高インピーダンス回路、フィルタ回路及び増幅回路
【課題】従来技術の高インピーダンス回路は、温度変化等の影響を受けて、高いインピーダンスを維持することができないという問題があった。
【解決手段】本発明にかかる高インピーダンス回路は、ダイオード接続されたトランジスタ21,22を備え、トランジスタ21のバックゲートとトランジスタ22のソースとが接続され、トランジスタ22のバックゲートとトランジスタ21のソースとが接続される。このような回路構成により、温度変化等の影響を抑え、高いインピーダンスを維持することができる。
【解決手段】本発明にかかる高インピーダンス回路は、ダイオード接続されたトランジスタ21,22を備え、トランジスタ21のバックゲートとトランジスタ22のソースとが接続され、トランジスタ22のバックゲートとトランジスタ21のソースとが接続される。このような回路構成により、温度変化等の影響を抑え、高いインピーダンスを維持することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高インピーダンス回路、フィルタ回路及び増幅回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機、ICレコーダ、ノートPC等の小型電子機器においては、さらなる小型化が進む傾向にある。したがって、これらに内蔵されるエレクトレット・コンデンサ・マイクロフォン(以下、ECM(Electret Condenser Microphone)と称す)についても、よりいっそう小型化することが求められている。
【0003】
図7に、特許文献1に開示されたECMの回路図を示す。図7に示すECM100は、エレクトレットコンデンサ111と、接合型電界効果トランジスタ(以下、J−FETと称す)112と、高抵抗素子115と、負荷抵抗114と、を備える。エレクトレットコンデンサ111は、導電性の振動板と固定電極とを対向させたものであり、これらのうちいずれかに誘電体(エレクトレット)が設けられている。
【0004】
図7に示すECM100では、外部から与えられる音圧に応じてエレクトレットコンデンサ111の振動板が移動し、それにともなって、当該エレクトレットコンデンサ111の容量が変化する。それにより、J−FET112のゲートに供給される入力電圧が変化する。そして、ECM100は、当該入力電圧に応じてインピーダンスが変化するJ−FET112と、負荷抵抗114と、の間のノード電位を出力電圧Voutとして生成する。このように、ECM100は、外部から与えられる音圧に応じて変化する出力電圧Voutを生成する。
【0005】
図7に示すように、エレクトレットコンデンサ111と高抵抗素子115とによりフィルタ回路(ハイパスフィルタ)を構成する。なお、このフィルタ回路は、低域ノイズを減衰させる機能を有する。ここで、フィルタ回路が低域音声信号(20Hz程度)を通過させる特性となるようにするために、高抵抗素子115のインピーダンスは、数G(ギガ)Ωの値に設定されることが望ましい。今後、ECMの小型化が進むにつれて当該ECMの容量値が小さくなるため、高抵抗素子115のインピーダンスをさらに大きくして、低いカットオフ周波数を維持することが要求されている。
【0006】
しかし、高抵抗素子115を構成する素子としてポリシリコン抵抗を用いた場合、高抵抗素子115の面積が増大してしまう。この問題を解決するため、特許文献1には、図8に示すECMが開示されている。
【0007】
図8に示すECM101は、図7に示すECM100と比較して、高抵抗素子115の代わりに、PチャネルMOSトランジスタ(以下、単にトランジスタ131と称す)と、NチャネルMOSトランジスタ(以下、単にトランジスタ132と称す)と、を備える。具体的には、それぞれダイオード接続されたトランジスタ131及びトランジスタ132が、J−FET112のゲート(ノードN)と低電位側電源端子GNDとの間に直列に設けられる。また、トランジスタ131のゲートと、トランジスタ132のゲートと、が互いに接続される。
【0008】
図8に示すECM101は、同じ半導体基板に形成された、トランジスタ131及びトランジスタ132という異種のMOSトランジスタを直列接続することにより高抵抗素子113を構成している。そのため、ECM101は、各トランジスタ131,132の閾値電圧Vthのばらつきによるインピーダンスの変化を小さくするとともに、回路規模の微細化を可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−245740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ここで、ダイオード接続されたMOSトランジスタが高いインピーダンスを有する原理について、図9A〜図9Cを用いて説明する。なお、図9A〜図9Cでは、PチャネルMOSトランジスタの例が挙げられているが、NチャネルMOSトランジスタの場合も同様の原理である。図9Aは、ダイオード接続されたPチャネルMOSトランジスタ(以下、トランジスタ200と称す)の回路図である。図9Bは、ダイオード接続されたトランジスタ200が形成されているP型半導体基板(P−)301の断面図を示す。図9Cは、ダイオード接続されたトランジスタ200の等価回路を示す図である。なお、トランジスタ200のソースには、ノードNが接続され、入力電圧Vinが供給される。また、トランジスタ200のドレインには、低電位側電源端子GNDが接続され、接地電圧が供給される。
【0011】
図9Bに示すように、トランジスタ200は、P型半導体基板(P−)に形成されたNウェル(N−)302と、Nウェル(N−)302に形成されたソース電極(P+)303及びドレイン電極(P+)304と、両電極303,304間にゲート酸化膜(不図示)を介して形成されたポリシリコンからなるゲート電極306と、を含んで構成される。また、Nウェル(N−)302には、ボディ電極(N+)305が形成される。
【0012】
図9Bに示すように、入力電圧Vinがトランジスタ200の閾値電圧よりも小さい場合、電界効果の影響により、トランジスタ200のゲート−ソース間には電流がほとんど流れない。一方、入力電圧Vinがトランジスタ200の閾値電圧に近づくと、トランジスタ200のゲート−ソース間に流れるリーク電流が増加する。つまり、トランジスタ200のゲート−ソース間には、ダイオード(以下、ダイオード201と称す)と等価の効果が現れる。また、トランジスタ200のドレイン−バックゲート間には、寄生PNダイオード(以下、ダイオード202と称す)が形成される。
【0013】
したがって、図9Aに示すトランジスタ200は、図9Cに示す回路と等価になる。なお、図9Cに示すように、ノードNには、ダイオード201のアノード及びダイオード202のカソードが接続される。低電位側電源端子GNDには、ダイオード201のカソード及びダイオード202のアノードが接続される。
【0014】
次に、トランジスタ200における電流対電圧の関係をシミュレーションした結果を図10に示す。入力電圧Vinが小信号(例えば、−0.4V〜0.4Vの範囲)の場合、いずれのダイオード201,202もオンしないため、リーク電流が極めて低い。つまり、トランジスタ200のソース−ドレイン間のインピーダンスは高い。しかし、入力電圧Vinがプラス信号(例えば、0.4V以上)の場合、当該入力電圧Vinがトランジスタ200の閾値電圧に近づけば近づくほど、ダイオード201を介して流れるリーク電流が多くなる。つまり、トランジスタ200のソース−ドレイン間のインピーダンスが低下する。また、入力電圧Vinがマイナス信号(例えば、−0.4V以下)の場合、当該入力電圧Vinがマイナス側に大きくなるほど、ダイオード202を介して流れるリーク電流が多くなる。つまり、トランジスタ200のソース−ドレイン間のインピーダンスが低下する。
【0015】
ここで、ダイオード接続されたトランジスタ200では、プロセスばらつきによって生じるトランジスタ200の閾値電圧のばらつき(以下、単に閾値電圧のばらつきと称す)や温度変化にともなって、高インピーダンス範囲が狭くなるという問題がある。例えば、閾値電圧が低い方にばらついた場合、図10に示したプラス信号に対する高インピーダンス範囲が狭くなる。また高温条件下では、ダイオード202の閾値電圧が低下するため、図10に示したマイナス信号に対する高インピーダンス範囲が狭くなる。
【0016】
このような状況において、図8に示す従来技術は、それぞれダイオード接続された2つのトランジスタ131,132を高抵抗素子113として備える。なお、高抵抗素子113は、図11に示す回路と等価になる。具体的には、図11に示すように、ノードNには、ダイオード131aのアノード及びダイオード131bのカソードが接続される。ダイオード131aのカソード及びダイオード131bのアノードには、ダイオード132aのアノード及びダイオード132bのカソードが接続される。低電位側電源端子GNDには、ダイオード132aのカソード及びダイオード132bのアノードが接続される。なお、ダイオード131aは、トランジスタ131のゲート−ソース間の等価回路である。ダイオード131bは、トランジスタ131のドレイン−バックゲート間に形成された寄生PNダイオードである。ダイオード132aは、トランジスタ132のゲート−ソース間の等価回路である。ダイオード132bは、トランジスタ132のドレイン−バックゲート間に形成された寄生PNダイオードである。
【0017】
したがって、図8に示す従来技術では、トランジスタ131,132の閾値電圧のばらつきや温度変化により、高抵抗素子113の高インピーダンス範囲が狭くなるという問題があった。つまり、図8に示す従来技術では、閾値電圧のばらつきや温度変化等の影響を受けて、高いインピーダンスを維持することができないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明にかかる高インピーダンス回路は、ダイオード接続された第1及び第2のトランジスタを備え、前記第1のトランジスタのバックゲートと前記第2のトランジスタのソースとが接続され、前記第2のトランジスタのバックゲートと前記第1のトランジスタのソースとが接続される。
【0019】
上述のような回路構成により、温度変化等による影響を抑え、高いインピーダンスを維持することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、温度変化等の影響を抑え、高いインピーダンスを維持することが可能な高インピーダンス回路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態1にかかるECMの回路図である。
【図2A】本発明の実施の形態1にかかる高インピーダンス回路の回路図である。
【図2B】本発明の実施の形態1にかかる高インピーダンス回路の断面図である。
【図2C】本発明の実施の形態1にかかる高インピーダンス回路の等価回路を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態1にかかる高インピーダンス回路と従来技術の高抵抗素子との間のインピーダンスのばらつき耐性の違いを説明するための図である。
【図4A】本発明の実施の形態2にかかる高インピーダンス回路の回路図である。
【図4B】本発明の実施の形態2にかかる高インピーダンス回路の断面図である。
【図4C】本発明の実施の形態2にかかる高インピーダンス回路の等価回路を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態1にかかる高インピーダンス回路を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態2にかかる高インピーダンス回路を示す図である。
【図7】特許文献1に記載されたECMの回路図である。
【図8】特許文献1に記載されたECMの回路図である。
【図9A】ダイオード接続されたPチャネルMOSトランジスタの回路図である。
【図9B】ダイオード接続されたPチャネルMOSトランジスタの断面図である。
【図9C】ダイオード接続されたPチャネルMOSトランジスタの等価回路を示す図である。
【図10】ダイオード接続されたPチャネルMOSトランジスタのI−V特性を示す図である。
【図11】特許文献1に記載された高抵抗素子の等価回路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。なお、図面は簡略的なものであるから、この図面の記載を根拠として本発明の技術的範囲を狭く解釈してはならない。また、同一の要素には、同一の符号を付し、重複する説明は省略するものとする。
【0023】
実施の形態1
図1に、本発明の実施の形態1にかかる高インピーダンス回路3を備えたECM(増幅回路)1を示す。図1に示すECM1は、エレクトレットコンデンサ(容量素子)11と、接合型電界効果トランジスタ(インピーダンス変換素子。以下、J−FETと称す)12と、高インピーダンス回路3と、負荷抵抗(電流制御用抵抗)14と、を備える。なお、エレクトレットコンデンサ11と高インピーダンス回路3とによりフィルタ回路(ハイパスフィルタ)を構成する。
【0024】
負荷抵抗14とJ−FET112とは、高電位側電源端子VDDと低電位側電源端子(電源電圧端子)GNDとの間に直列に接続される。負荷抵抗14とJ−FET12とを接続する信号線上のノードMは、外部出力端子15に接続される。エレクトレットコンデンサ11の一端は、ノードNを介してJ−FET12のゲートに接続される。エレクトレットコンデンサ11の他端は、低電位側電源端子GNDに接続される。高インピーダンス回路3は、ノードNと低電位側電源端子GNDとの間に接続される。
【0025】
図2Aに、高インピーダンス回路3の詳細を示す。高インピーダンス回路3は、PチャネルMOSトランジスタ(第1のトランジスタ。以下、単にトランジスタと称す)21と、PチャネルMOSトランジスタ(第2のトランジスタ。以下、単にトランジスタと称す)22を有する。トランジスタ21,22は、いずれもダイオード接続されている。トランジスタ21のドレインは、さらにノードNに接続される。トランジスタ21のソースは、トランジスタ22のバックゲートに接続される。トランジスタ22のソースは、トランジスタ21のバックゲートに接続される。トランジスタ22のドレインは、さらに低電位側電源端子GNDに接続される。
【0026】
図1において、エレクトレットコンデンサ11は、誘電性の振動板(振動膜)と固定電極(背面電極)とを対向させたものであり、これらのいずれかに誘電体(エレクトレット)が設けられている。
【0027】
ECM1では、外部から与えられる音圧に応じてエレクトレットコンデンサ11の振動板が移動し、それにともなって、当該エレクトレットコンデンサ11の容量が変化する。それにより、J−FET12のゲートに供給される入力電圧(ノードNの電圧Vin)が変化する。J−FET12のソース−ドレイン間のインピーダンスは、入力電圧Vinに応じて変化するため、それに応じてノードMの電圧も変化する。ECM1は、ノードMの電圧を出力電圧Voutとして外部出力端子15から出力する。このように、ECM1は、外部から与えられる音圧に応じて変化する出力電圧Voutを生成する。
【0028】
ECM1は、上述のような回路構成の高インピーダンス回路3を備えることにより、プロセスばらつきによって生じるトランジスタ21,22の閾値電圧のばらつき(以下、単に閾値電圧のばらつきと称す)や温度変化の影響を抑え、高いインピーダンスを維持することを特徴とする。なお、高インピーダンス回路3は、ダイオード接続されたトランジスタが高インピーダンスを維持することのできる電圧範囲内で用いられる。以下、詳細を説明する。
【0029】
図2Bは、高インピーダンス回路3を構成するトランジスタ21,22が形成されているP型半導体基板(P−)31の断面図である。図2Cは、高インピーダンス回路3の等価回路を示す図である。なお、上述のように、トランジスタ21のドレインには、ノードNが接続され、入力電圧Vinが供給される。また、トランジスタ22のドレインには、低電位側電源端子GNDが接続され、接地電圧が供給される。
【0030】
図2Bに示すように、トランジスタ21は、P型半導体基板(P−)31に形成されたNウェル(N−)32と、Nウェル(N−)32に形成されたソース電極(P+)34及びドレイン電極(P+)35と、両電極34,35間にゲート酸化膜(不図示)を介して形成されたポリシリコンからなるゲート電極40と、を含んで構成される。また、Nウェル(N−)32には、ボディ電極(N+)36が形成される。
【0031】
トランジスタ22は、P型半導体基板(P−)31に形成されたNウェル(N−)33と、Nウェル(N−)33に形成されたソース電極(P+)37及びドレイン電極(P+)38と、両電極37,38間にゲート酸化膜(不図示)を介して形成されたポリシリコンからなるゲート電極41と、を含んで構成される。また、Nウェル(N−)33には、ボディ電極(N+)39が形成される。
【0032】
図2Bに示すように、トランジスタ21のゲート−ソース間電圧が閾値電圧よりも小さい場合、電界効果の影響により、トランジスタ21のゲート−ソース間には電流がほとんど流れない。一方、トランジスタ21のゲート−ソース間電圧が閾値電圧に近づくと、トランジスタ21のゲート−ソース間に流れるリーク電流が増加する。つまり、トランジスタ21のゲート−ソース間には、ダイオード(以下、ダイオード21bと称す)と等価の効果が現れる。また、トランジスタ21のドレイン−バックゲート間には、寄生PNダイオード(以下、ダイオード21aと称す)が形成される。
【0033】
同様に、トランジスタ22のゲート−ソース間電圧が閾値電圧よりも小さい場合、電界効果の影響により、トランジスタ22のゲート−ソース間には電流がほとんど流れない。一方、トランジスタ22のゲート−ソース間電圧が閾値電圧に近づくと、トランジスタ22のゲート−ソース間に流れるリーク電流が増加する。つまり、トランジスタ22のゲート−ソース間には、ダイオード(以下、ダイオード22bと称す)と等価の効果が現れる。また、トランジスタ22のドレイン−バックゲート間には、寄生PNダイオード(以下、ダイオード22aと称す)が形成される。
【0034】
したがって、図2Aに示す高インピーダンス回路3は、図2Cに示す回路と等価になる。なお、図2Cに示すように、ノードNには、ダイオード21aのアノード及びダイオード21bのカソードが接続される。ダイオード21aのカソードは、ダイオード22bのアノードに接続される。ダイオード22bのカソードは、低電位側電源端子GNDに接続される。ダイオード21bのアノードは、ダイオード22aのカソードに接続される。ダイオード22aのアノードは、低電位側電源端子GNDに接続される。
【0035】
つまり、ダイオード21aとダイオード22bとは、ノードNから低電位側電源端子GNDに向けて順方向に直列接続される。また、ダイオード21bとダイオード22aとは、低電位側電源端子GNDからノードNに向けて順方向に直列接続される。また、ダイオード21aとダイオード22bとが直列接続された信号線と、ダイオード21bとダイオード22aとが直列接続された信号線とは、互いに独立した信号経路であって、ノードNと低電位側電源端子GNDとの間に並列に接続される。
【0036】
さらに、各信号経路には、トランジスタのゲート−ソース間に形成されるダイオード(例えば、ダイオード21a)と、トランジスタのドレイン−バックゲート間に形成される寄生PNダイオード(例えば、ダイオード22b)とが混在して直列に接続されている。したがって、閾値電圧のばらつきが生じた場合でも、いずれか一方の信号経路のみに偏って当該ばらつきの影響が生じることはない。同様に、温度変化が生じた場合でも、いずれか一方の信号経路のみに偏って当該温度変化の影響が生じることはない。つまり、本実施の形態にかかる高インピーダンス回路3は、ばらつき耐性が強い。
【0037】
一方、従来技術における高抵抗素子113の場合、図11に示すように、ノードNと低電位側電源端子GNDとの間に、トランジスタ131,132毎に閉じられた複数の信号経路を有する。したがって、各トランジスタ131,132内では、インピーダンスの低い信号経路に支配的に電流が流れる。そのため、閾値電圧のばらつきや温度変化の影響を受けた複数の信号経路のうち、最もインピーダンスの低い信号経路が選択されて支配的に電流が流れることになる。つまり、従来技術における高抵抗素子113は、閾値電圧のばらつきや温度変化の影響により、インピーダンスを高い状態に安定させることができない。
【0038】
なお、NチャネルMOSトランジスタ132は、PチャネルMOSトランジスタ131よりも、ゲート−ソース間にリーク電流が流れやすい。したがって、マイナス信号よりもプラス信号側の信号経路、つまり、ノードNから低電位側電源端子GNDに向けて電流が流れる場合の信号経路において、インピーダンスが小さくなるようにばらついてしまう可能性が高い。
【0039】
ここで、本実施の形態にかかる高インピーダンス回路3のインピーダンスと、従来技術における高抵抗素子113のインピーダンスと、を比較する。
【0040】
まず、従来技術における高抵抗素子113のインピーダンスについて説明する(図11)。ダイオード131aのインピーダンスをRP(SD)、ダイオード131bのインピーダンスをRP(BD)、ダイオード132aのインピーダンスをRN(SD)、ダイオード132bのインピーダンスをRN(BD)とした場合、高抵抗素子113のトータルインピーダンスR0は、以下のように表される。
R0={RP(SD)//RP(BD)}+{RN(SD)//RN(BD)}・・・(1)
【0041】
例えば、RP(SD)=1/n×RP(BD)=A、 RN(SD)=1/n×RN(BD)=Aである場合について説明する(n>0,A>0)。この場合、式(1)より、
R0={2n/(n+1)}×A
となる。
【0042】
次に、本実施の形態かかる高インピーダンス回路3のインピーダンスについて説明する(図2C)。ダイオード21aのインピーダンスをRP(BD)、ダイオード21bのインピーダンスをRP(SD)、ダイオード22aのインピーダンスをRP(BD)、ダイオード22bのインピーダンスをRP(SD)とした場合、高インピーダンス回路3のトータルインピーダンスR1は、以下のように表される。
R1={RP(BD)+RP(SD)}//{RP(BD)+RP(SD)}・・・(2)
【0043】
例えば、従来技術の条件と同様に、RP(SD)=1/n×RP(BD)=A、 RN(SD)=1/n×RN(BD)=Aである場合について説明する。この場合、式(2)より、
R1={(1+n)/2}×A
となる。
【0044】
したがって、n>0の場合、常に{(1+n)/2}≧{2n/(n+1)}を満たす。つまり、本実施の形態にかかる高インピーダンス回路3は、従来技術よりも、同等以上のインピーダンスを有する。
【0045】
なお、閾値電圧のばらつきによって、主としてインピーダンスRP(SD),RN(SD)が変化する。また、温度変化によって、主としてインピーダンスRP(BD),RN(BD)が変化する。したがって、閾値電圧のばらつき及び温度変化によって各ダイオードのインピーダンスが大きく変化するほど、係数nが1から離れる程度が大きくなる。
【0046】
図3は、係数nと、トータルインピーダンスR0,R1との関係を示す図である。図3に示すように、係数nが1から離れるほど、従来技術における高抵抗素子113のトータルインピーダンスR0の低下が顕著になり、本実施の形態にかかる高インピーダンス回路3とのトータルインピーダンスR1との差分が大きくなる。つまり、本実施の形態にかかる高インピーダンス回路3は、従来技術よりも、閾値電圧のばらつきや温度変化の影響を抑え、高いインピーダンスを維持することができる。なお、図3に示すように、本実施の形態にかかる高インピーダンス回路3のトータルインピーダンスR1は、常に、従来技術における高抵抗素子113のトータルインピーダンスR0以上の値を示している。
【0047】
このように、本実施の形態にかかる高インピーダンス回路3は、トランジスタ21,22毎に閉じられた複数の信号経路を有するのではなく、等価回路に示されるように(図2C参照)、ノードNと低電位側電源端子GNDとの間に独立した2つの信号経路を有する。そして、本実施の形態にかかる高インピーダンス回路3は、トランジスタ21,22の閾値電圧のばらつきや温度変化が生じた場合でも、独立した2つの信号経路にそれらの影響が分散される構成となっている。そのため、本実施の形態にかかる高インピーダンス回路3は、従来技術と比較して、閾値電圧のばらつきや温度変化の影響を受けにくく、高いインピーダンスを維持することができる。
【0048】
実施の形態2
本実施の形態にかかる高インピーダンス回路4を備えたECM2について説明する。実施の形態1にかかる高インピーダンス回路3は、2つのPチャネルMOSトランジスタ21,22を備えていた。一方、本実施の形態にかかる高インピーダンス回路4は、2つのNチャネルMOSトランジスタ51,52を備える。なお、ECM2に設けられた高インピーダンス回路4以外の回路構成及び動作は、実施の形態1にかかる高インピーダンス回路3と同様であるため、説明を省略する。なお、高インピーダンス回路4は、ダイオード接続されたトランジスタが高インピーダンスを維持することのできる電圧範囲内で用いられる。
【0049】
図4Aに、高インピーダンス回路4の詳細を示す。高インピーダンス回路4は、上述のように、PチャネルMOSトランジスタ(以下、単にトランジスタと称す)51,52を有する。トランジスタ51,52は、いずれもダイオード接続されている。トランジスタ51のドレインは、さらにノードNに接続される。トランジスタ51のソースは、トランジスタ52のバックゲートに接続される。トランジスタ52のソースは、トランジスタ51のバックゲートに接続される。トランジスタ52のドレインは、さらに低電位側電源端子GNDに接続される。
【0050】
図4Bは、高インピーダンス回路4を構成するトランジスタ51,52が形成されているP型半導体基板(P−)61の断面図である。図4Cは、高インピーダンス回路4の等価回路を示す図である。なお、上述のように、トランジスタ51のドレインには、ノードNが接続され、電圧Vinが供給される。また、トランジスタ52のドレインには、低電位側電源端子GNDが接続され、接地電圧が供給される。
【0051】
図4Bに示すように、トランジスタ51は、P型半導体基板(P−)61に形成されたPウェル(P)62と、Pウェル(P)62に形成されたNウェル(N−)63と、Nウェル(N−)63に形成されたPウェル(P−)64と、Pウェル(P−)64に形成されたソース電極(N+)67及びドレイン電極(N+)68と、両電極間67,68間にゲート酸化膜を介して形成されたポリシリコンからなるゲート電極73と、を含んで構成される。また、Pウェル(P−)64には、ボディ電極(P+)69が形成される。
【0052】
トランジスタ52は、P型半導体基板(P−)61に形成されたPウェル(P)62と、Pウェル(P)62に形成されたNウェル(N−)65と、Nウェル(N−)65に形成されたPウェル(P−)66と、Pウェル(P−)66に形成されたソース電極(N+)70及びドレイン電極(N+)71と、両電極間70,71間にゲート酸化膜を介して形成されたポリシリコンからなるゲート電極74と、を含んで構成される。また、Pウェル(P−)66には、ボディ電極(P+)72が形成される。
【0053】
図4Bに示すように、トランジスタ51のゲート−ソース間電圧が閾値電圧よりも小さい場合、電界効果の影響により、トランジスタ51のゲート−ソース間には電流がほとんど流れない。一方、トランジスタ51のゲート−ソース間電圧が閾値電圧に近づくと、トランジスタ51のゲート−ソース間に流れるリーク電流が増加する。つまり、トランジスタ51のゲート−ソース間には、ダイオード(以下、ダイオード51bと称す)と等価の効果が現れる。また、トランジスタ51のドレイン−バックゲート間には、寄生PNダイオード(以下、ダイオード51aと称す)が形成される。
【0054】
同様に、トランジスタ52のゲート−ソース間電圧が閾値電圧よりも小さい場合、電界効果の影響により、トランジスタ52のゲート−ソース間には電流がほとんど流れない。一方、トランジスタ52のゲート−ソース間電圧が閾値電圧に近づくと、トランジスタ52のゲート−ソース間に流れるリーク電流が増加する。つまり、トランジスタ52のゲート−ソース間には、ダイオード(以下、ダイオード52bと称す)と等価の効果が現れる。また、トランジスタ52のドレイン−バックゲート間には、寄生PNダイオード(以下、ダイオード52aと称す)が形成される。
【0055】
したがって、図4Aに示す高インピーダンス回路4は、図4Cに示す回路と等価になる。なお、図4Cに示すように、ノードNには、ダイオード51aのカソード及びダイオード51bのアノードが接続される。ダイオード51aのアノードは、ダイオード52bのカソードに接続される。ダイオード52bのアノードは、低電位側電源端子GNDに接続される。ダイオード51bのカソードは、ダイオード52aのアノードに接続される。ダイオード52aのカソードは、低電位側電源端子GNDに接続される。
【0056】
つまり、ダイオード51bとダイオード52aとは、ノードNから低電位側電源端子GNDに向けて順方向に直列接続される。また、ダイオード51aとダイオード52bとは、低電位側電源端子GNDからノードNに向けて順方向に直列接続される。また、ダイオード51bとダイオード52aとが直列接続された信号線と、ダイオード51aとダイオード52bとが直列接続された信号線とは、互いに独立した信号経路であって、ノードNと低電位側電源端子GNDとの間に並列に接続される。
【0057】
さらに、各信号経路には、トランジスタのゲート−ソース間に形成されるダイオード(例えば、ダイオード51a)と、トランジスタのドレイン−バックゲート間に形成される寄生PNダイオード(例えば、ダイオード52b)とが混在して直列に接続されている。したがって、閾値電圧のばらつきが生じた場合でも、いずれか一方の信号経路のみに偏って当該ばらつきの影響が生じることはない。同様に、温度変化が生じた場合でも、いずれか一方の信号経路のみに偏って当該温度変化の影響が生じることはない。つまり、本実施の形態にかかる高インピーダンス回路4は、ばらつき耐性が強い。
【0058】
このように、本実施の形態にかかる高インピーダンス回路4は、トランジスタ51,52毎に閉じられた複数の信号経路を有するのではなく、等価回路に示されるように(図4C参照)、ノードNと低電位側電源端子GNDとの間に独立した2つの信号経路を有する。そして、本実施の形態にかかる高インピーダンス回路4は、トランジスタ51,52の閾値電圧のばらつきや温度変化が生じた場合でも、独立した2つの信号経路にそれらの影響が分散される構成となっている。そのため、本実施の形態にかかる高インピーダンス回路4は、従来技術よりも、閾値電圧のばらつきや温度変化の影響を受けにくく、高いインピーダンスを維持することができる。
【0059】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。実施の形態1では、ECM1において、ノードNと低電位側電源端子GNDとの間に、1つの高インピーダンス回路3が接続される場合を例に説明したが、これに限られない。図5に示すように、複数の高インピーダンス回路3が直列に接続される回路構成にも適宜変更可能である。
【0060】
同様に、実施の形態2では、ECM2において、ノードNと低電位側電源端子GNDとの間に、1つの高インピーダンス回路4が接続される場合を例に説明したが、これに限られない。図6に示すように、複数の高インピーダンス回路4が直列に接続される回路構成にも適宜変更可能である。
【0061】
また、上記実施の形態では、インピーダンス変換素子としてJ−FETが用いられた場合を例に説明したが、これに限られない。J−FETに代えて、バイポーラトランジスタが用いられる回路構成にも適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0062】
1,2 ECM
3,4 高インピーダンス回路
11 エレクトレットコンデンサ
12 J−FET
14 負荷抵抗
15 外部出力端子
21,22 PチャネルMOSトランジスタ
51,52 NチャネルMOSトランジスタ
21a,21b,22a,22b ダイオード
51a,51b,52a,52b ダイオード
【技術分野】
【0001】
本発明は、高インピーダンス回路、フィルタ回路及び増幅回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機、ICレコーダ、ノートPC等の小型電子機器においては、さらなる小型化が進む傾向にある。したがって、これらに内蔵されるエレクトレット・コンデンサ・マイクロフォン(以下、ECM(Electret Condenser Microphone)と称す)についても、よりいっそう小型化することが求められている。
【0003】
図7に、特許文献1に開示されたECMの回路図を示す。図7に示すECM100は、エレクトレットコンデンサ111と、接合型電界効果トランジスタ(以下、J−FETと称す)112と、高抵抗素子115と、負荷抵抗114と、を備える。エレクトレットコンデンサ111は、導電性の振動板と固定電極とを対向させたものであり、これらのうちいずれかに誘電体(エレクトレット)が設けられている。
【0004】
図7に示すECM100では、外部から与えられる音圧に応じてエレクトレットコンデンサ111の振動板が移動し、それにともなって、当該エレクトレットコンデンサ111の容量が変化する。それにより、J−FET112のゲートに供給される入力電圧が変化する。そして、ECM100は、当該入力電圧に応じてインピーダンスが変化するJ−FET112と、負荷抵抗114と、の間のノード電位を出力電圧Voutとして生成する。このように、ECM100は、外部から与えられる音圧に応じて変化する出力電圧Voutを生成する。
【0005】
図7に示すように、エレクトレットコンデンサ111と高抵抗素子115とによりフィルタ回路(ハイパスフィルタ)を構成する。なお、このフィルタ回路は、低域ノイズを減衰させる機能を有する。ここで、フィルタ回路が低域音声信号(20Hz程度)を通過させる特性となるようにするために、高抵抗素子115のインピーダンスは、数G(ギガ)Ωの値に設定されることが望ましい。今後、ECMの小型化が進むにつれて当該ECMの容量値が小さくなるため、高抵抗素子115のインピーダンスをさらに大きくして、低いカットオフ周波数を維持することが要求されている。
【0006】
しかし、高抵抗素子115を構成する素子としてポリシリコン抵抗を用いた場合、高抵抗素子115の面積が増大してしまう。この問題を解決するため、特許文献1には、図8に示すECMが開示されている。
【0007】
図8に示すECM101は、図7に示すECM100と比較して、高抵抗素子115の代わりに、PチャネルMOSトランジスタ(以下、単にトランジスタ131と称す)と、NチャネルMOSトランジスタ(以下、単にトランジスタ132と称す)と、を備える。具体的には、それぞれダイオード接続されたトランジスタ131及びトランジスタ132が、J−FET112のゲート(ノードN)と低電位側電源端子GNDとの間に直列に設けられる。また、トランジスタ131のゲートと、トランジスタ132のゲートと、が互いに接続される。
【0008】
図8に示すECM101は、同じ半導体基板に形成された、トランジスタ131及びトランジスタ132という異種のMOSトランジスタを直列接続することにより高抵抗素子113を構成している。そのため、ECM101は、各トランジスタ131,132の閾値電圧Vthのばらつきによるインピーダンスの変化を小さくするとともに、回路規模の微細化を可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−245740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ここで、ダイオード接続されたMOSトランジスタが高いインピーダンスを有する原理について、図9A〜図9Cを用いて説明する。なお、図9A〜図9Cでは、PチャネルMOSトランジスタの例が挙げられているが、NチャネルMOSトランジスタの場合も同様の原理である。図9Aは、ダイオード接続されたPチャネルMOSトランジスタ(以下、トランジスタ200と称す)の回路図である。図9Bは、ダイオード接続されたトランジスタ200が形成されているP型半導体基板(P−)301の断面図を示す。図9Cは、ダイオード接続されたトランジスタ200の等価回路を示す図である。なお、トランジスタ200のソースには、ノードNが接続され、入力電圧Vinが供給される。また、トランジスタ200のドレインには、低電位側電源端子GNDが接続され、接地電圧が供給される。
【0011】
図9Bに示すように、トランジスタ200は、P型半導体基板(P−)に形成されたNウェル(N−)302と、Nウェル(N−)302に形成されたソース電極(P+)303及びドレイン電極(P+)304と、両電極303,304間にゲート酸化膜(不図示)を介して形成されたポリシリコンからなるゲート電極306と、を含んで構成される。また、Nウェル(N−)302には、ボディ電極(N+)305が形成される。
【0012】
図9Bに示すように、入力電圧Vinがトランジスタ200の閾値電圧よりも小さい場合、電界効果の影響により、トランジスタ200のゲート−ソース間には電流がほとんど流れない。一方、入力電圧Vinがトランジスタ200の閾値電圧に近づくと、トランジスタ200のゲート−ソース間に流れるリーク電流が増加する。つまり、トランジスタ200のゲート−ソース間には、ダイオード(以下、ダイオード201と称す)と等価の効果が現れる。また、トランジスタ200のドレイン−バックゲート間には、寄生PNダイオード(以下、ダイオード202と称す)が形成される。
【0013】
したがって、図9Aに示すトランジスタ200は、図9Cに示す回路と等価になる。なお、図9Cに示すように、ノードNには、ダイオード201のアノード及びダイオード202のカソードが接続される。低電位側電源端子GNDには、ダイオード201のカソード及びダイオード202のアノードが接続される。
【0014】
次に、トランジスタ200における電流対電圧の関係をシミュレーションした結果を図10に示す。入力電圧Vinが小信号(例えば、−0.4V〜0.4Vの範囲)の場合、いずれのダイオード201,202もオンしないため、リーク電流が極めて低い。つまり、トランジスタ200のソース−ドレイン間のインピーダンスは高い。しかし、入力電圧Vinがプラス信号(例えば、0.4V以上)の場合、当該入力電圧Vinがトランジスタ200の閾値電圧に近づけば近づくほど、ダイオード201を介して流れるリーク電流が多くなる。つまり、トランジスタ200のソース−ドレイン間のインピーダンスが低下する。また、入力電圧Vinがマイナス信号(例えば、−0.4V以下)の場合、当該入力電圧Vinがマイナス側に大きくなるほど、ダイオード202を介して流れるリーク電流が多くなる。つまり、トランジスタ200のソース−ドレイン間のインピーダンスが低下する。
【0015】
ここで、ダイオード接続されたトランジスタ200では、プロセスばらつきによって生じるトランジスタ200の閾値電圧のばらつき(以下、単に閾値電圧のばらつきと称す)や温度変化にともなって、高インピーダンス範囲が狭くなるという問題がある。例えば、閾値電圧が低い方にばらついた場合、図10に示したプラス信号に対する高インピーダンス範囲が狭くなる。また高温条件下では、ダイオード202の閾値電圧が低下するため、図10に示したマイナス信号に対する高インピーダンス範囲が狭くなる。
【0016】
このような状況において、図8に示す従来技術は、それぞれダイオード接続された2つのトランジスタ131,132を高抵抗素子113として備える。なお、高抵抗素子113は、図11に示す回路と等価になる。具体的には、図11に示すように、ノードNには、ダイオード131aのアノード及びダイオード131bのカソードが接続される。ダイオード131aのカソード及びダイオード131bのアノードには、ダイオード132aのアノード及びダイオード132bのカソードが接続される。低電位側電源端子GNDには、ダイオード132aのカソード及びダイオード132bのアノードが接続される。なお、ダイオード131aは、トランジスタ131のゲート−ソース間の等価回路である。ダイオード131bは、トランジスタ131のドレイン−バックゲート間に形成された寄生PNダイオードである。ダイオード132aは、トランジスタ132のゲート−ソース間の等価回路である。ダイオード132bは、トランジスタ132のドレイン−バックゲート間に形成された寄生PNダイオードである。
【0017】
したがって、図8に示す従来技術では、トランジスタ131,132の閾値電圧のばらつきや温度変化により、高抵抗素子113の高インピーダンス範囲が狭くなるという問題があった。つまり、図8に示す従来技術では、閾値電圧のばらつきや温度変化等の影響を受けて、高いインピーダンスを維持することができないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明にかかる高インピーダンス回路は、ダイオード接続された第1及び第2のトランジスタを備え、前記第1のトランジスタのバックゲートと前記第2のトランジスタのソースとが接続され、前記第2のトランジスタのバックゲートと前記第1のトランジスタのソースとが接続される。
【0019】
上述のような回路構成により、温度変化等による影響を抑え、高いインピーダンスを維持することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、温度変化等の影響を抑え、高いインピーダンスを維持することが可能な高インピーダンス回路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態1にかかるECMの回路図である。
【図2A】本発明の実施の形態1にかかる高インピーダンス回路の回路図である。
【図2B】本発明の実施の形態1にかかる高インピーダンス回路の断面図である。
【図2C】本発明の実施の形態1にかかる高インピーダンス回路の等価回路を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態1にかかる高インピーダンス回路と従来技術の高抵抗素子との間のインピーダンスのばらつき耐性の違いを説明するための図である。
【図4A】本発明の実施の形態2にかかる高インピーダンス回路の回路図である。
【図4B】本発明の実施の形態2にかかる高インピーダンス回路の断面図である。
【図4C】本発明の実施の形態2にかかる高インピーダンス回路の等価回路を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態1にかかる高インピーダンス回路を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態2にかかる高インピーダンス回路を示す図である。
【図7】特許文献1に記載されたECMの回路図である。
【図8】特許文献1に記載されたECMの回路図である。
【図9A】ダイオード接続されたPチャネルMOSトランジスタの回路図である。
【図9B】ダイオード接続されたPチャネルMOSトランジスタの断面図である。
【図9C】ダイオード接続されたPチャネルMOSトランジスタの等価回路を示す図である。
【図10】ダイオード接続されたPチャネルMOSトランジスタのI−V特性を示す図である。
【図11】特許文献1に記載された高抵抗素子の等価回路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。なお、図面は簡略的なものであるから、この図面の記載を根拠として本発明の技術的範囲を狭く解釈してはならない。また、同一の要素には、同一の符号を付し、重複する説明は省略するものとする。
【0023】
実施の形態1
図1に、本発明の実施の形態1にかかる高インピーダンス回路3を備えたECM(増幅回路)1を示す。図1に示すECM1は、エレクトレットコンデンサ(容量素子)11と、接合型電界効果トランジスタ(インピーダンス変換素子。以下、J−FETと称す)12と、高インピーダンス回路3と、負荷抵抗(電流制御用抵抗)14と、を備える。なお、エレクトレットコンデンサ11と高インピーダンス回路3とによりフィルタ回路(ハイパスフィルタ)を構成する。
【0024】
負荷抵抗14とJ−FET112とは、高電位側電源端子VDDと低電位側電源端子(電源電圧端子)GNDとの間に直列に接続される。負荷抵抗14とJ−FET12とを接続する信号線上のノードMは、外部出力端子15に接続される。エレクトレットコンデンサ11の一端は、ノードNを介してJ−FET12のゲートに接続される。エレクトレットコンデンサ11の他端は、低電位側電源端子GNDに接続される。高インピーダンス回路3は、ノードNと低電位側電源端子GNDとの間に接続される。
【0025】
図2Aに、高インピーダンス回路3の詳細を示す。高インピーダンス回路3は、PチャネルMOSトランジスタ(第1のトランジスタ。以下、単にトランジスタと称す)21と、PチャネルMOSトランジスタ(第2のトランジスタ。以下、単にトランジスタと称す)22を有する。トランジスタ21,22は、いずれもダイオード接続されている。トランジスタ21のドレインは、さらにノードNに接続される。トランジスタ21のソースは、トランジスタ22のバックゲートに接続される。トランジスタ22のソースは、トランジスタ21のバックゲートに接続される。トランジスタ22のドレインは、さらに低電位側電源端子GNDに接続される。
【0026】
図1において、エレクトレットコンデンサ11は、誘電性の振動板(振動膜)と固定電極(背面電極)とを対向させたものであり、これらのいずれかに誘電体(エレクトレット)が設けられている。
【0027】
ECM1では、外部から与えられる音圧に応じてエレクトレットコンデンサ11の振動板が移動し、それにともなって、当該エレクトレットコンデンサ11の容量が変化する。それにより、J−FET12のゲートに供給される入力電圧(ノードNの電圧Vin)が変化する。J−FET12のソース−ドレイン間のインピーダンスは、入力電圧Vinに応じて変化するため、それに応じてノードMの電圧も変化する。ECM1は、ノードMの電圧を出力電圧Voutとして外部出力端子15から出力する。このように、ECM1は、外部から与えられる音圧に応じて変化する出力電圧Voutを生成する。
【0028】
ECM1は、上述のような回路構成の高インピーダンス回路3を備えることにより、プロセスばらつきによって生じるトランジスタ21,22の閾値電圧のばらつき(以下、単に閾値電圧のばらつきと称す)や温度変化の影響を抑え、高いインピーダンスを維持することを特徴とする。なお、高インピーダンス回路3は、ダイオード接続されたトランジスタが高インピーダンスを維持することのできる電圧範囲内で用いられる。以下、詳細を説明する。
【0029】
図2Bは、高インピーダンス回路3を構成するトランジスタ21,22が形成されているP型半導体基板(P−)31の断面図である。図2Cは、高インピーダンス回路3の等価回路を示す図である。なお、上述のように、トランジスタ21のドレインには、ノードNが接続され、入力電圧Vinが供給される。また、トランジスタ22のドレインには、低電位側電源端子GNDが接続され、接地電圧が供給される。
【0030】
図2Bに示すように、トランジスタ21は、P型半導体基板(P−)31に形成されたNウェル(N−)32と、Nウェル(N−)32に形成されたソース電極(P+)34及びドレイン電極(P+)35と、両電極34,35間にゲート酸化膜(不図示)を介して形成されたポリシリコンからなるゲート電極40と、を含んで構成される。また、Nウェル(N−)32には、ボディ電極(N+)36が形成される。
【0031】
トランジスタ22は、P型半導体基板(P−)31に形成されたNウェル(N−)33と、Nウェル(N−)33に形成されたソース電極(P+)37及びドレイン電極(P+)38と、両電極37,38間にゲート酸化膜(不図示)を介して形成されたポリシリコンからなるゲート電極41と、を含んで構成される。また、Nウェル(N−)33には、ボディ電極(N+)39が形成される。
【0032】
図2Bに示すように、トランジスタ21のゲート−ソース間電圧が閾値電圧よりも小さい場合、電界効果の影響により、トランジスタ21のゲート−ソース間には電流がほとんど流れない。一方、トランジスタ21のゲート−ソース間電圧が閾値電圧に近づくと、トランジスタ21のゲート−ソース間に流れるリーク電流が増加する。つまり、トランジスタ21のゲート−ソース間には、ダイオード(以下、ダイオード21bと称す)と等価の効果が現れる。また、トランジスタ21のドレイン−バックゲート間には、寄生PNダイオード(以下、ダイオード21aと称す)が形成される。
【0033】
同様に、トランジスタ22のゲート−ソース間電圧が閾値電圧よりも小さい場合、電界効果の影響により、トランジスタ22のゲート−ソース間には電流がほとんど流れない。一方、トランジスタ22のゲート−ソース間電圧が閾値電圧に近づくと、トランジスタ22のゲート−ソース間に流れるリーク電流が増加する。つまり、トランジスタ22のゲート−ソース間には、ダイオード(以下、ダイオード22bと称す)と等価の効果が現れる。また、トランジスタ22のドレイン−バックゲート間には、寄生PNダイオード(以下、ダイオード22aと称す)が形成される。
【0034】
したがって、図2Aに示す高インピーダンス回路3は、図2Cに示す回路と等価になる。なお、図2Cに示すように、ノードNには、ダイオード21aのアノード及びダイオード21bのカソードが接続される。ダイオード21aのカソードは、ダイオード22bのアノードに接続される。ダイオード22bのカソードは、低電位側電源端子GNDに接続される。ダイオード21bのアノードは、ダイオード22aのカソードに接続される。ダイオード22aのアノードは、低電位側電源端子GNDに接続される。
【0035】
つまり、ダイオード21aとダイオード22bとは、ノードNから低電位側電源端子GNDに向けて順方向に直列接続される。また、ダイオード21bとダイオード22aとは、低電位側電源端子GNDからノードNに向けて順方向に直列接続される。また、ダイオード21aとダイオード22bとが直列接続された信号線と、ダイオード21bとダイオード22aとが直列接続された信号線とは、互いに独立した信号経路であって、ノードNと低電位側電源端子GNDとの間に並列に接続される。
【0036】
さらに、各信号経路には、トランジスタのゲート−ソース間に形成されるダイオード(例えば、ダイオード21a)と、トランジスタのドレイン−バックゲート間に形成される寄生PNダイオード(例えば、ダイオード22b)とが混在して直列に接続されている。したがって、閾値電圧のばらつきが生じた場合でも、いずれか一方の信号経路のみに偏って当該ばらつきの影響が生じることはない。同様に、温度変化が生じた場合でも、いずれか一方の信号経路のみに偏って当該温度変化の影響が生じることはない。つまり、本実施の形態にかかる高インピーダンス回路3は、ばらつき耐性が強い。
【0037】
一方、従来技術における高抵抗素子113の場合、図11に示すように、ノードNと低電位側電源端子GNDとの間に、トランジスタ131,132毎に閉じられた複数の信号経路を有する。したがって、各トランジスタ131,132内では、インピーダンスの低い信号経路に支配的に電流が流れる。そのため、閾値電圧のばらつきや温度変化の影響を受けた複数の信号経路のうち、最もインピーダンスの低い信号経路が選択されて支配的に電流が流れることになる。つまり、従来技術における高抵抗素子113は、閾値電圧のばらつきや温度変化の影響により、インピーダンスを高い状態に安定させることができない。
【0038】
なお、NチャネルMOSトランジスタ132は、PチャネルMOSトランジスタ131よりも、ゲート−ソース間にリーク電流が流れやすい。したがって、マイナス信号よりもプラス信号側の信号経路、つまり、ノードNから低電位側電源端子GNDに向けて電流が流れる場合の信号経路において、インピーダンスが小さくなるようにばらついてしまう可能性が高い。
【0039】
ここで、本実施の形態にかかる高インピーダンス回路3のインピーダンスと、従来技術における高抵抗素子113のインピーダンスと、を比較する。
【0040】
まず、従来技術における高抵抗素子113のインピーダンスについて説明する(図11)。ダイオード131aのインピーダンスをRP(SD)、ダイオード131bのインピーダンスをRP(BD)、ダイオード132aのインピーダンスをRN(SD)、ダイオード132bのインピーダンスをRN(BD)とした場合、高抵抗素子113のトータルインピーダンスR0は、以下のように表される。
R0={RP(SD)//RP(BD)}+{RN(SD)//RN(BD)}・・・(1)
【0041】
例えば、RP(SD)=1/n×RP(BD)=A、 RN(SD)=1/n×RN(BD)=Aである場合について説明する(n>0,A>0)。この場合、式(1)より、
R0={2n/(n+1)}×A
となる。
【0042】
次に、本実施の形態かかる高インピーダンス回路3のインピーダンスについて説明する(図2C)。ダイオード21aのインピーダンスをRP(BD)、ダイオード21bのインピーダンスをRP(SD)、ダイオード22aのインピーダンスをRP(BD)、ダイオード22bのインピーダンスをRP(SD)とした場合、高インピーダンス回路3のトータルインピーダンスR1は、以下のように表される。
R1={RP(BD)+RP(SD)}//{RP(BD)+RP(SD)}・・・(2)
【0043】
例えば、従来技術の条件と同様に、RP(SD)=1/n×RP(BD)=A、 RN(SD)=1/n×RN(BD)=Aである場合について説明する。この場合、式(2)より、
R1={(1+n)/2}×A
となる。
【0044】
したがって、n>0の場合、常に{(1+n)/2}≧{2n/(n+1)}を満たす。つまり、本実施の形態にかかる高インピーダンス回路3は、従来技術よりも、同等以上のインピーダンスを有する。
【0045】
なお、閾値電圧のばらつきによって、主としてインピーダンスRP(SD),RN(SD)が変化する。また、温度変化によって、主としてインピーダンスRP(BD),RN(BD)が変化する。したがって、閾値電圧のばらつき及び温度変化によって各ダイオードのインピーダンスが大きく変化するほど、係数nが1から離れる程度が大きくなる。
【0046】
図3は、係数nと、トータルインピーダンスR0,R1との関係を示す図である。図3に示すように、係数nが1から離れるほど、従来技術における高抵抗素子113のトータルインピーダンスR0の低下が顕著になり、本実施の形態にかかる高インピーダンス回路3とのトータルインピーダンスR1との差分が大きくなる。つまり、本実施の形態にかかる高インピーダンス回路3は、従来技術よりも、閾値電圧のばらつきや温度変化の影響を抑え、高いインピーダンスを維持することができる。なお、図3に示すように、本実施の形態にかかる高インピーダンス回路3のトータルインピーダンスR1は、常に、従来技術における高抵抗素子113のトータルインピーダンスR0以上の値を示している。
【0047】
このように、本実施の形態にかかる高インピーダンス回路3は、トランジスタ21,22毎に閉じられた複数の信号経路を有するのではなく、等価回路に示されるように(図2C参照)、ノードNと低電位側電源端子GNDとの間に独立した2つの信号経路を有する。そして、本実施の形態にかかる高インピーダンス回路3は、トランジスタ21,22の閾値電圧のばらつきや温度変化が生じた場合でも、独立した2つの信号経路にそれらの影響が分散される構成となっている。そのため、本実施の形態にかかる高インピーダンス回路3は、従来技術と比較して、閾値電圧のばらつきや温度変化の影響を受けにくく、高いインピーダンスを維持することができる。
【0048】
実施の形態2
本実施の形態にかかる高インピーダンス回路4を備えたECM2について説明する。実施の形態1にかかる高インピーダンス回路3は、2つのPチャネルMOSトランジスタ21,22を備えていた。一方、本実施の形態にかかる高インピーダンス回路4は、2つのNチャネルMOSトランジスタ51,52を備える。なお、ECM2に設けられた高インピーダンス回路4以外の回路構成及び動作は、実施の形態1にかかる高インピーダンス回路3と同様であるため、説明を省略する。なお、高インピーダンス回路4は、ダイオード接続されたトランジスタが高インピーダンスを維持することのできる電圧範囲内で用いられる。
【0049】
図4Aに、高インピーダンス回路4の詳細を示す。高インピーダンス回路4は、上述のように、PチャネルMOSトランジスタ(以下、単にトランジスタと称す)51,52を有する。トランジスタ51,52は、いずれもダイオード接続されている。トランジスタ51のドレインは、さらにノードNに接続される。トランジスタ51のソースは、トランジスタ52のバックゲートに接続される。トランジスタ52のソースは、トランジスタ51のバックゲートに接続される。トランジスタ52のドレインは、さらに低電位側電源端子GNDに接続される。
【0050】
図4Bは、高インピーダンス回路4を構成するトランジスタ51,52が形成されているP型半導体基板(P−)61の断面図である。図4Cは、高インピーダンス回路4の等価回路を示す図である。なお、上述のように、トランジスタ51のドレインには、ノードNが接続され、電圧Vinが供給される。また、トランジスタ52のドレインには、低電位側電源端子GNDが接続され、接地電圧が供給される。
【0051】
図4Bに示すように、トランジスタ51は、P型半導体基板(P−)61に形成されたPウェル(P)62と、Pウェル(P)62に形成されたNウェル(N−)63と、Nウェル(N−)63に形成されたPウェル(P−)64と、Pウェル(P−)64に形成されたソース電極(N+)67及びドレイン電極(N+)68と、両電極間67,68間にゲート酸化膜を介して形成されたポリシリコンからなるゲート電極73と、を含んで構成される。また、Pウェル(P−)64には、ボディ電極(P+)69が形成される。
【0052】
トランジスタ52は、P型半導体基板(P−)61に形成されたPウェル(P)62と、Pウェル(P)62に形成されたNウェル(N−)65と、Nウェル(N−)65に形成されたPウェル(P−)66と、Pウェル(P−)66に形成されたソース電極(N+)70及びドレイン電極(N+)71と、両電極間70,71間にゲート酸化膜を介して形成されたポリシリコンからなるゲート電極74と、を含んで構成される。また、Pウェル(P−)66には、ボディ電極(P+)72が形成される。
【0053】
図4Bに示すように、トランジスタ51のゲート−ソース間電圧が閾値電圧よりも小さい場合、電界効果の影響により、トランジスタ51のゲート−ソース間には電流がほとんど流れない。一方、トランジスタ51のゲート−ソース間電圧が閾値電圧に近づくと、トランジスタ51のゲート−ソース間に流れるリーク電流が増加する。つまり、トランジスタ51のゲート−ソース間には、ダイオード(以下、ダイオード51bと称す)と等価の効果が現れる。また、トランジスタ51のドレイン−バックゲート間には、寄生PNダイオード(以下、ダイオード51aと称す)が形成される。
【0054】
同様に、トランジスタ52のゲート−ソース間電圧が閾値電圧よりも小さい場合、電界効果の影響により、トランジスタ52のゲート−ソース間には電流がほとんど流れない。一方、トランジスタ52のゲート−ソース間電圧が閾値電圧に近づくと、トランジスタ52のゲート−ソース間に流れるリーク電流が増加する。つまり、トランジスタ52のゲート−ソース間には、ダイオード(以下、ダイオード52bと称す)と等価の効果が現れる。また、トランジスタ52のドレイン−バックゲート間には、寄生PNダイオード(以下、ダイオード52aと称す)が形成される。
【0055】
したがって、図4Aに示す高インピーダンス回路4は、図4Cに示す回路と等価になる。なお、図4Cに示すように、ノードNには、ダイオード51aのカソード及びダイオード51bのアノードが接続される。ダイオード51aのアノードは、ダイオード52bのカソードに接続される。ダイオード52bのアノードは、低電位側電源端子GNDに接続される。ダイオード51bのカソードは、ダイオード52aのアノードに接続される。ダイオード52aのカソードは、低電位側電源端子GNDに接続される。
【0056】
つまり、ダイオード51bとダイオード52aとは、ノードNから低電位側電源端子GNDに向けて順方向に直列接続される。また、ダイオード51aとダイオード52bとは、低電位側電源端子GNDからノードNに向けて順方向に直列接続される。また、ダイオード51bとダイオード52aとが直列接続された信号線と、ダイオード51aとダイオード52bとが直列接続された信号線とは、互いに独立した信号経路であって、ノードNと低電位側電源端子GNDとの間に並列に接続される。
【0057】
さらに、各信号経路には、トランジスタのゲート−ソース間に形成されるダイオード(例えば、ダイオード51a)と、トランジスタのドレイン−バックゲート間に形成される寄生PNダイオード(例えば、ダイオード52b)とが混在して直列に接続されている。したがって、閾値電圧のばらつきが生じた場合でも、いずれか一方の信号経路のみに偏って当該ばらつきの影響が生じることはない。同様に、温度変化が生じた場合でも、いずれか一方の信号経路のみに偏って当該温度変化の影響が生じることはない。つまり、本実施の形態にかかる高インピーダンス回路4は、ばらつき耐性が強い。
【0058】
このように、本実施の形態にかかる高インピーダンス回路4は、トランジスタ51,52毎に閉じられた複数の信号経路を有するのではなく、等価回路に示されるように(図4C参照)、ノードNと低電位側電源端子GNDとの間に独立した2つの信号経路を有する。そして、本実施の形態にかかる高インピーダンス回路4は、トランジスタ51,52の閾値電圧のばらつきや温度変化が生じた場合でも、独立した2つの信号経路にそれらの影響が分散される構成となっている。そのため、本実施の形態にかかる高インピーダンス回路4は、従来技術よりも、閾値電圧のばらつきや温度変化の影響を受けにくく、高いインピーダンスを維持することができる。
【0059】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。実施の形態1では、ECM1において、ノードNと低電位側電源端子GNDとの間に、1つの高インピーダンス回路3が接続される場合を例に説明したが、これに限られない。図5に示すように、複数の高インピーダンス回路3が直列に接続される回路構成にも適宜変更可能である。
【0060】
同様に、実施の形態2では、ECM2において、ノードNと低電位側電源端子GNDとの間に、1つの高インピーダンス回路4が接続される場合を例に説明したが、これに限られない。図6に示すように、複数の高インピーダンス回路4が直列に接続される回路構成にも適宜変更可能である。
【0061】
また、上記実施の形態では、インピーダンス変換素子としてJ−FETが用いられた場合を例に説明したが、これに限られない。J−FETに代えて、バイポーラトランジスタが用いられる回路構成にも適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0062】
1,2 ECM
3,4 高インピーダンス回路
11 エレクトレットコンデンサ
12 J−FET
14 負荷抵抗
15 外部出力端子
21,22 PチャネルMOSトランジスタ
51,52 NチャネルMOSトランジスタ
21a,21b,22a,22b ダイオード
51a,51b,52a,52b ダイオード
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイオード接続された第1及び第2のトランジスタを備え、
前記第1のトランジスタのバックゲートと前記第2のトランジスタのソースとが接続され、前記第2のトランジスタのバックゲートと前記第1のトランジスタのソースとが接続された高インピーダンス回路。
【請求項2】
前記第1のトランジスタは、
PチャネルMOSトランジスタであることを特徴とする請求項1に記載の高インピーダンス回路。
【請求項3】
前記第1のトランジスタは、
NチャネルMOSトランジスタであることを特徴とする請求項1に記載の高インピーダンス回路。
【請求項4】
前記第2のトランジスタは、
PチャネルMOSトランジスタであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の高インピーダンス回路。
【請求項5】
前記第2のトランジスタは、
NチャネルMOSトランジスタであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の高インピーダンス回路。
【請求項6】
容量素子と、
前記容量素子の一端と電源電圧端子との間に設けられた、請求項1〜5のいずれか一項に記載の抵抗回路と、を備えたフィルタ回路。
【請求項7】
前記容量素子の一端と前記第1のトランジスタのドレインとが接続され、前記電源電圧端子と前記第2のトランジスタのドレインとが接続されることを特徴とする請求項6に記載のフィルタ回路。
【請求項8】
前記容量素子は、
エレクトレットコンデンサマイクであることを特徴とする請求項6又は7に記載のフィルタ回路。
【請求項9】
容量素子と、前記容量素子の一端と電源電圧端子との間に設けられた請求項1〜5のいずれか一項に記載の抵抗回路と、を有するフィルタ回路と、
前記フィルタ回路の出力信号に応じてインピーダンスが変化するインピーダンス変換素子と、
前記インピーダンス変換素子に直列に接続された電流制御用抵抗と、を備えた増幅回路。
【請求項10】
前記インピーダンス変換素子は、
バイポーラトランジスタであることを特徴とする請求項9に記載の増幅回路。
【請求項11】
前記インピーダンス変換素子は、
電界効果トランジスタであることを特徴とする請求項9に記載の増幅回路。
【請求項1】
ダイオード接続された第1及び第2のトランジスタを備え、
前記第1のトランジスタのバックゲートと前記第2のトランジスタのソースとが接続され、前記第2のトランジスタのバックゲートと前記第1のトランジスタのソースとが接続された高インピーダンス回路。
【請求項2】
前記第1のトランジスタは、
PチャネルMOSトランジスタであることを特徴とする請求項1に記載の高インピーダンス回路。
【請求項3】
前記第1のトランジスタは、
NチャネルMOSトランジスタであることを特徴とする請求項1に記載の高インピーダンス回路。
【請求項4】
前記第2のトランジスタは、
PチャネルMOSトランジスタであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の高インピーダンス回路。
【請求項5】
前記第2のトランジスタは、
NチャネルMOSトランジスタであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の高インピーダンス回路。
【請求項6】
容量素子と、
前記容量素子の一端と電源電圧端子との間に設けられた、請求項1〜5のいずれか一項に記載の抵抗回路と、を備えたフィルタ回路。
【請求項7】
前記容量素子の一端と前記第1のトランジスタのドレインとが接続され、前記電源電圧端子と前記第2のトランジスタのドレインとが接続されることを特徴とする請求項6に記載のフィルタ回路。
【請求項8】
前記容量素子は、
エレクトレットコンデンサマイクであることを特徴とする請求項6又は7に記載のフィルタ回路。
【請求項9】
容量素子と、前記容量素子の一端と電源電圧端子との間に設けられた請求項1〜5のいずれか一項に記載の抵抗回路と、を有するフィルタ回路と、
前記フィルタ回路の出力信号に応じてインピーダンスが変化するインピーダンス変換素子と、
前記インピーダンス変換素子に直列に接続された電流制御用抵抗と、を備えた増幅回路。
【請求項10】
前記インピーダンス変換素子は、
バイポーラトランジスタであることを特徴とする請求項9に記載の増幅回路。
【請求項11】
前記インピーダンス変換素子は、
電界効果トランジスタであることを特徴とする請求項9に記載の増幅回路。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図10】
【図11】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−188260(P2011−188260A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−51727(P2010−51727)
【出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】
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