説明

高い形状ファクターの結晶質リン酸ジルコニウム、その製造方法及び高分子材料におけるその使用

本発明に従うリン酸ジルコニウムは、結晶質であること、及び最大30nmの厚さの粒子から成ることを特徴とする。これは、最初にリン酸及びジルコニウム化合物を酸性媒体中に入れて沈殿を形成させ;次いでこの沈殿をこうして得られた媒体から分離し且つ最大6Mの濃度のリン酸溶液中に分散させ;こうして得られた媒体を少なくとも該媒体の沸点に等しい温度において熱処理する:方法によって得られる。前記のリン酸塩は、高分子材料をベースとする組成物の調製においてその特性を改善するために用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い形状ファクターを有する結晶質リン酸ジルコニウム、その製造方法及び高分子材料におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
高分子材料の熱機械特性及び不透過性を改変するために無機粒子を用いることが知られている。例えば、材料のモジュラスや、衝撃強さ、延性、寸法安定性、熱変形温度、耐摩耗性、摩耗性を改変することが可能である。ある場合、例えばラテックスについては、材料の吸水性及び水蒸気透過性の特徴を改善することも目的とされる。
【0003】
ナノメートル規模の厚さの小板状粒子(特に層状構造を有するリン酸ジルコニウムをベースとする化合物から出発して剥離によって得られる粒子)によって高分子材料(特に熱可塑性樹脂)を補強することが知られている。前記の層状構造を有する化合物は、補強すべき材料中に加えられる前に、その剥離をもたらすために有機発泡(膨張)剤で処理される。この剥離は、該化合物が導入される材料の熱機械特性を改善するために重要である。
【0004】
しかしながら、剥離物質(即ち剥離によって得られた物質)を用いることには不都合がある。まず最初に、これらの剥離物質を調製するための方法は比較的複雑である。この方法は一般的にゲルの形で存在する物質をもたらし、ゲル中に多量の水が存在するせいで高分子材料中にこれらの製品を加えることが困難になる。さらに、上記のようにこれらを使用する際には有機発泡剤が用いられ、この有機発泡剤が高分子材料の品質に害を及ぼしたり、この場合にもまた、粒子を加える際や材料を成形する際に困難性をもたらしたりすることがある。最後に、これらの有機発泡剤は一般的に悪臭を放つため、それらを取り扱うことが不快なものになり、また、臭いをなくしたければ多大な資本支出が必要となる。
【特許文献1】米国特許出願公開第2004/033186号明細書
【特許文献2】国際公開WO2004/65297号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上記の欠点を示さない化合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的で、本発明のリン酸ジルコニウムは、結晶質であること、及びせいぜい30nmの厚さの粒子から成ることを特徴とする。
【0007】
本発明はまた、かかるリン酸塩の調製方法であって、次の工程:
・リン酸及びジルコニウム化合物を酸性媒体中で一緒にして沈殿を得る工程;
・この沈殿を得られた媒体から分離し且つせいぜい6Mの濃度のリン酸溶液中に分散させる工程;
・こうして得られた媒体を少なくとも該媒体の沸点に等しい温度において熱処理する工程:
を含むことを特徴とする、前記方法にも関する。
【0008】
本発明のリン酸塩は簡単な方法によって調製され、剥離物質のものと同様の用途特性を示す。
【0009】
本発明のその他の特徴、詳細及び利点は、以下の説明及び添付した図面を見ればさらにより一層明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の物質は、より特定的には化学式Zr(HPO4)2に相当するリン酸ジルコニウムである。水素原子の一部がナトリウム原子で置換されていてもよいことに留意されたい。本発明のリン酸ジルコニウムはリン酸ジルコニウムに対して1〜2重量%程度の重量割合でハフニウムを含んでいてもよいということにも留意されたい。このハフニウムは一般的に、本発明のリン酸塩の調製方法において用いられるジルコニウム化合物のために用いた出発原料から由来するものである。最後に、このリン酸塩は、無水であっても水和されていてもよい。
【0011】
ジルコニウムの一部は、例えば0.2モル%までの範囲であってよい割合(置換物/ジルコニウムのモル比)で、チタン、セリウム及びスズのような別の四価元素で置き換えられていてもよい。
【0012】
本発明のリン酸塩の第1の特徴は、結晶質であるということである。この特徴は、物質のX線図によって示すことができる。より特定的には、X線図において少なくとも2つのピークを同定することができ、その第1のものは(002)面に相当し、第2のものはダブレットであり、(−113)及び(202)面に相当する。加えて、[(002)面のピークの面積]対[(−113)及び(202)面のダブレットの面積]の比は1より大きい。単結晶構造を有する既知のリン酸ジルコニウムの場合にはこの比が1未満であることが知られている。このことは、本発明のリン酸塩が単結晶構造と六方晶構造との中間の結晶構造を示すことを意味する。
【0013】
本発明のリン酸塩のもう一方の特徴は、このリン酸塩を構成する粒子の構造又は形態にある。より特定的には、これらの粒子は薄い小板状体の形で提供される。この形態は、走査型電子顕微鏡分析(SEM)によって示すことができる。加えて、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いた分析では、樹脂中に含ませることによる測定方法によって、これらの粒子がせいぜい30nm、より特定的にはせいぜい20nmの厚さ(これは例えば1nm〜20nmの範囲であることができる)を有することを示すことができる。X線図から(002)面に対して垂直な晶子(クリスタライト)の寸法を測定することによっても、同じ厚さ値が得られる。
【0014】
粒子を構成する小板状体自体は、数Å(5〜7Å)程度の厚さを有する積層薄片から成り、薄片間の間隔は約7〜8Åであることができる。これらの値もまた、X線分析によって得ることができる。
【0015】
さらに、これらの粒子は約0.1μm〜約2μmの範囲、より特定的には0.2μm〜0.5μmの範囲であることができる寸法を有する。この寸法はTEM分析によって測定される。この寸法は実際ここでは、粒子の最大寸法、即ちそれらの長さに相当する。
【0016】
これらの粒子は、薄い小板状体の形態にあるので、高い形状ファクター(長さ/厚さの比)を有する。上で述べた(002)面のピークが前記のダブレットより高強度であるという特徴は、この(002)面において晶子が優先的に成長していることを表わし、かくして小板状の形態であること及び形状ファクターが高いことを表わしている。
【0017】
最後に、TEM写真の分析により、粒子の非常に大多数がほぼ水平の面に展開していることが示され、言い換えればごく僅かの粒子だけがそれら自体の上に折り重なっているのが見られるだけである。これは、粒子の剛性が大きいことを示す。
【0018】
次に、本発明のリン酸塩の調製方法を説明する。
【0019】
上に示したように、この方法の第1工程では、リン酸及びジルコニウム化合物を酸性媒体中で一緒にする。
【0020】
出発ジルコニウム化合物としては、四ハロゲン化ジルコニウム又はオキシハロゲン化ジルコニウム、特にオキシ塩化ジルコニウムを挙げることができる。
【0021】
リン酸とジルコニウム化合物とを一緒にすると沈殿が形成する。
【0022】
沈殿形成反応の簡単な収支は、例えば次の通りである。
【化1】

【0023】
沈殿形成は水性媒体中で実施するのが好ましい。リン酸を使用すると沈殿形成媒体が酸性になる。沈殿形成は酸性pH、好ましくは調節された酸性pH、例えば0.5〜2の範囲のpHにおいて有利に実施することができる。この目的で、リン酸に加えて別の酸を用いてもよい。例としては、塩酸を挙げることができる。ここではフッ化水素酸を用いることは必要ではない。
【0024】
この第1工程が終わったら、任意の好適な手段によって反応媒体から沈殿を分離する。洗浄(特に少なくともリン酸水溶液による洗浄)を実施するのが有利なことがある。
【0025】
本方法の第2工程は、前記沈殿をリン酸溶液中に懸濁させることから成る。この溶液は、せいぜい6M(モル/リットル)、より特定的にはせいぜい5.5Mの酸濃度を示すべきである。この濃度は、2.5Mより大きいのが好ましく、より特定的には3M〜4Mの範囲にすることができる。この後者の濃度範囲においては粒子があまり凝集せず、本方法の実施の際に固液分離がより一層容易に起こる。
【0026】
第3工程において、得られた分散体を熱処理に付す。この処理は、処理に付される媒体の沸点に少なくとも等しい温度において行う。この温度は、上記の結晶構造を有する本発明の物質が得られるようにするのに充分高くなければならない。一般的に、酸濃度が低くなるにつれて熱処理を行う温度を高くするが、これは絶対に必須の条件というわけではない。リン酸が低濃度、例えばせいぜい4M及び4M未満のものについては、この温度を沸点より高くするのが好ましい。
【0027】
より特定的には、この熱処理温度は、少なくとも120℃とする。例えば120℃〜170℃の範囲にすることができる。この上限値は臨界的なものではなく、経済上及び装置上の制約によって本質的に制限されるものである。
【0028】
熱処理操作は、処理を行う温度が媒体の沸点に等しい場合又は該沸点付近にある場合には、還流下で実施することができる。それより高い温度については、懸濁液を密閉チャンバー(オートクレーブタイプの密閉式反応器)中に導入することによってこの処理を行うことができる。上記温度条件下で且つ水性媒体中で、例示として、密閉反応器中の圧力は1バール(105Pa)超の値〜20バール(2×106Pa)の範囲、好ましくは2バール(2×105Pa)〜6バール(6×105Pa)の範囲であることができる。
【0029】
前記熱処理は、空気中で実施するのが一般的である。
【0030】
熱処理の時間は広い範囲内で変えることができ、例えば1〜8時間の範囲、好ましくは4〜5時間の範囲にすることができる。
【0031】
前記熱処理の終了時に、本発明に従うリン酸ジルコニウムが得られ、これは水中の懸濁液又は分散体の形で存在する。しかしながら、本方法のいくつかの別態様をこの段階において採用することもできる。
【0032】
第1の別態様は、液状媒体から固体を任意の好適な手段によって分離することから成る。次いで生成物が固体の形で得られる。得られた固体を洗浄し、水中に再分散させることによって、精製された懸濁液を得ることが可能である。
【0033】
別の別態様に従えば、熱処理から直接得られた分散体又は洗浄操作から得られた分散体を水/エチレングリコール混合物中に移し、随意に水を例えば蒸留によって除去することができる。
【0034】
第3の別態様に従えば、熱処理から直接得られた分散体又は洗浄操作から得られた分散体にPET又はPEGモノマー又はオリゴマーを添加することができる。
【0035】
第4の別態様の範疇において、熱処理から直接得られた分散体又は洗浄操作から得られた分散体にナトリウム化合物を添加することができる。この化合物は、より特定的には水酸化ナトリウムである。
【0036】
このナトリウム化合物を添加することによって、結晶質リン酸塩中に存在するH+をNa+カチオンによって部分的に置換することが可能である。この別態様の場合、Na+カチオン(ナトリウム化合物によってもたらされるもの)/Pの原子比が0.5になるような量のナトリウム化合物を用いる。かくして、式ZrNaH(PO4)2・5H2Oのリン酸ジルコニウムナトリウム5水和物が得られる。
【0037】
最後に、第5の別態様は、剥離構造(剥離によってもたらされた構造)のリン酸塩を得る目的で採用することができるものである。この第5の別態様は、その最初の部分が、ここでもまた熱処理から直接得られた分散体又は洗浄操作から得られた分散体にナトリウム化合物を添加するという限りにおいて、第4の別態様と同様である。しかしながら、この別態様は、Na/P原子比を0.5より大きくする点及び追加の工程を含む点で、上記のものとは異なる。
【0038】
実際、より正確には、Na+カチオン(ナトリウム化合物によってもたらされるもの)/Pの原子比が0.5超、好ましくは少なくとも0.7、さらにより一層好ましくは少なくとも0.8になるような量のナトリウム化合物を用いる。
【0039】
上記の量でのナトリウム化合物の添加には、出発分散体のpHを一般的に少なくとも7の値、より特定的には少なくとも8、さらにより一層特定的には少なくとも9の値まで変化させる効果がある。
【0040】
この第5の別態様の最終工程は、前の工程の終了時に得られた媒体に酸を導入することから成る。この酸は、一般的には塩酸、硫酸、硝酸及びリン酸から選択することができる無機酸である。
【0041】
酸を添加することによって直接ゲル(これは剥離構造のリン酸ジルコニウムである)をもたらすこと又は固体化合物(これは反応媒体中の懸濁状で得られる)をもたらすことができる。後者の場合、この化合物は反応媒体から分離され、次いで水中に戻される。水中に戻した後に、ゲルの形成が観察される。このゲルは、剥離構造のリン酸ジルコニウムに相当する。
【0042】
この最終工程を行う方法(即ちゲルを直接得るものか固体化合物を経由するものか)は、用いる酸の性状に依存し得る。また、工程の開始時に用いた分散体中のリン酸ジルコニウムナトリウムの濃度にも依存し得る。例として、約10g/リットルより低い濃度においては、ゲルを直接得ることができる。かくして、希薄分散体から出発して塩酸を用いることにより、ゲルを直接得ることができる。
【0043】
前記の酸は一般的に、媒体のpHをせいぜい3の値、より特定的には約2又はせいぜい2のpHに下げるように添加する。
【0044】
前記ゲルは、遠心分離し、次いで得られた生成物を再分散させることによって洗浄することができる。この操作は、数回繰り返すことができる。この洗浄操作の終了時に、洗浄操作の実施回数に応じてせいぜい4、例えば3〜4の範囲のpHを示すことができるゲルが得られる。
【0045】
この別態様によって得られる剥離構造を有するリン酸ジルコニウムは、有機化合物からのその純度によって特徴付けられる。かくして、このリン酸ジルコニウムは、せいぜい1000ppm、より特定的にはせいぜい500ppmの有機化合物含有率を示す。この含有率は、さらにより特定的にはせいぜい300ppmであることができる。用語「有機化合物」とは、炭素を含む任意の化合物、特に上記の発泡剤タイプの任意の化合物を意味するものとする。
【0046】
上記の含有率は、乾燥状態におけるリン酸ジルコニウムに対する炭素の重量として表わされる。この含有率は、誘導炉中で触媒の存在下で酸素を流しながら物質を酸化することから成る分析によって測定される。炭素の検出は、CO2を検出してそのピークを積分することによって行われる(赤外線定量測定)。この分析は、Leco社からの装置CS-044を用いて実施することができる。この場合、用いる触媒は、Leco社からのLecocel 参照番号763-266-PL(これには標準物質及び分析すべきサンプル(約3g)が添加される)、又は同社からの参照番号502-231(高純度鉄チップ促進剤)(1回の測定について約1.2g)(これにはサンプルが添加される)であることができる。
【0047】
上に与えた特徴を示すリン酸塩又は上記の方法によって得られたリン酸塩は、高分子材料をベースとする組成物の調製において用いることができる。かくして、本発明は、かかる組成物の調製方法であって、これらの組成物の調製の際にこれらのリン酸ジルコニウム(薄片構造を有するリン酸塩、リン酸ジルコニウムナトリウム5水和物又は剥離構造を有するリン酸塩)を用いる、前記方法にも関する。
【0048】
前記高分子材料は、様々な性状(エラストマー状、熱可塑性又は熱硬化性)のものであることができる。
【0049】
前記高分子材料は、より特定的には、熱可塑性ポリマーであることができる。好適であり得るポリマーの例としては、以下のものを挙げることができる:
ポリラクトン類、例えばポリ(ピバロラクトン)、ポリ(カプロラクトン)及び同類のポリマー;
ジイソシアネート(例えば1,5−ナフタレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニルジイソシアネート、4,4’−ジフェニルイソプロピリデンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニルジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ビフェニルジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、トルイジンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン及び同類の化合物)と長い直鎖を有するジオール類(例えばポリ(テトラメチレンアジペート)、ポリ(エチレンアジペート)、ポリ(1,4−ブチレンアジペート)、ポリ(エチレンスクシネート)、ポリ(2,3−ブチレンスクシネート)、ポリエーテルジオール類及び同類の化合物)との反応によって得られるポリウレタン類;
ポリカーボネート類、例えばポリ[メタンビス(4−フェニル)カーボネート]、ポリ[1,1−エーテルビス(4−フェニル)カーボネート]、ポリ[ジフェニルメタンビス(4−フェニル)カーボネート]、ポリ[1,1−シクロヘキサンビス(4−フェニル)カーボネート]及び同類のポリマー;
ポリスルホン類;
ポリエーテル類;
ポリケトン類;
ポリアミド類、例えばポリ(4−アミノ酪酸)、ポリ(ヘキサメチレンアジパミド)、ポリ(6−アミノヘキサン酸)、ポリ(m−キシリレンアジパミド)、ポリ(p−キシリレンセバカミド)、ポリ(2,2,2−トリメチルヘキサメチレンテレフタルアミド)、ポリ(m−フェニレンイソフタルアミド)、ポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)、ポリ(12−アミノドデカン酸)、ポリ(11−アミノウンデカン酸)及び同類の(コ)ポリマー;
ポリエステル類、例えばポリ(エチレンアゼラート)、ポリ(エチレン1,5−ナフタレート)、ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)、ポリ(エチレンオキシベンゾエート)、ポリ(p−ヒドロキシベンゾエート)、ポリ(1,4−シクロヘキシリデンジメチレンテレフタレート)、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート及び同類のポリマー;
ポリ(アリーレンオキシド)、例えばポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンオキシド)、ポリ(2,6−ジフェニル−1,4−フェニレンオキシド)及び同類のポリマー;
ポリ(アリーレンスルフィド)類、例えばポリ(フェニレンスルフィド)及び同類のポリマー;
ポリエーテルイミド類;
ビニルポリマー類及びそれらのコポリマー、例えばポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニリデン、エチレン−酢酸ビニルコポリマー及び同類のポリマー;
アクリルポリマー類、ポリアクリレート類及びそれらのコポリマー、例えばポリエチルアクリレート、ポリ(n−ブチルアクリレート)、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリ(n−ブチルメタクリレート)、ポリ(n−プロピルメタクリレート)、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、ポリ(アクリル酸)、エチレン−アクリル酸コポリマー、エチレン−ビニルアルコールコポリマー、アクリロニトリルコポリマー、メタクリル酸メチル−スチレンコポリマー、エチレン−アクリル酸エチルコポリマー、メタクリレート−ブタジエン−スチレンコポリマー、ABS及び同類のポリマー;
ポリオレフィン類、例えば低密度ポリ(エチレン)、ポリ(プロピレン)、低密度塩素化ポリ(エチレン)、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)、ポリ(エチレン)、ポリ(スチレン)及び同類のポリマー;
イオノマー類;
ポリ(エピクロロヒドリン)類;
ポリ(ウレタン)類、例えばジオール(例えばグリセロール、トリメチロールプロパン、1,2,6−ヘキサントリオール、ソルビトール、ペンタエリトリトール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール及び同類の化合物)とポリイソシアネート(例えば2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート及び同類の化合物)との重合生成物;
ポリスルホン類、例えば2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンと4,4’−ジクロロジフェニルスルホンとの反応生成物;
フラン樹脂、例えばポリ(フラン);
セルロースエステルプラスチック類、例えばセルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースプロピオネート及び同類のポリマー;
シリコーン類、例えばポリ(ジメチルシロキサン)、ポリ(ジメチルシロキサン−コ−フェニルメチルシロキサン)及び同類のポリマー;或は
上記のポリマーの内の少なくとも2種のもののブレンド。
【0050】
これらの熱可塑性ポリマーの中でも、ポリアミド類、例えばポリアミド−6、ポリアミド−6,6、ポリアミド−12、ポリアミド−11、半芳香族ポリアミド類、PVC、PET、PPO並びにこれらのポリマーをベースとするブレンド及びコポリマーが特に好ましい。
【0051】
本発明のリン酸塩を用いるために、高分子材料中の化合物の分散体を得ることを可能にする任意の方法を採用することができる。第1の方法は、溶融した形の熱可塑性材料中にリン酸塩をブレンドし、随意に良好な分散を達成するためにこのブレンドを例えば二軸スクリュー押出装置を用いて高剪断に付すことから成る。別の方法は、分散させるべきリン酸塩を重合媒体中でモノマーと混合し、次いで重合を実施することから成る。別の方法は、溶融した形の熱可塑性ポリマーに熱可塑性ポリマーとリン酸塩との濃厚ブレンドをブレンドすることから成る。
【0052】
高分子材料合成用媒体中又は溶融した熱可塑性高分子材料中にリン酸塩を導入する際の形態には何ら制限はない。例えば、固体粉末の形又は水若しくは有機分散剤中の分散体の形でリン酸塩を導入することができる。
【0053】
高分子材料をベースとする組成物中のリン酸塩の重量割合は、5%又はそれ未満であるのが好ましい。
【0054】
本発明のリン酸塩は、より特定的には高分子材料がラテックスである場合に用いることができる。
【0055】
前記ラテックスは、重合性(重合可能な)有機モノマーの乳化(共)重合のための慣用のプロセスから得られたポリマーの粒子の水性分散体である。
【0056】
これらの有機モノマーは、例えば以下のものから選択することができる。
【0057】
(a)(メタ)アクリル酸アルキル(そのアルキル部分は1〜18個の炭素原子を有するのが好ましい)、特にアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸イソアミル、アクリル(2 2−エチルヘキシル)、アクリル酸オクチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸クロロエチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸3,3−ジメチルブチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸フェニル、クロロアクリル酸ブチル、クロロアクリル酸メチル、クロロアクリル酸エチル、クロロアクリル酸イソプロピル又はクロロアクリル酸シクロヘキシル。
【0058】
(b)酸部分が非重合性(重合不可能)であるモノカルボン酸のα,β−エチレン性不飽和エステル(好ましくは不飽和部分が2〜14個の炭素原子を有し且つ酸部分が2〜12個の炭素原子を有するもの)、特に酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、酢酸アリル、ビニルベルサテート(versatate)(9〜11個の炭素原子を有するα−分岐酸のエステルについての登録商標)、ラウリン酸ビニル、安息香酸ビニル、トリメチル酢酸ビニル、ピバル酸ビニル及びトリクロロ酢酸ビニル。
【0059】
(c)4〜24個の炭素原子を有するα,β−エチレン性不飽和ポリカルボン酸のエステル及び半エステル、特にフマル酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、フマル酸エチルメチル又はフマル酸2−エチルヘキシル。
【0060】
(d)ハロゲン化ビニル、特に塩化ビニル、フッ化ビニル、塩化ビニリデン又はフッ化ビニリデン。
【0061】
(e)多くとも24個の炭素原子を有するビニル芳香族化合物、特にスチレン、α−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メトキシスチレン、2−ヒドロキシメチルスチレン、4−エチルスチレン、4−エトキシスチレン、3,4−ジメチルスチレン、2−クロロスチレン、クロロスチレン、4−クロロ−3−メチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、4−ジクロロスチレン、2,6−ジクロロスチレン、2,5−ジフルオロスチレン及び1−ビニルナフタレンから選択されるもの。
【0062】
(f)共役脂肪族ジエン(好ましくは3〜12個の炭素原子を有するもの)、特に1,3−ブタジエン、イソプレン及び2−クロロ−1,3−ブタジエン。
【0063】
(g)α,β−エチレン性不飽和ニトリル(好ましくは3〜6個の炭素原子を有するもの)、例えばアクリロニトリル及びメタクリロニトリル。また、ホモポリマーラテックス、特にポリ(ビニルアセテート)ラテックスを挙げることもできる。
【0064】
また、上記の主要モノマーの内のあるものと50重量%までのその他のイオン性状のモノマー又はノニオン性状のモノマーとのコポリマーを用いることも可能である。このイオン性状のモノマーは、特に以下のもの:
・上に挙げたα,β−エチレン性不飽和カルボン酸モノマー(モノカルボン酸及びポリカルボン酸を含む)(アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸等)、
・第2、第3又は第4級アミン基を含むエチレン性モノマー(ビニルピリジン、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等)、
・スルホン化エチレン性モノマー(ビニルスルホネート、スチレンスルホネート等)、
・両性イオン性エチレン性モノマー((スルホプロピル)ジメチルアミノプロピルアクリレート)
であり、また、ノニオン性状のモノマーは、特に以下のもの:
・不飽和カルボン酸のアミド(アクリルアミド、メタクリルアミド等)、
・ポリヒドロキシプロピル化又はポリヒドロキシエチル化アルコールの(メタ)アクリレートエステル、
である。
【0065】
より特定的には、スチレンとアクリレート類とのコポリマー及びスチレン−ブタジエンコポリマーを挙げることができる。
【0066】
最後に、ラテックスの場合には、単純に撹拌しながらリン酸塩をラテックスと混合することによって本発明のリン酸塩の導入を行うこともできる。
【0067】
高分子材料をベースとする組成物に本発明のリン酸ジルコニウムを加えることによって、特にこの高分子材料の気体(特に水蒸気)遮断特性及びそれらの機械的特性(例えば温度剛性)を改善することができる。
【0068】
本発明の物質はまた、水性媒体又は有機媒体中で増粘剤として、特に攻撃的な媒体(例えば強酸性媒体)中で粘性効果を与えるために、用いることもできる。洗剤製品のゲル化も考えることができる。
【実施例】
【0069】
以下、実施例を与える。
【0070】
これらの実施例においては、以下の反応成分を用いる:
塩酸(Prolabo社、36%、d=1.19)
リン酸(Prolabo社、85%、d=1.695)
脱イオン水
ZrO232.8%を含むオキシ塩化ジルコニウム(粉末の形)。
【0071】
生成物の特徴付けのために、固定されたスリット及び銅アノード(λm=1.5418Å)を備えたPW1700回折計を用いたX線分析を実施する。
【0072】
操作条件は、5°から70°(2θ度)まで、0.020°ずつのステップで、1ステップに当たり1秒の時間とする
【0073】
示したBET比表面積は、「The Journal of the American Chemical Society」、第60巻、第309頁(1938年)に記載されたBrunauer-Emmett-Teller法から確立されたASTM法D3663−78に従って窒素吸着によって測定したものである。
【0074】
TEM写真は、次の技術を用いることによって得られる。分析すべき物質を粉末の形で、エポキシド樹脂を製造するために必要な化合物を含む混合物中に注ぐ。この混合物の温度を60℃に上昇させ、この温度に48時間保つことによって、重合を起こさせる。次いで得られたブロックから、ダイヤモンドナイフ超ミクロトームを水回収タンクと共に用いて、厚さ60〜80nmの切片を作る。炭素化コロジオンフィルムで覆われた銅グリッド上に回収された切片を次いで電子顕微鏡で検査する。
【0075】
例1
【0076】
この例には、本発明に従う物質の調製を記載する。この調製は、3つの工程を含む。
【0077】
第1工程:沈殿
【0078】
1リットル当たり2.1モルのZrO2を含むオキシ塩化ジルコニウム水溶液を前もって調製する。
【0079】
撹拌した500mlの反応器に周囲温度において以下の溶液を添加する:
塩酸:50ml
リン酸:50ml
脱イオン水:150ml。
【0080】
この混合物を撹拌した後に、前記の2.1Mオキシ塩化ジルコニウム水溶液140mlを連続的に添加する。
【0081】
オキシ塩化ジルコニウム溶液の添加が終わってから1時間、撹拌を続ける。
【0082】
第2工程:洗浄
【0083】
水性母液を除去した後に、沈殿を20g/リットルH3PO41.2リットルで洗浄し、次いで脱イオン水4リットルで洗浄する。リン酸ジルコニウムをベースとする沈殿が得られる。50℃において15時間乾燥を行い、生成物約90gが回収された。
【0084】
第3工程:結晶化
【0085】
この第3工程によって、本発明に従う物質を得ることできる。
【0086】
上記の沈殿の一部(60g)を85%リン酸230.6g及び水524.9g中に分散させ(即ち酸3モル/リットルの濃度)、こうして得られた分散体を1リットルのオートクレーブ中に移し、次いで150℃の温度に加熱する。この温度を5時間保つ。
【0087】
得られた分散体を脱イオン水で洗浄する。最終的な遠心分離から得られるケークを、約10%の固形分含有率が得られるように再分散させる。この分散体のpHは2.6だった。
【0088】
本発明に従うリン酸ジルコニウムをベースとする結晶質化合物の分散体が得られた。その特徴は次の通りだった。
【0089】
透過型電子顕微鏡(TEM)を用いた分析は、150〜400nmの範囲の寸法を有する粒子を示した。
【0090】
X線分析は、特に(002)面のピークが(−113)及び(202)面のダブレットと比較して高強度であることから、この(002)面において粒子が優先的に成長し、かくして小板状体を形成したことを示した。
【0091】
(002)面に対して垂直に測定した粒子の厚さは18nmだった。小板状体を構成する薄片の間の測定間隔は7.5Åだった。
【0092】
固形分含有率は10.4%だった。
【0093】
BET法によって測定した比表面積は37m2/gだった。
【0094】
図1は、この例に従う生成物のTEMによって得られた写真である。
【0095】
例2
【0096】
最初の2つの工程については、同じ反応成分を用いて例1におけるように調製を実施する。
【0097】
次いで、最後の結晶化工程は、次の方法で実施する。
【0098】
洗浄工程から得られたケークを85%リン酸700g及び水588g中に分散させ(即ち酸5.4モル/リットルの濃度)、こうして得られた分散体を2リットルの反応器中に移し、次いで105℃の温度に加熱する。この温度を5時間保つ。
【0099】
得られた分散体を脱イオン水で洗浄する。最終的な遠心分離から得られるケークを、158%の固形分含有率が得られるように再分散させる。この分散体のpHは3であり、導電率は0.28mS/cmだった。
【0100】
本発明に従うリン酸ジルコニウムをベースとする結晶質化合物の分散体が得られた。その特徴は次の通りだった。
【0101】
粒子を構成する小板状体の厚さは15nmだった。小板状体を構成する薄片の間の測定間隔は7.5Åだった。
【0102】
TEM分析は、六方晶形態でほぼ150〜500nmの寸法の粒子を示した。
【0103】
例3(比較例)
【0104】
この例には、最終工程の際のリン酸の濃度に関して本発明の条件に従わずに実施した調製方法を記載する。
【0105】
最初の2つの工程については、同じ反応成分を用いて例1におけるように調製を実施する。
【0106】
次いで、最後の結晶化工程は、次の方法で実施する。
【0107】
洗浄工程から得られたケーク96gを8.8Mリン酸水溶液1リットル中に分散させ、こうして得られた分散体を2リットルの反応器中に移し、次いで114℃の温度に加熱する。この温度を5時間保つ。
【0108】
得られた分散体を1mS未満の導電性(上澄み液)が得られるまで洗浄する。最終的な遠心分離から得られるケークを、20%付近の固形分含有率が得られるように再分散させる。この分散体のpHは2.5だった。
【0109】
本発明に従うリン酸ジルコニウムをベースとする結晶質化合物の分散体が得られた。その特徴は次の通りだった。
【0110】
TEM分析は、100〜200nmの範囲の寸法及び140nmの平均寸法を有する粒子を示した。粒子を構成する小板状体の厚さは50nmだった。小板状体を構成する薄片の間の測定間隔は7.5Åだった。
【0111】
X線図は、(−113)及び(202)面のピークの分離を示し、(002)面のピークの面積は(−113)及び(202)面のピークの合計面積より小さかった。
【0112】
固形分含有率は18.1%(重量による)だった。
【0113】
図2に、例1、2及び3に従う生成物のX線図を与える。これらの例はそれぞれ参照番号3M、5M及び8.8Mのグラフに対応する。
【0114】
例4
【0115】
この例には、ポリマー(PET)中における本発明の物質の使用を記載する。
【0116】
7.5リットルの重合反応器(重縮合によってポリマー約3kgを得ることを可能にするもの)に撹拌機(反応媒体の粘度を追跡するためにその駆動トルクを監視する)、蒸留カラム(エステル化の際に生成する水及び過剰分のエチレングリコールを除去するため)並びに重縮合工程のための直接真空ラインを備え付け、以下のものを導入する:
・テレフタル酸2854.5g
・イソフタル酸67.2g
・エチレングリコール1309.0g
・リン酸ジルコニウム(例1に記載した方法から得られた水中の分散体の形のもの)33.79g。
【0117】
窒素でパージした後に、反応媒体を撹拌しながら6.6バールの絶対圧下で275℃に加熱する。
【0118】
エステル化時間は60分とする。次いで20分で圧力を大気圧に戻す。
【0119】
この反応媒体中に、酸化アンチモン溶液を導入する。
【0120】
圧力を大気圧に20分間保った後に、90分で徐々に1バールから1mmHg未満の真空にする。
【0121】
圧力が1mmHgより低くなった時に、この反応混合物を285℃にする。
【0122】
重縮合時間は、圧力が1mmHg未満になった時点から始まって目標レベルの粘度を達成するのに必要な時間と定義される。
【0123】
このレベルの粘度に達したら、撹拌を停止し、反応器を3バールの圧力下に置く。得られたポリマーをダイに通して流してひも状にし、これを細断して粒体の形にする。
【0124】
PETの最終的な特徴を以下に与える:
【0125】
【表1】

【0126】
表1に示した特徴は、次の方法で測定した:
【0127】
粘度指数(ml/g):ISO規格1628/5に従って測定:重量比50/50のフェノール/o−ジクロロベンゼン混合物中に組成物0.5%の溶液状で25℃において測定。粘度指数の計算のために用いたポリマーの濃度は、組成物中に存在する粒子の割合を考慮に入れたポリマーの真の濃度である。
【0128】
色はCIE labシステムに従う:L*、a*及びb*の測定。
【0129】
この例の材料を用いて得られるプレフォーム(予備成形物)の加工性及び外観を確認するために、二重キャビティ成形型と共に42mmのスクリューを有するLX 160T装置に対して、ポリマーを注入した。
【0130】
得られたプレフォームは透明だった。
【0131】
例5
【0132】
この例には、ポリアミドタイプの別のポリマー中における本発明の物質の使用を記載する。
【0133】
ギ酸中で測定してそれぞれ134ml/g及び216ml/gの粘度指数(ISO規格EN307)を有する2種のポリアミド6を、慣用の方法に従ってカプロラクタムから合成する。これらのポリアミド6を材料A及びA’と称する。得られた粒体を粒体A及びA’と称する。
【0134】
また、本発明に従うリン酸ジルコニウムの水性分散体(例1に記載した方法の終わりに得られたもの)を重合媒体中に導入しながら、慣用の方法に従ってカプロラクタムから、ギ酸中で測定してそれぞれ130ml/g及び210ml/gの粘度指数(ISO規格EN307)を有する2種のポリアミド6も合成する。かくして、ポリアミドの総重量に対して2重量%のリン酸ジルコニウムを導入する。
【0135】
重合後に、各種ポリマーを成形して粒体にする。130ml/gの粘度指数を有するポリアミド6(材料B)から得られたものを粒体Bとする。210ml/gの粘度指数を有するポリアミド6(材料C)から得られたものを粒体Cとする。これらの粒体を洗浄して残留カプロラクタムを除去する。この目的で、粒体を沸騰水中に8時間ずつ2回浸漬し次いで真空(0.5ミリバール未満)下で110℃において16時間乾燥させる。
【0136】
粒体A及びBから試験片を作る。これらの試験片は、幅10mm、長さ80mm、厚さ4mmのものである。これらの試験片を28℃、相対湿度0%において状態調節する。
【0137】
これらの試験片に対して、材料の機械的特性を測定するために、下に示した測定方法に従って様々な試験を実施した。
【0138】
・引張モジュラスは、Zwick Z020装置を用いて、ロードセル:20kN、ジョー間距離400mmで測定される。実施した測定を下記の表2に示す。
【0139】
【表2】

【0140】
本発明に従う物質を充填剤として含むポリマーに相当する材料Bが改善された機械的特性を示すことがわかる。
【0141】
上で得られたポリマー粒体を、商品名CMPの装置を用いた押出によって成形する。
【0142】
この加工の特徴付けは次の通りである:
・押出機の温度:260〜290℃の範囲
・スクリュー速度:36rpm
・モータートルク:8〜10アンペア
・可変的延伸比(フィルム厚さ50〜70μmの範囲)。
【0143】
厚さ50〜70μmのいくつかのフィルムを得た。
【0144】
これらのフィルムを23℃、0%〜50%の範囲の相対湿度(RH)で48時間状態調節した後に、下記の方法に従ってそれらの酸素透過性の測定を行う。
【0145】
酸素透過係数は、ASTM規格D3985に従い、次の特定条件下で測定する。
【0146】
測定条件:
・温度:23℃
・湿度:0%、50%(RH)
・0.5dm2の3つの試験片に対して酸素100%で測定
・安定化時間:24時間
・測定装置:Oxtran 2/20
【0147】
【表3】

【0148】
本発明に従う物質を含むポリマーから得られたフィルムが改善された透過性を有することがわかる。
【0149】
例6
【0150】
この例は、ラテックス形態のポリマー中における本発明の物質の使用に関する。
【0151】
ポリ(塩化ビニリデン)から形成されたラテックスDiofan A232(登録商標)(固形分含有率:46%)100gを、例2に記載した方法によって得られた8.7%リン酸ジルコニウム懸濁液3.2gと混合する。この混合物を1時間撹拌し、次いでこの混合物約2mlを取り出し、ガラス板上に付着させ、フィルム塗布用器具を用いて厚さ150μmのフィルムを作る。このフィルムは、25℃において24時間乾燥させた後に、透明だった。
【図面の簡単な説明】
【0152】
【図1】透過型電子顕微鏡分析(TEM)によって得られた本発明に従う物質の写真である。
【図2】本発明に従う物質及び比較用物質のX線図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶質であること、及びせいぜい30nmの厚さの粒子から成ることを特徴とする、リン酸ジルコニウム。
【請求項2】
せいぜい20nmの厚さを有する粒子から成ることを特徴とする、請求項1に記載のリン酸ジルコニウム。
【請求項3】
X線図が2つのピークを示し、その第1のものが(002)面に相当し且つ第2のものがダブレットであって(−113)及び(202)面に相当すること、並びに[(002)面のピークの面積]対[(−113)及び(202)面のダブレットの面積]の比が1より大きいことを特徴とする、請求項1又は2に記載のリン酸ジルコニウム。
【請求項4】
0.1μm〜2μmの範囲の寸法を有する粒子から成ることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のリン酸ジルコニウム。
【請求項5】
次の工程:
・リン酸及びジルコニウム化合物を酸性媒体中で一緒にして沈殿を得る工程;
・この沈殿を得られた媒体から分離し且つせいぜい6Mの濃度のリン酸溶液中に分散させる工程;
・こうして得られた媒体を少なくとも該媒体の沸点に等しい温度において熱処理する工程:
を含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のリン酸ジルコニウムの製造方法。
【請求項6】
前記熱処理を少なくとも120℃の温度において実施することを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記沈殿を3M〜4Mの範囲の濃度のリン酸溶液中に分散させることを特徴とする、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
前記ジルコニウム化合物がオキシ塩化物であることを特徴とする、請求項5〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記酸性媒体が塩酸で形成されたことを特徴とする、請求項5〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
次の工程:
・リン酸及びジルコニウム化合物を酸性媒体中で一緒にして沈殿を得る工程;
・この沈殿を得られた媒体から分離し且つせいぜい6Mの濃度のリン酸溶液中に分散させる工程;
・こうして得られた媒体を少なくとも該媒体の沸点に等しい温度において熱処理する工程;
・前記熱処理から直接得られた分散体又は洗浄した後のこの分散体にナトリウム化合物を、Na+カチオン(前記ナトリウム化合物によってもたらされるもの)/Pの原子比が0.5になる量で添加する工程:
を含むことを特徴とする、リン酸ジルコニウムナトリウム5水和物の製造方法。
【請求項11】
次の工程:
・リン酸及びジルコニウム化合物を酸性媒体中で一緒にして沈殿を得る工程;
・この沈殿を得られた媒体から分離し且つせいぜい6Mの濃度のリン酸溶液中に分散させる工程;
・こうして得られた媒体を少なくとも該媒体の沸点に等しい温度において熱処理する工程;
・前記熱処理から直接得られた分散体又は洗浄した後のこの分散体にナトリウム化合物を、Na+カチオン(前記ナトリウム化合物によってもたらされるもの)/Pの原子比が0.5より大きくなる量、好ましくは少なくとも0.7に等しくなる量で添加する工程;
・次いで酸を添加し、それによってゲル又は固体状化合物を得て、固体状化合物の場合にはさらにこれを水中に戻してゲルを得る工程:
を含むことを特徴とする、剥離構造を有するリン酸ジルコニウムの製造方法。
【請求項12】
請求項1〜4のいずれかに記載のリン酸ジルコニウム又は請求項5〜11のいずれかに記載の方法によって製造されたリン酸ジルコニウムを用いることを特徴とする、高分子材料をベースとする組成物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−503436(P2008−503436A)
【公表日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−517358(P2007−517358)
【出願日】平成17年6月21日(2005.6.21)
【国際出願番号】PCT/FR2005/001550
【国際公開番号】WO2006/008388
【国際公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【出願人】(390023135)ロディア・シミ (146)
【Fターム(参考)】