説明

骨老化抑制のための組成物

【課題】 日常に於いて摂取しうるMMP-9活性を阻害する成分及びその摂取手段を提供する。
【解決手段】 日常に於いて摂取しうるMMP-9活性を阻害する成分及びその摂取手段を求めて、鋭意研究努力を重ねた結果、トウダイグサ科アカメガシワの抽出物が優れたMMP9(マトリックスメタロプロテアーゼ9)阻害作用を有し、これを経口投与組成物に含有させる。該含有に際しては、抽出物のMMP9阻害活性が153mU/μg(酵素活性/植物抽出物)溶液において、40%以上であることを確認する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マトリックスメタロプロテアーゼ阻害作用を有する成分を含有する、食品などの経口投与組成物に関し、さらに詳しくは、細胞外マトリックスとして、骨などに存在するコラーゲンを分解して、老化による組織変化や疾病を増悪させる特定のマトリックスメタロプロテアーゼ(Matrix metalloproteinases;MMPs)の活性を阻害して、骨の老化および該骨老化に関与する疾病の増悪を防止するのに有用な、経口投与組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
骨は生体の骨格としてその構造を維持する上で必要不可欠あると同時に、生体内でのカルシウムの貯蔵庫としての機能も合わせ持つ非常に重要な組織である。骨は骨芽細胞による骨形成と、破骨細胞による骨吸収とのバランスにたった、骨代謝を維持することにより、その強度を保つためのリモデリングとカルシウム供給を行っている。加齢やホルモンバランスの変化などにより骨代謝のバランスが崩れて、破骨細胞の行う骨吸収が優位となることにより骨量減少をきたし、骨強度が低下して骨粗しょう症などの疾病が発生することが知られている。骨基質の大部分はコラーゲンからなり、骨代謝の際のコラーゲン分解は重要な要素で、骨組織にもコラーゲナーゼ群として、MMP-1及びMMP-13、ゼラチナーゼ群として、MMP-2とMMP-9、ストロメライシン群としてMMP-3、さらに膜結合型のMT1-MMPなどのマトリックスメタロプロテアーゼの存在が報告されている。中でも、骨吸収を司る破骨細胞ではMMP-9が強く発現しており(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3を参照)、骨吸収の大きな要素としてMMP−9の活性の亢進が推定される。このMMP-9活性を阻害することにより、骨代謝のバランスを整えることにより、骨の老化(脆弱化)を防ぐことができると推定されているが、この様な機能を有する成分であって、日常摂取できるものはまだ見いだせていないのが現状である。
【0003】
一方、アカメガシワの抽出物にはダイエット効果が存すること(例えば、特許文献4を参照)、生体コラーゲンの産生を促進する作用の有すること(例えば、特許文献5を参照)、矯味剤として不快な味をマスキングする作用を存すること(例えば、特許文献6を参照)などが知られているが、MMPに対する作用は全く知られていない。
【0004】
【特許文献1】特開2001−335575号公報
【特許文献2】特表2006−500422号公報
【特許文献3】特表2004−524812号公報
【特許文献4】特開2007−117005号公報
【特許文献5】特開2005−255527号公報
【特許文献6】特開2004−161679号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、この様な状況下為されたものであり、日常に於いて摂取しうるMMP-9活性を阻害する成分及びその摂取手段を提供すること課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この様な状況に鑑みて、本発明者らは、日常に於いて摂取しうるMMP-9活性を阻害する成分及びその摂取手段を求めて、鋭意研究努力を重ねた結果、トウダイグサ科アカメガシワ(Mallotus japonicus Mueller-Arg)の抽出物が優れたMMP9(マトリックスメタロプロテアーゼ9)阻害作用を有し、これを含有する経口投与組成物が、骨老化および疾病の予防又は改善に有用であることを見いだし、発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は、以下に示す通りである。
<1>トウダイグサ科アカメガシワ(Mallotus japonicus Mueller-Arg)の抽出物を含有する、骨の老化および疾病の予防又は改善のための経口投与組成物。
<2>前記植物の抽出物は、153mU/μg(酵素活性/植物抽出物)溶液において、マトリックスメタロプロテアーゼ9(MMP-9)に40%以上の阻害作用を有するものであることを特徴とする、<1>に記載の経口投与組成物。
<3>食品であることを特徴とする、<1>又は<2>に記載の経口投与組成物。
<4>次の工程を経て製造されるものであることを特徴とする、<1>〜<3>何れか1項に記載の経口投与組成物。
(工程1)トウダイグサ科アカメガシワ(Mallotus japonicus Mueller-Arg)の植物体に抽出溶媒を加え、抽出物を作製する。
(工程2)前記抽出物の153mU/μg(酵素活性/植物抽出物)溶液において、マトリックスメタロプロテアーゼ9(MMP-9)に40%以上の活性阻害が存したものを原料として選択する。
(工程3)工程2で原料として選択された抽出物と、製剤化のための成分とを用いて、製剤を製造する。
<5>前記骨の老化は、破骨細胞の亢進によるものであることを特徴とする、<1>〜<4>何れか1項に記載の経口投与組成物。
<6>前記骨の老化は、骨粗鬆症であることを特徴とする、<1>〜<5>何れか1
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、日常に於いて摂取しうるMMP-9活性を阻害する成分及びその摂取手段を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の経口投与様の組成物は、骨の老化およびこの老化に関与する疾病の予防又は改善のためのものであって、トウダイグサ科アカメガシワ(Mallotus japonicus Mueller-Arg)の抽出物から選択される1種乃至は2種以上を含有することを特徴とする。抽出物の作製は、常法に従って行えば良く、トウダイグサ科アカメガシワ(Mallotus japonicus Mueller-Arg)の植物体1質量部に対して、溶媒1〜100質量部を加え、常温であれば数日間、沸点付近の温度であれば数時間浸漬し、所望により濾過などで不溶物を取り除き、所望により減圧溜去、凍結乾燥等で溶媒を除去することも出来る。更に、これらの抽出物をカラムクロマトグラフィーや液液抽出などで分画精製することも出来る。カラムクロマトグラフィーとしては、シリカゲルカラムクロマトグラフィー、「ダイアイオンHP−20」のようなイオン交換樹脂、ODS等が好適に例示できる。勿論、植物体の一部又は全部を粉砕など加工しただけのものも本発明の抽出物に含まれる。これらの植物体は何れも充分な食経験の存するものであり、食物としての摂取が可能なものである。故に日常的な摂取できるほどに安全性が確保されている。
【0009】
トウダイグサ科アカメガシワ(Mallotus japonicus Mueller-Arg)については、植物体の何れの部分も使用でき、例えば、葉部、木幹部、樹皮部、根皮部などが例示でき、これらの中では、樹皮の抽出物が特に好ましい。抽出物の作製に用いる溶媒としては、水性の極性溶媒が好ましく、具体的には、エタノールなどのアルコール及び/又は水が好ましい。中でも熱水抽出が特に好ましい。以下に、抽出物の製造例を示す。
【0010】
<製造例1>
トウダイグサ科アカメガシワの樹皮500gに水2Lを加え、3時間沸騰させて抽出を行い、室温まで冷却した後、濾過により不溶物を除き、凍結乾燥して、68gのアモルファスとして抽出物1を得た。
【0011】
斯くして得られた抽出物は、マトリックスメタロプロテアーゼ阻害活性、特に、マトリックスメタロプロテアーゼ1(MMP1)、マトリックスメタロプロテアーゼ9(MMP9)、マトリックスメタロプロテアーゼ13(MMP13)3種のMMP阻害作用に優れ、これにより、皮膚、骨、軟骨の老化および疾病が悪化するのを防ぐ作用を有する。この様な作用を発揮するためには、これらの抽出物は、一日あたり10〜10000mgを1回乃至は数回に分けて、経口経路で投与されることが好ましい。この時留意すべきことは、MMP9の阻害活性が、153mU/μg(酵素活性/植物抽出物)溶液において、40%以上存することを確認することである。阻害活性は既存のMMP9阻害活性測定用のキット、例えば、フナコシ薬品株式会社から販売されている、「MMP−9 Colorimetric Assay Kit (AK-410)」等を用い、測定することが出来る。阻害活性は、(1−検体存在下のプロテアーゼの反応速度/検体非存在下でのプロテアーゼの反応速度)×100の式で算出される。前記のMMP9の阻害活性が40%を下回るときには、関節炎・関節症に対する作用を発現しない場合が存する。
【0012】
かかる成分は、製剤化のための任意成分とともに処理することにより、本発明の経口投与組成物に加工することが出来る。本発明の経口投与組成物としては、経口投与される特徴を備えていれば特段の限定無く、例えば、経口投与医薬組成物、食品、飲み物などが好適に例示できる。この中では、食品が特に好ましく、中でも特定の機能を期待される特定保健用食品などの食品が特に好ましい。前記製剤化のための任意成分としては、例えば、乳糖、デキストリン、シクロデキストリンなどの賦形剤、デンプン、セルロースなどの崩壊剤、ヒドロキシプロピルセルロース、アラビアガムなどの結合剤、ペクチン、レシチンなどの乳化・分散剤、白糖、蜂蜜、麦芽糖などの矯味剤、シェラック、ゼラチンなどの被覆剤などが好適に例示できる。
【0013】
以下に、本発明について更に詳細に説明を加えるが、本発明がかかる実施例にのみ限定されないことは言うまでもない。
【実施例1】
【0014】
製造例1で作製した抽出物1について、そのMMP9阻害活性を「MMP−9 Colorimetric Assay Kit (AK-410)」を用いて測定した。結果は、153mU/μg(酵素活性/植物抽出物)の濃度で58%の抑制率であった。尚、8.9mU/μg(酵素活性/植物抽出物)の濃度では45%の抑制率であり、濃度が高くなりすぎると抑制活性が損なわれる傾向にあった。抽出物の適切な活性の強さを判別するためには、120〜160mU/μg(酵素活性/植物抽出物)の濃度で抑制活性を測定しておくべきであることが分かる。
【実施例2】
【0015】
下記の処方に従って、本発明の経口投与組成物である、食品(錠剤)を作製した。即ち、成分を「ニューマルメライザー」(不二パウダル株式会社製)に仕込み、送風攪拌下、水100mlを噴霧し、造粒し、40℃の温風を3時間送風して、乾燥させ、これを打錠して、錠剤1(100mg)を得た。
【0016】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明は骨老化抑制のための食品に応用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トウダイグサ科アカメガシワ(Mallotus japonicus Mueller-Arg)の抽出物を含有する、骨の老化および疾病の予防又は改善のための経口投与組成物。
【請求項2】
前記植物の抽出物は、153mU/μg(酵素活性/植物抽出物)溶液において、マトリックスメタロプロテアーゼ9(MMP-9)に40%以上の阻害作用を有するものであることを特徴とする、請求項1に記載の経口投与組成物。
【請求項3】
食品であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の経口投与組成物。
【請求項4】
次の工程を経て製造されるものであることを特徴とする、請求項1〜3何れか1項に記載の経口投与組成物。
(工程1)トウダイグサ科アカメガシワ(Mallotus japonicus Mueller-Arg)の植物体に抽出溶媒を加え、抽出物を作製する。
(工程2)前記抽出物の153mU/μg(酵素活性/植物抽出物)溶液において、マトリックスメタロプロテアーゼ9(MMP-9)に40%以上の活性阻害が存したものを原料として選択する。
(工程3)工程2で原料として選択された抽出物と、製剤化のための成分とを用いて、製剤を製造する。
【請求項5】
前記骨の老化は、破骨細胞の亢進によるものであることを特徴とする、請求項1〜4何れか1項に記載の経口投与組成物。
【請求項6】
前記骨の老化は、骨粗鬆症であることを特徴とする、請求項1〜5何れか1項に記載の経口投与組成物。

【公開番号】特開2009−91282(P2009−91282A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−261940(P2007−261940)
【出願日】平成19年10月5日(2007.10.5)
【出願人】(000113470)ポーラ化成工業株式会社 (717)
【Fターム(参考)】