説明

骨盤矯正ベルト

【課題】容易に位置決めし、確実に締め付けられる骨盤矯正ベルトを提供すること。
【解決手段】寛骨臼より上側であって腸骨より下側に巻き付けられ、長手方向の略中央領域にクッション材40を有する背面部30aが形成されている位置決めベルト30と、背面部30aに接続されると共に、位置決めベルト30の上に重ねるようにして、弾性力をもって巻き付けられ、長手方向の両端部21,22が位置決めベルトの腹部側外面の面ファスナー31に着脱可能となっている締付ベルト20とを備え、位置決めベルト30は、両脇部30bが締付ベルト20を覆う袋状部37とされ、締付ベルト20は、位置決めベルトに比べて強い弾性力を有し、かつ、両端部21,22が袋状部の開口部44から突出するようにして、袋状部の内側を長手方向に沿って進退可能とされており、面ファスナー31は位置決めベルトの長手方向端部から袋状部の開口部44まで設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨盤矯正ベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
骨盤の位置がずれたり緩んだりすることで、例えば、腰痛が起きたり、体形が変化したり、或いは体形変化に伴って尿漏れが起きたりし、このような様々な問題を防止又は修正するために、骨盤矯正ベルトが用いられている。
従来の骨盤矯正ベルトは、弾性を有するベルトで骨盤を締め付けるようにして使用されるが、装着する際、その締め具合を調整するため、一般的なベルトのように長さを調整しながら巻きつけるようにしている(例えば、特許文献1参照)。
なお、骨盤矯正ベルトは、脚の骨の付け根付近に巻くと歩行し難くなり、逆に巻く位置が上過ぎると腹部への影響で強く締め付けることができないだけでなく、骨盤や骨盤底筋の歪みを矯正できないため、経験上、骨盤のある程度細い帯域を狙って巻かれている。
【0003】
ところが、このように巻きつける長さを調整して締め付け具合を調整する方法だけでは、骨盤を締め付ける力が弱い場合が多い。
一方、強い弾性力で骨盤を支える力を補強するために、弾性力を有する補助ベルトをベルト本体の上にさらに巻きつけるようにした骨盤矯正(補強)ベルトもある(例えば、特許文献2参照)。すなわち、ベルト本体の一部に補助ベルトが接続されており、まずベルト本体を骨盤周りに巻きつけ、その後、補助ベルトの長手方向の両端部を把持して引き伸ばしながら、面ファスナー等でベルト本体に定着するようにしている。
なお、広幅とされた腰痛帯としては、骨盤矯正(補強)ベルトの補助ベルトがV字状とされたものもある(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−58250公報
【特許文献2】特開2004−261430公報
【特許文献3】特開平9−38125公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、弾性力のある補助ベルトの両端部を、加齢や出産に伴って骨盤に影響が出やすい老人や産後の女性等の比較的力が弱い使用者が、適正な位置に装着させるのは難しい。特に、上述のように、骨盤矯正ベルトを、骨盤の特定の帯域を狙って巻き付けようとすると、その帯域の幅は狭いため、位置決めする困難度は増すばかりである。
本発明は上記課題を解消し、容易に位置決めしながら、確実に締め付けることができる骨盤矯正ベルトを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、第1の発明によれば、産後女性の寛骨臼より上側であって腸骨より下側である骨盤の特定領域に、弾性をもって巻き付けられる帯状であって、長手方向の一方の端部と他方の端部とが着脱可能になっていると共に、長手方向の略中央領域に厚み方向に弾力を発揮するクッション材を有する背面部が形成されている位置決めベルトと、前記背面部に接続されると共に、前記位置決めベルトに重ねるようにして、弾性力をもって巻き付けられる帯状であって、長手方向の両端部が、前記位置決めベルトの腹部側外面に設けられた面ファスナーに着脱可能となっている締付ベルトとを備え、前記位置決めベルトは、前記産後女性の両脇領域に当接する両脇部全体が、前記締付ベルトを前記骨盤の特定領域の範囲内で覆う袋状部とされ、前記締付ベルトは、少なくとも前記位置決めベルトに比べて強い弾性力を有し、かつ、前記両端部が前記袋状部の開口部から突出するようにして、前記袋状部の内側を長手方向に沿って進退可能とされており、前記面ファスナーは前記位置決めベルトの長手方向の端部から前記袋状部の開口部まで設けられている骨盤矯正ベルトにより達成される。
【0007】
第1の発明の構成によれば、骨盤矯正ベルトは、人体の骨盤周りに巻き付けられ、長手方向の一方の端部と他方の端部とが着脱可能な弱い弾性力を有する位置決めベルトと、位置決めベルトに重ねられて、長手方向の両端部が位置決めベルトに着脱できる強い弾性力を有する締付ベルトとを備えている。このため、まず、身体側の位置決めベルトで、予め、締め付けたい部分を特定して、大まかに骨盤周りを締め付けておき、その後、この位置決めベルトの背面部と接続されている締付ベルトで、骨盤周りを締め付けることができる。そして、締付ベルトを巻く際には、位置決めベルトで既に締め付けたい部分を特定しているので、その分、位置決めのための力を割く必要がなく、弾性力を十分に利用して強く骨盤周りを締め付けるように引きながら、位置決めベルト外面に装着することができる。
【0008】
また、この締付ベルトは、長手方向の中央部が位置決めベルトの背面部に固定されているが、この位置決めベルトの背面部は厚み方向に弾力を発揮するクッション材を有する。したがって、締付ベルトは、背中に密着する背面部を基点として、その中央部から両端側に向かってバランスよく引き伸ばすことができる。
さらに、位置決めベルトは、締付ベルトの少なくとも両端部を除く領域を覆う袋状部が形成されており、この袋状部は、その内側を締付ベルトが長手方向に沿って進退でき、締付ベルトを産後女性の寛骨臼より上側であって腸骨より下側である骨盤の特定領域の範囲内で覆うことで、締付ベルトの幅方向の動きを規制するガイドとされている。このため、締付ベルトの両端部を把持して長手方向に引き伸ばし、腹部領域に定着させようとする際、締付ベルトが強い弾性力を有していても、ガイドとなる袋状部によって、使用者にとって上下方向となる幅方向の振れを有効に防止できる。したがって、力が弱くても、締付ベルトを幅の狭い帯域に巻き付ける際の、幅方向の位置決めを容易にし、また、幅方向の位置決めに力を割かなくてもよい分、引き伸ばす方向に力を入れて締め付けを行なえる。
【0009】
第2の発明は、第1の発明の構成において、前記締付ベルトは、厚み方向に複数層となっており、人体側のベルト層が前記クッション材の両端部に固定され、外側のベルト層が前記クッション材の少なくとも前記両端部と固定されずに、前記クッション材に重ねられるように配置されていることを特徴とする。
【0010】
第2の発明の構成によれば、複数層で形成された締付ベルトは、人体側のベルト層がクッション材の両端部に固定されているため、人体側のベルト層は、クッション材を位置決めベルトの両端に向かって引き伸ばすように引っ張り、クッション材が撓んだりすることを防止する。そして、外側のベルト層は、クッション材に重ねられるように配置されているので、外側のベルト層は、両端に向かって引っ張られた際に、人体側に変位してクッション材を人体に押し付け、骨盤矯正ベルトを巻く際の基点となるクッション材の位置がずれることを防止する。このようにして、締付ベルトを巻く際、確実にクッション材が基点となって、安定して力を入れながらその両端部を引っ張ることができるため、第1の発明の作用効果をより効果的に発揮することができる。
【0011】
第3の発明は、第1または第2の発明のいずれかの構成において、前記袋状部開口部は、その幅方向の上側に比べて下側の方が、より長手方向の端部側に配置されていることを特徴とする。
第3の発明の構成によれば、袋状部における開口部は、その幅方向の上側に比べて下側の方が、より長手方向の端部側に配置されている。したがって、締付ベルトを、より力の入れ易い方向である下側に押さえつけながら、長手方向に引っ張った際、袋状部はより長く締付ベルトの動きを規制するため、位置決めして装着し易い。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明によれば、容易に位置決めしながら、確実に締め付けることができる骨盤矯正ベルトを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】妊婦の骨盤周辺の正面図であり、皮膚や筋肉などの組織を透視した図。
【図2】図1のA−A線の部分で人体を切断した場合の概略断面図。
【図3】本発明の実施形態に係る骨盤矯正ベルトを巻いた状態で人体の正面側から見た場合の概略斜視図。
【図4】本発明の実施形態に係る骨盤矯正ベルトを巻いた状態で人体の背面側から見た場合の概略斜視図。
【図5】図3のB−B線概略切断断面図。
【図6】位置決めベルトの中央部を背骨の領域に当接するための目印の変形例。
【図7】袋状部を幅方向に切断してその端面を見た概略端面図。
【図8】締付ベルトの両端部を把持して引っ張っている図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の好適な実施形態を説明する前に、骨盤矯正ベルトを、骨盤のある程度細い帯域を狙って巻くようにした点について、特に産後における骨盤の変化を参酌しながら概説し、その後、骨盤矯正ベルトについて説明する。
図1は妊婦の骨盤周辺の正面図であり、皮膚や筋肉などの組織を透視した図である。図2は、図1のA−A線の位置で人体を切断した場合の概略断面図である。
【0015】
図1に示すように、骨盤1は、仙骨2を中心に左右対称に配置された一対の寛骨3,3からなっており、各寛骨3は、動きの少ない腸骨4、軟骨である寛骨臼5、軟骨である恥骨6、及び挫骨7を有しており、恥骨6の脇から寛骨臼5にかけて形成された窪みに、大腿骨の付け根の骨8が入り込むようになっている。
そして、妊娠5ヶ月以降から産後数ヶ月までと、産後数ヶ月以降とでは、一対の恥骨6,6の互いの間隔Lが異なっており、この恥骨6,6の間隔Lが大きい程(骨盤が緩んでいる程)、腰痛や体形変化などの程度が大きいことが分かった。
【0016】
このように、恥骨間が広がる理由は、例えば妊婦の場合、図2に示すように、子宮内の胎児が子宮口を通るため、子宮口の周りの筋肉を緩めて出産の準備をするためであると考えられる。一方、近年、共働きや核家族化などの社会現象に伴って、産後すぐに立って動くことが多く、このため、重力が加わった臓器等の重みで恥骨間の間隔Lが戻り難いケースが増え、骨盤の緩みが回復するのに産後5ヶ月程度と、過去に比較すると骨盤の緩みが回復する期間が長期化する傾向にあり、また、骨盤が緩んだ状態から完全に回復しないケースも増えている。また、このようなメカニズムは、妊婦特有のものではなく、高齢者にも当てはまる。すなわち、高齢になると、恥骨6,6周辺等の筋肉の働きが低下するため、一対の恥骨6,6の互いの間隔Lが大きくなり、このため、腰痛や歩行困難、或いは体形変化に伴った尿漏れ等の問題が起き易くなる。
【0017】
したがって、骨盤矯正ベルトを巻く際は、一対の恥骨6,6の互いの間隔Lを正常な間隔に戻す巻き方が必要になる。しかし、上述したように、恥骨6の脇から寛骨臼5にかけて形成された窪みに、脚の付け根の骨8が入り込むようになっているため、この帯域にベルトを巻いてしまうと、脚の付け根を締め付けるため、歩行し難くなるだけでなく、歩行に伴ってずれ易くなる。また、腸骨4は仙骨2にあたる位置であり、恥骨6とは離間しているので、この部分にベルトを巻いても効果は殆ど見られない。したがって、骨盤矯正ベルトは、寛骨臼5より上側であって腸骨4より下側の間(図1の一点鎖線で示す帯域M)に位置するように巻くことが最も効果的である。
【0018】
本発明の骨盤矯正ベルトは、好ましくはこのように骨盤を矯正するため装着される。
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面を参照して詳細に説明する。なお、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0019】
図3ないし図5は、本発明の実施形態に係る骨盤矯正ベルト10を示しており、図3は骨盤矯正ベルト10を巻いた状態で人体の正面側から見た場合の概略斜視図、図4は骨盤矯正ベルト10を巻いた状態で背面側から見た場合の概略斜視図、図5は図3のB−B線概略切断断面図である。なお、図3および図4では、人体は透過して図示されている。
骨盤矯正ベルト10は、上述のように一対の恥骨の互いの間隔を狭めるために、寛骨臼5より上側であって腸骨4より下側の間を狙って巻くことができるように、その全体の幅W1が比較的狭く形成されており、本実施形態の場合は産後の女性を想定して、全体の幅W1を約7.5cmに設定している。
そして、骨盤矯正ベルト10は、帯状の位置決めベルト30と、この位置決めベルト30の少なくとも身体側の面よりも外側に重ねられる帯状の締付ベルト20とを備えている。
【0020】
締付ベルト20は、人体Fの骨盤周りに巻き付けて、骨盤を締め付ける機能を有しており、ベルト本体とも言える。すなわち、締付ベルト20は、長手方向に沿って伸縮する強い弾性力を有し、この弾性力をもって骨盤を締め付けるようにしている。本実施形態の締付ベルト20は、長手方向の弾性力を生じさせると共に通気性を考慮して、複数本のゴム等の弾性体を長手方向に沿って伸びるように設けて、この長手方向に沿った複数本の弾性体の位置を幅方向に沿ったてぐす状の合成糸で固定するようにしている。
【0021】
また、締付ベルト20は、その長手方向の両端部21,22が腹部領域に着脱可能となっている。具体的には、締付ベルト20の両端部21,22は、引っ張られていない状態では、図3に示すように、両脇腹よりの腹部前面に配置されている。そして、両端部21,22は、手で把持されて腹部前面の中心側に引っ張られ、手が交差することがないように、腹部前面の中心に変位させた位置で、後述する位置決めベルト30の表面に装着可能となるようにしている。
【0022】
本実施形態の場合、この着脱可能にする手段には、面ファスナー等の係脱自在な係合手段が用いられており、具体的には、図5に示されるように、締付ベルト20の両端部21,22の各裏面(身体側の面)に設けられたフック状の雄側の面ファスナー23と、位置決めベルト30の表面に設けられた雌側の面ファスナー31とを係合させている。なお、この着脱手段は、着脱のために余分な力を割くようなことがなければ面ファスナーに限られず、例えばホックやフックを複数列使用する等、各種係合手段であってもよい。
なお、この締付ベルト20の両端部21,22は、巻き付ける際に手で把持される部分であり、この部分に弾性力を持たせると手元が不安定になり位置決めが難しくなるため、面ファスナー23,23によって、弾性力を有しないように形成されている。
【0023】
位置決めベルト30は、締付ベルト20の人体F側に重なる帯状であって、締付ベルト20と同様に、骨盤の特定領域(寛骨臼より上側であって腸骨より下側の間)の周りに巻き付けられるようになっている。
この位置決めベルト30は、上述の締付ベルト20が適正な位置に巻かれるようにするための機能を主に有するベルトである。すなわち、位置決めベルト30を骨盤の特定領域に装着して、骨盤矯正ベルト10を位置決めしておいてから、この位置決めベルト30と接続された締付ベルト20で、骨盤をしっかりと締め付けるようになっている。
【0024】
具体的には、位置決めベルト30は、図3に示すように、締付ベルト20の幅W2よりも僅かに大きく、骨盤矯正ベルト10全体の幅W1が、そのまま位置決めベルト30の幅となる。そして、位置決めベルト30は、骨盤の特定領域に比較的弱い力で巻き付けて、着脱可能な長手方向の一方の端部32と他方の端部33とを定着するようになっている。
【0025】
この特定領域に巻き付けるある程度の力とは、位置決めベルト30が、巻き付けられた際に、少なくとも位置ずれしないようになっていればよい程度の弾性とされている。
本実施形態の場合は、特定領域に位置決めする機能を損なわないように(即ち、非力者であっても容易に位置決めできるように)、長手方向に弾性力を与えて、位置ずれしない程度の締め付けをしておき、以降の締付ベルト20で引き締める際に入れる力を、できるだけ軽減できるようにしている。
【0026】
具体的には、位置決めベルト30は、全体的には通気性を考慮して例えばパワーネットで形成されており、端部32,33や背面側については、他の部材(例えば後述するクッション材40)を付加したり縫合したりして、パワーネットの弾性力を軽減するようにしている。そして、位置決めベルト30の両脇領域に当接する両脇部30b,30bのみに、弾性力を付与している。すなわち、一方の端部32および他方の端部33は、巻き付ける際に把持される部分であるため、この部分に弾性力を持たせると手元が不安定になり位置決めが難しくなるため、面ファスナー31,31によって弾性力を弱めている。また、背面側は、後述するように骨盤矯正ベルト10を巻き付ける基点となるため、この部分も動くと位置決めが難しくなる。このため、両脇部30b,30bのみに弾性力を付与している。
【0027】
また、一方の端部32と他方の端部33とを着脱可能にする手段としては、ホック、ファスナー、バックル等でもよいが、本実施形態の場合、上述のように、締付ベルト20を容易に着脱できるように面ファスナーを用いており、位置決めベルト30の表面には雌側の面ファスナー31が設けられているので、この面ファスナー31を利用している。すなわち、図5に示すように、一方の端部32の裏面に設けられた雄側の面ファスナー34を、他方の端部33の表面に設けられ、締付ベルト20の両端部22側の面ファスナー23が装着される他方の端部33側の雌側の面ファスナー31に係合するようにしている。
なお、一方の端部32の裏面には、図4及び図5に示すように、雄側の面ファスナー34から僅かに間を空けるようにして、その隣に、面ファスナー34と同様の面積及び形状からなる雌側の面ファスナー35が設けられている。したがって、面ファスナー34と面ファスナー35との間を折り曲げて、ファスナー同士を係合させて、洗濯をする際、この部分にゴミが付着したり、他の洗濯物を傷めたりすることを防止している。
【0028】
そして、図4及び図5に示すように、位置決めベルト30の背骨Rおよびその周辺領域に当接する背面部30aが締付ベルト20と一体にされている。この背面部30aは、上述のように、少なくとも長手方向に弾性力を有さず、巻き付ける際に基点となる部分となる。すなわち、人体の中で中心軸となる背骨Rの位置に、位置決めベルト30の長手方向の中央部OPをあてがい、この弾性力を有さず動きにくい背面部を基点として、左右の脇腹を通ってバランスよく腹部前面に巻き付けるようにしている。また、締付ベルト20も、長手方向の中央部がこの背面部30aに接続されているため、その中央部から両端側に向かってバランスよく引き伸ばして締め付けることができる。
なお、上述の「長手方向に弾性力を有さず」とは、積極的に、長手方向に弾性力を設けるようにしているわけではないという意味、及び、長手方向に弾性力を有するような部分があれば、その部分の弾性力を減衰させるようにするという意味であって、長手方向に若干の弾性力がある場合も含むことは勿論である。
【0029】
また、この位置決めベルト30の背面部30aには、図5に示すように、厚み方向に弾力を有するクッション材40が設けられている。このクッション材40は、骨盤矯正ベルト10の装着感を高めるだけでなく、巻き付ける際に、背面部30aを背中に密着させて、動かないようにするための部材であり、より背面部30aの基点としての機能を高められるようになっている。
なお、本実施形態では、図4に示すように、中央部OPを背骨Rに上手く当接できるように、背中側における外面の略中央部において、クッション材40と締付ベルト20等を縫合する縫合位置に略長方形状の目印30cを、厚み方向に積層させて設けている。なお、この目印30cの形は、その方向性や位置が触れて分かりやすいように、この部分の変形例である図6に示すように二等辺三角形の頂点を切断した略台形状や、その他、略菱形状等を採用してもよい。
【0030】
本実施形態の骨盤矯正ベルト10は以上のような特徴をもって形成されているが、さらに、以下の特徴を有している。
まず、位置決めベルト30のさらなる特徴について説明する。
位置決めベルト30は、図3および図5に示すように、締付ベルト20の少なくとも両端部21,22を除く領域を覆うように袋状部37とされ、この袋状部37内側の幅寸法を締付ベルト20の幅寸法W2に対応させて、僅かに大きくすることで、締付ベルト20の幅方向の動きを規制するガイドとされている。
【0031】
具体的には、図3に示すように、位置決めベルト30は、締付ベルト20の少なくとも両端部21,22を外部に露出させて把持できるようにし、その両端部21,22以外の周囲を覆うように袋状部37が形成されている。
そして、袋状部37は、袋状部37を幅方向に切断してその端面を見た概略端面である図7に示されるように、位置決めベルト30を形成する生地層である、身体側層30dと外面層30eとを厚み方向に積層し、幅方向(使用者の上下方向)両端でパイピング30f,30fを介して縫合することで袋状とされている。
【0032】
また、この袋状部37の領域において、袋状部37の内部(身体側層30dよりも外側であって外面層30eよりも内側)に締付ベルト20が配置されて、締付ベルト20が位置決めベルト30に巻きつくようになっている。この際、袋状部37は、その内側(内部空間)の幅寸法W3を、締付ベルト20の幅寸法W2よりも僅かに大きく形成して、締付ベルト20を収容するようにしている。
これにより、締付ベルト20を長手方向(図5の矢印Pの方向)に沿って伸張させた際、図7の袋状部37の内面と締付ベルト20の外面とが接する部分であって、その幅方向における最上部および最下部が、締付ベルト20の幅方向(図7の上下方向)の動きを規制してガイドとなる。
【0033】
なお、袋状部37は、そのガイドとしての機能を確実に発揮することができるように、少なくとも人体の脇腹よりも前面(前腹)側に配置されており、より好ましくは、本実施形態のように、締付ベルト20の両端部21,22を除く全体を覆うようにするとよい。
また、締付ベルト20に対する袋状部37内側の幅寸法W3は、小さくし過ぎると、締付ベルト20の動きを規制し過ぎて操作し難くなり、大きくし過ぎると、操作に伴う締付ベルト20の上下方向へのブレを起こして、適切な位置に装着し難くなるため、締付ベルト20と袋状部37の内面との当接や摩擦等を考慮して寸法を決めなければならない。本実施形態の場合、締付ベルト20の幅寸法W2は約5cmであり、袋状部37内側の幅寸法W3は約6cmとなるように設計されており、上下にそれぞれ5mm程度の隙間Sが設けられ、締付ベルト20に対する一方の隙間Sが5%〜15%程度の幅とされている。
【0034】
また、図3および図5に示すように、締付ベルト20を引っ張る際に余計な力を加えないように、締付ベルト20の両端部21,22を外部に露出するための袋状部37の開口部44の端面44aに、締付ベルト20との間で摩擦係数が低い部材45をパイピング状に配置している。本実施形態の場合、摩擦係数が低い部材として、綿やポリエステルを用いている。なお、このパイピング状の部材45を設けることによって、開口部44,44を垂直に形成した場合の幅は、袋状部37の内側の幅寸法W3より僅かに小さくなるよう構成されている。
【0035】
また、袋状部37は、本実施形態の場合、外面層30eで締付ベルト20を覆うように、締付ベルト20の手で把持する両端部21,22以外の部分全てを収容するようにしているが、袋状部37に締付ベルト20のほとんどを収容することで、締付ベルト20の長手方向の動きが鈍くなる場合は、例えば、締付ベルト20の両端部21,22に隣接した領域のみを収容し、他の領域は露出するようにしてもよい。
【0036】
さらに、本実施形態では、袋状部37における開口部44は、図3に示すように、その幅方向の上側(頭部側)に比べて下側(足側)の方が、より位置決めベルト30の長手方向の端部32,33側に配置されている。ここでは、袋状部37における開口部44は、幅方向の下側の方がより長手方向の端部32,33に向かって延伸するように形成され、腹部の中心側に向かって長い下側から上側に向かって、斜めに幅方向を横断するよう形成されている。すなわち、締付ベルト20の両端部21,22を把持して引っ張っている図8に示すように、弾性力の強い締付ベルト20を容易に引っ張れるのは、力を入れられる略股間に向かった斜め下方向Eであるため、この方向Eに向かって引っ張った際、袋状部37の下側37a(図8の下側)の方が長いので、より長い時間にわたって締付ベルト20の動きを規制して、下側に押さえつけながら締付ベルト20を引き締めることができる。
【0037】
次に、締付ベルト20のさらなる特徴について説明する。
締付ベルト20は、厚み方向に複数層となっており、図5に示すように、一本細長い帯状のベルトを両端部21,22で折り返すことで二層構造としている。そして、人体側のベルト層28は、クッション材40の長手方向の両端部40a,40bに縫合されている。また、外側のベルト層27は、クッション材40の少なくとも両端部40a,40bとは接続されずに、クッション材40の外側に重ねられるように配置されている。本実施形態の場合、外側のベルト層27は、クッション材40の中央部OPのみと接続されている。
【0038】
これにより、締付ベルト20の両端部21,22を把持して引っ張ると、人体側のベルト層28は、クッション材40の両端部40a,40bを図5の矢印E1,E1方向に引っ張るため、クッション材40が撓んだりすることを防止する。
また、外側のベルト層27は、クッション材40の少なくとも両端部40a,40bと接続されずに、クッション材40に重ねられるように配置されているので、締付ベルト20の両端部21,22を把持して引っ張ると、人体側に変位して(矢印E2,E2方向に向かって)クッション材40を背中に押し付けて、骨盤矯正ベルト10を巻く際の基点となる背面領域を、より人体に密着させて、基点がずれることを防止できる。
【0039】
本発明の実施形態は以上のように構成されており、骨盤矯正ベルト10は、弱い弾性力の位置決めベルト30で予め骨盤の特定領域に装着され、その後、この位置決めベルト30と接続された強い弾性力を有する締付ベルト20で、骨盤を締め付けるようにしているので、締付ベルト20で引き締める際には、位置決めのための力を割く必要がなく、その弾性力を十分に利用して強く骨盤周りを締め付けることができる。
さらに、位置決めベルト30は、締付ベルト20の少なくとも両端部21,22を除く領域を覆うように袋状部37とされ、この袋状部37内側の幅寸法を締付ベルト20の幅寸法に対応させることで、締付ベルト20の幅方向の動きを規制するガイドを形成するようにしている。このため、締付ベルト20の両端部21,22を把持して長手方向に引き伸ばし、位置決めベルト30の腹部領域の表面に定着させようとする際、このガイドである袋状部37によって幅方向の振れを有効に防止できる。したがって、力の弱い使用者が、幅の狭い恥骨6よりも上側であって腸骨4よりも下側の狭い特定部分に装着しようとした場合であっても、幅方向の位置決めを容易にし、また、幅方向の位置決めに力を割かなくてもよい分、引き伸ばす方向に力を入れて締め付けを行なえる。
【0040】
本発明は、上記実施形態に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。例えば、本実施形態では全体に布地を使用しているが、背中側等の当接する部分によっては成形体を配置しても良い。また、本実施形態では全体を通気性を有する材料で形成することで長時間における使用感を高めているが、通気性のない材料を使用しても良く、さらには背中側等に保温機能を有する材料を使用したり、ポケット等を設けて保温できるよう構成しても良い。また、上記実施形態の各構成は、その一部を省略し、あるいは上記とは異なるように任意に組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0041】
10・・・骨盤矯正ベルト、20・・・締付ベルト、27・・・外側のベルト、28・・・人体側のベルト、30・・・位置決めベルト、32・・・一方の端部、33・・・他方の端部、37・・・袋状部、42・・・ガイド部、40・・・クッション材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
産後女性の寛骨臼より上側であって腸骨より下側である骨盤の特定領域に、弾性力をもって巻き付けられる帯状であって、長手方向の一方の端部と他方の端部とが着脱可能になっていると共に、長手方向の略中央領域に厚み方向に弾力を発揮するクッション材を有する背面部が形成されている位置決めベルトと、
前記背面部に接続されると共に、前記位置決めベルトに重ねるようにして、弾性力をもって巻き付けられる帯状であって、長手方向の両端部が、前記位置決めベルトの腹部側外面に設けられた面ファスナーに着脱可能となっている締付ベルトと
を備え、
前記位置決めベルトは、前記産後女性の両脇領域に当接する両脇部全体が、前記締付ベルトを前記骨盤の特定領域の範囲内で覆う袋状部とされ
前記締付ベルトは、少なくとも前記位置決めベルトに比べて強い弾性力を有し、かつ、前記両端部が前記袋状部の開口部から突出するようにして、前記袋状部の内側を長手方向に沿って進退可能とされており、
前記面ファスナーは前記位置決めベルトの長手方向の端部から前記袋状部の開口部まで設けられている
ことを特徴とする骨盤矯正ベルト。
【請求項2】
前記締付ベルトは、厚み方向に複数層となっており、人体側のベルト層が前記クッション材の両端部に固定され、外側のベルト層が前記クッション材の少なくとも前記両端部と固定されずに、前記クッション材に重ねられるように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の骨盤矯正ベルト。
【請求項3】
前記袋状部開口部は、その幅方向の上側に比べて下側の方が、より長手方向の端部側に配置されていることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の骨盤矯正ベルト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−92749(P2011−92749A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−282031(P2010−282031)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【分割の表示】特願2006−16827(P2006−16827)の分割
【原出願日】平成18年1月25日(2006.1.25)
【出願人】(000112288)ピジョン株式会社 (144)
【Fターム(参考)】