説明

骨組織を標的としたベクターとしてのヒドロキシ‐ビスホスホン酸誘導体

本発明は、一般式(I)で表されるヒドロキシ‐ビスホスホン酸誘導体または上記誘導体の薬学上許容される塩と、その製造方法、およびその治療または診断の使用にも関する:


(上記式中、
‐nおよびmは、互いに独立して、1〜4を範囲とする整数を表し、
‐Xは酸素原子またはN‐R3基を表し、
‐R1およびR3は、互いに独立して、直鎖状または分岐状C‐Cアルキル基を表し、並びに
‐R2は治療または診断に関係する分子の残基を表す)。

【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
発明の分野
本発明は、新規ヒドロキシ‐ビスホスホン酸誘導体と、骨組織とを標的としたベクターとしての、それらの使用に関する。
【0002】
背景技術
骨組織は、ヒドロキシアパタイト(Ca10(PO(OH))結晶の形態によるリン酸カルシウムからなる鉱質フラクションと、細胞外マトリックスおよび特殊な細胞を含む有機フラクションとからなる結合組織である。
【0003】
骨組織は、骨リモデリングと称される工程により恒久的に再組織化される。それは、新たな有機マトリックスを合成してその鉱質化を誘導する骨芽細胞の活性による付加成長期(Owen et al.,Curr.Opin.Nephrol.Hypertens.,1998,7,363)と、有機マトリックスを吸収してその鉱質部分を溶かす破骨細胞による分解期(Roodman et al.,Endocr.Rev.,1996,17,308)とにより特徴づけられる。この生理学的工程は、リンカルシウムホメオスタシスおよび骨量を維持して(Manologas et al.,Endocrin.Rev.,2000,21,115)、機械的応力に順応するようにさせる。この均衡のいかなる乱れも、骨大理石病のような骨凝縮病態、または最も多くは、骨粗鬆症のような代謝病態の場合ではなく、腫瘍源(骨肉腫などの原発腫瘍、または骨転移などの二次腫瘍)であることがある溶骨病態の発生と関連する。
【0004】
ビスホスホネート類(ヒドロキシ‐ビスホスホン酸誘導体が属する、塩基形態のビスホスホン酸誘導体)は、内因性ピロホスフェート類の合成アナログであり、そこではP‐O‐P鎖がP‐C‐P鎖により置き換えられており、溶骨の有効な治療手段を表す代謝上安定な化合物へと至る(Heymann et al.,Trends Mol.Med.,2004,10,337)。
【0005】
これらの分子は、何よりもまず、骨組織を標的とするそれらの能力のために用いられた。ピロホスフェート類と同様に、ビスホスホネート類は骨の鉱質部分に強い親和性(リン酸基と骨の鉱質部分のカルシウムとの親和性)を有し、強い用量で石灰化工程を変調させうる。このような物質の利益は、骨代謝の様々な機能不全を治療する上で証明されてきた。ビスホスホネート類は、一方で高カルシウム血症、他方で痛みおよび骨折起源の骨疾患へ至る、過度な骨吸収に伴う病態を治療するために特に用いられる。
【0006】
このように、それらの使用は、骨粗鬆症、腫瘍源、またはそれ以外の高カルシウム血症と、腫瘍溶骨病態、例えば多発性骨髄腫または前立腺の二次骨転移または乳癌とを治療する上で、約10年前から不可欠になってきた。
【0007】
今日までに展開された構造‐活性研究においては、骨吸収を阻害するためのビスホスホネート類の能力が以下の二つの構造要因に依存することが明確に示された:
‐該化合物と骨の鉱質部分との良好な親和性のために不可欠なホスホネート基(およびヒドロキシ‐ビスホスホネート類の場合にはヒドロキシ基)、
‐分子に関連した生物学的活性を決める、分子標的に特異的な側鎖R。
【化1】

【発明の概要】
【0008】
従って、本発明は下記一般式(I)で表されるヒドロキシ‐ビスホスホン酸の新規誘導体またはその薬学上許容される塩に関する:
【化2】

(上記式中、
‐nおよびmは、互いに独立して、1〜4を範囲とする整数を表し、
‐Xは酸素原子またはN‐R3基を表し、
‐R1およびR3は、互いに独立して、直鎖状または分岐状C‐Cアルキル基を表し、並びに
‐R2は治療または診断に関係する分子の残基を表す)。
【0009】
従って、本発明の分子は下記三つの別々な部分からなる:
・骨の鉱質部分に対する官能基の強い親和性により、該分子に骨組織を標的とするヒドロキシ‐ビスホスホン酸官能基に相当する部分C、
・残基R2がグラフト化されてもよい、スペーサーアームである部分B、および最後に
・特に、骨組織の病態の標的治療または更には特にこの骨組織の画像化による診断を可能にする、治療または診断活性のある分子の残基R2に相当する部分A。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、腫瘍細胞の注入後本発明の「単純化分子」1および2で処置されたまたはされていないマウスの生存率、vs これら細胞の注入後の日数を表す。
【図2】図2は、未処置(コントロール)の、あるいは分子4またはゾレドロン酸の二ナトリウム塩で処置された、処置の4週間後におけるマウスのX線写真を示す。
【図3】図3は、骨端部(白矢印)における骨塩密度の増加で特徴づけられる骨退化の阻害効果を証明する、未処置(コントロール)のまたは分子(IV)で処置されたマウスのX線写真を示す。この効果は骨鉱質フラクションに対する分子(IV)の指向性を証明する。
【図4】図4は、分子(IV)またはイホスファミド(対照化学療法分子)でD7に処置されたまたはそれなしの場合における、腫瘍の大きさvs.時間の変化について表す。菱形はコントロール(即ち、処置の不在)を表し、四角は230μmol/kgで用いられたイホスファミドで得られる結果を表し、三角は115μmol/kgで用いられた化合物(IV)で得られる結果を表す。
【図5】図5は、分子(II)の放出スペクトルを表す。
【発明の具体的説明】
【0011】
「治療または診断に関係する分子の残基」とは、本発明の意味において、治療または診断に関係する分子がスペーサーアームにグラフト化されていることを意味する。このように、治療または診断に関係する分子は、スペーサーアームとのカップリング、即ちXH基(‐OHまたは‐NHR3)とのカップリングを可能にする官能基を含んでなる。好ましくは、この官能基はハロゲン原子または‐Z(O)R4基から選択され、ここでZはC、PR5、またはSOを表し、R4はハロゲン原子またはOH、N、またはOC(O)R6基を表し、R5は水素原子またはOR7またはR7基を表し、R6は直鎖状または分岐状C‐Cアルキル基を表し、およびR7は水素原子または直鎖状または分岐状C‐Cアルキル基を表す。この官能基は、酸性特徴の官能基(フェノール、スルホンアミド、スクシンイミド、およびアナログ)、求電子性官能基〔イソ(チオ)シアネート類、アルデヒド類、または更にケトン類〕、または更にミカエル型のアクセプター系、例えばアクリレート類からも選択される。
【0012】
活性成分を長期デリバリーさせるかまたは診断を行うために、スペーサーアームの長さで操作し、特にmおよびnの値で操作することで、分子の活性部分(残基R2)の速い放出を促すか、または対照的にこの活性部分の持続性を確保することが可能となるであろう。
【0013】
他方、スペーサーアームとのカップリングを行うために用いられる治療または診断に関係する分子の官能基に応じて、安定な結合が部分Aと分子の残部との間で得られるが、これは診断向け分子の範囲内で特に興味深いかもしれない。この場合に、官能基は、有利には、先に定義されたような、酸性特徴の官能基、求電子性官能基、およびミカエル型アクセプター系から選択される。
【0014】
「アルキル」基とは、1‐6炭素原子を含む直鎖状または分岐状飽和炭化水素鎖、例えばメチル、エチル、イソプロピル、tert‐ブチル、ペンチル基などを意味する。
【0015】
「ハロゲン原子」とは、フッ素、臭素、塩素、またはヨウ素原子を意味する。
【0016】
「薬学上許容される塩」とは、特に薬学上許容される酸または塩基から得られる塩を意味する。
【0017】
薬学上許容される酸の中では、限定されないが、無機酸、例えばハロゲン化水素酸、例えば塩酸および臭化水素酸、硫酸、硝酸または更にリン酸、あるいは有機酸、例えば酢酸、プロピオン酸、安息香酸、乳酸、ピルビン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、p‐トルエンスルホン酸、サイクラミン酸、サリチル酸、アスパラギン酸、ステアリン酸、または更にパルミチン酸が挙げられる。
【0018】
薬学上許容される塩基の中では、限定されないが、例えばアンモニウム塩、もしくはアルカリまたはアルカリ土類金属、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウムまたは更にカルシウムの塩を形成する無機塩基、あるいは有機塩基、例えばトリエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ピペリジン、または更にモルホリンが挙げられる。
【0019】
有利には、R1はメチル基を表す。しかも、基R3が存在する場合、後者は特にメチル基を表す。
【0020】
nは1、2、3、または4、特に3を表す。
【0021】
特に、本発明のヒドロキシ‐ビスホスホン酸誘導体の残基R2は、蛍光分子の残基、例えば(5‐ジメチルアミノ)ナフタレン‐1‐スルホニル(ダンシル基)残基、7‐ニトロ‐1,2,3‐ベンゾオキサジアゾール(NBD基)残基、またはフルオレセイン、または更に発光分子、例えばジオキセタン誘導体から選択される。相当するヒドロキシ‐ビスホスホン酸誘導体は、特に診断目的で、骨組織の画像化に用いられる。
【0022】
しかも、残基R2は、溶骨または骨凝縮骨リモデリングの病態、例えば原始骨腫瘍(例えば、骨肉腫、軟骨肉腫)、巨細胞腫またはユーイング肉腫、骨転移、多発性骨髄腫、リン‐カルシウム代謝の脱調節、例えば高カルシウム血症、骨粗鬆症、および炎症病態、例えばリウマチ様関節炎または周囲プロテーゼ弛緩の治療または診断に有用な活性成分の残基でもよい。
【0023】
特に、残基R2は、標準化学療法剤、例えばイホスファミド、シスプラチナム、またはドキソルビシンの誘導体、抗炎症剤、例えばコルチコステロイド、例えばデキサメタゾン、または非ステロイド系抗炎症剤、例えばイブプロフェンまたはインドメタシン、および骨前形成または抗吸収活性のあるペプチドから選択される活性成分の残基から選択してもよい。
【0024】
残基R2は、特に、アルキル化抗癌分子、例えばマスタードガスのアナログ、抗新生物分子、例えばドキソルビシン、シスプラチナム、アドリアマイシン、アクチノマイシン、フルオロウラシル、メトトレキサート、エトポシド、ビンクリスチン、ブスルファン、ドセタキセル、5‐フルオロウラシル、およびそれらの誘導体、抗炎症剤、例えばイブプロフェン、インドメタシン、ビンダザック、エトドリン酸、ロナゾラク、およびそれらの誘導体、ステロイド、例えばエストラジオール、エストロン、およびデキサメタゾンの誘導体から選択される治療関係の分子から派生してもよい。
【0025】
残基R2は、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、シアニン誘導体、例えばフルオレスシアニン類およびガロシアニン、アルカリ、またはアルカリ土類スルフィド類およびダンシルから選択される診断関係の分子からも派生しうる。
【0026】
更に詳しくは診断向けの、本発明のヒドロキシ‐ビスホスホン酸誘導体の例は、このため下記式(II)で表される:
【化3】

該式は:
‐n=3、
‐m=1、
‐X=NMe、
‐R1=Me、および
‐R2=
【化4】

(フルオレセインの場合はダンシル基)
である前記式(I)に相当する。
【0027】
更に詳しくは治療向けの、本発明のヒドロキシ‐ビスホスホン酸誘導体の例は以下である:
【化5】

(潜在的アルキル化抗腫瘍分子:悪性高カルシウム血症、原始骨腫瘍、および骨転移へ考えられる適用症)、
【化6】

(潜在的アルキル化抗腫瘍分子:悪性高カルシウム血症、原始骨腫瘍、および骨転移へ考えられる適用症)、
【化7】

〔抗炎症官能基のある分子、適用症:リウマチ様関節炎、インドメタシン(非ステロイド系抗炎症剤、NSAI)から製造される〕、並びに
【化8】

(ホルモン/エストロゲン官能基のある分子、適用症:骨粗鬆症、エストラジオール誘導体から製造される)。
【0028】
本発明は、特に標的骨組織に向けた、薬剤としてまたは診断剤としてその使用のための、上記ヒドロキシ‐ビスホスホン酸の誘導体またはその薬学上許容される塩にも関する。
【0029】
本発明は、骨組織を標的とした医薬または診断用組成物を製造するための、本発明のヒドロキシ‐ビスホスホン酸誘導体またはその薬学上許容される塩の使用にも関する。
【0030】
特に、本発明のヒドロキシ‐ビスホスホン酸誘導体は骨組織の画像化のために、あるいは溶骨または骨凝縮骨リモデリングの病態、例えば原始骨腫瘍(例えば、骨肉腫、軟骨肉腫、巨細胞腫またはユーイング肉腫)、骨転移、多発性骨髄腫、リン‐カルシウム代謝の脱調節、例えば高カルシウム血症、骨粗鬆症、および炎症病態、例えばリウマチ様関節炎または周囲プロテーゼ弛緩を治療または診断するために用いられる。
【0031】
第一の態様によると、ヒドロキシ‐ビスホスホン酸誘導体は骨組織を画像化するために用いられる。
【0032】
第二の態様によると、ヒドロキシ‐ビスホスホン酸誘導体は、抗腫瘍治療において、特に悪性高カルシウム血症、原始骨腫瘍、および骨転移を治療するために用いられる。
【0033】
第三の態様によると、ヒドロキシ‐ビスホスホン酸誘導体は、骨粗鬆症の治療または抗炎症治療において、特にリウマチ様関節炎を治療するために用いられる。
【0034】
具体的な態様において、R2基の放出性を確保するために、および骨組織でその作用を可能にするために、m=1およびX=0が選択される。
【0035】
他の具体的な態様において、m≧2がR2基の持続性を確保するために選択され、後者が分子の残部でより安定的に結合されることにより、骨組織の画像化で可能な使用をなしうる。
【0036】
本発明は更に、先に記載されたような、本発明の少なくとも一種のヒドロキシ‐ビスホスホン酸誘導体またはその薬学上許容される塩と、少なくとも一種の薬学上許容される担体とを含んでなる、医薬または診断用組成物に関する。
【0037】
この組成物は、特に皮下、静脈内、経口、筋肉内、または経皮経路により、即ち、好ましくは注射溶液としてまたはパッチとして、その投与を行えるように処方される。
【0038】
本発明の目的は、薬剤としてまたは診断剤としてその使用のための、先に定義されたような医薬または診断用組成物でもある。
【0039】
特に、本発明の組成物は、骨組織の画像化のために、あるいは溶骨または骨凝縮骨リモデリングの病態、例えば原始骨腫瘍、例えば骨肉腫、軟骨肉腫、巨細胞腫またはユーイング肉腫、骨転移、多発性骨髄腫、リン‐カルシウム代謝の脱調節、例えば高カルシウム血症、骨粗鬆症、および炎症病態、例えばリウマチ様関節炎または周囲プロテーゼ弛緩を治療または診断するために用いられる。
【0040】
第一の態様によると、診断用組成物は骨組織を画像化するために用いられる。
【0041】
第二の態様によると、治療用組成物は抗腫瘍治療で、特に悪性高カルシウム血症、原始骨腫瘍、および骨転移を治療するために用いられる。
【0042】
第三の態様によると、治療用組成物は骨粗鬆症の治療で、または抗炎症治療で、特にリウマチ様関節炎を治療するために用いられる。
【0043】
本発明の化合物は、下記の連続工程に従い製造される:
(a)下記式(B)の化合物:
【化9】

(上記式中、R1、R2、X、n、m、およびAlkは先に定義された通りである)を得るために、下記式(A)の化合物:
【化10】

(上記式中、R1、X、n、およびmは先に定義された通りであり、Alkは直鎖状または分岐状C‐Cアルキル基、特にtert‐ブチル基を表す)と、残基R2に相当する治療または診断に関係する分子とのカップリング、
(b)下記式(C)の化合物:
【化11】

(上記式中、R1、R2、X、n、およびmは先に定義された通りである)とを得るために、前工程(a)で得られた式(B)の化合物の末端エステルのケン化、
(c)式(I)の化合物を得るために、前工程で得られた式(C)の化合物の遊離カルボン酸官能基からヒドロキシ‐ビスホスホン酸官能基への変換、
(d)場合により、後者の薬学上許容される塩を得るために、前工程(c)で得られた式(I)の化合物の塩化、並びに
(e)前工程(c)または(d)で得られた式(I)の化合物またはその薬学上許容される塩の一種の反応媒体からの分離。
【0044】
工程(a)
このカップリング工程は、当業者に周知の技術により、式(A)の化合物のXH(即ち、OHまたはOHR3)官能基と、先に定義された治療または診断に関係する分子の官能基との間で行われる。
【0045】
これは、とりわけ、特に治療または診断に関係するハロゲン化、特に塩素化または臭素化された分子と、式(A)の化合物のXH官能基との間における、求核置換である。このような反応は、有利には、NaHCOまたは更にNaHMDS(ヘキサメチルジシラザンナトリウム)の塩基の存在下において行われてもよい。
【0046】
これは、治療または診断に関係する分子により有されるカルボン酸官能基と、式(A)の化合物により有される官能基XHとのペプチドカップリングでもよい。このような反応は、有利には、場合によりカップリング補助剤と一緒に、カップリング剤の存在下において行われてもよい。
【0047】
カップリング剤としては、特に、ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1‐(3‐ジメチルアミノプロピル)‐3‐エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)、カルボニルジイミダゾール(CDI)、2‐(H‐ベンゾトリアゾール‐1‐イル)‐1,1,3,3‐テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)、2‐(1H‐ベンゾトリアゾール‐1‐イル)‐1,1,3,3‐テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TBTU)、またはO‐(7‐アゾベンゾトリアゾール‐1‐イル)‐1,1,3,3‐テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HATU)がある。
【0048】
カップリング補助剤は、特に、N‐ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、N‐ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、3,4‐ジヒドロ‐3‐ヒドロキシ‐4‐オキソ‐1,2,3‐ベンゾトリアゾール(HOOBt)、1‐ヒドロキシ‐7‐アザベンゾトリアゾール(HOAt)、ジメチルアミノピリジン(DMAP)、またはN‐ヒドロキシスルホスクシンイミド(スルホNHS)から選択される。
【0049】
工程(b)
この工程は、トリフルオロ酢酸、ギ酸、酢酸、塩酸、硫酸などの酸の存在下において、特にトリフルオロ酢酸と行われる。
【0050】
工程(c)
この工程は当業者に周知の技術により行われる。
【0051】
それは、特に、カテコールボランのようなボランの作用によりボロネート誘導体の形で化合物(C)のカルボン酸官能基の活性化により、次いでトリス(トリメチルシリル)ホスファイトとアルブゾフ条件下の反応により、その後でメタノールのような脂肪族アルコールとの処理により行われる。
【0052】
「脂肪族アルコール」とは、有利には1〜6、好ましくは1〜4の炭素原子を含む、直鎖状または分岐状の飽和または不飽和炭化水素鎖に、アルコール官能基OHを含んだ化合物を意味する。
【0053】
工程(d)
ケン化工程は、先に定義されたような薬学上許容される酸または塩基の存在下において行われる。
【0054】
工程(e)
こうして得られた式(I)の化合物は、当業者に周知の方法により、例えば抽出、溶媒の蒸発により、または更に沈殿および濾過により、反応媒体から分離されてもよい。
【0055】
更に、この化合物は、必要であれば当業者に周知の技術により、例えば化合物が結晶であれば再結晶化により、シリカゲルでカラムクロマトグラフィーにより、または更には高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)により精製される。
【0056】
出発試薬として用いられる式(A)の化合物は、当業者に周知の技術により製造される。
【0057】
それは、特に下記連続工程に従い製造される:
(a1)下記式(F)の化合物:
【化12】

(上記式中、n、m、およびHalは先に定義された通りである)を得るために、下記式(D)の化合物:
【化13】

(上記式中、mは先に定義された通りである)と、下記式(E)の分子:
【化14】

(上記式中、nは先に定義された通りであり、Halはハロゲン原子、特に臭素を表す)との反応、
(b1)下記式(A1)の化合物:
【化15】

(上記式中、n、m、R1、およびAlkは先に定義された通りである)を得るために、前工程(a1)で得られた式(F)の化合物と、下記式(G)の化合物:
【化16】

(上記式中、R1およびAlkは先に定義された通りである)との反応、および
(c1)場合により、下記式(A2)の化合物:
【化17】

(上記式中、n、m、R1、R3、およびAlkは先に定義された通りである)を得るために、前工程(b1)で得られた式(A1)の化合物の遊離OH官能基のアミノ化。
【0058】
工程(a1)
このカップリング反応は、有利には、KCOなどの塩基の存在下で行われる。
【0059】
出発製品((D)および(E))は市販品であるか、または当業者に周知の技術により製造される。
【0060】
工程(b1)
この工程も、有利には、KCOなどの塩基の存在下において行われる。
【0061】
試薬(G)は、下記実施例で説明されている、当業者に周知の方法により容易に合成される。
【0062】
工程(c1)
この任意工程においては、X=NR3の式(A)の化合物を入手することが可能である。
【0063】
この工程は、当業者に周知の操作に従い行われる。
【0064】
このように、遊離OH基は(特に、トリエチルアミンのような塩基の存在下で塩化メシルの作用により)メシレートのような脱離基へ変換されてもよく、次いでこの脱離基がアミンR3NHで置換される。
【0065】
用いられる頭字語:
DCM ジクロロメタン
DMF ジメチルホルムアミド
eq. 当量
HMDS ヘキサメチルシラザン
HRMS 高分解能質量スペクトル
ppm 部/百万
PTSA パラ‐トルエンスルホン酸
NMR 核磁気共鳴
RT 室温
TEA トリエチルアミン
THF テトラヒドロフラン
【実施例】
【0066】
1.分子の合成
1.1.式(II)の分子の合成
式(II)の分子の合成は、下記反応スキームに従い、3‐ヒドロキシベンズアルデヒドおよびN‐メチル‐3‐アミノプロパン酸tert‐ブチルから8工程により行った:
【化18】

【0067】
3‐(ヒドロキシ)ベンジルアルコール:
【化19】

冷水で反応混合液を冷やしながら、NaBH(775mg,20.5mmol)をEtOH(25mL)中3‐ヒドロキシベンズアルデヒド(5g,40.9mmol)の溶液へ徐々に加える。この混合液を同温度で5〜10分間攪拌する。次いで、ジクロロメタン(DCM)(100mL)、その後2M HCl水溶液(pH〜3まで)を加える。有機相を分離し、最終生成物を1:3の割合のEtOH/DCM混合液で水相から4回抽出する。集められた有機相をNaSOで乾燥させる。減圧下で溶媒の蒸発後、粘稠無色油状物(4.9g,97%)を得るが、これは徐々に結晶化する。
H NMR(CDOD,300MHz)δ,ppm:7.13(1H,t,J=9Hz);6.90‐6.72(2H,m);6.71‐6.60(1H,m);4.83(2H,s);4.53(2H,s).
13C NMR(CDOD,300MHz)δ,ppm:158.65;144.37;130.49;119.22;115.26;114.90;65.29.
【0068】
〔3‐(3‐ブロモプロポキシ)フェニル〕メタノール:
【化20】

予め65℃で5分間攪拌されたジメチルホルムアミド(DMF)(30mL)中KCO(3.2g,23mmol)および3‐(ヒドロキシメチル)フェノール(5g,40.3mmol)の懸濁液へ1,3‐ジブロモプロパン(23mL,0.22mol)を徐々に加える。反応媒体を同温度で45分間にわたり攪拌下で維持する。室温(RT)へ冷却後、EtO(150mL)を加え、有機相を飽和NaCl水溶液で4回抽出する。有機相をNaSOで乾燥させる。減圧下で溶媒の蒸発後、粘稠無色油状物(6.7g,68%)を得るが、これは徐々に結晶化する。
H NMR(CDCl,300MHz)δ,ppm:7.22(1H,t,J=9Hz);6.94‐6.83(2H,m);6.82‐6.73(1H,dd,J=9Hz,J=3Hz);4.58(2H,s);4.05(2H,t,J=6Hz);3.56(2H,t,J=6Hz);2.46(1H,br,s);2.27(2H,q,J=6Hz).
13C NMR(CDCl,300MHz)δ,ppm:159.00;142.74;129.68;119.44;113.82;113.01;65.41;65.05;32.46;30.17.
【0069】
3‐(メチルアミノ)プロパン酸tert‐ブチル:
【化21】

DMF(40mL)、メチルアンモニウムクロリド(4.9g,72mmol)、および1,8‐ジアザビシクロ〔5.4.0〕ウンデカ‐7‐エン(DBU)(21mL,144mmol)から得られた均質溶液へ−45℃でtert‐ブチルアクリレート(3.08g,3.52mL,24mmol)を徐々に加える。反応媒体を−10℃で2時間30分にわたり攪拌下で維持する。次いでEtO(200mL)を加え、反応混合液を飽和NaCl水溶液で4回抽出する。有機相をNaSOで乾燥させる。減圧下30℃で溶媒の蒸発後、無色油状物を得る(3.6g,94%)。
H NMR(CDCl,300MHz)δ,ppm:2.75(2H,t,J=6Hz);2.42‐2.32(5H,m);1.40(9H,s).
13C NMR(CDCl,300MHz)δ,ppm:171.97;80.18;47.24;36.16;35.57;27.99.
【0070】
3‐〔〔3‐〔3‐(ヒドロキシメチル)フェノキシ〕プロピル〕(メチル)アミノ〕プロパン酸tert‐ブチル:
【化22】

触媒量のNaIを含有したDMF(50mL)中〔3‐(3‐ブロモプロポキシ)フェニル〕メタノール(1.8g,7.3mmol)および3‐(メチルアミノ)プロパン酸tert‐ブチル(1.75g,11mmol)の溶液へRTでKCO(1g,7.3mmol)を加える。この混合液をアルゴン下同温度で48時間攪拌する。次いでEtO(200mL)を加え、この溶液を飽和NaCl水溶液で4回抽出する。有機相をNaSOで乾燥させる。シリカでクロマトグラフィー(溶離液‐DCM:MeOH=100:1)および減圧下30℃で溶媒の蒸発後、無色油状物を得る(1.46g,62%)。
H NMR(CDCl,300MHz)δ,ppm:7.18(1H,t,J=9Hz);6.93‐6.80(2H,m);6.79‐6.68(1H,dd,J=9Hz,J=3Hz);4.57(2H,s);3.92(2H,t,J=6Hz);3.22(1H,br s);2.62(2H,t,J=6Hz);2.45(2H,t,J=6Hz);2.32(2H,t,J=6Hz);2.17(3H,s);1.86(2H,q,J=6Hz);1.39(9H,s).
13C NMR(CDCl,300MHz)δ,ppm:172.12;159.30;143.04;129.52;119.07;113.74;112.91;80.51;66.15;64.95;54.07;52.96;41.98;33.62;28.20;27.17.
【0071】
3‐〔メチル〔3‐〔3‐〔(メチルアミノ)メチル〕フェノキシ〕プロピル〕アミノ〕プロパン酸tert‐ブチル:
【化23】

ジクロロメタン(20mL)中、3‐〔〔3‐〔3‐(ヒドロキシメチル)フェノキシ〕プロピル〕(メチル)アミノ〕プロパン酸tert‐ブチル(465mg,1.44mmol)、およびトリエチルアミン(TEA)(1.4mL,10mmol)の溶液へ−78℃でメタンスルホニルクロリド(MsCl)(0.555mL,7.2mmol)を徐々に加える。この混合液をアルゴン下同温度で1時間30分攪拌する。次いでメチルアミン(ジクロロメタン中0.65M溶液,22mL,14.3mmol)を加える。混合液を室温へ戻し、この温度で更に1時間攪拌する。得られた混合液をNaClとNaHCOの混合水溶液で4回抽出する。有機相をNaSOで乾燥させる。減圧下で溶媒の蒸発後、最終粗生成物を無色油状物(455mg,94%)として得るが、これは次の工程でいかなる追加精製もなく用いられる。
H NMR(CDCl,300MHz)δ,ppm:7.30(1H,t,J=8Hz);7.11(1H,s);7.02(1H,d,J=6Hz);6.96(1H,d,J=6Hz);4.55(2H,s);4.07(2H,t,J=6Hz);3.0‐2.83(4H,m);2.69(3H,s);2.60(2H,t,J=6Hz);2.52(3H,s);2.10(2H,q,J=6Hz);1.40(9H,s).
13C NMR DEPT‐135(CDCl,300MHz)δ,ppm:130.49;124.30;118.92;116.54;66.11;61.06;53.83;52.65;41.52;39.54;32.87;28.06;26.32.
【0072】
3‐〔〔3‐〔3‐〔〔〔5‐(ジメチルアミノ)ナフタレン‐1‐イル〕(メチル)アミノ〕メチル〕フェノキシ〕プロピル〕(メチル)アミノ〕プロパン酸tert‐ブチル:
【化24】

アセトニトリル(35mL)中、粗3‐〔メチル〔3‐〔3‐〔(メチルアミノ)メチル〕フェノキシ〕プロピル〕アミノ〕プロパン酸tert‐ブチル(455mg,1.35mmol)および塩化ダンシル(364mg,1.35mmol)の溶液へRTで水中NaHCO溶液(133mg,1.58mmol)を加える。この混合液をアルゴン下同温度で1時間30分攪拌する。次いで溶媒を減圧下で蒸発させ、得られた油状物をシリカゲルでクロマトグラフィーにより精製する(溶離液‐DCM、次いでDCM:MeOH=100:1の混合液)。最終生成物を蛍光淡緑色非晶ゴム状物として得る(522mg,68%)。
H NMR(CDCl,300MHz)δ,ppm:8.58(1H,d,J=9Hz);8.46(1H,d,J=9Hz);8.26(1H,d,J=6Hz);7.65‐7.50(2H,m);7.28‐7.15(2H,m);6.87‐6.70(3H,m);4.32(2H,s);3.87(2H,t,J=6Hz);2.92(6H,s);2.80‐2.63(5H,m);2.55(2H,t,J=6Hz);2.43(2H,t,J=6Hz);2.29(3H,s);1.93(2H,q,J=6Hz);1.46(9H,s).
13C NMR(CDCl,300MHz)δ,ppm:172.08;159.47;151.97;137.52;134.07;130.72;130.46;130.42;130.27;129.70;128.27;123.37;120.70;119.91;115.36;114.38;114.13;80.55;66.07;54.18;53.65;53.13;45.61;42.08;33.91;33.77;28.28;27.24.
【0073】
3‐〔〔3‐〔3‐〔〔5‐(ジメチルアミノ)‐N‐メチルナフタレン‐1‐スルホンアミド〕メチル〕フェノキシ〕プロピル〕(メチル)アミノ〕プロパン酸:
【化25】

ジクロロメタン(4mL)中、3‐〔〔3‐〔3‐〔〔〔5‐(ジメチルアミノ)ナフタレン‐1‐イル〕(メチル)アミノ〕メチル〕フェノキシ〕プロピル〕(メチル)アミノ〕プロパン酸tert‐ブチル(100mg,0.175mmol)の溶液へRTでトリフルオロ酢酸(2mL)を加える。この混合液を同温度で4.5時間攪拌する。次いで溶媒を減圧下でジクロロメタンと共蒸発させ、得られた油状物をシリカゲルのカラムでクロマトグラフィーにより精製する(溶離液‐DCM、次いで混合液DCM:MeOH=10:1)。最終生成物を蛍光淡緑色非晶ゴム状物として得る(90mg,99%)。
H NMR(CDCl‐MeOD,300MHz)δ,ppm:8.60‐8.45(2H,m);8.17(1H,d,J=6Hz);7.65‐7.50(2H,m);7.37(1H,d,J=6Hz);7.12(1H,t,J=6Hz);6.80‐6.65(3H,m);4.25(2H,s);3.87(2H,t,J=6Hz);3.35‐3.10(4H,m);3.00(6H,s);2.85‐2.70(5H,m);2.65(3H,s);2.14(2H,m).
13C NMR(CDCl‐MeOD,300MHz)δ,ppm:172.23;158.51;148.22;137.45;134.27;130.28;130.11;129.77;129.47;129.02;128.02;124.32;121.80;121.18;116.38;114.03;113.93;64.46;54.39;53.42;51.81;45.76;40.18;33.95;28.84;23.89.
【0074】
3‐〔〔3‐〔3‐〔(5‐ジメチルアミノ)‐N‐メチルナフタレン‐1‐スルホンアミド〕メチル〕フェノキシ〕プロピル(メチル)アミノ〕‐1‐ヒドロプロパン‐1,1‐ジイルジホスホン酸(II):
【化26】

カテコールボランの溶液(THF中1M,1.07mL,1.07mmol,6.1eq.)を乾燥条件下RTでアルゴン下3‐〔〔3‐〔3‐〔〔5‐(ジメチルアミノ)‐N‐メチルナフタレン‐1‐スルホンアミド〕メチル〕フェノキシ〕プロピル〕(メチル)アミノ〕プロパン酸(90mg,0.175mmol,1eq.)へ加えた。この混合液をガス発生(H)の終了まで同温度で1時間攪拌する。次いでP(OSiMe(371mg,1.24mmol,7.1eq.)をそのまま加え、攪拌を16時間維持した。メタノール(0.5mL)を加え、反応媒体を1時間攪拌し、次いでDCM(15mL)で希釈する。白色沈殿物が生成する。それを濾過し、DCMで速やかにすすぎ、アルゴン下で乾燥させる。60mgの吸湿性蛍光白色粉末を得たが、これはシリカゲルカラムで精製される(シリカゲル100 C18‐逆相,溶離液HO:MeOH)。
H NMR(DO‐Py‐DMSO‐MeOD,300MHz)δ,ppm:8.33(1H,d,J=6Hz);8.17(1H,d,J=6Hz);8.02(1H,d,J=6Hz);7.60‐7.40(2H,m);7.11(1H,d,J=6Hz);7.05(1H,t,J=6Hz);6.73(1H,d,J=6Hz);6.64(1H,d,J=6Hz);6.59(1H,s);4.13(2H,s);3.79(2H,t,J=6Hz);3.37(2H,m);2.78(3H,s);2.64(6H,s);2.56(3H,s);2.55‐2.20(4H,m);2.08(2H,m).
13C NMR(DO,300MHz)δ,ppm:158.25;151.26;137.14;133.93;130.06(sl);129.74(sl);129.38;128.20(sl);126.51(sl);123.53(sl);120.50(sl);119.17(sl);115.17(sl);114.24(sl);113.84(sl);72.12(t,J=132Hz);64.81;53.50;53.04;44.71;39.29;38.74;33.60;28.07;23.64.
31P NMR(DO‐Py‐DMSO‐MeOD,300MHz)δ,ppm:16.
HRMS(ES)(m/z):〔M+H〕273910Sの計算値660.1910,実測値660.1911.
【0075】
1.2.式(III)の分子の合成
合成は分子3から行うが、その合成操作は後に記載されている(1.4.参照)。
【0076】
3‐〔〔3‐〔3‐〔〔アミノ〔ビス(2‐クロロエチル)アミノ〕ホスホリルオキシ〕メチル〕フェノキシ〕プロピル〕(メチル)アミノ〕プロパン酸:
【化27】

トリフルオロ酢酸(TFA)(20mL)をMeNO(160mL)中分子3(1.08g,2.05mmol)の溶液へ加え、得られた溶液をRTで30分間攪拌する。溶媒をRTで10分間蒸発させ、40℃で乾燥蒸発させ、次いでDCMへ入れて痕跡量のTFAを除去させる。残渣をシリカゲルカラムで速やかにクロマトグラフィー(40cm,DCMからDCM/MeOH(1:1)への勾配)に付して、無色油状物を得る(267mg,33%)。
H NMR(CDOD,300MHz)δ,ppm:7.29(1H,t,J=7Hz),7.08‐6.87(3H,m),4.96(2H,d,J=8Hz),4.14(2H,t,J=7Hz),3.70‐3.55(4H,m),3.50‐3.30(8H,m),2.89(3H,s),2.59(2H,t,J=7Hz),2.26(2H,m).
13C NMR(CDOD,300MHz)δ,ppm:177.63;160.24;140.12(d,J=7Hz);130.88;121.45;115.61;114.86;68.09(d,J=5Hz);66.36;55.20;55.04;50.81(d,J=5Hz);43.24;40.35;31.22;25.57.
31P NMR(DO,300MHz)δ,ppm:20.
HRMS(ES)(m/z):〔M+H〕1830ClPの計算値470.1378,実測値470.1377.
【0077】
3‐〔〔3‐〔3‐〔〔アミノ〔ビス(2‐クロロエチル)アミノ〕ホスホリルオキシ〕メチル〕フェノキシ〕プロピル〕(メチル)アミノ〕‐1‐ヒドロプロパン‐1,1‐ジイルジホスホン酸(III):
【化28】

分子(II)の合成(最終工程)に用いられたものと同様の操作を適用するが、但し6.5mLのTHF中230mgの3‐〔〔3‐〔3‐〔〔アミノ〔ビス(2‐クロロエチル)アミノ〕ホスホリルオキシ〕メチル〕フェノキシ〕プロピル〕(メチル)アミノ〕プロパン酸、5.1eq.mol.のカテコールボランおよび6.1eq.mol.のP(OSiMeの溶液を用いることによる。無色生成物を32%の収率で単離する。
H NMR(DO,300MHz)δ,ppm:7.36(1H,t,J=7Hz),7.11‐6.92(3H,m),4.97(2H,d,J=8Hz),4.15(2H,t,J=7Hz),3.72‐3.56(4H,m),3.56‐3.10(8H,m),2.86(3H,s),2.33(2H,m),2.21(2H,m).
13C NMR(DO,300MHz)δ,ppm:158.16;138.10(d,J=7Hz);130.19;120.82;115.00;113.98;72.10(t,c‐p=130Hz);67.31(d,J=5Hz);65.35;53.62;53.29(t,J=7Hz);47.93(d,J=5Hz);42.06;39.55;27.95;23.67.
31P NMR(DO,300MHz)δ,ppm:20(1P),18(2P).
HRMS(ES)(m/z):〔M+H〕1834Cl10の計算値638.0734,実測値638.0733.
【0078】
1.3.式(IV)の分子の合成
2‐〔3‐(3‐ブロモプロポキシ)ベンジルオキシ〕エタノール:
【化29】

エチレングリコール(180mL)中、3‐(ヒドロキシメチル)フェノール(8.8g,71mmol)およびパラトルエンスルホン酸(PTSA)(2.3g,13.4mmol)の溶液をアルゴン下で130℃へ40時間加熱する。80℃へ冷却後、KCO(13g,94mmol)、次いで1,3‐ジブロモプロパン(42mL,386mmol)を加える。この温度で2時間の攪拌後、反応液をRTに冷却し、DCM‐HO混合液で抽出する。次いで有機相を水で数回洗浄し、NaSOで乾燥させ、真空下で濃縮する。最終粗生成物を黄色油状物(14g,2工程で68%)として得、これを更なる精製なしに用いる。
H NMR(CDCl,300MHz)δ,ppm:7.28(1H,t,J=7Hz),7.00‐6.90(2H,m),6.85(1H,dd,J=3Hz,J=7Hz),4.54(2H,s),4.11(2H,t,J=7Hz),3.77(2H,t,J=6Hz),3.68‐3.52(4H,m),2.62(1H,br s),2.32(2H,q,J=7Hz).
13C NMR(CDCl,300MHz)δ,ppm:158.97;139.73;129.66;120.36;113.95;113.92;73.20;71.56;65.35;61.91;32.46;30.21.
【0079】
3‐〔〔3‐〔3‐〔(2‐ヒドロキシエトキシ)メチル〕フェノキシ〕プロピル〕(メチル)アミノ〕プロパン酸tert‐ブチル:
【化30】

3‐〔〔3‐〔3‐(ヒドロキシメチル)フェノキシ〕プロピル〕(メチル)アミノ〕プロパン酸tert‐ブチルの製造について記載されたものと同様の操作を適用する。無色生成物を68%の収率で単離する。
H NMR(CDCl,300MHz)δ,ppm:7.20(1H,t,J=7Hz),6.90‐6.81(2H,m),6.78(1H,dd,J=3Hz,J=7Hz),4.48(2H,s),3.96(2H,t,J=7Hz),3.71(2H,t,J=6Hz),3.54(2H,t,J=6Hz),2.65(2H,t,J=7Hz),2.59(1H,br s),2.49(2H,t,J=7Hz),2.35(2H,t,J=7Hz),2.21(3H,s),1.90(2H,q,J=7Hz),1.40(9H,s).
13C NMR(CDCl,300MHz)δ,ppm:172.13;159.32;139.69;129.54;119.97;113.97;113.87;80.46;73.26;71.56;66.17;61.93;54.11;53.10;42.08;33.78;28.23;27.28.
【0080】
N‐〔3‐〔3‐〔6‐アミノ‐9‐クロロ‐7‐(2‐クロロエチル)‐6‐オキシド‐2,5‐ジオキサ‐7‐アザ‐6‐ホスファノン‐1‐イル〕フェノキシ〕プロピル〕‐N‐メチル‐β‐アラニン酸tert‐ブチル:
【化31】

分子3の製造について記載されたものと同様の操作を適用する。無色生成物を65%の収率で単離する。
H NMR(CDCl,300MHz)δ,ppm:7.20(1H,t,J=7Hz),6.91‐6.81(2H,m),6.78(1H,dd,J=3Hz,J=7Hz),4.48(2H,s),4.19(1H,m),4.02(1H,m),3.95(2H,t,J=7Hz),3.70‐3.50(6H,m),3.97‐3.28(4H,m),3.06(2H,br d,J=3Hz),2.65(2H,t,J=7Hz),2.50(2H,t,J=7Hz),2.35(2H,t,J=7Hz),2.21(3H,s),1.90(2H,q,J=7Hz),1.39(9H,s).
13C NMR(CDCl,300MHz)δ,ppm:172.07;159.34;139.23;129.65;120.05;114.05;114.02;80.48;73.28;69.53(d,J=6Hz);66.18;64.75(d,J=4Hz);54.11;53.11;49.62;49.57;42.68;42.05;33.77;28.23;27.28.
【0081】
N‐〔3‐〔3‐〔6‐アミノ‐9‐クロロ‐7‐(2‐クロロエチル)‐6‐オキシド‐2,5‐ジオキサ‐7‐アザ‐6‐ホスファノン‐1‐イル〕フェノキシ〕プロピル〕‐N‐メチル‐β‐アラニン:
【化32】

3‐〔〔3‐〔3‐〔〔アミノ〔ビス(2‐クロロエチル)アミノ〕ホスホリルオキシ〕メチル〕フェノキシ〕プロピル〕(メチル)アミノ〕プロパン酸の製造について記載されたものと同様の操作を適用する。無色生成物を73%の収率で単離する。
H NMR(CDOD,300MHz)δ,ppm:7.26(1H,t,J=1Hz),7.02‐6.92(2H,m),6.89(1H,dd,J=3Hz,J=7Hz),4.54(2H,s),4.60‐4.02(4H,m),3.77‐3.56(6H,m),3.50‐3.30(8H,m),2.89(3H,s),2.59(2H,t,J=7Hz),2.25(2H,m).
13C NMR(CDOD,300MHz)δ,ppm:177.58;160.22;141.26;130.73;121.80;115.18;115.10;74.12;70.73(d,J=7Hz);66.27;66.03(d,J=4Hz);55.18;54.99;50.88;43.28;40.40;31.26;25.59.
【0082】
〔3‐〔〔3‐〔3‐〔6‐アミノ‐9‐クロロ‐7‐(2‐クロロエチル)‐6‐オキシド‐2,5‐ジオキサ‐7‐アザ‐6‐ホスファノン‐1‐イル〕フェノキシ〕プロピル〕(メチル)アミノ〕‐1‐ヒドロキシプロパン‐1,1‐ジイル〕ジホスホン酸(IV):
【化33】

〔3‐〔〔3‐〔3‐〔〔アミノ〔ビス(2‐クロロエチル)アミノ〕ホスホリルオキシ〕メチル〕フェノキシ〕プロピル〕(メチル)アミノ〕‐1‐ヒドロキシプロパン‐1,1‐ジイル〕ビスホスホン酸の製造に用いられたものと同様の操作を適用する。無色生成物を47%の収率で単離する。
H NMR(DO,300MHz)δ,ppm:7.38(1H,t,J=7Hz),7.13‐6.91(3H,m),4.59(2H,s),4.30‐4.00(4H,m),3.78(2H,m),3.72‐3.60(4H,m),3.60‐3.20(8H,m),2.88(3H,s),2.35(2H,m),2.24(2H,m).
13C NMR(DO,300MHz)δ,ppm:158.13;139.11;130.07;121.47;114.63;72.58;72.11(t,C‐P=130Hz);69.00(d,J=7Hz);65.34;64.84(d,J=4Hz);53.65;53.32(t,J=6Hz);47.97;47.92;42.08;39.56;27.96;23.71.
31P NMR(DO,300MHz)δ,ppm:20(1P),18(2P).
HRMS(ES)(m/z):〔M+H〕2038Cl11の計算値658.1018,実測値658.1018.
【0083】
1.4.本発明の単純化分子の合成
分子1:
【化34】

コンデンサーおよび磁気攪拌器を装備した氷浴(0℃)で冷却されたフラスコ中において、不活性雰囲気下、484mgのヘキサメチルジシラザン(3mmol,1eq.)を10mLの無水THF中で溶液にする。0℃で2.0mLのnBuLi(ヘキサン中1.6M)の添加後10分間で、1.2eq.のこの溶液を、10mLの無水THF中に溶液で324mgのベンジルアルコール(3mmol,1eq.)を含有するフラスコ中へ、カニュレーションにより移す。0℃で10分間後、こうして形成されたアルコラートを、20mLの無水THFに溶解された777mgのジクロロ‐N,N‐ビス(2‐クロロエチル)ホスホルアミド(3mmol,1eq.)を含有するフラスコ中へ、カニュレーションにより移す。攪拌を0℃で2時間続ける。−78℃で冷却後、反応媒体をアンモニアガス吹込みに30分間付す。溶媒の減圧下蒸発前に、溶液中溶解アンモニアの脱気をRTで30分間行う。生成物をシリカゲルカラムでクロマトグラフィー(溶離液:CHCl/MeOH=98:2)により直接精製する。冷却条件(フリーザー)下で結晶化する透明油状物をこうして得る(312mg,収率=34%)。生成物をイソプロピルエーテルから再結晶化する。
H NMR(CDCl,300MHz)δ,ppm:7.34(s,5H);5.08‐4.97(m,2H);3.67‐3.56(m,4H);3.49‐3.35(m,4H);2.89(s,2H,NH).
【0084】
分子2:
【化35】

この分子は、3‐(3‐ブロモプロポキシ)ベンジルアルコールから、分子3について記載された合成操作に従い製造した。シリカゲルカラムでクロマトグラフィー(溶離液、DCM/MeOH 99:1)による精製後、望ましい生成物を66%の収率で単離する。
Rf=0.15(溶離液CHCl/MeOH 99:1).
H NMR(CDCl,300MHz)δ,ppm:7.29(t,J=8.4Hz,1H);6.96(d,J=8.4Hz,1H);6.94(s,1H);6.87(d,J=8.4Hz,1H);5.07‐4.93(m,2H);4.12(t,J=6Hz,2H);3.65‐3.59(m,6H);3.48‐3.39(m,4H);2.71(s,2H);2.32(m,J=6Hz,2H).
31P NMR(CDCl,300MHz)δ,ppm:15.85(s).
【0085】
分子3:
【化36】

NaHMDSの溶液(THF中2M,1.12mL,2.22mmol)を無水THF(15mL)中3‐〔〔3‐〔3‐(ヒドロキシメチル)フェノキシ〕プロピル〕(メチル)アミノ〕プロパン酸tert‐ブチル(600mg,1.86mmol)の溶液へアルゴン下−78℃で加える。−78℃で5分間の攪拌後、反応媒体をRTで15分間攪拌し、再び−78℃に冷却する。この温度で、無水THF(3mL)の溶液中ジクロロ‐N,N‐ビス(2‐クロロエチル)ホスホルアミド(480mg,1.86mmol)を滴下し、温度を室温までゆっくり上昇させながら、反応媒体を4時間攪拌して、不溶性物質を出現させる。反応混合液を再び−50℃に冷却し、アンモニア溶液(DCM中1M,6mL,6mmol)を加える。RTで2時間攪拌後、DCM(120mL)を加え、溶媒を減圧下で蒸発させる。シリカゲルでクロマトグラフィー後(溶離液:DCM、次いでDCM:MeOH=5:1)、予想された生成物を無色油状物として得る(598mg,収率=60%)。
H NMR(CDCl,300MHz)δ,ppm:7.23(1H,t,J=8Hz);6.94‐6.77(2H,m);5.06‐4.82(2H,m),;3.97(2H,t,J=7Hz);3.65‐3.50(4H,m);3.96‐3.27(4H,m);2.87(2H,br s);2.65(2H,t,J=7Hz);2.49(2H,t,J=7Hz);2.35(2H,t,J=7Hz);2.21(3H,s);1.90(2H,q,J=7Hz);1.40(9H,s).
13C NMR(CDCl,300MHz)δ,ppm:172.16;159.40;138.09(d,c‐p=7Hz);129.84;119.97;114.61;113.95;80.51;67.20(d,c‐p=5Hz);66.26;54.10;53.15;49.40(d,c‐p=5Hz);42.73;42.13;33.85;28.27;27.31.
31P NMR(CDCl,300MHz)δ,ppm:16.
【0086】
分子4:
【化37】

カテコールボランの溶液(THF中1M,2.1eq.)をアルゴン下、RTで3‐〔メチル‐(3‐フェノキシプロピル)アミノ〕プロパン酸(1eq.)へ加える。この混合液をガス発生(H)の終了まで同温度で1時間攪拌する。次いでP(OSiMe(3.1eq.)をそのまま加え、攪拌を16時間続ける。メタノール(2mL)を加え、反応混合液を1時間攪拌し、真空下で乾燥蒸発させ、最少量のメタノールに溶解し、ジエチルエーテル(30mL)で希釈する。白色沈殿物が生成する。後者を分離し、ジエチルエーテルで速やかにすすぎ、アルゴン下で乾燥させる。白色粉末をこうして85%の収率で得る。
H NMR(DMSO‐d,300MHz)δ,ppm:7.30‐7.15(2H,m);7.23(2H,t,J=7Hz);6.97‐6.80(3H,m);3.99(2H,t,J=6Hz);3.55‐3.00(4H,m);2.74(3H,s);2.35‐1.95(4H,m).
13C NMR(CDCOD,300MHz)δ,ppm:158.87;130.16;121.64;115.18;72.33(t,c‐p=136Hz);65.51;54.31;53.37;40.37;28.28;24.44.
31P NMR(DMSO‐d,300MHz)δ,ppm:19.
【0087】
2.生物学的試験
2.1.抗腫瘍活性を有する分子
・本発明の「単純化分子」について表す以下の3分子を、それらの抗腫瘍活性について試験した:
【化38】

【0088】
インビトロ試験
腫瘍細胞系(POS‐1マウス骨肉腫)および高増殖率の非腫瘍細胞系(ネズミ線維芽細胞L929)で並行して研究を行った。試験すべき分子1〜3の存在下において、溶媒としてDMSOまたはエタノール(ウェル中最終1%)を用いることにより、72時間にわたり96ウェルプレートで細胞を培養した。
【0089】
下記表は、異なる分子および細胞系で得られた結果(測定IC50の値)を示している。
【0090】
【表1】

【0091】
これらの結果は、分子のホスホロジアミドアルキル化部分による、分子2および3の細胞増殖に及ぼす阻害活性を示している。
【0092】
インビボ試験
C3H/HeN株の5週齢雄性マウスに静脈内経路から後眼窩洞へPOS‐1マウス骨肉腫の150,000細胞を各々投与し、4〜6週間以内で肺結節の成長を誘導させる。
【0093】
これらのマウスを次いで、骨肉腫腫瘍細胞の注入後7日目に、分子1または分子2(112μmol/kg)の注射で処置した。
【0094】
図1で示された生存率の結果は、いかなる処置も受けなかったコントロールマウス(図1で菱形のCT曲線)と比較して、分子1および分子2により処置されたマウス(各々、図1で四角および三角の曲線)においては、腫瘍細胞の注入後40日目に早くもこの生存率の有意な増加を示している。したがって、分子1および分子2は肺結節のこのモデルで抗腫瘍活性を実際に有する。
【0095】
両試験は更に、ここではホスホロジアミドタイプのアルキル化活性成分である残基R2が放出されたが、そうでなければアルキル化剤、ひいては抗腫瘍剤の役割を果たせなかったであろう、ということを示している。したがってこれは、m=1およびX=0である場合、分子がさほど安定でなく、活性成分を放出することが可能であることを示している。
【0096】
・本発明による分子(III)および(IV)もそれらの抗腫瘍活性について試験した。
【0097】
インビトロ試験
分子(III)および(IV)の生物学的活性(生存力/細胞毒性試験)を、正常細胞(マウス頭蓋冠健常骨芽細胞)と比較して、ヒト、ネズミ、およびラット骨肉腫系の培養物においてインビトロで試験した。
【0098】
インビトロで得られた結果は、本化合物の死誘導、ひいては細胞毒性活性のために、試験化合物の増殖阻害活性を証明していた。細胞毒性活性はマウス頭蓋冠の一次培養物からの健常骨芽細胞で観察されず、そのためこれらの化合物に対して正常骨芽細胞が反応性を有さないことを証明した。
【0099】
下記表は、3種のヒト(MG63)、マウス(POS1)、およびラット(OSRGA)骨肉腫細胞系で得られた結果(測定IC50の値)を示す。
【0100】
【表2】

【0101】
インビボ試験
マウス骨肉腫POS1細胞をC3H/HeN株の5週齢雄性マウスの足蹠に注入した。溶骨原始骨腫瘍の成長を誘導するために、この部位で成長する腫瘍のフラグメントを傍骨部位へ移植する。次いで腫瘍誘導後7日目(D7)から24時間間隔で11.5または115μmol/kgの3回非経口内(intraparenteral)注射(IP)の療法として分子(IV)を注射した。
【0102】
得られた結果は、注射された全体の化合物がX線写真像をみてわかるように骨付加成長を増すことで骨組織と実際に結合し(図3参照)、同時に抗腫瘍ドメインを放出することにより腫瘍容積(骨外部位)の減少を誘導し(図4参照)、同様の結果(腫瘍容積の−20〜−30%減少)が両濃度で得られたことを証明している。
【0103】
2.2.強い骨指向性の分子
この研究は、本発明の「単純化分子」を表し、下記分子4を用いることにより行った:
【化39】

インビボ試験
2〜3週齢の若いマウス(Swiss株)を、0.35μmol/kgの濃度で、週2回皮下により分子4またはゾレドロン酸の二ナトリウム塩(PBSで希釈)で処置した。
【0104】
ゾレドロン酸の二ナトリウム塩は、ここでは比較分子として用いられる、第三世代ビスホスホネートである。
【0105】
4週間の処置後、これら二分子の一つで処置されたマウスの体重追跡にも、または全身状態にも影響がないことがわかった。図2で示されたX線写真は、「コントロール」マウスと比較して、ゾレドロン酸の二ナトリウム塩または分子4で4週間の処置後に、鉱質密度の増加を表している。更に、測定された比骨容積(BV/TV=分析組織の総容積をベースにした骨の容積)が、上記操作に従う分子4またはゾレドロン酸の二ナトリウム塩の投与の場合、あるいは処置の非存在の場合(コントロール値)について、下記表に示される。
【0106】
【表3】

【0107】
これらの結果は、分子4が、対照品、ゾレドロン酸の二ナトリウム塩で得られた値と匹敵するほど、この分子で処置されたマウスにおいて大腿骨の総比骨容積で増加を誘導しうることを示している。
【0108】
2.3.蛍光分子
分子(II)を異なる細胞系においてインビトロで試験したが、いかなる細胞毒性活性も有していなかった。マウスへの投与でも、細胞毒性活性を何ら示さなかった。
【0109】
分子(II)は光エネルギー(励起波長λ:280nm)を吸収して、蛍光としてそれを速やかに放出する特性を有している。そのため、分子(II)の放出スペクトルは、280nmで励起後に、この分子が500nmの波長で光を再放出することを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表されるヒドロキシ‐ビスホスホン酸誘導体またはその薬学上許容される塩:
【化1】

(上記式中、
‐nおよびmは、互いに独立して、1〜4を範囲とする整数を表し、
‐Xは酸素原子またはN‐R3基を表し、
‐R1およびR3は、互いに独立して、直鎖状または分岐状C‐Cアルキル基を表し、並びに
‐R2は治療または診断に関係する分子の残基を表す)。
【請求項2】
R2が、蛍光分子の残基、例えば(5‐ジメチルアミノ)ナフタレン‐1‐スルホニル残基、7‐ニトロ‐1,2,3‐ベンゾオキサジアゾール残基、もしくはフルオレセイン、または発光分子、例えばジオキセタン誘導体である、請求項1に記載のヒドロキシ‐ビスホスホン酸誘導体。
【請求項3】
R2が、溶骨または骨凝縮骨リモデリングの病態、例えば原始骨腫瘍、例えば骨肉腫、軟骨肉腫、巨細胞腫、またはユーイング肉腫、骨転移、多発性骨髄腫、リン‐カルシウム代謝の脱調節、例えば高カルシウム血症、骨粗鬆症、および炎症病態、例えばリウマチ様関節炎または周囲プロテーゼ弛緩の治療または診断に有用な活性成分の残基である、請求項1に記載のヒドロキシ‐ビスホスホン酸誘導体。
【請求項4】
R2が、標準化学療法剤、例えばイホスファミド、シスプラチナム、またはドキソルビシンの誘導体、抗炎症剤、例えばコルチコステロイド、例えばデキサメタゾンまたは非ステロイド系抗炎症剤、例えばイブプロフェン、および骨前形成または抗吸収活性のあるペプチドから選択される活性成分の残基である、請求項1および3のいずれか一項に記載のヒドロキシ‐ビスホスホン酸誘導体。
【請求項5】
下記化合物から選択される、請求項1に記載のヒドロキシ‐ビスホスホン酸誘導体:
【化2】

【請求項6】
薬剤または診断剤としてその使用のための、請求項1〜5のいずれか一項に記載のヒドロキシ‐ビスホスホン酸誘導体またはその薬学上許容される塩。
【請求項7】
骨組織を画像化するために、あるいは溶骨または骨凝縮骨リモデリングの病態、例えば原始骨腫瘍、例えば骨肉腫、軟骨肉腫、巨細胞腫、またはユーイング肉腫、骨転移、多発性骨髄腫、リン‐カルシウム代謝の脱調節、例えば高カルシウム血症、骨粗鬆症、および炎症病態、例えばリウマチ様関節炎または周囲プロテーゼ弛緩の治療または診断のために有用である、請求項6に記載のヒドロキシ‐ビスホスホン酸誘導体。
【請求項8】
基R2の放出性を確保するために、mが1であり、X=0である、請求項6または7に記載のヒドロキシ‐ビスホスホン酸誘導体。
【請求項9】
基R2の持続性を確保するために、mが2以上である、請求項6または7に記載のヒドロキシ‐ビスホスホン酸誘導体。
【請求項10】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の少なくとも一種のヒドロキシ‐ビスホスホン酸誘導体またはその薬学上許容される塩と、少なくとも一種の薬学上許容される担体とを含んでなる、医薬または診断用組成物。
【請求項11】
注射溶液としてまたはパッチとして製品化される、請求項10に記載の医薬または診断用組成物。
【請求項12】
薬剤または診断剤としての使用のための、請求項10または11に記載の医薬または診断用組成物。
【請求項13】
骨組織を画像化するために、あるいは溶骨または骨凝縮骨リモデリングの病態、例えば原始骨腫瘍、例えば骨肉腫、軟骨肉腫、巨細胞腫またはユーイング肉腫、骨転移、多発性骨髄腫、リン‐カルシウム代謝の脱調節、例えば高カルシウム血症、骨粗鬆症、および炎症病態、例えばリウマチ様関節炎または周囲プロテーゼ弛緩の治療または診断のために有用である、請求項12に記載の医薬または診断用組成物。
【請求項14】
皮下、静脈内、経口、筋肉内、または経皮経路により投与を行えるように処方される、請求項12または13に記載の医薬または診断用組成物。
【請求項15】
下記の連続工程:
(a)下記式(B)の化合物:
【化3】

(上記式中、R1、R2、X、n、およびmは請求項1において定義された通りであり、Alkは先に定義された通りである)を得るために、下記式(A)の化合物:
【化4】

(上記式中、R1、X、n、およびmは請求項1において定義された通りであり、Alkは直鎖状または分岐状C‐Cアルキル基、特にtert‐ブチル基を表す)と、請求項1において定義されているような残基R2に相当する治療または診断に関係する分子とのカップリング、
(b)下記式(C)の化合物:
【化5】

(上記式中、R1、R2、X、n、およびmは請求項1において定義された通りである)を得るために、前工程(a)において得られた式(B)の化合物の末端エステルのケン化、
(c)式(I)の化合物を得るために、前工程において得られた式(C)の化合物の遊離カルボン酸官能基からヒドロキシ‐ビスホスホン酸官能基への変換、
(d)場合により、薬学上許容される塩を得るために、前工程(c)において得られた式(I)の化合物の塩化、および
(e)前工程(c)または(d)において得られた式(I)の化合物またはその薬学上許容される塩の一種の反応媒体からの分離
を含んでなる、請求項1に記載の式(I)の化合物またはその薬学上許容される塩の一種の製造方法。

【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−508757(P2011−508757A)
【公表日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−541066(P2010−541066)
【出願日】平成21年1月5日(2009.1.5)
【国際出願番号】PCT/EP2009/050027
【国際公開番号】WO2009/083614
【国際公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(505028222)ユニベルシテ ドゥ ナント (3)
【出願人】(510184715)
【氏名又は名称原語表記】CHU NANTES
【出願人】(500025477)アンスティテュ、ナショナル、ド、ラ、サント、エ、ド、ラ、ルシェルシュ、メディカル(アンセルム) (19)
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT NATIONAL DE LA SANTE ET DE LA    RECHERCHE MEDICAL (INSERM)
【出願人】(594016872)サントル、ナショナール、ド、ラ、ルシェルシュ、シアンティフィク、(セーエヌエルエス) (83)
【Fターム(参考)】