表示値10が見掛け上大きくなることが、いずれの試料A〜試料Iにおいても確認された。すなわち、天然骨材及び低品位骨材を区別することなく、フローコーン法に比べ、より簡易に、かつ精度よく表乾状態を判定することができることが示された。
【0036】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0037】
すなわち、本実施形態の判定法1において、添加するイオン化物質として食塩2(塩化ナトリウム)を利用するものについて例示したが、これに限定するものではない。すなわち、水溶液等として優れた導電性を有する塩化カリウム等のその他の化合物を添加するものであっても構わない。しかしながら、使用の安全性及び入手の容易性等から食塩2を使用することが特に好適である。また、含水率11の変化率、イオン化物質(食塩2)の添加量、及び使用する高周波容量水分計による測定条件(適用高周波容量、電極間隔等)は、いずれも測定する骨材の種類等の状況に応じて任意に変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】判定法の概略構成を示す説明図である。
【図2】判定法の各工程の流れを示すフローチャートである。
【図3】表示値−含水率の関係を示すグラフである。
【図4】(a)電気回路モデル、(b)表示値−含水率のモデル関係を示す説明図である。
【符号の説明】
【0039】
1 判定法(骨材の表乾状態判定法)
2 食塩(イオン化物質)
3,110 基準試料
3a 試料表面
4,107 イオン化試料
4a 試料表面
5 測定用容器
6,105 水分計(高周波容量水分計)
7,111 基準試料グラフ
8,112 添加試料グラフ
9 表乾点
10,106 表示値
11,108 含水率
S2 基準試料調製工程
S3 イオン化試料調製工程
S4 充填平滑工程
S5 高周波容量測定工程
S6 表乾判定工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶乾状態の骨材に水を混合して攪拌し、それぞれ所定の含水率に調製する基準試料調製工程と、
絶乾状態の骨材に水を混合して攪拌し、それぞれ所定の含水率に調製するとともに、導電性を有するイオン化物質を添加し、さらに攪拌するイオン化試料調製工程と、
前記基準試料調製工程によって調製された含水率の異なる複数の基準試料及び前記イオン化試料調製工程によって調製された含水率の異なる複数のイオン化試料を、所定形状の測定用容器の中にそれぞれ充填し、試料表面を平滑化する充填平滑工程と、
前記測定用容器にそれぞれ充填された前記基準試料及び前記イオン化試料の前記試料表面に高周波容量式水分計の測定部を当接し、高周波容量を測定する高周波容量測定工程と、
前記高周波容量式水分計によって示される表示値及び前記基準試料または前記イオン化試料の含水率の関係を示す基準試料グラフ及び添加試料グラフを作成し、略比例関係を示す前記基準試料グラフに対し、前記添加試料グラフの傾きが変化する表乾点を特定し、表乾状態を判定する表乾判定工程と
を具備することを特徴とする骨材の表乾状態判定法。
【請求項2】
前記基準試料調製工程及び前記イオン化試料調製工程の少なくともいずれか一方は、前記骨材に水を混合して攪拌した後、所定時間、静置する静置工程をさらに具備することを特徴とする請求項1に記載の骨材の表乾状態判定法。
【請求項3】
前記イオン化物質は、
塩化ナトリウムを利用することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の骨材の表乾状態判定法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−329801(P2006−329801A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−153351(P2005−153351)
【出願日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(504237050)独立行政法人国立高等専門学校機構 (656)
【Fターム(参考)】