説明

骨粗鬆症発症予防剤

【課題】他の製品に比較して低コストなものでありながら、その効果が優れている骨粗鬆症発症予防剤の提供。
【解決手段】
クエン酸を主材として含有する骨粗鬆症発症予防剤である。
これに、ビタミンK2を添加してもよく、またさらに骨粉を添加してもよい。
上記骨粗鬆症発症予防剤は食品に添加したものとしてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨粗鬆症発症予防剤及びそれを含有する食品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、人間の高齢化に伴い、骨密度が低下して骨がもろくなる骨粗鬆症の発症が大きな問題となっている。
骨粗鬆症が発症すると骨の湾曲や激しい痛み、骨折などの症状がみられ、特に大腿骨頚部を骨折した場合では寝たきりとなることがある。
これらに対応するため、骨粗鬆症の治療薬としては活性型ビタミンD3や女性ホルモン(エストロゲン)、カルシトニン、イプリフラボン、ビスフォスフォネート、ビタミンKなどが開発されている。
しかし、骨粗鬆症の発生予防又は治療は困難な場合が多く、適切な運動や日常摂取する食品に気をつける事により予防に努めることも重要である。
【0003】
骨粗鬆症の発症を防ぐためには、カルシウムを多く含む乳製品や魚類の摂取が推奨されている。さらにカルシウムやマグネシウム、ビタミンD、ビタミンKや、カゼインホスホペプチド(腸管からのカルシウムの吸収を促進する作用があると言われている)などを含む健康食品の利用も推奨されている。
また、クエン酸カルシウムやカルシウム−アルカリ金属クエン酸塩も骨粗鬆症発症の予防剤として提供されている。
【特許文献1】特開平8−40975号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のごとく、従来は骨の主成分であるカルシウムに着目して、骨粗鬆症発症予防又は治療にカルシウム含有物を投与するすることが主になされていたが、確実な効果は期待し難かった。
そして、昨今の高齢化社会の到来に伴なう骨粗鬆症の激増に鑑み、より少ない安全な摂取量の範囲内で、骨粗鬆症の予防、あるいは改善効果をもつ治療剤の提供が切望されている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決すべく基礎的に実験・研究を重ねた結果、意外にもカルシウムを必須成分としなくても、骨粗鬆症発症を予防できる有効物質をありふれた食品成分の中から発見した。
よって、本願発明はその発見された食品成分を主材とする骨粗鬆症発症の予防剤を提供するものである。
すなわち本発明は、ありふれた食品成分であるクエン酸単体を主材とする骨粗鬆症発症の予防剤である。
本発明の骨粗鬆症発症の予防剤は、クエン酸(C687)をそのまま粉末や顆粒で又は水に溶解した液剤の状態で、あるいは他の賦形剤を加えて成形して錠剤タイプとなすこともできる。なお、クエン酸は、安定性を維持するため、アルカリ金属塩として使用することもできる。その他、カルシウム塩以外の他の金属塩であってもよい。しかし、本願発明の予防剤中のクエン酸含有量の計算では、含有クエン酸分を対象として算出するものである。
また、食品に添加、例えば御飯、パン等の主食食品に又は味噌汁、スープ、サラダ、スナック菓子等の副食食品に添加して、骨粗鬆症発症予防剤含有食品となすこともできる。
【0006】
すなわち本願発明は下記構成の骨粗鬆症発症予防剤及びそれを含有する食品である。
(1)クエン酸を主材として含有する骨粗鬆症発症予防剤。
(2)クエン酸が、アルカリ金属のクエン酸水素塩であることを特徴とする前記(1)記載の骨粗鬆症発症予防剤。
(3)ビタミンKを添加してなることを特徴とする前記(1)又は(2)記載の骨粗鬆症発症予防剤。
(4)マグネシウム含量が100mg/100g以上かつリン含量が10g/100g以上の骨粉を添加してなることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれか1項記載の骨粗鬆症発症予防剤。
(5)マグネシウム含量が100mg/100g以上かつリン含量が10g/100g以上の骨粉が、魚骨粉である前記(4)に記載の骨粗鬆症発症予防剤。
(6)骨粉が、ウナギ又はサケの骨の乾燥物を粉砕して得られたものであることを特徴とする前記(4)又は(5)記載の骨粗鬆症発症予防剤。
(7)骨粗鬆症発症予防剤中のクエン酸とビタミンK2と骨粉との配合比が、クエン酸100重量部に対して、ビタミンK2 0.0001〜0.1重量部、骨粉5〜5000重量部であることを特徴とする前記(4)〜(6)のいずれかに記載の骨粗鬆症発症予防剤。
(8)骨粗鬆症発症予防剤が賦形剤により成形されてなる錠剤タイプ、バータイプ又はスティックタイプのものであることを特徴とする前記(1)〜(7)のいずれか1項に記載の骨粗鬆症発症予防剤。
(9)前記(1)〜(8)のいずれか1項に記載の骨粗鬆症発症予防剤が添加されてなる食品。
【発明の効果】
【0007】
本発明により提供される骨粗鬆症発症予防剤は、他の骨粗鬆症発症予防剤に比較して低コストなものでありながら、その効果が優れている。
また、本願発明の骨粗鬆症発症予防剤は、骨粗鬆症発症患者に対する改善効果も一部認められるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本来、クエン酸は、細胞の代謝、特にクエン酸サイクルにとって不可欠なものであるが、生物体内でのクエン酸は、ATP生産にとって最も効率の良いクエン酸サイクルの、出発点に位置する有機化合物である。すなわち、すべての生物が生命活動を行うためのエネルギーは、生物エネルギーであるATP(アデノシン5’−三リン酸)に依存しているが、ATPは、食物から摂取した炭水化物(デンプン、ショ糖など)が消化されて生成したグルコースを、呼吸によって得られた酸素で酸化し、水と炭酸ガスに分解する経路から得られる。この経路は、解糖系とクエン酸サイクル(クレブスサイクル、TCAサイクル)の2つから構成されている。
よって、クエン酸は生命活動の維持に欠かせない重要な物質である。
また従来、クエン酸は、酸味等の風味を付与したり、pHを低下させて微生物の増殖を抑制する機能をも有するため、食品や飲料への添加剤として非常に重要な物質である。
本願発明で使用されるクエン酸は、合成品、天然品いずれも使用できるが、天然由来のものが望ましい。また、クエン酸単体化合物でなく、そのアルカリ金属塩を使用することも安定性維持の点から好ましい。
【0009】
今般、本願発明者は以下の実験によりクエン酸の骨粗鬆症発症予防効果を発見した。
すなわち、卵巣摘出(OVX)マウスを使用し、(1)クエン酸(CIT)、(2)クエン酸(CIT)+ビタミンK2(VK2)の効果について実験研究した。
上記(1)、(2)を投与して飼育したOVXマウスと、(3)投与しないで飼育したOVXマウス(OVX−Controlマウス)の3次元的骨梁構造解析の結果、(1)CITマウスは、(3)OVX−Controlマウスに比較して、骨梁数が有意に高値を示し、骨梁間隙が有意に低値を示すなど、骨梁が密になっていた。さらに骨梁の複雑性や連結性も有意に高値を示し、CITには骨梁構造の劣化を抑制する効果(骨粗鬆症発症予防効果)のあることが発見・確認された。
なお、(2)クエン酸(CIT)+ビタミンK2(VK2)マウスでも(3)OVX−Controlマウスと比較して骨粗鬆症発症予防効果が認められたが、相乗効果的なものではなかった。
上記の結果を図1に示す。図は(1)〜(3)のマウスのマイクロCTによる大腿骨遠位骨端部の3D構築画像である。すなわち、卵巣摘出術施行後のラットに各種飼料を給餌して飼育したラットの大腿骨の骨梁構造のマイクロCTによる三次元構築画像である。
図から明らかに見とれるごとく、(3)OVX−Controlマウスは右方に大きな空隙部(暗部)が認められ中身がスカスカであるのに対して、(1)CITマウスは骨梁構造が緻密化している。
また、(2)のマウスについても、良結果が認められる。
なお、本発明の予防剤を人間が摂取する場合、症状、年齢などにより摂取量は異なるが、骨粗鬆症が発症し易い成人の場合、クエン酸摂取量として1000〜2000mg/日が好ましい。
【0010】
今回、本願発明者が発見したクエン酸単独で骨粗鬆症発症予防効果が発揮される機序は、更なる研究解明が必要であるが以下のとおりと推測される。
一般に、カルシウム塩の多くは水に不溶性の物質であり、これらは濃度が少しでも高まると粒子状態となるため、血管への出入りや膜の透過及び骨組織への吸収が妨げられる問題が生じる。
すなわち、日常生活における食事の食品中にはカルシウム分も多く存在するが、多くは吸収されずに排せつされる。
しかるに、クエン酸の摂取により、クエン酸がカルシウムとキレート化合物を形成するが、クエン酸がカルシウムとキレート化合物を形成すると、水溶性となって人体組織の膜への透過が容易となり、骨へのカルシウム運搬も活発になって骨組織への吸収も良好となる。
したがって、通常の食事にクエン酸を添加して摂取しているだけでも、骨の形成が常時進行し、骨粗鬆症の発症が阻止され、あるいは骨の形成が高められることになる。
【0011】
本発明で使用されるクエン酸は、合成品又は天然製品でも良いがレモン、夏蜜柑などから抽出した天然製品が好ましい。
ビタミンKは、ビタミンK1あるいはビタミンK2のいずれでもよく、合成品、天然品いずれも使用できるが、食品として用いる場合、天然由来のものが望ましい。また、ビタミンK2としては、納豆菌に代表される枯草菌由来のビタミンK2が好ましい。
【0012】
本願発明の改善された態様として、更にカルシウムの添加配合が提案されるる。一般に、カルシウム分としての骨粉やビタミンKの骨粗鬆症発症予防効果又は治療効果は周知のとおりであり、カルシウムは骨組織を結合させる機能を有し、ビタミンKはカルシウムを骨へ沈着させるタンパク質であるオステオカルシンを活性化し、骨を造る細胞である骨芽細胞の働きを促進する。
さらに骨の内部構造であるコラーゲン繊維を修復し、整える働きをする。
一方、マグネシウム、リン等の多くのミネラルを含む天然カルシウム源である魚骨微粉末は、腸管からの吸収効率も高く、骨組織を強固にし得るものとされている。従って、骨粗鬆症の予防あるいは治療に際して、ビタミンKとマグネシウムとリンを所定量含む骨微粉末とを組み合わせた組成物を摂取することにより、骨の内部構造強化とその構造へのカルシウム沈着という相乗効果が発揮されるものと推測される。
また、本発明品に利用される骨粉としては、魚骨粉が好ましく、製造方法としては、魚骨を乾燥し、あるいは仮焼した後に粉砕して得られる。
その内、食感、消化吸収性の点からは、粒径が2〜200μm程度に微粉砕したものが特に好ましい。魚の種類も特に制限はなく、ウナギ、サケ、カツオ、アナゴ、アジ、マグロ、アユ、コイ等淡水魚、海水魚いずれのものも使用できるが、ウナギ又はサケの骨粉は特に好ましい。
Mg、P含量は1種の骨粉で上記数値を満足するものが好ましいが、2種以上の骨粉で上記数値を満足させてもよく、Mg、P含量の調整のために魚骨粉以外の骨粉を加えてもよい。
本願発明の骨粗鬆症発症予防剤で、特に好ましい配合組成物はクエン酸とビタミンKと骨粉とからなるもので、それらの好ましい配合比は、クエン酸100重量部に対して、ビタミンK2 0.001〜0.10重量部、骨粉50〜5000重量部である。
【0013】
また、前記クエン酸に加えて、ビタミンK2とMg含量が100mg/100g以上かつP含量が10g/100g以上の骨粉とが共に含まれていることが好ましく、カルシウム、マグネシウム、鉄、マンガン、銅、亜鉛などのミネラルや、ビタミンB群、ビタミンD、ビタミンE、ユビキノンなどのビタミン類、さらに大豆イソフラボン等のイソフラボノイド類やフラボノイド類、カゼインホスホペプチドなどのペプチド類、その他、タンパク質や脂質、糖類、オリゴ糖など骨に対する作用に有効と言われている様々な食品成分や食品添加物、さらには化学薬品が含まれていてもよい。
本発明の骨粗鬆症発症予防剤においては、好ましい乾燥製品の骨粗鬆症発症予防剤(粉末剤の場合)中のクエン酸含有量は10〜90重量%、ビタミンK2含有量は1ppm以上、かつ骨粉含有量は90〜10重量%である。
また、骨粗鬆症発症予防剤の形態は、粉末状、顆粒状、あるいは賦形剤を加えて成形される錠剤タイプ、バータイプ又はスティックタイプのもの、さらには水又はアルコールで溶解した液状物であってもよい。
さらに、本願発明は前記骨粗鬆症発症予防剤を、食品に添加、例えば御飯、パン等の主食食品に又は味噌汁、スープ、サラダ、スナック菓子等の副食食品に添加して、骨粗鬆症発症予防剤含有食品となすことも好ましい。
【実施例】
【0014】
次に、本発明を具体的に説明するために、以下に実施例ならびに製品例を挙げるが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
実施例1
表1に示す配合で、実施例の組成物を調製した。
実験には4週令の雌性ICR系マウスを使用した。
卵巣摘出術を施行、1週間の予備飼育を行った後、4群のグループに分けた。それぞれ下記の表1に示した飼育により3ヶ月間飼育し、17週令で剖検した。 なお、飼育中に混餌するクエン酸としては、pHを略中性に調節するためクエン酸水素ナトリウムを使用した。
クエン酸としては、クエン酸単独でも、カルシウム塩以外の金属クエン酸塩、クエン酸水素塩等を使用してもよい。
【0015】
【表1】

【0016】
a.試験方法の説明
表1に示した飼料をそれぞれ170mgずつ1mlの生理食塩水に懸濁し、マーゲンゾンデを用いて前記(1)〜(3)の各マウスに強制的に経口投与した。 基本の飼料はオリエンタル酵母株式会社のマウス・ラット・ハムスター用固形飼料CRF―1を用い、給餌および吸水方法は自由摂取とした。試験期間中、各群間で餌の摂取量に差は認められなかった。
大腿骨は、接着組織および筋肉を取り除いて分析に使用した。大腿骨の体積を測定した後、エタノールで3回洗浄し、次にアセトンで3回洗浄したのち、一晩乾燥し、その後、重量を測定して大腿骨の乾燥重量を求めた。体積及び乾燥重量から、骨密度(乾燥重量g/体積mm3)を測定した。
【0017】
b.試験結果
骨粗鬆症のモデルとして通常使用される卵巣摘出マウスに対する、クエン酸単独の効果と、クエン酸とビタミンK2と併用の効果は、骨粗鬆症発症予防効果があることが解った。また、骨密度を改善することも解った。
【0018】
なお、本発明の効果を視覚的に表示するためのマウスの大腿骨の骨梁構造のマイクロCTによる三次元構築画像は、前記図1に示すものと同じであった。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】卵巣摘出術施行後のラットに各種飼料を給餌して飼育したマウスの大腿骨の骨梁構造のマイクロCTによる三次元構築画像である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クエン酸を主材として含有する骨粗鬆症発症予防剤。
【請求項2】
クエン酸が、アルカリ金属のクエン酸水素塩であることを特徴とする請求項1記載の骨粗鬆症発症予防剤。
【請求項3】
ビタミンKを添加してなることを特徴とする請求項1又は2記載の骨粗鬆症発症予防剤。
【請求項4】
マグネシウム含量が100mg/100g以上かつリン含量が10g/100g以上の骨粉を添加してなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の骨粗鬆症発症予防剤。
【請求項5】
マグネシウム含量が100mg/100g以上かつリン含量が10g/100g以上の骨粉が、魚骨粉である請求項4に記載の骨粗鬆症発症予防剤。
【請求項6】
骨粉が、ウナギ又はサケの骨の乾燥物を粉砕して得られたものであることを特徴とする請求項4又は5記載の骨粗鬆症発症予防剤。
【請求項7】
骨粗鬆症発症予防剤中のクエン酸とビタミンK2と骨粉との配合比が、クエン酸100重量部に対して、ビタミンK2 0.0001〜0.1重量部、骨粉5〜5000重量部であることを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の骨粗鬆症発症予防剤。
【請求項8】
骨粗鬆症発症予防剤が賦形剤により成形されてなる錠剤タイプ、バータイプ又はスティックタイプのものであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の骨粗鬆症発症予防剤。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の骨粗鬆症発症予防剤が添加されてなる食品。


【図1】
image rotate


【公開番号】特開2006−213627(P2006−213627A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−27053(P2005−27053)
【出願日】平成17年2月2日(2005.2.2)
【出願人】(505041623)
【出願人】(504313468)株式会社 エル・エス・ファクトリー (1)
【出願人】(505041645)
【Fターム(参考)】